JP3822970B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、適度な柔軟性を有し、透明性、耐衝撃性、耐熱性のバランスに優れ、かつ耐ブロッキング性が良好な積層体に関する。本発明の積層体は、柔軟性のあるシートやフイルムとして好適に使用でき、例えば、自動車内装材、家電・電線材として各種絶縁シート、土木建材分野における防水シート、建材や家電製品等の化粧シート、壁紙、テーブルクロス、潅漑用ホース、化粧品包装用シート、レザー、農業用フイルム、ファスニングテープ、粘着テープ、文具、繊維包装フイルム、ラベル、ストレッチフィルム、保護フイルム、電子部品包装フイルム、食品包装フイルム等に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、柔軟性のあるシートやフイルムとして、軟質塩化ビニル樹脂やビニロンに代表されるポリビニルアルコール系樹脂からなるシートやフイルムが多く用いられてきた。しかし、軟質塩化ビニル樹脂は、分子内に塩素を含むため、焼却時に発生する燃焼ガスが酸性雨の原因となるとして、近年その代替化の動きがある。
【0003】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、湿度の影響を受けやすいことや、熱溶融成形加工適性が不十分であるため、使用される用途が限られる。柔軟性のあるシートやフイルムとしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンエラストマー等エチレンを主体とするものは、柔軟性や耐衝撃性が良いものの、透明性、耐熱性が軟質塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール系樹脂と比べ劣るという問題点がある。
【0004】
一方、ポリプロピレンは、優れた加工性、剛性及び耐熱性を有することからシート、フィルム等に広く利用されている。しかしながら、従来使用されている結晶性の高い、いわゆるアイソタクチックポリプロピレンは剛性、耐熱性に優れる反面、柔軟性、耐衝撃性、透明性に劣るという欠点があった。これらの欠点を改良する手段も多く提案されている。
【0005】
例えば、耐衝撃性を改良する為に、プロピレンと他のα−オレフィンとをランダム共重合させる方法、またはプロピレン単独重合の後にプロピレンとエチレンを共重合させ、ブロック共重合体とする方法等が知られている。しかしながら、ランダム共重合体とした場合には、耐衝撃性、透明性は改良されるものの融点が著しく低下する為に耐熱性が損なわれるといった問題があった。また、ブロック共重合体とした場合には、耐衝撃性、耐熱性には優れるが、透明性が著しく低下するといった問題があった。
【0006】
ポリプロピレンに柔軟性を付与する為に、立体規則性を低下させる方法も知られている。例えば、特開昭59−122506号公報には、分子量分布が広く、且つ、比較的高い融点を有しながらも、柔軟性を有する立体規則性の低いポリプロピレンについて提案されている。しかしながら、この方法に於いては、柔軟性と耐熱性のバランスに於いて未だ改良の余地が残されており、より柔軟なポリプロピレンについても高い耐熱性を有することが望まれていた。また、特開平6−263934号公報には、特定の粘度を有するアタクチック成分を含有させることでゴム弾性に優れたポリプロピレンが提案されているが、得られたポリプロピレンのメルトフローレイトは比較的低く、加工性に未だ改良の余地があった。
【0007】
この課題を解決する方法として、特開平7−157606号公報には重量平均分子量が100万以上の低立体規則性ポリプロピレンを有機過酸化物の存在下に溶融混練することでメルトフローレイトを調整する方法が提案されているが、得られるポリプロピレンの分子量分布が小さくなる為、シート、フィルムに成形する際の溶融張力が低下し、加工性に課題があった。
【0008】
そこで、本発明者は柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れ、しかも、加工性の良好な低結晶性ポリプロピレンを提案した(特願平9−164660)。
【0009】
しかしながら、該低結晶性ポリプロピレンによって得られたシート、フイルムは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるものの、低結晶成分がシートやフイルムの表面にブーリードアウトし易く、かかる点において改良の余地があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、適度な柔軟性を有し、透明性、耐衝撃性、耐熱性のバランスに優れ、かつ耐ブロッキング性が良好な積層体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の分子量分布と結晶性分布を有する低結晶性ポリプロピレンを基材層とし、該基材層の両外層に非粘着性熱可塑性樹脂よりなる層を積層することにより上記目的を全て達成し得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、下記1)〜4)の構成を満足する低結晶性ポリプロピレン(a)よりなる層を基材層とし、該基材層の両外層に非粘着性熱可塑性樹脂よりなる層が積層されてなる積層体である。
【0013】
低結晶性ポリプロピレン(a):
1)プロピレン単独重合体、またはプロピレン以外のα−オレフィン単位の含有量が5モル%以下のプロピレンとα−オレフィンとの共重合体
2)メルトフローレイトが0.5〜20g/10分
3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が4〜15
4)昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分(A成分)の量が5〜35重量%、20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)の量が10〜40重量%、100℃以上での溶出成分(C成分)が40〜80重量%、A成分、B成分およびC成分の合計が100重量%、B成分とA成分との重量比(B/A)が0.6以上で、且つ、C成分に於けるピークトップ温度が120℃以上。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、低結晶性ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体、またはプロピレン以外のα−オレフィン単位の含有量が5モル%以下の、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体(以下、プロピレン−α−オレフィン共重合体という)により構成される。
