JP3816662B2 - 炭酸ガス吸収部材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素を主成分とする燃料を利用するエネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭酸ガスを分離回収するシステム、または燃料供給部におけるガスの生成に利用される炭酸ガス吸収部材に関し、特に500℃を越える高温で繰り返し利用できる炭酸ガス吸収部材に係わる。
【0002】
【従来の技術】
例えば排ガス中からの炭酸ガス分離方法としては、アルカノールアミン系溶媒による化学吸収プロセスや、圧力スィング法、深冷分離法、膜分離法等が知られている。
【0003】
しかしながら、いずれの方法も使用される膜や溶媒などの材料の耐熱性から導入ガス温度の上限を200℃程度に抑える必要がある。したがって、高温の排気ガスを排出するシステムから分離した炭酸ガスを、他の高温系にリサイクルして利用しようとしても、熱交換等による冷却を必要とし、結果的に炭酸ガス分離のために消費するエネルギーが大きくなるため、幅広い利用が妨げられていた。
【0004】
このようなことから、本出願人はリチウム化ジルコニアを用いた炭酸ガスの分離方法(特開平9−99214号)を提案した。この方法は、高温の排気ガス中から冷却工程を経ずに炭酸ガスの分離を行うことができる。この方法による炭酸ガスの分離は、取り扱いの点からペレット状の吸収材を用いることが検討されている。
【0005】
しかしながら、ペレット状のリチウム化ジルコニアを炭酸ガスの吸収分離に適用した場合、短時間の大きな温度変動に伴なう熱衝撃に耐えることが困難で、繰り返し使用すると炭酸ガスの分離能力が低下するという問題があった。また、前記ペレットを反応容器に充填した場合、圧力損失が増大する。特に、このような圧力損失の増大は自動車のエンジンの排気系に適用した場合の効率低下の要因になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、繰り返し使用においても高い炭酸ガス吸収能力を有する炭酸ガス吸収部材を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる炭酸ガス吸収部材は、ハニカム形状の耐熱構造基材の表面にガス吸収材層を形成した構成を有し、かつ前記ガス吸収材が特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じる物質であって、
前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成する1セルの開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係わる炭酸ガス吸収部材において、前記ガス吸収材層は多孔質であることを許容する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる炭酸ガス吸収部材を詳細に説明する。
この炭酸ガス吸収部材は、ガス吸収材層をハニカム形状の耐熱構造基材の表面に形成した構成を有する。前記ガス吸収材は、特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じる物質である。
【0011】
このような炭酸ガス吸収部材は、例えば図1に示す円柱状または図2に示す角柱状のハニカム構造基材1の複数のセル2内面を含む表面に図3に示すようにガス吸収材層3を形成した構造を有する。ここで、ハニカム形状は通常1平方インチ当たりの孔(セル)の数により規定され、例えば1平方インチ当たりのセル数が100個であるならば100セル/inch2 のように記述する。
【0012】
前記ガス吸収材としては、例えばリチウムと無機酸化物の化合物が挙げられる。この化合物は、リチウムが特定の温度領域で炭酸ガスと反応して炭酸リチウム(Li2 CO3 )を生成し、前記特定温度領域より高温領域で炭酸リチウムから再びリチウムと無機酸化物よりなる化合物に戻る。例えば、前記化合物がリチウム化ジルコニア(Li2 ZrO3 )である場合には、下記式によって炭酸ガスを吸収し、それより高い温度領域で下記式の右側から左側への反応が生じてリチウム化ジルコニアに戻る。
【0013】
Li2 ZrO3 (s )+CO2 (g )→ZrO2 (s )+Li2 CO3(l)
前記無機酸化物としては、例えばZrO2 ,Al2 O3 ,MgO,CaO,Fe2 O3 ,CeO2 等を挙げることができる。
【0014】
前記炭酸ガスの吸収・放出の温度領域は、使用するリチウムと無機酸化物からなる化合物の種類により異なる。例えば、LiとZrO2 との複合酸化物であるLi2 ZrO3 は炭酸ガス吸収反応が400〜580℃で起こり、炭酸ガス放出反応は600℃以上の温度で起こる。
【0015】
前記炭酸ガス吸収層は、前述した化合物以外の成分としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物、炭酸塩、水和物を用いることができる。具体的には、Li2 CO3 ,Na2 CO3 ,K2 CO3 ,MgO等を挙げることができる。このような成分を配合することにより炭酸ガスの吸収能力がより向上されたガス吸収材層を実現できる。前記ガス吸収材層に占める化合物と他の成分との配合比率は、重量割合にて化合物40〜100%、他の成分0〜60%、より好ましくは化合物60〜98%、他の成分2〜40%にすることが望ましい。
