JP3818265B2 - 微小物体の光固定化方法、微小物体固定化担体及び微小物体の観察方法 - Google Patents
微小物体の光固定化方法、微小物体固定化担体及び微小物体の観察方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小物体の光固定化方法、微小物体固定化担体及び微小物体の観察方法に関し、更に詳しくは、各種の微小な物体を光学的手段を利用して担体上に物理的に固定すると言う、有用かつ全く新規な微小物体固定化手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、材料系、機械系等の多くの技術分野において、極めて微小なスケールで対象物を解析し又は構成するナノテクノロジーが注目されている。又、バイオテクノロジー分野においては、上述の分野のナノテクノロジーと分子生物学を融合した研究成果が注目されている。
【0003】
例えば、任意の担体もしくは基板に対して、一定の機能を有するナノメータースケールの微小な金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子、セラミック粒子、プラスチック粒子又はこれらの複合粒子等を固定化し、更には多数のこれらの粒子を所定のパターンで配列させて固定化する技術が望まれている。
【0004】
又、例えば、分子生物学の著しい発展に伴い、とりわけ各種のゲノム解析プロジェクトの進展もしくは完了に伴い、遺伝子、遺伝子によって発現する酵素、免疫分析において重要である抗原−抗体、生体のシグナル伝達に関与する細胞膜レセプタータンパク質等の生体機能分子の機能解析等が注目されている。これらの関係では、細胞や微生物を利用した in vitro 解析も非常に重要である。
【0005】
更に、ゲノム解析プロジェクト以後の医学分野における中心的な課題の一つとして、遺伝子診断又はDNA診断が挙げられる。即ち、制限酵素断片長多型(RFLP)又はマイクロサテライト部を含むDNA断片の解析や、多様な一塩基多型(SNP)の解析によって、新規かつ有用な医薬を創製(いわゆるゲノム創薬)したり、個人の遺伝情報を把握してテーラーメイド医療や法医学的鑑定に活用することが考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況において、任意の担体もしくは基板に対して微小な金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子、セラミック粒子、プラスチック粒子等を簡易かつ確実に固定化できる技術、より好ましくは、例えば集積回路チップ等のように、これらの機能性微小粒子を所望の分布パターンを以て固定化する簡易な技術が望まれている。例えば、金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子等の無機の機能性粒子を固体表面に薄膜化もしくは固定化する有効な技術が提供されると、これらの粒子を抗菌、光分解等の目的の触媒として利用したり、電子デバイスの超集積化等に利用する際に非常に有用である。
【0007】
又、光学特性の異なる微粒子を一定の周期構造で配列させることによりフォトニックバンドを生起させ、光波の屈折、分離等の制御を行うデバイスにも利用できる。更に、シリカ粒子等の誘電体粒子には光を閉じ込める機能があり、これらの誘電体粒子を光導波路に固定化することによりレーザー発振を行うことが可能であるが、そのようなレーザー発振用デバイスの実用に有用である。
【0008】
【特許文献1】
特表平11−514755号公報
無機の機能性粒子を固体表面に薄膜化もしくは固定化する技術の具体例として、特表平11−514755号公報では、硬化性組成物を用いて基材上に微小粒子を固定化する方法を開示している。即ち、粒子径1μm程度の粒子を含む硬化性組成物を基材上に適用し、一定条件下で硬化性組成物を重合させることにより、前記粒子径の半分以下の厚さの硬化膜を形成させ、更に未硬化の硬化性組成物を除去して、基材上に前記粒子の単一層を形成する方法である。しかし、この方法では、未硬化の硬化性組成物を除去するステップが必要であって製造工程が複雑化するし、硬化性組成物の粘性や成膜に表面平坦性等の制御が難しい等と言う問題がある。
【0009】
【特許文献2】
特開平11−90213号公報
特開平11−90213号公報では、ハイドロゲルの表面に無機微粒子のコロイド分散液を塗布することにより無機微粒子の超薄膜を形成し、次いでこの超薄膜を固体表面に接触させて転写することにより、多様な固体表面上に無機の微粒子からなる超薄膜を形成する方法を開示している。しかし薄膜の固体表面への固定化方法については特に述べていない。
【0010】
【非特許文献1】
Nature, vol. 415, p.621(2002)
Nature, vol. 415, p.621(2002) では、シリカ粒子上にシングルモードファイバーを接触させ、シリカ粒子の光を閉じ込める機能を利用してレーザー発振を行う技術が示されている。しかし、シングルモードファイバーを接触させているだけなので、実用的ではない。
【0011】
一方、生体機能分子たる各種ポリペプチドを担体に固定化したプロテインチップや、遺伝子又は各種DNA断片等を担体に固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ等が極めて重要な研究開発ツールとなりつつある。しかしながら、固定化対象であるこれらの微小物体は非常にデリケートである。ポリペプチドについては、固定化の際の立体的構造や化学的構造の変化による酵素機能、抗原/抗体機能、膜タンパク質のリガンドとの結合能力等の喪失が懸念される。DNA等のポリヌクレオチドについては、固定力の強さやハイブリダイゼーション能力を維持した固定態様等が問題となる。
【0012】
【非特許文献2】
DNAマイクロアレイと最新PCR法:秀潤社
例えば、DNAマイクロアレイ用の担体として一般に使用されているのはポリ−L−リシンコーティングされたスライドガラスであるが、これに付着するDNAの量が一定にならず、再現性が悪いと言う問題点が指摘されている(「DNAマイクロアレイと最新PCR法」 P.127:秀潤社,2000)。
【0013】
この問題点は、DNAスポット後のブロッキング処理に起因する場合が多い。ブロッキング処理とは、被検査対象となるDNAが担体の予定外の部位に吸着されることを避けるため、DNAをスポットした位置以外の部位のポリ−L−リシンのアミノ基を不活性化する処理である。一般的なブロッキング処理として、DNAをスポットした担体を処理剤(コハク酸を混合した有機溶剤)中に浸漬し、アミノ基をアミド化して不活性化する。この処理中に担体上のDNAが剥離すると言う問題を生じる。
【0014】
又、DNAに限らず、タンパク質等の生体分子を固定化した担体においてもブロッキング処理が必要であり、ブロッキング処理によるタンパク質の変性、ブロッキング処理の手順の煩雑さ、計測時の誤差の発生等の不具合がある。
【0015】
近年の分子生物学の進歩に伴い、多数のタンパク質分子や核酸分子を多変量解析することが求められている。多変量解析を目的として生体分子を固定化する担体は、物理学的、化学的な性質の異なる分子を固定化可能である必要があるが、従来の固定化技術では複数種の生体分子を固定化することが困難であった。
【0016】
更に、細胞又は微生物を固定化した担体や、その固定化した細胞又は微生物の観察手段が、重要な研究開発ツールとして望まれつつある。又、担体に固定化した前記各種の生体機能分子、とりわけタンパク質の立体構造や機能の解析を行い得る観察手段が提供されれば、非常に有効な研究開発ツールとなる。これらのいずれの場合においても、固定化の際の細胞又は微生物の生活状態の確保や、タンパク質の立体構造の維持が問題となる。
【0017】
上記のような技術的課題に対応しようとする従来技術として、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0018】
酵素を担体上に固定化させる技術としては、酵素をゲルに封じ込める包括固定化法、酵素を半透明のポリマー被膜により被覆するマイクロカプセル法、酵素タンパク質の表面をポリエチレングリコールや糖脂質で修飾して安定化する表面修飾法等が知られている。しかし、いずれの場合においても、酵素を固定化するための構造的なユニットが、酵素分子を安定的に着座させ得る形状を備えていなかったり(例えば、単なる平坦面)、このような形状を備える構造的なユニットであっても構造安定性が欠けていたりするため、固定化酵素の立体構造を安定的に維持することができなかった。
【0019】
DNAチップ等に関しては、多数/多種の1本鎖遺伝子DNAを配列集積化し、cDNA又はゲノムDNA等とハイブリダイゼーションさせることにより遺伝子発現プロファイルをゲノムスケールで解析しようとする技術が多く提案されている。最近は、配列集積化するDNAとして、遺伝子であり又は遺伝子の一部を構成するDNA断片に替えて、一塩基多型部を含むDNA断片やマイクロサテライト部を含むDNA断片を用いるDNAチップの提案も出ている。
【0020】
【特許文献3】
特開平11−21293号公報
それらの具体例として、特開平11−21293号公報に係るDNAチップの作製方法の発明では、担体に対して、遺伝子であり又は遺伝子の一部を構成する多数のDNAを配列集積化して固定化する方法を開示している。しかしながらこの方法は光リソグラフィー法を基本にしているために、基盤の多層化、エッチング、回路構造を刻んだ後の化学反応等の複雑な手順が必要となり、生産効率が低くなると共に製品コストが非常に高い。
【0021】
細胞、微生物、酵素タンパク質等の観察や解析の手段に関しては、原子間力顕微鏡等に代表される走査型プローブ顕微鏡(SPM)が挙げられる。SPMにおいては、鋭い探針を用いて試料表面をトレースするが、試料が固定されていない場合にはプローブの動きによって試料の位置が変動し、正確な試料像が得られない。試料が生きた微生物である場合にはこの問題が大きくなる。そして、試料をゲル等の粘性の高い樹脂で固定する方法では、プローブに樹脂が付着して正確な試料像が得られない。
【0022】
そこで本発明は、簡易な手段により、微小物体を担体表面に固定化する方法、更には多数及び/又は多種の微小物体を担体表面に配列させて固定化する方法、更にはこれらの微小物体の生活状態や固有の機能を損なわずに固定化する方法、及びそのように固定化した担体、及び微小物体の観察方法を提供するすることを、解決すべき課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、少なくとも表層部に下記(A)の光固定化材料を用いた担体の表面に下記(B)の微小物体を配置したもとで、照射光によって微小物体を担体表面に固定化する、微小物体の光固定化方法である。
(A)光固定化材料:光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す材料。
(B)微小物体:大きさが50μm以下である有形物体。
【0024】
ここに、「光変形」とは、通常のマクロな意味での形状変化の他、分子レベルでの運動による微小物体と担体表面(例えば膜表面)との絡み合い等による変形等も含む。このような光変形には、光学顕微鏡や電子顕微鏡等により明瞭に観察できるものもあるし、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察することが困難なものもある。
【0025】
更に、微小物体は、その個体ごとにバラバラに固定化される場合、後述の第8発明のように多数の微小物体が特定の分布パターンに従って固定化される場合の他、自己組織化する性質を持つ微小物体においては、多数の微小物体を自己組織化した状態において担体の表面に配置させ、固定化する場合がある。
【0026】
(第1発明の作用・効果)
本願発明者は、前記課題の解決手段を研究する過程で、光変形を起こし得る材料の表面に微小物体を配置させて光照射を行うと、材料の表面に微小物体が強く固定される、と言う非常に興味深い新規な知見を得た。今のところ、その理由は必ずしも明確ではないが、微小物体を配置した材料表面の可塑化、微小物体の形状に依存した(多くの場合には、微小物体の形状に対応した)材料表面の光変形等が関係している可能性がある。
【0027】
第1発明の(A)の光固定化材料としては、基本的には、光変形を起こし得る材料であれば、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示し得る、と考えられる。このような効果が得られる光固定化材料として、後述するように、光吸収によって分子構造を変化できるフォトクロミック材料、特にシス−トランス異性化のような大きな構造変化を起こす光異性化材料が好ましく例示される。
【0028】