【0015】
本発明において、プロピレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。プロピレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン単位の含有量が5モル%を超える場合は、融点の低下により耐熱性が損なわれ、好ましくない。
【0016】
低結晶性ポリプロピレンにおいて、メルトフローレイトが0.5未満ではシート、フイルムの厚薄精度が低下するため好ましくない。また、メルトフローレイトが20を超える場合は溶融張力が低下し、シート、フイルムの加工性が低下するため好ましくない。特に好ましいメルトフローレイトの範囲は1〜15である。
【0017】
尚、低結晶性ポリプロピレンのメルトフローレイトはゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)による重量平均分子量に換算すると概ね20万〜50万の範囲である。
【0018】
低結晶性ポリプロピレンは、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、4〜15、好ましくは5〜15であることが、良好な加工性、柔軟性、透明性、耐衝撃性を得るため必要である。分子量分布が4未満の場合は、シート、フイルムの加工性が低下し、15を超える場合は樹脂の配向の異方性が大きくなり、シート、フイルムの柔軟性、透明性、耐衝撃性が低下するために好ましくない。
【0019】
低結晶性ポリプロピレンはGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)における1万以下の成分の量が3重量%以下であることが、本発明の積層体において、ブロッキング防止の点から好ましい。
【0020】
本発明において、昇温溶離分別法とは、例えば、Journal of Applied Polymer Science;Applied Polymer Symposium 45,1−24(1990)に詳細に記述されている方法である。まず高温の高分子溶液を、珪藻土を充填剤として用いた充填カラムに導入し、カラム温度を徐々に低下させることにより充填剤表面に融点の高い成分から順に結晶化させ、次にカラム温度を徐々に上昇させることにより、融点の低い成分から順に溶出させて溶出ポリマー成分を分取する方法である。本発明では実施例で示したように測定装置としてセンシュー科学社製SSC−7300型を用い、溶媒:O−ジクロロベンゼン、流速:2.5ml/min、昇温速度:4℃/Hr、カラム:φ30mm×300mmの条件で測定した値を示している。
【0021】
低結晶性ポリプロピレンの20℃未満での溶出成分(A成分)は、特に本発明の積層体の柔軟性、耐熱性を発現するために必要な成分である。すなわち、A成分の量が5重量%未満では柔軟性が損なわれ、また、35重量%を超えると十分な耐熱性が得られないために好ましくない。より優れた柔軟性や耐熱性を発揮させるためには、A成分の量は、特に、10〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
低結晶性ポリプロピレンの20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)は、特に本発明の積層体の透明性と柔軟性と耐熱性のバランスを発現させるために必要な成分である。即ち、B成分の量が10重量%未満ではシート、フイルムとした場合に良好な透明性、柔軟性が達成されず、また、40重量%を超える場合には耐熱性が不足する。より優れた透明性、柔軟性と耐熱性のバランスを発現させるためには、B成分の量は、特に、10〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
低結晶性プロピレンの100℃以上での溶出成分(C成分)は、本発明の積層体の特徴である優れた耐熱性を得るために必要な成分である。すなわち、C成分の量が40重量%未満であるか、またはC成分におけるピークトップ温度が120℃未満ではシート、フイルムとした場合の耐熱性が損なわれ、またC成分の量が80重量%を超える場合には、柔軟性が損なわれるために好ましくない。柔軟性および耐熱性を勘案するとC成分の量は、特に、50重量%を越え、70重量%以下であることが好ましい。更に、より優れた耐熱性を得るためにC成分が115℃以上の溶出成分を60重量%以上有することが好ましい。 低結晶性ポリプロピレンのB成分の量とA成分の重量比(B/A)は0.6以上であり、好ましくは0.7以上である。B成分の量とA成分の重量比(B/A)が0.6未満の場合、本発明の特徴である透明性、柔軟性と耐熱性のバランスが十分発現されず本発明の目的が達成されない。
【0024】
低結晶性ポリプロピレンのA成分、B成分およびC各成分の分子量分布(Mw/Mn)はそれぞれ4〜15であることが良好な加工性を得るために好ましい。
【0025】
低結晶性ポリプロピレンは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定された融点が、150℃以上で且つ、融解熱が100J/g以下であることが好ましい。該融点が150℃未満の場合は、十分な耐熱性が得られず、また該融解熱が100J/gを超える場合には、柔軟性が損なわれ、好ましくない。
【0026】
低結晶性ポリプロピレンは、JIS K7207に準拠した測定方法により求められる熱変形温度が50℃以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の低結晶性ポリプロピレンの製造方法は、本発明の要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0028】
