JP3812327B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものであり、詳しくは、帯電、画像入力、現像、転写、クリーニングなどの工程を含む電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機やプリンターなどの分野においては、生産性、材料設計の容易さ、安全性などの点から、有機材料を用いた有機感光体の実用化が進められている。中でも、電荷発生層と電荷輸送層とを有する感光膜を備える、いわゆる機能分離型電子写真感光体は、感度や安定性の点で優れており注目されている。
【0003】
機能分離型電子写真感光体において、通常、電荷発生層は電荷発生物質と結着樹脂とを含有するものであり、他方、電荷輸送層は電荷輸送物質(多くの場合、正孔輸送物質)と結着樹脂とを含有するものである。そして、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂が検討されている。
【0004】
ところで、上記の構成を有する電子写真感光体を用いて電子写真プロセスを行う場合、コロナ帯電又はローラー帯電により電子写真感光体の表面を負に帯電させる必要があるが、その際に発生するオゾンにより樹脂が劣化したり、感光体表面での放電により感光体が電気的な衝撃を受けて磨耗、感度低下、帯電能の低下などの現象を生じるという問題がある。また、このような帯電工程の後、トナー現像、紙への転写、クリーニングなどの工程が行われると、摩擦等による機械的破壊などにより感光体特性が低下してしまい、その結果、良好な画像品質が得られなくなる。
【0005】
そこで、かかる現象を回避すべく様々な検討が行われている。その一つとして、ポリシロキサン樹脂を共重合成分或いは他の樹脂と混合する際の副成分として用い、ポリシロキサンの特性を利用して感光体の高性能化、寿命の向上、クリーニング性の改善を行う方法が提案されており、特開昭61−238062号公報にはポリシロキサン樹脂を含む熱硬化性樹脂を電荷輸送層の結着樹脂として使用した感光体;特開昭62−108260号公報にはポリシロキサン樹脂を含む保護層を備える感光体;特開平4−346356号公報には熱硬化性ポリシロキサン樹脂にシリカゲル、ウレタン樹脂、フッ素樹脂を分散させた保護層を備える感光体;特開平4−273252号公報には熱可塑性樹脂に熱硬化型ポリシロキサン樹脂を分散させた樹脂組成物を保護層或いは電荷輸送層のバインダー樹脂に用いた感光体がそれぞれ開示されている。
【0006】
ところが、ポリシロキサンは、透明性、耐絶縁破壊、光安定性に加えて低表面張力等の他の樹脂に見られない特徴を有するものの、有機化合物との相溶性が極めて悪いという欠点を有している。したがって、ポリシロキサンは、通常、電荷輸送層を構成する結着樹脂として単独で使用されることはなく、他の樹脂と共重合若しくは混合する際の副成分として用いられるものであり、このようにして得られる電子写真感光体においては、ポリシロキサンを用いることにより得られる感光体の耐久性向上効果は十分なものではなかった。
【0007】
そこで、ポリシロキサンを用いて感光体の耐久性を高める検討がなされている。例えば、特開平8−319353号公報には、不飽和結合を有する電荷輸送物質とポリ(ハイドロゲンメチルシロキサン)などのポリシロキサンとをヒドロシリル化により直接結合させた樹脂を保護層又は電荷輸送層の結着樹脂に用いる技術;特開平7−333881号公報には、プラズマCVDにより得られた無機質薄膜を保護層とする技術;“Proceedings of IS&T’s Eleventh International Congress on Advances in Non−Impact Printing Technologies、p57〜59”には、ゾルゲル法を用いて得られる薄膜を保護層とする技術;特開平9−190004号公報には、電荷輸送物質に加水分解性基を有するケイ素を直接導入した有機ケイ素変成正孔輸送性化合物を用いる技術がそれぞれ開示されている。このようにして得られる電子写真感光体においては、“Proceedings of IS&T’s Eleventh International Congress on Advances in Non−Impact Printing Technologies、p57〜59”、米国特許5116703号公報、特許第2575536号公報、特開平9−190004号公報、特開平9−188764号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−124387号公報、特開平11−236391号公報等に開示されているように、シロキサンの3次元ネットワークによる硬化膜が形成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電子写真感光体であっても、シロキサンの3次元ネットワーク中に未反応の水酸基が存在することによりコロナ放電等による生成物や水分が感光体表面に吸着しやすく、また、他の結着樹脂を用いた場合に比べて機械的な強度が10〜20倍も高いことにより帯電工程の際に生じる放電生成物や、トナー、トナー添加物などが感光体表面が汚染されやすいといった欠点を有しており、良好な画像品質を得るためには未だ十分なものではなかった。
【0009】
そこで、感光体表面の付着物を除去するために、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、シリコンカーバイド、アルミナ、酸化チタンなどの材料からなる粒径0.005〜2μmの無機微粒子が外添されたトナーや研磨ローラー、研磨パッドなどの研磨手段を用いて感光体表面を研磨する方法が提案されているが、このような方法は感光体表面の損傷や感光体寿命の低下の原因となるので、必ずしも十分なものではない。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止性が十分に高く、且つ汚染物質が付着しても表面を損傷することなく汚染物質を除去することができ、電子写真プロセスにおいて長期にわたって十分に良好な画像品質を得ることを可能とする電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、導電性支持体上に感光膜が積層された電子写真感光体において、その感光膜中に特定の骨格を有する架橋体を含有させた場合に上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の電子写真感光体は、 導電性支持体と、該支持体上に配置された感光膜と、を備える電子写真感光体であって、
前記感光膜が、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、該ケイ素原子と結合した酸素原子と、からなる骨格を有する架橋体を含有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体と、
帯電手段、クリーニング手段及び現像手段からなる群より選ばれる少なくとも1種と、
を備えることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための画像入力手段と、
前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、電子写真感光体の感光膜中に上記特定の骨格を有する架橋体を含有させることによって、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止性が十分に高められるとともに、汚染物質が付着しても表面を損傷することなく汚染物質を除去することができるので、電子写真プロセスにおいて長期にわたって十分に良好な画像品質を得ることが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記架橋体が、下記一般式(1):
W[−SiR3-aQa]b (1)
[式(1)中、Wは炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは2以上の整数を表す]
で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物を用いて得られるものであることが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、前記骨格が、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した第一のケイ素原子と、該第一のケイ素原子に結合した酸素原子と、該酸素原子に結合した第二のケイ素原子と、該第二のケイ素原子に結合した光機能性有機基と、からなるものであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明においては、前記架橋体が、下記一般式(1):
W[−SiR3−aQa]b (1)
[式(1)中、Wは炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは2以上の整数を表す]
で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物と、下記一般式(2):
W’[−D−SiR’3−a’Q’a’]b’ (2)
[式(2)中、W’は光機能性有機基を表し、Dは2価の基を表し、R’は水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Q’は加水分解性基を表し、a’は1〜3の整数を表し、b’は1〜4の整数を表す]
で表される光機能性有機ケイ素化合物と、を用いて得られるものであることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明においては、前記感光膜が電荷発生層及び電荷輸送層を含む2以上の層を有しており、且つ前記感光膜を構成する層のうち前記支持体から最も遠い側に配置された層が前記架橋体を含有することが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0021】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該支持体上に配置された感光膜と、を備える電子写真感光体であって、
前記感光膜が、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、該ケイ素原子と結合した酸素原子と、からなる骨格を有する架橋体を含有することを特徴とするものである。
【0022】
ここで、本発明にかかる架橋体が有する骨格は、前述の通り、炭素原子及びフッ素原子を有する有機基に2以上のケイ素原子が結合し、さらにそれらのケイ素原子に酸素原子が結合した構造を有するもの(以下、「多官能型フッ素含有有機シリケート骨格」という)であり、このような骨格を有する架橋体を感光膜に含有させることによって、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止性が十分に高められるとともに、汚染物質が付着しても表面を損傷することなく汚染物質を除去することができるので、電子写真プロセスにおいて長期にわたって十分に良好な画像品質を得ることが可能となる。
