JP3823494B2 - 拭取布帛とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性および保水性とともに、拭取性に極めて優れた、特に家庭用として好ましく用いられる拭取布帛およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、家庭用の拭取布帛としては、木綿、麻およびレーヨンなどの天然繊維または再生繊維の紡績糸を使用した織物、例えば、晒しや日本手拭い、古いタオルなどを折り重ねて厚みをもたせ、粗く刺し子にすることで強力を持たせた布帛が一般的に使用されてきた。これらの天然繊維または再生繊維などの素材によって構成された拭取布帛は、主に吸水性や保水性に優れるものであるが、その要因は、織物を構成する繊維が親水性であるために、水に馴染み易く容易に水分を吸い取ることができ、また、織物を構成する糸が紡績糸であるために太く、繊維間の隙間が大きく布帛が嵩高になるので、布帛内部に水分を保持し易いことにある。しかしながら、親水性を有する素材で構成された布帛の場合、繊維間の隙間に取り込まれた水分は、さらに単繊維内部に取り込まれるので、吸水した布帛を、例え手で固く絞ったつもりでも水分は容易に排出されず布帛内部に残ってしまう。そしてその水分が、再度の拭取時に、拭き圧力によって布帛内部から押し出され、水滴となって拭取面に付着または再付着し、乾燥しても水滴跡がそのまま汚れとなって残るため、拭取面を水滴跡および汚れ跡なく美麗に保つことは困難であった。
【0003】
また、従来の拭取布帛においては、布帛表面から剥がれた短繊維屑が水滴に混じりあるいは直接拭取面に残り、水滴跡と同様そのまま汚れとなって付着することもあった。
【0004】
一方、合成繊維素材は、疎水性であるため水に馴染みにくく、吸水性や保水性においては木綿、麻およびレーヨンなどの天然繊維や再生繊維に比べて劣っている。そのため、合成繊維素材からなる布帛の場合、水分は殆ど単繊維内部に取り込まれることがない。表面上あるいは測定データー上は、あたかも吸水や保水しているように見えていても、水分は単繊維や繊維束の表面に付着し、もしくは繊維束の繊維隙間に保持されているに過ぎない。また、素材の基質が硬く、織物を構成する単繊維が太いと、手で絞ったとき繊維自身が容易に押し潰されることなく、ゆえに、布帛内部の各繊維間に入り込んだ水分は、手で絞ることによって容易には排出されることなく、拭取面を拭く際の拭き圧力によってやはり布帛内部から押し出され、水滴となって拭取面に付着または再付着し、乾燥後には拭き取りの効果がないという欠点があり、拭取布帛としては不適なものとして敬遠されてきた。
【0005】
近年、合成繊維の極細繊維を用いた編織物が拭取布帛として提案されている。例えば、特開昭61ー103428号公報では、単繊維繊度が0.9デニール以下の極細繊維からなる布帛であって嵩高性を特徴とする拭取布帛が提案されており、また特開昭63ー211364号公報では、単繊維繊度が0.2デニール以下の超極細繊維と単繊維繊度が0.5〜10デニールの繊維からなる交絡編織物およびその製造方法が提案されている。しかしながら、これらの織物は、風合いが硬いだけでなく、ガラスを基板とする材料に対しては滑り過ぎたり、逆に滑らずに拭取作業性が必ずしも十分でないなどの課題がある。また、編物の場合は、編物特有の伸縮性の大きさによる変形やワライと称する伸ばした後の変形が欠点となる。さらに、これらの布帛においては、滑りすぎたり、編目の粗さのため十分な拭取性が得られないなどの問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上述の欠点を改良し、吸水性と保水性に優れ、拭取面に拭き跡や水滴を残すことなく拭取性が極めて優れた、例えばガラス、金属およびプラスティックなどの一般家庭用品を対象に好ましく使用される拭取布帛およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため次の構成を有する。
【0008】
すなわち、本発明の拭取布帛は、少なくとも単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維の極細繊維が30〜80重量%含有され、総繊度30〜400デニール、撚数400〜800回/mの複合フィラメント糸条で構成された編織物からなり、その編織物が拭き取り性を付与する化学薬品が実質的に付与されていないものである。そして、本発明は次の好ましい態様を含んでいる。
