JP4742491B2 - 細胞着床方法及び細胞組織作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は細胞着床方法及び細胞組織作製方法に関する。更に詳しくは、本発明は、細胞又は細胞群の培養、形態観察、スクリーニング、同種又は異種の細胞間相互作用(例えばシグナル伝達等の細胞レベルの生体現象)の研究等に好適であり、これらの観察や研究等を in vitro でありながら in vivoに近い状態で行い得る細胞着床方法に関する。この発明は、医薬品開発等におけるハイスループットスクリーニング等にも応用可能である。本発明は、更に、上記のようにして着床させたヒト等の生物細胞(各種の幹細胞を含む)を増殖させて自家利用又は他家利用のための一定の細胞組織を再生させ、これを採取する細胞組織作製方法にも関する。この発明は、いわゆる移植医療のための臓器組織再生等に有効に応用可能である。
近年、細胞の観察や細胞レベルの生体現象の研究、細胞のスクリーニング等のために細胞を担体上に固定化し、より好ましくは複数種類の細胞を固定化し、更に好ましくはこれらの細胞を特定の微細なパターニングに従って固定化する技術、とりわけ細胞アレイや細胞チップと呼ばれるような選択的細胞パターニングの技術が注目されている。又、移植医療等のための細胞培養技術や幹細胞を利用する細胞組織再生技術も注目されている。
特表2002−541458号公報 上記の特許文献1では、基材の表面のヒドロキシル基をヒドロキシル−反応性二官能性分子と接触させて単層を形成させ、ステンシルを用いて基材上の制御された位置に細胞反発性部位又は細胞接着性部位を沈積させ、これを利用して細胞をパターニングする技術を開示している。
特表2003−33177号公報 上記の特許文献2では、細胞付着性高分子層(細胞付着用)、細胞非付着性の親水性高分子層(培地付着用)及び細胞非付着性の強疎水性材料層(区画用)を積層させた後に、レーザーアブレーションを用いてこれらの材料層が同心円状に露出した微細領域を持つ高密度細胞アレイ用基板を開示している。
上記の特許文献1、特許文献2に見られるように、基材上の任意の部位に細胞等の微細な対象物をパターニングするに当たり、一般的には、半導体における微細加工技術を応用して、ステンシルやフォトマスクを利用したり、余分な部分をエッチングしたりする場合が多い。このような技術をうまく応用すれば、基材上における選択的細胞パターニングの目的は、ある程度は達成することが可能であると考えられる。
しかしながら、これらの技術においては工程が煩雑であり、極めて微細かつ複雑なパターニングを行い難いと言う問題もある。エッチング工程では一般的に強い腐食性の酸等を使用するので、細胞の固定化後にエッチング工程を行うことは、細胞やタンパク質に対する重大な悪影響のために、不可能である。更に、レーザーアブレーションには高価なレーザー照射装置が必要であるし、一般的に半導体微細加工技術を行う装置は同様に高価である。
そこで本発明は、安価な装置により簡易に実行することができ、しかも固定化対象たる細胞やこれに含まれるタンパク質の性質を損なわない細胞固定化技術、より好ましくは極めて微細なスケールでの選択的細胞パターニング技術を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す光固定化材料を少なくとも表層部に用いた着床基材を構成し、(A)該着床基材の表面に、不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を光照射によって固定化する光固定化工程と、(B)光固定化した前記細胞着床要素に対して不特定又は特定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる着床工程とを行う、細胞着床方法である。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る光固定化材料が光照射によりシス−トランス光異性化を起こし得る化学構造を含む材料である、細胞着床方法である。
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第2発明に係る化学構造がアゾ基を有する色素構造である、細胞着床方法である。
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る細胞着床要素が、細胞外基質タンパク質、細胞表面に露出した特定の抗原に対して特異的に結合する抗体又はこれを備えた物質、細胞表面に露出した特定の抗体に対して特異的に結合する抗原又はこれを備えた物質、特定の細胞膜レセプタータンパク質に対して特異的に結合するリガンド又はこれを備えた物質、多糖類(糖鎖等を包含する概念である)と結合するタンパク質又はこれを備えた物質、の内の1種以上である、細胞着床方法である。
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る光固定化工程において、細胞着床要素として特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す1種類又は2種類以上の細胞着床要素を固定化することにより、前記着床工程において細胞着床要素に対して接触させる複数種類の細胞又は細胞群の内から1種類又は2種類以上の特定された細胞又は細胞群を選択的に着床させる、細胞着床方法である。
