JP3805391B2 - 繊維強化プラスチック加工用ポリプロピレンフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ゴルフシャフト、釣りざお、テニスラケット等の各種のレジャー用道具類の製造に繊維強化プラスチックが利用されている。このような道具類は、例えば棒状体の場合、マトリックス樹脂を含浸させた繊維素材であって、通称プリプレグという成型材料を心軸材に圧着しながら巻き付けて必要な一次成型体を成型し、プリプレグ中のマトリックス樹脂を熱硬化させて二次成型する方法が一般的に行なわれている。この場合、マトリックス樹脂にはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を用い、繊維素材には通常炭素繊維、ガラス繊維、又はウィスカー(ひげ結晶繊維)などを多数並行に揃えたシート状物、あるいはこれらを折り込んだ織物等を用いる。
【0003】
しかしながら、従来からの繊維強化プラスチックを用いたレジャー用道具類の製造においては、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いているため、熱硬化性樹脂を硬化温度まで上昇させると、硬化反応が進行する前にその粘度が低下し、流動して事前に予定していた形状をそのまま維持することができなくなったり、当初の設計強度を得ることができない場合が生ずる。
【0004】
これらの欠点を除去するため、プリプレグを心軸材に圧着しながら巻き付けて一次成型体を形成し、次いで、硬化温度に達してもある程度の締め付ける力を維持できる加工用フィルムをその一次成型体の上から適度な張力で巻き付けた後に、マトリックス樹脂を熱硬化させ、冷却後巻き付けてあったその加工用フィルムを除去するという方法で形状精度を高める工夫が採られている。
【0005】
しかしながら、実際には形状精度の低いことが原因で製品の機械的強度の不足が生じたり、硬化後の成型体に癒着した加工用フィルムを丹念に除去しなければならないという余分な操作も加わり、品質や生産性の点で問題があった。加えて、熱硬化温度が高いため製造コストも満足のいくものではなかった。
【0006】
一方、近年プリプレグに使用するマトリックス樹脂は、より低温、即ち130℃前後で硬化が終了するエポキシ樹脂を用いることができるようになってきており、130℃前後でも軟化せず、形状を維持できる樹脂であれば加工用フィルムとしては十分使用に耐えられるようになってきた。そこで、安価、且つ強度の高いポリプロピレンフィルムが使用されるようになったが、成型体の形状変化や強化繊維のズレによる密度ムラなどが生じ、大幅な歩留低下が避けられなかった。
【0007】
本発明は上記事情を改善するためになされたもので、繊維強化エポキシ樹脂の加工に用いられて、繊維強化エポキシ樹脂成型体に高い形状精度を与え、見かけ密度の低下や密度ムラを排除して高い強度を賦与することができるポリプロピレンフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた繊維強化プラスチック材料を用いた場合、エポキシ樹脂が熱硬化する際、実質的に80〜100℃の温度範囲でその形状が決定されること、並びにこの温度範囲における一般のポリプロピレンフィルムの熱収縮率がエポキシ樹脂の形状変化と比較して差が生じるとき、熱硬化時の形状変化や強化繊維のズレによる密度ムラが生じることを知見した。また、エポキシ樹脂の完全硬化温度範囲である120〜135℃においては、一般のポリプロピレンフィルムの熱収縮率が2〜7%と大きな値となるためにポリプロピレンフィルムによる成型体への過度の締め付けが生じ、複合成型体全体の反りや変形をもたらすことを知見した。そして、本発明者らはこのような知見に基づき更に検討を進めた結果、エポキシ樹脂の実質的硬化温度範囲である80〜100℃の範囲で加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率を極力ゼロに近づけるようにし、且つ、エポキシ樹脂の硬化が終了する135℃付近においても溶融することなく、適度な張力が維持できるように種々処理方法を検討した結果、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、心軸材にマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させた繊維素材からなるプリプレグを巻き付けてなる棒状の一次成型体を熱硬化して二次成型するに際し、一次成型体を巻き締め、硬化完了後に除去されるポリプロピレンフィルムであって、プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理してなり、該フィルムを80〜100℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ−0.5〜+0.5%の範囲であり、120〜130℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ0〜+3.5%の範囲であり、かつ第一の延伸方向と第二の延伸方向の引張強度がそれぞれ18〜30kg/mm2であることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルム、及び、プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理することを特徴とする上記の繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルムの製造方法を提供する。