以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(電子写真感光体)
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、電荷発生層と電荷輸送層とが別個に設けられた感光層を備える機能分離型感光体である。より具体的には、電子写真感光体1は、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有し、保護層7は最表面層を、電荷発生層5及び電荷輸送層6は感光層3を構成している。
以下、電子写真感光体1の各要素について詳述する。
先ず、導電性基体2について説明する。導電性基体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物、又はアルミニウム、パラジウム、金等の金属若しくは合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト、ガラス等でもよい。また、注入阻止、接着性改善、干渉縞防止等の目的で、例えば、陽極酸化処理、ベーマイト処理又はホーニング処理、或いはリン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理を施したものを用いることもできる。
また、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体2の表面は粗面化されていることが好ましい。粗面化度としては、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下であることが好ましい。Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、Raが0.5μmより大きいと、本発明による皮膜を形成しても画質が粗くなって不適である。
導電性基体2の表面を粗面化する方法としては、研磨剤を水に懸濁させ、基体表面に吹き付ける湿式ホーニング、回転する砥石に基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化等が好ましく、また、基体表面そのものを粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を分散させた樹脂層を基体表面上に形成し、当該樹脂層中に分散させる粒子により粗面化する方法も好ましい。
陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし、電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、多孔質陽極酸化膜は、そのままでは化学的に活性であり、汚染されやすく、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を、加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい。)で、水和反応による体積膨張で塞ぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の厚さとしては、0.3μm以上15μm以下が好ましい。0.3μmより薄いと、注入に対するバリア性が乏しく、効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmより厚いと、繰返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
酸性処理液による処理は、以下のようにして行うことができる。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下、クロム酸が3質量%以上5質量%以下、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下であって、これらの酸全体の濃度としては、13.5質量%以上18質量%以下が好ましい。処理温度は、42℃以上48℃以下であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い皮膜を形成することができる。皮膜の厚さとしては、0.3μm以上15μm以下が好ましい。0.3μmより薄いと、注入に対するバリア性が乏しく、効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmより厚いと、繰返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
また、ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分以上60分以下の時間浸漬するか、又は、90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分以上60分以下の時間接触させることにより行うことができる。皮膜の厚さとしては、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これを更に、アジピン酸、ホウ酸、ホウ酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の、皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体2の表面の凹凸による欠陥の発生が防ぐことができるため、より長寿命化に適する。
次に、下引き層4について説明する。下引き層4は、必要に応じて設けられるものであるが、特に、導電性基体2に酸性溶液処理又はベーマイト処理が施されている場合は、導電性基体2の欠陥隠蔽力が不十分となりやすいため、下引き層4を形成することが好ましい。
下引き層4に用いる材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物の他、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等の有機金属化合物が挙げられ、特に有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く、良好な電子写真特性を示す点で好ましい。
また、下引き層4はシランカップリング剤を更に含有してもよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
また、下引き層4は結着樹脂を更に含有してもよい。結着樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることができる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
また、下引き層4は、残留電位の低減や環境安定性の向上の観点から、電子輸送性顔料を更に含有してもよい。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料、及び酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中では、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、酸化亜鉛及び酸化チタンが、電子移動性が高い点で好ましい。また、これらの顔料は、分散性及び電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤、バインダー等で表面処理してもよい。電子輸送性顔料は、多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため、95質量%以下、好ましくは90質量%以下で用いる。
また、下引き層4は、電気特性の向上、光散乱性の向上等の観点から、各種の有機化合物又は無機化合物の微粉末を更に含有してもよい。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、及びポリエチレンテレフタレート樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が有効である。微粉末の粒径としては、0.01μm以上2μm以下が好ましい。微粉末は必要に応じて含有させるが、その含有量は、下引き層4の固形分の総質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
下引き層4は、下引き層4の構成材料を含有する下引き層形成用塗布液を導電性基体2上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば、いかなるものでもよい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶媒を、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、塗布液の分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー、超音波等の方法を用いることができる。更に、塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布後の乾燥は、溶媒を蒸発させ、製膜可能な温度で行う。下引き層4の厚さは、一般的には0.01μm以上30μm以下、好ましくは0.05μm以上25μm以下である。
次に、電荷発生層5について説明する。電荷発生層5は、電荷発生材料及び結着樹脂を含有する。
電荷発生材料としては、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料、及び三方晶セレン、酸化亜鉛等の無機顔料等、公知のものを用いることができるが、特に画像形成の際に波長380nm以上500nm以下の露光光を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料、三方晶セレン、ジブロモアントアントロン等が好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂、及び、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーが挙げられる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:10が好ましい。
電荷発生層5は、電荷発生層5の構成材料を含有する電荷発生層形成用塗布液を下引き層4上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶媒を、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、塗布液を調製する際の分散方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって電荷発生材料である顔料の結晶型が変化しない条件が必要とされる。更に、この分散の際、顔料粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。更に、塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布後の乾燥は、溶媒を蒸発させ、製膜可能な温度で行う。電荷発生層5の厚さは、一般的には0.1μm以上5μm以下、好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
次に、電荷輸送層6について説明する。電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有するか、或いは高分子電荷輸送材を含有する。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン系化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されない。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で表される化合物が好ましい。
上記式(a−1)中、R34は水素原子又はメチル基を、k10は1又は2を示す。また、Ar6及びAr7は、置換若しくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39及びR40は、各々独立に水素原子、置換又は未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
上記式(a−2)中、R35及びR35’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R36、R36’、R37及びR37’は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を、R38、R39及びR40は各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。また、m4及びm5は各々独立に0〜2のいずれかの整数を示す。