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る光固定化工程における細胞着床要素の光固定化を特定のパターニングに従って行うことにより、細胞又は細胞群を当該パターニングに従って着床させる、細胞着床方法である。
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第6発明に係る細胞着床要素の光固定化のパターニングを細胞レベルのサイズで区画して設定する、細胞着床方法である。
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第6発明又は第7発明に係る光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルにおいて、光固定化工程における細胞着床要素の光固定化のパターニングの設定と、着床工程で用いる細胞又は細胞群の種類とを互いに異ならせることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させる、細胞着床方法である。
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第6発明又は第7発明に係る光固定化工程を2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素を順次固定化した後、着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させる、細胞着床方法である。
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第6発明又は第7発明に係る光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素をそれぞれ固定化すると共に、各サイクルの着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させる、細胞着床方法である。
(第11発明の構成)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、光変形を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す光固定化材料を少なくとも表層部に用いた着床基材を構成し、
(A)該着床基材の表面に、不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を光照射によって固定化する光固定化工程と、
(B)光固定化した前記細胞着床要素に対して一定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる着床工程と、
(C)着床させた前記細胞又は細胞群を増殖させ、あるいは増殖及び分化させることにより、一定の細胞シートあるいは細胞組織を作製し、これを採取する回収工程とを行う、細胞組織作製方法である。
(第1発明の効果)
第1発明の細胞着床方法においては、着床基材の少なくとも表層部に光固定化材料を用いて細胞着床要素を光固定化し、この細胞着床要素に対して不特定又は特定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる。従って、光固定化工程で用いる光照射装置以外の特段の装置を要しないし、光照射以外の特別な操作を要しないので、安価な装置により簡易に実行することができる。しかも、プロセスとしては光固定化工程と細胞又は細胞群の着床工程が分離しており、かつ光固定化工程では光照射と言うマイルドな手段を用いるので、着床対象たる細胞やこれに含まれるタンパク質の性質を損なう恐れがない。
更に、第1発明のような光固定化は、極めて微細な細胞着床要素の十分な固定化に対しても有効であることが確認されている。又、細胞着床要素の固定化におけるパターニングは、フォトマスク等の簡易な手段により容易に行うことができる。更に、特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を選択的にあるいは組み合わせて使用することもできる。従って、極めて微細なスケールでの選択的細胞パターニングを行うことも容易である。
第1発明において、着床工程で着床させる細胞又は細胞群としては、同一種類のものでも良いし、不特定又は特定の2種類以上の細胞又は細胞群を着床させても良い。そしてこれらの生存状態にある細胞又は細胞群を至近距離に着床させることにより、一般的な細胞間の相互作用や、特定細胞間の特殊な相互作用(例えば、神経細胞間の神経情報伝達、ガン細胞が隣接する健常細胞に及ぼす作用)等をin vivoに近い状態で研究することができる。
後述の第7発明のように、光固定化工程と着床工程とを同一の前記着床基材に対して2サイクル以上繰り返して行い、結果的に互いに異なる2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させることができるが、この方法による場合、第2サイクル目以降の光固定化工程においては、既に一部の細胞又は細胞群が着床基材に固定化されている。しかし、前記のように、光固定化工程では光照射と言うマイルドな手段を用いるので、既に固定化されている細胞又は細胞群、あるいはこれらに含まれているタンパク質の性質を損なう恐れがない。
(第2発明の効果)
光固定化材料としては、基本的には、光変形を起こし得る材料であれば良いが、第2発明のように、光照射によりシス−トランス光異性化を起こし得る化学構造を含む材料を用いることが、より好ましい。