第1発明の(B)の微小物体の種類は限定されない。微小物体の大きさは50μm以下であることが好ましい。微小物体が50μmより大きいと十分に光固定化することが困難になる恐れがある。微小物体の下限のサイズとしては、タンパク質分子あるいは核酸分子のサイズ、あるいは1nm程度のサイズのものを対象とすることができる。微小物体がこれらのサイズよりも小さいと、光固定化材料における光変形量が不十分となる(微小物体に対する固定化作用が不十分となる)恐れがある。微小物体の下限のサイズに関しては、「大きさ」とは、微小物体の短径方向のサイズ(例えば、細長い分子であるDNAでは、その長さではなく、太さ。)を言う。
【0029】
少なくとも表層部に光固定化材料を用いた担体の表面に微小物体を配置したもとで光照射を行うと、光照射により微小物体の周囲に発生する電場に依存して、光固定化材料が微小物体の形状に依存した変形、例えば微小物体の形状に対応した変形(微小物体に対して成形物と成形型の関係にあるような変形)や、その他の微小物体の形状に依存した何らかの変形を起こすことにより、変形した担体表面による微小物体に対する支持効果、担体表面と微小物体との接触面積の増大によるファンデルワールス力等の付着力の増加効果、等が得られ、微小物体に対する有効な固定力が得られる。
【0030】
第1発明の微小物体の光固定化方法は、以下の作用・効果がある。
【0031】
第1に、非常に簡易な手段によって、かつ簡単なプロセスで実行できる。よって低コストで実行できる。即ち、光変形を起こし得る材料と、これに対して微小物体が配置(接触)している状態を実現することと、その状態で光照射を行うこと、の3点だけが条件である。
【0032】
第2に、非常に応用範囲が広い。例えば、微小物体の種類としては、基本的には硬質ないしは柔軟な全ての非流体物が対象となり、金属粒子や半導体粒子等の無機材料、プラスチック粒子等の有機材料、タンパク質やDNA等の生体分子、細胞、微生物等を限定なく包含する。そしてこれら各種の微小物体を同一担体上に多数固定化できる。例えば、多種・多様な性質及び大きさのタンパク質等の、複数種の生体分子を同一担体上に多数固定化できるので、生体分子の多変量解析等に好適である。
【0033】
第3に、多様な実施形態を採用できる。例えば、担体と微小物体との接触を緩衝液中等で行えば、細胞や微生物を生活状態で固定化できる。又、任意の手段で光の照射パターンを変更することにより、固定化される微小物体の分布パターンを変更できる。
【0034】
第4に、固定化手段が光照射であり、固定化のメカニズムが物理的吸着により概ねは支配されていると考えられる。そのため、例えば化学的結合による固定化や、バインダー等による固定化、あるいは固定用構造体の形成による固定化に比較して、微小物体の機能に対する悪影響が非常に少ない。例えば、固定化に伴う酵素の失活や、細胞又はタンパク質の変形等を有効に防止できる。又、生体分子の固定化における前記従来技術のようなブロッキング処理も不要である。
【0035】
本発明の微小物体の光固定化方法においては、多数ないし極めて多数の微小物体を同時に固定化することは容易であり、これらの微小物体が自己組織化する性質を有する場合には、自己組織化させた状態において固定化することができる。従って、例えば多数のタンパク質分子が自己組織化して形成された巨大分子特有の生化学的機能の発現、2次元フォトニック結晶構造によるフォトニックバンドの形成、2次元フォトニック結晶構造の上に更に自己組織的に微小物体を積み上げることによる3次元フォトニック結晶構造の形成、半導体粒子による光電流発生等を、担体に固定化した状態で行わせることができる。
【0036】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る光固定化材料が、アゾ基を有する色素構造を含む材料である、微小物体の光固定化方法である。
【0037】
(第2発明の作用・効果)
光変形を起こし得る材料の種類は限定されないが、アゾ基を有する色素構造を含む材料が特に好ましい。アゾ基を有する色素構造は光照射等によってシス−トランス異性化を起こし、この異性化による分子レベルの運動が光固定化材料を可塑化させて、変形を容易にする。このような作用は、アゾベンゼン骨格を有する色素構造において特に良好に起こる。
【0038】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第2発明に係るアゾ基を有する色素構造が、ハメット(Hammet)則における置換基定数σが負である1又は2以上の電子供与性置換基を含む芳香環と、同置換基定数σが正である1又は2以上の電子吸引性置換基を含む芳香環とを、それぞれアゾ基の両側に備えたアゾベンゼン構造である、微小物体の光固定化方法である。
【0039】
ハメット則は「log(K/K0 )=ρσ」の式で表されるものであり、公知である。この式において、Kは m-, p- 置換フェニル化合物の反応に関するもの(例えば、無置換安息香酸のイオン化定数)である。ρはある反応で必要とされる電子吸引性と電子供与性の度合いを相対的に示す比例定数である。置換基定数σが正であれば電子吸引性置換基であり、置換基定数σが負あれば電子供与性置換基である。置換基定数σは、文献によりやや異なった値が示されることがあり、その一例を「数1」の表に示す。表の出典は、「J. Hine, "Physical Organic Chemistry", McGraw-Hill(1956), p.72」である。
【0040】
【数1】
(第3発明の作用・効果)
アゾ基を有する色素構造が第3発明のような電子吸引性官能基と電子供与性官能基を併せ備えると、シス−トランス光異性化が一層容易に起こるため、光固定化材料の可塑化に基づく光変形も一層容易に起こる。アゾベンゼン骨格における一方のベンゼン環に電子吸引性官能基が、他方のベンゼン環に電子供与性官能基が結合したものは、光照射中にトランス体とシス体との間の異性化を繰り返し(光異性化サイクル)、光固定化材料の可塑化が著しい。
【0041】
光固定化材料が可塑化した状態において、照射光に基づく電磁場、電極からの電磁場、微小物体の周囲に形成された電磁場が作用し、あるいは微小物体の存在に基づく静電力、ファンデルワールス力又は原子間力が作用して、光固定化材料が光変形する。
【0042】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第3発明に係るアゾ基を有する色素構造が、下記の式1が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造である、微小物体の光固定化方法である。
【0043】
Σ|σ|≦|σ1 |+|σ2 |・・・式1
(上記の式1において、σはハメット則における置換基定数、σ1 はシアノ基の置換基定数、σ2 はアミノ基の置換基定数である。)
(第4発明の作用・効果)
光固定化材料は、第4発明のように、固有の吸収波長を変化させた色素構造を含む材料とすることができる。一般的に、アゾベンゼン等の芳香環を持つを色素構造は、一定の電子吸引性官能基や電子供与性官能基を備えることにより、吸収波長が長波長側にシフトする。これらの基の電子吸引性や電子供与性が強いほどシフトする割合が大きい。
【0044】
そのシフトの割合は、一般的に、色素構造において置換した全ての置換基のσの絶対値の和が大きいほど、長波長側にシフトする。従って、上記の式1の左辺の値がある一定値以下になるように置換基を選択することで、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造を実現できる。p-ニトロ基とp-アミノ基(3級)との組み合わせの場合には、前記「数1」の表に基づくと、式1の値は1.378であり、その時のカットオフ波長は650nmである。一方、p-シアノ基とp-アミノ基(3級)の組み合わせの場合には、式1の値は1.228であり、カットオフ波長は570nmとなる。即ち、各種置換基のσの値を基にして、式1の左辺の値が1.228以下になるような置換基の組み合わせを選択することにより、カットオフ波長が570nm以下である色素構造を設計できる。
【0045】
第4発明によれば、光固定化材料の光変形が起こる波長域と蛍光分析用の蛍光色素の蛍光バンドが重ならない。従って、微小物体を光固定化した後に蛍光色素を利用した蛍光分析を行う際、光固定化材料の色素構造が蛍光を吸収して(蛍光励起エネルギーの移動を生じて)蛍光を検出できなくなる、と言う不具合を回避することができる。
【0046】
より具体的には、実用性のある有効な蛍光色素であるインドジカルボサイアニン系の Cy3や Cy5、あるいは Molecular Probe社の各種サイアニンダイマー系蛍光色素又は各種サイアニンモノマー系蛍光色素、Alexa Fluoro蛍光色の一群等の蛍光ピーク波長は 565nm以上である。よってこの場合、光固定化材料における色素構造の光吸収波長の長波長側のカットオフ波長が 570nm以下であると、上記の作用・効果を確保できる。
【0047】
第4発明に係る方法で微小物体を光固定化した担体は、例えば生化学の分野における重要なセンサである蛍光センサ、より具体的には、抗原抗体反応を検出するための導波路型エバネッセント光センサ、遺伝子の機能を多変量解析するDNAマイクロアレイやDNAチップ等として、次のように利用できる。即ち、検査対象物体(アナライト)と特異的に結合する物体(リガンド)を微小物体として担体に固定化しておき、適当な手段で予め蛍光物質を固定したアナライトをリガンドと結合させて、その蛍光を検出するのである。
【0048】
従来、担体へのリガンドの固定化方法としては、化学的結合(共有結合)の形成による方法、物理的吸着(疎水性相互作用や静電相互作用)を利用する方法等が挙げられる。しかしながら、前者の方法では結合の形成のために活性化試薬を使用せねばならないため手順が複雑になったり、リガンドが生体分子の場合には結合形成の反応条件によりリガンドが変性あるいは失活する恐れがあった。又、後者の方法では吸着力が不十分でリガンドが剥離する恐れがあった。第3発明の方法によれば、このような不具合を回避できる。
【0049】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明に係る微小物体が、下記(1)〜(5)群から選ばれる1種又は2種以上である、微小物体の光固定化方法である。
(1)無機材料粒子群。この群は、少なくとも金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子及びセラミック粒子を包含する。
(2)有機材料粒子群。この群は、少なくともプラスチック粒子を包含する。
(3)高分子量の有機分子群。この群は、少なくとも、鎖状ポリペプチド分子、活性型又は不活性型の立体構造を持つタンパク質分子、これらのタンパク質分子の集合体、1本鎖あるいは2本鎖以上の核酸分子、又は多糖分子を包含する。
(4)無機材料又は有機材料からなる微粒子であって、予め高分子量の有機分子を結合させたもの。
(5)細胞、オルガネラ、細菌、ウイルス、生物組織又は生物体。この群において、少なくとも細胞、細菌又は生物体は、生活状態にあるものを含む。
【0050】
(第5発明の作用・効果)
微小物体の好ましい代表例の一群が、第5発明の(1)の無機材料粒子である。この群は少なくとも金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子及びセラミック粒子を包含する。微小物体の好ましい代表例の他の一群が、第5発明の(2)の有機材料粒子である。この群は少なくともプラスチック粒子を包含する。これらの粒子を、例えばゲル状物質等のバインダー等を用いることなく、簡易に固定化することができる。
【0051】
微小物体の好ましい代表例の他の一群が、第5発明の(3)の高分子量の有機分子である。この群は少なくとも、鎖状ポリペプチド分子、活性型又は不活性型の立体構造を持つタンパク質分子、又は1本鎖あるいは2本鎖以上の核酸分子を包含する。微小物体であるタンパク質として、生物体で発現する任意のタンパク質、酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターが好ましく例示される。これらのポリペプチドを、光固定化によって立体構造(即ち固有の活性又は機能)を損なうことなく固定化することができるし、意図的に不活性型の立体構造を持つタンパク質分子を固定化することもできる。
【0052】
微小物体である1本鎖あるいは2本鎖以上の核酸として、mRNAあるいはその断片、cDNAあるいはその断片、ゲノムDNA断片、一塩基多型部を含むDNA断片、制限酵素断片又はマイクロサテライト部を含むDNA断片を好ましく例示することができる。これらのポリヌクレオチドは、例えば従来のDNAチップ等では、担体上に水溶液状態でスポットして乾燥させ、固定化している。この方法では、担体表面にDNAの固着性を高めるための表面処理が必要であり、前記したブロッキング処理も必要である。そのためDNAが担体から離脱し易い。第5発明によれば、担体に対する特段の前処理や後処理を要することなく、ポリヌクレオチドを十分に固定化できる。
【0053】
