JP3831006B2 - 圧延機のセットアップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧延機のセットアップ装置に係わり、特に、板速計を有する冷間圧延機設備において、板速度実績値を用いたセットアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延機設備における板厚制御システムは、予め目標の仕上板厚を得るために必要な各スタンドの出側板厚、スタンド間張力、圧延荷重、ロール速度、圧下位置等を予測計算するセットアップ系と、圧延中の板厚及び張力の目標値からの偏差を修正する板厚制御系および張力制御系のDDCとから構成される。
【0003】
セットアップ系のロール速度予測は、例えば「板圧延の理論と実際」、第11.4章(昭和59年9月1日 社団法人 日本鉄鋼協会発行)に記載のように、一般的に次のような方法で行われる。
【0004】
圧延中の各スタンドで単位時間に圧延される被圧延材の量は、一定であり、マスフロー一定速と呼ばれ、(1)式で表される。
【0005】
Vi ・hi = Vi+1 ・hi+1 …(1)
ここで Vi : iスタンド出側板速度
hi : iスタンド出側板厚
添字i : iスタンドを示す。
【0006】
最終スタンドの出側板速度を適当な値とし、(1)式より順次前段スタンドの出側板速度を求める。板速度とロール速度の関係は(2)式で表される。
【0007】
Vri = Vi /(1+fi ) …(2)
ここで Vri: ロール速度
Vi : 板速度
fi : 先進率
先進率はBland&Fordの(3)式が用いられる。
【0008】
ここで r:圧下率 H: 入側板厚
h:出側板厚 Rd: 偏平ロール半径
tf :出側単位張力 tb : 入側単位張力
skf:入側変形抵抗 skb: 出側変形抵抗
(2)式と(3)式からロール速度を計算し、このロール速度に於ける圧延機モーターにかかる負荷を計算し、モーター定格値以内に計算負荷が納まるよう最高ロール速度が決定される。このように求めたロール速度は、出側板厚目標値、張力目標値及び圧下位置等とともにDDCに与えられる。
【0009】
DDCでは該当材が圧延機に到着すると同時にセットアップ系より与えられた情報を基に圧延機の設定を変更する。圧延中に外乱等により実際の出側板厚が目標値とずれた場合は、板厚制御により前段スタンドのロール速度を操作しこれを修正する。またスタンド間張力が目標値とずれた場合には、圧下位置を変更して修正する。
【0010】
異なる仕様の被圧延材を溶接して連続圧延を行う連続圧延設備においては、圧延中の現材料から次材への板厚変更点がスタンドを通過した後いかに早く所望の精度内に板厚偏差を収めるかが重要である。この板厚目標値が変わる溶接点ではDDCの板厚制御はオフするため、次材先端部のオフゲージ長はセットアップ設定値の精度に依存する。この時セットアップ設定値の中で板厚偏差に最も影響が大きいのがロール速度設定値と圧下位置設定値である。
【0011】
一方、圧延が開始され、張力目標値が実張力より高い場合には、張力制御が動作し、修正する必要のあるスタンド間張力がかかる下流側のスタンドの圧下位置を変更(ロールギャップを開き)し、実張力を高める。この結果、スタンド間張力は目標値と一致するが、後方張力が大きくなったことにより、ロール表面と板のスリップが発生しやすくなる。また、ロールを長い間使用した場合にもロール表面が摩耗しスリップが発生する。板厚制御は、前段スタンドのロール速度を変えることにより出側板厚を制御しているため、前段スタンドでスリップが発生した場合には板厚の制御が不可能となり板厚偏差が大きくなってしまう。
【0012】
従来のセットアップ系では、各スタンドの圧下率及びスタンド間張力の設定値は、被圧延材の鋼種、板幅、仕上厚でクラス分けしたテーブルよりルックアップ方式で一義的に決定される。そして、この圧下率設定値から圧下位置を設定すると共に、張力設定値を用いて(3)式により求めた先進率の予測値とロール駆動装置の能力から最高ロール速度を設定している。
【0013】
また、圧延中にスリップが発生した場合には、オペレータが該当スタンドのロールギャップを閉めることにより入側張力を減少させスリップを防止している。ロール交換時期については、該当ワークロールでの圧延トン数を管理し、この値を参考にオペレータがロール交換を行っている。
【0014】
また、セットアップ系において、(3)式により計算した先進率予測値は実際の先進率に対して誤差がある。この誤差を学習で修正する従来技術として特開昭62−197210号公報に記載のものがある。この従来技術では、(3)式により計算した先進率予測値と実際の先進率の誤差を学習によって補正し、この補正した先進率予測値を用いて算出したロールと被圧延材の摩擦係数を考慮して各スタンドの圧延荷重を計算することにより、高精度に圧延ロールの開度を制御し安定した圧延を行うものである。なお、その他先進率を学習的に補正する従来技術として、特開昭58−135710号公報、特開平2−258110号公報等がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