この材料は、光照射を受けた時にシス−トランス光異性化によってある程度の可塑化を起こし、光固定化の対象である細胞着床要素の形状に依存した変形(典型的には、鋳物と鋳型の関係のように、細胞着床要素の形状に対応した凹状の変形)を起こし、細胞着床要素が仮固定化状態となる。そして光照射の終了後に、光固定化材料が固化状態に戻ることにより、前記の変形した形状による支持効果や、接触面積の増加によるファンデルワールス力の増大等により、細胞着床要素を十分に固定化することができる。
以上の固定化メカニズムからして、細胞着床要素を光固定化し、あるいは更にこの細胞着床要素に更に細胞を接着又は結合させた状態にある光固定化材料に対して、再度光照射を行って光固定化材料を可塑化状態に保ちながら、ある程度の機械的外力(水流、振動等)を付加すると、細胞着床要素を着床基材から脱離させることも可能である。この際にも細胞着床要素に接着又は結合した細胞が損なわれる恐れはない。
(第3発明の効果)
光固定化材料としては、第2発明に言う化学構造としてアゾ基を有する色素構造を含む材料が、細胞着床要素に対する固定化力が特に大きく、好ましい。
(第4発明の効果)
細胞着床要素としては、最も一般的なものが、コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ポリリシン等のいわゆる細胞外基質タンパク質又はこれを備えた物質である。これらのタンパク質の細胞一般に対する接着作用は良く知られている。
又、細胞膜表面に露出したタンパク質に着目した場合、このタンパク質と結合する性質を持つタンパク質等や、これを備えた物質も、細胞着床要素として好適に使用できる。例えば、細胞膜表面に露出した抗体/抗原に対して特異的に結合する抗原/抗体、細胞膜レセプタータンパク質に対するリガンド等や、これらを備えた物質である。これらの物質は、特定の細胞膜タンパク質と特異的に結合するので、多種のあるいは多様な状態にある細胞群の中から特定の種類あるいは特定の状態にある細胞を選択的に着床させたい場合等に、特に有効に利用することができる。
着目する細胞膜タンパク質としては、細胞膜表面に豊富に存在するような種類のタンパク質が特に好ましい。なぜなら、個体細胞における多数の細胞膜タンパク質を着床基材の細胞着床要素に多点で結合させることにより、細胞に対する十分な着床強度を持たせることができるからである。
(第5発明の効果)
第5発明の細胞着床方法においては、不特定の多数種類の細胞又は細胞群を含む試料液から特定の1種類又は2種類以上の細胞又は細胞群を選択的に着床させることを以て、これらのスクリーニングと、更に解析等を行うことができる。
(第6発明の効果)
第6発明のように、細胞又は細胞群を一定のパターニングに従って着床させることにより、一般的に細胞アレイや細胞チップと呼ばれる、細胞又は細胞群を決まった位置に集積した検査ツールを構成することができ、例えば医薬品開発におけるいわゆるハイスループットスクリーニング等への有効利用を期待することができる。
又、前記した第5発明の方法で2種類以上の細胞又は細胞群を着床させる場合には、細胞着床要素の固定位置のパターニング等によって2種類以上の細胞又は細胞群の着床位置を極めて近接した相互位置に指定することにより、これらの細胞間の相互作用を解析することもできる。
(第7発明の効果)
第7発明のように、細胞着床要素の光固定化のパターニングを細胞レベルのサイズで区画して設定することにより、細胞の解析等や細胞間相互作用の解析等を極めて精密に行うことができる。
細胞着床要素を細胞レベルのサイズで区画してパターニングすることについては、第1に、細胞着床要素が細胞外基質タンパク質、抗体、抗原、細胞膜レプタータンパク質に対するリガンド等の非常に微細な物質である点、第2に、光固定化によればこのような微細な物質を十分に固定化できる点、第3に、後述するフォトマスクの利用やレーザートラッピング法の利用等により細胞レベルのサイズでの光固定化のパターニングが別段に困難ではない点から、細胞又は細胞群を単細胞レベルのサイズで区画してパターニングすることは十分に可能である。
(第8発明の効果)
第8発明によって、同一の着床基材上で2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させると言う選択的細胞パターニングの第1の技法が提供される。
第8発明の細胞又は細胞群の着床パターニングを、第6発明のように2種類以上の細胞又は細胞群が極めて近接した相互位置に着床するように設計して行うこと、又は第7発明のように細胞レベルのサイズで区画して行うことは、もちろん可能である。
(第9発明の効果)
第9発明によって、同一の着床基材上で2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させると言う選択的細胞パターニングの第2の技法が提供される。
第9発明の細胞又は細胞群の着床パターニングを、第6発明のように2種類以上の細胞又は細胞群が極めて近接した相互位置に着床するように設計して行うこと、又は第7発明のように細胞レベルのサイズで区画して行うことは、もちろん可能である。
更に第9発明による細胞又は細胞群の着床工程において、第5発明のように、不特定の多数種類の細胞又は細胞群を含む試料液から特定の2種類以上の細胞又は細胞群を選択的に着床させることも、もちろん可能である。
(第10発明の効果)