上記式(a−3)中、R41は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R42、R42’、R43、及びR43’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
電荷輸送層6に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂等、公知のフィルム形成可能な電気絶縁性の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂は、電荷輸送材料との相溶性、溶媒への溶解性、及び強度が優れている点で好ましい。これらの結着樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層6の構成材料として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層6は、電荷輸送層6の構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布後の乾燥は、溶媒を蒸発させ、製膜可能な温度で行う。電荷輸送層6の厚さは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
また、画像形成装置中で発生するオゾン又は酸化性ガス、或いは光、熱等による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3(電荷発生層5、電荷輸送層6)には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を含有させることができる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
また、感光層3(電荷発生層5、電荷輸送層6)中には、感度の向上、残留電位の低減、繰返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等が挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系、及びCl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
最後に、保護層7について説明する。保護層7は、架橋構造を有する樹脂と、金属酸化物と、を含有する。
架橋構造を有する樹脂としては、フェノール樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、機械強度、電気特性及び付着物除去性の点で、フェノール樹脂及びシロキサン樹脂が好ましく、フェノール樹脂が特に好ましい。
フェノール樹脂としては、例えば、メチロール基を有するフェノール誘導体を硬化させて得られる樹脂が挙げられる。メチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の、水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の、水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させて得られるものであり、その例として、一般にフェノール樹脂として市販されているものが挙げられる。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、リン酸等を用いることができる。また、上記アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Ba(OH)2、CaO、MgO等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物、アミン系触媒、或いは酢酸亜鉛、酢酸ナトリウム等の酢酸塩類等を用いることができる。ここで、アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、アルカリ触媒を用いた場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性が悪化する傾向がある。そのような場合は、減圧で留去させるか、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
シロキサン樹脂としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン等の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物から得られる樹脂が挙げられる。
保護層7に含有される上記樹脂は、電気特性の改良のために、電荷輸送性化合物から誘導される構造を有することが好ましく、そのような電荷輸送性化合物としては、成膜性、機械強度及び安定性に優れることから、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で表される化合物が好ましい。
F[−(X1)n1R1−Z1H]m1 (I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、R1はアルキレン基を示し、Z1は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、X1は酸素原子又は硫黄原子を示し、m1は1〜4のいずれかの整数を示し、n1は0又は1を示す。]
F[−(X2)n2−(R2)n3−(Z2)n4G]n5 (II)
[式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、X2は酸素原子又は硫黄原子を示し、R2はアルキレン基を示し、Z2は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、Gはエポキシ基を示し、n2、n3及びn4は各々独立に0又は1を示し、n5は1〜4のいずれかの整数を示す。]
F[−D−Si(R3)(3-a)Qa]b (III)
[式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導されるb価の有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、aは1〜3のいずれかの整数を、bは1〜4のいずれかの整数を示す。]
[式(IV)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、R
4、R
5及びR
6は各々独立に水素原子又は1価の有機基を示し、R
7は1価の有機基を示し、m2は0又は1を示し、n6は1〜4のいずれかの整数を示す。但し、R
6とR
7は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
[式(V)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、R
8は1価の有機基を示し、m3は0又は1を示し、n7は1〜4のいずれかの整数を示す。]
[式(VI)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Lはアルキレン基を示し、R
9は1価の有機基を示し、n8は1〜4のいずれかの整数を示す。]
また、上記一般式(I)〜(VI)で表わされる化合物における上記Fは、下記一般式(VII)で表される基であることが好ましい。
[式(VII)中、Ar
1、Ar
2、Ar
3及びAr
4は各々独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar
5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr
1〜Ar
5のうち1〜4個は、上記一般式(I)で表わされる化合物における下記一般式(VIII)で示される部位、上記一般式(II)で表わされる化合物における下記一般式(IX)で示される部位、上記一般式(III)で表わされる化合物における下記一般式(X)で示される部位、上記一般式(IV)で表わされる化合物における下記一般式(XI)で示される部位、上記一般式(V)で表される化合物における下記一般式(XII)で表される部位、又は上記一般式(VI)で表される化合物における下記一般式(XIII)と結合するための結合手を有する。]
−(X
1)
n1R
1−Z
1H (VIII)
−(X
2)
n2−(R
2)
n3−(Z
2)
n4G (IX)
−D−Si(R
3)
(3-a)Q
a (X)
また、上記一般式(VII)中のAr1〜Ar4で示される置換又は未置換のアリール基としては、具体的には、下記一般式(1)〜(7)に示されるアリール基が好ましい。
上記式(1)〜(7)中、R10は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、R11〜R13は各々、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を示し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を示し、Dは上記一般式(VIII)〜(XIII)で表される構造のいずれかを示し、c及びsは各々、0又は1を示し、tは1〜3のいずれかの整数を示す。
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(8)又は(9)で示されるアリーレン基が好ましい。
上記式(8)及び(9)中、R14及びR15は各々、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、或いはハロゲン原子を示し、tは1〜3のいずれかの整数を示す。
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるZ’としては、下記式(10)〜(17)で示される2価の基が好ましい。
式(10)〜(17)中、R16及びR17は各々、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、或いはハロゲン原子を示し、Wは2価の基を示し、q及びrは各々、1〜10のいずれかの整数を示し、tは各々、1〜3のいずれかの整数を示す。
また、上記式(16)〜(17)中、Wは下記式(18)〜(26)で示される2価の基を示す。なお、式(25)中、uは0〜3のいずれかの整数を示す。
また、上記一般式(VI)におけるAr5の具体的構造としては、k=0の時は上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるc=1の構造が、k=1の時は上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるc=0の構造が挙げられる。
また、上記一般式(I)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(I−1)〜(I−38)が挙げられる。なお、下記表中、結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
また、上記一般式(II)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(II−1)〜(II−47)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(III)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(III−1)〜(III−61)が挙げられる。なお、下記化合物(III−1)〜(III−61)は、一般式(VI)で表される化合物のAr1〜Ar5及びkを下記の表に示されるように組み合わせ、且つ、アルコキシシリル基(s)を下記の表に示される特定のものとしたものである。
また、上記一般式(IV)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(IV−1)〜(IV−40)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(V)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(V−1)〜(V−55)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
また、上記一般式(VI)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(VI−1)〜(VI−17)が挙げられる。なお、下記表中、Meはメチル基を、Etはエチル基を示す。