【0009】
(a) 前記極細繊維がポリエステルフィラメントであること。
【0010】
(b) 前記フィラメント糸条の総繊度が250〜350デニールであること。
【0012】
(d) 前記編織物が該極細繊維と該極細繊維より収縮率の大きいフィラメント糸で構成されていること。
【0013】
(e) 前記極細繊維よりも収縮率の大きいフィラメント糸が、該極細繊維の単繊維繊度より太い単繊維繊度のフィラメントで構成されていること。
【0014】
(f) 前記極細繊維が、該編織物の表面に現れていること。
【0015】
(g) 前記編織物のJIS L−1096で測定される厚さが0.8mm以上であること。
【0016】
(h) 前記編織物のJIS L−1096で測定される吸水速度が1秒以下であること。
【0017】
(i) 前記編織物のJIS L−1096で測定される吸水量が、200重量%以上であること
また、本発明の拭取布帛の製造方法は、少なくとも単繊維繊度0.1〜0.01デニールに極細化可能な複合繊維を含むフィラメント糸条で構成された編織物に、極細化処理を施して、単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維を30〜80重量%含み、総繊度30〜400デニール、撚数400〜800回/mの複合フィラメント糸条で構成された編織物を製造する方法において、繊維製造から仕上げ加工までの工程で、拭き取り性を付与する化学薬品が実質的に付与されていないことを特徴とするもので、本発明では、極細化処理を施した単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維を含む編織物を加熱処理し、次いでウォータージェットパンチ加工すること、前記加熱処理が精錬または/および染色加工で行われること、および前記ウォータージェットパンチ加工を濾過水を用いた30〜120kgf/cm2の高圧水流で行なうことが好ましい実施態様として含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、一般家庭おいて日常の清掃に使用される拭取布帛として好適な材料について、まず、吸水性、保水性、拭取性、汚れ除去性および拭取作業性に優れていること、さらに、これらの性能に耐久性があること等に注力し鋭意検討した結果、極細繊維フィラメント製で、しかも親水性物質や化学処理剤を徹底的に排除した布帛とすることにより、極めて信頼性の高い環境に優しい拭取布帛が得られることを見い出し、本発明に到達したものである。
【0019】
本発明の拭取布帛を構成する主要素材は、ポリエステルやポリアミドなどの合成繊維の極細繊維フィラメントからなるものであり、ポリエステルフィラメントが好ましく用いられる。
【0020】
紡績糸もしくは何らかの毛羽加工を施した糸条の場合は、拭き取り時にその短繊維もしくは毛羽が拭き取り対象物に付着し、拭き取り後も残るため、汚れを拭き取るどころか、逆に汚れをまき散らすことになるが、本発明のフィラメント糸条の場合は、かかる問題は生じない。
【0021】
この極細繊維フィラメントは、本発明の拭取布帛を構成する繊維のうち、少なくとも30重量%含まれていることが好ましく、拭取性に優れた拭取布帛を得ることができる。
【0022】
ここで極細繊維とは、0.1〜0.01デニールの単繊維繊度からなるマルチフィラメント糸であり、好ましくは0.08〜0.02デニール、さらに好ましくは0.06〜0.04デニールの範囲の極細繊維である。単繊維繊度が0.1デニールより大きくなると、微細部に入り込んだ汚れが取れないばかりでなく、布帛自体の風合いが硬くなり、取り扱い性と拭取性に劣るものとなる。また、単繊維繊度が0.01デニールより小さくなると、布帛に張りがなくなり、拭き取り作業時に手にまとわりつくなど、やはり取り扱い性に劣るものとなる。
【0023】
本発明の拭取布帛においては、本発明の効果を妨げない範囲で、上記極細繊維だけでなく、他の繊維を併用することができる。極細繊維以外の他の繊維を併用する場合は、0.1デニール以上の高収縮、すなわち極細繊維よりも収縮率の高いフィラメント糸を混繊等複合することが好ましい。極細繊維以外の繊維は、特に制限されるものではないが、布帛の嵩高性を得るためには高収縮糸の併用が好ましく、その場合、単繊維繊度0.1デニール以上、さらには0.5〜1.0デニールの高収縮糸が好ましく用いられる。