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0011】
本発明の加工用ポリプロピレンフィルムはプロピレンの単独重合体又は0.3重量%以下のエチレンを含有するプロピレン共重合体であって、互いに直交させた二つの方向に延伸した、所謂二軸延伸フィルムから形成される。加工用フィルムとしてはポリエステルフィルムやポリフェニレンスルフィド等も使用できるが、高価なために好ましくない。他方、ポリエチレンフィルム等のポリプロピレンフィルム以外の安価なフィルムはエポキシ樹脂等の繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂の硬化温度以下の範囲に軟化点があり、使用できない。従って、135℃程度の熱硬化温度に耐え、且つ、経済的なフィルムはポリプロピレンのみである。
【0012】
この場合、ポリプロピレンフィルムの使用に当たっては、一般的に次の二通りの製造方法によるポリプロピレンフィルムがその目的に応じて採用されている。第一はポリプロピレンフィルムの持つ固有の透明性、耐熱性、防湿性、剛性、高電気絶縁性などの特性を利用するものであって、主として単独重合体からなるフィルムである。また、第二は柔軟性の付与、熱収縮挙動の改良等のために、ポリエチレン成分を最大7.0重量%まで添加して重合を行なったポリエチレン−ポリプロピレン共重合体からなるフィルムである。本発明においては、前記共重合体を加工用フィルムに用いると柔軟性が付与されるもの、耐熱性が低下してマトリックス樹脂との離型性が悪くなって、歩留まりを低下させるので好ましくない。従って、エチレン含有量は0.3重量%以下に制御することが必要であり、特にはプロピレンの単独重合体が推奨される。
【0013】
これらのポリプロピレンフィルムは同時二軸延伸法或いは遂時二軸延伸法によって製造できるが、どちらも使用可能で制限はない。剥離性はフィルム表面に凹凸のあるフィルムの方が軽剥離性を示すが、平滑なものであっても実質的な使用上の問題はない。
【0014】
ポリプロピレンフィルムの膜厚は15〜40μ、より好ましくは20〜30μが望ましい。膜厚が15μより薄い場合、プリプレグで形成した一次成型体を巻き締める時に必要な強度を加えることが困難であり、好ましくない。40μより厚い場合、巻き締める力を大きくとることができるようになるが、膜厚40μを越えて初めて得られる程の強度を実際に必要とすることはなく、また、重ね巻きする場合においてはフィルムの重ねた形跡が強く残り、表面仕上などの後工程の付加を増大させるので好ましくない。更に、膜厚を厚くした分、フィルムの使用量が多くなり、経済的でない。
【0015】
本発明の加工用ポリプロピレンフィルムにおいて、その引張強度は、第一の延伸方向及び第二の延伸方向とも18〜30kg/mm2の範囲であることが必要であり、フィルムの引張強度は成型体の成型に重要な要素となる。即ち、マトリックス樹脂の硬化後の強化繊維の密度と関係し、引張強度が18kg/mm2未満の場合、巻き締め加工時の張力が不足し、密度の高い繊維強化プラスチックを成型することは困難で、成型体に十分な強度を与えることはできない。また、硬化後、フィルムを成型体から剥離する過程でフィルムが破断する場合があるので、好ましくない。他方、引張強度が30kg/mm2を越えた場合は特に加工用フィルムの欠点とはならない。しかし、フィルムの製法上、第一及び第二の延伸方向共に30kg/mm2以上の強度を有するフィルムを製造することは困難である。
【0016】
また、本発明の加工用ポリプロピレンフィルムは、該フィルムを80〜100℃の温度範囲において15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の双方の方向の熱収縮率が−0.5〜+0.5%の範囲に、且つ、120〜130℃の温度範囲に15分間曝した場合においては、第一の延伸方向と第二の延伸方向の双方の方向の熱収縮率が0〜+3.5%の範囲に調整されたものである。
【0017】