ポリヌクレオチドの固定化が、相同又は相補的なポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの目的を含む場合には、第5発明の(4)のように、ポリヌクレオチドの端部に予め無機材料又は有機材料からなる微粒子を結合させ、該微粒子を担体に固定化させる固定化形態が特に好ましい。この場合、例えばレーザートラッピングを利用して、ポリヌクレオチドの端部に結合させた微粒子を担体上の任意の位置に固定化することができる。
【0054】
微小物体の好ましい代表例の他の一群が、第5発明の(5)の細胞、生物組織又は生物体である。この群において、少なくとも細胞又は生物体は、生活状態にあるものを含む。特に、細胞又は微生物を in vitro 解析に利用する場合には、生活状態のままで固定化することが要求される。このような要求は、固定化を水中、緩衝水溶液中等で行うことにより容易に満たされる。
【0055】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明に係る担体表面に対する微小物体の配置及び固定化が、微小物体を溶解又は懸濁させた液状媒体中で行われる、微小物体の光固定化方法である。
【0056】
ここに、「液状媒体」の種類は限定されないが、通常は水、又は水を主媒体とする組成液が好ましく用いられる。
【0057】
(第6発明の作用・効果)
微小物体の担体表面に対する配置及び固定化は任意の形態で行うことができるが、微小物体を溶解又は懸濁させた液状媒体中で行うことが特に好ましい。なぜなら、この液状媒体中に浸漬した担体表面に対して微小物体を容易に展開させることができ、微小物体たるタンパク質、細胞、微生物の機能維持や生存に最適の液状媒体中で固定化を行うことができるからである。
【0058】
第6発明における液状媒体として、水又は水を主媒体とする組成液が特に好ましい。水を主媒体とする組成液としては、緩衝液、pHを調整した緩衝液、細胞や微生物の栄養分を溶解させた液、等が好ましく例示される。
【0059】
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第1発明〜第6発明に係る担体表面に対する微小物体の配置にレーザートラッピングを利用する、微小物体の光固定化方法である。
【0060】
(第7発明の作用・効果)
レーザートラッピングとは、光の放射圧を利用してレーザーの強度分布の強い部分に物体を捉える手法である。担体表面に担体が反応する波長の光を集光して照射すると、集光された部分に微小物体が捉えられ、その位置で担体表面に固定化される。担体が反応しない波長の光で微小物体をレーザートラッピングすると共に、担体が反応する波長の光で微小物体を固定化することも可能である。
【0061】
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第1発明〜第6発明において、任意の手段を用いて前記照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることにより、1種又は2種以上の多数の微小物体をそれぞれ異なる特定の分布パターンに従って担体の表面に固定化する、微小物体の光固定化方法である。
【0062】
ここに、2種以上の多数の微小物体をそれぞれ異なる特定の分布パターンに従って固定化するに当たっては、同一の担体に対して、各種類の多数の微小物体を1種類ずつ固定化するプロセスを順次繰り返しても良いし、可能な場合には各種類の微小物体についてのこのようなプロセスを同時に行っても良い。
【0063】
又、照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与える手段として、フォトマスクの利用及び/又は干渉光の使用が挙げられる。「フォトマスクの利用」とは、フォトマスクを密着させるプロキシミティー露光法による場合や、近年の半導体リソグラフィー等で主流となっているフォトマスクを密着させない投影露光法による場合等も、限定なく含まれる。
【0064】
(第8発明の作用・効果)
照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えると、微小物体も一定の分布パターンに従って担体表面に固定化されるので、これによって微小物体の固定化領域が特定の回路等を形成するように固定化を行うことができる。
【0065】
更に、例えば種類の異なる微小物体を用い、上記の固定化方法を異なる分布パターンに従って繰り返し行う(可能な場合には同時進行的に行う)と、多様な形態及び機能の複数種の回路等を任意に形成できる。
【0066】
照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段としては、前記したプロキシミティー露光法や投影露光法等によるフォトマスクの利用、又は干渉光の使用が特に好ましい。微小物体の固定化方法におけるフォトマスクの利用例を図1に示し、同方法における干渉光の使用例を図2に示す。
【0067】
図1(a)において、担体1上に微小物体を含む液状媒体2aが配置されている。この液状媒体2a上に任意の光透過パターンを形成したフォトマスク3aを被覆したもとで、照射光4を照射する。その結果、図1(b)に示すように、担体1上に、一定の光透過パターンに従って微小物体5aが固定化される。次いで、図1(c)に示すように、担体1上に種類の異なる微小物体5bを含む液状媒体2bを配置し、該液状媒体2b上に光透過パターンの異なるフォトマスク3bを被覆したもとで、照射光4を照射する。その結果、図1(d)に示すように、前記のように固定化された微小物体5aと共に、一定の光透過パターンに従って微小物体5bが固定化される。こうして、同一の担体上に、任意の種類の微小物体を任意のパターンで固定化することができる。
【0068】
図2(a)において、担体1上に微小物体6aを含む液状媒体7aが配置されている。この液状媒体7a上に照射光としての干渉光8(例えば、2光束干渉の干渉光)を照射する。その結果、図2(b)に示すように、担体1上における干渉光の強度分布の強い部分に、微小物体6aが固定化される。次いで図2(c)に示すように、担体1上に種類の異なる微小物体6bを含む液状媒体7bを配置し、該液状媒体7b上に全面照射光9を照射する。その結果、図2(d)に示すように、前記のように固定化された微小物体6aと共に、担体1上の全面に微小物体6bが固定化される。図2(c)において、全面照射光9に替えて、前記干渉光8とは強度分布を異ならせた干渉光や、任意の光透過パターンを形成したフォトマスクを用いても良い。
【0069】
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第1発明〜第8発明に係る照射光が伝搬光、近接場光又はエバネッセント光である、微小物体の光固定化方法である。
【0070】
(第9発明の作用・効果)
照射光の種類は基本的には制約されず、各種の伝搬光、近接場光又はエバネッセント光を任意に利用することができる。但し、光変形を起こし得る材料の種類に対応して照射光の波長や強度等が制約される場合や、微小物体のサイズの関係で伝搬光の利用を制約される場合等がある。
【0071】
周知のように、伝搬光は波であると言う性質から、如何なるレンズを用いても光の波長程度の大きさ以下に絞り込むことができない。従って、光の波長限界以下の精度で微小物体を固定化することができない。近接場光ではそのような制約がなく、光の波長限界以下のナノメートルオーダーの微小領域で微小物体を固定化することができる。例えば、近接場光学顕微鏡用の光ファイバープローブを近接場光の発生源として用いると、50nm以下の大きさの領域で微小物体を担体上の任意の位置に固定化できる。
【0072】
エバネッセント光とは、光が全反射する際に反射光とは逆の方向に、光の波長程度の距離に染みだす電磁場である。エバネッセント光の利用例を図3に示す。担体1上に微小物体5を含む液状媒体2が配置されており、担体1の下面にはプリズム12が設けられている。プリズム12に対して、例えば図示の方向から照射された入射光10は担体1の下側面で反射して反射光11となるが、その際に担体1の上側面にエバネッセント光が染みだし、微小物体5が担体1上の固定化される。
【0073】
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、第1発明〜第9発明のいずれかに係る微小物体の光固定化方法により担体の表面に微小物体を固定化した、微小物体固定化担体である。
【0074】
(第10発明の作用・効果)
第1発明〜第9発明に係る微小物体の光固定化方法により得られた微小物体固定化担体は、簡易かつ低コストに提供されること、従来固定化が困難であった微小物体及びその固定化パターンも含め、多様な微小物体を多様な分布パターンで固定化した担体が提供されること、固定化された微小物体の特定の機能や生活状態等が維持されていること、等のメリットがある。
【0075】
(第11発明の構成)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、前記第10発明に係る微小物体固定化担体が、担体たる集積回路基板に対して、前記第5発明の(1)又は(2)のいずれかの微小物体を一定の分布パターンに従って固定化した集積回路チップである、微小物体固定化担体である。
【0076】
(第11発明の作用・効果)
微小物体固定化担体の好ましい代表例の一つが、担体たる集積回路基板に対して、金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子、シリカ粒子又はプラスチック粒子を一定の分布パターンに従って固定化した集積回路チップである。
【0077】
(第12発明の構成)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、前記第10発明に係る微小物体固定化担体が、以下の(6)又は(7)である、微小物体固定化担体である。
(6)担体たる反応床又は基板に対して微小物体たる単一種又は多数種の酵素、抗体、抗原、微生物又はオルガネラを固定化したバイオリアクター又はバイオセンサー。
(7)生物細胞において発現するタンパク質を固定化したバイオアッセイ用試験片又はプロテオーム解析用プロテインチップ。このようなタンパク質として、抗原、抗体、細胞膜レセプター、あるいは、生物体において組織特異的、病態特異的又は発生/分化段階特異的に発現する各種の機能性タンパク質が含まれる。又、「プロテオーム解析」とは、タンパク質の構造分析、タンパク質間の相互作用の分析を含む概念である。
【0078】
(第12発明の作用・効果)
微小物体固定化担体の他の好ましい代表例として、各種のタンパク質を固定化したものが挙げられる。特に好ましい例が、第12発明における(6)のバイオリアクター又はバイオセンサー、(7)のバイオアッセイ用試験片又はプロテオーム解析用のプロテインチップである。
【0079】
各種のタンパク質は、その機能が特定のデリケートな立体構造に基づく場合が多く、例えば通常の固定化の際の化学処理、pH、熱等の外部刺激により機能を失い易い。しかし、本発明に係る光固定化の場合にはその恐れが少ない。一方、各種のタンパク質はそれぞれ分子表面の物理学的、化学的性質が異なり、通常の固定化では各種のタンパク質に応じた表面特性を持つ担体が必要であった。しかし、本発明に係る光固定化の場合には、基本的にタンパク質分子表面の性質に依存しない。
【0080】
(第13発明の構成)
上記課題を解決するための本願第13発明の構成は、前記第12発明に係る(6)のバイオリアクター又はバイオセンサーにおいて、少なくとも表層部に前記光固定化材料を用いた担体の表面に前記(6)の微小物体を固定化すると共に、前記担体の表面に電極を形成した、微小物体固定化担体である。
【0081】
(第13発明の作用・効果)
電気化学的反応を利用するリアクターあるいはセンサーは古くから研究されているが、近年、酵素に代表される生体物質の選択的反応を利用し、更に電気化学的に電気信号に変換するバイオリアクターあるいはバイオセンサーが注目されている。これらにおいては反応に用いる生体物質を電極の近傍に固定化することが重要な技術の一つであり、更にその際に、生体物質が不活性化してはならない。又、バイオリアクターやバイオセンサーの用途展開の中で、小型化、多機能化、集積化が大きな課題となっている。
【0082】
従来の生物電気化学的バイオリアクターあるいはバイオセンサーは、例えば、特定のスペーサを用いて生体物質を固定化したり、酸化膜シリコン基板あるいは導電性ポリマー等に生体物質を固定化したりしているが、いずれも化学結合を介した生体物質の固定化が基本であり、生体物質が不活性化する恐れがあった。又、一般的に製造工程が煩雑になると言う欠点もあった。第13発明の微小物体固定化担体においては、このような問題を回避できる。
【0083】
(第14発明の構成)