第10発明によって、同一の着床基材上で2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させると言う選択的細胞パターニングの第3の技法が提供される。この第3の技法によれば、とりわけ高い精度で選択的細胞パターニングを行うことができる。
第10発明の細胞又は細胞群の着床パターニングを、第6発明のように2種類以上の細胞又は細胞群が極めて近接した相互位置に着床するように設計して行うこと、又は第7発明のように細胞レベルのサイズで区画して行うことは、もちろん可能である。
更に第10発明による細胞又は細胞群の着床工程において、第5発明のように、不特定の多数種類の細胞又は細胞群を含む試料液から特定の2種類以上の細胞又は細胞群を選択的に着床させることも、もちろん可能である。
(第11発明の効果)
第11発明においては、細胞がパターニングされたり多種の細胞が着床したりすることにより、1種又は多種の細胞が多層又は多重に積層又は集積された細胞シートや細胞組織を作製することができる。細胞が積層又は集積するための初期の段階で、必要な細胞種(例えば、幹細胞)とそのパターニングとの選択により、生物体内の組織に近い細胞塊を作製することもできる。
従って、第11発明の細胞組織作製方法によって、いわゆる移植医療のための細胞シート(ヒト等の表皮細胞シートや角膜細胞シート等)や再生された臓器組織(ヒト等の各種幹細胞の増殖及び分化に基づく膵臓ランゲルハンス島組織や腎臓糸球体組織等)等を in vitro で取得することができる。
次に、本願の第1発明〜第11発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において、単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。
〔細胞着床方法〕
本発明に係る細胞着床方法においては、まず光固定化材料を少なくとも表層部に用いた着床基材を構成し、次に該着床基材の表面に細胞着床要素を光照射によって固定化する光固定化工程を行い、更に光固定化したこの細胞着床要素に対して不特定又は特定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる着床工程を行う。
単一の着床基材に対する光固定化工程と着床工程との実施回数は限定されず、例えば、光固定化工程と着床工程を一回ずつ行ったり、後述するように、単一の着床基材に対して光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行ったり、光固定化工程を2サイクル以上繰り返して行った後に一回の着床工程を行ったりすることができる。
細胞着床方法の実施目的あるいは実施形態は限定されない。例えば、ヒト又はその他の動植物の各種の細胞を単に培養・保管する目的であっても良く、各種の分化細胞や幹細胞等を増殖又は組織再生等の目的のために培養する目的であっても良い。
あるいは観察や研究のために細胞又は細胞群を固定化する目的であっても良い。この目的には、細胞個体の観察や研究の他、極めて近接した位置に固定化された同種又は異種の細胞間の相互作用の研究等も含まれる。「細胞間の相互作用」として、遺伝子の発現制御に関与する細胞間のシグナル伝達、神経細胞間の神経情報伝達、ガン細胞が健常細胞に及ぼす作用、等を例示できる。又、各種の手段による有用細胞のスクリーニングのために細胞又は細胞群を固定化する場合もあり得る。
又、一定の実用目的のために細胞又は細胞群を担体又はチップとしての着床基材に固定化する場合がある。例えば、整列した細胞の各々に薬物を作用させ、細胞の形態変化等の反応から有用な薬物のスクリーニングを行うことができる。
〔着床基材〕
着床基材は、細胞着床要素を光固定化するためのベース材であって、後述する光固定化材料からなり、あるいは少なくとも表層部に光固定化材料を用いたものである限りにおいて、その形態、材質、用途等を限定されない。例えば、比較的小さなチップの形態、カラム等の充填するための粒体等の形態、いわゆる細胞培養床の形態、簡便なアッセイ等に用いる小サイズの試験紙等の形態、顕微鏡観察等に用いられるスライドガラスの如き形態、等が挙げられる。
〔光固定化材料)
着床基材の少なくとも表層を構成する光固定化材料とは、光変形(光照射によって誘起される変形)を起こし得る材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す材料である。光固定化材料の好ましい例示として、光照射によってアブレーション、フォトクロミズム、分子の光誘起配向等を起こす成分(光反応性成分)を材料中に含み、結果的に材料の体積、密度、自由体積等が変化して光変形が誘起されるような誘起又は無機の材料を挙げることができる。
光反応性成分の種類は限定されないが、材料の光変形を伴う異方的光反応を起こし得る成分である光異性化成分や光重合性成分を、好ましく例示することができる。細胞着床要素が、化学反応等によって損なわれ易い活性の維持を必要とするものである場合(例えば抗体である場合)には、光反応性成分として光異性化成分が特に好ましい。光異性化成分としては、光照射によりシス−トランス光異性化を起こし得る化学構造を含む成分、特に好ましくはアゾ基(−N=N−)を有する色素構造(例えば、アゾベンゼンやその誘導体の化学構造)を含む成分を挙げることができる。
光固定化材料のマトリクス中において、光反応性成分は単に分散していても良いし、マトリクスの構成分子と化学結合等の結合をしていても良いが、光反応性成分の均一な分布密度を制御し易い点や、材料の光固定化機能の耐熱性や経時的安定性等の見地からは、後者がより好ましい。マトリクス材料としては、有機材料、特に有機高分子材料が好ましいが、ガラス等の無機材料を用いることも可能である。