【0023】
このような架橋体は、下記一般式(1):
W[−SiR3-aQa]b (1)
[式(1)中、Wは炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは2以上の整数を表す]
で表される多官能型フッ素含有有機ケイ素化合物を加水分解させることにより好適に得ることができる。なお、特開平2−150857号公報には、単官能型フッ素含有有機ケイ素化合物を用いて得られるシリケート構造体を保護層として備える電子写真感光体が開示されているが、このように単官能型のフッ素含有有機ケイ素化合物を用いた場合には、感光膜の成膜工程において相分離や塗布膜のはじきなどの現象が生じやすく、また、得られる電子写真感光体の機械的強度や感光特性が不十分となる。
【0024】
上記式(1)中、Wで表される有機基としては、炭素原子及びフッ素原子を含有し且つその価数bが2以上である限りにおいて特に制限されないが、2価又は3価のフッ化炭化水素基が好ましい。なお、ここでいうフッ化炭化水素基は、フッ化アルキレン基などの脂肪族フッ化炭化水素基、並びにフッ化アリーレン基などの芳香族フッ化炭化水素基を包含するものであるが、脂肪族フッ化炭化水素基である場合その炭素数は2〜20であることが好ましく、他方、芳香族フッ化炭化水素基である場合その炭素数は6〜20であることが好ましい。このようなフッ化炭化水素基の中でも、下記式(3)〜(19):
−(CF2)2− (3)
−(CF2)4− (4)
−(CF2)8− (5)
−(CH2)2−(CF2)2−(CH2)2− (6)
−(CH2)2−(CF2)4−(CH2)2− (7)
−(CH2)2−(CF2)6−(CH2)2− (8)
−(CH2)2−(CF2)8−(CH2)2− (9)
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
に示す基のうちのいずれかであることが特に好ましい。
【0036】
また、上記式(1)中、Rは、前述の通り、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)又は置換若しくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜15の置換若しくは無置換のアリール基)を表す。
【0037】
さらに、上記式(1)中、Qで表される加水分解性基とは、上記式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物の硬化反応において、加水分解によりシロキサン結合(O−Si−O)を形成し得る官能基のことをいう。本発明にかかる加水分解性基の好ましい例としては、具体的には、水酸基、アルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、クロロ基が挙げられるが、これらの中でも、−OR”(R”は炭素数1〜15のアルキル基またはトリメチルシリル基)で表される基がより好ましい。
【0038】
上記式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物のWと−SiR3-aQaとの好ましい組み合わせを下記表1に示す。なお、表1中、Wの欄の番号はWが上記式(3)〜(19)のうちのいずれかであることを意味するものである。
【0039】
【表1】
【0040】
このように、本発明にかかる架橋体は多官能型フッ素含有有機シリケート骨格を有するものであるが、当該骨格は、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した第一のケイ素原子と、該第一のケイ素原子に結合した酸素原子と、該酸素原子に結合した第二のケイ素原子と、該第二のケイ素原子に結合した光機能性有機基と、からなるもの(以下、「多官能型光機能性フッ素含有有機シリケート骨格」という)であることが好ましい。架橋体がこのような骨格を有する場合には、当該架橋体を含有する層に光機能性が付与されるとともに機械的強度がより高められるので、電子写真感光体の感光特性と寿命の双方がより向上する傾向にある。なお、ここでいう光機能性有機基とは、光エネルギーの吸収により光異性化、フォトクロミズム、光イオン化、発光、非線形光学効果、光電気化学効果といった物理変化あるいは物理化学変化を示す有機基をいう。
【0041】
多官能型光機能性フッ素含有有機シリケート骨格を有する架橋体は、上記一般式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物と、下記一般式(2):
W’[−D−SiR’3−a’Q’a’]b’ (2)
[式(2)中、W’は光機能性有機基を表し、Dは2価の基を表し、R’は水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Q’は加水分解性基を表し、a’は1〜3の整数を表し、b’は1〜4の整数を表す]
で表される光機能性有機ケイ素化合物と、を用いて好適に得ることができる。
【0042】
上記式(2)中、W’で表される光機能性有機基としては、光機能性を示すものである限りにおいて特に制限されないが、好ましくは芳香環を有する基であり、より好ましくはフタロシアニン構造、ポルフィリン構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、トリス(ビピリジル)−ロジウム構造、アズレン構造、ポリエン構造、ニトロアニリン構造、トリアリールアミン構造、ベンジジン構造、アリールアルカン構造、アリール置換エチレン構造、アントラセン構造、ヒドラゾン構造、キノン構造及びフルオレノン構造からなる群より選ばれる1種を有する基であり、より好ましくは下記一般式(20):
【0043】
【化11】
【0044】
[式(20)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、置換または無置換のアリール基を表し、Ar5は置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基を表し、kは0または1を表し、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5のうちの1〜4個は上記一般式(1)中の−D−SiR3-aQaで表される基と結合する結合手を有する)
で表される基である。
【0045】
ここで、上記式(20)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4で表される置換または無置換のアリール基としては、下記式(21)〜(27):
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜10のアルキルフェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基または炭素数7〜10のアラルキル基を表し、R2およびR3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、Ar6は置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基を表し、Zは2価の官能基を表し、sは1〜3の整数を表し、・は上記一般式(2)中の−D−SiR’3-a'Q’a'で表される基が結合する場合の結合位置を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。さらに、上記式(27)中のAr6で表される置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基としては、下記一般式(28)または(29):
【0054】
【化19】
【0055】
【化20】
【0056】
(式中、R4およびR5はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、tは1〜3の整数を表す)
で表される構造を有するものが好ましく;
上記式(27)中のZで表される2価の基としては、下記式(30)〜(37):
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】
【化23】
【0060】
【化24】
【0061】
【化25】
【0062】
【化26】
【0063】
【化27】
【0064】
【化28】
【0065】
(式中、R6およびR7はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素数7〜10のアルコキシフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン基を表し、Z’は2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tは1〜3の整数を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。さらにまた、上記式(36)、(37)中のZ’で表される2価の基としては、下記式(38)〜(29):
【0066】
【化29】
【0067】
【化30】
【0068】
【化31】
【0069】
【化32】
【0070】
【化33】
【0071】
【化34】
【0072】
【化35】
【0073】
【化36】
【0074】
【化37】
【0075】
(式中、pは0〜3の整数を表す)
で表される構造のうちのいずれかを有するものが好ましい。
【0076】
また、上記式(2)中のDで表される2価の基としては、好ましくは、−CnH2n−、−CnH2n-2−、−CnH2n-4−(nは1〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である)、−CH2−C6H4−又は−C6H4−C6H4−で表される2価の炭化水素基、オキシカルボニル基(−COO−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−)、或いはこれら2種以上の組み合わせによる2価の基である。なお、これらの2価の基は側鎖にアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。Dが上記の好ましい2価の基であると、多官能型光機能性フッ素含有有機シリケート骨格に適度な可とう性が付与されて層の強度が向上する傾向にある。
【0077】
さらに、上記式(2)中、R’としては、上記式(1)中のRの説明において例示された水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基;Q’としては、上記式(1)中の説明において例示された加水分解性基、がそれぞれ挙げられる。