上記課題を解決するための本願第14発明の構成は、前記第12発明に係る(7)のバイオアッセイ用試験片又はプロテオーム解析用プロテインチップにおいて、前記担体が表面プラズモン共鳴現象を起こす金属薄膜の表面に前記光固定化材料膜を形成したものであり、該担体の表面に微小物体としての前記タンパク質を固定化したものである、微小物体固定化担体である。
【0084】
(第14発明の作用・効果)
現在、生化学の分野における重要なセンサの一つとして、表面プラズモン共鳴法(SPR法: Surface Plasmon Resonance法)に基づくSPRセンサがある。この方法は、金属の薄膜(例えば、膜厚100nm以下)に向けて全反射条件で光を入射した時に、ある特定の角度で共鳴して金属薄膜の表面波となるSPR現象を利用する。SPRが生じる角度は金属周囲の屈折率の変化によって鋭敏に変化し、入射光のエネルギーがSPRを励起するために使われて反射光の強度が減少する。従って、担体の表面に固定化された微小物体としての機能性タンパク質(リガンド)が被検査対象物体と特異的に結合すると、屈折率変化が起こるが、この屈折率の変化を鋭敏に検出できる。
【0085】
金属薄膜は1層の構成でも2層以上の積層構造でもよく、その膜厚は任意であるが200nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。金属薄膜における光固定化材料膜を形成した面とは反対側の面には、ガラス等からなる透明媒質層を設けることが好ましい。
【0086】
(第15発明の構成)
上記課題を解決するための本願第15発明の構成は、前記第10発明に係る微小物体固定化担体が以下(8)〜(10)のいずれかである、微小物体固定化担体である。
(8)遺伝的マーカーとして利用できるDNA断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。
(9)一塩基多型(SNP)部を含むDNA断片、制限酵素断片又はマイクロサテライト部を含むDNA断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。
(10)mRNAあるいはその断片、cDNAあるいはその断片、又はゲノムDNAの断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。
【0087】
(第15発明の作用・効果)
微小物体固定化担体の他の好ましい代表例の一つが、各種のポリヌクレオチドを固定化したものである。特に好ましい例が、第15発明の(8)〜(10)の各種DNAチップ又はDNAマイクロアレイである。
【0088】
(第16発明の構成)
上記課題を解決するための本願第16発明の構成は、第1発明〜第9発明のいずれかに係る微小物体の光固定化方法により担体の表面に固定化した微小物体を、該微小物体に対して移動力を与える任意の方法で、かつ微小物体を固定化したままで観察する、微小物体の観察方法である。
【0089】
ここにおいて、「移動力」とは、微小物体を配置又は固定化したい位置から他の位置へ移動させる作用を示す任意の種類の力を言う。例えば、微小物体に対する他の物体の物理的接触、微小物体に作用する原子間力、電気力、磁気力、摩擦力、光の放射圧等が挙げられる。
【0090】
(第16発明の作用・効果)
前記各種の光固定化方法により担体の表面に固定化した微小物体は、その固定力が強いので、該微小物体に対して移動力を与える任意の方法(例えば、走査型プローブ顕微鏡)で観察しても、移動し難い。その結果、微小物体の確実で精度の良い観察が可能となる。
【0091】
(第17発明の構成)
上記課題を解決するための本願第17発明の構成は、前記第16発明に係る微小物体が細胞又は微生物である場合において、これを生活状態において、かつ固定化したままで観察する、微小物体の観察方法である。
【0092】
(第17発明の作用・効果)
前記したように、微小物体が細胞又は微生物である場合において、その固定化を例えば緩衝液中等で行うことにより、これらを生活状態において観察することが可能となる。生体機能分子の機能を細胞や微生物を利用して in vitro 解析する場合、このことは非常に重要である。
【0093】
(第18発明の構成)
上記課題を解決するための本願第18発明の構成は、前記第16発明に係る微小物体がポリペプチドたる酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターである場合において、観察手段として走査型プローブ顕微鏡を用い、かつ、そのプローブを酵素基質、抗体、抗原又は細胞膜レセプターリガンドで修飾することにより、前記酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターの反応部を機能的又は立体構造的に解析する、微小物体の観察方法である。
【0094】
(第18発明の作用・効果)
第18発明の観察方法により、例えばプローブが酵素の活性中心へ達した時に基質が所定の変化を起こすため、該酵素の活性中心を立体構造的に解析することができるし、又は該酵素の基質特異性を調べることができる。抗原、抗体又は細胞膜レセプターの場合にも、同様の作用・効果を期待できる。
【0095】
【発明の実施の形態】
次に、第1発明〜第18発明の実施の形態について説明する。以下、単に「本願発明」と言うときは、これらの各発明を包括的に指している。
【0096】
〔微小物体の光固定化方法〕
本願発明に係る微小物体の光固定化方法においては、少なくとも表層部に、光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す光固定化材料を用いた担体を使用する。そして、担体の表面に、大きさが50μm以下(より好ましくは10μm以下、更に好ましくは1nm以上)の有形物体である微小物体を配置(接触)させたもとで、照射光によって微小物体を担体の表面に固定化する。
【0097】
担体の表面に微小物体を配置させる形態は任意である。例えば担体の表面に微小物体を単に散布した状態や、静電気によって付着させた状態等でも良い。しかし、担体表面に対して多数又は多量の微小物体を良好に展開させたい場合や、微小物体が乾燥状態下において固有の機能を喪失する恐れがある(例えば、タンパク質の変性、細胞の死)場合を含めて、一般的には、微小物体を水等の液状媒体中で担体表面に配置させることが好ましい。その具体的な形態として、例えば、微小物体を溶解又は懸濁させた液状媒体中へ担体を浸漬したり、又は少量の該液状媒体を担体表面に滴下する、等の実施形態を好ましく例示できる。微小物体がタンパク質、生細胞等である場合は、液状媒体を適正なpH、イオン強度、栄養物組成等を備えた緩衝液とすることが、特に好ましい。
【0098】
微小物体は、その個体ごとにバラバラに固定化される場合、多数の微小物体が特定の分布パターンに従って固定化される場合、自己組織化する性質を持つ微小物体においては、多数の微小物体を自己組織化した状態において担体の表面に配置させ、固定化する場合がある。
【0099】
〔担体〕
担体は、光固定化材料からなり、又は少なくとも表層部に光固定化材料を用いたものである限りにおいて、その形態、材質、用途等を限定されない。担体の形態を幾つか例示すれば、例えば集積回路基板やDNAチップ等のような比較的小さなチップの形態、カラム等に充填するための粒体等の形態、表面で基質溶液等を流動させる大きな固定的反応床の形態、簡便なイムノアッセイ等に用いる小サイズの試験紙の如き形態、顕微鏡観察等に用いられるスライドガラスの如き形態、等が挙げられる。
【0100】
〔光固定化材料〕
担体の少なくとも表層部を構成する光固定化材料の種類は、光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す材料である限りにおいて、限定されない。
【0101】
その好ましい例示として、光照射によりアブレーション,フォトクロミズム,分子の光誘起配向等を起こす成分(光反応性成分)を光固定化材料中に含み、結果的に光固定化材料の体積,密度,自由体積等が変化して光変形が生成されるような、有機又は無機の材料を例示することができる。他に、イオウ,セレン及びテルルのいずれかと、ゲルマニウム,ヒ素及びアンチモンのいずれかとが結合した構造を含むカルコゲナイトガラスと総称されるもの、等の無機材料も例示できる。
【0102】
光反応性成分の種類は限定されないが、例えば材料の形状変化を伴う異方的光反応を起こし得る成分である光異性化成分や光重合性成分を、好ましく例示することができる。固定化する微小物体が、担体材料との化学反応により活性が損なわれるような生体物質である場合には、光反応性成分として光異性化成分が好ましい。そして光異性化成分としては、例えばトランス−シス光異性化を生じる成分、特に代表的にはアゾ基(−N=N−)を有する色素構造、とりわけ、アゾベンゼンやその誘導体の化学構造を持つ成分を好ましく例示できる。
【0103】
光固定化材料がアゾ基を有する色素構造を含む材料である場合において、その色素構造が、1又は2以上の電子吸引性官能基(電子吸引性置換基)、及び/又は、1又は2以上の電子供与性官能基(電子供与性置換基)を備えることが、特に好ましい。これらの電子吸引性官能基と電子供与性官能基とを併せ備えることが、とりわけ好ましい。電子吸引性官能基としては、ハメット則における置換基定数σが正の値である官能基が、電子供与性官能基としてはハメット則における置換基定数σが負の値である官能基が、それぞれ好ましく例示される。
【0104】
光固定化材料が、下記の式1が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造を含む材料であることも、特に好ましい。この場合の色素構造の種類は限定されないが、例えばアゾ基を有する色素構造、とりわけ、アゾベンゼンやその誘導体の化学構造をを好ましく例示できる。
【0105】
Σ|σ|≦|σ1 |+|σ2 |・・・式1
(上記の式1において、σはハメット則における置換基定数、σ1 はシアノ基の置換基定数、σ2 はアミノ基の置換基定数である。)
光固定化材料のマトリクス中において、光反応性成分は単に分散していても良く、マトリクスの構成分子と化学結合等をしていても良い。マトリクス中の光反応性成分の分布密度をほぼ完全に制御できる点や、材料の耐熱性又は経時的安定性等の点からは、マトリクスの構成分子に対して光反応性成分が化学的に結合していることが特に好ましい。マトリクス材料としては、通常の高分子材料等の有機材料や、ガラス等の無機材料を用いることができる。マトリクスに対する光反応性成分の均一分散性あるいは結合性を考慮するなら、有機材料、とりわけ高分子材料が好ましい。
【0106】
上記高分子材料の種類は限定されないが、高分子の繰返し単位の中にウレタン基,ウレア基,又はアミド基を含んだものが、更には高分子の主鎖中にフェニレン基のような環構造を備えたものが、耐熱性の点では好ましい。高分子材料は必要な形状に成形可能である限りにおいて分子量や重合度を問わず、重合形態も直鎖状,分岐状,はしご状,星形等の任意の形態で良く、又、ホモポリマーでも共重合体であっても良い。光変形の経時的な安定性(微小物体に対する経時的な固定力の維持)のためには、高分子材料のガラス転移温度が例えば100°C以上と言った高いものの方が好ましいが、ガラス転移温度が室温程度やそれ以下のものでも使用可能である。
【0107】
以上の点から、光反応性成分を含む高分子材料として特に好ましいものの2,3の具体例として、実施例で述べるものの他、次の「化1」〜「化4」に示すものが挙げられる。これらの例において、−Xはニトロ基,シアノ基,トリフルオロメチル基,アルデヒド基又はカルボキシル基を、−Y−は−N=N−,−CH=N−又は−CH=CH−を、−R−はフェニレン基,オリゴメチレン基,ポリメチレン基又はシクロヘキサン基を、それぞれ示す。
【0108】
【化1】
【0109】
【化2】
【0110】
【化3】
【0111】
【化4】
〔微小物体〕
微小物体としては、50μm以下のサイズのもの、特に好ましくは10μm以下のサイズのもの、とりわけ好ましくは1nm以上のサイズのものを対象とすることができる。又、流体でない限り(一定の形状を持つ限り)、金属粒子の様な剛体から動物細胞のような非常に柔軟な物体までを、限定なく固定化の対象とすることができる。
【0112】
固定化の対象となる好ましい微小物体の種類は限定されないが、好ましくは、次の1)〜4)から選ばれる少なくとも1の微小物体が例示される。
【0113】
1)金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子、セラミック粒子、プラスチック粒子又はこれらの内の2以上の材料からなる(例えば2種材料の混合体又は重層構造体)粒子。これらを固定化することにより、例えば電界効果トランジスタや2次元フォトニック結晶構成することができる。又、これらを後述の固定分布パターン制御方法に従って固定化することにより、例えば電気的又は光学的な集積回路チップ等を構成できる。シリカ粒子又はプラスチック粒子には光を閉じ込める作用があり、光導波路に固定化することでレーザー発振が可能である。前記の光変形を起こし得る材料は、光反応を誘起する波長以外の光、例えば波長 1.3μmの光の導波路として利用できる。その光変形を起こし得る材料を担体としてシリカ粒子又はプラスチック粒子を固定化して、担体に光を導波させてレーザーを発振することも可能であり、レーザー発振用デバイスを容易に構成できる。