保護層7に含有される、表面処理された金属酸化物としては、公知の金属酸化物を用いることができるが、導電性、及び樹脂への分散性の点で、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、酸化スズ及び酸化亜鉛がより好ましい。前記金属酸化物は、その他の元素が少量ドープされていてもよい。例えば、ストロンチウムをドープした酸化スズ、又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛が挙げられる。金属酸化物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属酸化物の含有量としては、保護層の体積に対して、0.5体積%以上10体積%以下が好ましい。含有量が0.5体積%未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、摩耗が大きくなる傾向がある。他方、含有量が10体積%を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、保護層の抵抗値が低くなり、画像流れが発生しやすくなる傾向がある。
金属酸化物の粉体抵抗値としては、1Ω・cm以上1×107Ω・cm以下が好ましく、1×10Ω・cm以上1×105Ω・cm以下が更に好ましい。粉体抵抗値が1Ω・cm未満であると、1Ω・cm以上1×107Ω・cm以下の場合と比較して、保護層の抵抗値が低くなり、高温高湿下で画像流れが発生しやすくなる傾向がある。他方、粉体抵抗値が1×107Ω・cmを超えると、1Ω・cm以上1×107Ω・cm以下の場合と比較して、電気特性が悪化する傾向がある。
金属酸化物の平均粒径としては、10nm以上100nm以下が好ましく、30nm以上80nm以下が更に好ましい。平均粒径が10nm未満であると、10nm以上100nm以下の場合と比較して、表面積が大きくなり、保護層中における金属酸化物の分散性が悪化する傾向がある。他方、平均粒径が100nmを超えると、10nm以上100nm以下の場合と比較して、保護層内で金属酸化物、バインダー、電荷輸送剤等が不均一になり、保護層の透明性が損なわれる傾向がある。
金属酸化物は、スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物、チオール基を有する有機ケイ素化合物、及びスルフィド基を有する有機ケイ素化合物、のうちの少なくとも一種の有機ケイ素化合物で表面処理されたものである。
但し、本発明の実施形態においては、金属酸化物は、スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物及びチオール基を有する有機ケイ素化合物のうちの少なくとも一種の有機ケイ素化合物で表面処理されたものを適用する。
スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物としては、例えば、下記化合物(A−1)〜(A−6)が挙げられる。
チオール基を有する有機ケイ素化合物、及びスルフィド基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記化合物(B−1)〜(B−4)が挙げられる。なお、式(B−4)中、n及びmは、各々1以上の整数を示す。
金属酸化物は、上記少なくとも一種の有機ケイ素化合物で表面処理された後、更なる表面処理を施されたものでもよく、そのような更なる表面処理の好ましい例としては、フッ素系シランカップリング剤(フッ素原子含有シランカップリング剤)による表面処理が挙げられる。フッ素系シランカップリング剤としては、例えば、下記化合物(C−1)〜(C−5)が挙げられる。
金属酸化物の表面処理に用いる表面処理剤(スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物、チオール基を有する有機ケイ素化合物、又はスルフィド基を有する有機ケイ素化合物)の量としては、金属酸化物の質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。表面処理剤の量が0.5質量%未満では、表面処理剤の効果が現れにくくなる傾向があり、他方、20質量%を超えると、残留電位の上昇が抑制されにくくなる傾向がある。
金属酸化物の表面処理は、湿式法、乾式法等、公知の方法を用いて行うことができる。
例えば、湿式法により表面処理を施す場合、金属酸化物を、撹拌により、又は超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等を用いて、溶媒中に分散し、有機ケイ素化合物の溶液を添加して、撹拌又は分散した後、溶媒を除去することによって、均一な表面処理を行うことができる。溶媒は、ろ過や蒸留により除去することができる。溶媒除去後には、更に100℃以上で焼付けを行うことができる。焼付けを行う温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる範囲であれば、任意の範囲で設定することができる。金属酸化物に含有される水分を除去するためには、表面処理に用いる溶媒中で撹拌加熱しながら除去する方法、溶媒と共沸させて除去する方法等を用いることもできる。
また、乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物をせん断力の大きなミキサー等で撹拌しながら、有機ケイ素化合物を直接に、又は有機溶媒に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスと共に噴霧させることによって、均一な表面処理を行うことができる。有機ケイ素化合物の滴下及び混合物の噴霧は、用いる溶媒の沸点未満の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶媒の沸点以上の温度で行うと、均一に撹拌される前に溶媒が蒸発し、有機ケイ素化合物が局部的に凝集して均一な処理が行われにくくなる。このようにして表面処理された金属酸化物について、更に100℃以上で焼付けを行うことができる。焼付けを行う温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる範囲であれば、任意の範囲で設定することができる。
なお、スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物を用いた場合、表面処理後、金属酸化物に結合したスルホン酸エステル基を更に過熱して分解させ、スルホン酸基を生成させてもよい。また、チオール基を有する有機ケイ素化合物、又はスルフィド基を有する有機ケイ素化合物を用いた場合、表面処理後、金属酸化物に結合したチオール基又はスルフィド基を、酸化反応により(例えば、過酸化水素により)スルホン酸基に変換してもよい。
保護層7には、表面処理された金属酸化物の他に、導電性無機粒子を含有させてもよい。導電性無機粒子としては、金属、金属酸化物、カーボンブラック等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモン又はタンタルをドープした酸化スズ、アンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体にしても、融着させてもよい。導電性粒子の平均粒径としては、保護層の透明性の点で、0.3μm以下が好ましく、特に0.1μm以下が好ましい。また、透明性の点で、金属酸化物を用いることが好ましい。また、分散性のコントロール等のために、粒子表面を処理することが好ましい。処理剤としては、シランカップリング剤、シリコーンオイル、シロキサン化合物、界面活性剤等が挙げられる。これらは、フッ素原子を含有することが好ましい。
保護層7には、保護層7の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(XIV)で表される化合物を含有させることもできる。
Si(R50)(4−c)Qc (XIV)
[上記式(XIV)中、R50は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4のいずれかの整数を示す。]
上記一般式(XIV)で表される化合物の具体例としては、以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等が挙げられる。膜の強度を向上させるためには、3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性及び成膜性を向上させるためには、1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、保護層7には、保護層7の強度を高めるために、下記一般式(XV)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を含有させることも好ましい。
B−(Si(R51)(3−d)Qd)2 (XV)
[上記式(XI)中、Bは2価の有機基を、R51は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3のいずれかの整数を示す。]
上記一般式(XV)で表される化合物としては、より具体的には、例えば、下記化合物(XV−1)〜(XV−16)が好ましい。
更に、保護層7には、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性等の向上、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフ延長等の目的で、種々の樹脂を含有させることができる。そのような樹脂としては、アルコール系又はケトン系溶媒に可溶な樹脂、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマール、アセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が好ましい。特に、電気特性を向上させるために、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂及びフェノール樹脂が好ましい。
上記樹脂の分子量は、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下が更に好ましい。分子量が2000より小さいと、所望の効果が得られなくなる傾向があり、他方、100000より大きいと、溶解度が低くなり、含有量が限られたり、塗布時に製膜不良の原因になったりする傾向がある。含有量は、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下、更に好ましくは5質量%以上20質量%以下である。含有量が1質量%よりも少ないと、所望の効果が得られにくくなる傾向があり、他方、40質量%よりも多いと、高温高湿下で画像ボケが発生しやすくなる傾向がある。上記の樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、ポットライフの延長、及び膜特性のコントロールのために、保護層7には、下記一般式(XVI)で示される繰返し構造単位を持つ環状化合物、又はその化合物の誘導体を含有させることが好ましい。
[上記式(XVI)中、A
1及びA
2は、各々独立に一価の有機基を示す。]
一般式(XVI)で示される繰返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンが挙げられる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等が挙げられる。これらの環状シロキサン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、保護層7には、より潤滑性を向上させる目的で、活性水素を有する基を側鎖に複数有し、かつ、フッ素原子又はシリコーン結合を有する樹脂を含有させることもできる。フッ素原子又はシリコーン結合を有する樹脂を含有させることで、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長、クリーニングシステムの寿命延長等の効果が得られる。また、活性水素を側鎖に複数有するものを用いることで、架橋構造中に化学結合を形成することができるため、膜中にこれらの樹脂が均一に分散しやすくなり、上記効果を長期にわたって持続させることができ、また、塗布時の欠陥を減少させることができる。更に、これらの樹脂を用いることで、含有量の限られていたフッ素系及びシリコーン系の材料を、塗布膜の欠陥を生じることなく多量に含有させることができる。
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、保護層7には、各種粒子を含有させることもできる。
粒子の一例として、ケイ素原子含有粒子が挙げられる。ケイ素原子含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有粒子として用いるコロイダルシリカは、体積平均粒子径が好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下であり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを用いることができる。コロイダルシリカの含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性及び強度の面から、保護層中の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上30質量%以下である。