即ち、特に繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂は加熱時に80〜100℃の温度範囲で実質的に硬化し、その形状が決定され、以後135℃までの加熱は架橋を促進して完全硬化し、樹脂自身の強度向上が果たされる。従って、形状精度と強化繊維の均一化はこの80〜135℃の樹脂の硬化に係る温度範囲が最も重要である。この硬化過程では加工用ポリプロピレンフィルムの厚みや引張強度等の特性が成型体の形状を維持するために重要であることは前述した通りであるが、更に重要な要素として硬化過程におけるポリプロピレンフィルム自身の熱による寸法変化が問題となる。
【0018】
エポキシ樹脂の実質的硬化過程である80〜100℃の温度範囲における加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率は硬化後の成型体の形状並びに見かけ密度や密度ムラに関係する。加工用ポリプロピレンフィルムの第一の延伸方向(長尺方向)に関しては、フィルムが負の熱収縮性、即ち熱膨張する場合には硬化する樹脂の見かけ密度を上げることができず、結果的に多数の空孔を有する脆弱な成型体しか得られない。また、熱収縮性が大きすぎる場合、加工用ポリプロピレンフィルムが硬化中にエポキシ樹脂を必要以上に締めつけ、これによって時としてエポキシ樹脂が漏れ出して十分なボリュームのある成型体ができなくなり、硬化後の成型体強度は低くなる。また、第二の延伸方向(短尺方向)では、熱膨張及び熱収縮のいづれの場合にも成型物の長尺方向に沿って均一に配設された強化繊維が局部的なフィルムの寸法変化によって乱れが発生し、密度ムラを生じて強度低下をもたらす場合がある。従って、熱収縮率は可能な限りゼロに近いことが必須とされ、この要件を満たす加工用ポリプロピレンフィルムの80〜100℃で15分間加熱した場合の熱収縮率は−0.5%〜+0.5%の範囲が許容され、これを外れた範囲では前記した悪影響が生じるので好ましくない。
【0019】
また、エポキシ樹脂の完全硬化過程である120〜135℃の温度範囲における加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率は、成型体の反り、変形に関係し、第一の延伸方向と第二の延伸方向のいずれもが0〜+3.5%の範囲にあることが要求される。熱収縮率が0%を下回る場合には加工用ポリプロピレンフィルムの緩みが生じ、熱応力によって反りが発生し、+3.5%より大きい熱収縮率を有する場合には、成型体に過度の締め付けが起こって変形等をもたらすので好ましくない。
【0020】
尚、本発明で定義する熱収縮率の数値はその温度において15分間保持した時のフィルムの寸法変化率を示し、JISC−2330(電気用ポリプロピレンフィルム)に準拠した方法による。
【0021】
上記加工用ポリプロピレンフィルムを製造する場合は、プロピレン単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体からなる厚さ15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の範囲内で熱処理するものである。即ち、一般に二軸延伸法のポリプロピレンフィルムは熱収縮率が高く、80〜100℃では0〜2%、120〜130℃では2〜7%となるのが普通である。これを熱処理することにより、熱収縮率は低下するが、前記した範囲の熱収縮率にすることは容易ではなく、極めて狭い温度範囲の条件しか許容されない。即ち、上記ポリプロピレンフィルムを120〜140℃、より好ましくは125〜135℃の範囲内に熱処理する方法を採用するものであって、熱処理温度が140℃を越えるとフィルムが溶融したり、部分的な変形が起こるので好ましくない。また、120℃を下回ると処理時間が長くなり、80〜100℃並びに120〜130℃のそれぞれの温度範囲における熱収縮率を両方ともに満足することができなくなるので好ましくない。なお、上記熱処理前のフィルムとしては、上述した加工用ポリプロピレンフィルムの第一の延伸方向と第二の延伸方向の引張強度18〜30kg/mm2を確保するため、それぞれの延伸方向の引張強度は熱処理後とほぼ同じ値の18〜30kg/mm2であるものを使用することが必要である。
【0022】
熱処理時間は熱処理温度及び熱処理前のフィルム特性などにより変化し、上記熱収縮率を達成し得るように選定される。
【0023】
熱処理方法としては所定の温度に調整した空間、例えば乾燥機などに必要な時間放置する簡単な方法でも達成されるが、ロールに巻き取ったようなフィルム同志が重なっている状態のものでは、外縁部と内部とに伝熱の差が生じて、それぞれに熱収縮率の違いが発生する場合があるので注意が必要である。最も均一に且つ迅速に熱処理を達成する方法としては、帯状のフィルムを所定の温度に加熱されたロール上を前記した範囲の熱収縮率に調整するに必要な時間接触させる方法などが最も効率的である。この方法を採用した場合、熱処理時間は通常0.1〜1分の範囲で目的は達成される。
【0024】