【0016】
前記ガス吸収材層の性状は、特に規制されないが、気孔率が20〜60%である多孔質構造を有することが好ましい。ここで、気孔率とは内部への経路として存在する「気孔」の体積の吸収材層全体積に対する割合を意味する。このような気孔率が20〜60%であるガス吸収材層は、優れた炭酸ガス吸収能力と繰り返しと特性とを安定的に保持する。また、前記範囲の気孔率を有する吸収材層は炭酸ガスの吸収に伴う体積変化の緩和に寄与する。より好ましい気孔率は、30〜40%である。
【0017】
前記ハニカム形状の耐熱構造基材としては、耐熱衝撃性に優れた材料から作られることが好ましく、例えばムライト、コーディエライト、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物またはNi,Co,Crを主成分とする金属または合金等が望ましい。
【0018】
前記ハニカム形状の耐熱構造基材に形成される前記ガス吸収材層の厚さは、図3に示すように前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成するセル2の開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層3の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすことが好ましい。L/dの値を0.04以下にすると吸収材の絶対量が少なくなるため、炭酸ガス吸収効率が低下する恐れがある。一方、L/dの値が0.3以上になるとセルの開口部に対する吸収材層の体積割合が増大するため、吸収材層の比表面積の低下を招く恐れがある。また、セルの開口部そのものが小さくなるため、結果として炭酸ガスの吸収効率の低下を招く恐れがある。より好ましいL/dの値は、0.07<L/d<0.3である。
【0019】
次に、本発明に係わる炭酸ガス吸収材部材の製造方法の一例を説明する。
炭酸ガス吸収材の粉末を含み、エタノール、アセトン、水等の溶媒で分散させたスラリーをハニカム形状の耐熱構造基材に塗布した後、酸素を含む雰囲気もしくは不活性ガス雰囲気中で焼成することによりガス吸収材層を前記基材上に形成して炭酸ガス吸収部材を製造する。
【0020】
前記スラリーの調製において、炭酸ガス吸収材に対して有機化合物を例えば7〜30wt%混合することにより、耐熱構造基材に形成されたガス吸収材層を例えば気孔率が20〜60%である多孔質構造にすることが可能にである。前記有機化合物は、酸素雰囲気中での焼成に際し、気散してガス吸収材層の内部および表面に気孔を形成する役目をなす。前記有機化合物としては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等を用いることができる。これらの有機化合物は、粉末状、繊維状、粒状の形態で使用される。
【0021】
前記焼成は、300〜1000℃の温度で行うことが好ましい。
前記スラリーを耐熱構造材に塗布する前に、前記基材表面にアルミナのような多孔質物層を被覆してもよい。
【0022】
なお、前記ガス吸収層を前記ハニカム形状の耐熱基材に形成する方法は、塗布法に限らず、プラズマ溶射法、ガス溶射法、スパッタ法または化学気相蒸着法等を用いて行ってもよい。
【0023】
以上説明したように本発明に係わる炭酸ガス吸収部材は、ハニカム形状の耐熱構造基材の表面に特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じるガス吸収材層を形成した構造を有する。
【0024】
このような炭酸ガス吸収部材は、例えばペレット状の炭酸ガス吸収材のみでは活性が維持し得ないガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたって安定した炭酸ガス吸収性能を発揮することができる。
【0025】
また、前記ハニカム形状の耐熱構造基材に形成される前記ガス吸収材層の厚さは、図3に示すように前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成するセル2の開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層3の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすようにすることによって、ガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたってより一層安定した炭酸ガス吸収性能を発揮することができる。
【0026】
さらに、前記耐熱構造基材に形成されるガス吸収層を多孔質構造にすることによって、ガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたって安定した高い炭酸ガス吸収性能を発揮できる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
(実施例1)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末とを重量比で29:49:22となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。
【0028】
