JP3819757B2 - エンジンのブリーザ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設機械や土木機械等の作業機に搭載される汎用の4サイクルエンジンのブリーザ装置に関し、特に、クランクケース内に形成されるクランク室に連通する第1ブリーザ室と、前記クランク室に通じるとともに吸気系に通じる第2ブリーザ室と、第1および第2ブリーザ室間を結ぶ連絡通路と、第2ブリーザ室から第1ブリーザ室側へのブリーザガスの流通を阻止するようにして前記連絡通路の第2ブリーザ室側への開口端に設けられる一方向弁とを備えるエンジンのブリーザ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
このようなブリーザ装置は、たとえば特開昭62−240413号公報等で既に知られており、一方向弁は、クランク室内の圧力上昇時だけ第1ブリーザ室から第2ブリーザ室を経て吸気系にブリーザガスが流れるようにして、クランク室内の圧力を適切に維持する働きをしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ランマー等の作業機は、その運転中に、操作ミスや、地盤の不安定等に起因して、通常の正規姿勢とは異なる姿勢となることがあり、そのような不規則な姿勢のままでエンジンの運転が続行されると、上記従来のものでは、クランクケース内のオイルが吸気系に漏出してしまうことがある。すなわち第1および第2ブリーザ室間を結ぶ連絡通路の第1ブリーザ室への開口端以上に油面があるようにしてオイルが満たされている第1ブリーザ室が、第2ブリーザ室の下方にある状態を想定すると、クランク室が負圧となったときには、第1および第2ブリーザ室に負圧が作用するが一方向弁は閉じたままであり、またクランク室が正圧となったときには、第1および第2ブリーザ室への正圧の作用により連絡通路内のオイルは正圧の作用によって一方向弁を開きつつ連絡通路内を上昇するので、エンジンの運転継続により連絡通路内をオイルが上昇して第2ブリーザ室にオイルが供給されてしまい、第2ブリーザ室のオイルが吸気系に漏出してしまう可能性があるのである。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、エンジンが正規の姿勢とは異なる姿勢での運転継続に伴ってオイルが吸気系に漏出してしまうことを防止したエンジンのブリーザ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、クランクケース内に形成されるクランク室に連通する第1ブリーザ室と、前記クランク室に通じるとともに吸気系に通じる第2ブリーザ室と、第1および第2ブリーザ室間を結ぶ連絡通路と、第2ブリーザ室から第1ブリーザ室側へのブリーザガスの流通を阻止するようにして前記連絡通路の第2ブリーザ室側への開口端に設けられる一方向弁とを備えるエンジンのブリーザ装置において、前記第1および第2ブリーザ室は、シリンダボアの周方向に沿い、シリンダボアの軸線に関してほぼ対称の位置に配置され、それら第1および第2ブリーザ室をそれぞれ前記クランク室に連通させる第1連通路および第2連通路が設けられるとともに、前記一方向弁に、前記連絡通路に指向する圧力逃がし孔が設けられていることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、連絡通路の第1ブリーザ室への開口端以上に油面があるようにしてオイルが満たされている第1ブリーザ室が、第2ブリーザ室の下方にある状態でエンジンの運転が継続されている場合に、一方向弁に設けられた圧力逃がし孔により、クランク室が負圧になったときには、一方向弁が閉弁しているにもかかわらず、連絡通路内の油面の上方空間が第2ブリーザ室に通じることになり、連絡通路内の油面が低下するので、エンジンの運転継続によっても連絡通路内の油面は上昇、下降を繰り返すだけであり、第2ブリーザ室側にオイルが押し上げられることはなく、したがって吸気系へのオイルの漏出を防止することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0008】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すものであり、図1はエンジンの縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3矢視方向から見たエンジンブロックの底面図、図4は図1の4−4線拡大断面図、図5は図2の5−5線拡大断面図、図6は図2の6−6線拡大断面図、図7は横倒し状態にあるエンジン本体の姿勢を90度ずつ変化させた状態を示す断面図である。