このように熱処理して得られた加工用ポリプロピレンフィルムの引張強度は、第一の延伸方向、第二の延伸方向とも18〜30kg/mm2の範囲内にあり、また、フィルムの厚さも15〜40μの範囲内に納めることができる。
【0025】
本発明のこのような加工用ポリプロピレンフィルムは、一般にゴルフシャフト、釣りざお、スキー用ストックなどを繊維強化エポキシ樹脂で成型する場合に用いられる。例えば、炭素繊維等からなるプリプレグを例えば金属製の心軸材に圧着しながら巻き付けて一次成型体を形成し、次いで10〜20mm幅の帯状の加工用ポリプロピレンフィルムを約2〜7kgの引張力を加えながら一次成型体を覆い、次いで、実質的硬化温度である80〜100℃の範囲に保持後、更に昇温し、125〜140℃の温度範囲で硬化を完了させ、次いで加工用ポリプロピレンフィルムを除去する。このようにすると、高い形状精度と高い強度とを持った繊維強化エポキシ樹脂成型体を得ることができる。
【0026】
ここで、心軸材などに巻き付けるプリプレグの繊維素材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、スチール繊維、チタン−ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維、あるいはこれらのウィスカーなどが例示でき、糸状、シート状、板状、織物状など、いずれを使用してもよく、成型しようとする目的のものに合わせてこれら単独でもあるいは複数を組み合わせたものでもよい。
【0027】
プリプレグのマトリックス樹脂にエポキシ樹脂を用いた場合のエポキシ樹脂の量は、素材繊維に対し20〜50重量%がよい。通常140℃の温度下であれば2時間以内で硬化完了する。
【0028】
他方、口径の大きい高強度の繊維強化プラスチック成型体を得ようとする場合、上記のように一次成型体に加工用ポリプロピレンフィルムを巻きつけた後、熱硬化する前にこの上から再度一軸延伸されたポリプロピレンフィルムを堅固に巻き付けて硬化させる方法や、この逆の組み合わせ方法も知られており、使用方法は任意に変えることが可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の加工用ポリプロピレンフィルムは、繊維強化エポキシ樹脂成型体の高い形状精度と見かけ密度の低下や密度ムラを排除して高い強度を賦与することができ、安定した高い歩留まりを達成することができる。また、本発明の製造方法によれば、かかるフィルムを確実に製造することができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
厚さ29.5μ、幅1200mm、引張強度は短尺(横)方向が26.3kg/mm2、長尺(縦)方向が19.4kg/mm2、各温度において15分間放置後の熱収縮率、及び引張強度(破断強度)が縦横各々表1の熱処理前の数値で示されるポリプロピレンフィルム(単独重合体)を、予め127℃に加熱した3本のロール上を毎分25mの速度で通過させることにより熱処理を行なった。熱処理後のフィルム特性を表1の熱処理後の数値として示した。
【0032】
【表1】
【0033】
次いで、上記で調整された加工用ポリプロピレンフィルムを使用して成型体の製造を行なった。マトリックス樹脂(エポキシ樹脂)の含有量が33重量%の(株)東レ製炭素繊維一方向プリプレグM40(商品名)を、長さ1mの棒形をした鉄製のマンドレルに巻き付けて一次成型体を作った。マンドレルの一方の片端の外径は1.2cm、他端は外径0.8cmである。更に、上記で熱処理して得られた加工用ポリプロピレンフィルムを15mm幅にスリットしてロール状に巻いたものを用意し、一次成型体の上に引張力5.5kg、ピッチ幅2.0mmで巻き付けた。
【0034】
このものを30分かけて室温から90℃まで温度を上げ、この温度で30分間保持し、更に40分かけて130℃まで温度を上げ、その後、その温度を120分間保持してエポキシ樹脂を硬化させた。室温まで冷却し、加工用ポリプロピレンフィルムを巻いたままの成型体を得た。得られた成型体を加熱炉から取り出し、硬化したばかりの状況を観察した。加工用ポリプロピレンフィルムの縁部からはバリの突き出しもなく、成型体に密度のムラもないことがわかった。
【0035】
加工用ポリプロピレンフィルムをカッターで成型体より切り離した。切り離す時、加工用ポリプロピレンフィルムと硬化樹脂との間に癒着はなく、両者はほとんど抵抗なく剥すことができた。更にグラインダーで周りをわずかに削り取って成型加工を終了し、細管を得た。尚、成型体のフレックス強度は10.5kg/mm2と良好な値であった。
【0036】
[比較例1〜6]
実施例1で用いた加熱調整済みの加工用ポリプロピレンフィルムに替え、表2に示す性質を有する各種加工用ポリプロピレンフィルムを用い、実施例1に準じた成型体を製造した。実施例1と同様の観察、強度測定を行なった結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表中、○;良好、△;やや不良、×;不良