【0024】
かかる極細繊維と極細繊維以外の他の繊維との複合割合は、布帛の嵩高性、風合いおよび拭取性の点から、極細繊維が少なくとも布帛重量の好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50〜80重量%、特に好ましくは60〜70重量%含まれていることが好ましい。
【0025】
また、本発明において、極細繊維を含むフィラメント糸条の総繊度は、布帛の嵩高性、風合いおよび拭取性の点から30〜400デニールであり、好ましくは70〜350デニール、さらに、布帛の嵩高性、風合いおよび拭き取り性を特によくするには250〜350デニールであることが好ましい。本発明ではさらに布帛表面に隙間なく繊維を分散させるために、これに400〜800回/mの撚をかけることが好ましい。総繊度が小さくなりすぎると、布帛の嵩高性が低くなり吸水量が十分得られない。また、総繊度が大きくなりすぎると、布帛が硬くなり作業性が悪くなる。
【0026】
本発明の拭取布帛においては、総繊度の異なる2種類以上のフィラメント糸条を交編織することができる。例えば、タテ糸に70デニールのフィラメント糸条を、またヨコ糸に270デニールのフィラメント糸条を用いて、交織することができる。
【0027】
加えて本発明のフィラメント糸条では、撚数が400回/mよりも少なくなると、マルチフィラメント糸条がまっすぐに並んで布帛を縦横に分断するため、布帛表面の拭き取り面積が小さくなり、また、拭き跡が残り易い。一方、撚数が800回/mより多くなると、マルチフィラメント糸条がその撚によって拘束され、単糸同志がばらけることなく一塊になるため、拭き取り性が悪くなる。撚数が本発明のように400〜800回/mであれば、撚トルクによってマルチフィラメント糸条に捻れを生じ、さらに単糸同志がばらけて別々の挙動を示し、隣り合う糸と糸の隙間を埋めるように分散するので、拭き取り面積が大きくなる。また、布帛表面が吸盤のように拭き取り面に吸い付くので、わずかな隙間に入った汚れも掻き出すことができる。撚り数は500〜700回/mがより好ましい。
【0028】
本発明において、単繊維繊度が0.1デニール以上の高収縮糸、すなわち極細繊維よりも収縮率の大きいフィラメント糸は、フィラメント糸条の残りの部分を占めるのが基本であるが、この単繊維繊度0.1デニール以上の高収縮フィラメント糸は、極細繊維よりも高い熱に対する収縮特性を有するものであれば、その収縮率は特に限定されない。例えば、極細繊維の沸騰水収縮率が4〜8%であれば、高収縮フィラメント糸は10〜25%程度の収縮率を有することが好ましい。特に、極細繊維の沸騰水収縮率より4〜8%大きい収縮率を有するフィラメント糸がより好ましい。本発明においては、収縮率の大きいフィラメント糸はポリエステル共重合体等からなるものを使用することができる。
【0029】
すなわち、本発明において高収縮フィラメント糸は、編織物を熱処理することにより、高収縮フィラメント糸に極細繊維より大きな収縮率を発現させて、編織組織の繊維束内部を形成するために使用される。一方極細繊維は、高収縮フィラメント糸が熱処理によって収縮することによりランダムな捲縮状態を発現し、また1本の単繊維配列を乱し、布帛の嵩高性を高める役目をもつ。
【0030】
さらに、この極細繊維よりも収縮率の大きいフィラメント糸を含む編織物を加熱処理後に、その編織物の面をウォータージェットパンチ加工することにより、布帛面の単糸の塊が壊され、より嵩高な布帛を形成することができる。
【0031】
本発明において、極細繊維は編織物の表面に現れていることが好ましく、編織物表面に極細繊維が分散して存在し、表面に露出していることで拭取性をより効果的にできる。
【0032】
本発明において、布帛の形態は編物でも織物でもよいが、次のような理由から織物の方が好ましい。すなわち、編物を家庭用の拭取布帛として使う場合、拭取性能は優れているが、布帛表面の糸の浮きが長くなり、拭取作業時に小さな突起物などに引っかかるという不都合が生じることがある。ここでいう浮きとは布帛を構成している繊維束の、任意の交絡点から次の交絡点までのことである。編物の場合、編物特有の伸縮性の大きさによる変形が大きく、手にまとわりつくなどその作業性を損なうことがある。また、ワライと称する伸ばした後の変形が起こったり、滑りすぎたりすることがある。