上記高分子材料の種類は限定されないが、高分子の繰返し単位の中にウレタン基,ウレア基,又はアミド基を含んだものが、更には高分子の主鎖中にフェニレン基のような環構造を備えたものが、耐熱性の点では好ましい。高分子材料は必要な形状に成形可能である限りにおいて分子量や重合度を問わず、重合形態も直鎖状,分岐状,はしご状,星形等の任意の形態で良く、又、ホモポリマーでも共重合体であっても良い。光変形の経時的な安定性(細胞着床要素に対する経時的な固定力の維持)のためには、高分子材料のガラス転移温度が例えば100°C以上と言った高いものの方が好ましいが、ガラス転移温度が室温程度やそれ以下のものでも使用可能である。
以上の点から、光反応性成分を含む高分子材料として特に好ましいものの2,3の具体例として、実施例で述べるものの他、次の「化1」〜「化4」に示すものが挙げられる。これらの例において、−Xはニトロ基,シアノ基,トリフルオロメチル基,アルデヒド基又はカルボキシル基を、−Y−は−N=N−,−CH=N−又は−CH=CH−を、−R−はフェニレン基,オリゴメチレン基,ポリメチレン基又はシクロヘキサン基を、それぞれ示す。
〔光固定化工程〕
光固定化工程においては、前記した着床基材の表面に不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を配置し、これを光照射によって着床基材の表面に固定化する。
着床基材の表面に細胞着床要素を配置する方法は任意である。例えば、細胞着床要素を静電気力によって着床基材の表面に付着させても良い。しかし、細胞着床要素がタンパク質等であることを考慮した場合、細胞着床要素を水等の液状媒体中に含有させた状態で着床基材の表面に接触させることが好ましい。液状媒体は適正なpHやイオン強度等を備えた緩衝液とすることが特に好ましい。そして着床基材の表面をこのような液状媒体中に浸漬させたり、着床基材の表面に少量の液状媒体を接触させた状態において、光照射を行うことができる。
〔細胞着床要素〕
本発明に係る細胞着床要素とは、不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す物質を言う。以下の各種の細胞着床要素の内、特定の条件を満たす細胞又は細胞群に対して特異的に接着性又は結合性を示すものが、とりわけ利用価値が大きい。
細胞着床要素の第1のカテゴリーは、細胞外基質タンパク質又はこれを備えた物質である。細胞外基質タンパク質としてはコラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ポリリシン等を例示することができる。又、細胞外基質タンパク質を備えた物質としては、例えば、細胞外基質タンパク質を化学結合等の手段で結合させた有機材料又は無機材料の微小球等を例示することができる。この場合、実際には微小球が着床基材に光固定化される。
細胞着床要素の第2のカテゴリーは、細胞表面に露出した特定の膜タンパク質に対して結合性を示す抗原、抗体、細胞膜レセプタータンパク質のリガンド、等である。あるいは、これらの一種を備えた物質、例えば、これらの一種を化学結合等の手段で結合させた有機材料又は無機材料の微小球も用いることができる。 細胞着床要素の第3のカテゴリーは、多糖類(糖鎖等を包含する概念である)と結合するタンパク質である。あるいは、これらの一種を備えた物質、例えば、これらの一種を化学結合等の手段で結合させた有機材料又は無機材料の微小球等である。
〔光照射〕
光照射を行う照射光としては、光固定化材料との組み合わせにおいてミスマッチングがない限り、伝搬光、近接場光又はエバネッセント光等の任意の照射光を利用できる。伝搬光としては、自然光、レーザー光等を利用できる。伝搬光、近接場光又はエバネッセント光として、その偏光特性を利用できる。照射光の波長や光源は限定されないが、波長に関しては、光固定化材料の吸収効率の高い波長が好ましい。細胞着床要素が例えば紫外光(波長300〜400nm)により不活性化、劣化等の影響を受ける恐れがある場合には、照射光として可視光(波長400〜600nm)を用い、かつ可視光の照射により細胞着床要素の光固定化が可能な光固定化材料を用いることが好ましい。照射光の照射時間は必要に応じて任意に設定すれば良い。尖頭出力の高いパルス光を使用することもできる。
光照射の方法として、その照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることも好ましい。その場合、多数の細胞着床要素を一定の分布パターンに従って着床基材の表面に固定化することができる。
このような照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段として、例えばフォトマスクを利用することができる。フォトマスクの利用方法は限定されないが、例えば、プロキシミティー露光法や投影露光法を好ましく例示できる。あるいは、照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段として、細く絞った集光ビームを特定のパターンに従って照射することもできる。更には、干渉光における光の強度分布を利用することもできる。
又、細胞着床要素を着床基材表面の特定部位に配置したり、多数の細胞着床要素を一定の分布パターンに従って着床基材の表面に配置したりする手段として、細胞着床要素を公知のレーザートラッピングによって所定位置へ移動させる手法も利用できる。