【0114】
2)ポリペプチド。より具体的には、例えば、酵素、抗原、抗体、細胞膜レセプタータンパク質。あるいは、生物細胞において発現する各種タンパク質群。より好ましくは、生物体において組織特異的、病態特異的あるいは発生/分化段階特異的に発現する一群のタンパク質。これらは、プラスチック等からなるマイクロビーズに一旦固定化し、このマイクロビーズを担体に固定化する、と言う形で固定化することもできる。
【0115】
酵素を固定化することにより、バイオリアクターやバイオセンサーを構成することができる。又、酵素を後述の固定分布パターン制御方法に従って固定化することにより、例えば集積化酵素トランジスタを構成できる。抗原又は抗体を固定化することにより、イムノアッセイ用の試験チップ等を構成できる。細胞膜レセプタータンパク質を固定化することにより、当該レセプターの機能や細胞のシグナル伝達機構等の解析手段を構成できる。生物細胞において発現する各種タンパク質群を固定化することにより、プロテオーム解析用の試験チップ等を構成できる。特に、組織特異的、病態特異的あるいは発生/分化段階特異的に発現する一群のタンパク質を固定化することにより、タンパク質の機能を発現特異性との関連において解析できる有効な手段が提供される。
【0116】
3)1本鎖又は2本鎖以上(3本鎖、4本鎖も含む)の核酸即ちポリヌクレオチド。より好ましくは、ハイブリダイゼーションが可能な1本鎖のポリヌクレオチド。より具体的には、一塩基多型部を含むDNA断片、制限酵素断片又はマイクロサテライト部を含むDNA断片を例示できる。これらのDNA断片は遺伝的マーカーとして利用できるため、その固定化により、個人のSNPや遺伝子型を解析できるDNAチップ又はDNAマイクロアレイを構成することができる。そして、法医学的鑑定や、いわゆるテーラーメイド医療の実現に貢献することができる。mRNAやその断片、cDNAやその断片、ゲノムDNA断片等も例示できる。これらも遺伝子解析に有効である。1本鎖のポリヌクレオチドを固定化する場合には、ハイブリダイゼーションを容易にするために、ポリヌクレオチドの端部に予め微粒子を結合させておき、該微粒子を前記担体に固定化させることによりポリヌクレオチドの端部を担体に固定化させることが、特に好ましい。
【0117】
4)細胞又は微生物。特に好ましくは生活状態にある細胞又は微生物。これらを固定化することにより、例えばこれらの形態学的な研究の他、細胞又は微生物を利用してDNA、タンパク質等の生体分子の機能を in vitro で解析するための有力な手段が提供される。
【0118】
〔照射光〕
照射光としては、光変形を起こす材料との組み合わせにおいてミスマッチングがない限り、伝搬光、近接場光又はエバネッセント光等の任意の照射光を利用できる。伝搬光としては、自然光、レーザー光等を利用できる。伝搬光、近接場光又はエバネッセント光として、その偏光特性を利用できる。照射光の波長や光源は限定されないが、波長に関しては、光変形を起こす材料の吸収効率の高い波長が好ましい。微小物体が例えば紫外光(波長300〜400nm)により不活性化、劣化等の影響を受ける恐れがある場合には、照射光として可視光(波長400〜600nm)を用い、かつ可視光の照射により微小物体の光固定化が可能な光固定化材料を用いることが好ましい。照射光の照射時間は、必要に応じて任意に設定すれば良い。尖頭出力の高いパルス光を使用することもできる。
【0119】
光照射の方法として、その照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることも好ましい。その場合、多数の微小物体を一定の分布パターンに従って担体の表面に固定化することができる。従って、電気的又は光学的な集積回路チップ等を構成したり、集積化酵素トランジスタを構成したりする際に有効である。特に同一の担体に対して、種類の異なる微小物体を用いて異なる分布パターンに従って繰り返し固定化を行うことにより、機能的に複雑な回路等を形成できる。
【0120】
このような照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段として、例えばフォトマスクを利用することができる。フォトマスクの利用方法は限定されないが、例えば、プロキシミティー露光法や投影露光法を好ましく例示できる。あるいは、照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段として、細く絞った集光ビームを特定のパターンに従って照射することもできる。更には、干渉光における光の強度分布を利用することもできる。
【0121】
又、微小物体を担体表面の特定部位に配置したり、多数の微小物体を一定の分布パターンに従って担体の表面に配置したりする手段として、微小物体を公知のレーザートラッピングによって所定位置へ移動させる手法も利用できる。
〔微小物体固定化担体〕
本発明の微小物体固定化担体は、上記各種の微小物体の光固定化方法により、少なくとも表層部に光固定化材料を用いた担体の表面に微小物体を固定化したものである。微小物体固定化担体として、例えば以下のものが例示される。
(無機材料又は有機材料の粒子を固定化したもの)
集積回路チップ:担体たる集積回路基板に対して、金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子、セラミック粒子、プラスチック粒子等の微小物体を一定の分布パターンに従って固定化した集積回路チップである。
(タンパク質を固定化したもの)
バイオリアクター、バイオセンサー又は集積化酵素トランジスタ:担体たる反応床又は基板に対して微小物体たる単一種又は多数種の酵素を固定化したものである。バイオリアクター、バイオセンサーとして、少なくとも表層部に光固定化材料を用いた担体の表面に微小物体としての酵素を固定化すると共に、担体の表面に電極を形成したものが、特に好ましく例示される。
【0122】
バイオアッセイ用試験片:微小物体たる抗原、抗体、細胞膜レセプター、又は生物体において組織特異的、病態特異的あるいは発生/分化段階特異的に発現する機能性タンパク質を固定化したものである。バイオアッセイ用試験片として、担体が表面プラズモン共鳴現象を起こす金属薄膜の表面に前記光固定化材料膜を形成したものであり、該担体の表面に微小物体としての前記機能性タンパク質を固定化したものが特に好ましく例示される。
(バイオセンサー等における反応計測方法)
上記各種のタンパク質を固定化した微小物体固定化担体において、特にバイオリアクター、バイオセンサーあるいはバイオアッセイ用試験片においては、固定化したタンパク質(リガンド)と被検査対象物体(アナライト)との反応を検出する手段は限定されない。
【0123】
但し、好ましい検出方法の一つとして光を用いて計測する方法を利用できる。例えば前記SPR法を利用したバイオセンサーが好ましい一例である。
【0124】
他の好ましい一例として、光固定化材料中に光を導波させて、リガンドとアナライトとの反応により生じた屈折率の変化を光固定化材料に導波させた光の位相変化として検出することもできる。その際、担体における光導波路の形成には、例えば Appl. Phys. Lett. 71, 750(1997)等に開示された手法を利用できる。屈折率の変化の検出には、光固定化材料を用いて2本の同じ長さの光導波路を持つマッハツェンダー型の光導波路を作成し、その内の1本の光導波路の表面にリガンドを固定した後、光導波路の表面にアナライトの溶液を流すと、リガンドとアナライトとの反応により光導波路周囲の屈折率が変化して、出射光の位相変化を検出することができる。
【0125】
他の好ましい一例として、リガンドとアナライトのどちらか一方に蛍光物質を固定しておき、リガンドとアナライトとの結合により生じる蛍光物質のスペクトルと蛍光強度の変化を検出する方法がある。
【0126】
更に他の好ましい一例として、少なくとも表層部に光固定化材料を用いた担体の表面にリガンドを固定化すると共に、担体の表面に電極を形成し、リガンドとアナライトとの結合に基づき、電気化学的に活性な物質を電極反応を用いて電流又は電圧の変化として検出する方法がある。
(核酸分子を固定化したもの)
DNAチップ又はDNAマイクロアレイ:遺伝的マーカーとして利用できるDNA断片を固定化したもの、一塩基多型(SNP)部を含むDNA断片、制限酵素断片又はマイクロサテライト部を含むDNA断片を固定化したもの、mRNAあるいはその断片、cDNAあるいはその断片、又はゲノムDNAの断片を固定化したもの、等である。これらの各種DNAチップ又はDNAマイクロアレイには、ポリヌクレオチドの端部に予め微粒子を結合させておき、該微粒子を前記担体に固定化させることによりポリヌクレオチドの端部を担体に固定化させたものが含まれる。
【0127】
〔微小物体の観察方法〕
担体上の微小物体を、各種の目的で任意の手段によって観察することができるのは勿論であるが、その観察手段が微小物体に対して移動力を与える場合、微小物体が十分に固定されていないと観察が困難になる。微小物体のサイズによっては、観察時の光の放射圧さえ問題になる。特に観察手段として走査型プローブ顕微鏡を用いる場合等に大きな問題となる。
【0128】
本発明の固定化方法で固定化された微小物体は、その固定力が強いため、微小物体に対して移動力を与える観察手段によって観察する場合に、非常に有利である。微小物体が、例えば微生物である場合のように自律的な運動能力を持つ場合にも、同様の理由で有利である。一方、微小物体が細胞又は微生物である場合において、前記したように、これらを生活状態において固定化して観察することができる点も非常に有利である。
【0129】
更に、微小物体がポリペプチドたる酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターである場合、観察手段として走査型プローブ顕微鏡を用い、プローブを酵素基質、抗体、抗原又は細胞膜レセプターリガンドで修飾することにより、微小物体の反応部を機能的又は立体構造的に解析することができる。このような解析方法は、本発明の固定化方法により、酵素等を機能的、構造的に維持したまま強く固定化できることを前提として、初めて成り立つものである。
【0130】
【実施例】
〔実施例1〕
(固定用担体の準備)
下記の「化5」に示す光反応性成分を含む、下記の「化6」に示すポリウレタン系高分子化合物を用いて、厚さ約1μmの薄膜を作製し、その膜面を固定領域面とする膜状の固定用担体を準備した。
【0131】
【化5】
【0132】
【化6】
なお、「化5」に示す光反応性成分の融点は169°Cであった。「化6」に示す高分子化合物のガラス転移温度は141°C、N−メチル−2−ピロリドン中の30°Cでのその固有粘度は0.69dL/g、吸収極大波長は475nmであった。
【0133】
又、上記の薄膜は、ピリジンに「化6」の高分子化合物を6.5重量%に溶解させた溶液を調製し、これを0.2μmのフィルターで濾過した後、1000rpmの回転数でスライドガラス上にスピンコートして、80°Cで20時間真空乾燥させることにより作製したものである。
【0134】
(光照射によるポリスチレン微小球の固定化)
孔径5mmの孔の空いた円盤を超音波洗浄で清浄にした後、上記の固定用担体上に載せ、前記孔の中に直径500nmのポリスチレン微小球を多数分散させた水を数滴垂らした。そして水の自然乾燥を待って、出力40mWの空冷式アルゴンレーザーを用い、波長488nm,ビーム径約3mmの直線偏光のレーザー光をそのまま、固定用担体上のポリスチレン微小球が配置されたエリアに5分間照射した。
【0135】
上記の光照射の後、コンタクトモードの原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製の商品名「 Nanoscope E」)を用いて光照射領域面を観察した。その観察結果(観察像)を図4に示す。図4から明らかなように、固定用担体表面に自己組織化して(この場合、六方最密構造配列となるように自律的に配列して)固定化されたポリスチレン微小球が観察された。
【0136】
次に、ポリスチレン微小球を固定化した上記の固定用担体をベンゼンに含浸し、ポリスチレン微小球をベンゼンに溶解した(固定用担体は材質上ベンゼンに溶解しない)。その後、固定用担体を取り出して乾燥させ、前記の原子間力顕微鏡で表面を観察した。その観察結果(観察像)を図5に示す。図5から明らかなように、固定用担体の表面には、前記のように配列して固定化されていたポリスチレン微小球に対応する位置に、対応する形状の微小な孔が形成されていた。
【0137】
〔比較例1〕