ケイ素原子含有粒子として用いるシリコーン粒子は、球状で、体積平均粒子径が好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下であり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを用いることができる。
シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、更に十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性及び撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性及び耐汚染物付着性を維持することができる。シリコーン粒子の含有量は、保護層中の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や、“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と、水酸基を有するモノマーとを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
また、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、保護層7には、シリコーンオイルを含有させることもできる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、電子写真感光体1を作製後、例えば減圧下又は加圧下で含浸処理してもよい。
また、保護層7には、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を含有させることもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニルリン酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
保護層7には、ヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を含有させることもできる。このような酸化防止剤は、環境変動時の電位安定性及び画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては、以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系酸化防止剤としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」(以上、住友化学社製)、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」(以上、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」(以上、旭電化社製)。ヒンダートアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」(以上、三共ライフテック社製)、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」(以上、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」(以上、旭電化社製)、「スミライザーTPS」(以上、住友化学社製)、チオエーテル系酸化防止剤としては、「スミライザーTP−D」(以上、住友化学社製)、ホスファイト系酸化防止剤としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」(以上、旭電化社製)が挙げられ、特にヒンダートフェノール系酸化防止剤及びヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。更に、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な置換基(例えば、アルコキシシリル基)で変性してもよい。
保護層7は、保護層7の構成材料を含有する保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。なお、電荷輸送性化合物から誘導される構造を有する樹脂を形成する場合は、当該樹脂の原料化合物(例えば、メチロール基を有するフェノール誘導体)と反応可能な電荷輸送性化合物も構成材料となる。
保護層形成用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶媒を用いて行うことができる。このような溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、好ましくは沸点が100℃以下のものである。溶媒の使用量は任意に設定することができるが、電荷輸送性化合物を含有させる場合は、溶媒量が少なすぎると電荷輸送性化合物が析出しやすくなるため、電荷輸送性化合物1質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
電荷輸送性化合物から誘導される構造を有する樹脂を形成する場合、保護層形成用塗布液には、樹脂の原料化合物と電荷輸送性化合物との反応を促進する触媒を添加することが好ましい。そのような触媒としては、塩酸、酢酸、硫酸等の無機酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒の他、以下に示すような、系に不溶な固体触媒を用いることもできる。光機能性化合物、反応生成物、水、溶媒等に不溶な固体触媒を用いると、塗布液の安定性が向上する傾向がある。
系に不溶な固体触媒は、触媒成分が電荷輸送性化合物、他の添加剤、水、溶媒等に不溶であれば、特に限定されない。系に不溶な固体触媒としては、例えば、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂;Zr(O3PCH2CH2SO3H)2、Th(O3PCH2CH2COOH)2等の、プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等の、プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等の複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4、MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3、Mn(NO3)2等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等の、アミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等の、アミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
系に不溶な固体触媒の添加量は特に制限されないが、電荷輸送性化合物を含有させる場合は、電荷輸送性化合物100質量部に対して0.1質量部以上100質量部以下が好ましい。また、これらの固体触媒は、前述の通り、原料化合物、反応生成物、溶媒等に不溶であるため、反応後、常法に従って容易に除去することができる。
反応温度及び反応時間は原料化合物及び固体触媒の種類及び使用量に応じて適宜選択されるが、反応温度は、通常0℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上70℃以下、より好ましくは15℃以上50℃以下であり、反応時間は、好ましくは10分以上100時間以下である。反応時間が上記上限値を超えると、ゲル化が起こりやすくなる傾向がある。
また、保護層形成用塗布液を調製する際に、系に不溶な触媒を用いた場合は、強度、液保存安定性等を向上させる目的で、更に系に溶解する触媒を併用することが好ましい。そのような触媒としては、前述のものの他に、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)、モノ(sec−ブトキシ)アルミニウムジイソプロピレート、ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(トリフルオロアセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)等の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
また、有機アルミニウム化合物以外には、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の有機チタニウム化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等のジルコニウム化合物;等も用いることができるが、安全性、低コスト、ポットライフ長さの観点から、有機アルミニウム化合物が好ましく、特にアルミニウムキレート化合物がより好ましい。
系に溶解する触媒の使用量は特に制限されないが、電荷輸送性化合物を含有させる場合は、電荷輸送性化合物100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.3質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
また、保護層7を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ及び硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの、及びそれらから誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等が挙げられる。更に、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子が挙げられる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(XVII)で示される2座配位子が挙げられる。
[上記式(XVII)中、R
51及びR
52は各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。]
多座配位子としては、上記一般式(XVII)で示される2座配位子を用いることが好ましく、上記一般式(XVII)中のR51及びR52が同一のものが特に好ましい。R51及びR52を同一にすることで、室温付近における配位子の配位力が強くなり、硬化性樹脂組成物の更なる安定化を図ることができる。
多座配位子の添加量は、任意に設定することができるが、用いる有機金属化合物の1モルに対して、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは1モル以上である。
保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布する場合、塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等、通常の方法を用いることができる。なお、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、乾燥は、塗布の度に行なっても、複数回重ね塗布した後に行ってもよい。
塗布した保護層形成用塗布液を硬化させる際の反応温度及び反応時間は特に制限されないが、形成される保護層7の機械的強度及び化学的安定性の点から、反応温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上200℃以下であり、反応時間は、好ましくは10分以上5時間以下である。また、保護層形成用塗布液の硬化により得られる保護層7を高湿度状態に保つことは、保護層7の特性の安定化を図る上で有効である。更には、用途に応じて、保護層7の表面をヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン等で処理して疎水化することもできる。なお、保護層7の厚さは、好ましくは0.5μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下である。
硬化の際には、必要に応じて、硬化触媒を用いることもできる。硬化触媒は、電気特性等に悪影響を与えなければ、特に限定されない。
本発明の電子写真感光体は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の電子写真感光体において、下引き層4は必ずしも設けられなくてもよい。
また、本発明の電子写真感光体において、電荷発生層5及び電荷輸送層6の積層の順序は、上記実施形態の場合と逆であってもよい。すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体2上に下引き層4、電荷輸送層6、電荷発生層5及び保護層7がこの順序で積層された構造を有するものでもよい。
また、図1に示した電子写真感光体は、電荷発生層と電荷輸送層とが別個に設けられた感光層を備える機能分離型感光体であるが、本発明の電子写真感光体は、電荷発生材料及び電荷輸送材料の双方を含有する単層型感光層を備えるものであってもよい。単層型感光層を備える電子写真感光体の例を図2に示す。