次いで、直径30mm、長さ100mmで、1平方インチ当たり100個のセルを有する円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0029】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様な炭酸ガス吸収材の粉末をプレス圧500kgf/cm2 で成形し、円柱状ペレット(直径約20mm,厚さ3mm)に加工した。
【0031】
得られた炭酸ガス吸収材の気孔率を調べた。その結果を下記表1に示す。
(実施例2)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのNa2 CO3 粉末とを重量比で29:49:22となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。
【0032】
次いで、実施例1と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0033】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0034】
(実施例3〜5)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの8モル%Y2 O3 固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末と純度99.9%とを重量比で26:44:30となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥し、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0035】
次いで、実施例1と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを厚さを異ならせてそれぞれ塗布し、大気中、800℃で焼成することにより3種の炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0036】
得られた各炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0037】
実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材、比較例1の炭酸ガス吸収材および実施例1で得られた炭酸ガス吸収材の粉末(60g)[比較例2]をそれぞれ反応容器に充填した後、反応容器の入口側から図4に示す温度プログラムにしたがって昇温させながら、500℃になった時点で、ガスをCO2 50%(窒素バランス)ガスに切り替え、1L/minの条件で1時間流通させた。1時間経過後、ガスを再び不活性ガスにし、反応容器を閉塞系とし、図4に示す温度プログラムに従って700℃まで昇温した。その後、反応容器の出口側のガス成分を質量分析により測定した。この昇温時に質量分析計で得られたガス成分中の二酸化炭素分圧低下の割合を求め、炭酸ガス吸収材の分離量(1サイクル目)を算出した。
【0038】
また、図4に示す温度プログラムに従って昇・降温を50回繰り返した後(51サイクル目)の炭酸ガス吸収材の分離量を算出した。
これらの結果を下記表1に併記する。
【0039】
【表1】
【0040】
前記表1から明らかなようにハニカム耐熱構造基材に所定のガス吸収材層を形成した実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材は、合成したガス吸収材をペレット状にした比較例1および合成したガス吸収材を粉末状にした比較例2に比べて炭酸ガスの分離能力が高く、かつ51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も高いことがわかる。
【0041】
特に、L/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)が0.04<L/d<0.3の関係を満たす実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材は51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も極めて高いことがわかる。
【0042】
なお、51サイクル目の炭酸ガスの分離を行った後の比較例1のペレット状炭酸ガス吸収材を反応容器から取り出し、外観を観察したところ、約2/3のペレットが破壊されていた。また、反応容器を調べたところ、その反応容器内の下流側にペレットの破片が凝縮していることが確認された。
【0043】
(実施例6)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末と平均粒径10μmのポリエステル粉末とを重量比で26:44:19:11となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0044】
次いで、直径30mm、長さ100mmで、1平方インチ当たり100個のセルを有する円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0045】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0046】
(比較例3)
実施例6と同様な炭酸ガス吸収材の粉末をプレス圧500kgf/cm2 で成形し、円柱状ペレット(直径約20mm,厚さ3mm)に加工した。