下記触媒成分〔A〕、〔B〕、〔C〕
〔A〕チタン化合物
〔B〕一般式 R1 nAlX3-n
(但し、R1は炭素数1〜10の飽和炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数)で表される有機アルミニウム化合物
〔C〕一般式(I)
R2 n/2Al(OR3)3-n/2 (I)
(但し、R2、R3は同種または異種の炭素数1〜10の飽和炭化水素基、nは1〜4の整数)
または、一般式(II)
【0029】
【化1】
【0030】
(但し、R4はアルキル基、アリール基またはハロゲン原子であり、R5、R6およびR7は水素原子、アルキル基またはアリール基であり、nは0<n<3である。)
で表される有機アルコキシアルミニウム化合物の存在下に、先ず第1段階にプロピレンの単独重合、またはプロピレンと他のα−オレフィンの共重合を水素の不存在下または存在下に行い、次いで第2段階として、上記〔A〕、〔B〕、〔C〕成分の存在下に、更に電子供与体化合物〔D〕を添加して第2段階の重合を行い、第1段階に比べ第2段階の水素濃度を増加させる方法である。
【0031】
上記チタン化合物〔A〕は、オレフィンの重合に使用されることが公知のチタン化合物が何ら制限なく利用される。これらチタン化合物は担持型チタン化合物と三塩化チタン化合物とに大別される。担持型チタン化合物の製法は、公知の方法が何ら制限なく採用される。例えば、特開昭56−155206号公報、同56−136806、同57−34103、同58−8706、同58−83006、同58−138708、同58−183709、同59−206408、同59−219311、同60−81208、同60−81209、同60−186508、同60−192708、同61−211309、同61−271304、同62−15209、同62−11706、同62−72702、同62−104810等に示されている方法が採用される。
【0032】
具体的には、例えば四塩化チタンを塩化マグネシウムのようなマグネシウム化合物と共粉砕する方法、アルコール、エーテル、エステル、ケトン又はアルデヒド等の電子供与体の存在下にハロゲン化チタンとマグネシウム化合物とを共粉砕する方法、又は溶媒中でハロゲン化チタン、マグネシウム化合物及び電子供与体を接触させる方法が挙げられる。 また、三塩化チタン化合物としては公知のα、β、γまたはδ−三塩化チタンが挙げられる。これらの三塩化チタン化合物の調製方法は、例えば、特開昭47−34478号公報、同50−126590、同50−114394、同50−93888、同50−123091、同50−74594、同50−104191、同50−98489、同51−136625、同52−30888、同52−35283等に示されている方法が採用される。
【0033】
次に有機アルミニウム化合物〔B〕は、オレフィンの重合に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用される。例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリーn−デシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム類またはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド等のジエチルアルミニウムモノハライド類またはメチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムハライド類などが挙げられる。 また、有機アルコキシアルミニウム化合物〔C〕は、アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドとアルコール類の反応生成物であり、前記一般式(I)(II)で表される有機アルコキシアルミニウム化合物が何ら制限なく採用される。
【0034】
一般式(I)で表される有機アルコキシアルミニウム化合物としては、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウム−n−ブトキシド、メチルアルミニウムセスキメトキシド、メチルアルミニウムセスキエトキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムクロライドモノエトキシド等が挙げられる。
【0035】
また、一般式(II)で表される有機アルコキシアルミニウム化合物としては、例えば、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジメチルアルミニウム(2−メチルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,4−ジメチルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,6−ジメチルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,4,6−トリメチルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、ジメチルアルミニウム(2,6−ジフェニルフェノキシド)、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2−メチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,4−ジメチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジメチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,4,6−トリメチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2−イソブチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2−t−ブチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジフェニルフェノキシド)等が挙げられる。
【0036】