図2に示す電子写真感光体10は、導電性基体2上に下引き層4、感光層3及び保護層7がこの順序で積層された構造を有するものである。感光層3は、結着樹脂、電荷発生材料及び電荷輸送材料を含有し、必要に応じて、更に他の物質を含有する。結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂等、公知のフィルム形成可能な電気絶縁性の樹脂が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、電荷発生材料及び電荷輸送材料としては、それぞれ、電荷発生層5及び電荷輸送層6に用いられるものと同様のものを用いることができる。感光層3中の電荷発生材料の含有量は、感光層3における固形分全量に対して、好ましくは10質量%以上85質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。感光層3には、光電特性を改善する等の目的で、高分子電荷輸送材料を含有させてもよい。その含有量は、感光層3における固形分全量に対して5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶媒、塗布方法等は、電荷発生層5及び電荷輸送層6と同様である。感光層3の厚さは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下である。
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
図3は、本発明の好適な一実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図3に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、上述した本発明の電子写真感光体1を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置(露光手段)30と、転写装置40と、中間転写体50と、を備える。なお、転写装置40及び中間転写体50は、転写手段の一部を構成している。
画像形成装置100において、露光装置30は、プロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置され、転写装置40は、中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置され、中間転写体50は、その一部が電子写真感光体1に当接可能に配置されている。
プロセスカートリッジ20は、ケース内に、電子写真感光体1と共に、帯電装置(帯電手段)21、現像装置(現像手段)25、クリーニング装置(クリーニング手段)27及び除電装置(除電手段)28を、取付けレールにより組み合わせて一体化したものであり、画像形成装置本体に着脱可能となっている。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
帯電装置21は、電子写真感光体を帯電させるものである。帯電装置21としては、接触型帯電装置(接触型帯電ローラ、帯電ブラシ等)でも非接触型帯電装置(コロトロン、スコロトロン、非接触型帯電ローラ等)でもよい。
例えば、接触型帯電装置の場合、その部材(接触帯電用部材)としては、アルミニウム、鉄、銅等の金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料に、カーボンブラック、ヨウ化銅、ヨウ化銀、硫化亜鉛、又は炭化ケイ素等の金属酸化物粒子を分散したもの等を用いることができる。この金属酸化物の例としては、ZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、又はこれらの複合酸化物が挙げられる。また、接触帯電用部材としては、エラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて、導電性を付与したものを用いてもよい。
更に、接触帯電用部材の表面には被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等を、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、エマルジョン樹脂系材料、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることもできる。これらの樹脂には、抵抗率を調整するために、更に導電剤粒子を分散してもよく、また、劣化を防止するために、更に酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂には、レベリング剤又は界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラ状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状、等が挙げられる。
接触帯電用部材の電気抵抗値(体積抵抗率)は、好ましくは1×102Ωcm以上1×1014Ωcm以下、より好ましくは1×102Ωcm以上1×1012Ωcm以下である。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。また、直流+交流(直流電圧と交流電圧とを重畳したもの)の形で印加することもできる。
現像装置25は、電子写真感光体1上の静電潜像を現像して、トナー像を形成するものであり、公知の現像装置を用いることができる。現像装置25に用いるトナーとしては、不定形トナーでもよいが、高画質化の観点から球形トナーが好ましい。
トナーの平均形状係数SF1としては、現像性、転写性及び画質の点で、100以上150以下が好ましく、100以上140以下がより好ましい。また、SF1としては、110以上135以下が特に好ましい。SF1が110よりも小さいと、クリーニング性が低下して、クリーニング不良が発生する傾向があり、他方、135より大きいと、転写性が低下して、画質が低下したり、転写されない廃棄トナーが増加したりする傾向がある。
ここで、トナーの平均形状係数SF1とは、スライドグラス上に散布したトナー粒子、又はトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置(ニレコ社製)に取り込み、50個以上(例えば、100個)のトナーの最大長及び投影面積を求め、下記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100
[式中、MLはトナー粒子の最大長を、Aはトナー粒子の投影面積を示す。]
トナーの平均粒子径(体積平均粒子系)としては、現像性、転写性及び画質の点で、2μm以上12μm以下が好ましく、3μm以上12μm以下がより好ましく、3μm以上9μm以下が更に好ましい。なお、トナーの体積平均粒径は、マルチサイザーを用いて求めることができる。
トナーは、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤(又は、必要に応じて、帯電制御剤等を更に加えたもの)を混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法によって得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーで形状を変化させる方法;結着樹脂を得るための重合性単量体を乳化重合させて形成された分散液と、着色剤及び離型剤(又は、必要に応じて、帯電制御剤等を更に加えたもの)の分散液と、を混合、凝集、加熱融着させる乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤(又は、必要に応じて、帯電制御剤等を更に加えたもの)の溶液と、を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤(又は、必要に応じて、帯電制御剤等を更に加えたもの)の溶液と、を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法、等により製造されるトナーを用いることができる。また、上記方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を形成する製造方法等、公知の方法を用いることができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、及び粒度分布制御の観点から、水系溶媒を用いて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法及び溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有し、必要に応じて、シリカ、帯電制御剤等を含有する。
トナー母粒子に用いる結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。更に、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
また、離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
また、帯電制御剤としては、公知のもの、すなわち、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤、等を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御、及び廃水汚染の低減の点で、水に溶解しにくい素材を用いることが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー、及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
現像装置25に用いるトナーは、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式で製造する場合は、湿式で外添することも可能である。
現像装置25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径を揃えてもよい。トナーへの添加量は、好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下である。
現像装置25に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物及び劣化物の除去等のために、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を添加することができる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好ましい。
また、上記無機粒子は、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理してもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましい。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
これらの粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上800nm以下、更に好ましくは5nm以上700nm以下である。平均粒子径が、5nm未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、700〜1000nmを超えると、電子写真感光体表面に傷が発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和は、0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のためには、一次粒径が40nm以下の小径無機酸化物が好ましく、付着力低減、帯電制御等のためには、それより大径の無機酸化物が好ましい。このような無機酸化物としては、公知のものを用いることができるが、精密な帯電制御を行うためには、シリカ及び酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機粒子については、表面処理することにより、分散性及び粉体流動性が高くなる。更に、放電生成物を除去するためには、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも好ましい。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して用いるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものを用いることができる。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
クリーニング装置27は、繊維状部材(ローラ状)27a、及び/又はクリーニングブレード(ブレード部材)27bを備える(図3及び4では両方を示している)。
繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、更に電子写真感光体の軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材27aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等、又はトレシー(東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状又は絨毯状に植毛したブラシ状のもの等が挙げられる。また、繊維状部材27aとしては、上述したものに、導電性粉末又はイオン導電剤を配合して導電性を付与したもの、繊維一本一本の内部又は外部に導電層が形成されたもの等を用いることもできる。導電性を付与した場合、その抵抗値としては、繊維単体で1×102Ω以上1×109Ω以下が好ましい。また、繊維状部材27aの繊維の太さは、好ましくは30d(デニール)以下、より好ましくは20d以下であり、繊維の密度は、好ましくは2万本/inch2以上、より好ましくは3万本/inch2以上である。なお、繊維状部材27aは、ローラ状の代わりに歯ブラシ状としてもよい。クリーニングブレード27bとしては、例えば、弾性材料(ゴム等)からなるブレードを用いることができる。
クリーニング装置27には、クリーニングブレード及びクリーニングブラシで電子写真感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共に、クリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイル等の潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが好ましい。例えば、ゴムブレードを用いる場合には、潤滑成分を供給することにより、ブレードの欠けや磨耗を抑制することができる。
除電装置28は、電子写真感光体1の外周面を除電するものである。これにより、電子写真感光体1が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体1の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画質をより高めることが可能となる。除電装置28としては、例えば、タングステンランプ、LED等の光除電装置が挙げられる。このような光除電装置を用いて除電を行う場合、照射光強度は、通常、電子写真感光体1の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるよう出力設定される。
以上に説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体と共に画像形成装置を構成するものである。
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体1を露光して、静電潜像を形成するものであればよいが、光源としてレーザーを用いたものが好ましい。レーザーとしては、公知の半導体レーザー(発振波長780nm)等を用いることができるが、高画質化の目的で波長380nm以上450nm以下のレーザーを用いることもできる。半導体レーザーとしては、主走査方向及び副走査方向に複数のレーザービーム発生源を有する面発光レーザーアレイ、LEDアレイ等、公知の露光装置が挙げられる。
転写装置40としては、電子写真感光体1上のトナー像を中間転写体50に転写するものであればよい。ローラ状、ベルト状及びフィルム状のいずれの形態でもよく、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器等のいずれを用いてもよいが、本発明の電子写真感光体は耐磨耗性に優れるので、転写装置40としては、接触型転写手段が特に好適である。転写装置40がローラ状の場合、その硬度(アスカーC硬度)は、好ましくは20以上50以下、より好ましくは25以上40以下である。また、電子写真感光体1への当接圧は、好ましくは10gf/cm以上30gf/cm以下、より好ましくは15gf/cm以上25gf/cm以下である。硬度又は当接圧が上記範囲から外れると、転写の際に適度な空隙が得られず、均一な放電、及び均一な転写が行なわれにくくなる傾向がある。
転写装置40を用いてトナーを中間転写体50に転写するには、転写装置40に定電流を印加すればよいが、印加電流は直流電流が好ましい。電流範囲としては、10μA以上50μA以下が好ましく、15μA以上30μA以下がより好ましい。
中間転写体50としては、公知の中間転写体を用いることができる。中間転写体は、ベルト状でもドラム状でもよい。ベルト状とする場合、中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)等、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料、及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、樹脂材料と弾性材料とをブレンドして用いることができる。
弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等、又はこれらのうちの2種以上をブレンドした材料を用いることができる。これらの基材に用いる樹脂材料及び弾性材料に、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤や、イオン伝導性を有する導電剤を、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて添加する。この中でも、機械的強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いることが好ましい。上記の導電剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。中間転写体としてベルト状のものを用いる場合、一般にベルトの厚さは50μm以上500μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。
例えば、導電剤を分散させたポリイミド樹脂からなるベルトは、特開昭63−311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に、導電剤として5質量%以上20質量%以下のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、更に適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造することができる。
上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100℃以上200℃以下に加熱しつつ、500rpm以上2000rpm以下の回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化させた状態で脱型して鉄芯に被せ、300℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行うことができる。また、成膜原液を金属シート上に均一な厚みに流延して、上記と同様に100℃以上200℃以下に加熱して溶媒の大半を除去し、その後300℃以上の高温に段階的に昇温して、ポリイミドフィルムを形成する方法もある。また、中間転写体は表面層を有していてもよい。
また、中間転写体としてドラム状のものを用いる場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて、弾性層を被覆し、弾性層上に表面層を形成することができる。
図4は、本発明の好適な一実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図4に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置(帯電手段)21、現像装置(現像手段)25及びクリーニング装置(クリーニング手段)27が各々カートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ及びクリーニングカートリッジとして独立して備えられている。
画像形成装置110においては、電子写真感光体1、及びそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27が、画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されず、引出し及び押込みによる操作で脱着可能である。
本発明の電子写真感光体は耐磨耗性に優れるため、カートリッジ化することが不要となる場合がある。従って、帯電装置21、現像装置25又はクリーニング装置27を、本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定せず、引出し及び押込みによる操作で脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストを更に低減することができる。
なお、画像形成装置110は、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27が各々カートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
図5は、本発明の好適な他の一実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図5に示した画像形成装置120は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置120は、駆動装置(図示せず)により、所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される感光体ドラム(電子写真感光体)1を備え、感光体ドラム1の上方には、感光体ドラム1の外周面を帯電させる帯電装置(帯電手段)21が設けられている。
また、帯電装置21の上方には、面発光レーザーアレイを露光光源として備える露光装置(露光手段)30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体ドラム1の外周面上を感光体ドラム1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した感光体ドラム1の外周面上に静電潜像が形成される。
感光体ドラム1の側方には、現像装置(現像手段)25が配置されている。現像装置25は、回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成され、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ローラ26を備え、内部に各々Y,M,C,Kの色のトナーを貯留している。
画像形成装置120によるフルカラーの画像の形成は、感光体ドラム1が4回転する間に行われる。すなわち、露光装置30は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのいずれかに対応したレーザービームを感光体ドラム1の外周面上で走査させる。ここで、露光装置30は、感光体ドラム1が1回転するごとに、画像データを切替えて、走査させるレーザービームを変調させ、4回転の間に、4つの画像データのすべてについてレーザービームの走査を行う。また、現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kのいずれかの現像ローラ26が感光体ドラム1の外周面に対向している状態で、外周面に対向している現像器を作動させ、感光体ドラム1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、感光体ドラム1の外周面上に特定色のトナー像を形成する。ここで、現像装置25は、感光体ドラム1が1回転するごとに現像器が切り替わるように収容体を回転させ、4回転の間に、4つの現像器のすべてにトナー像の形成を行わせる。こうして、感光体ドラム1が1回転するごとに、感光体ドラム1の外周面上に、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、感光体ドラム1が4回転した時点で、感光体ドラム1の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
また、感光体ドラム1のほぼ下方には、無端の中間転写ベルト(中間転写体)50が配設されている。中間転写ベルト50はローラ51,53,55に巻掛けられており、外周面が感光体ドラム1の外周面に接触するように配置されている。ローラ51,53,55は、駆動装置(図示せず)の駆動力により回転し、中間転写ベルト50を図1矢印B方向に回転させる。