【0009】
先ず図1および図2において、作業機であるランマー10を駆動するための4サイクルであるエンジンEのエンジン本体11は、オイル12を貯溜するクランク室13を形成するとともに前記ランマー10の使用状態ではほぼ水平な軸線を有するクランクシャフト14を支承するクランクケース15と、前記ランマー10の使用状態では軸線がほぼ鉛直となるシリンダボア16を有するシリンダバレル17と、シリンダボア16に摺動自在に嵌合されるピストン18の頂部との間に燃焼室19を画成するシリンダヘッド20とを備える。
【0010】
クランクケース15は、クランクシャフト14の軸線と斜めに交差する分割面21で相互に分割可能な第1および第2ケース半体22,23が、複数のボルト24…で相互に締結されて成るものであり、第1ケース半体22と、前記シリンダバレル17およびシリンダヘッド20とは、鋳造により一体に形成されてエンジンブロック25を構成する。
【0011】
ピストン18はコンロッド26を介してクランクシャフト14のクランクピン14aに連結されており、このコンロッド26の大端部には、クランク室13内のオイル12を飛散させるオイルディッパ28が一体に形成される。
【0012】
クランクシャフト14の一端は、第1ケース半体22との間にボールベアリング29および環状のシール部材30を介在させてクランクケース15から外部に突出されるものであり、クランクケース15外でクランクシャフト14の一端には、冷却ファン31を一体に有するフライホイール32が固着される。
【0013】
またクランクシャフト14の他端は、第2ケース半体23との間にボールベアリング33および環状のシール部材34を介在させてクランクケース15から外部に突出されるものであり、クランクケース15外でクランクシャフト14の他端にはランマー10が連結される。
【0014】
シリンダヘッド20には、燃焼室19に通じ得る吸気ポート35および排気ポート36が設けられており、エアクリーナ37および気化器38を含む吸気系39が吸気ポート35に連なるようにしてシリンダヘッド20に支持される。また排気ポート36に連なる排気マフラー40がマフラーカバー41で覆われており、該マフラーカバー41がエンジンブロック25に支持される。
【0015】
ランマー10の使用状態でクランクシャフト14の下方となる位置で第2ケース半体23には、調速用遠心ガバナ42が取付けられる。この遠心ガバナ42は、第2ケース半体23の内面に固定された支持軸43で回転自在に支持される回転盤44と、支持軸43に摺動自在に嵌合する筒状のスライダ45と、該スライダ45を挟んで回転盤44に揺動自在に支持される複数の振り子式遠心重錘46…とで構成され、各遠心重錘46…には、それらの遠心重錘46…が遠心力により回転盤44の半径方向外方に揺動するときに前記スライダ45を一方向に摺動させる作動腕46aがそれぞれ設けられる。
【0016】
回転盤44の外周には被動ギヤ47およびオイル飛散羽根48が一体に形成されており、被動ギヤ47は、クランクシャフト14に固定される駆動ギヤ49に噛合される。しかも前記支持軸43は、前記回転盤44の外周の前記オイル飛散羽根48をクランク室13内のオイル12中に浸漬する位置で、第2ケース半体23に設けられる。
【0017】
このような調速用遠心ガバナ42では、クランクシャフト14の回転に伴って回転盤44が回転するのに応じて、スライダ45が支持軸43の軸方向一方に摺動し、そのスライダ45の摺動作動が図示しないリンクを介して気化器38のスロットル弁(図示せず)に伝達され、それによりエンジン回転数が設定回転数に制御される。
【0018】