更に、電子供与体化合物〔D〕は、オレフィンの立体規則性改良に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用される。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、イソプロピルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、フェノール、クレゾール、クミルフェノール、キシレノール、ナフトール等のフェノール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル、アニス酸メチル、フタル酸エチル、炭酸メチル、ブチロラクトン等の有機酸エステル類、メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、イソアミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸アミド、安息香酸アミド、マレイン酸アミド等の酸アミド類、メチルアミン、エチルアミン、ピペリジン、ピリジン、アニリン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ジビニルジメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジt−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジt−アミルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物を挙げることができる。またこれらの電子供与体化合物は複数種を同時に用いることも可能である。
【0037】
本発明で用いられるチタン化合物〔A〕、有機アルミニウム化合物〔B〕、有機アルコキシアルミニウム化合物〔C〕及び電子供与体〔D〕の組み合わせは、(1)担持型チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機アルコキシアルミニウム化合物−電子供与体
(2)三塩化チタン化合物−ジエチルアルミニウムモノハライド−有機アルコキシアルミニウム化合物−電子供与体
(3)三塩化チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機アルコキシアルミニウム化合物−電子供与体
および、
(4)担持型チタン化合物−三塩化チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機アルコキシアルミニウム化合物−電子供与体
の組み合わせが、他の製造条件との組み合わせにおいて低結晶性ポリプロピレンの構成を満足するために特に好ましい。
【0038】
上記の各成分の存在下に行う本重合に先立ち、同成分の存在下においてプロピレンの予備重合を行うことが、得られる重合体パウダーの粒子性状を高流動性とすることができるために好適である。
【0039】
予備重合においては、前記〔A〕及び〔B〕、更に必要に応じて〔D〕を用いた系に加えて、本重合で得られる低立体規則性ポリプロピレンの低分子量成分の生成量を低減する目的で、下記一般式(I)で示されるヨウ素化合物〔E〕を添加することも可能である。
【0040】
〔E〕ヨウ素化合物
R−I (I)
(但し、Rはヨウ素原子または炭素数1〜7のアルキル基またはフェニル基である。)
これらの各成分の予備重合での使用量は、触媒の種類、重合の条件に応じて異なるため、これらの各条件に応じて最適の使用量を予め決定すればよい。一般的に好適に使用される範囲を例示すれば下記の通りである。
【0041】
即ち、予備重合に使用される有機アルミニウム化合物〔B〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対してAl/Ti(モル比)で0.1〜100、好ましくは0.1〜20の範囲が、また必要に応じて使用される有機アルコキシアルミニウム化合物〔C〕はチタン化合物〔A〕に対して〔C〕/Ti(モル比)で0.01〜100、好ましくは0.01〜10の範囲が、また、電子供与体化合物〔D〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対して〔D〕/Ti(モル比)で0.01〜100、好ましくは0.01〜10の範囲がそれぞれ好適である。また、必要に応じて使用されるヨウ素化合物〔E〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対してI/Ti(モル比)で0.1〜100、好ましくは0.5〜50の範囲である。
【0042】
該予備重合で好適に使用し得るヨウ素化合物を具体的に示すと次の通りである。例えば、ヨウ素、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨードベンゼン、p−ヨウ化トルエン等である。特に、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルが好適である。
【0043】
前記触媒成分の存在下にα−オレフィンを重合する予備重合量は予備重合条件によって異なるが、一般に0.1〜500g/g・Ti化合物、好ましくは1〜100g/g・Ti化合物の範囲であれば十分である。また予備重合で使用するα−オレフィンはプロピレン単独でもよく、該重合パウダーの物性に悪影響を及ぼさない範囲で、他のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1等をプロピレンと混合しても良い。また予備重合を多段階に行い、各段階で異なるα−オレフィンモノマーを予備重合させることもできる。各予備重合の段階で水素を共存させることも可能である。
【0044】
該予備重合は通常スラリー重合を適用させるのが好ましく、溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素を単独で、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
【0045】
該予備重合温度は、−20〜100℃、特に0〜60℃の範囲が好ましい。予備重合時間は、予備重合温度及び予備重合での重合量に応じ適宜決定すればよく、予備重合における圧力は限定されるものではないが、スラリー重合の場合は、一般に大気圧〜5kg/cm2G程度である。該予備重合は、回分、半回分、連続のいずれの方法で行ってもよい。
