JP3821227B2 - 有機金属化合物の気化供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(ICP)への有機金属化合物の気化供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、化合物半導体の結晶成長法として有機金属化合物を用いた有機金属気相成長法(MOCVD)が注目を集めている。MOCVD法は、化合物半導体のエピタキシャル薄膜を作製する上でよく用いられる結晶成長手段の一つであって、例えば(CH3)3Ga、(CH3)3In、或いは(CH3)3Alなどの有機金属化合物を原料とし、その熱分解反応を利用して薄膜の結晶成長を行う方法である。
【0003】
MOCVDにより得られる半導体薄膜の品質は、原料として用いられる有機金属化合物の化学的純度により大きく左右されるため、この技術が開発された当初から現在に至るまで、常により高純度な有機金属化合物が求められ続けられてきた。
【0004】
しかしながら、有機金属化合物は化学的な活性と毒性が非常に強いためにその取り扱いが困難で、未だ有機金属化合物中の微量不純物分析法が確立されたとは言い難い状況にある。
【0005】
現在までに報告されている有機金属化合物の微量不純物分析法は、分析装置としてはICPを用いたものが殆どであるが、ICP測定時の有機金属化合物の形態並びにICPへの有機金属化合物の導入方法・装置としては、大別して以下に示す6種類の方法が知られている。
▲1▼加水分解法:有機金属化合物を加水分解した後、得られた水溶液をネブライザーでエアロゾルにしてICPトーチまで供給する方法。
[例えば、Journal of Crystal Growth 77(1986)47−54]
▲2▼溶液法:キシレン等の溶媒で希釈した有機金属化合物の混合溶液を、ネブライザーでエアロゾルにしてICPトーチまで供給する方法。
[例えば、ANALYST,MAY 1990,VOL.115]
▲3▼Flow Injection法:有機金属化合物をジエチルエーテルと混合し、一旦アダクトを形成させた後、ネブライザーに通じてエアロゾルとする。次に、そのエアロゾルをMembrane drying tubeに導入することにより、ジエチルエーテルを系外に除去し、残った有機金属化合物だけをICPトーチに供給するとした方法。
[例えば、Spectrochimica Acta.Vol.44B,No.10,pp.1041−1048,1989]
▲4▼Electrothermal Vaporization法:瞬時に3,000℃程度にまで昇温可能な加熱器内に有機金属化合物を入れ、発生した有機金属化合物の蒸気をキャリアーガスで同伴し、直接ICPトーチに導入する方法。[例えば、JOURNAL OF ANALYTICAL ATOMIC SPECTROMETRY,DECEMBER 1994,VOL.9]
▲5▼直接蒸気導入法:SUS製容器内に封入された有機金属化合物にキャリアーガスを吹き込み、得られた有機金属化合物の蒸気を直接ICPトーチに導入する方法。
[例えば、Journal of Electronic Materials,Vol.18,No.5,1989]
▲6▼Exponential Dilution法:所定量の有機金属化合物を加熱器内に入れて加熱し、発生した有機金属化合物の蒸気をキャリアーガスにより直接ICPトーチに導入する方法。
[例えば、EUROPIAN PATENT APPRICATION,EP 0447747A2]
【0006】
上記6種類の方法には一長一短があり、いずれも完成された有機金属化合物の分析法/ICPへの導入法とは言えないが、i)蒸気圧を有する有機不純物の経時的な濃度変化を直接観測することができる、ii)有機金属化合物の前処理が不要、iii)有機金属化合物を希釈せずに分析できるため、高感度な分析が可能、iv)測定に必要なサンプル量が微少量で済む等の理由から、▲5▼の直接蒸気導入法が脚光を浴びつつある。
【0007】
しかしながら、このような直接蒸気導入法を用いると、原料容器の温度を精密に制御してもキャリアーガスの温度が原料容器内と異なる場合があり、有機金属化合物の蒸気圧制御が難しい。