*印;エチレン含有量1重量%
熱収縮率の数値はいづれも長尺方向の値
【0039】
上記の結果から、実施例1で用いた加工用ポリプロピレンフィルムは、比較例1〜7で用いた加工用ポリプロピレンフィルムに比較し、繊維強化プラスチックの成型に際し、高い形状精度と高い強度とを賦与することが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用分野】
本発明は、繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ゴルフシャフト、釣りざお、テニスラケット等の各種のレジャー用道具類の製造に繊維強化プラスチックが利用されている。このような道具類は、例えば棒状体の場合、マトリックス樹脂を含浸させた繊維素材であって、通称プリプレグという成型材料を心軸材に圧着しながら巻き付けて必要な一次成型体を成型し、プリプレグ中のマトリックス樹脂を熱硬化させて二次成型する方法が一般的に行なわれている。この場合、マトリックス樹脂にはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を用い、繊維素材には通常炭素繊維、ガラス繊維、又はウィスカー(ひげ結晶繊維)などを多数並行に揃えたシート状物、あるいはこれらを折り込んだ織物等を用いる。
【0003】
しかしながら、従来からの繊維強化プラスチックを用いたレジャー用道具類の製造においては、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いているため、熱硬化性樹脂を硬化温度まで上昇させると、硬化反応が進行する前にその粘度が低下し、流動して事前に予定していた形状をそのまま維持することができなくなったり、当初の設計強度を得ることができない場合が生ずる。
【0004】
これらの欠点を除去するため、プリプレグを心軸材に圧着しながら巻き付けて一次成型体を形成し、次いで、硬化温度に達してもある程度の締め付ける力を維持できる加工用フィルムをその一次成型体の上から適度な張力で巻き付けた後に、マトリックス樹脂を熱硬化させ、冷却後巻き付けてあったその加工用フィルムを除去するという方法で形状精度を高める工夫が採られている。
【0005】
しかしながら、実際には形状精度の低いことが原因で製品の機械的強度の不足が生じたり、硬化後の成型体に癒着した加工用フィルムを丹念に除去しなければならないという余分な操作も加わり、品質や生産性の点で問題があった。加えて、熱硬化温度が高いため製造コストも満足のいくものではなかった。
【0006】
一方、近年プリプレグに使用するマトリックス樹脂は、より低温、即ち130℃前後で硬化が終了するエポキシ樹脂を用いることができるようになってきており、130℃前後でも軟化せず、形状を維持できる樹脂であれば加工用フィルムとしては十分使用に耐えられるようになってきた。そこで、安価、且つ強度の高いポリプロピレンフィルムが使用されるようになったが、成型体の形状変化や強化繊維のズレによる密度ムラなどが生じ、大幅な歩留低下が避けられなかった。
【0007】
本発明は上記事情を改善するためになされたもので、繊維強化エポキシ樹脂の加工に用いられて、繊維強化エポキシ樹脂成型体に高い形状精度を与え、見かけ密度の低下や密度ムラを排除して高い強度を賦与することができるポリプロピレンフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた繊維強化プラスチック材料を用いた場合、エポキシ樹脂が熱硬化する際、実質的に80〜100℃の温度範囲でその形状が決定されること、並びにこの温度範囲における一般のポリプロピレンフィルムの熱収縮率がエポキシ樹脂の形状変化と比較して差が生じるとき、熱硬化時の形状変化や強化繊維のズレによる密度ムラが生じることを知見した。また、エポキシ樹脂の完全硬化温度範囲である120〜135℃においては、一般のポリプロピレンフィルムの熱収縮率が2〜7%と大きな値となるためにポリプロピレンフィルムによる成型体への過度の締め付けが生じ、複合成型体全体の反りや変形をもたらすことを知見した。そして、本発明者らはこのような知見に基づき更に検討を進めた結果、エポキシ樹脂の実質的硬化温度範囲である80〜100℃の範囲で加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率を極力ゼロに近づけるようにし、且つ、エポキシ樹脂の硬化が終了する135℃付近においても溶融することなく、適度な張力が維持できるように種々処理方法を検討した結果、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、心軸材にマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させた繊維素材からなるプリプレグを巻き付けてなる棒状の一次成型体を熱硬化して二次成型するに際し、一次成型体を巻き締め、硬化完了後に除去されるポリプロピレンフィルムであって、プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理してなり、該フィルムを80〜100℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ−0.5〜+0.5%の範囲であり、120〜130℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ0〜+3.5%の範囲であり、かつ第一の延伸方向と第二の延伸方向の引張強度がそれぞれ18〜30kg/mm2であることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルム、及び、プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理することを特徴とする上記の繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルムの製造方法を提供する。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0011】
本発明の加工用ポリプロピレンフィルムはプロピレンの単独重合体又は0.3重量%以下のエチレンを含有するプロピレン共重合体であって、互いに直交させた二つの方向に延伸した、所謂二軸延伸フィルムから形成される。加工用フィルムとしてはポリエステルフィルムやポリフェニレンスルフィド等も使用できるが、高価なために好ましくない。他方、ポリエチレンフィルム等のポリプロピレンフィルム以外の安価なフィルムはエポキシ樹脂等の繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂の硬化温度以下の範囲に軟化点があり、使用できない。従って、135℃程度の熱硬化温度に耐え、且つ、経済的なフィルムはポリプロピレンのみである。
【0012】
この場合、ポリプロピレンフィルムの使用に当たっては、一般的に次の二通りの製造方法によるポリプロピレンフィルムがその目的に応じて採用されている。第一はポリプロピレンフィルムの持つ固有の透明性、耐熱性、防湿性、剛性、高電気絶縁性などの特性を利用するものであって、主として単独重合体からなるフィルムである。また、第二は柔軟性の付与、熱収縮挙動の改良等のために、ポリエチレン成分を最大7.0重量%まで添加して重合を行なったポリエチレン−ポリプロピレン共重合体からなるフィルムである。本発明においては、前記共重合体を加工用フィルムに用いると柔軟性が付与されるもの、耐熱性が低下してマトリックス樹脂との離型性が悪くなって、歩留まりを低下させるので好ましくない。従って、エチレン含有量は0.3重量%以下に制御することが必要であり、特にはプロピレンの単独重合体が推奨される。
【0013】
これらのポリプロピレンフィルムは同時二軸延伸法或いは遂時二軸延伸法によって製造できるが、どちらも使用可能で制限はない。剥離性はフィルム表面に凹凸のあるフィルムの方が軽剥離性を示すが、平滑なものであっても実質的な使用上の問題はない。
【0014】
ポリプロピレンフィルムの膜厚は15〜40μ、より好ましくは20〜30μが望ましい。膜厚が15μより薄い場合、プリプレグで形成した一次成型体を巻き締める時に必要な強度を加えることが困難であり、好ましくない。40μより厚い場合、巻き締める力を大きくとることができるようになるが、膜厚40μを越えて初めて得られる程の強度を実際に必要とすることはなく、また、重ね巻きする場合においてはフィルムの重ねた形跡が強く残り、表面仕上などの後工程の付加を増大させるので好ましくない。更に、膜厚を厚くした分、フィルムの使用量が多くなり、経済的でない。
【0015】
本発明の加工用ポリプロピレンフィルムにおいて、その引張強度は、第一の延伸方向及び第二の延伸方向とも18〜30kg/mm2の範囲であることが必要であり、フィルムの引張強度は成型体の成型に重要な要素となる。即ち、マトリックス樹脂の硬化後の強化繊維の密度と関係し、引張強度が18kg/mm2未満の場合、巻き締め加工時の張力が不足し、密度の高い繊維強化プラスチックを成型することは困難で、成型体に十分な強度を与えることはできない。また、硬化後、フィルムを成型体から剥離する過程でフィルムが破断する場合があるので、好ましくない。他方、引張強度が30kg/mm2を越えた場合は特に加工用フィルムの欠点とはならない。しかし、フィルムの製法上、第一及び第二の延伸方向共に30kg/mm2以上の強度を有するフィルムを製造することは困難である。
【0016】
また、本発明の加工用ポリプロピレンフィルムは、該フィルムを80〜100℃の温度範囲において15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の双方の方向の熱収縮率が−0.5〜+0.5%の範囲に、且つ、120〜130℃の温度範囲に15分間曝した場合においては、第一の延伸方向と第二の延伸方向の双方の方向の熱収縮率が0〜+3.5%の範囲に調整されたものである。