【0033】
拭取布帛が織物の場合は、織物組織は、拭取作業性や嵩高性を確保するために、厚さ方向にふくらみを有する組織、例えば二重織り組織が好ましい。ここでいう二重織り組織とは、表組織と裏組織を部分的に表糸と裏糸が交錯してなる織物であって、その交錯点の数は10〜40コ/cm2であることが好ましい。交錯点が40コ/cm2より多いと表組織と裏組織の間に隙間がなくなり、必要なふくらみが得られないだけでなく、板状の硬い織物となって、拭取性、絞り性および保水性のない布帛となってしまう。さらにガラスを基板とする被拭取材料に対しては、滑り過ぎたり、あるいは逆に滑らずに拭取作業性に影響することがある。また、交錯点が10コ/cm2より少ない場合は、表組織と裏組織の間が袋状になり、互いにずれが生じて拭取作業性を損なうことがある。拭取性、拭取作業性、絞り性および保水性を考慮すれば、交錯点は20〜30コ/cm2であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明において布帛の嵩高性を確保するための組織としては、上記二重織りに限らず、パイル織物や蜂巣織物などであっても、なんら問題はない。
【0035】
本発明においては、拭取布帛に拭き取り性を付与する化学薬品が実質的に付与されていないことが重要である。すなわち、一般の拭き取り布帛には、拭取性能向上のため、染色加工や柔軟加工等で、例えばポリアルキレングリコール系化合物、水溶性ポリエステルなどの親水化剤、ポリアクリル酸エステルなどの防汚剤およびカチオン系高分子活性剤などの分散剤などの各種化学処理剤が使用されているが、本発明では、特に家庭用の拭取布帛用途として、このような拭き取り性にかかわる化学処理剤を付与しないことが重要である。本発明では、化学処理剤を含まなくても本発明でいうところの拭き取り効果を奏する。化学処理剤の含有量は好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0036】
化学処理剤の含有量の測定は、試料を常温の蒸留水に浸漬し、振とう幅4cm以上5cm以下、振とう回数毎分200回に設定した振とう機を用いて6時間振とうする。抽出液を0.45μmのカートリッジフィルターを用いて濾過し、その一部を用いてイオンクロマトグラフ法またはプラズマ発光分光分析法(ICP法)により定量することができる。
【0037】
また、本発明の編織物の厚さは、0.8mm以上であることが、絞り性・取り扱い性の点で好ましい。また、拭取性能に関わる特性として、吸水速度が1秒以下、保水量が200重量%以上であることが好ましい。
【0038】
次に、本発明の拭取布帛の製造方法の一例について述べる。
【0039】
まず、極細繊維製造用として、海島型複合繊維、剥離分割型複合繊維および特殊ブレンド型複合繊維等の極細化可能な複合繊維からなるフィラメント糸を用意する。またこれとは別に、高収縮フィラメント糸を用意し、両者を引きそろえ、必要に応じて糸長差を付与して複合糸形態の原糸とする。複合する手段としては、引き揃え、撚糸および交絡などが挙げられる。得られた原糸は加撚され編織物用原糸となる。
【0040】
次に、この原糸を用いて製編織し、得られた編織物に極細化処理を施して極細繊維からなる編織物とする。極細化処理としては、化学的剥離、物理的剥離、一成分の溶解除去等の手段がある。例えば、海島型複合繊維を用いた場合には、海島型複合繊維の海成分を溶解する溶媒で処理することにより島成分からなる極細繊維とすることができる。
【0041】
次いで、極細化処理された編織物は精錬、染色等の高次加工において収縮処理される。本発明の拭取布帛は、構成繊維に交絡が付与され、かつ高密度になることにより、さらに高い拭き取り性が得られる。この交絡と高密度化を効果的にさせるためには、脱海、染色工程等による極細化処理を行なった編織物表面に、ウオータージェットパンチ加工を行なうことが好ましい。具体的には、濾過して浄化された水(濾過水)を小孔より編織物の表面に圧力噴射させる。水圧は、好ましくは30〜120kg/cm2、さらに好ましくは50〜100kg/cm2、最も好ましくは80〜100kg/cm2である。30kg/cm2未満の場合には、加工の効果は低く、繊維同士の絡みが不十分であり、また120kg/cm2以上であると繊維が切断され毛羽の原因になることがある。また、ウオータージェットパンチ加工は編織物を収縮させるため、嵩高性が付与され、極細繊維の毛細管現象により吸水性も向上する。