【0008】
また、気化、同伴される有機金属化合物の質量流量を測定する手段がないため、供給量の変動を検知することができない。更に、供給量を設定する上で最も重要な指針となる有機金属化合物の蒸気圧曲線図が、同一の化合物に対して多数存在することがあり、目的とする供給量を得るのに必要な温度が正確に決まらないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
欧州特許出願公開第447747号明細書
【非特許文献1】
Journal of Crystal Growth 77(1986)47−54
【非特許文献2】
ANALYST,MAY 1990,VOL.115
【非特許文献3】
Spectrochimica Acta.Vol.44B,No.10,pp.1041−1048,1989
【非特許文献4】
JOURNAL OF ANALYTICAL ATOMIC SPECTROMETRY,DECEMBER 1994,VOL.9
【非特許文献5】
Journal of Electronic Materials,Vol.18,No.5,1989
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、その目的は非常に高感度で再現性のあるICP分析が可能な有機金属化合物の気化供給装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、
1)有機金属化合物を充填した原料容器に、キャリアーガス源からマスフロコントローラーを経由したキャリアーガス導入経路と、
2)前記キャリアーガスにより気化、同伴された有機金属化合物ガスをインラインモニターまで輸送する有機金属化合物ガス経路とを接続し、
3)更に、前記インラインモニターを経てICPの試料導入口に通じる有機金属化合物ガス経路に、校正用標準ガスの流量制御に必要なマスフロコントローラーと、その濃度を任意に調整するための希釈用マスフロコントローラーを設置した校正用標準ガス経路を接続させる
ことにより、非常に高感度で再現性のあるICP分析を行うことができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は以下の気化供給装置を提供する。
(I)(1)有機金属化合物が収容された原料容器と、キャリアーガス源と、赤外吸収セルが内蔵され、有機金属化合物ガスがこの赤外吸収セルを通過した際に該有機金属化合物特有の赤外吸収を赤外線検出器で測定し、該有機金属化合物ガス濃度が設定値になっているか否かを確認するインラインモニターと、前記原料容器とキャリアーガス源とを接続し、キャリアーガスの流量を制御するマスフロコントローラーが介装されたキャリアーガス導入経路と、
(2)前記原料容器とインラインモニターとを接続し、前記キャリアーガスにより気化、同伴された有機金属化合物ガスが輸送される有機金属化合物ガス経路と、
(3)誘導結合型プラズマ発光分光分析装置と、前記インラインモニターと前記分析装置の試料導入口とを接続する試料ガス経路と、
(4)更に校正用標準ガスが充填されたガスボンベと、このガスボンベと前記試料ガス経路の所用部とを接続し、校正用標準ガスの流量を制御する標準ガス用マスフロコントローラーが介装された標準ガス経路と、
(5)この標準ガス経路と標準ガス用マスフロコントローラー介装位置より下流側で連結し、前記校正用標準ガスの濃度を調整する希釈用ガスが流通し、この希釈用ガスの流量を制御する希釈用マスフロコントローラーが介装された希釈ガス経路と
を具備していることを特徴とする有機金属化合物の気化供給装置、
(II)複数の校正用標準ガスボンベが配設されていると共に、これらの標準ガスの流量を制御する標準ガスマスフロコントローラーがそれぞれ介装された複数の標準ガス経路と、これら標準ガス経路にそれぞれ連結された希釈用マスフロコントローラーが、それぞれ介装された複数の希釈ガス経路を備えた(I)記載の気化供給装置、
