JP3825675B2 - 加飾表皮を有する樹脂製品の成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用のインストルメントパネル、ドアトリム、ピラー等の起毛を有する加飾表皮が設けられた樹脂製品を一体成形するための成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5及び図6に加飾表皮が設けられた樹脂製品の一例を示す。この樹脂製品1は、樹脂製の芯材(基体)2と、この芯材2の表面に起毛を芯材2側と逆側に向けて固着された加飾表皮3とから構成されている。この樹脂製品1の製造に際しては、まず芯材2を射出成形法等によって成形する。その後、芯材2の表面に形成された木目込み溝2aに加飾表皮3の周縁部を圧入するとともに、加飾表皮3の背面を芯材2の表面に接着する。これによって、樹脂製品1が製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の製造方法では、加飾表皮3を芯材2に固着するのに接着剤が用いられているため、樹脂製品1を製造するための作業環境が悪化するという問題があった。また、接着には比較的多くの手間を要するため、製造費が嵩むという問題があった。
【0004】
そこで、この出願の発明者は、加飾表皮3を芯材2と一体成形することを考えた。一体成形によれば、芯材2を成形する際に加飾表皮3が芯材2に固着されるので、接着する必要がなくなる。したがって、作業環境の向上及び製造費の低減を図ることができるからである。しかし、一体成形すると、芯材2を成形するための溶融樹脂をキャビティ内に充填したときに、加飾表皮の起毛が樹脂の圧力によってキャビティの内面に押し付けられるとともに、溶融樹脂の熱によって加熱される。この結果、加飾表皮の起毛が倒れたまま元に戻らなくなるという問題、すなわち起毛倒れが発生するという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、樹脂製の基体の一部に起毛を有する加飾表皮が設けられた樹脂製品を成形するための成形装置であって、互いに突き合わされる一対の金型を備え、この一対の金型の突き合わせ面間には、上記樹脂製品の外部形状に対応した内部形状を有し、内部に上記加飾表皮が装着されるとともに、溶融樹脂が充填されるキャビティが形成され、上記一対の金型の一方の上記キャビティに臨む内面のうち、上記キャビティ内に充填される溶融樹脂によって上記加飾表皮が押し付けられる部分が、上記キャビティに対して接近離間する方向へ移動可能とされ、上記一方の金型の内面の上記加飾表皮が押し付けられる部分と対向する他方の金型の内面には、上記一方の金型に向かって突出する装着部が設けられ、この装着部の先端面には、上記溶融樹脂を上記キャビティ内に注入するための注入孔が開口させられ、上記装着部の先端部には、上記加飾表皮が上記装着部の外周面に接触した状態で上記一方の金型側へ移動可能に装着され、上記装着部に装着された加飾表皮が、上記注入孔から注入される溶融樹脂によって上記一方の金型側へ移動させられて当該一方の金型の内面に押し付けられることを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図1〜図4を参照して説明する。図1〜図4に示す成形装置10は、図5及び図6に示す樹脂製品1を成形するためのものであり、上下に対向して配置された一対の金型20,30を有している。下側の金型20は、位置固定して配置されている。上側の金型30は、金型20に対して上下方向へ接近離間移動可能に配置されている。以下、下側の金型20を下型20と、上側の金型30を上型30と称する。下型20と上型30とは、左右方向に対向させて配置してもよく、上型30を固定し、下型20を上型30に対して接近離間移動可能にしてもよい。
【0007】
図2は、下型20の上面21に上型30の下面31を突き当てて上下の型20,30を型締めした状態を示すものであり、互いに突き当てられた上面21と下面31との間には、キャビティ40が形成されている。このキャビティ40は、製造されるべき樹脂製品1の外部形状と同一の内部形状を有している。
【0008】