【0047】
得られた炭酸ガス吸収材の気孔率を調べた。その結果を下記表2に示す。
(実施例7)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのNa2 CO3 粉末と平均粒径50μmのポリビニルアルコール粉末とを重量比で25:41:18:16となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料のうちLi2 CO3 粉末と9モル%MgO固溶ZrO2 粉末とNa2 CO3 粉末の3つの成分をエタノール中で湿式混合し、乾燥させた後、ポリビニルアルコールを添加し、大気中、1000℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0048】
次いで、実施例6と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0049】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0050】
(実施例8および参照例1,2)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2CO3粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの8モル%Y2O3固溶ZrO2粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2CO3粉末と純度99.9%と平均粒径10μmのポリエステル粉末とを重量比で22:37:25:16となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0051】
次いで、実施例6と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを厚さを異ならせてそれぞれ塗布し、大気中、800℃で焼成することにより3種の炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0052】
得られた各炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0053】
実施例6〜8および参照例1,2の炭酸ガス吸収部材、比較例3の炭酸ガス吸収材および実施例6で得られた炭酸ガス吸収材の粉末(60g)[比較例4]をそれぞれ反応容器に充填した後、反応容器の入口側から図4に示す温度プログラムにしたがって昇温させながら、500℃になった時点で、ガスをCO250%(窒素バランス)ガスに切り替え、1L/minの条件で1時間流通させた。1時間経過後、ガスを再び不活性ガスにし、反応容器を閉塞系とし、図4に示す温度プログラムに従って700℃まで昇温した。その後、反応容器の出口側のガス成分を質量分析により測定した。この昇温時に質量分析計で得られたガス成分中の二酸化炭素分圧低下の割合を求め、炭酸ガス吸収材の分離量(1サイクル目)を算出した。
【0054】
また、図4に示す温度プログラムに従って昇・降温を50回繰り返した後(51サイクル目)の炭酸ガス吸収材の分離量を算出した。
これらの結果を下記表2に併記する。
【0055】
【表2】
【0056】
前記表2から明らかなようにハニカム耐熱構造基材に多孔質のガス吸収材層を形成した実施例6〜8の炭酸ガス吸収部材は、参照例1,2の炭酸ガス吸収部材、合成したガス吸収材をペレット状にした比較例3および合成したガス吸収材を粉末状にした比較例4に比べて炭酸ガスの分離能力が高く、かつ51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も高いことがわかる。
【0057】
特に、L/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)が0.04<L/d<0.3の関係を満たす実施例6〜8の炭酸ガス吸収部材は51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も極めて高いことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、繰り返し使用においても高い炭酸ガス吸収能力を有し、エネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭酸ガスを分離回収するシステム等に有効に利用することができる炭酸ガス吸収部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる炭酸ガス吸収部材を示す斜視図。
【図2】本発明に係わる炭酸ガス吸収部材の別の形態を示す斜視図。
【図3】図1または図3の要部拡大図。
【図4】実施例の炭酸ガス分離を行う際の反応容器の温度プログラムを示す図。
【符号の説明】
1…ハニカム耐熱構造基材、
2…セル、
3…ガス吸収材層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素を主成分とする燃料を利用するエネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭酸ガスを分離回収するシステム、または燃料供給部におけるガスの生成に利用される炭酸ガス吸収部材に関し、特に500℃を越える高温で繰り返し利用できる炭酸ガス吸収部材に係わる。