(III)有機金属化合物ガス経路に、希釈キャリアーガス用マスフロコントローラーが介装された有機金属化合物濃度を希釈するキャリアーガスが流通するバイパス経路が接続された(I)又は(II)記載の気化供給装置。
【0013】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下、本発明につき、図面を参照して更に詳しく説明する。
図1は、本発明の第1発明に係る有機金属化合物の気化供給装置の一実施例を示し、図中1は有機金属化合物(MO)を収容する原料容器、2はアルゴンガス等のキャリアーガス源、3はインラインモニターである。また、G1は原料容器1とキャリアーガス源2とを接続し、上流側から下流側に向けて順次調圧器4、開閉バルブV1、キャリアーガスの流量を制御するマスフロコントローラーMFC−1と、開閉バルブV2がそれぞれ介装されたキャリアーガス導入経路であり、G2は原料容器1とインラインモニター3とを接続し、開閉バルブV3が介装された有機金属化合物ガス経路である。
【0014】
なお、原料容器1は、恒温槽5内に配設されている。また、前記キャリアーガス導入経路G1の原料容器側の端部はディップチューブとして構成され、その先端は有機金属化合物液中に浸漬されている。更に、キャリアーガス導入経路G1のバルブV2の上流側と有機金属化合物ガス経路G2のバルブV3の下流側との間が、開閉バルブV4を介装する連結管G3により接続されている。
【0015】
10はICP装置であり、このICP装置10の試料導入口と前記インラインモニター3とは、開閉バルブV5を介装する試料ガス経路G4により接続されている。なお、図において、11はプラズマトーチ、12はインジェクター、13はRFコイル、14はプラズマ炎を示す。
【0016】
また、6は校正用標準ガスが充填されたガスボンベで、このガスボンベ6は、標準ガス経路G5によって前記試料ガス経路G4の開閉バルブV5介装位置より上流側部位と接続されている。この場合、経路G5には上流側より下流側に向けて順次調圧器4’、校正用標準ガスの流量を制御する標準ガス用マスフロコントローラーMFC−2、開閉バルブV6がそれぞれ介装されている。ここで、前記標準ガス経路G5の前記調圧器4’介装位置より上流側には、一端がキャリアーガス源2と接続され、開閉バルブV7が介装されたキャリアーガス供給経路G6の他端が連結されていると共に、この経路G6の前記バルブV7介装位置の上流側位置と、前記標準ガス経路G5のMFC−2介装位置とバルブV6介装位置との間の部位とは、上流側より下流側に向けて順次開閉バルブV8、希釈用マスフロコントローラーMFC−3、開閉バルブV9がそれぞれ介装された希釈ガス経路G7により連結されている。
【0017】
更に、前記標準ガス経路G5の希釈ガス経路G7連結位置とバルブV6介装位置との間の部位には、開閉バルブV10が介装されたパージ経路G8が分岐されている。
【0018】
なお、前記試料ガス経路G4のバルブV5介装位置より上流側部にも、開閉バルブV11が介装されたパージ経路G9が分岐されている。
【0019】
インラインモニター3は、有機金属化合物ガス経路G2内の有機金属化合物ガス濃度を測定する装置で、ICPに供給する有機金属化合物ガス濃度が設定値になっているかどうかを確認するために配置されている。その測定原理としては、前記インラインモニター3に内蔵されている赤外吸収セルに有機金属化合物ガスを通過させることにより、その有機金属化合物特有の赤外吸収を赤外線検出器で測定し、有機金属化合物ガス濃度に変換している。ここで濃度を計測された有機金属化合物ガスは、そのままガス経路G4を経由してICP10に導入されるが、有機金属化合物ガス経路内の有機金属化合物ガスの濃度を更に安定させるためには、必要に応じ開閉バルブV5を閉弁、開閉バルブV11を開弁した状態で経路G9よりガスパージを行うことが効果的である。
【0020】
また、バルブ切り替えの際は多少の圧力変動が生じる可能性があるが、それを軽減させるためには、図2に示したように、開閉バルブV5とV11を一体化した2連式ブロックバルブ(空気作動式)を用いることで、圧力変動もなく瞬時に供給経路を変更することが可能となる。
【0021】