〔着床工程:細胞〕
着床工程においては、着床基材の表面に光固定化した前記細胞着床要素に対して、不特定又は特定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる。
この場合、細胞着床要素として、特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す1種類又は2種類以上の細胞着床要素を固定化することにより、着床工程において、細胞着床要素に対して接触させる複数種類の細胞又は細胞群の内から、1種類又は2種類以上の特定された細胞又は細胞群を選択的に着床させることが可能となる。
なお、「細胞」には、多細胞生物に由来する細胞の他、単細胞生物の細胞も包含される。又、「細胞群」には、同種細胞の集合体の他、異種細胞の混成に係る細胞群も包含される。
細胞着床要素に細胞又は細胞群を接触させる形態は限定されないが、好ましくは、細胞を含有する液状媒体を着床基材の表面に接触させると言う形態(例えば着床基材の表面を液状媒体中に浸漬させ、又は着床基材の表面に少量の液状媒体を接触させると言う形態)が挙げられる。この場合の液状媒体は、適正なpHやイオン強度等を備えた緩衝液とすることが好ましい。
〔パターニング〕
光固定化工程における細胞着床要素の光固定化を特定のパターニングに従って行うことにより、細胞又は細胞群を当該パターニングに従って着床基材に着床させることが、とりわけ好ましい。このような光固定化のパターニングは、細胞レベルのサイズで区画して設定することができるし、又、そうすることが特に好ましい場合がある。「細胞レベルのサイズ」とは、例えば、光固定化のパターニングが0.1μm〜1000μm程度のオーダーで設定されていることを言う。
光固定化のパターニングのための有効な一手段として、光固定化工程での光照射の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることができる。照射光の照射領域あるいは照射強度の分布を与える手段として、例えばフォトマスクを利用できる。フォトマスクの利用方法は限定されないが、例えば、プロキシミティー露光法や投影露光法を好ましく例示できる。又、他の有効な一手段として、細く絞った集光ビームを特定のパターンに従って照射することもできる。更には、干渉光における光の強度分布を利用することもできる。
このような細胞着床パターニングは多様な実施形態において行うことが可能であるが、好ましい第1の実施形態として、光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、各サイクルにおいて、光固定化工程における細胞着床要素の光固定化のパターニングの設定と、着床工程で用いる細胞又は細胞群の種類とを互いに異ならせることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させること、を例示できる。
細胞着床パターニングの好ましい第2の実施形態として、光固定化工程を2サイクル以上繰り返して行い、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素を順次固定化した後、着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させること、を例示できる。
細胞着床パターニングの好ましい第3の実施形態として、光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素をそれぞれ固定化すると共に、各サイクルの着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させること、を例示できる。
〔細胞組織作製方法〕
細胞組織作製方法の発明においては、前記した光固定化工程と着床工程に加えて、「回収工程」、即ち、着床させた細胞又は細胞群を増殖させ、あるいは増殖及び分化させることにより、一定の細胞シートあるいは細胞組織を作製し、これを採取する工程が付加される。光固定化工程と着床工程との実施形態は、前記と同様である。
利用する細胞又は細胞群としては、生物(特に動物、とりわけヒト)の増殖性のある細胞又は細胞群が好ましい。ヒト等の動物の各種の幹細胞も好ましく例示される。回収工程においては、着床工程で着床させた細胞又は細胞群を増殖させ、あるいは増殖及び分化させることにより、一定の細胞シートあるいは細胞組織を作成し、これを採取する。細胞シートあるいは細胞組織の種類及び内容は限定されないが、例えば、ヒトの表皮組織、角膜組織、膵臓や腎臓等の臓器又はその一部の組織を例示することができる。
回収工程においては、細胞又は細胞群を増殖や分化に有利な栄養状態及び培養条件に維持することが好ましい。
作製した細胞シートや細胞組織を採取する(着床基材から剥離させる)方法は限定されない。着床基材を構成する光固定化材料は、光照射中は細胞又は細胞群に対する固定力がやや弱まる傾向がある。従って、光照射を行いながら、細胞シートや細胞組織を着床させた着床基材に対して液体培地の攪拌、流動、加振等のマイルドな物理的外力を付加させることにより、細胞シートや細胞組織を、その損傷を伴うことなく、着床基材から剥離させ採取することができる。
(実施例1:光固定化材料の合成)
高分子光固定化材料の合成を常法に従い行った。まず、公知のジアゾカップリング法を用いて下記の「化5」に示す化合物を合成した。次に、公知の酸クロリド反応により、下記の「化6」に示す化合物を合成した。これらの化合物においては、アゾベンゼン構造部分が光反応性成分を構成している。