次材先端部のセットアップデータの中で重要なのは前述したように圧下位置とロール速度であるが、(3式)により計算した先進率予測値と実際の先進率との誤差が大きいため、各スタンド出側でのマスフロー一定則がくずれ出側板厚が目標値からずれてしまい、被圧延材先端部のオフゲージ長が短縮されない。特開昭62−197210号公報に記載の従来技術では、(3)式により計算した先進率予測値を学習によって補正しているが、1コイルの被圧延材に対して1データだけの最高ロール速度での予測先進率を求め、これを学習補正したものを次コイルの被圧延材のセットアップ計算にフィードバックする方式であるため、圧延中の現圧延材から次圧延材への板厚変更点がスタンドを通過した直後の最高ロール速度に達する前の過渡的圧延状態では先進率予測値と実際の先進率との誤差は補正されておらず、被圧延材先端部のオフゲージ長が短縮されない。
【0016】
また、板厚制御はスリップが発生すると板厚を制御することが不能となり、板厚精度が悪化する。スリップが発生するかどうかは、圧延荷重、スタンド間張力、圧延速度等の圧延スケジュールとワークロール表面の摩耗度に依存する。
【0017】
従来のセットアップ方式では、各スタンドの圧下率、スタンド間張力はテーブルルックアップ方式にて、被圧延材の鋼種、板幅、板厚から一義的に決定され、最高圧延速度は、ロール駆動装置の能力から決定されており、スリップを防止するという観点で圧延スケジュールを決定するという手段がなかった。また、特開昭62−197210号公報に記載の従来技術は、学習で補正した予測先進率より摩擦係数を求め、圧延荷重計算精度を高めようとするもので、スリップを防止していない。
【0018】
本発明の第1の目的は、先進率の予測精度を上げることにより先端オフゲージ長を短くする圧延機のセットアップ装置を提供することである。
【0019】
本発明の第2の目的は、先進率の予測精度を上げることにより圧延中の被圧延材とロール間のスリップを予測しこれを防止する圧延機のセットアップ装置を提供することである。
【0020】
本発明の第3の目的は、圧延中に発生したスリップを解消するために、張力とロール速度を自動的に変更する圧延機のセットアップ装置を提供することである。
【0021】
本発明の第4の目的は、先進率の予測精度を上げることによりロール交換時期を先進率の値を基にオペレータに知らせる機能を有する圧延機のセットアップ装置を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、圧延機のロール速度、被圧延材の板速度、圧延荷重を含む圧延中の実績値および圧延現象、負荷配分から前記圧延機の動作点を決定する圧延機のセットアップ装置において、前記圧延中のロール速度および板速度から先進率の実績値を、圧延中の圧延荷重を含むデータから先進率の理論値をそれぞれ周期的に計算し、これら先進率の実績値と理論値から各ロール速度に応じた先進率修正係数を求め、この先進率修正係数を各ロール速度で区分したテーブルに記憶するダイナミック先進率計算手段と、前記テーブルに記憶した先進率修正係数を用いて次材の先進率を予測する次圧延セットアップ手段とを備えるものである。
【0023】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、上記セットアップ装置において、前記次圧延セットアップ手段は、前記予測先進率を用いてスリップの発生の有無を判断し、スリップが発生しない圧下率、ロール速度および張力を設定するものである。
【0024】
また、上記第3の目的を達成するために、本発明は、上記セットアップ装置において、前記先進率の実績値より現材のスリップの発生の有無を判断し、スリップの発生ありと判断されると圧延機入側の張力を小さく設定するとともに、前記テーブルに記憶した先進率修正係数を用いて圧延中の現材の先進率を予測し、この予測先進率を用いてスリップの発生しないロール速度を設定するダイナミックセットアップ手段を更に備えるものである。
【0025】
更に、上記第4の目的を達成するために、本発明は、上記セットアップ装置において、前記次圧延セットアップ手段においてスリップが発生しない圧下率、ロール速度および張力が設定できないときはロール交換が必要であると判断し、ロール交換の要求メッセージを出力する手段を更に備えるものである。
【0026】