前記校正用標準ガスは、有機金属化合物中に残存する不純物濃度を定量するために必要な基準ガスであるが、分析対象となる不純物と同じ元素を含有している化合物を超高純度アルゴンガスで希釈し、それをAPI−MS(Atmosphere Pressure Ionization−Mass Spectrometer)等の高性能分析装置でガス濃度を精密に分析することにより作製される。この校正用標準ガスは、標準ガス用マスフロコントローラーMFC−2を通って経路G5、更にG4よりICPに導入されるが、この際に前記標準ガス用マスフロコントローラーMFC−2でICPへの供給ガス流量を任意に変えることで、分析対象となる不純物濃度の検量線(不純物濃度対ICPの発光ピーク強度)を作成することができる。
【0022】
前記校正用標準ガスの校正用標準ガス経路G5内濃度を更に安定させるためには、開閉バルブV6を閉弁、開閉バルブV10を開弁した状態で経路G8よりガスパージを行うことが効果的である。また、バルブ切り替えの際に多少の圧力変動が生じる可能性があるが、それを軽減させるためには図3のように、開閉バルブV6とV10を一体化した2連式ブロックバルブ(空気作動式)を用いるとよい。
【0023】
有機金属化合物ガスや校正用標準ガスを配管経路に通じて輸送すると、配管内壁に有機金属化合物や金属成分が吸着されるため、これがメモリー効果となって分析結果に悪影響を与えることがある。そこで、この影響をできるだけ排除するために、前記インラインモニター3の下流側の試料ガス経路G4の配管及び標準ガス経路G5のMFC−2介装位置より下流側の配管には、テープヒーター等の加熱器7を付設することが好ましい。
【0024】
また、校正用標準ガスの濃度を再調整したり、配管内のメモリー効果を瞬時に消し去るために、開閉バルブV8から希釈用マスフロコントローラーMFC−3、開閉バルブV9を通じてパージガスを流すことが効果的である。また、キャリアーガス源から開閉バルブV7を経由して経路G5に接続する経路G6は、校正用標準ガスを交換する際にパージ用ラインとして使用することができる。
【0025】
図4は、第2発明の実施例を示す。この例は、2種の校正用標準ガスをそれぞれ充填するガスボンベ6a,6bをそれぞれ配設したもので、これらガスボンベ6a,6bには、それぞれ上流側より下流側に向けて順次調圧器4’a,4’b、標準ガス流量を制御する標準ガス用マスフロコントローラーMFC−2a,MFC−2b、及び開閉バルブV6a,V6bを介装する標準ガス経路G5a,G5bの一端が接続されていると共に、これら経路G5a,G5bの他端は標準ガス供給経路G5cの一端に接続され、この経路G5cの他端が前記試料ガス経路G4のバルブV5介装位置より上流側の部位に接続されている。
【0026】
また、それぞれ開閉バルブV8a,V8b、希釈用マスフロコントローラーMFC−3a,MFC−3b、開閉バルブV9a,V9bを介装する希釈ガス経路G7a,G7bによりそれぞれキャリアーガス源2と前記標準ガス経路G5a,G5bの調圧器4’a,4’b介装位置より上流側部位との間を接続する経路G6a,G6bの開閉バルブV7a,V7b介装位置より上流側部位と、標準ガス経路G5a,G5bのMFC−2a,MFC−2b介装位置とバルブV6a,V6b介装位置との間の部位が連結されている。更に、バルブV10a,V10bを介装するパージ経路G8a,G8bが分岐しており、その他の構成は図1と同様である。
【0027】
なお、校正用標準ガスの種類は3種以上でもよく、この場合、それらのボンベに上記と同様の標準ガス経路を設ければよい。
【0028】
前記校正用標準ガスは、分析対象となる不純物の種類に対応するため、最終的には分析に必要な元素の数だけ必要となる。装置の簡略化のためには、測定対象となる全ての金属含有化合物を一本の圧力容器に仕込んだ、多元素校正用標準ガスを作製するべきであるが、化合物の種類によっては化学反応で不揮発性の化合物を生じたり、或いは別の化合物に変わったりすることもある。
【0029】