シリンダヘッド20には、吸気ポート35の燃焼室19への連通・遮断を制御する吸気弁50と、燃焼室19の排気ポート36への連通・遮断を制御する排気弁51とが開閉作動可能に配設されるとともに、燃焼室19に臨む点火プラグ52が取付けられる。
【0019】
前記吸気弁50および排気弁51は動弁機構53で開閉駆動されるものであり、該動弁機構53は、前記駆動ギヤ49とともにクランクシャフト14に固定される駆動タイミングプーリ54と、シリンダヘッド20に支持された軸55に支持される被動タイミングプーリ56と、駆動タイミングプーリ54および被動タイミングプーリ56に巻掛けられる無端状のタイミングベルト57と、前記被動タイミングプーリ56に連設されるカム58と、吸、排気弁50,51およびカム58間に設けられるロッカアーム59,60とを備えるものであり、各ロッカアーム59,60は、動弁機構53の一部を覆うようにしてシリンダヘッド20に締結される合成樹脂製のヘッドカバー61で揺動可能に支承され、該ヘッドカバー61には燃料タンク62が一体に形成される。
【0020】
図3および図4において、エンジン本体11におけるエンジンブロック25には、前記シリンダボア16の周方向に沿って前記吸気系39に対応する位置からほぼ180度の位置に配置される第1ブリーザ室64と、第1ブリーザ室64をクランク室13内に通じさせる第1連通路65と、シリンダボア16の軸線に関して第1ブリーザ室64とほぼ反対側で吸気系39の近傍に配置される第2ブリーザ室66と、第2ブリーザ室66をクランク室13内に通じさせる第2連通路67と、第1および第2ブリーザ室64,66間を結ぶ連絡通路68とが設けられ、第2ブリーザ室66は、吸気系39におけるエアクリーナ37にゴムホース等の導管69を介して接続される。
【0021】
図5を併せて参照して、吸気系39が配置される側とは反対側でエンジンブロック25における第1ケース半体22の外側面には凹部70が設けられており、その凹部70を覆うカバー71が第1ケース半体22の外側面に締結される。これにより第1ケース半体22およびカバー71間に、ランマー10の使用状態ではクランク室13内の油面よりも上方に位置する第1ブリーザ室64が形成され、前記ランマー10の使用状態で第1ブリーザ室64の下部に通じる第1連通路65が、クランク室13への開口端を2つに分けて第1ケース半体22に穿設される。
【0022】
連絡通路68は、シリンダボア16の軸線に直交する平面内に配置されるようにして第1ケース半体22に設けられるものであり、この連絡通路68の一端は、第1ブリーザ室64に通じるようにして前記凹部70内に開口する。
【0023】
前記凹部70内のほぼ中央部で第1ケース半体22の外側面にはボス72が突設されており、カバー71は、前記ボス72に螺合するボルト73で第1ケース半体22に締結される。また凹部70内で第1ケース半体22の外側面には、カバー71に当接する複数の迷路形成壁74…が突設されており、これらの迷路形成壁74…により、第1連通路65および連絡通路68間を結ぶ迷路が第1ブリーザ室64内に形成される。而してランマー10の使用状態でクランク室13から第1連通路65を経て第1ブリーザ室64内に導入されたブリーザガスは、第1ブリーザ室64内の前記迷路を流通して連絡通路68に至ることになり、前記迷路でのブリーザガスの流通方向変化によってブリーザガスから同伴オイルが分離される。しかも前記迷路の連絡通路68側の部分で連絡通路68の開口端よりも下方に位置する迷路形成壁74には、ブリーザガスの流通を極力抑制するように流通面積を絞った戻り孔75…が、分離したオイルを第1連通路65側に戻すために設けられる。
【0024】
図6を併せて参照して、エンジンブロック25における第1ケース半体22の外側面には、シリンダボア16の軸線に関して第1ブリーザ室64とほぼ反対側の前記吸気系39の近傍に位置する凹部76が設けられており、その凹部76を覆うカバー77が第1ケース半体22の外側面に締結される。これにより第1ケース半体22およびカバー77間に、ランマー10の使用状態ではクランク室13内の油面よりも上方に位置する第2ブリーザ室66が形成され、連絡通路68の他端は、ランマー10の使用状態で第2ブリーザ室66の上部に通じるようにして凹部76に開口する。
【0025】