【0017】
即ち、特に繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂は加熱時に80〜100℃の温度範囲で実質的に硬化し、その形状が決定され、以後135℃までの加熱は架橋を促進して完全硬化し、樹脂自身の強度向上が果たされる。従って、形状精度と強化繊維の均一化はこの80〜135℃の樹脂の硬化に係る温度範囲が最も重要である。この硬化過程では加工用ポリプロピレンフィルムの厚みや引張強度等の特性が成型体の形状を維持するために重要であることは前述した通りであるが、更に重要な要素として硬化過程におけるポリプロピレンフィルム自身の熱による寸法変化が問題となる。
【0018】
エポキシ樹脂の実質的硬化過程である80〜100℃の温度範囲における加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率は硬化後の成型体の形状並びに見かけ密度や密度ムラに関係する。加工用ポリプロピレンフィルムの第一の延伸方向(長尺方向)に関しては、フィルムが負の熱収縮性、即ち熱膨張する場合には硬化する樹脂の見かけ密度を上げることができず、結果的に多数の空孔を有する脆弱な成型体しか得られない。また、熱収縮性が大きすぎる場合、加工用ポリプロピレンフィルムが硬化中にエポキシ樹脂を必要以上に締めつけ、これによって時としてエポキシ樹脂が漏れ出して十分なボリュームのある成型体ができなくなり、硬化後の成型体強度は低くなる。また、第二の延伸方向(短尺方向)では、熱膨張及び熱収縮のいづれの場合にも成型物の長尺方向に沿って均一に配設された強化繊維が局部的なフィルムの寸法変化によって乱れが発生し、密度ムラを生じて強度低下をもたらす場合がある。従って、熱収縮率は可能な限りゼロに近いことが必須とされ、この要件を満たす加工用ポリプロピレンフィルムの80〜100℃で15分間加熱した場合の熱収縮率は−0.5%〜+0.5%の範囲が許容され、これを外れた範囲では前記した悪影響が生じるので好ましくない。
【0019】
また、エポキシ樹脂の完全硬化過程である120〜135℃の温度範囲における加工用ポリプロピレンフィルムの熱収縮率は、成型体の反り、変形に関係し、第一の延伸方向と第二の延伸方向のいずれもが0〜+3.5%の範囲にあることが要求される。熱収縮率が0%を下回る場合には加工用ポリプロピレンフィルムの緩みが生じ、熱応力によって反りが発生し、+3.5%より大きい熱収縮率を有する場合には、成型体に過度の締め付けが起こって変形等をもたらすので好ましくない。
【0020】
尚、本発明で定義する熱収縮率の数値はその温度において15分間保持した時のフィルムの寸法変化率を示し、JISC−2330(電気用ポリプロピレンフィルム)に準拠した方法による。
【0021】
上記加工用ポリプロピレンフィルムを製造する場合は、プロピレン単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体からなる厚さ15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の範囲内で熱処理するものである。即ち、一般に二軸延伸法のポリプロピレンフィルムは熱収縮率が高く、80〜100℃では0〜2%、120〜130℃では2〜7%となるのが普通である。これを熱処理することにより、熱収縮率は低下するが、前記した範囲の熱収縮率にすることは容易ではなく、極めて狭い温度範囲の条件しか許容されない。即ち、上記ポリプロピレンフィルムを120〜140℃、より好ましくは125〜135℃の範囲内に熱処理する方法を採用するものであって、熱処理温度が140℃を越えるとフィルムが溶融したり、部分的な変形が起こるので好ましくない。また、120℃を下回ると処理時間が長くなり、80〜100℃並びに120〜130℃のそれぞれの温度範囲における熱収縮率を両方ともに満足することができなくなるので好ましくない。なお、上記熱処理前のフィルムとしては、上述した加工用ポリプロピレンフィルムの第一の延伸方向と第二の延伸方向の引張強度18〜30kg/mm2を確保するため、それぞれの延伸方向の引張強度は熱処理後とほぼ同じ値の18〜30kg/mm2であるものを使用することが必要である。
【0022】
熱処理時間は熱処理温度及び熱処理前のフィルム特性などにより変化し、上記熱収縮率を達成し得るように選定される。
【0023】
熱処理方法としては所定の温度に調整した空間、例えば乾燥機などに必要な時間放置する簡単な方法でも達成されるが、ロールに巻き取ったようなフィルム同志が重なっている状態のものでは、外縁部と内部とに伝熱の差が生じて、それぞれに熱収縮率の違いが発生する場合があるので注意が必要である。最も均一に且つ迅速に熱処理を達成する方法としては、帯状のフィルムを所定の温度に加熱されたロール上を前記した範囲の熱収縮率に調整するに必要な時間接触させる方法などが最も効率的である。この方法を採用した場合、熱処理時間は通常0.1〜1分の範囲で目的は達成される。