また、上記第4の目的を達成するために、本発明は、前記ダイナミックセットアップ手段においてスリップが発生しない張力およびロール速度が設定できないときはロール交換が必要であると判断し、ロール交換の要求メッセージを出力する手段を更に備えるものである。
【0027】
ロール表面の摩耗を予測先進率の値より判断し、オペレータに音声出力装置またはCRT表示画面を介してロール交換時期を知らせる。予測先進率の精度を上げロール摩耗度を判断することにより的確にオペレータにロール交換指示を与えることが可能となり、スリップを防止することができる。
【0028】
上記セットアップ装置において、好ましくは、前記ダイナミック先進率計算手段は前記先進率の実績値と理論値との差を前記先進率修正係数として求める。
【0029】
また、好ましくは、前記次圧延セットアップ手段は前記予測先進率がマイナスとなったときにスリップ発生と判定する。
【0030】
以上のように構成した本発明の作用は次のようである。
【0031】
(1)本発明においては、ロール速度設定値の誤差が走間ゲージ変更直後の次圧延材先端部のオフゲージ長さに大きく影響を与えることおよび理論式のみでは実際の先進率の変化に追従することは困難であることに着目し、ダイナミック先進率計算手段において圧延中に周期的に先進率実績値と同一条件下での先進率計算値を求め、先進率予測計算の誤差を各ロール速度に対して記憶し、次圧延セットアップ手段において次材の先進率予測計算においてこの誤差を考慮することにより予測先進率の計算精度を向上させる。圧延中の先進率を周期的に学習し、理論値と実績値との差を各ロール速度に対して求めることにより、現在の圧延状態(ロール表面粗度、クーラント量等)及び先進率理論値と実際値との差をを正しく認識することができる。
【0032】
(2)また、圧延中のスリップを防止するため、次圧延セットアップ手段において予測先進率の値よりスリップが発生するか否かを予測し、スリップ発生が予測された場合、圧下率、張力、ロール速度を修正することにより、スリップが起こらない圧延スケジュールを決定する。予測先進率がプラスとなるよう圧延スケジュール(圧下率、張力)を設定することにより、圧延中のスリップ発生を防ぐことができる。
【0033】
(3)また、張力設定値が妥当でない場合にスリップが発生することに着目し、ダイナミックセットアップ手段において圧延中の各スタンドの先進率実績値を監視し、この値が例えばマイナスとなったときスリップ発生とみなし、該当スタンド及び上流側スタンドの張力目標値を変更する。スリップが発生したスタンド及び上流側スタンドの入側張力目標値を小さく設定することにより、スリップを解消することができる。また、ロール速度が高くなる程摩擦係数が小さくなることにより、先進率が小さくなりスリップが発生しやすくなることに着目し、予測先進率よりスリップが発生しないロール速度の最高値を決定し、この速度以下での圧延を行う。スリップが発生した場合、ロール速度を下げることにより摩擦係数が大きくなり、スリップを抑えることができる。
【0034】
(4)更に、ロール表面の摩耗を予測先進率の値より判断し、オペレータに音声出力装置またはCRT表示画面を介してロール交換時期を知らせる。予測先進率の精度を上げロール摩耗度を判断することにより的確にオペレータにロール交換指示を与えることが可能となり、スリップを防止することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1において、符号1は圧延機スタンド、2は被圧延材を示す。圧延機スタンド1は、圧延荷重検出器3、板厚測定器4、板速度検出器5、張力測定器6、モータ回転数検出器7、圧下位置検出器8を有している。圧延機制御装置は、ロール回転数を制御する速度制御装置9、ロールの位置を制御する圧下制御装置10、板厚制御及び張力制御を行うDDC装置11、DDC装置11に対し設定値を与えるセットアップ装置12、オペレータに対し情報を伝える音声出力装置13、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置14、圧延スケジュール入力装置15よりなる。
【0036】
セットアップ装置12は、ダイナミック先進率計算機能12A、次圧延セットアップ機能12B、ダイナミックセットアップ機能12C、アラーム機能12D、定常圧延判断機能12Eを有している。
【0037】
ダイナミック先進率計算機能12Aは、圧延中のロール速度および板速度から先進率の実績値を周期的に計算する実績先進率計算部12a、圧延中の圧延荷重を計算する荷重計算部12b、この圧延荷重を含むデータから先進率の理論値を周期的に計算する先進率論理計算部12c、これら先進率の実績値と理論値から最終スタンドの各ロール速度に応じた先進率修正係数を求める先進率学習部12d、この先進率修正係数を各ロール速度で区分したテーブルに記憶する先進率修正係数格納メモリ12eとで構成されている。
【0038】