下型20の上面21のうちのキャビティ40に臨む所定箇所には、装着部22が形成されている。この装着部22には、樹脂製品1の加飾表皮3が上方へ移動可能に装着される。加飾表皮3は、例えばモケット、トリコット等からなるものであり、起毛が設けられた面を金型20と対向するように上方に向けた状態で装着される。また、下型20の内部には、キャビティ40内に溶融樹脂を注入するための通路23が形成されている。この通路23の入口は、下型20側面に開口している。通路23の入口は、下型20の下面に開口させてもよい。通路23からは複数のゲート(注入孔)24が分岐している。各ゲート24は、樹脂製品1の芯材2を成形するための溶融樹脂をキャビティ40内にできる限り均一に充填することができるように配置されている。しかも、各ゲート24のうちの少なくとも一つは、装着部22に開口している。したがって、通路23から各ゲート24を介してキャビティ40に溶融樹脂を供給すると、装着部22に装着された加飾表皮3が、装着部22の上面(先端面)に開口するゲート24からキャビティ40内に流入する樹脂により上型30に向かって移動させられる。
【0009】
上型30には、下面31のキャビティ40に臨む箇所から上面まで貫通する貫通孔32が形成されている。この貫通孔32は、装着部22と対向して配置されている。貫通孔32には、スライド駒33が上下方向へ移動可能に嵌合されている。スライド駒33は、その上面に設けられたロッド33aを介して移動手段(図示せず)に連結され、この移動手段によって上下方向へ移動させられるようになっている。スライド駒33の下面33b(キャビティ40に臨む上面31のうちの加飾表皮50が押し付けられる部分)は、スライド駒33がそれ以上下方へ移動することができない所定の下方限界位置まで移動させられた状態では、キャビティ40の内面の一部を構成する。
【0010】
次に、上記構成の成形装置10を用いて加飾表皮を有する樹脂製品を成形する場合について説明する。
成形に際しては、図1に示すように、上型30を下型20から離間させて型開きする。また、上型のスライド駒33については、その下方限界位置に位置させておく。そして、下型20の装着部22に、上型30側に向けた状態で加飾表皮3を装着する。その後、上型30を下方へ移動させ、下型20に突き当てて型締めする。勿論、このときには、スライド駒33も上型30と一緒に下方へ移動させる。上下の型20,30を型締めすると、それらの上面21と下面31との間にキャビティ40が形成される。
【0011】
次に、図2において矢印で示すように、通路23の入口から溶融樹脂を供給し、通路23及びゲート24を介してキャビティ40に溶融樹脂を注入する。このとき、図3に示すように、装着部22に開口するゲート24からキャビティ40内に流入する溶融樹脂4により、加飾表皮3が上方へ移動させられ、スライド駒33に突き当たる。この状態では、キャビティ40の内部空間のうち、加飾表皮3によって占められる部分を除く部分の内部形状が樹脂製品1の芯材2の外部形状と同一形状になる。しかも、加飾表皮3は、完成した樹脂製品1における取付箇所に位置するようになる。換言すれば、スライド駒33は、樹脂製品1における加飾表皮3の取付位置に対応した箇所に配置され、スライド駒33に対向するように装着部22が配置されているのである。その後、溶融樹脂4をキャビティ40内にさらに供給し、キャビティ40全体に溶融樹脂4を充填する。
【0012】
なお、溶融樹脂4の供給は、型締めが完了する直前、例えば下型20の上面21と上型30の下面31との間の間隔が3mm程度であるときから行ってもよい。ただし、そのようにする場合には、ゲート24から出た溶融樹脂4が、下型20の上面21のキャビティ40を構成する部分から外部へ出ないように予め考慮されていなければならない。
【0013】
キャビティ40内への溶融樹脂4の充填が完了したら、図4に示すように、スライド駒33を上方へ移動させる。スライド駒33の移動は、スライド駒33を移動させたとしてもキャビティ40内に充填された溶融樹脂4の形状が変化しない程度に溶融樹脂4が固化した後、できる限り速やかに行う。これは、加飾表皮3がスライド駒33に突き当たることによって加飾表皮3の起毛が一旦倒れるが、起毛が溶融樹脂4の熱によって高温に加熱される前にスライド駒33を上方へ移動させれば、起毛に作用していた圧力が解除されることにより、一旦倒れた起毛がそれ自体の弾性によって再度起立させることができるからである。スライド駒33の移動のタイミングは、このような点を考慮して実験に基づいて決定するのが望ましいが、通常は、充填が完了してから1〜2秒経過した時に設定される。また、スライド駒33の上方への移動距離は、キャビティ40に臨むスライド駒33の下面33bが加飾表皮3の起毛に接触しなくなる範囲においてできる限り小さくするのが望ましい。溶融樹脂4が固化したら、上型30を上方へ移動させて型開きする。そして、下型20から溶融樹脂4が固化することによって成形された芯材2及びこれに固着された加飾表皮3を取り出す。これにより、樹脂製品1が得られる。