【0078】
このような構成を有する光機能性有機けい素化合物(2)のうち、W’が上記一般式(20)で表される基である化合物におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、D−SiR’3-a'Q’a'で表される基および整数kの好ましい組み合わせを下記表2〜28に示す。なお、表中、XはAr5と結合したD−SiR’3-a'Qa'を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表す。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
【表13】
【0091】
【表14】
【0092】
【表15】
【0093】
【表16】
【0094】
【表17】
【0095】
【表18】
【0096】
【表19】
【0097】
【表20】
【0098】
【表21】
【0099】
【表22】
【0100】
【表23】
【0101】
【表24】
【0102】
【表25】
【0103】
【表26】
【0104】
【表27】
【0105】
【表28】
【0106】
本発明にかかる架橋体の材料として、上記式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物と上記式(20)で表される光機能性有機ケイ素化合物とを用いる場合の両者の配合比は9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがより好ましい。
【0107】
さらに、本発明においては、フッ素含有有機ケイ素化合物(1)、光機能性有機ケイ素化合物(2)に加えて、下記表29に示す有機ケイ素化合物(IV−1)〜(IV−15);ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのシランカップリング剤;KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、およびAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)などの市販のハードコート剤、などを用いることができる。また、撥水性などの付与のために、(トリデカフルオロ −1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、などのフッ素含有化合物のうちの1種又は2種以上を用いることもできる。
【0108】
【表29】
【0109】
本発明にかかる架橋体は、上記のフッ素含有有機ケイ素化合物(1)、並びに必要に応じて配合される光機能性有機ケイ素化合物(2)、表29に示す有機ケイ素化合物、シランカップリング剤、ハードコート剤、フッ素含有化合物といった原料化合物を加水分解することによって得ることができるが、フッ素含有有機ケイ素化合物(1)と光機能性有機ケイ素化合物(2)との総量と、他の原料化合物の配合量との比は1:0.1〜1:2であることが好ましく、1:0.2〜〜1:1であることがより好ましい。原料化合物中のフッ素含有有機ケイ素化合物(1)の含有量が前記の範囲外であると、得られる電子写真感光体の感光特性や機械的強度が不十分となる傾向にある。
【0110】
また、上記の原料化合物を加水分解する際の水の添加量は特に制限されないが、原料化合物が有する全ての加水分解性基を加水分解するために必要な理論量の0.3〜5倍量であることが好ましく、0.5〜3倍量であることがより好ましい。水の添加量が理論量の0.3倍未満であると、未反応化合物の量が増大し、後述する電子写真感光体の製造工程において、架橋体を含む塗工液を用いて成膜する際に相分離を生じたり得られる膜の強度が不十分となる傾向にある。他方、水の添加量が理論量の5倍を超えると、原料化合物が析出したり反応生成物(架橋体)の保存安定性が低下する傾向にある。
【0111】
さらに、上記の原料化合物の加水分解は、溶媒を用いずに行ってもよく、また、所定の溶媒(好ましくは沸点が100℃以下の溶媒)を用いて行ってもよい。本発明において、加水分解の際に好ましく用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、などが挙げられる。これらの溶媒の使用量は、フッ素含有有機ケイ素化合物(1)1重量部に対して好ましくは0.5〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。溶媒の使用量が前記下限値未満であるとフッ素含有有機ケイ素化合物(1)が析出しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると薄膜のものしか得れれなくなる傾向にある。
【0112】
また、上記の加水分解においては、原料化合物、反応生成物、溶媒及び水のいずれにも不溶である固体触媒を用いることが好ましい。このような固体触媒としては、アンバーライト15E、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)などの陰イオン交換樹脂;
Zr(O3 PCH2 CH2 SO3 H)2 ,Th(O3 PCH2 CH2 COOH)2 などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;
スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;
コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;
ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;
シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;
シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類などの複合系金属酸化物;
酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;
LiSO4 ,MgSO4 などの金属硫酸塩;
リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;
LiNO3 ,Mn(NO3 )2 などの金属硝酸塩;
シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;
アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン、などが挙げられる。これらの固体触媒の使用量は、加水分解性基を有する原料化合物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。また、これらの固体触媒を用いて加水分解を行う際の反応温度及び反応時間は原料化合物や固体触媒の種類によって適宜選択されるが、反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜50℃であり、反応時間は好ましくは10分〜100時間である。なお、反応時間が100時間を超えると反応生成物がゲル化しやすくなる傾向にある。
【0113】
また、上記の固体触媒以外にも、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などのプロトン酸;アンモニア、トリエチルアミンなどの塩基;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクタン酸第一錫などの有機錫化合物;テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどの有機チタン化合物;アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどの有機アルミニウム化合物;有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩などの有機カルボン酸塩、などの硬化触媒を用いて加水分解を行うことができる。これらの硬化触媒の中でも、反応生成物の保存安定性の点で金属化合物が好ましく、金属のアセチルアセトナート又はアセチルアセテートが好ましい。これらの硬化触媒の使用量は、反応生成物の保存安定性や強度の点から、加水分解性基を有する原料化合物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることが好ましい。また、上記の硬化触媒を用いて加水分解を行う際の反応温度及び反応時間は用いる原料化合物や硬化触媒の種類に応じて適宜選択されるが、反応時間は好ましくは60℃以上、より好ましくは80〜170℃であり、反応時間は好ましくは10分〜5時間である。なお、反応温度が前記下限値未満であると得られる架橋体の機械的強度が不十分となる傾向にある。
【0114】
また、必要に応じて、得られた反応生成物について、ヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシランなどを用いて疎水化処理を行うこともできる。
【0115】
さらに、本発明の電子写真感光体の製造工程において本発明にかかる架橋体を含む感光膜を形成する場合、予め合成された架橋体を所定の溶剤に加えて得られる塗工液を用いて感光膜を成膜してもよく、また、上記式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物などの原料化合物を所定の溶剤に加えて得られる塗工液を、上記の加水分解を行った後でそのまま感光膜の成膜に用いてもよい。
【0116】
本発明の電子写真感光体は上記の架橋体を感光膜中に含有するものである。ここで、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態を図1〜5に示す。図1〜3に示す電子写真感光体は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層6)とに機能が分離された感光膜3を備えるものであり、
図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6が順次積層された構造;
図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7が順次積層された構造;
図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造;
をそれぞれ有している。また、図4〜5に示す電子写真感光体は電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものであり、
図4に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、単層型感光層8が順次積層された構造;