次圧延セットアップ機能12Bは、入力装置15からの圧延スケジュール、格納メモリ12eのテーブルに記憶した先進率修正係数を用いて次材の先進率を予測し、この予測先進率を用いてスリップの発生の有無を判断し、スリップが発生しない圧下率、ロール速度および張力を設定する。ダイナミックセットアップ機能12Cは、格納メモリ12eのテーブルに記憶した先進率修正係数を用いて圧延中の現材の先進率を予測し、この予測先進率を用いてスリップの発生の有無を判断し、スリップが発生しないロール速度および張力を設定する。アラーム機能12Dは、次圧延セットアップ機能12B及びダイナミックセットアップ機能12Cにおいてスリップが発生しない設定値が得られないときはロール交換が必要であると判断し、ロール交換の要求メッセージを音声出力装置13及びCRT表示装置14に出力する。定常圧延判断機能12Eは、圧延中のロール速度から現材の定常圧延時かどうかを判断し、定常圧延時と判断されると次圧延セットアップ機能12Bに次材についての上記演算の開始を指令する。
【0039】
ダイナミック先進率計算機能12Aにおける先進率修正係数の学習方法を説明する。
【0040】
各検出器により測定された実績値(板厚、板速度、ロール周速度、圧延荷重、スタンド間張力、圧下位置)は、DDC装置11によりトラッキングされ、被圧延材の同一点(同一スタンド)に関するデータの集合として、セットアップ装置12に周期的(1秒毎)に取り込まれる。ダイナミック先進率計算機能12Aの実先進率計算部12aでは、ロール速度及び板速度を用いて実績先進率を(4)式より求める。
【0041】
Fai = Voi / Vri − 1.0 …(4)
Fai:先進率実績値
Vri:ロール速度実績値 Voi:板速度実績値
また、ダイナミック先進率計算機能12Aの荷重計算部12bでは圧延荷重が計算され、先進率論理計算部12cにおいて、理論上の先進率は入側板厚、出側板厚、入側張力、出側張力、ロール速度等の実績値及び圧延荷重から求めた偏平ロール半径を用いて(3)式により計算し、下記(5)式により先進率実績値との差を求める。
【0042】
Coi = Fci − Fai …(5)
Coi : 先進率予測誤差
Fci : 先進率計算値
Fai : 先進率実績値
先進率予測誤差Coiは、図2から分かるようにロール速度に対して一定ではなく、特に薄板圧延の場合に速度に対する変化が大きくなる。従って、先進率予測誤差Coiは、板厚及びロール速度で区分したテーブルに記憶し、先進率予測計算時に先進率修正係数として用いる。また、先進率実績値のばらつきにより修正係数が異常値となることを防止するため、テーブルに格納時(6)式により平滑処理を行う。
【0043】
Coi(NEW) = (1ーα)Coi + αCoi(IN) …(6)
Coi(NEW) :先進率修正係数(テーブル更新値)
Coi :先進率予測誤差
Coi(IN) :先進率修正係数(テーブル既存値)
α :平滑係数
先進率修正係数格納メモリの構成を図3に示す。図3では、先進率修正係数Coiは最終スタンドの各ロール速度で区分したテーブルに記憶してある。ロール交換時の先進率修正係数Coiの学習計算がされていない初期状態では、図3のテーブルには適当な初期値を設定しておき、圧延が開始されると先に述べたように周期的(1秒毎)に実績値を取り込み、学習計算により得た先進率修正係数をテーブル記憶してゆく。
【0044】
次に、次圧延セットアップ機能12Bにおけるスリップ防止セットアップについて説明する。
【0045】
セットアップ計算フローを図4に示す。各スタンドの出側板厚、各スタンド間張力、各スタンド出側板速度を決定し(ステップ100〜102)、ヒルの理論式を用いて圧延荷重を計算した後(ステップ103)、下記の(7)式を用いて先進率を予測計算する(ステップ104)。
【0046】
Fi =Fci − Coi …(7)
Fi : 次材の予測先進率
Fci: 次材の先進率計算値、(3)式により算出
Coi: 次材のロール速度に対応する修正係数
ここで、先進率修正係数Coiは各スタンド出側板速度をロール速度と見なし、図3に示すメモリマップから求める。次いで、予測先進率を用いてロール速度を計算する(ステップ105)。
【0047】
次に、予測先進率からスリップ発生の有無を判断する(ステップ106)。予測先進率が正の場合はスリップ発生なしと判断し、圧延トルク、圧下位置を計算し(ステップ107〜108)終了する。予測先進率が負の場合にはスリップ発生と判断し、まず該当スタンドの圧下率を大きくし(ステップ109,110)再計算を行う。圧下率変更量は、元の圧下率のα%(定数)とする。圧下率を変えた後の予測先進率がまだ負の場合には、次に該当スタンド及び上流のスタンドの後方単位張力を小さくし(ステップ111,112)先進率を再計算する。張力修正量はテーブルルックアップ方式で決定する。このときのテーブル構成例を図5に示す。圧下率、張力を修正しても予測先進率が正にならないときは、最終スタンドの最高ロール速度を3分割し、最高ロール速度の1/3、2/3のロール速度に変更し(ステップ113,114)、予測先進率を再計算し、予測先進率が正で速度が高い方のロール速度をロール速度設定値とする。1/3のロール速度でも予測先進率が負になった場合は、ロール交換要求メッセージをCRT等に出力しオペレータに警告を行う(ステップ115)。