【0046】
前記予備重合に次いで本重合が実施される。低結晶性ポリプロピレンの本重合においては、本重合を条件の異なる2段階以上の多段重合で行うことが特定の分子量分布と結晶性分布を満足する為に好ましい。
【0047】
本重合の第1段階で使用される有機アルミニウム化合物〔B〕の使用量は、チタン化合物含有予備重合体中のチタン原子に対し、Al/Ti(モル比)で、1〜1000、好ましくは2〜500の範囲である。また、有機アルコキシアルミニウム化合物〔C〕の使用量は、上記有機アルミニウム化合物〔B〕1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.1〜10モルである。更に、本重合の第2段階で使用される電子供与体〔D〕は、第1段階で使用される有機アルミニウム化合物〔B〕1モルに対して0.001〜10モル、好ましくは0.01〜1モルの範囲である。
【0048】
第1段階の重合においては、予備重合で得られたチタン化合物含有予備重合体と前記〔B〕、〔C〕の重合系への添加順序は特に限定されるものではなく、また、各成分が予め混合されたものを使用することもできる。
【0049】
第1段階でのプロピレンの重合は、プロピレン単独または本発明の要件を満足する範囲内でのプロピレンと他のα−オレフィンの混合物を供給して、水素不存在下または存在下で実施し、引き続き、電子供与体化合物〔D〕と水素を添加して第2段階の重合を実施すればよい。
【0050】
第1段階と第2段階で水素濃度の異なる条件で重合を行うことが重要である。第2段階の重合においては、第1段階よりも水素濃度を増加さることで、第1段階で重合するポリマーよりも低い分子量の成分を重合する。更に、第2段階において追配される電子供与体は第2段階で重合するポリマーの結晶性を第1段階のポリマーより増加させ、以上の効果から特定の分子量分布と結晶性分布を満足する低結晶性ポリプロピレンが得られる。
【0051】
第1段階の重合を水素の存在下に行う場合は、得られる低立体規則性ポリプロピレン重合体の流動性と低分子量成分を減少する為に、第1段階で重合するポリマーの重量平均分子量が70万以上となるように水素濃度を設定する事が好ましい。
【0052】
第1段階及び第2段階のプロピレン重合の代表的な条件を例示すると、重合温度は、80℃以下、更に20〜70℃の範囲から採用することが好適である。また、重合はプロピレン自身を溶媒とするスラリー重合、気相重合、溶液重合等の何れの方法でもよい。プロセスの簡略性及び反応速度、また生成する重合体パウダーの粒子性状を勘案するとプロピレン自身を溶媒とするスラリー重合が好ましい態様である。重合形式は回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でもよい。
【0053】
本重合の終了後には、重合系からモノマーを蒸発させ低結晶性ポリプロピレンを得ることができる。この低結晶性ポリプロピレンは、炭素数7以下の炭化水素で公知の洗浄又は向流洗浄を行うことができる。
【0054】
低結晶性プロピレンの製造方法は上記した重合法だけでなく、本発明の要件を満足する限り、別途重合して得られた高結晶性ポリプロピレンと低結晶性ポリプロピレンをブレンドしてもよいが、良好な透明性を得るためには重合法により製造することが好ましい態様となる。
【0055】
低結晶性ポリプロピレンには、本発明の効果を損なわない限り、酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、核剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を添加できる。また、上記添加剤に加えて有機過酸化物を添加し、本発明の要件を満足する範囲で分子量の調節を行ってもよい。
【0056】
本発明の両外層に使用される非粘着性熱可塑性樹脂は、上記低結晶性ポリプロピレン(a)よりなる基材層に耐ブロッキング性を与えるため、昇温溶離分別法により分別された横軸を溶出温度(℃)縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分の量(A成分)が10重量%以下であるポリオレフィン系樹脂や、その他、該低結晶性ポリプロピレン(a)と接着性が良好なポリアミドなどが使用される。
【0057】
上記A成分が10重量%以下であるポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体または共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
ここで、オレフィンの単独重合体としては、エチレン,プロピレン,ブテン−1,ペンテン−1,ヘキセン−1,オクテン−1,4−メチルペンテン−1,3−メチルブテン−1等のα−オレフィンの単独重合体を挙げることができる。
【0059】
本発明の目的である適度な柔軟性を有し、透明性、耐衝撃性、耐熱性のバランスに優れ、かつ耐ブロッキング性の良好な積層体を提供するため、上記A成分が10重量%以下であるポリオレフィン系樹脂のうち、特に、プロピレンと他の単量体とのランダム共重合体が好適に使用される。
【0060】
具体的には、エチレン単位の含量が1〜10モル%のプロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン単位の含量が1〜9モル%、ブテン−1単位の含量が1〜20モル%で、エチレン単位とブテン−1単位との総量が25モル%を越えないプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体等が挙げられる。
【0061】
また、オレフィンの共重合体としては、上記したα−オレフィン同士の共重合体の他、基材層との積層により種々の特性を付加するために、α−オレフィンと共重合可能な他の単量体とα−オレフィンとの共重合体を使用しても良い。かかる他の単量体としては、酢酸ビニル;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルを挙げることができる。
【0062】