レーザー光の照射を行わなかった点以外は実施例1と全く同様にして、比較例1を行った。そして固定用担体上に配置されたポリスチレン微小球を前記原子間力顕微鏡で観察したところ、ポリスチレン微小球が実施例1と余り変わらない密度で配置されている様子は看取されたが、観察像にノイズが多く、鮮明な観察像を得ることができなかった。又、前記と同様にポリスチレン微小球をベンゼンで溶解した後、原子間力顕微鏡で固定用担体の表面を観察したところ、固定用担体の表面にはほとんど変形が認められなかった。
【0138】
〔実施例1及び比較例1の考察〕
以上の実施例1及び比較例1の結果を勘案して、本願発明者は、固定用担体の表面におけるポリスチレン微小球に対応する微小な孔の形成の有無と、観察像の上記のような相違とが関連しているのではないか、と考えた。即ち、比較例1において鮮明な観察像が得られない原因が、原子間力顕微鏡観察時におけるポリスチレン微小球の位置移動である可能性は十分に考えられる。そうだとすれば、実施例1において鮮明な観察像を得た理由は、前記の微小な孔の形成と関連している可能性が強い。
【0139】
このような考察から、本願発明者は、光照射によって固定用担体の表面にポリスチレン微小球の形状に対応した微小な孔が形成された場合、恐らくはポリスチレン微小球に対する孔の支持効果、密に接触した面積の増大によるファンデルワールス力の増大等に起因して、ポリスチレン微小球に対する固定用担体の固定力が顕著に強化されるのではないか、と推理した。この推理は、実施例1及び比較例1の結果のみからは、必ずしも断言できない。従って、このような固定力を確認するために、次の実施例1−2、実施例2及び比較例2を行った。
【0140】
〔実施例1−2〕
実施例1と同様にして、スライドガラス上に薄膜の固定用担体を作製し、この固定用担体上に直径1000nmのポリスチレン微小球を多数配置した。
【0141】
次に、固定用担体上のポリスチレン微小球が配置されたエリアに対してレーザー光を5分間照射した。このレーザー光は、出力20mWのアルゴンレーザーからのビーム径約1cm、波長488nmのレーザー光を、円筒面平凸レンズ(シグマ光器製、CLB-3030-50PM )を用いて、長さ1cm、幅約20μmの線状ビーム断面を持つレーザー光としたものである。
【0142】
上記の光照射の後、固定用担体をスライドガラスごと超音波洗浄器(出力900W)の水中に浸漬して超音波洗浄した。その後、固定用担体を取り出して乾燥させ、暗視野照明顕微鏡を用いて前記のレーザー光照射領域面を観察した。20倍の対物レンズを用いた観察結果を図15に示す。図15から明らかなように、光を照射したエリアでは照射光のビーム断面に応じて線状にポリスチレン微小球が付着しており、その周囲のエリアではポリスチレン微小球がほぼ除去されていた。即ち、固定用担体上のポリスチレン微小球に対して光照射すると、ポリスチレン微小球が強く固定化され、超音波洗浄の衝撃によっても固定用担体の表面から離脱しないことが確認された。
【0143】
〔実施例2〕
J. Am. Chem. Soc. 121, 961 (1999) に記載された方法によって、有機−無機ハイブリッドメソポーラス多孔体の微細な粒子を調製した。この多孔体粒子を、実施例1のポリスチレン微小球と同様に扱って、実施例1と同じ固定用担体上に展開・配置させた。水を蒸発させた後、アルゴンクリプトンレーザー(出力10mW)を用い、波長488nm,ビーム径約3mmの直線偏光のレーザー光をそのまま、固定用担体上の多孔体粒子が配置されたエリアに60分間照射した。
【0144】
上記の光照射の後、固定用担体を水に浸けて超音波洗浄した。超音波洗浄器の出力は90Wである。その後、固定用担体を取り出して乾燥させ、前記原子間力顕微鏡を用いて固定用担体の光照射領域面を観察した。その観察結果(観察像)を図6に示す。図6には、固定用担体の表面に多孔体粒子が高密度に固定されている様子が表現されている。このことは、水中での超音波洗浄によって多孔体粒子が固定用担体の表面から離脱していないことを意味し、多孔体粒子に対する強い固定力が確認された。
【0145】
図7は図6における白抜きの四角の枠線で囲んだ部分の拡大図であり、更に図8は図7における白抜きの四角の枠線で囲んだ部分の拡大図である。図7や図8の拡大レベルで鮮明な観察像が得られる点からも、多孔体粒子が固定用担体の表面に強く固定されていることが伺える。
【0146】
〔比較例2〕
レーザー光の照射を行わなかった点以外は実施例2と全く同様にして、比較例2を行った。そして、固定用担体上に配置された多孔体粒子を前記原子間力顕微鏡で観察しようとしたが、固定用担体の表面に多孔体粒子が極めて疎らにしか残っていなかった。その原因は、比較例1との対比から、水中での超音波洗浄時に、大半の多孔体粒子が固定力不足のために離脱したものと考えられる。又、固定用担体の表面に残った僅かな多孔体粒子を前記原子間力顕微鏡を用いて観察しようとしたが、ノイズが大きく、前記図6〜図8のごとき鮮明な観察像を得ることは全くできなかった。
【0147】
〔実施例3〕
1cm×1cmサイズのシリコン基板をカップラーで処理した後、その上にスピンコート法により膜厚7μmのポリイミド(日立化成社の商品名「PIX」を使用)膜を形成し、所定温度に加熱した。更にこのポリイミド膜上に前記「化6」の高分子化合物を用いて厚さ約500μmの薄膜を作製し、固定用担体の基板を得た。該薄膜は、ピリジンに「化6」の高分子化合物を6.5重量%に溶解させた溶液を調製し、これを0.2μmのフィルターで濾過した後、1000rpmの回転数でスライドガラス上にスピンコートして、80°Cで20時間真空乾燥し、更に150°Cで2時間真空乾燥することにより作製したものである。
【0148】
タンパク質分解酵素「PROTEASE (Subtillisin Carlsberg)」10mgを10mLのイオン交換水に溶解した。この酵素水溶液に上記の固定用担体基板を浸漬した状態で、固定用担体基板の面に波長488nm,強度80mW/cm2 のレーザー光を30分間照射した。実施例3に対する比較例3においては、固定用担体基板を酵素水溶液に30分間浸漬したが、レーザー光を照射しなかった。これらの実施例3及び比較例3に係る固定用担体基板を酵素水溶液から取り出し、それぞれ別のイオン交換水に浸漬して洗浄を行った。
【0149】
一方、人工基質( BOC-GGL-PNA)4mgをジメチルホルムアミド1mLに溶解した。この人工基質は、タンパク質分解酵素により分解されると、パラニトロアニリド(p-Nitroanilide)が溶けだして波長380nmの吸収が増大するため、溶液が黄色に呈色する。この人工基質溶液を50μL採取して450μLの10mM Tris-HCl 緩衝液(pH8.0)に加え、反応用溶液を得た。
【0150】
この反応用溶液を、前記実施例3及び比較例3に係る固定用担体基板の表面にそれぞれ50μL滴下し、37°Cで1時間保持した。その後、それぞれの反応用溶液を吸い取り、UV/VISスペクトロメーターを用いて380nmの吸光度を測定した。その結果、実施例3に係る固定用担体基板に滴下した反応用溶液では吸光度が0.117増加し、比較例3に係る固定用担体基板に滴下した反応用溶液では吸光度が0.018増加していた。
【0151】
前記のように、いずれの固定用担体基板も酵素水溶液に浸漬した後にイオン交換水で洗浄していることから、上記吸光度の増加度合いの差(酵素活性の差)は、固定用担体基板における酵素の固定力の差を反映していると考えられ、この固定力の差はレーザー光照射の有無に起因すると考えられる。
【0152】
前記の原子間力顕微鏡を用いて、実施例3及び比較例3に係る固定用担体基板の表面形状を観察した。その結果を図9(実施例3)及び図10(比較例3)に示す。図9では、約5nmから20nm程度の大きさの凹凸が観察された。図10では、1〜2nm程度以下の凹凸しか観察されなかった。図9の5〜20nmサイズの凹凸は、固定用担体基板の表面に固定化された酵素である。
【0153】
〔実施例4〕
1cm×1cmサイズのシリコン基板をカップラーで処理した後、その上にスピンコート法により膜厚7μmのポリイミド(日立化成社の商品名「PIX」を使用)膜を形成し、所定温度に加熱した。更にこのポリイミド膜上に前記「化6」の高分子化合物を用いて厚さ約500μmの薄膜を作製し、固定用担体基板を得た。該薄膜は、ピリジンに「化6」の高分子化合物を6.5重量%に溶解させた溶液を調製し、これを0.2μmのフィルターで濾過した後、1000rpmの回転数でスライドガラス上にスピンコートして、80°Cで20時間真空乾燥し、更に150°Cで2時間真空乾燥することにより作製したものである。
【0154】
λ−DNA(ニッポンジーン社製 48,502bp)をTEバッファー(pH8.0)に対して5.5μM(base)となるように溶解させた。この溶液を上記の固定用担体基板上に10μL滴下した後、固定用担体基板を1,500rpmで回転させて、λ−DNAを固定用担体基板上にスピンキャストした。そして、その上から波長488nm,強度80mW/cm2 のレーザー光を30分間照射した。実施例4に対する比較例4においては、固定用担体基板上に同様にλ−DNAをスピンキャストしたが、レーザー光を照射しなかった。
【0155】
前記の原子間力顕微鏡を用いて、実施例4及び比較例4に係る固定用担体基板の表面形状を、それぞれ2回にわたり観察した。実施例4に係る一回目の走査像を図11に、二回目の走査像を図12に、比較例4に係る一回目の走査像を図13に、二回目の走査像を図14に、それぞれ示す。実施例4に係る図11においては、図の中心部にλ−DNAの線状分子が鮮明に観察される。そして二回目の走査像である図12においてもλ−DNAの線状分子像には変化がない。比較例4に係る図13においてもλ−DNAの線状分子が観察されるが、図11に比較してノイズが多い。又、二回目の走査像である図14ではλ−DNAの線状分子像が変化している。その理由は、比較例4においてはλ−DNAが固定用担体基板の表面に十分に固定されていないため、コンタクトモードの原子間力顕微鏡走査によりλ−DNAが動くためである、と考えられる。
【0156】
〔実施例5〕
(実施例5−1:アミノ基とシアノ基を備える色素構造を含む光固定化材料)
ジアゾカップリング法を用いて、「化7」に示すアゾ色素化合物を合成した。
【化7】
即ち、500mL容のビーカー内で、イオン交換水100mLと36%塩酸45mLを混合攪拌したまま、4−アミノベンゾニトリル5.9gを加えた。次に、亜硝酸ナトリウム3.9gを溶解した水溶液18mLを15分間かけてゆっくり滴下した。そのまま30分間攪拌を続けた後、2−(N−エチルアニリノ)エタノール8.3gと36%塩酸7.5mLとイオン交換水125mLを混合攪拌した水溶液125mLを30分間かけて滴下した。なお、ここまでの反応は、全て氷冷条件で行った。
【0157】
室温に戻した後、水酸化カリウム35.4gを溶解した水200mLを上述の反応液に少しずつ加えて、析出した赤色沈殿を回収した。エタノールで赤色沈殿を5回再結晶して、「化7」に示すアゾ色素化合物の赤色結晶を得た。この結晶を酢酸エチルとヘキサンの1:1混合溶液のTLCで確認したところ、スポットは1点であるのを確認した。収率は0.65であった。
【0158】
次に、「化7」に示すアゾ色素化合物を酸クロリド反応させてメタクリル化し、「化8」に示す化合物を合成した。
【0159】
【化8】
即ち、「化7」に示すアゾ色素化合物3g、ピリジン1g、テトラハイドロフラン(THF)10mLを100mL容のなすフラスコに入れて攪拌した。次になすフラスコを氷冷して、メタクロイルクロリド1.5gを溶解したTHF10mLをなすフラスコに滴下した。そのまま攪拌を30分間行い、ピリジニウム塩が生成するのを確認した。そしてなすフラスコを室温に戻して、反応溶液を濾過し、ピリジニウム塩を取り除いた。濾液を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:1)で精製した。収率は0.71であった。1H−NMR、13C−NMR及び赤外吸収スペクトルを用いて、「化8」に示す化合物が合成されたことを確認した。
【0160】
次に、「化8」に示す化合物とメタクリル酸メチル(MMA)を共重合させ、光固定化材料を合成した。即ち、100mL容のなすフラスコ中で、「化8」に示す化合物0.362gと、予め減圧蒸留により重合禁止剤を取り除いたMMA0.9gとを混合した後、ジメチルホルムアミド50mLと2,2−アゾイソブチロニトリル82mgを加えた。ゴム栓でなすフラスコに蓋をし、窒素を1時間バブリングした系内の酸素を取り除いた。次に、窒素をバブリングしたままで、なすフラスコを60°Cに加熱した。2時間後になすフラスコから反応溶液を取り出し、メタノールを用いて再沈殿させた。この再沈殿を3回繰り返したのち、減圧乾燥して、「化8」に示す化合物とメタクリル酸メチル(MMA)を共重合させた高分子材料である光固定化材料を得た。
(実施例5−2:アミノ基とニトロ基を備える色素構造を含む光固定化材料)