図5に示す電子写真感光体1は、導電性支持体1上に下引き層4、単層型感光層8、保護層7が順次積層された構造、
をそれぞれ有している。
【0117】
本発明においては、感光膜3を構成する層として、電荷発生層4、電荷輸送層5及び単層型感光層8に加えて下引き層4及び保護層7が包含される。そして、これらの層のうちの少なくとも一つの層中に本発明にかかる架橋体が含有されていればよいが、図1における電荷輸送層6、図2、3、5における保護層7、図4における単層型感光層8のように、導電性支持体2から最も遠い側に配置された層が本発明にかかる架橋体を含有すると、熱、電気、化学物質などに対する安定性と機械的強度とがより高められるとともにに、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止効果がより向上する傾向にあるので好ましい。
【0118】
本発明において用いられる導電性支持体の材料としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼などの金属;紙、プラスチック又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケルークロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属や酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着又はラミネートすることによって薄膜を設けたもの;紙、プラスチック又はガラス上に、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅などを結着樹脂に分散して塗布することによって導電処理したもの、などが挙げられる。また、本発明にかかる導電性支持体の形状としては特に制限はないが、ドラム状、シート状、プレート状などの形状を有するものが好適に使用される。さらに、本発明においては、導電性支持体の表面に必要に応じて鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの表面処理を施してもよい。これらの表面処理により導電性支持体の表面を粗面化すると、レーザービームなどの可干渉光源を用いた場合に発生し得る感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0119】
本発明の電子写真感光体は、図1〜5に示すように導電性支持体2上に下引き層4を備えることが好ましい。導電性支持体上に下引き層を設けると、下記(i)〜(vi):
(i)導電性支持体から感光膜への不必要なキャリアの注入が防止されて画質が向上する;
(ii)電子写真感光体の光減衰曲線の環境依存性(温度、湿度など)が低減して安定した画質が得られる;
(iii)適度な電荷輸送能により、長期にわたって繰り返し使用する場合にも電荷が蓄積されず、感度変動の発生が抑制される;
(iv)帯電電圧に対する適度な耐圧性により、絶縁破壊に起因する画像欠陥の発生が防止される;
(v)接着層として、感光膜を支持体に一体的に保持することができる;
(vi)支持体の光反射が防止される、
に示す効果が得られる傾向にある。ここで、下引き層の材料としては、本発明にかかる架橋体の他に、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物などの有機金属化合物が挙げられるが、これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため好ましく使用される。
【0120】
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4,−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、従来より下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の結着樹脂を下引き層の材料として用いることもできる。
【0121】
上記の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明にかかる架橋体を用いる場合は、当該架橋体の配合量が下引き層の材料全量を基準として10重量%以上(より好ましくは20重量%以上)であると下引き層の電気特性が向上するので好ましい。
【0122】
また、本発明にかかる下引き層は、上記の材料中に電子輸送性顔料を混合、分散したものであってもよい。電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料;シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子などの電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料;フタロシアニン顔料などの有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機顔料、などが挙げられる。これらの電荷輸送性顔料の中でも、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料及び多環キノン顔料は高い電子移動性を有しているので好ましく使用される。これらの電子輸送性顔料の含有量は、下引き層中の固形分全量を基準として好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは90重量%である。下引き層中の電子輸送性顔料の含有量が前記上限値を超えると、下引き層の強度が低下して塗膜欠陥が生じやすくなる傾向にある。
【0123】
これらの電荷輸送性顔料を混合、分散させる方法としては、上記下引き層の材料を含む溶液に電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料を分散させた溶液に上記下引き層の材料を添加し混合する方法;樹脂に電子輸送性顔料を分散させた液に上記下引き層の材料を添加し混合する方法;樹脂溶液に上記下引き層の材料を添加し混合した後電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料に上記下引き層の材料を添加し混合した後樹脂溶液に分散させる方法、などが挙げられるが、混合/分散液においてゲル化や凝集などの発生を抑制することが重要である。また、電子輸送性顔料を混合、分散する際には、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波などを用いることができる。この混合/分散工程は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合、分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば特に制限されないが、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0124】
このようにして調製された塗工液を導電性支持体上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、乾燥させることによって下引き層を成膜することができる。塗工液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。また、乾燥工程における温度は好ましくは80〜170℃である。このようにして得られる下引き層の厚みは好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.2〜10μmである。
【0125】
本発明にかかる電荷発生層は、前述の通り、電荷発生材料と結着樹脂とを含有するものである。ここで、本発明において用いられる電荷発生材料としては、光を吸収して高い確率で電荷担体を発生し得るものであれば特に制限はないが、具体的には、フタロシアニン系顔料、ビスアゾ系顔料、トリアリールメタン系顔料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料などの有機系顔料又は染料が挙げられる。これらの電荷発生材料の中でも、金属又は無金属フタロシアニン系顔料はより高い電荷発生効率が得られる点で好ましく、特定の結晶性を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン及びチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0126】
本発明において用いられるクロロガリウムフタロシアニンは、特開平5−98181号公報に開示されているように、公知の方法で製造されるクロロガリウムフタロシアニン結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダーなどで機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダーなどを用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノールなど)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなど)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジメチルスルホキサイド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、これらの有機溶剤のうちの2種以上の混合物、あるいはこれらの有機溶剤と水との混合物などが挙げられる。これらの溶剤の使用量は、クロロガリウムフタロシアニン1重量部に対して好ましくは1〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。また、上記の処理における処理温度は、好ましくは0℃〜溶剤の沸点以下、より好ましくは10〜60℃である。さらに、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤の使用量は、クロロガリウムフタロシアニン1重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