前記凹部76内のほぼ中央部で第1ケース半体22の外側面にはボス78が突設されており、カバー77は、前記ボス78に螺合するボルト79で第1ケース半体22に締結される。また凹部76内で第1ケース半体22には、第2ブリーザ室66から連絡通路68側へのブリーザガスの流通を阻止する一方向弁としてのリード弁80が、その弁体80aで連絡通路68の他端開口部すなわち第2ブリーザ室66への開口端を塞ぐようにして取付けられている。しかもリード弁80の弁体80aには、図4で明示するように連絡通路68に指向する圧力逃がし孔90が設けられる。
【0026】
ランマー10の使用状態での第2ブリーザ室66の上部において前記連絡通路68の側方に位置する部分で第1ケース半体22の外側面には、カバー77に設けられた透孔82に気密に嵌合される導管69の一端を受ける突部81が、導管69の一端開口部全体を閉じることがないようにして突設されており、導管69の他端は、吸気系39におけるエアクリーナ37に接続される。
【0027】
さらに前記凹部76内で第1ケース半体22の外側面には、カバー77に当接する迷路形成壁83,84が突設されており、一方の迷路形成壁83により連絡通路68および導管69間を結ぶ迷路が第2ブリーザ室66内に形成され、他方の迷路形成壁84により第2連通路67および導管69間を結ぶ迷路が第2ブリーザ室66内に形成される。
【0028】
第2連通路67は、ランマー10の使用状態では第2ブリーザ室66の下部に通じるものであり、第2ブリーザ室66に通じて第1ケース半体22に直接穿設される通路孔85と、該通路孔85に連通して第1ケース半体22に締結されるパイプ86とで構成される。前記ランマー10の使用状態で第2ブリーザ室66よりも下方に位置する部分で第1ケース半体22には、クランク室13の臨む平坦な取付け座88が形成されており、通路孔85は、第2ブリーザ室66および取付け座88間を結んで第1ケース半体22に穿設される。またパイプ86は、前記取付け座88に当接するフランジ部86aを有して略L字状に形成されており、フランジ部86aがボルト87で取付け座88に締結され、パイプ86の一端は前記通路孔85の取付け座88側の端部に液密に嵌合される。
【0029】
ところで、ランマー10の非使用状態では、図7で示すように、シリンダボア16の軸線をほぼ水平とするようにしてエンジン本体11を横倒しの姿勢とすることがあり、第2連通路67は、シリンダボア16の軸線がほぼ水平となるようにエンジン本体11を横倒しした状態で、図7(a)〜(d)で示すようにエンジン本体11がどのような姿勢になろうとも、クランク室13内の油面Lよりも上方に第2連通路67のクランク室13内への開口端が位置するように形成される。
【0030】
ところで、連絡通路68がシリンダボア16の軸線の下方に配置される姿勢にエンジン本体11を横倒しした状態、すなわち図7(a)で示す状態では、オイル12の油面Lは、第1連通路65の一部を介してオイル12を第1ブリーザ室64内に導くことができる位置にある。このため第1ブリーザ室64から連絡通路68を経て第2ブリーザ室66側にオイル12が流れてしまう可能性があるが、第1連通路65から第1ブリーザ室64を経て連絡通路68に至るまでの経路は、クランク室13内のオイル12が連絡通路68内に浸入することを回避する形状に形成されている。すなわちこの実施例にあっては、連絡通路68がシリンダボア16の軸線の下方に配置される姿勢にエンジン本体11を横倒しした状態では、図5で示す鎖線L′の位置に油面があり、第1ブリーザ室64内で迷路を形成するために第1ケース半体22に設けられた迷路形成壁74…は、第1連通路65から第1ブリーザ室64に流入したオイル12が連絡通路68に流れるのを阻止する形状に形成されている。
【0031】
次にこの実施例の作用について説明すると、エンジン本体11の第1ケース半体22には、第1ブリーザ室64と、第1ブリーザ室64をクランク室13内に通じさせる第1連通路65と、シリンダボア16の軸線に関して第1ブリーザ室64とほぼ反対側で吸気系39の近傍に配置される第2ブリーザ室66と、第2ブリーザ室66をクランク室13内に通じさせる第2連通路67と、第1および第2ブリーザ室64,66間を結ぶ連絡通路68とが、ランマー10の使用状態ではクランク室13内の油面よりも上方に位置する第1および第2ブリーザ室64,66の下部に第1および第2連通路65,67が通じるとともに第2ブリーザ室66の上部に連絡通路68が開口する配置で設けられ、ランマー10の使用状態で第2ブリーザ室66の上部に通じる導管69が吸気系39のエアクリーナ37に接続されている。