本例は、実施例5−1に対する比較例である。前記「化7」に示すアゾ色素化合物に代え、市販のアゾ色素化合物である「化9」の Disperse Red 1 (DR1)を用い、これを実施例5−1と同様に酸クロリド反応させてアクリル化することにより、「化10」に示す化合物を合成した。そして「化10」に示す化合物とメタクリル酸メチル(MMA)を実施例5−1と同様に共重合させ、高分子材料である光固定化材料を合成した。
【0161】
【化9】
【0162】
【化10】
(実施例5−3:高分子フィルムの作成と紫外・可視吸収スペクトル)
実施例5−1で合成した光固定化材料50mgと実施例5−2とで合成した光固定化材料50mgとを、それぞれピリジン2mLに溶解した。これらの溶液をスライドガラス基板上にそれぞれ1mLほど滴下し、スライドガラス基板を2000rpmで回転させて溶媒を除去し、均一な厚さの高分子フィルムを作製した。これらの膜厚は、いずれも約110nmであった。
【0163】
これらの高分子フィルムの紫外・可視吸収スペクトルを分光光度計を用いて計測した結果を図16に示す。図16によれば、実施例5−1に係る高分子フィルムのスペクトル線(実線で示す)が、破線で示す実施例5−2に係る高分子フィルムのスペクトル線に比較して、吸収バンドが短波長側にあることが分かる。そして、実線で示すスペクトル線では、その吸収バンドの長波長側のカットオフ波長が570nmであって、図16に併せて示す蛍光色素 Cy3の蛍光ピーク波長よりも短い波長域にある。一方、破線で示すスペクトル線では、その吸収バンドの長波長側のカットオフ波長が650nmであり、蛍光色素 Cy3の蛍光ピーク波長よりも長い波長域にある。
(実施例5−4:DNAマイクロアレイの作製と蛍光検出)
λ−DNA(ニッポンジーン社、48kbp、0.5μg/μL)の溶液100μLを入れた1mL容のエッペンドルフチューブを2本用意した。これらのエッペンドルフチューブにそれぞれ、DNA染色用の蛍光色素(Molecular Probe社の PO-PRO-3 iodide及び TO-PRO-3 iodide)の原液を1μLずつ加えて攪拌した。なお、 PO-PRO-3 iodideは Cy3の蛍光波長とほぼ同じく570nmにピークを示す蛍光を示し、TO-PRO-3 iodide は Cy5の蛍光波長とほぼ同じ670nmにピークを示す蛍光を示す。
【0164】
こうして蛍光色素で染色したλ−DNAを Affimetrix 社製の 417 Arrayerを用いて、上記実施例5−1に係る高分子フィルムと実施例5−2に係る高分子フィルム上にスポットした。スポッティングは図17のデザインで行った。図17において、レーン1は PO-PRO-3 iodideで染色したCNAスポットであり、レーン2は TO-PRO-3 iodideで染色したCNAスポットである。実際には、各スポットの直径は125μm、スポット間隔は375μmである。
【0165】
次に、高分子フィルム上にスポットしたλ−DNAからの蛍光を Affimetrix社製の 428 Array Scannerを用いて解析した。 Cy3用のフィルターセット(励起532nm、蛍光560−580nm)を用いて解析した結果の内、実施例5−1に係る高分子フィルムについてのものを図18(a)に、実施例5−2に係る高分子フィルムについてのものを図18(b)に、それぞれ示す。又、 Cy5用のフィルターセット(励起632nm、蛍光660−680nm)を用いて解析した結果の内、実施例5−1に係る高分子フィルムについてのものを図19(a)に、実施例5−2に係る高分子フィルムについてのものを図19(b)に、それぞれ示す。
【0166】
これらの対比から図18(a)と図19(a)に示す実施例5−1に係る高分子フィルムについての結果が、図18(b)と図19(b)に示す実施例5−2に係る高分子フィルムについての結果よりもコントラストが良いことが分かる。以上のように、高分子材料内に含まれている色素の長波長側のカットオフ波長が570nm以下である場合には、 Cy3や Cy5に相当する蛍光色素を用いた蛍光分析を支障なく行うことができる。
【0167】
〔実施例6:バイオセンサ〕
(実施例6−1:抗原−抗体反応と、その蛍光検出)
実施例5−2で作製した高分子光固定化材料をピリジンに溶解し、その溶液数百mLをスライドガラス上に滴下した後、1000rpmの回転数でスライドガラスを回転させ、スライドガラス上に厚さ約1μmの薄膜をスピンコート法により作製した。これを固定化用の担体として、以下の操作を行った。
【0168】
リガンドとして、ウシ血清アルブミン(BSA)とヒト血清アルブミン(HSA)を溶解した緩衝液をそれぞれ10,5,1及び0.5(μg/μL)の濃度で調製した後、上記担体の別々の領域にピペットを用いてそれぞれ2点ずつ(1点あたり1μLずつ)滴下した。そのスポットのレイアウトを図21に示す。そして、緑色のLED光源(光強度は約5mW/cm2 )を用いて担体表面に向け1時間の光照射を行い、BSA及びHSAの固定化を行った。
【0169】
この担体におけるBSA固定化領域及びHSA固定化領域を覆うように、ギャップカバーグラス(松波ガラス製)を静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に、抗HSA−マウスモノクローナル抗体を0.001μg/μL濃度に溶解したリン酸緩衝液を浸透させた。30分後、担体をギャップカバーグラスごとリン酸緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別のリン酸緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。
【0170】
次に、もう一度、担体表面のBSA固定化領域及びHSA固定化領域を覆うように、ギャップカバーグラスを静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に、蛍光物質 Cy5で標識した抗マウス−ヤギ抗体を0.001μg/μL濃度に溶解したリン酸緩衝液を浸透させた。30分後、担体をギャップカバーグラスごとリン酸緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別のリン酸緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。
【0171】
この状態において、担体の表面を蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、HSA固定化領域が蛍光を発していることを確認したが、BSA固定化領域では蛍光を観測できなかった。これらの蛍光顕微鏡観察像を図22に示す。図22におけるスポットのレイアウトは図21と同じであり、HSA固定化領域のみが蛍光を発していることが分かる。
【0172】
更に、この担体におけるBSA固定化領域及びHSA固定化領域を覆うように、ギャップカバーグラス(松波ガラス製)を静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に10mMの塩酸水溶液を浸透させた。30分後、担体をギャップカバーグラスごとイオン交換水に浸漬してギャップカバーグラスを取り除いた。
【0173】
この状態において担体の表面を蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、HSA固定化領域でもBSA固定化領域でも、蛍光を発していることを確認できなかった。即ち、少なくとも Cy5で標識した抗マウス−ヤギ抗体が担体上に存在しないことが確認された。これらの蛍光顕微鏡観察像を図23に示す。図22におけるスポットのレイアウトは図21と同じであり、HSA固定化領域もBSA固定化領域も蛍光を発していないことが分かる。
【0174】
この状態のHSA/BSA固定化担体について、もう一度、上記と同様の抗HSA−マウスモノクローナル抗体を用いた処理と、 Cy5で標識した抗マウス−ヤギ抗体を用いた処理を行った。そして担体の表面を蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、HSA固定化領域が蛍光を発していることを確認したが、BSA固定化領域では蛍光を観測できなかった。これらの蛍光顕微鏡観察像を図24に示す。図24におけるスポットのレイアウトは図21と同じであり、図22の場合と同様に、HSA固定化領域のみが蛍光を発していることが分かる。
【0175】
以上の結果から、次のことが分かる。1)光固定化方法により、本発明の担体上に抗原を固定化できる。2)担体上に固定化した抗原を用いて抗原−抗体反応を行わせることができる。即ち抗原は活性型構造のままで固定化されている。3)抗原−抗体反応を蛍光を用いて検出できる。4)本発明の光固定化による場合、担体に特段のブロッキング処理等を行わなくても、抗原をスポットした部位以外の部位では抗体の吸着を生じない。5)抗原−抗体反応後に塩酸処理を行うと、抗体のみが解離され、光固定化した抗原は担体表面から離脱しないし失活もしない。
(実施例6−2:タンパク質の光パターニング)
実施例5−2で作製した高分子光固定化材料をピリジンに溶解し、その溶液数百μLをスライドガラス上に滴下した後、1000rpmの回転数でスライドガラスを回転させ、スライドガラス上に厚さ約1μmの薄膜をスピンコート法により作製した。これを固定化用の担体として、以下の操作を行った。
【0176】
担体の表面にギャップカバーグラス(松波ガラス製)を静置すると共に、ギャップカバーグラスの表面には三角形のアルミニウム製シートを1枚密着させることにより光不透過領域を設けた。次に、HSAを0.001μg/μLの濃度に溶解したリン酸緩衝液をギャップカバーグラスのギャップ間に浸透させた後、緑色のLED光源(光強度は約5mW/cm2 )を用いて担体表面に向け1時間の光照射を行った。その後、担体をギャップカバーグラスごとリン酸緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別のリン酸緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。
【0177】
次に、担体における上記の光照射を行った範囲内の領域を覆うようにギャップカバーグラスを静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に、抗HSA−マウスモノクローナル抗体を0.001μg/μL濃度に溶解したリン酸緩衝液を浸透させた。30分後、担体をギャップカバーグラスごとリン酸緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別のリン酸緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。
【0178】
次に、もう一度、担体における上記の光照射を行った範囲内の領域を覆うようにギャップカバーグラスを静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に、蛍光物質 Cy5で標識した抗マウス−ヤギ抗体を0.001μg/μL濃度に溶解したリン酸緩衝液を浸透させた。30分後、担体をギャップカバーグラスごとリン酸緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別のリン酸緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。
【0179】
この状態において担体の表面を蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、担体における上記の光照射を行った範囲内の領域の内、アルミニウム製シートにより設定した前記の光不透過領域を除いて、蛍光を発していることを確認した。この蛍光顕微鏡観察像を図25に示す。図25には、尖った三角形の蛍光を発していない領域が明瞭に観察される。このように、光照射領域に特定のパターンを導入することにより、タンパク質の光固定化におけるパターニングが可能である。
(実施例6−3:SPR方式のバイオセンサ)
図20に示すSPR検査法用のバイオセンサ担体13を構成した。即ち、スライドガラスであるガラス基板14上に、金を50nmの膜厚に蒸着した金属薄膜15を形成し、更にその上に実施例6−1と同じ高分子化合物2のピリジン溶液を用いて厚さ約20μmの固定化材料薄膜16をスピンコート法で作製した。
【0180】
次に、プリズム17上にマッチングオイルを滴下した後、その上にバイオセンサ担体13をガラス基板14側を下にして静置した。蒸着した金とガラス基板の界面で全反射条件になるように、波長633nmの He-Neレーザー光源18からのレーザー光を入射した。又、フォトダイオード19を用いて、反射して来たレーザー光を検出した。フォトダイオード19とレーザーの角度はゴニオメーターを用いてコントロールした。次に、バイオセンサ担体13の表面にギャップカバーグラスを静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に緩衝液を流した。その状態でSPRのシグナルを確認したところ、バイオセンサ担体13に蒸着されていない金の薄膜のみを用いて計測した場合に比較して、SPRの角度が約10°ほど広角側にシフトしていた。