ジクロロスズフタロシアニンは、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報などに開示されているように、公知の方法で製造されるジクロロスズフタロシアニン結晶を、上記のクロロガリウムフタロシアニンの場合と同様にして粉砕、溶剤処理することにより得ることができる。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報などに開示されているように、公知の方法で製造されるクロロガリウムフタロシアニン結晶を、酸性若しくはアルカリ性溶液中での加水分解又はアシッドペースティングすることによりヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶とし、このヒドロキシガリウムフタロシアニンについて直接溶剤処理を行うか、或るいは、合成によって得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うか、溶剤を用いずに乾式粉砕処理を行った後に溶剤処理することによって製造することができる。上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノールなど)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなど)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジメチルスルホキサイド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、これらの有機溶剤の2種以上の混合物、或いはこれら有機溶剤と水との混合物などが挙げられる。これらの溶剤の使用量は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン1重量部に対して好ましくは1〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。また、上記の処理における処理温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは室温〜100℃である。さらに、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤の使用量はヒドロキシガリウムフタロシアニン1重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。
【0127】
オキシチタニルフタロシアニンは、特開平4−189873号公報、特開平5−43813号公報などに開示されるように、公知の方法で製造されるオキシチタニルフタロシアニン結晶を、アシッドペースティングするか、あるいは、ボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて無機塩とともにソルトミリングを行って、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2)が27.2゜の位置に回折ピークを示す、比較的結晶性の低いオキシチタニルフタロシアニン結晶とした後、直接溶剤処理を行うか、或るいは、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(より好ましくは95〜100%)のものが好ましく使用される。また、アシッドペースティング処理における溶解温度は、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜60℃である。さらに、濃硫酸の使用量は、オキシチタニルフタロシアニン結晶1重量部に対して好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部である。さらにまた、結晶を析出させる際に用いる溶剤としては、水又は水と有機溶剤との混合溶剤が任意の量で用いられ、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤と水との混合溶剤、或いはベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶剤が特に好ましい。結晶を析出させる際の温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。また、オキシチタニルフタロシアニン結晶と無機塩との比率は、重量比で1:0.1〜1:20であることが好ましく、1:0.5〜1:5であることがより好ましい。上記の溶剤処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼンなど)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノールなど)、ハロゲン系炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタンなど)、これらの有機溶剤のうちの2種以上の混合物、あるいはこれらの有機溶剤と水との混合物などが挙げられる。溶剤処理における溶剤の使用量は、オキシチタニルフタロシアニン1重量部に対して好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部である。また、溶剤処理における処理温度は、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは50〜100℃である。さらに、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤の使用量はヒドロキシガリウムフタロシアニン1重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。
【0128】
また、本発明にかかる電荷発生層の結着樹脂としては、本発明にかかる架橋体の他、ポリビニルアセタール、ポリアリレート(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共合体、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの絶縁性樹脂が挙げられる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンなどの有機光導電性ポリマーを結着樹脂として用いることもできる。これらの中でも、特に、有機金属化合物と架橋などの反応を起こしやすい水酸基を有する樹脂が好ましい。なお、電荷発生層の成膜後に他の層(電荷輸送層など)をさらに積層する場合、電荷発生層の上に積層される層の塗工液の溶剤に溶解する樹脂は好ましくない。
【0129】
本発明にかかる電荷発生層は、電荷発生材料と結着樹脂とを所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を所定の層(導電性支持体、電荷輸送層、下引き層など)上に塗布し、乾燥させることによって好適に得ることができる。ここで、電荷発生層の形成に用いる有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機溶剤に電荷発生材料と結着樹脂とを分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法などが挙げられるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行うことが好ましい。さらにこの分散工程において、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが好ましい。
【0130】
また、上記の塗工液を塗布する方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。
【0131】
このようにして得られる電荷発生層の膜厚は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜2μmである。電荷発生層の膜厚が前記下限値未満であると成膜性が低下するとともに十分な機械的強度が得られにくくなる傾向にある。他方、電荷発生層の膜厚が前記上限値を超えると電気特性上十分な光減衰が得られにくくなる傾向にある。
【0132】
本発明にかかる電荷輸送層は、前述の通り、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有するものである。ここで、本発明において用いられる電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノンなどのキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノンなどのフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物などの電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物、などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷輸送材料の中でも、下記一般式(47):
【0133】
【化38】
【0134】
[式(47)中、Ar7及びAr8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ無置換アリール基、或いはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアミノ基及び炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種が置換された置換アリール基を表し、R8は水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表す]
で表されるトリフェニルアミン系化合物、並びに下記一般式(48):
【0135】
【化39】
【0136】
[式(48)中、R9及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアミノ基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表し、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表し、m’及びn’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜2の整数を表す]
で表されるベンジジン系化合物は、高い電荷(正孔)輸送能と優れた安定性とを有しているので特に好ましい。上記式(47)で表される化合物のAr7、Ar8、R8の好ましい組み合わせを表30〜31、上記式(48)で表される化合物のR9、R10、R11、R12、R13及びR14の好ましい組み合わせを表32にそれぞれ示す。
【0137】
【表30】
【0138】
【表31】
【0139】
【表32】
【0140】
また、本発明においては、電荷輸送材料として、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する高分子電荷輸送材料を用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。なお、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いる場合には結着樹脂を用いずとも電荷輸送層の成膜が可能であるが、高分子電荷輸送材料と後述する結着樹脂との混合物を用いて成膜してもよい。
【0141】