【0014】
上記のように、この発明に係る製造装置では、キャビティ40の内面のうち加飾表皮3が突き当たる部分を構成するスライド駒33をキャビティ40から上方へ移動可能にし、溶融樹脂4をキャビティ40に充填した直後から固化するまでの間、スライド駒33の下面33bを加飾表皮3から離間させているから、加飾表皮3の起毛が倒れたままの状態になる毛倒れが発生するのを防止することができる。また、溶融樹脂4が固化することによって芯材2が成形されるが、溶融樹脂4の固化過程で加飾表皮3が芯材2に固着される。したがって、加飾表皮3を芯材2に接着する必要がない。よって、作業環境を向上させることができるとともに、樹脂製品1の製造費を低減することができる。しかも、キャビティ40は、加飾表皮3が占める空間を除いて芯材2と同一の形状を有しているので、成形された芯材2には、木目込み溝2a(図6参照)が形成されることになり、この木目込み溝2aに加飾表皮3の周縁部が挿入された状態で樹脂製品1が成形される。したがって、木目込み溝2aに加飾表皮3の周縁部を圧入する工程を省くことができる。
【0015】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
例えば、この発明は、図5及び図6に示す樹脂製品1のみならず、他の樹脂製品の成形にも用いることができる。勿論、その場合には、キャビティ40の内部形状が製造される樹脂製品の外部形状に応じて適宜変更される。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、加飾表皮を芯材に接着する必要がないので、作業環境を向上させることができるとともに、樹脂製品の製造費を低減することができ、しかも加飾表皮の起毛が倒れたままの状態になる毛倒れが発生するのを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る加飾表皮を有する樹脂製品の成形装置の一実施の形態を型開きした状態で示す断面図である。
【図2】同実施の形態を型締めした状態で示す断面図である。
【図3】同実施の形態をキャビティに溶融樹脂を充填した状態で示す断面図である。
【図4】同実施の形態を、スライド駒をキャビティから上方へ移動させた状態で示す断面図である。
【図5】この発明に係る成形装置によって製造される樹脂製品の一例を示す平面図である。
【図6】図5のX−X線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
10 加飾表皮を有する樹脂製品の成形装置
20 下型(金型)
21 上面
22 装着部
24 ゲート(注入孔)
30 上型
31 下面
33 スライド駒
33b スライド駒の下面(キャビティに臨む金型の内面のうち、加飾表皮が押し付けられる部分)
Claims (1)
- 樹脂製の基体の一部に起毛を有する加飾表皮が設けられた樹脂製品を成形するための成形装置であって、
互いに突き合わされる一対の金型を備え、この一対の金型の突き合わせ面間には、上記樹脂製品の外部形状に対応した内部形状を有し、内部に上記加飾表皮が装着されるとともに、溶融樹脂が充填されるキャビティが形成され、上記一対の金型の一方の上記キャビティに臨む内面のうち、上記キャビティ内に充填される溶融樹脂によって上記加飾表皮が押し付けられる部分が、上記キャビティに対して接近離間する方向へ移動可能とされ、
上記一方の金型の内面の上記加飾表皮が押し付けられる部分と対向する他方の金型の内面には、上記一方の金型に向かって突出する装着部が設けられ、この装着部の先端面には、上記溶融樹脂を上記キャビティ内に注入するための注入孔が開口させられ、上記装着部の先端部には、上記加飾表皮が上記装着部の外周面に接触した状態で上記一方の金型側へ移動可能に装着され、上記装着部に装着された加飾表皮が、上記注入孔から注入される溶融樹脂によって上記一方の金型側へ移動させられて当該一方の金型の内面に押し付けられることを特徴とする加飾表皮を有する樹脂製品の成形装置。
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