そこで、互いに混合しても安定な化合物同士を幾つかのグループに分割する必要性が生じ、複数の校正用標準ガスとそれに応じた供給経路が要求されることになるが、ICPの操作性等を考慮すると前記校正用標準ガスの種類と気体用マスフロコントローラーの使用台数並びにガス経路は2−5系統であることが望ましい。
【0030】
なお、校正用標準ガスの流量を制御する気体用マスフロコントローラーの流量は0.1〜100ml/毎分、より好ましくは1〜10ml/毎分の範囲である。
【0031】
図5は、別の実施例を示すもので、この例は前記経路G6より有機金属化合物ガス経路を流れる有機金属化合物の濃度を希釈するキャリアーガスが流通するバイパス経路G10を分岐させたもので、この経路G10には、上流側より下流側に向けて順次開閉バルブV12、希釈キャリアーガス用マスフロコントローラーMFC−4、開閉バルブV13がそれぞれ介装され、経路G10の下流端部が有機金属化合物ガス経路G2の経路G3連結位置より下流側の部位に接続されているもので、その他の構成は図1の装置と同様である。
【0032】
上記装置を用いて分析を行う場合は、調圧器4でキャリアーガスの圧力を所定の値に調整した後、開閉バルブV1を開き、事前にキャリアーガス流量を設定したマスフロコントローラーMFC−1にキャリアーガスを通じる。次に開閉バルブV2,V3の閉を確認した後、開閉バルブV4とV5を開き、キャリアーガスをガス経路G1,G3、インラインモニター3に通じて、更に経路G4を経由してICPのインジェクター部に導入する。この状態で行ったICPの測定結果をブランクとする。
【0033】
恒温槽内の温度が所定の値になっていることを確認後、まず開閉バルブV3を開き、続いて開閉バルブV2を開いたのちに開閉バルブV4をゆっくりと閉じる。このとき、キャリアーガスは原料容器1のディップチューブを経由して有機金属化合物内に輸送され、有機金属化合物を激しくバブリングすることにより気化させる。キャリアーガスによって気化、同伴された有機金属化合物ガスは、有機金属化合物ガス経路G2を通じてインラインモニター3まで輸送され、ここで所定の濃度に達しているかどうかのチェックが行われる。有機金属化合物ガスは更に経路G4を経由し、ICPのインジェクターまで輸送され分析に供される。
【0034】
また、前記有機金属化合物ガス内の不純物量を正確に定量するために、校正用標準ガスをマスフロコントローラーMFC−2を通り、経路G5,G4よりICPに導入することができる。
【0035】
ここで、ICP分析の対象となる有機金属化合物は、MOCVD用原料として用いられるものであれば特に制限はないが、III−V族やII−VI族半導体などの所謂化合物半導体材料の微量分析に顕著な効果を発揮する。
【0036】
具体的な化合物の名称としては、トリメチル(エチル)ガリウム、トリメチル(エチル)インジウム、トリメチル(エチル)アルミニウム、ジメチル(エチル)亜鉛、ターシャリーブチルホスフィン、ターシャリーブチルアルシン、シクロペンタジエニルマグネシウム、ペンタメチルシクロペンタジエニルマグネシウム等が挙げられるが、これに限定される訳ではなく、常温・常圧で僅かにでも蒸気圧がある有機金属化合物、有機化合物、水素化金属化合物、ハロゲン化金属化合物であるならば、全ての化合物が分析対象となる。但し、分析対象となる金属不純物に蒸気圧がなく、キャリアーガスによる輸送ができなければ基本的に分析はできない。
【0037】
インラインモニター3は、有機金属化合物ガス経路G2内の有機金属化合物ガス濃度を測定する装置で、ICPに供給する有機金属化合物ガス濃度が設定値になっているかどうかを確認するために配置されている。有機金属化合物ガス経路内の有機金属化合物ガスの濃度を更に安定させるためには、上述したように、開閉バルブV5を閉弁、開閉バルブV11を開弁した状態でガスパージを行うことが効果的である。また、バルブ切り替えの際に多少の圧力変動が生じる可能性があるが、それを軽減させるためには図2のように、開閉バルブV5とV11を一体化した2連式ブロックバルブ(空気作動式)を用いることが有効である。
【0038】