【0048】
次に、ダイナミックセットアップ機能12Cにおける圧延中のスリップ防止ダイナミックセットアップについて図6の計算フローを用いて説明する。
【0049】
まず、実績先進率を計算し(ステップ200)、実績先進率よりスリップが起きているかどうかを判定する(ステップ201)。実績先進率が負になった場合(ある値以下となった場合)、スリップ発生とみなす。スリップが発生している場合、張力制御の出力がロールギャップを開する方向かどうかをチェックする(ステップ202)。閉の場合には先進率が大きくなる方向に動かしているにもかかわらずスリップが発生しているため、音声出力装置およびCRTを介してオペレータに該当スタンドのワークロールの寿命がきたことを知らせロール交換を要求する(ステップ203)。開の場合には入側張力設定値を下げることによりスリップを改善できる可能性がある。例えば#3スタンドでスリップが発生している場合、#2〜#3間張力設定値、#1〜#2スタンド間張力設定値、#4スタンドスリップの場合は#1〜#2スタンド間張力、#2〜#3スタンド間張力、#3〜#4間張力設定値を下げることによりスリップを改善することが可能である。張力制御の出力量をキーにテーブルルックアップにより張力修正量を決定し(ステップ204)、この張力値を使って圧延荷重を計算する(ステップ205)。張力修正量テーブルを図7に示す。新たに計算した圧延荷重が元の圧延荷重のα%以上大きくなった場合には、張力修正量テーブルの1段階小さな修正量を用いて張力を決定し(ステップ207)圧延荷重を計算する。圧延荷重が許容値以内に納まった場合この時の張力値を現材の張力設定値とする(ステップ212)。次にこの張力と圧延中のロール速度を使用して先進率を予測計算する(ステップ208)。この時の先進率の予測計算も(7)式と同様、先進率の理論計算値と図3のメモリマップに格納された先進率修正係数Coiを用いて行う。次いで予測先進率の正負を判定し(ステップ209)、予測先進率が負の場合、ロール速度を下げる(ステップ210)。この時ロール速度が最低ロール速度以下となった場合には(ステップ211)、オペレータにロール交換要求メッセージを出力する(ステップ203)。この最低ロール速度とは、生産性の面からきめたロール速度である。最低ロール速度以上の場合は、再びこの変更後の速度で先進率を計算し同様のチェックを行い先進率が正になった時のロール速度を現材の最高ロール速度設定値とする(ステップ212)。
【0050】
図8は上述の圧延中スリップ防止機能を説明する図である。圧延中に(4)〜(6)式を用いて板速度実績値及びロール速度実績値より刻々と実績先進率を計算し、先進率の学習を行うと同時に、実績先進率の値を判定し、スリップが発生しているかどうかを判定する。スリップが発生しているときは、図6のフローに従いスリップ防止機能が動作し、張力設定値変更量またはロール速度変更量をDDC装置11に対して設定し、圧延中のスリップを修正してゆく。
【0051】
【発明の効果】
(1)本発明によれば、次圧延材先端部における先進率予測精度が向上し、ロール速度設定精度が向上し、先端部のオフゲージ長さを短縮することができ歩留まりが向上する。
【0052】
(2)圧延中のロールと板のスリップ発生を最小限に抑えることができるため、板厚制御の制御効果を最大限に活かすことが可能となり、板厚制御精度を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるセットアップ装置を圧延スタンド及びDDC装置と共に示す図である。
【図2】先進率実際値と計算値の誤差を示す図である。
【図3】先進率修正係数格納メモリマップを示す図である。
【図4】次圧延セットアップ機能におけるセットアップ計算フローを示す図である。
【図5】次圧延セットアップ時の張力修正量格納メモリマップを示す図である。
【図6】ダイナミックセットアップ機能における圧延中のスリップ発生時のセットアップフローを示す図である。
【図7】ダイナミックセットアップ時の先進率修正係数格納メモリマップを示す図である。
【図8】圧延中のスリップ防止機能を示す図である。
【符号の説明】
1:iスタンド圧延機
2:被圧延材
3:圧延荷重検出器
4:板厚計
5:板速計
6:張力検出器
7:モータ回転数検出器
8:圧下位置検出器