本発明にかかる電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリエステル系高分子電荷輸送材料などの高分子電荷輸送材料を用いることができる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
また、本発明においては、必要に応じて、上記下引き層の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、これらと硬化可能な電荷輸送材料(例えば上記式(3)で表される光機能性有機ケイ素化合物など)を電荷輸送層に配合してもよい。
【0143】
本発明にかかる電荷輸送層は、電荷輸送材料及び結着樹脂、並びに必要に応じて配合される他の材料を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、所定の層(導電性支持体、下引き層、電荷発生層など)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、塗工液中の電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。また、塗工液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレンなどのハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどの環状もしくは直鎖状のエーテル類、など有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。さらに、塗工液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。このようにして得られる電荷輸送層の厚みは好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0144】
他方、図4〜5に示す電子写真感光体の単層型感光層に用いる電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂としては、上記の電荷発生層及び電荷輸送層の説明において例示された電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂が挙げられる。また、単層型感光層の成膜工程においては、電荷発生層や電荷輸送層と同様にして塗工液を調製し、その塗工液を塗布し、乾燥させることによって単層型感光層を形成することができる。ここで、電荷発生材料の含有量は、単層型感光層中の固形分全量を基準として10〜80重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。また、電荷輸送材料の含有量は、単層型感光層中の固形分全量を基準として1〜50重量%であることが好ましい。さらに、単層型感光層の厚みは5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0145】
本発明の電子写真感光体は、図2,3,5に示すように保護層を備えることが好ましく、当該保護層には本発明にかかる架橋体が含有されていることが特に好ましい。電子写真感光体が本発明にかかる架橋体を含有する保護層を備えている場合には、熱、電気、化学物質などに対する安定性と機械的強度との双方がより高められるとともに、水、放電生成物、トナーなどによる汚染防止効果がより向上する傾向にある。また、当該保護層は電子写真感光体に安定性や機械的強度を付与したり汚染物質の表面への付着を防止したりする機能に加えて、電荷輸送層としての機能をも有するので、この保護層をそのまま積層型感光体の電荷輸送層として用いることもできる。
【0146】
本発明にかかる保護層は、本発明にかかる架橋体のみからなるものでもよく、本発明にかかる架橋体と他の材料とからなるものであってもよい。本発明にかかる架橋体と組み合わせて用いられる他の材料としては、上記下引き層の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、結着樹脂などが挙げられる。
【0147】
本発明にかかる保護層は、上記の材料を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、所定の層(電荷発生層、電荷輸送層など)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、塗工液に用いる溶剤及び塗布方法としては、それぞれ上記電荷輸送層の説明において例示された溶剤及び塗布方法が挙げられる。このようにして得られる保護層の厚みは、電子写真感光体の感光特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、例えば、電荷輸送層上に保護層を設ける場合、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。なお、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行ってもよく、複数回重ね塗布した後に行ってもよい。
【0148】
上記の構成を有する本発明の電子写真感光体は、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止性が十分に高く、且つ汚染物質が付着しても表面を損傷することなく汚染物質を除去することができるものであるが、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化防止効果をさらに高める目的で、感光膜中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加することができる。本発明において用いられる酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物など;光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン又はそれらの誘導体など、が挙げられる。
【0149】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減などの効果をさらに高める目的で、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o-ジニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、フタル酸、上記式(1)で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物などの電子受容物質を配合することもできる。これらの中でも、フルオレノン系化合物、キノン系化合物、−Cl、−CN、−NO2などの電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0150】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
【0151】
図6は本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図6においては、本発明の電子写真感光体1が支持体9によって保持されており、電子写真感光体1は支持体9を中心として矢印の方向に所定の回転速度で回転駆動される。この回転過程において、電源(図示せず)から電圧の供給を受けた帯電部材10により、電子写真感光体1はその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受ける。次に、露光手段(画像入力手段)11にて電子写真感光体1が光像露光を受け、電子写真感光体1の周面に露光像に対応した静電潜像が形成される。その後、現像手段12にて静電潜像にトナーを付着させてトナー像が形成され、転写手段13にて前記トナー像が被転写体Pに転写される。トナー像が転写された後の被転写体Pは像定着手段14にて像定着を受けて複写物としてプリントアウトされる。転写工程後の感光体1はクリーニング手段15にてその周面に残存したトナーの除去を受けて清浄面化されて繰り返して像形成に使用される。
【0152】
ここで、本発明にかかる帯電手段としては、例えばローラー状、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器などが挙げられる。なお、従来の画像形成装置においては、帯電手段として接触型帯電機を用いた場合には電子写真感光体が劣化したりその表面に汚染物質が付着するなどの現象が起こりやすかったが、本発明の画像形成装置においては、帯電手段として接触型帯電器を用いた場合であっても、本発明の電子写真感光体が有する、汚染物質に対する十分に高い付着防止性と、汚染物質除去の際のストレスに対する十分に高い耐久性とにより、長期にわたって十分に良好な画像品質を得ることができる。
【0153】
本発明にかかる接触型帯電器としてローラー状帯電部材を備えるものを用いる場合、ローラー状帯電部材を電子写真感光体に接触させることによって、駆動手段を設けることなくローラー状帯電部材を電子写真感光体と同じ周速度で回転させることができる。また、ローラー状帯電部材に所定の駆動手段を取り付け、電子写真感光体の周速度と異なる周速度で回転させても良い。ローラー状帯電部材の芯材としては、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケルなどの導電性を有する材料や、導電性粒子等を分散した樹脂成形品などを用いることができる。また、ローラー状帯電部材の弾性層の材料としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴムなどのゴム材に、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウムなどの金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgOなどの金属酸化物、などの導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散した材料が好ましく用いられる。さらに、ローラー状帯電部材の抵抗層及び保護層の材料としては、上記の導電性粒子あるいは半導電性粒子をアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PETなどのポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂に分散し、その抵抗を制御したものが好ましく用いられる。なお、抵抗層及び保護層の抵抗率は好ましくは103〜1014Ωcm、より好ましくは106〜1012Ωcm、さらに好ましくは107〜1012Ωcmである。また、抵抗層及び保護層の膜厚はそれぞれ好ましくは0.01〜1000μm、より好ましくは0.1〜500μm、さらに好ましくは0.5〜100μmである。さらに、抵抗層及び保護層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0154】