市販のメタクリル酸メチル(MMA:和光純薬製)を入手し、減圧蒸留により重合禁止剤を取り除いておいた。そして、「化6」に示す化合物0.362g(0.001モル)と、MMA0.600g(0.006モル)とを共重合させた高分子光固定化材料を合成した。
100mL容のなすフラスコに上記の各モノマーを上記の割合で投入・混合した後、ジメチルホルムアミド50mLと2,2−アゾイソブチロニトリル82mgを加えた。なすフラスコにゴム栓をした後、窒素を1時間バブリングして系内の酸素を取り除いた。次に窒素をバブリングしたままでなすフラスコを60°Cで2時間加熱した。その後、なすフラスコから反応溶液を取り出し、メタノールを用いて再沈殿させた。このような再沈殿を3回繰り返した後に減圧蒸留させ、実施例1に係る2元共重合の高分子光固定化材料を得た。
(実施例2:着床基材の作製)
実施例1に係る高分子光固定化材料12.5mgをピリジン2mLに溶解し、ポア径0.2μmのフィルターでろ過した。ろ液をMASコートスライドガラス(松浪ガラス社製)の表面に滴下し、このスライドガラスを回転数4000r.p.m.でスピンキャストして、スライドガラスの表面に高分子光固定化材料のフィルムを形成することにより、着床基材を作製した。高分子光固定化材料フィルムは約20nmの均一な膜厚であることを吸光度測定により確認した。
(実施例3:細胞着床−1)
実施例2で得た着床基材の表面の特定の部分に対し、コラーゲンIの0.1%PBS(リン酸緩衝食塩液: Phosphate Buffered Saline)溶液1μLを滴下して乾燥させ、青色LED光を30分間照射した。その後、0.1% Tween/PBS溶液にて着床基材上の未固定のコラーゲンIを洗浄・除去し、コラーゲンIを光固定化した着床基材を得た。
この着床基材をシャーレに収容した RPMI 1640培地中に浸漬し、併せてこの培地中でマウスハイブリドーマ細胞を3日間培養した。培養の終了後、この着床基材をRPMI 1640 培地で洗浄し、ついで着床基材の表面を光学顕微鏡にて観察したところ、着床基材表面において上記のようにコラーゲンIの溶液を滴下した部分のみに、マウスハイブリドーマ細胞が観察された。
(実施例4:細胞着床−2)
実施例2で得た着床基材をコラーゲンIの0.1%PBS溶液中に浸漬させ、その着床基材表面の特定の部分に青色LED光を60分間照射した。その後上記のPBS溶液中から着床基材を取り出して0.1% Tween/PBS溶液にて着床基材上の未固定のコラーゲンIを洗浄・除去することにより、コラーゲンIを光固定化した着床基材を得た。
この着床基材をシャーレに収容した RPMI 1640培地中に浸漬し、併せてこの培地中でマウスハイブリドーマ細胞を3日間培養した。培養の終了後、この着床基材をRPMI 1640 培地で洗浄し、ついで着床基材の表面を光学顕微鏡にて観察したところ、着床基材表面において上記のように青色LED光を照射した部分のみに、マウスハイブリドーマ細胞が観察された。
(実施例5:細胞着床−3)
実施例2で得た着床基材の表面のそれぞれ特定の部分に対し、コラーゲンIの0.1%PBS溶液1μLと、IgE10μg/mL PBS溶液とを滴下して乾燥させ、青色LED光を30分間照射した。その後、0.1% Tween/PBS溶液にて着床基材上の未固定のコラーゲンI及びIgEを洗浄・除去し、コラーゲンI及びIgEを光固定化した着床基材を得た。
この着床基材をシャーレに収容した RPMI 1640培地中に浸漬し、併せてこの培地中でヒトマスト細胞及びヒト上皮細胞を3日間共培養した。培養の終了後、この着床基材をRPMI 1640 培地で洗浄し、ついで着床基材の表面を光学顕微鏡にて観察したところ、着床基材表面において上記のようにコラーゲンIの溶液を滴下した部分のみにヒト上皮細胞が、IgEの溶液を滴下した部分のみにヒトマスト細胞が、それぞれ観察された。
(実施例6:細胞着床−4)
実施例2で得た着床基材をコラーゲンIの0.1%PBS溶液中に浸漬させ、その着床基材表面のそれぞれ特定の部分に直径10μm及び30μmの青色レーザー光を30分間照射した。その後上記のPBS溶液中から着床基材を取り出して0.1% Tween/PBS溶液にて未固定のコラーゲンIを洗浄・除去することにより、コラーゲンIを上記2点のスポットで光固定化した着床基材を得た。
この着床基材をシャーレに収容した RPMI 1640培地中に浸漬し、併せてこの培地中でマウスハイブリドーマ細胞を3日間培養した。培養の終了後、着床基材をRPMI 1640 培地で洗浄し、ついで着床基材の表面を光学顕微鏡にて観察したところ、着床基材表面における上記の直径10μmのスポットには1個のマウスハイブリドーマ細胞が、直径30μmのスポットには平均3.2個のマウスハイブリドーマ細胞が、それぞれ観察された。
本発明の細胞着床方法により、細胞やこれに含まれるタンパク質の性質を損なわない細胞固定化技術、選択的細胞パターニング技術が安価に提供される。

Claims (11)

  1. アゾベンゼン骨格を有する色素構造であって、かつ、アゾベンゼン骨格の片側のベンゼン環にはマトリクスの構成分子と化学結合したアミノ基を備えると共に他の片側のベンゼン環にはニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アルデヒド基又はカルボキシル基から選ばれる官能基を備え、シス−トランス光異性化を生じて光変形を起こし得る化学構造を含む材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す光固定化材料を少なくとも表層部に用いた着床基材を構成し、