9:速度制御装置
10:圧下制御装置
11:DDC装置
12:セットアップ装置
13:音声出力装置
14:CRT表示装置
12A:ダイナミック先進率計算機能
12B:次圧延セットアップ機能
12C:ダイナミックセットアップ機能
12D:アラーム機能
12a:実績先進率計算部
12b:荷重計算部
12c:先進率論理計算部
12d:先進率学習部
12e:先進率修正係数格納メモリ12e
Claims (9)
- 圧延機のロール速度、被圧延材の板速度、圧延荷重を含む圧延中の実績値および圧延現象、負荷配分から前記圧延機の動作点を決定する圧延機のセットアップ装置において、前記圧延中のロール速度および板速度から先進率の実績値を、圧延中の圧延荷重を含むデータから先進率の理論値をそれぞれ周期的に計算し、これら先進率の実績値と理論値から各ロール速度に応じた先進率修正係数を求め、この先進率修正係数を各ロール速度で区分したテーブルに記憶するダイナミック先進率計算手段と、前記テーブルに記憶した先進率修正係数を用いて次材の先進率を予測する次圧延セットアップ手段とを備えることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項1記載の圧延機のセットアップ装置において、前記次圧延セットアップ手段は、前記予測先進率を用いてスリップの発生の有無を判断し、スリップが発生しない圧下率、ロール速度および張力を設定することを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項1記載の圧延機のセットアップ装置において、前記先進率の実績値より現材のスリップの発生の有無を判断し、スリップの発生ありと判断されると圧延機入側の張力を小さく設定するとともに、前記テーブルに記憶した先進率修正係数を用いて圧延中の現材の先進率を予測し、この予測先進率を用いてスリップの発生しないロール速度を設定するダイナミックセットアップ手段を更に備えることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項2記載の圧延機のセットアップ装置において、前記次圧延セットアップ手段においてスリップが発生しない圧下率、ロール速度および張力が設定できないときはロール交換が必要であると判断し、ロール交換の要求メッセージを出力する手段を更に備えることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項3記載の圧延機のセットアップ装置において、前記ダイナミックセットアップ手段においてスリップが発生しない張力およびロール速度が設定できないときはロール交換が必要であると判断し、ロール交換の要求メッセージを出力する手段を更に備えることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項1記載の圧延機のセットアップ装置において、前記ダイナミック先進率計算手段は、前記先進率の実績値と理論値との差を前記先進率修正係数として求めることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項2記載の圧延機のセットアップ装置において、前記次圧延セットアップ手段は前記予測先進率がマイナスとなったときにスリップ発生と判定することを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 請求項3記載の圧延機のセットアップ装置において、前記ダイナミックセットアップ手段は前記先進率の実績値がマイナスとなったときにスリップ発生と判定することを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
- 圧延機のロール速度、被圧延材の板速度、圧延荷重を含む圧延中の実績値および圧延現象、負荷配分から前記圧延機の動作点を決定する圧延機のセットアップ装置において、前記圧延中のロール速度および板速度から先進率の実績値を、圧延中の圧延荷重を含むデータから先進率の理論値をそれぞれ周期的に計算し、これら先進率の実績値と理論値から少なくともロール速度に応じた先進率修正係数を求め、この先進率修正係数をロール速度で区分したテーブルに記憶するダイナミック先進率計算手段と、前記先進率の実績値より現材のスリップの発生の有無を判断し、スリップの発生ありと判断されると圧延機入側の張 力を小さく設定するとともに、前記テーブルに記憶した先進率修正係数を用いて圧延中の現材の先進率を予測し、この予測先進率を用いてスリップの発生しないロール速度を設定するダイナミックセットアップ手段とを備えることを特徴とする圧延機のセットアップ装置。
Priority Applications (1)
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