また、α−オレフィンと共重合可能な他の単量体の少なくとも一部として、反応性基を有する単量体を使用することにより、接着性をより向上することができる。上記反応性基としては具体的には、カルボキシル基,ヒドロキシ基,エポキシ基等を挙げることができる。該反応性基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,シトラコン酸,無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸等のカルボキシル基またはその無水物基を有する単量体;ビニルアルコール,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有する単量体を挙げることができる。
【0063】
また、本発明において、非粘着性熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、核剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を添加できる。また、耐ブロッキング性等、本発明の効果を損なわない限り、該ポリオレフイン系樹脂に、石油樹脂をブレンドしても良い。
【0064】
本発明の積層体の製膜方法は特に限定されるものではない。例えば、基材層をTダイ法やインフレーション法など公知の方法でシートやフイルムを製膜し、非粘着性熱可塑性樹脂層を押出ラミネートや、ドライラミネートして積層体とする方法や、基材層と非粘着性熱可塑性樹脂層とをTダイ法やインフレーション法など公知の方法より共押出することにより積層体とする方法などが挙げられる。
【0065】
本発明の積層体には、印刷適性を付与するため一般的に知られている表面処理方法を何ら制限なく採用することができる。例えば、空気や窒素雰囲気下でのコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、アクリル系樹脂,ウレタン系樹脂,ポリビニルアルコール等の各種表面コート処理等などが挙げられる。
【0066】
本発明の積層体は、基材層の両外層に非粘着性熱可塑性樹脂層が積層されるが、該非粘着性熱可塑性樹脂層は、本発明の効果である柔軟性・透明性・耐衝撃性・耐熱性・耐ブロッキング性が損なわれない限り両外層に一層以上積層されていても良い。
【0067】
本発明の積層体の厚みは、特に限定されないが使用用途を勘案すると10〜2000μmの範囲である。
【0068】
本発明の積層体の厚みに対して、非粘着性熱可塑性樹脂層の合計厚みの割合は、柔軟性、耐熱性および耐ブロッキング性の点から20%〜80%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30%〜70%の範囲内である。
【0069】
非粘着性熱可塑性樹脂層の合計厚みの割合が20%未満であると柔軟性、耐熱性は良好となるものの、耐ブロッキング性が低下するため好ましくないばかりか、シート、フイルムに加工した場合、非粘着性熱可塑性樹脂層の肌荒れが発生しやすくなり、外観上好ましくない。一方、非粘着性熱可塑性樹脂層の合計厚みの割合が80%を超えると耐ブロッキング性は向上するものの、柔軟性、耐熱性が低下するため好ましくない。
【0070】
本発明の積層体は、コーティング、ドライラミネート、押出ラミネート、シリカ蒸着、アルミナ蒸着等の二次加工により機械的強度、ガスバリアー性、印刷特性、ヒートシール性などの機能を付与させても良い。
【0071】
【発明の効果】
本発明の積層体は、適度な柔軟性を有し、透明性、耐衝撃性、耐熱性のバランスに優れ、かつ耐ブロッキング性が良好であり、従来の熱可塑性エラストマーや軟質塩化ビニール樹脂あるいはポリビニルアルコールが用いられている種々の分野や既存のシートやフイルムにおける柔軟化等に好適に用いることができる。例えば、自動車内装材、家電・電線材として各種絶縁シート、土木建材分野における防水シート、建材や家電製品等の化粧シート、壁紙、テーブルクロス、潅漑用ホース、化粧品包装用シート、レザー、農業用フイルム、ファスニングテープ、粘着テープ、文具、繊維包装フイルム、ラベル、ストレッチフィルム、保護フイルム、電子部品包装フイルム、食品包装フイルム等に用いることができる。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例において用いた測定方法について説明する。
【0073】
(1)昇温溶離分別法
(株)センシュー科学社製、SSC−7300型を用い、以下の測定条件により行った。
【0074】
溶媒 ;O−ジクロロベンゼン
流速 ;2.5ml/min
昇温速度 ;4℃/Hr
サンプル濃度 ;0.7wt%
サンプル注入量;100ml
検出器 ;赤外検出器、波長3.41μm
カラム ;φ30mm×300mm
充填剤 ;Chromosorb P 30〜60mesh
カラム冷却速度;2.0℃/Hr
(2)メルトフローレイト(以下、MIと略す。)
ASTM D−1238に準拠した。
【0075】
(3)分子量分布
ゲルパーミューションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した。センシュー科学社製SSC−7100によりo−ジクロロベンゼンを溶媒として135℃で行った。使用したカラムはShodex製UT807、806Mである。校正曲線は標準試料として、重量平均分子量が950、2900、1万、5万、49.8万、270万、490万のポリスチレンを用いて作成した。
【0076】
(4)溶融張力
東洋精機製作所製MT測定装置を用い、230℃に保持されたシリンダーに直径2.095mmのオリフィス、ペレットピストンを挿入し、6分間保持した後、押出速度10mm/min、巻取速度25m/minでの溶融張力を測定した。
【0077】
(5)透明性(ヘーズ値)
JIS K 6714に準じて測定した。
【0078】
(6)引張弾性率
試料を10mm幅の短冊状に切断し、測定長を20mmとして引張試験機によって引張速度20mm/分、チャート速度2000m/分でチャート紙に記録した。基点より20mmの点で垂線を引き、接線との交点の強度を読み取り、下式により引張弾性率を算出した。
【0079】
引張弾性率(MPa)=[強度(Kg)×試料長(mm)×チャート速度(mm/分)]÷[引張速度(mm/分)×20mm×フイルム厚み(mm)×フイルム幅(mm)]×9.807