    (A)該着床基材の表面に、不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を光照射によって固定化する光固定化工程と、
    (B)光固定化した前記細胞着床要素に対して不特定又は特定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる着床工程と、
    を行うことを特徴とする細胞着床方法。
  2. 前記アゾベンゼン骨格を有する色素構造であって、かつ、アゾベンゼン骨格の片側のベンゼン環にはマトリクスの構成分子と化学結合したアミノ基を備えるものが、下記の「化6」に示すものであることを特徴とする請求項1に記載の細胞着床方法。
  3. 前記細胞着床要素が、細胞外基質タンパク質又はこれを備えた物質、細胞表面に露出した特定の抗原に対して特異的に結合する抗体又はこれを備えた物質、細胞表面に露出した特定の抗体に対して特異的に結合する抗原又はこれを備えた物質、特定の細胞膜レセプタータンパク質に対して特異的に結合するリガンド又はこれを備えた物質、多糖類と結合するタンパク質又はこれを備えた物質の内の1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の細胞着床方法。
  4. 前記光固定化工程において、細胞着床要素として特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す1種類又は2種類以上の細胞着床要素を固定化することにより、前記着床工程において細胞着床要素に対して接触させる複数種類の細胞又は細胞群の内から1種類又は2種類以上の特定された細胞又は細胞群を選択的に着床させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の細胞着床方法。
  5. 前記光固定化工程における細胞着床要素の光固定化を特定のパターニングに従って行うことにより、細胞又は細胞群を当該パターニングに従って着床させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の細胞着床方法。
  6. 前記細胞着床要素の光固定化のパターニングを細胞レベルのサイズで区画して設定することを特徴とする請求項5に記載の細胞着床方法。
  7. 前記光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルにおいて、光固定化工程における細胞着床要素の光固定化のパターニングの設定と、着床工程で用いる細胞又は細胞群の種類とを互いに異ならせることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の細胞着床方法。
  8. 前記光固定化工程を2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素を順次固定化した後、着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の細胞着床方法。
  9. 前記光固定化工程と着床工程とを2サイクル以上繰り返して行い、かつ、各サイクルの光固定化工程において互いに異なる光固定化のパターニングに従って互いに異なる特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す2種類以上の細胞着床要素をそれぞれ固定化すると共に、各サイクルの着床工程においてはそれぞれ前記細胞着床要素に特異的に接着又は結合する細胞又は細胞群を着床させることにより、2種類以上の細胞又は細胞群を互いに異なるパターニングに従って着床させることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の細胞着床方法。
  10. アゾベンゼン骨格を有する色素構造であって、かつ、アゾベンゼン骨格の片側のベンゼン環にはマトリクスの構成分子と化学結合したアミノ基を備えると共に他の片側のベンゼン環にはニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アルデヒド基又はカルボキシル基から選ばれる官能基を備え、シス−トランス光異性化を生じて光変形を起こし得る化学構造を含む材料であって、表面に配置された微小物体に対して光照射時に固定化能力を示す光固定化材料を少なくとも表層部に用いた着床基材を構成し、
    (A)該着床基材の表面に、不特定又は特定の細胞に対する接着性あるいは結合性を示す細胞着床要素を光照射によって固定化する光固定化工程と、
    (B)光固定化した前記細胞着床要素に対して一定の細胞又は細胞群を接触させて着床させる着床工程と、
    (C)着床させた前記細胞又は細胞群を増殖させ、あるいは増殖及び分化させることにより、一定の細胞シートあるいは細胞組織を作製し、これを採取する回収工程と、
    を行うことを特徴とする細胞組織作製方法。
  11. 前記アゾベンゼン骨格を有する色素構造であって、かつ、アゾベンゼン骨格の片側のベンゼン環にはマトリクスの構成分子と化学結合したアミノ基を備えるものが、下記の「化6」に示すものであることを特徴とする請求項10に記載の細胞組織作製方法。
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