上記の接触型帯電器を用いて電子写真感光体を帯電させる場合、ローラー状帯電部材に電圧が印加されるが、印加電圧は直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがより好ましい。他方、直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800Vであることが好ましく、800〜1600Vであることがより好ましく、1200〜1600Vであることがさらに好ましい。また、重畳する交流電圧の周波数は好ましくは50〜20000Hz、より好ましくは100〜5000Hzである。
【0155】
また、露光手段としては、前記電子写真感光体表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッターなどの光源を所望の像様に露光できる光学系装置など;
現像手段としては、一成分系、ニ成分系などの正規または反転現像剤を用いた従来より公知の現像手段など;
転写装置としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器など、が挙げられる。
【0156】
なお、図6には示していないが、本発明の画像形成装置は中間転写手段を備えるものであってもよい。本発明にかかる中間転写手段としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂などを含む弾性層と少なくとも1層の被服層とが積層された構造を有するものを使用することができ、その材料としては使用される材料は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたもの等があげられる。また、前記中間転写手段の形状としては、ローラー状、ベルト状などが挙げられる。
【0157】
さらに、本発明においては、上記本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を備える本発明のプロセスカートリッジを用いることによって、プロセスカートリッジが備える所定の手段と電子写真装置との脱着作業を効率且つ確実に行うことが可能となる。
【0158】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、フッ素含有有機化合物の化合物番号は表1、光機能性有機ケイ素化合物の化合物番号は表2〜28、有機ケイ素化合物の化合物番号は表29、トリフェニルアミン系化合物の化合物番号は表30〜31、ベンジジン系化合物の化合物番号は表32に示す化合物番号を表す。
【0159】
実施例1
(下引き層の形成)
ホーニング処理を施した外径30mmのアルミニウム基材上に、ジルコニウム化合物(商品名:オルガノチックスZC540、マツモト製薬社製)20重量部、シラン化合物(商品名:A1100、日本ユニカー社製)2.5重量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)5重量部及びブタノール45重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で塗布し、150℃で10分間加熱乾燥し膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
【0160】
(電荷発生層の形成)
X線回折スペクトルにおけるブラッグ角 (2θ±0.2°) が、7.4°、16.6°、25.5°、28.3° の位置に強い回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニン1重量部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学社製)1重量部及び酢酸n−ブチル100重量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散して塗工液を調製した。得られた塗工液を上記の下引き層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0161】
(電荷輸送層の形成)
ベンジジン系化合物(VI−27)2重量部と、下記式(49):
【0162】
【化40】
【0163】
[式中、xは整数を表す]
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:39000))3重量部とをクロロベンゼン20重量部に溶解させた塗布液を、上記の電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃で40分加熱乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0164】
(保護層の形成)
フッ素含有有機ケイ素化合物(I−5)2重量部と光機能性有機ケイ素化合物(III−261)2重量部とを、イソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.3重量部からなる混合溶液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.5重量部を加えて攪拌しながら室温で24時間加水分解を行った。
【0165】
次に、イオン交換樹脂を濾過分離した後の反応液2重量部に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加えて塗工液を調製した。この塗工液を上記の電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、120℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3mの保護層を形成して目的の電子写真感光体を得た。
【0166】
(画質回復試験)
得られた電子写真感光体を用いて図6に示す構成を有する画像形成装置を作製し、以下の手順で画質回復試験を行った。なお、この画像形成装置においては、帯電手段としてローラー状帯電部材を備える接触型帯電器を用いた。
【0167】
先ず、画像形成装置からトナー及びクリーニング手段を除去し、帯電工程のみを1000サイクル行うことによって電子写真感光体の表面を強制的に汚染した。次に、現像手段にトナーを充填するとともにクリーニング手段を装着して印字テストを行い、目視観察により画像ボケが認められなくなるまでの印刷物の枚数を計測した。得られた結果を表33に示す。なお、実施例1においては、帯電工程において電子写真感光体を正に帯電させるとともに、現像工程においてトナーを正に帯電させて試験を行った。また、試験条件は22℃、55%RH条件下とした。さらに、用紙は富士ゼロックス社製PPC用紙(L、A4)を用いた。
【0168】
実施例2
実施例1における光機能性有機ケイ素化合物(III−261)の代わりに光機能性有機ケイ素化合物(III−126)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0169】
実施例3
実施例1における光機能性有機ケイ素化合物(III−261)の代わりに光機能性有機ケイ素化合物(III−273)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0170】
実施例4
実施例1における光機能性有機ケイ素化合物(III−261)の代わりに光機能性有機ケイ素化合物(III−145)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0171】
実施例5
実施例1における光機能性有機ケイ素化合物(III−261)の代わりに光機能性有機ケイ素化合物(III−255)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0172】
実施例6
実施例1と同様にして、下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の形成を行った。
【0173】
次に、フッ素含有有機ケイ素化合物(I−9)2重量部、光機能性有機ケイ素化合物(III−261)1重量部及び有機ケイ素化合物(IV−3)1重量部をイソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.3重量部からなる混合溶液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.5重量部を加えて攪拌しながら室温で24時間加水分解を行った。
【0174】
さらに、イオン交換樹脂を濾過分離した後の反応液2重量部に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加えて塗工液を調製した。この塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層の形成を行い、目的の電子写真感光体を得た。
【0175】
得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0176】
実施例7
(下引き層の形成)
ホーニング処理を施した外径30mmのアルミニウム基材上に、ジルコニウム化合物(商品名:オルガノチックスZC−540、マツモト製薬社製)20重量部、シラン化合物(商品名:A1100、日本ユニカー社製)2.5重量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)5重量部及びブタノール 45重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で塗布し、150℃で10分間加熱乾燥して膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
【0177】
(単層型感光層の形成)
フッ素含有有機ケイ素化合物(I−2)4重量部及び光機能性有機ケイ素化合物(III−261)を、イソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.6重量部からなる混合溶液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.5重量部を加えて攪拌しながら室温で24時間加水分解を行った。
【0178】
次に、イオン交換樹脂を濾過分離した反応液2重量部にアルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加え、さらにX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、28.3° の位置に強い回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニン1重量部を加えてガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散処理して塗工液を調製した。得られた塗工液を上記の下引き層上に浸漬コートし、150℃で60分間加熱乾燥して膜厚約8μmの単層型感光層を形成した。この操作を再度繰り返し、膜厚約16μmの単層型感光層を形成し、目的の電子写真感光体を作製した。