(7)衝撃強度
0℃に保ったチャンバー内で東洋精機製フイルムインパクトテスターを用いて測定した。測定サンプルをホルダーに装着後、衝撃頭で打ち抜き、その強度を衝撃強度として示した。
【0080】
(8)ブロッキング強度
2枚のサンプル(12×12cm)を重ね合わせ、10Kgの荷重をかけて温度50℃の雰囲気に72時間放置後、重ね合わせ部分が3×4cmとなるようサンプルを切り出し、引張試験機(速度:100mm/min)で剪断剥離強度を測定した。
【0081】
(9)垂れ下がり時間
クランプ枠(400mm×400mm)に測定サンプルを挟んで、300℃に設定された遠赤外線ヒーターで測定サンプルを上下から加熱した。加熱開始の時点から測定サンプルの中心部が20mm垂れ下がるまでの時間を測定した。
【0082】
本発明の基材層に用いられる低結晶性ポリプロピレンについて製造例及び比較製造例を挙げて説明するが、該低結晶性ポリプロピレンはこれらの製造例に限定されるものではない。
【0083】
製造例1
(予備重合)
撹拌機を備えた内容積1リットルのガラス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、ヘプタン400mlを装入した。反応器内温度を20℃に保ち、酢酸ブチル0.18mmol、ヨウ化エチル22.7mmol、ジエチルアルミニウムクロライド18.5mmol、及び三塩化チタン(丸紅ソルベイ化学社製)22.7mmolを加えた後、プロピレンを三塩化チタン1g当たり3gとなるように30分間連続的に反応器に導入した。なお、この間の温度は20℃に保持した。プロピレンの供給を停止した後、反応器内を窒素ガスで十分に置換し、得られたチタン含有ポリプロピレンを精製n−ヘキサンで4回洗浄した。分析の結果、三塩化チタン1g当たり2.9gのプロピレンが重合されていた。
【0084】
(本重合)
N2置換を施した300リットルの重合槽に、液体プロピレンを100kg、ジエチルアルミニウムクロライド50.56mmol、エチルアルミニウムセスキエトキシド(Et1.5Al(OEt)1.5)50.56mmolを加え、重合槽の内温を70℃に昇温した。予備重合で得られたチタン化合物含有ポリプロピレンを三塩化チタンとして6.32mmol加え、70℃で2時間のプロピレンの重合を行った(第1段階)。次に酢酸ブチル1.01mmolを加え、水素を気相中の濃度が1mol%となるように挿入し、1時間の重合を行った(第2段階)。
【0085】
未反応モノマーをパージし、ポリマーを得た。得られたポリマーは70℃で1時間減圧乾燥した。次に酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤及び1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.035重量%を添加して混合した後、50mmφ押出機を用い250℃で押出してペレット状とし、物性測定に供した。結果を表1に示した。また、図1に昇温分離分別法による溶出曲線を示した。
【0086】
製造例2
製造例1の本重合において、エチルアルミニウムセスキエトキシドの添加量を25.28mmolとし、造粒時に用いる1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.01重量%とした以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0087】
製造例3、4
製造例1の本重合の第2段階で使用する酢酸ブチルの量を10.10mmolとし、造粒時に1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.01重量%用いた(製造例3)および1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.035重量%用いた(製造例4)以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0088】
製造例5
製造例1の本重合において、エチルアルミニウムセスキエトキシドの代わりにジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0089】
製造例6
製造例1の本重合において、第1段階の重合時間を90分とし、第2段階で使用する酢酸ブチルの量を2.02mmolとした以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0090】
比較製造例1、2
製造例1の本重合第2段階において、水素を用いずに重合を行い、造粒時に1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.04重量%用いた(比較製造例1)および0.02重量%用いた(比較製造例2)以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0091】
比較製造例3
製造例1の本重合において酢酸ブチルの使用量を0.56mmolとした以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0092】
比較製造例4
製造例1の本重合において、第2段階の重合時間を20分とし、造粒時に1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.03重量%用いた以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0093】
比較製造例5
製造例1の本重合において、第1段階の重合時に酢酸ブチルを1.01mmol使用し、造粒時に1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.02重量%用いた以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0094】
比較製造例6
製造例1の本重合において、エチルアルミニウムセスキエトキシドを使用せず、第1段階の重合時間を30分とし、第2段階で使用する酢酸ブチルの量を10.10mmolとした以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0095】