【0032】
したがってランマー10の使用状態では、クランク室13内で生じたブリーザガスが、第1連通路65から第1ブリーザ室64、連絡通路68、第2ブリーザ室66および導管69を経て吸気系39に導かれるとともに、第2連通路67から第2ブリーザ室66および導管69を経て吸気系39に導かれる。
【0033】
しかも第1および第2ブリーザ室64,66内にそれぞれ迷路が形成されており、それらの迷路を流通することでブリーザガスから分離したオイルは、第1および第2連通路65,67からクランク室13に戻され、気液分離性能を向上することができる。
【0034】
またシリンダボア16の軸線がほぼ水平となるようにエンジン本体11を横倒しした状態で該エンジン本体11がどのような姿勢になろうとも、クランク室13内の油面Lよりも上方に第2連通路67のクランク室13内への開口端が位置するように第2連通路67が形成されるので、ランマー10の非使用状態でエンジン本体11が、シリンダボア16の軸線をほぼ水平とするように横倒しされたときに、エンジン本体11がどのような姿勢になろうともクランク室13内のオイル12が第2連通路67を経て第2ブリーザ室66に浸入することは回避される。
【0035】
また第1連通路65から第1ブリーザ室64を経て連絡通路68に至るまでの経路は、連絡通路68がシリンダボア16の軸線の下方に配置される姿勢にエンジン本体11を横倒しした状態でクランク室13内のオイル12が連絡通路68内に浸入することを回避する形状に形成されているので、クランク室13内のオイル12が第1連通路65から第1ブリーザ室64および連絡通路68を経て第2ブリーザ室66に浸入することはない。
【0036】
したがってシリンダボア16の軸線をほぼ水平とした横倒し状態でエンジン本体11がどのような姿勢になろうとも、第2ブリーザ室66にクランク室13内のオイル12が浸入することはなく、吸気系39へのオイル12の浸入を確実に防止することができ、エンジンEの始動時に排気マフラー40から白煙が排出されることはなく、排気性状の向上に寄与することができる。
【0037】
しかも吸気系39へのオイル12の浸入を防止するための構造において、第1および第2ブリーザ室64,66はエンジン本体11に設けられるものであり、エンジンE全体が大型化することはない。
【0038】
さらに第2連通路67は、第2ブリーザ室66に通じてエンジン本体11の第1ケース半体22に直接穿設される通路孔85と、該通路孔85に連通して第1ケース半体22に締結されるパイプ86とで構成されるものであり、シリンダボア16の軸線がほぼ水平となるようにエンジン本体11を横倒しした状態でのエンジン本体11の姿勢にかかわらずクランク室13内の油面よりも上方に開口端を配置するようにした複雑な形状の第2連通路67を、簡単に構成することができる。
【0039】
ところで、ランマー10は、その運転中に、操作ミスや、地盤の不安定等に起因して正規姿勢とは異なる姿勢となることがあり、たとえば図7(b)で示すように、第1および第2ブリーザ室64,65間を結ぶ連絡通路68の第1ブリーザ室64への開口端以上に油面があるようにしてオイル12が満たされている第1ブリーザ室64が、第2ブリーザ室66の下方にある状態で、エンジンEの運転が続行される場合を想定する。
【0040】
この場合、エンジンEの圧縮行程では、クランク室13が負圧になるのに応じて第2ブリーザ室66のガスはクランク室13側に吸引される。またエンジンEの膨張行程ではクランク室13が正圧になるので、クランク室13のガスが第2ブリーザ室66から吸気系39に押し出されるとともに、第1ブリーザ室64内のオイルが、正圧の作用により一方向弁80を開弁しつつ連絡通路68内を上昇する。
【0041】