【0002】
【従来の技術】
例えば排ガス中からの炭酸ガス分離方法としては、アルカノールアミン系溶媒による化学吸収プロセスや、圧力スィング法、深冷分離法、膜分離法等が知られている。
【0003】
しかしながら、いずれの方法も使用される膜や溶媒などの材料の耐熱性から導入ガス温度の上限を200℃程度に抑える必要がある。したがって、高温の排気ガスを排出するシステムから分離した炭酸ガスを、他の高温系にリサイクルして利用しようとしても、熱交換等による冷却を必要とし、結果的に炭酸ガス分離のために消費するエネルギーが大きくなるため、幅広い利用が妨げられていた。
【0004】
このようなことから、本出願人はリチウム化ジルコニアを用いた炭酸ガスの分離方法(特開平9−99214号)を提案した。この方法は、高温の排気ガス中から冷却工程を経ずに炭酸ガスの分離を行うことができる。この方法による炭酸ガスの分離は、取り扱いの点からペレット状の吸収材を用いることが検討されている。
【0005】
しかしながら、ペレット状のリチウム化ジルコニアを炭酸ガスの吸収分離に適用した場合、短時間の大きな温度変動に伴なう熱衝撃に耐えることが困難で、繰り返し使用すると炭酸ガスの分離能力が低下するという問題があった。また、前記ペレットを反応容器に充填した場合、圧力損失が増大する。特に、このような圧力損失の増大は自動車のエンジンの排気系に適用した場合の効率低下の要因になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、繰り返し使用においても高い炭酸ガス吸収能力を有する炭酸ガス吸収部材を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる炭酸ガス吸収部材は、ハニカム形状の耐熱構造基材の表面にガス吸収材層を形成した構成を有し、かつ前記ガス吸収材が特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じる物質であって、
前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成する1セルの開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係わる炭酸ガス吸収部材において、前記ガス吸収材層は多孔質であることを許容する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる炭酸ガス吸収部材を詳細に説明する。
この炭酸ガス吸収部材は、ガス吸収材層をハニカム形状の耐熱構造基材の表面に形成した構成を有する。前記ガス吸収材は、特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じる物質である。
【0011】
このような炭酸ガス吸収部材は、例えば図1に示す円柱状または図2に示す角柱状のハニカム構造基材1の複数のセル2内面を含む表面に図3に示すようにガス吸収材層3を形成した構造を有する。ここで、ハニカム形状は通常1平方インチ当たりの孔(セル)の数により規定され、例えば1平方インチ当たりのセル数が100個であるならば100セル/inch2 のように記述する。
【0012】
前記ガス吸収材としては、例えばリチウムと無機酸化物の化合物が挙げられる。この化合物は、リチウムが特定の温度領域で炭酸ガスと反応して炭酸リチウム(Li2 CO3 )を生成し、前記特定温度領域より高温領域で炭酸リチウムから再びリチウムと無機酸化物よりなる化合物に戻る。例えば、前記化合物がリチウム化ジルコニア(Li2 ZrO3 )である場合には、下記式によって炭酸ガスを吸収し、それより高い温度領域で下記式の右側から左側への反応が生じてリチウム化ジルコニアに戻る。
【0013】
Li2 ZrO3 (s )+CO2 (g )→ZrO2 (s )+Li2 CO3(l)
前記無機酸化物としては、例えばZrO2 ,Al2 O3 ,MgO,CaO,Fe2 O3 ,CeO2 等を挙げることができる。
【0014】
前記炭酸ガスの吸収・放出の温度領域は、使用するリチウムと無機酸化物からなる化合物の種類により異なる。例えば、LiとZrO2 との複合酸化物であるLi2 ZrO3 は炭酸ガス吸収反応が400〜580℃で起こり、炭酸ガス放出反応は600℃以上の温度で起こる。
【0015】
前記炭酸ガス吸収層は、前述した化合物以外の成分としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物、炭酸塩、水和物を用いることができる。具体的には、Li2 CO3 ,Na2 CO3 ,K2 CO3 ,MgO等を挙げることができる。このような成分を配合することにより炭酸ガスの吸収能力がより向上されたガス吸収材層を実現できる。前記ガス吸収材層に占める化合物と他の成分との配合比率は、重量割合にて化合物40〜100%、他の成分0〜60%、より好ましくは化合物60〜98%、他の成分2〜40%にすることが望ましい。
【0016】
前記ガス吸収材層の性状は、特に規制されないが、気孔率が20〜60%である多孔質構造を有することが好ましい。ここで、気孔率とは内部への経路として存在する「気孔」の体積の吸収材層全体積に対する割合を意味する。このような気孔率が20〜60%であるガス吸収材層は、優れた炭酸ガス吸収能力と繰り返しと特性とを安定的に保持する。また、前記範囲の気孔率を有する吸収材層は炭酸ガスの吸収に伴う体積変化の緩和に寄与する。より好ましい気孔率は、30〜40%である。