実施例1
3台の押出機を用い、製造例1で得られた低結晶性ポリプロピレンが中心層、昇温溶離分別法により分別された溶出曲線に於いて、A成分の量が1重量%であるエチレン・プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体が両外層となるようTダイ押出機により、230℃の樹脂温度で25℃のチルロール上に押出し、引取機により引き取って、中心層が50μm、両外層が各25μmからなる全層厚み100μmの積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0096】
実施例2
3台の押出機を用い、製造例2で得られた低結晶性ポリプロピレンが中心層、昇温溶離分別法により分別された溶出曲線に於いて、A成分の量が1重量%であるエチレン・プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体が両外層となるようTダイ押出機により、230℃の樹脂温度で25℃のチルロール上に押出し、引取機により引き取って、中心層が300μm、両外層が各100μmからなる全層厚み500μmの積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0097】
実施例3
積層体の厚みにおいて、中心層が70μm、両外層が各15μmからなる全層厚み100μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0098】
実施例4
昇温溶離分別法により分別された溶出曲線に於いて、A成分の量が8重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体を両外層に用いた以外は、実施例1と同様にして中心層が50μm、両外層が各25μmからなる全層厚み100μmの積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0099】
比較例1
製造例1で得られたポリプロピレンをTダイ押出機により、230℃の樹脂温度で25℃のチルロール上に押出し、引取機により引き取り、100μmの単層フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表2に示した。
【0100】
比較例2
中心層を比較製造例1で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0101】
比較例3
中心層を比較製造例2で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0102】
比較例4
中心層を比較製造例3で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0103】
比較例5
中心層を比較製造例4で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0104】
比較例6
中心層を比較製造例5で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0105】
比較例7
中心層を比較製造例6で得られたポリプロピレンとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0106】
比較例8
中心層を表1に示したエチレン、プロピレン、ブテン−1成分より構成されてなる軟質ポリオレフィンとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0107】
比較例9
中心層を表1に示したエチレン、プロピレン、ブテン−1成分より構成されてなる軟質ポリオレフィンとした以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0108】
比較例10
昇温溶離分別法により分別された溶出曲線に於いて、A成分の量が13重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体を両外層に用いた以外は、実施例1と同様にして中心層が50μm、両外層が各25μmからなる全層厚み100μmの積層体を得た。得られた積層体の物性を表2に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 製造例1の低結晶性ポリプロピレンの昇温溶離分別法により分別された溶出曲線である。
Claims (3)
- 下記1)〜4)の構成を満足する低結晶性ポリプロピレン(a)よりなる層を基材層とし、該基材層の両外層に非粘着性熱可塑性樹脂よりなる層が積層されてなる積層体。
低結晶性ポリプロピレン(a):
1)プロピレン単独重合体、またはプロピレン以外のα−オレフィン単位の含有量が5モル%以下のプロピレンとα−オレフィンとの共重合体
2)メルトフローレイトが0.5〜20g/10分
3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が4〜15
4)昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分(A成分)の量が5〜35重量%、20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)の量が10〜40重量%、100℃以上での溶出成分(C成分)が40〜80重量%、A成分、B成分およびC成分の合計が100重量%、B成分とA成分との重量比(B/A)が0.6以上で、且つ、C成分に於けるピークトップ温度が120℃以上 - 非粘着性熱可塑性樹脂が、昇温溶離分別法により分別された横軸を溶出温度(℃)縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分の量(A成分)10重量%以下であるポリオレフィン系樹脂、ポリアミドである請求項1記載の積層体。
- 非粘着性熱可塑性樹脂よりなる両外層の厚み合計の割合が20%〜80%の範囲である請求項2記載の積層体。
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