次にエンジンEが排気行程となると、クランク室13が負圧となるのに応じて第2ブリーザ室66のガスはクランク室13側に吸引される。この際、第1ブリーザ室64にも第2ブリーザ室66と同圧が作用するので一方向弁80は閉弁したままであるが、一方向弁80の弁体80aに設けられた圧力逃がし孔90により、第2ブリーザ室66と、連絡通路68内の油面の上方空間とは同圧となる。したがって連絡通路68内を上昇していたオイルは、その自重によって連絡通路68内を降下する。
【0042】
さらにエンジンEが吸気行程となると、クランク室13が正圧となり、上述の膨張行程と同様に、クランク室13のガスが第2ブリーザ室66から吸気系39に押し出されるとともに、第1ブリーザ室64内のオイルが、正圧の作用により一方向弁80を開弁しつつ連絡通路68内を上昇する。
【0043】
このようにして、一方向弁80の弁体80aに設けられた圧力逃がし孔90により、クランク室13が負圧になったときには連絡通路68内の油面は低下するので、エンジンEの運転継続によっても連絡通路68内の油面は上昇、下降を繰り返すだけである。したがって第2ブリーザ室66側にオイルが押し上げられることはなく、第2ブリーザ室66から吸気系39へのオイルの漏出を防止することができる。
【0044】
これに対し、一方向弁80に圧力逃がし孔90が設けられていないときには、クランク室13が正圧のときにはオイルが連絡通路68内を上昇するのに対し、クランク室13が負圧のときには、連絡通路68内で油面の上方空間が密閉空間となることにより、連絡通路68内の油面が低下することはなく、エンジンEの運転継続によっても連絡通路68内の油面が上昇して第2ブリーザ室66に至り、終には吸気系39にオイルが漏出してしまう可能性があるのである。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、連絡通路の第1ブリーザ室への開口端以上に油面があるようにしてオイルが満たされている第1ブリーザ室が、第2ブリーザ室の下方にある状態でエンジンの運転が継続されていても、一方向弁に設けられた圧力逃がし孔により、クランク室が負圧になったときには第1ブリーザ室への負圧の作用によって連絡通路内の油面は低下するようにし、第2ブリーザ室側にオイルが押し上げられることはなく、吸気系へのオイルの漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジンの縦断面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3矢視方向から見たエンジンブロックの底面図である。
【図4】図1の4−4線拡大断面図である。
【図5】図2の5−5線拡大断面図である。
【図6】図2の6−6線拡大断面図である。
【図7】横倒し状態にあるエンジン本体の姿勢を90度ずつ変化させた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
13・・・クランク室
15・・・クランクケース
39・・・吸気系
64・・・第1ブリーザ室
66・・・第2ブリーザ室
68・・・連絡通路
80・・・一方向弁としてのリード弁
90・・・圧力逃がし孔
Claims (1)
- クランクケース(15)内に形成されるクランク室(13)に連通する第1ブリーザ室(64)と、前記クランク室(13)に通じるとともに吸気系(39)に通じる第2ブリーザ室(66)と、第1および第2ブリーザ室(64,66)間を結ぶ連絡通路(68)と、第2ブリーザ室(66)から第1ブリーザ室(64)側へのブリーザガスの流通を阻止するようにして前記連絡通路(68)の第2ブリーザ室(66)側への開口端に設けられる一方向弁(80)とを備えるエンジンのブリーザ装置において、
前記第1および第2ブリーザ室(64,66)は、シリンダボア(16)の周方向に沿い、シリンダボア(16)の軸線に関してほぼ対称の位置に配置され、
それら第1および第2ブリーザ室(64,66)をそれぞれ前記クランク室(13)に連通させる第1連通路(65)および第2連通路(67)が設けられるとともに、
前記一方向弁(80)に、前記連絡通路(68)に指向する圧力逃がし孔(90)が設けられていることを特徴とするエンジンのブリーザ装置。
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