【0017】
前記ハニカム形状の耐熱構造基材としては、耐熱衝撃性に優れた材料から作られることが好ましく、例えばムライト、コーディエライト、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物またはNi,Co,Crを主成分とする金属または合金等が望ましい。
【0018】
前記ハニカム形状の耐熱構造基材に形成される前記ガス吸収材層の厚さは、図3に示すように前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成するセル2の開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層3の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすことが好ましい。L/dの値を0.04以下にすると吸収材の絶対量が少なくなるため、炭酸ガス吸収効率が低下する恐れがある。一方、L/dの値が0.3以上になるとセルの開口部に対する吸収材層の体積割合が増大するため、吸収材層の比表面積の低下を招く恐れがある。また、セルの開口部そのものが小さくなるため、結果として炭酸ガスの吸収効率の低下を招く恐れがある。より好ましいL/dの値は、0.07<L/d<0.3である。
【0019】
次に、本発明に係わる炭酸ガス吸収材部材の製造方法の一例を説明する。
炭酸ガス吸収材の粉末を含み、エタノール、アセトン、水等の溶媒で分散させたスラリーをハニカム形状の耐熱構造基材に塗布した後、酸素を含む雰囲気もしくは不活性ガス雰囲気中で焼成することによりガス吸収材層を前記基材上に形成して炭酸ガス吸収部材を製造する。
【0020】
前記スラリーの調製において、炭酸ガス吸収材に対して有機化合物を例えば7〜30wt%混合することにより、耐熱構造基材に形成されたガス吸収材層を例えば気孔率が20〜60%である多孔質構造にすることが可能にである。前記有機化合物は、酸素雰囲気中での焼成に際し、気散してガス吸収材層の内部および表面に気孔を形成する役目をなす。前記有機化合物としては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等を用いることができる。これらの有機化合物は、粉末状、繊維状、粒状の形態で使用される。
【0021】
前記焼成は、300〜1000℃の温度で行うことが好ましい。
前記スラリーを耐熱構造材に塗布する前に、前記基材表面にアルミナのような多孔質物層を被覆してもよい。
【0022】
なお、前記ガス吸収層を前記ハニカム形状の耐熱基材に形成する方法は、塗布法に限らず、プラズマ溶射法、ガス溶射法、スパッタ法または化学気相蒸着法等を用いて行ってもよい。
【0023】
以上説明したように本発明に係わる炭酸ガス吸収部材は、ハニカム形状の耐熱構造基材の表面に特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じるガス吸収材層を形成した構造を有する。
【0024】
このような炭酸ガス吸収部材は、例えばペレット状の炭酸ガス吸収材のみでは活性が維持し得ないガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたって安定した炭酸ガス吸収性能を発揮することができる。
【0025】
また、前記ハニカム形状の耐熱構造基材に形成される前記ガス吸収材層の厚さは、図3に示すように前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成するセル2の開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層3の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすようにすることによって、ガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたってより一層安定した炭酸ガス吸収性能を発揮することができる。
【0026】
さらに、前記耐熱構造基材に形成されるガス吸収層を多孔質構造にすることによって、ガス流速の速い領域におけるガス分離において長期間にわたって安定した高い炭酸ガス吸収性能を発揮できる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
(実施例1)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末とを重量比で29:49:22となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。
【0028】
次いで、直径30mm、長さ100mmで、1平方インチ当たり100個のセルを有する円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0029】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様な炭酸ガス吸収材の粉末をプレス圧500kgf/cm2 で成形し、円柱状ペレット(直径約20mm,厚さ3mm)に加工した。
【0031】
得られた炭酸ガス吸収材の気孔率を調べた。その結果を下記表1に示す。