【0181】
上記のように構成したバイオセンサ担体13の表面にギャップカバーグラスを静置した。リガンドとして用いるHSAの水溶液を5μg/1μLの濃度で調製し、この水溶液をギャップカバーグラスのギャップ間に浸透させ、そのまま緑色のLED光源(光強度は約5mW/cm2 )を用いて担体表面に向け1時間の光照射を行い、HSAの固定化を行った。そして担体をギャップカバーグラスごと緩衝液中に浸漬してギャップカバーグラスを取り除き、担体をもう一度別の緩衝液に浸漬して攪拌し洗浄した。一方、リガンドとして用いるBSAの同上濃度の水溶液を準備し、同様にしてBSAの固定化を行った。
【0182】
上記のHSA、BSAの固定化を行ったバイオセンサ担体13について、それぞれ前記のようにマッチングオイルを滴下したプリズム17上に静置した。蒸着した金とガラス基板の界面で全反射条件になるように、波長633nmの He-Neレーザー光源18からのレーザー光を入射した。又、フォトダイオード19を用いて、反射して来たレーザー光を検出した。フォトダイオード19とレーザーの角度はゴニオメーターを用いてコントロールした。
【0183】
次に、これらのHSA、BSAの固定化を行ったバイオセンサ担体について、それぞれ固定化領域を覆うようにギャップカバーグラスを静置し、ギャップカバーグラスのギャップの間に抗HSA−マウスモノクローナル抗体の水溶液を浸透させた。そのままの状態でSPRのシグナルを確認したところ、リガンドと抗体との結合が予測されるHSA固定化バイオセンサ担体ではSPRの角度が徐々に広角側にシフトしたが、BSA固定化バイオセンサ担体ではSPRの角度変化を観察しなかった。
【0184】
〔実施例7:電気化学的バイオセンサ〕
「化11」に示す高分子化合物(アゾポリマー1)と、前記「化6」に示す高分子化合物(アゾポリマー2)とを合成した。
【0185】
【化11】
アゾポリマー1をNMPに所定濃度で溶解して、スピンコート法によりガラス基板上に塗布し、固定化材料層を形成した。この固定化材料層の表面に白金を蒸着して1対の電極を作製した。片側の電極には、更に銀メッキを行った。次に、1対の電極の中間にスポッティング法によりグルコースオキシダーゼのリン酸緩衝液溶液をスポットし、上方より波長488nmのアルゴンレーザーのレーザー光を30分間照射した。
【0186】
こうして構成した酵素電極をポテンシオスタットに接続し、グルコースを含む塩化ナトリウム溶液に浸漬して電圧を印加したところ、グルコースオキシダーゼとグルコースとの反応により発生した過酸化水素に基づく電流を観測することができた。
【0187】
次に、上記と同様の方法によりL−アスコベートオキシダーゼを固定化した酵素電極を作製した。そしてL−アスコベートの溶液に浸漬して電圧を印加したところ、電流を観測することができた。
【0188】
更に、前記アゾポリマー2を用いて上記と同様のグルコースオキシダーゼ固定化酵素電極とL−アスコベートオキシダーゼ固定化酵素電極とを作製したところ、前記の所定の基質溶液に浸漬して電圧を印加することにより、いずれも電流を観測することができた。
【0189】
以上の結果から、本発明によれば酵素を活性型で固定化でき、かつ電気化学的バイオセンサを良好に構成できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図5】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図6】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図7】図6の要部を拡大した原子間力顕微鏡観察像である。
【図8】図7の要部を拡大した原子間力顕微鏡観察像である。
【図9】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図10】比較例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図11】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図12】本発明の実施例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図13】比較例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図14】比較例に係る原子間力顕微鏡観察像である。
【図15】本発明の実施例に係る暗視野照明顕微鏡観察像である。
【図16】本発明の実施例に係るスペクトル線図である。
【図17】本発明の実施例に係るDNAマイクロアレイのスポッティングデザインを示す図である。
【図18】図18(a)及び(b)は本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【図19】図19(a)及び(b)は本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【図20】本発明の実施例に係るSPR検査法用バイオセンサ担体を示す図である。
【図21】本発明の実施例に係る抗原のスポッティングデザインを示す図である。
【図22】本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【図23】本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【図24】本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【図25】本発明の実施例に係る蛍光観察の結果を示す。
【符号の説明】
1 担体
2a,2b 液状媒体
3a,3b フォトマスク
4 照射光
5a,5b 微小物体
6a,6b 微小物体
7a,7b 液状媒体
8 干渉光
9 全面照射光
10 入射光
11 反射光
12 プリズム
13 バイオセンサ担体
14 ガラス基板
15 金属薄膜
16 固定化材料薄膜
17 プリズム
18 光源
19 フォトダイオード
Claims (18)
- 少なくとも表層部に下記(A)の光固定化材料を用いた担体の表面に下記(B)の微小物体を配置したもとで、照射光によって微小物体を担体表面に固定化することを特徴とする微小物体の光固定化方法。
(A)光固定化材料:トランス−シス光異性化を生じて光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す材料。
(B)微小物体:大きさが50μm以下である有形物体。 - 前記光固定化材料が、アゾ基、スチルベン骨格又はアゾメチン骨格を有する色素構造を含む材料であることを特徴とする請求項1に記載の微小物体の光固定化方法。
- 前記アゾ基を有する色素構造が、ハメット(Hammet)則における置換基定数σが負である1又は2以上の電子供与性置換基を含む芳香環と、同置換基定数σが正である1又は2以上の電子吸引性置換基を含む芳香環とを、それぞれアゾ基の両側に備えたアゾベンゼン構造であることを特徴とする請求項2に記載の微小物体の光固定化方法。
- 前記アゾ基を有する色素構造が、下記の式1が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造であることを特徴とする請求項3に記載の微小物体の光固定化方法。
Σ|σ|≦|σ1 |+|σ2 |・・・式1
(上記の式1において、σはハメット則における置換基定数、σ1 はシアノ基の置換基定数、σ2 はアミノ基の置換基定数である。) - 前記微小物体が、下記(1)〜(5)群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法。
(1)無機材料粒子群。この群は、少なくとも金属粒子、金属酸化物粒子、半導体粒子及びセラミック粒子を包含する。
(2)有機材料粒子群。この群は、少なくともプラスチック粒子を包含する。
(3)高分子量の有機分子群。この群は、少なくとも、鎖状ポリペプチド分子、活性型又は不活性型の立体構造を持つタンパク質分子、これらのタンパク質分子の集合体、1本鎖あるいは2本鎖以上の核酸分子、又は多糖分子を包含する。
(4)無機材料又は有機材料からなる微粒子であって、予め高分子量の有機分子を結合させたもの。
(5)細胞、オルガネラ、細菌、ウイルス、生物組織又は生物体。この群において、少なくとも細胞、細菌又は生物体は、生活状態にあるものを含む。 - 前記担体表面に対する微小物体の配置及び固定化が、微小物体を溶解又は懸濁させた液状媒体中で行われることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法。
- 前記担体表面に対する微小物体の配置にレーザートラッピングを利用することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法。
- 任意の手段を用いて前記照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることにより、1種又は2種以上の多数の微小物体をそれぞれ異なる特定の分布パターンに従って担体の表面に固定化することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法。
- 前記照射光が伝搬光、近接場光又はエバネッセント光であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法により、担体の表面に微小物体を固定化したことを特徴とする微小物体固定化担体。
- 前記微小物体固定化担体が、担体たる集積回路基板に対して、請求項5の(1)又は(2)のいずれかの微小物体を一定の分布パターンに従って固定化した集積回路チップであることを特徴とする請求項10に記載の微小物体固定化担体。
- 前記微小物体固定化担体が、以下の(6)又は(7)であることを特徴とする請求項10に記載の微小物体固定化担体。
(6)担体たる反応床又は基板に対して微小物体たる単一種又は多数種の酵素、抗体、抗原、微生物又はオルガネラを固定化したバイオリアクター又はバイオセンサー。
(7)生物細胞において発現するタンパク質を固定化したバイオアッセイ用試験片又はプロテオーム解析用プロテインチップ。 - 前記(6)のバイオリアクター又はバイオセンサーにおいて、少なくとも表層部に前記光固定化材料を用いた担体の表面に前記(6)の微小物体を固定化すると共に、前記担体の表面に電極を形成したことを特徴とする請求項12に記載の微小物体固定化担体。
- 前記(7)のバイオアッセイ用試験片又はプロテオーム解析用プロテインチップにおいて、前記担体が表面プラズモン共鳴現象を起こす金属薄膜の表面に前記光固定化材料膜を形成したものであり、該担体の表面に微小物体としての前記タンパク質を固定化したものであることを特徴とする請求項12に記載の微小物体固定化担体。
- 前記微小物体固定化担体が、以下(8)〜(10)のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の微小物体固定化担体。
(8)遺伝的マーカーとして利用できるDNA断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。
(9)一塩基多型(SNP)部を含むDNA断片、制限酵素断片又はマイクロサテライト部を含むDNA断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。
(10)mRNAあるいはその断片、cDNAあるいはその断片、又はゲノムDNAの断片を固定化したDNAチップ又はDNAマイクロアレイ。 - 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の微小物体の光固定化方法により担体の表面に固定化した微小物体を、該微小物体に対して移動力を与える任意の方法で、かつ微小物体を固定化したままで観察することを特徴とする微小物体の観察方法。
- 前記微小物体が細胞又は微生物である場合において、これを生活状態においてかつ固定化したままで観察することを特徴とする請求項16に記載の微小物体の観察方法。
- 前記微小物体がポリペプチドたる酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターである場合において、観察手段として走査型プローブ顕微鏡を用い、かつ、そのプローブを酵素基質、抗体、抗原又は細胞膜レセプターリガンドで修飾することにより、前記酵素、抗原、抗体又は細胞膜レセプターの反応部を機能的又は立体構造的に解析することを特徴とする請求項16に記載の微小物体の観察方法。
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