【0042】
既述のように、一般に拭き取り布帛には、拭取性能向上のため化学薬品が使用されるが、本発明の布帛の製造においては、繊維製造から染色等高次加工において、かかる化学薬品を使用することなく、編織物が製造される。これは、食器、グラスなどの直接人体内部への接触の可能性がある用途については、安全上、薬品、仕上げ剤の使用は避けるべきだからであり、また環境上望ましいことである。本発明の拭取布帛は、特に家庭用のやさしい資材として、この種の薬品、仕上げ剤を使用しなくても布帛自体で十分に優れた拭き取り性、吸水性およびソフトな風合いを有する。
【0043】
本発明の拭取布帛は、グラス、窓ガラス、鏡などのガラス製品、金属食器、車、アクセサリーなどの金属、食器、パソコン、電話、めがねなどのプラスティックをはじめ、あらゆる素材に使用できるが、特にガラス製品の拭き取り仕上げに好適に使用される。
【0044】
【実施例】
以下実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0045】
編織物の厚さ、吸水速度および保水量は、いずれもJIS−L1096で測定し、保水量は、試料を2分間水に浸した後、試料を引き上げて1分間ドリップ後の重量増加率で評価した。
【0046】
拭取性の評価は、次の方法で行なった。シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)約5mgを注射針でガラス板上に落とし、直径45mm、重さ1kgfの円柱状荷重の一端面に、厚さ約1mm相当の織物を介して固定された試料(拭取布帛)をガラス板上に乗せ、1m/minに速度で移動し、シリコーンを拭き取る。次に、乾式複写機用トナー(SF−76T:シャープ株式会社製)をガラス板上に振りかけ、そのトナーを圧縮空気(1kg/cm2)で吹き飛ばす。ガラス板表面にセロテープ(積水化学工業株式会社製、登録商標)を貼り付けて、ガラス板上の残留トナーを剥ぎ取り、セロテープに付着したトナーの程度を判定する。トナーがまったく付着しないもの(ガラス板のシリコーンを完全に拭き取ったもの)を5級、トナーが極めて多量に残るものを1級として5段階で肉眼判定した。
【0047】
また、拭取作業性は、パネラー10人の感応評価で判定した。
【0048】
(実施例1)
極細繊維化可能な海島型複合繊維として、50デニール、9フィラメント(70島/フィラメント)の海島比率が10/90である海島型ポリエステルフィラメントで、島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなる騰水収縮率が5.8%のアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなるフィラメント糸を用いた。また別に、高収縮糸に、酸性分としてテレフタル酸とイソフタル酸の共重合体からなる、75デニール、36フィラメントの収縮率が10.8%のポリエステルフィラメント糸を用いた。
【0049】
次に、海島型複合繊維を脱海処理することなく4本を引き揃え、高収縮糸2本と合わせて500回/mで合撚し、レピア織機で経密度83本/in、緯密度63本/inの平二重織物を製織して生機とした。
【0050】
この生機を一旦、130度で20分間の熱処理後、さらに80度で30分間水酸化ナトリウム1%の水溶液(蒸留水使用)で処理することにより、海成分を完全に除去した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は255デニールであり、極細繊維の単繊維繊度は0.07デニール、極細繊維の割合は72重量%であった。
【0051】
次いで、表面から80kgf/cm2の圧力で、濾過水を使用してウォータージェットパンチ加工し、その後130度でヒートセットした。得られた織物の目付は283g/m2で、生機に対して幅86.4%、長さ83.1%収縮した。
【0052】