(実施例2)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのNa2 CO3 粉末とを重量比で29:49:22となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、900℃で10時間大気中で熱処理して炭酸ガス吸収材を合成した。
【0032】
次いで、実施例1と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0033】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0034】
(実施例3〜5)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの8モル%Y2 O3 固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末と純度99.9%とを重量比で26:44:30となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥し、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0035】
次いで、実施例1と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを厚さを異ならせてそれぞれ塗布し、大気中、800℃で焼成することにより3種の炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0036】
得られた各炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0037】
実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材、比較例1の炭酸ガス吸収材および実施例1で得られた炭酸ガス吸収材の粉末(60g)[比較例2]をそれぞれ反応容器に充填した後、反応容器の入口側から図4に示す温度プログラムにしたがって昇温させながら、500℃になった時点で、ガスをCO2 50%(窒素バランス)ガスに切り替え、1L/minの条件で1時間流通させた。1時間経過後、ガスを再び不活性ガスにし、反応容器を閉塞系とし、図4に示す温度プログラムに従って700℃まで昇温した。その後、反応容器の出口側のガス成分を質量分析により測定した。この昇温時に質量分析計で得られたガス成分中の二酸化炭素分圧低下の割合を求め、炭酸ガス吸収材の分離量(1サイクル目)を算出した。
【0038】
また、図4に示す温度プログラムに従って昇・降温を50回繰り返した後(51サイクル目)の炭酸ガス吸収材の分離量を算出した。
これらの結果を下記表1に併記する。
【0039】
【表1】
【0040】
前記表1から明らかなようにハニカム耐熱構造基材に所定のガス吸収材層を形成した実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材は、合成したガス吸収材をペレット状にした比較例1および合成したガス吸収材を粉末状にした比較例2に比べて炭酸ガスの分離能力が高く、かつ51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も高いことがわかる。
【0041】
特に、L/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)が0.04<L/d<0.3の関係を満たす実施例1〜5の炭酸ガス吸収部材は51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も極めて高いことがわかる。
【0042】
なお、51サイクル目の炭酸ガスの分離を行った後の比較例1のペレット状炭酸ガス吸収材を反応容器から取り出し、外観を観察したところ、約2/3のペレットが破壊されていた。また、反応容器を調べたところ、その反応容器内の下流側にペレットの破片が凝縮していることが確認された。
【0043】
(実施例6)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2 CO3 粉末と平均粒径10μmのポリエステル粉末とを重量比で26:44:19:11となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0044】
次いで、直径30mm、長さ100mmで、1平方インチ当たり100個のセルを有する円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0045】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0046】
(比較例3)
実施例6と同様な炭酸ガス吸収材の粉末をプレス圧500kgf/cm2 で成形し、円柱状ペレット(直径約20mm,厚さ3mm)に加工した。
【0047】
得られた炭酸ガス吸収材の気孔率を調べた。その結果を下記表2に示す。