前記校正用標準ガスは、有機金属化合物中に残存する不純物濃度を定量するために必要な基準ガスであり、気体用マスフロコントローラーMFC−2とガス経路G5,G4を通じてICPに導入される。前記校正用標準ガスの校正用標準ガス経路G5内濃度を更に安定させるためには、上述したように開閉バルブV6を閉弁、開閉バルブV10を開弁した状態でガスパージを行うことが効果的である。また、バルブ切り替えの際に多少の圧力変動が生じる可能性があるが、それを軽減させるためには図3のように、開閉バルブV6とV10を一体化した2連式ブロックバルブ(空気作動式)を用いることが効果的である。
【0039】
校正用標準ガスの濃度を再調整したり、配管内のメモリー効果を瞬時に消し去るためには、開閉バルブV8から希釈用マスフロコントローラーMFC−3、開閉バルブV9を通じてパージガスを流すこともできる。また、キャリアーガス源から開閉バルブV7を経由して経路G5に接続する経路G6は、校正用標準ガスを交換する際にパージ用ラインとして使用する。
この装置の作動につき更に詳述する。
【0040】
まず、ICP−AESのプラズマトーチを点灯させ、プラズマが安定に燃焼していることを確認する。開閉バルブV4を開弁し、キャリアーガス(アルゴン)を気体用マスフロコントローラーMFC−1で流量制御をしておく。キャリアーガスの流量は、有機金属化合物の種類により異なるが、一般的には5〜1,000ml/毎分、好ましくは10〜600ml/毎分である。アルゴンプラズマの燃焼が不安定化したり、有機金属化合物濃度を大幅に変動させる必要性が生じた場合には、図5に示すような希釈用マスフロコントローラーMFC−4を通じて希釈用ガスを供給するが、その流量は10〜2,000ml/毎分、より好ましくは50〜800ml/毎分の範囲である。
【0041】
原料容器1のメインバルブV3を開弁したあとに緩やかにメインバルブV2を開弁する。この状態で開閉バルブV4を閉弁するとマスフロコントローラーMFC−1がすぐにキャリアーガスの流量制御を開始し、一定流量の前記キャリアーガスが前記原料容器1に供給される。ここで、気化、同伴された有機金属化合物は、開閉バルブV3、有機金属化合物ガス経路G2を経由してインラインモニター3まで輸送され、ここで正確な有機金属化合物ガス濃度が計測されるが、その値は流量に換算して0.001〜1g/毎分、より好ましくは0.01〜0.1g/毎分の範囲である。
【0042】
有機金属化合物ガスは、その後ガス経路G4を経由してICPに導入されるが、経路内の有機金属化合物ガス濃度を更に安定させるためには、開閉バルブV11を開弁、開閉バルブV5を閉弁した状態で2〜5分間ほどガスパージを行うとよい。
【0043】
このように本発明では、有機金属化合物濃度と流量を明確に既定した有機金属化合物ガスをICPに供給することができるため、迅速で高精度、しかも人体に対して非常に安全性の高いICP分析が可能になる。
【0044】
校正用標準ガスに使用可能な化合物は、目的とする金属が含有され、適当な蒸気圧を有し、多種類の化合物を混合したときでもお互いに複雑な化学変化を起こさないものがよく、例えばシリコン不純物を測定しようとする場合にはテトラメチルシランが好ましく、ゲルマニウム不純物であればテトラメチルゲルマンが好ましい。また化合物を希釈するガスはアルゴンが最適で、その濃度は0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppmである。また、前記校正用標準ガスは、正確な金属濃度をAPI−MS等の高性能分析装置で検定しなければならないことは言うまでもない。
【0045】
前記校正用標準ガスは、マスフロコントローラーMFC−2から開閉バルブV6、ガス経路G5,G4を経由してICPに導入されることにより各元素に対応した発光ピーク強度が測定されるが、このピーク強度と校正用標準ガス濃度から作成された検量線を用いることで、有機金属化合物ガス中の不純物濃度を正確に求めることができる。
【0046】
なお、図4に示したように、校正用標準ガスを2系統に分割することにより、標準ガスとして用いる化合物間の化学反応を防止し得る。
【0047】
【発明の効果】