中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム1の反対側には転写装置40が配置され、感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像は転写装置40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写される。
また、感光体ドラム1を挟んで現像装置25の反対側には、潤滑剤供給装置29、クリーニング装置27及び除電装置28が配置されている。感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置29により感光体ドラム1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち、転写されたトナー像を担持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。そして、除電装置28により、感光体ドラム1の外周面上が除電される。
中間転写ベルト50よりも下方側にはトレイ60が配置され、トレイ60内には、用紙(被転写媒体)Pが、多数枚積層された状態で収容されている。トレイ60の左斜め上方には、取出しローラ61が配置され、用紙Pの取出し方向下流側には、ローラ対63及びローラ65が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取出しローラ61が回転されることによりトレイ60から取り出され、ローラ対63及びローラ65によって搬送される。
また、中間転写ベルト50を挟んでローラ55の反対側には転写装置42が配置されている。ローラ対63及びローラ65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50及び転写装置42の間に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が転写装置42によって用紙Pに転写される。転写装置42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着装置44が配置され、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に、画像形成装置120の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。なお、転写装置40,42、中間転写ベルト50、及びローラ51,53,55は、転写手段の一部を構成している。
図6は、本発明の好適な他の一実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図6に示す画像形成装置130は、タンデム方式のフルカラー画像形成装置であり、かつ中間転写方式の画像形成装置である。具体的には、画像形成装置130はハウジング400を備え、ハウジング400内では、4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aはイエロー、電子写真感光体401bはマゼンタ、電子写真感光体401cはシアン、電子写真感光体401dはブラックの色からなる画像を形成可能である。)が、中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。ここで、画像形成装置130に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは各々、電子写真感光体1である。
電子写真感光体401a〜401dは各々、所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ローラ(帯電手段)402a〜402d、現像装置(現像手段)404a〜404d、一次転写ローラ410a〜410d、クリーニングブレード(クリーニング手段)415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dには、それぞれトナーカートリッジ405a〜405dに収容された4色(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)のトナーが供給可能であり、また、一次転写ローラ410a〜410dは、中間転写ベルト409を介して、それぞれ電子写真感光体401a〜401dに当接している。
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザー光源(露光手段)403が配置され、レーザー光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、一次転写及びクリーニングの工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
中間転写ベルト409は、駆動ローラ406、バックアップローラ408及びテンションローラ407により所定の張力をもって支持され、これらのローラの回転により、たわみを生じることなく回転可能となっている。また、二次転写ローラ413は、中間転写ベルト409を介してバックアップローラ408と当接するように配置されている。バックアップローラ408及び二次転写ローラ413の間を通った中間転写ベルト409は、例えば、駆動ローラ406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられている。トレイ411内の被転写媒体500(紙等)は、移送ローラ412により中間転写ベルト409及び二次転写ローラ413の間、更には相互に当接する2個の定着ローラ414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
タンデム方式の画像形成装置130では、各色の使用割合により各電子写真感光体の磨耗量が異なってくるために、各電子写真感光体の電気特性が異なってくる傾向がある。これに伴い、トナー現像特性が初期の状態から除々に変化して、プリント画像の色合いが変化し、安定な画像が得られにくくなる傾向がある。特に、画像形成装置を小型化するために、小径の電子写真感光体、特に直系30mm以下のものを用いた場合に、この傾向が顕著になる。しかし、本発明の電子写真感光体では、その直径を30mm以下とした場合にも、その表面の磨耗が十分に抑制される。従って、本発明の電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置に対して特に有効である。
なお、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジは、電子写真感光体として電子写真感光体1を備えるが、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、例えば、電子写真感光体10を備えていてもよい。
例えば、上記実施形態に係る画像形成装置は、転写手段が、トナー像が一次転写される中間転写体を備え、当該トナー像が、中間転写体を介して被転写媒体(紙等)に転写される中間転写方式の画像形成装置である。しかし、本発明の画像形成装置は、転写手段が中間転写体を備えず、電子写真感光体表面のトナー像を被転写媒体に直接転写する直接転写方式の画像形成装置でもよく、本発明の電子写真感光体は直接転写方式の画像形成装置にも好適である。直接転写方式の画像形成装置では、プリント用紙から紙粉、タルク等が発生し、それが電子写真感光体へ付着しやすく、付着物に起因する画質欠陥が発生する傾向がある。しかし、本発明の電子写真感光体によれば、クリーニング性に優れているため、直接転写方式の画像形成装置であっても、安定した画像が得られる。
また、画像形成装置100は、クリーニング装置(クリーニング手段)27及び除電装置(除電手段)28を備えるが、本発明の画像形成装置では、クリーニング手段及び除電手段は必須のものではない。
また、画像形成装置100では、帯電ローラ(帯電手段)21、現像装置(現像手段)25、クリーニング装置(クリーニング手段)27及び除電装置(除電手段)28が1つのプロセスカートリッジ20に収容されている。しかし、本発明の画像形成装置では、帯電手段、現像手段、クリーニング手段等の少なくとも一種、又は、これと、本発明の電子写真感光体と、が1つのプロセスカートリッジに収容されていてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジは、帯電手段、現像手段、クリーニング手段等の少なくとも一種と、本発明の電子写真感光体と、を備えていればよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(表面処理1)
トルエン100mL中に、式(A−1)で表される化合物(スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物)2.5gを溶解させ、これに酸化亜鉛(テイカ社製MZ150、平均粒径:70nm)25gを加えた。95℃で2時間環流し、その後、減圧下で溶媒を留去し、溶媒がなくなった時点で150℃へ昇温し、2時間保持した。
(表面処理2)
酸化亜鉛の代わりに酸化スズ(三菱マテリアル社製S1、平均粒径:30nm)を用いたこと以外は、表面処理1と同様の操作を行った。
(表面処理3)
酸化スズ(三菱マテリアル社製S1、平均粒径:30nm)25gを激しく撹拌し、浮遊状態に保持し、これに、式(A−1)で表される化合物(スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物)2.5gをトルエン2.5gに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、90℃で2時間保持し、その後、加熱温度を150℃へ昇温し、2時間加熱した。
(表面処理4)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、式(B−1)で表される化合物(チオール基を有する有機ケイ素化合物)を用いたこと以外は、表面処理2と同様の操作を行った。
(表面処理5)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、式(B−2)で表される化合物(スルフィド基を有する有機ケイ素化合物)を用いたこと以外は、表面処理2と同様の操作を行った。
(表面処理6)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、下記式で表されるアミノエチルシランカップリング剤を用いたこと以外は、表面処理2と同様の操作を行った。
(実施例1)
先ず、導電性基体として、直径30mm、長さ404mm、肉厚1mmのアルミニウム基材を用意した。
次に、4質量部のポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製、エスレックBM−S)を溶解したn−ブチルアルコール170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部、及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を混合撹拌して、下引き層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法により上記アルミニウム基材上に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行って、厚さ1μmの下引き層を形成した。
次に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部、及びn−ブチルアルコール300質量部の混合物を、サンドミルで4時間分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚さ0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部を、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部の混合液に溶解混合して、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行って、厚さ25μmの電荷輸送層を形成した。
最後に、式(I−38)で表される化合物(以下、「化合物(I−38)」という。)40質量部、フェノール樹脂(群栄化学社製PL4852)40質量部、及びハジキ防止剤(シリコーンオイル)0.4質量部をブタノール75質量部に溶解した後、表面処理2で得られた酸化スズ20質量部を加え、サンドミルで5時間分散して、保護層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を、リング型浸漬塗布法により上記電荷輸送層上に塗布し、室温で30分間風乾した後、160℃で1時間加熱処理して硬化し、厚さ5μmの保護層を形成した。こうして、電子写真感光体を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
更に、得られた電子写真感光体を用いて、図6に示す構成を有する画像形成装置を作製した。ここで、電子写真感光体以外の要素は、富士ゼロックス社製DocuCentre Color 400と同様とした。
(実施例2)