また、製造工程の中で、拭き取り性にかかわる化学処理剤は一切使用することなく、得られた織物内にも拭き取り性を付与する化学薬品が含有されていないことを確認した。この布帛は、しなやかなセーム調で寸法安定性に優れ、拭取布帛として拭取作業性がよいもので、20回洗濯後も同様の拭き取り性能を発揮するものであった。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
極細繊維化可能な海島型複合繊維として、50デニール、9フィラメント(70島/フィラメント)の海島比率が10/90である海島型ポリエステルフィラメントで、島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなるフィラメント糸を4本、撚数600回/mで合撚したマルチフィラメント糸を用いた。この糸の沸騰水収縮率は4.2%であった。別に、高収縮糸として、テレフタル酸とイソフタル酸の共重合体からなる、75デニール、144フィラメントの収縮率が8.4%のポリエステル糸を用いた。
【0054】
海島型複合繊維からなるフィラメント糸を脱海処理することなく4本を引きそろえ、高収縮糸2本と合わせて撚数600回/mで合撚し、レピア織機を用い経密度65本/in、緯密度44本/inで蜂巣織物組織にて製織し生機とした。
【0055】
この生機を一旦、130度で20分間の熱処理後、さらに80度で30分間水酸化ナトリウム1%の水溶液(蒸留水使用)で処理することにより、海成分を完全に除去した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は263デニールであり、極細繊維の単繊維繊度は0.07デニール、極細繊維の割合は68重量%であった。また、この織物の目付は346g/m2で、生機に対して幅77.3%、長さ65.6%収縮した。
【0056】
また、製造工程の中で、拭き取り性にかかわる化学処理剤は一切使用することなく、得られた織物内にも拭き取り性を付与する化学薬品が含有されていないことを確認した。得られた布帛は、ソフトでふくらみがあり、絞り性、滑り性など拭取布帛としての取り扱い性に優れるとともに、吸水性、拭き取り性など拭取布帛としての基本性能もまた優れるものであった。この拭取布帛は、20回洗濯後さらにふくらみが増しソフトな風合いを保つものであり、拭き取り性能は、新品よりもよくなる傾向を示した。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
海島型複合繊維として、50デニール、9フィラメント(70島/フィラメント)の海島比率が10/90である海島型ポリエステルフィラメントで、島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなるフィラメント糸3本を、撚数100回/mで合撚したマルチフィラメント糸条を用いた。この糸条の沸騰水収縮率は5.8%であった。
この海島型複合繊維からなるマルチフィラメント糸を脱海処理することなく、レピア織機で経密度83本/in、緯密度64本/inで平二重織組織にて製織し生機とした。
【0058】
この生機を一旦、130度で20分間の熱処理後、さらに80度で30分間水酸化ナトリウム1%の水溶液(蒸留水使用)で処理することにより、海成分を完全に除去した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の単繊維繊度は0.07デニール、総繊度は135デニールであり、極細繊維の割合は100重量%であった。
【0059】
次いで、表面から80kgf/cm2の圧力で、濾過水を使用してウォータージェットパンチ加工し、その後130度でヒートセットした。得られた織物の目付は168g/m2で、生機に対して幅96.7%、長さ93.2%に収縮し、得られた布帛は、二重織物にもかかわらず、ふくらみがなく、薄い扁平な布帛となり、吸水量も少なく、拭き取り対象物に対して滑りが悪く、拭取性、拭き取り作業性、取り扱い性など拭取布帛としての性能に、欠けるものであった。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
海島型複合繊維として、50デニール、9フィラメント(70島/フィラメント)の海島比率が10/90である海島型ポリエステルフィラメントで、島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなる繊維4本を、撚数1000回/mで合撚したマルチフィラメント糸を用いた。この糸の沸騰水収縮率は5.8%であった。このマルチフィラメント糸を脱海処理することなく、レピア織機で、経密度83本/in、緯密度64本/inで平二重織組織にて製織し生機とした。