(実施例7)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2 CO3 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの9モル%MgO固溶ZrO2 粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのNa2 CO3 粉末と平均粒径50μmのポリビニルアルコール粉末とを重量比で25:41:18:16となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料のうちLi2 CO3 粉末と9モル%MgO固溶ZrO2 粉末とNa2 CO3 粉末の3つの成分をエタノール中で湿式混合し、乾燥させた後、ポリビニルアルコールを添加し、大気中、1000℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0048】
次いで、実施例6と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを塗布し、大気中、800℃で焼成することにより炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0049】
得られた炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0050】
(実施例8および参照例1,2)
まず、純度99.9%、平均粒径0.5μmのLi2CO3粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmの8モル%Y2O3固溶ZrO2粉末と純度99.9%、平均粒径0.5μmのK2CO3粉末と純度99.9%と平均粒径10μmのポリエステル粉末とを重量比で22:37:25:16となるように秤量して出発原料を調製した。つづいて、この出発原料を蒸留水を用いて湿式混合した後、乾燥させ、大気中、900℃で10時間焼成することにより炭酸ガス吸収材を合成した。
【0051】
次いで、実施例6と同様な円柱状のコーディエライトからなるハニカム耐熱構造基材上に前記ガス吸収材を含むスラリーを厚さを異ならせてそれぞれ塗布し、大気中、800℃で焼成することにより3種の炭酸ガス吸収部材を製造した。
【0052】
得られた各炭酸ガス吸収部材のガス吸収層の重量、気孔率、厚さおよびL/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0053】
実施例6〜8および参照例1,2の炭酸ガス吸収部材、比較例3の炭酸ガス吸収材および実施例6で得られた炭酸ガス吸収材の粉末(60g)[比較例4]をそれぞれ反応容器に充填した後、反応容器の入口側から図4に示す温度プログラムにしたがって昇温させながら、500℃になった時点で、ガスをCO250%(窒素バランス)ガスに切り替え、1L/minの条件で1時間流通させた。1時間経過後、ガスを再び不活性ガスにし、反応容器を閉塞系とし、図4に示す温度プログラムに従って700℃まで昇温した。その後、反応容器の出口側のガス成分を質量分析により測定した。この昇温時に質量分析計で得られたガス成分中の二酸化炭素分圧低下の割合を求め、炭酸ガス吸収材の分離量(1サイクル目)を算出した。
【0054】
また、図4に示す温度プログラムに従って昇・降温を50回繰り返した後(51サイクル目)の炭酸ガス吸収材の分離量を算出した。
これらの結果を下記表2に併記する。
【0055】
【表2】
【0056】
前記表2から明らかなようにハニカム耐熱構造基材に多孔質のガス吸収材層を形成した実施例6〜8の炭酸ガス吸収部材は、参照例1,2の炭酸ガス吸収部材、合成したガス吸収材をペレット状にした比較例3および合成したガス吸収材を粉末状にした比較例4に比べて炭酸ガスの分離能力が高く、かつ51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も高いことがわかる。
【0057】
特に、L/d(L;吸収その厚さ、d;セルの一辺の長さ)が0.04<L/d<0.3の関係を満たす実施例6〜8の炭酸ガス吸収部材は51サイクル目における炭酸ガスの分離能力も極めて高いことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、繰り返し使用においても高い炭酸ガス吸収能力を有し、エネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭酸ガスを分離回収するシステム等に有効に利用することができる炭酸ガス吸収部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる炭酸ガス吸収部材を示す斜視図。
【図2】本発明に係わる炭酸ガス吸収部材の別の形態を示す斜視図。
【図3】図1または図3の要部拡大図。
【図4】実施例の炭酸ガス分離を行う際の反応容器の温度プログラムを示す図。
【符号の説明】
1…ハニカム耐熱構造基材、
2…セル、
3…ガス吸収材層。
Claims (2)
- ハニカム形状の耐熱構造基材の表面にガス吸収材層を形成した構成を有し、かつ前記ガス吸収材が特定の温度領域でリチウムの化学反応により炭酸ガスを吸収し、かつ前記特定温度領域より高温の領域で炭酸ガスを放出する反応を生じる物質であって、
前記ハニカム形状の耐熱構造基材を構成する1セルの開口部の一辺の長さをd、前ガス吸収材層の厚さをLとしたとき、L/dの値が0.04<L/d<0.3の関係を満たすことを特徴とする炭酸ガス吸収部材。 - 前記ガス吸収材層は、多孔質であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸収部材。
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