本発明の有機金属化合物の気化供給装置によれば、有機金属化合物を充填した原料容器内にマスフロコントローラーで流量制御したキャリアーガスを導入し、ガス化した有機金属化合物ガスをインラインモニターで濃度測定したのちにICP装置まで供給するため、ICP装置に供給される有機金属化合物ガス濃度と不純物濃度を常時モニターすることができる。
【0048】
また、時々刻々と変化する有機金属化合物の供給量や不純物濃度の変動をダイレクトに観測することができるため、常に正確な濃度の有機金属化合物ガスをICP装置に導入することができる。
【0049】
更に、校正用標準ガスを直接ICP装置に供給できるため、有機金属化合物ガス中に残存する不純物濃度の定性・定量分析をインラインで行うことが可能である。
【0050】
また、複数の校正用標準ガスを同時に発生させることができるため、広範な不純物の定性・定量分析を瞬時に行うことが可能となる。もちろん、シリンジ等の分注器による煩雑で危険な液体有機金属化合物のサンプリング操作が不要となるため、人体に対する安全性が格段に向上するだけではなく、サンプリング時の汚染を回避することができたり、或いは高価な有機金属化合物を極少量しか用いなくても、非常に高感度で再現性の高いICP分析が可能になる。
【0051】
このように極めて高感度で再現性の高いICP分析を非常に安全に執り行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の別の実施例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の更に別の実施例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の更に別の実施例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 原料容器
2 キャリアーガス源
3 インラインモニター
4 調圧器
5 恒温槽
6 校正用標準ガスボンベ
7 加熱器
10 ICP装置
MFC−1〜MFC−4 マスフロコントローラー
V1〜V13 開閉バルブ
G1〜G10 経路
Claims (3)
- (1)有機金属化合物が収容された原料容器と、キャリアーガス源と、赤外吸収セルが内蔵され、有機金属化合物ガスがこの赤外吸収セルを通過した際に該有機金属化合物特有の赤外吸収を赤外線検出器で測定し、該有機金属化合物ガス濃度が設定値になっているか否かを確認するインラインモニターと、前記原料容器とキャリアーガス源とを接続し、キャリアーガスの流量を制御するマスフロコントローラーが介装されたキャリアーガス導入経路と、
(2)前記原料容器とインラインモニターとを接続し、前記キャリアーガスにより気化、同伴された有機金属化合物ガスが輸送される有機金属化合物ガス経路と、
(3)誘導結合型プラズマ発光分光分析装置と、前記インラインモニターと前記分析装置の試料導入口とを接続する試料ガス経路と、
(4)更に校正用標準ガスが充填されたガスボンベと、このガスボンベと前記試料ガス経路の所用部とを接続し、校正用標準ガスの流量を制御する標準ガス用マスフロコントローラーが介装された標準ガス経路と、
(5)この標準ガス経路と標準ガス用マスフロコントローラー介装位置より下流側で連結し、前記校正用標準ガスの濃度を調整する希釈用ガスが流通し、この希釈用ガスの流量を制御する希釈用マスフロコントローラーが介装された希釈ガス経路と
を具備していることを特徴とする有機金属化合物の気化供給装置。 - 複数の校正用標準ガスボンベが配設されていると共に、これらの標準ガスの流量を制御する標準ガスマスフロコントローラーがそれぞれ介装された複数の標準ガス経路と、これら標準ガス経路にそれぞれ連結された希釈用マスフロコントローラーが、それぞれ介装された複数の希釈ガス経路を備えた請求項1記載の気化供給装置。
- 有機金属化合物ガス経路に、希釈キャリアーガス用マスフロコントローラーが介装された、有機金属化合物濃度を希釈するキャリアーガスが流通するバイパス経路が接続された請求項1又は2記載の気化供給装置。
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