保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理2で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は10体積%である。
化合物(I−38):35質量部
フェノール樹脂:35質量部
ハジキ防止剤:0.35質量部
金属酸化物:40質量部
(実施例3)
保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理2で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は0.5体積%である。
化合物(I−38):50質量部
フェノール樹脂:50質量部
ハジキ防止剤:0.5質量部
金属酸化物:3質量部
(実施例4)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理3で得られた酸化スズを用いたこと、及び、保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理3で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
化合物(I−38):40質量部
フェノール樹脂:40質量部
ハジキ防止剤:0.4質量部
金属酸化物:20質量部
(実施例5)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理4で得られた酸化スズを用いたこと、及び、保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理4で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
化合物(I−38):40質量部
フェノール樹脂:40質量部
ハジキ防止剤:0.4質量部
金属酸化物:15質量部
(参考例6)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理5で得られた酸化スズを用いたこ
と、及び、保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール
樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理5で得られた酸化スズ)の量を下記のとお
りにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した
。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
化合物(I−38):40質量部
フェノール樹脂:40質量部
ハジキ防止剤:0.4質量部
金属酸化物:15質量部
(実施例7)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理1で得られた酸化亜鉛を用いたこと、及び、保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理1で得られた酸化亜鉛)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化亜鉛の含有率は5体積%である。
化合物(I−38):40質量部
フェノール樹脂:40質量部
ハジキ防止剤:0.4質量部
金属酸化物:15質量部
(比較例1)
化合物(I−38)40質量部、フェノール樹脂40質量部、及びハジキ防止剤0.4質量部をブタノール75質量部に溶解させて得られた溶液を、保護層形成用塗布液として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。
(比較例2)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理6で得られた酸化スズを用いたこと、及び、保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理6で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
化合物(I−38):40質量部
フェノール樹脂:40質量部
ハジキ防止剤:0.4質量部
金属酸化物:15質量部
(画像形成試験1)
実施例1〜7、比較例1及び2で得られた画像形成装置を用いて、高温高湿(30℃、80%RH)環境下で1万枚の画像を形成し、以下のように画像形成試験を行った。被転写体としては、富士ゼロックス社製普通紙P紙を用いた。
1万枚の画像形成後に、電子写真感光体を画像形成装置の中で一晩放置し、翌朝ハーフトーン画像をプリントして、画質(画像流れ/筋上ムラ、その他の欠陥の有無)を目視で評価した。また、初期(1枚の画像形成後)の画質についても、同様にして評価した。
また、1万枚の画像形成後に、電子写真感光体の磨耗量を測定して、摩耗率(nm/1000回転)を求めた。
結果を下記表に示す。下記表において、金属酸化物の含有量は、保護層中の含有率(体積%)で示す。また、下記表における記号(○、×)の意味は下記のとおりである。
画像流れ/筋上ムラ:○…なし、×…あり
その他の欠陥:○…なし、×…あり
上記表から明らかなように、画質の点では、実施例1〜5、参考例6、実施例7と比較例1及び2とで差異がなく、いずれの画像形成装置においても、画質欠陥の発生が十分に抑制されている。しかし、磨耗率については、実施例1〜5、参考例6、実施例7で得られた電子写真感光体は、比較例1及び2で得られた電子写真感光体と比較して、顕著に優れた結果を示している。
(表面処理7)
トルエン100mL中に、式(A−1)で表される化合物(スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物)2.5gを溶解させ、これに酸化亜鉛(テイカ社製MZ150、平均粒径:70nm)25gを加えた。95℃で2時間環流し、その後、減圧下で溶媒を留去し、溶媒がなくなった時点で150℃へ昇温し、2時間保持した。
次に、得られた酸化亜鉛を乳鉢で粉砕した。そして、トルエン100mL中に、式(C−1)で表される化合物(フッ素系シランカップリング剤)2.0gを溶解させ、これに、乳鉢で粉砕した上記酸化亜鉛20gを加えた。95℃で2時間環流し、その後、減圧下で溶媒を留去し、溶媒がなくなった時点で150℃へ昇温し、2時間保持した。
(表面処理8)
酸化亜鉛の代わりに酸化スズ(三菱マテリアル社製S1、平均粒径:30nm)を用いた以外は、表面処理7と同様の操作を行った。
(表面処理9)
酸化スズ(三菱マテリアル社製S1、平均粒径:30nm)25gを激しく撹拌し、浮遊状態に保持し、これに、式(A−1)で表される化合物(スルホン酸エステル基を有する加水分解性の有機ケイ素化合物)2.5gをトルエン2.5gに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、90℃で2時間保持し、その後、加熱温度を150℃へ昇温し、2時間加熱した。
次に、得られた酸化スズを乳鉢で粉砕した。そして、トルエン100mL中に、式(C−1)で表される化合物(フッ素系シランカップリング剤)2.0gを溶解させ、これに、乳鉢で粉砕した上記酸化スズ20gを加えた。95℃で2時間環流し、その後、減圧下で溶媒を留去し、溶媒がなくなった時点で150℃へ昇温し、2時間保持した。
(表面処理10)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、式(B−1)で表される化合物(チオール基を有する有機ケイ素化合物)を用いたこと以外は、表面処理8と同様の操作を行った。
(表面処理11)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、式(B−2)で表される化合物(スルフィド基を有する有機ケイ素化合物)を用いたこと以外は、表面処理8と同様の操作を行った。
(表面処理12)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、下記式で表されるアミノエチルシランカップリング剤を用いたこと以外は、表面処理8と同様の操作を行った。
(表面処理13)
式(A−1)で表される化合物の代わりに、式(C−1)で表される化合物(フッ素系シランカップリング剤)を用いたこと以外は、表面処理8と同様の操作を行った。
(実施例8)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理8で得られた酸化スズを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(実施例9)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理8で得られた酸化スズを用いたこと以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は10体積%である。
(実施例10)
表面処理2で得られた酸化スズの代わりに、表面処理8で得られた酸化スズを用いたこと以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は0.5体積%である。
(実施例11)
表面処理3で得られた酸化スズの代わりに、表面処理9で得られた酸化スズを用いたこと以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(実施例12)
表面処理4で得られた酸化スズの代わりに、表面処理10で得られた酸化スズを用いたこと以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(実施例13)
保護層形成用塗布液の調製において、用いる化合物(I−38)、フェノール樹脂、ハジキ防止剤及び金属酸化物(表面処理10で得られた酸化スズ)の量を下記のとおりにしたこと以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は0.5体積%である。
化合物(I−38):50質量部
フェノール樹脂:50質量部
ハジキ防止剤:0.5質量部
金属酸化物:3質量部
(参考例14)
表面処理5で得られた酸化スズの代わりに、表面処理11で得られた酸化スズを用いた
こと以外は、参考例6と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、
保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(実施例15)
表面処理1で得られた酸化亜鉛の代わりに、表面処理7で得られた酸化亜鉛を用いたこと以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化亜鉛の含有率は5体積%である。
(比較例3)
表面処理6で得られた酸化スズの代わりに、表面処理12で得られた酸化スズを用いたこと以外は、比較例2と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(比較例4)
表面処理12で得られた酸化スズの代わりに、表面処理13で得られた酸化スズを用いたこと以外は、比較例3と同様にして電子写真感光体及び画像形成装置を作製した。なお、保護層中の上記酸化スズの含有率は5体積%である。
(画像形成試験2)
実施例8〜15、比較例1、3及び4で得られた画像形成装置を用いて、高温高湿(30℃、80%RH)環境下で2万枚の画像を形成し、以下のように画像形成試験を行った。被転写体としては、富士ゼロックス社製普通紙P紙を用いた。
初期(1枚の画像形成後)、及び2万枚の画像形成後に、電子写真感光体を画像形成装置の中で一晩放置し、翌朝ハーフトーン画像をプリントして、画質(画像流れ/筋上ムラ、その他の欠陥の有無)を目視で評価した。
また、2万枚の画像形成後に、電子写真感光体の磨耗量を測定して、摩耗率(nm/1000回転)を求めた。
結果を下記表に示す。下記表において、金属酸化物の含有量は、保護層中の含有率(体積%)で示す。また、下記表における記号(○、×、△)の意味は下記のとおりである。
画像流れ/筋上ムラ:○…なし、×…あり
その他の欠陥:○…なし、×…あり
上記表から明らかなように、画質の点では、実施例8〜13、参考例14、実施例15と比較例3及び4とで差異がなく、いずれの画像形成装置においても、画質欠陥の発生が十分に抑制されている。しかし、磨耗率については、実施例8〜13、参考例14、実施例15で得られた電子写真感光体は、比較例1、3及び4で得られた電子写真感光体と比較して、顕著に優れた結果を示している。
画像形成試験1及び2により、本発明の電子写真感光体は、十分な耐摩耗性を有し、かつ、画質欠陥(特に、画像流れ及び筋状ムラ)の発生を十分に抑制することを可能とするものであることが示された。
1,10,410a〜d…電子写真感光体、2…導電性基体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、20…プロセスカートリッジ、21…帯電手段、25…現像手段、27…クリーニング手段、28…除電手段、30…露光手段、40…転写装置(転写手段)、50…中間転写体(転写手段)、100,110,120,130…画像形成装置。