【0061】
この生機を一旦、130度で20分間の熱処理後、さらに80度で30分間水酸化ナトリウム1%の水溶液(蒸留水使用)で処理することにより、海成分を完全に除去した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の単繊維繊度は0.07デニール、総繊度は180デニールであり、極細繊維の割合は100重量%であった。その後130度でヒートセットした。
【0062】
得られた織物の目付は214g/m2で、生機に対して幅96.7%、長さ93.2%に収縮していた。この布帛は、拭き取り対象物に対して滑りはよいものの、ふくらみがなく、吸水量も少なく、拭き取り跡も残るものであった。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、拭取面を水滴跡や、汚れ跡を残さず美麗に保つ拭取布帛を提供することができ、拭取性、拭取作業性だけでなく、化学薬品を含まないので、抜群の信頼性のもとに、吸水性や保水性に優れる、ガラス、金属およびプラスティックなどの一般家庭用品を対象にした拭取布帛が得られる。
Claims (13)
- 少なくとも単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維が30〜80重量%含有され、総繊度30〜400デニール、撚数400〜800回/mの複合フィラメント糸条で構成された編織物からなり、拭き取り性を付与する化学薬品が実質的に付与されていないことを特徴とする拭取布帛。
- 前記極細繊維がポリエステルフィラメントであることを特徴とする請求項1記載の拭取布帛。
- 前記複合フィラメント糸条の総繊度が250〜350デニールであることを特徴とする請求項1または2記載の拭取布帛。
- 前記編織物が該極細繊維と該極細繊維より収縮率の大きいフィラメント糸で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の拭取布帛。
- 前記極細繊維よりも収縮率の大きいフィラメント糸が、該極細繊維の単繊維繊度より太い単繊維繊度のフィラメントで構成されていることを特徴とする請求項4記載の拭取布帛。
- 前記極細繊維が、該編織物の表面に現れていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の拭取布帛。
- 前記編織物の厚さが0.8mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の拭取布帛。
- 前記編織物の吸水速度が1秒以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の拭取布帛。
- 前記編織物の吸水量が200重量%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の拭取布帛。
- 少なくとも単繊維繊度0.1〜0.01デニールに極細化可能な複合繊維を含むフィラメント糸条で構成された編織物に、極細化処理を施して、単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維を30〜80重量%含み、総繊度30〜400デニール、撚数400〜800回/mの複合フィラメント糸条で構成された編織物を製造する方法において、繊維製造から仕上げ加工までの工程で、拭き取り性を付与する化学薬品が実質的に付与されていないことを特徴とする拭取布帛の製造方法。
- 極細化処理を施した単繊維繊度0.1〜0.01デニールの極細繊維を含む編織物を加熱処理し、次いでウォータージェットパンチ加工することを特徴とする請求項10記載の拭取布帛の製造方法。
- 前記加熱処理が、精錬または/および染色加工で行われることを特徴とする請求項11記載の拭取布帛の製造方法。
- 前記ウォータージェットパンチ加工を、濾過水を用いた30〜120kgf/cm2の高圧水流で行なうことを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の拭取布帛の製造方法。
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