【0179】
得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。なお、実施例7においては帯電工程において電子写真感光体を正に帯電させるとともに、現像工程においてトナーを正に帯電させて試験を行った。
【0180】
比較例1
保護層の形成を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0181】
比較例2
実施例1と同様にして、下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の形成を行った。
【0182】
次に、光機能性有機ケイ素化合物(III−261)2重量部及び有機ケイ素化合物(IV−3)2重量部をイソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.3重量部からなる混合溶液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.5重量部を加えて攪拌しながら室温で24時間加水分解を行った。
【0183】
さらに、イオン交換樹脂を濾過分離した後の反応液2重量部に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加えて塗工液を調製した。この塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層の形成を行い、目的の電子写真感光体を得た。
【0184】
得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0185】
比較例3
実施例1と同様にして、下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の形成を行った。
【0186】
次に、光機能性有機ケイ素化合物(III−261)4重量部及び有機ケイ素化合物(IV−3)4重量部をイソプロピルアルコール5重量部、テトラヒドロフラン3重量部及び蒸留水0.3重量部からなる混合溶液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.5重量部を加えて攪拌しながら室温で24時間加水分解を行った。
【0187】
さらに、イオン交換樹脂を濾過分離した後の反応液2重量部に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04重量部を加えて塗工液を調製した。この塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層の形成を行い、目的の電子写真感光体を得た。
【0188】
得られた電子写真感光体を用いて、実施例1と同様にして画像形成装置を作製し、画質回復試験を行った。得られた結果を表33に示す。
【0189】
【表33】
【0190】
表33に示すように、実施例1〜7においては、いずれも比較例1〜3に比べて画像回復までの枚数が少なく、電子写真感光体の表面に付着した汚染物質を容易且つ確実に除去できることが確認された。
【0191】
実施例8
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0192】
得られた電子写真感光体を用いて図1に示す構成を有する画像形成装置を作製した。なお、この画像形成装置においては、帯電手段としてローラー状帯電部材を備える接触型帯電器を用いた。
【0193】
上記の画像形成装置を用いて、黒トナーのみを現像するモードにて20万枚の耐刷性試験を行い、20万枚目の画質を目視観察により評価するとともに、試験後の電子写真感光体表面について、外観の目視観察及び干渉膜厚計による摩耗量(膜厚減少量)の測定を行った。得られた結果を表34に示す。
【0194】
実施例9
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0195】
実施例10
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0196】
実施例11
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0197】
実施例12
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例5と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0198】
実施例13
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0199】
実施例14
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0200】
比較例4
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0201】
比較例5
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0202】
比較例6
アルミニウム基材として外径84mmのものを用いたこと以外は比較例3と同様にして電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を用いて実施例8と同様にして画像形成装置を作製し、耐刷性試験を行った。得られた結果を表34に示す。
【0203】
【表34】
【0204】
表34に示すように、実施例8〜14においては、いずれも20万枚目の画質が良好であり、また、耐刷性試験後の電子写真感光体には表面の損傷や摩耗が十分に防止されていることが確認された。これに対して、比較例4においては、20万枚目の印刷物に印字濃度の低下や画像欠陥の発生が認められ、また、耐刷性試験後の電子写真感光体の表面が顕著に摩耗していることがわかった。また、比較例5、6においては、20万枚目の印刷物に筋状の画像欠陥が顕著に認められ、また、耐刷性試験後の電子写真感光体の表面には全面にわたって付着物が確認された。
【0205】
比較例7
実施例6におけるフッ素含有有機ケイ素化合物(I−9)の代わりに下記式(50):
【0206】
【化41】
【0207】
で表される1官能型のフッ素含有有機ケイ素化合物を用いたこと以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を作製したところ、保護層にはじき状の塗膜欠陥が生じてしまい、保護層を均一に成膜することができなかった。
【0208】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、水、放電生成物、トナーなどの汚染物質に対する付着防止性が十分に高められるとともに、汚染物質が付着しても表面を損傷することなく汚染物質を除去することができるので、電子写真プロセスにおいて長期にわたって十分に良好な画像品質を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光膜、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、9…支持体、10…帯電手段、11…画像入力手段、12…現像手段、13…転写手段、14…像定着手段、15…クリーニング手段。
Claims (7)
- 導電性支持体と、該支持体上に配置された感光膜と、を備える電子写真感光体であって、
前記感光膜が、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、該ケイ素原子と結合した酸素原子と、からなる骨格を有する架橋体を含有することを特徴とする電子写真感光体。 - 前記架橋体が、下記一般式(1):
W[−SiR3−aQa]b (1)
[式(1)中、Wは炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは2以上の整数を表す]
で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物を用いて得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。 - 前記骨格が、炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基と、該有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した第一のケイ素原子と、該第一のケイ素原子に結合した酸素原子と、該酸素原子に結合した第二のケイ素原子と、該第二のケイ素原子に結合した光機能性有機基と、からなるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記架橋体が、下記一般式(1):
W[−SiR3−aQa]b (1)
[式(1)中、Wは炭素原子及びフッ素原子を含有する有機基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは加水分解性基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは2以上の整数を表す]
で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物と、下記一般式(2):
W’[−D−SiR’3−a’Q’a’]b’ (2)
[式(2)中、W’は光機能性有機基を表し、Dは2価の基を表し、R’は水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Q’は加水分解性基を表し、a’は1〜3の整数を表し、b’は1〜4の整数を表す]
で表される光機能性有機ケイ素化合物と、を用いて得られるものであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体。 - 前記感光膜が電荷発生層及び電荷輸送層を含む2以上の層を有しており、且つ前記感光膜を構成する層のうち前記支持体から最も遠い側に配置された層が前記架橋体を含有することを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、クリーニング手段及び現像手段からなる群より選ばれる少なくとも1種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための画像入力手段と、
前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
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