【0024】
このように熱処理して得られた加工用ポリプロピレンフィルムの引張強度は、第一の延伸方向、第二の延伸方向とも18〜30kg/mm2の範囲内にあり、また、フィルムの厚さも15〜40μの範囲内に納めることができる。
【0025】
本発明のこのような加工用ポリプロピレンフィルムは、一般にゴルフシャフト、釣りざお、スキー用ストックなどを繊維強化エポキシ樹脂で成型する場合に用いられる。例えば、炭素繊維等からなるプリプレグを例えば金属製の心軸材に圧着しながら巻き付けて一次成型体を形成し、次いで10〜20mm幅の帯状の加工用ポリプロピレンフィルムを約2〜7kgの引張力を加えながら一次成型体を覆い、次いで、実質的硬化温度である80〜100℃の範囲に保持後、更に昇温し、125〜140℃の温度範囲で硬化を完了させ、次いで加工用ポリプロピレンフィルムを除去する。このようにすると、高い形状精度と高い強度とを持った繊維強化エポキシ樹脂成型体を得ることができる。
【0026】
ここで、心軸材などに巻き付けるプリプレグの繊維素材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、スチール繊維、チタン−ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維、あるいはこれらのウィスカーなどが例示でき、糸状、シート状、板状、織物状など、いずれを使用してもよく、成型しようとする目的のものに合わせてこれら単独でもあるいは複数を組み合わせたものでもよい。
【0027】
プリプレグのマトリックス樹脂にエポキシ樹脂を用いた場合のエポキシ樹脂の量は、素材繊維に対し20〜50重量%がよい。通常140℃の温度下であれば2時間以内で硬化完了する。
【0028】
他方、口径の大きい高強度の繊維強化プラスチック成型体を得ようとする場合、上記のように一次成型体に加工用ポリプロピレンフィルムを巻きつけた後、熱硬化する前にこの上から再度一軸延伸されたポリプロピレンフィルムを堅固に巻き付けて硬化させる方法や、この逆の組み合わせ方法も知られており、使用方法は任意に変えることが可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の加工用ポリプロピレンフィルムは、繊維強化エポキシ樹脂成型体の高い形状精度と見かけ密度の低下や密度ムラを排除して高い強度を賦与することができ、安定した高い歩留まりを達成することができる。また、本発明の製造方法によれば、かかるフィルムを確実に製造することができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
厚さ29.5μ、幅1200mm、引張強度は短尺(横)方向が26.3kg/mm2、長尺(縦)方向が19.4kg/mm2、各温度において15分間放置後の熱収縮率、及び引張強度(破断強度)が縦横各々表1の熱処理前の数値で示されるポリプロピレンフィルム(単独重合体)を、予め127℃に加熱した3本のロール上を毎分25mの速度で通過させることにより熱処理を行なった。熱処理後のフィルム特性を表1の熱処理後の数値として示した。
【0032】
【表1】
【0033】
次いで、上記で調整された加工用ポリプロピレンフィルムを使用して成型体の製造を行なった。マトリックス樹脂(エポキシ樹脂)の含有量が33重量%の(株)東レ製炭素繊維一方向プリプレグM40(商品名)を、長さ1mの棒形をした鉄製のマンドレルに巻き付けて一次成型体を作った。マンドレルの一方の片端の外径は1.2cm、他端は外径0.8cmである。更に、上記で熱処理して得られた加工用ポリプロピレンフィルムを15mm幅にスリットしてロール状に巻いたものを用意し、一次成型体の上に引張力5.5kg、ピッチ幅2.0mmで巻き付けた。
【0034】
このものを30分かけて室温から90℃まで温度を上げ、この温度で30分間保持し、更に40分かけて130℃まで温度を上げ、その後、その温度を120分間保持してエポキシ樹脂を硬化させた。室温まで冷却し、加工用ポリプロピレンフィルムを巻いたままの成型体を得た。得られた成型体を加熱炉から取り出し、硬化したばかりの状況を観察した。加工用ポリプロピレンフィルムの縁部からはバリの突き出しもなく、成型体に密度のムラもないことがわかった。
【0035】
加工用ポリプロピレンフィルムをカッターで成型体より切り離した。切り離す時、加工用ポリプロピレンフィルムと硬化樹脂との間に癒着はなく、両者はほとんど抵抗なく剥すことができた。更にグラインダーで周りをわずかに削り取って成型加工を終了し、細管を得た。尚、成型体のフレックス強度は10.5kg/mm2と良好な値であった。
【0036】
[比較例1〜6]
実施例1で用いた加熱調整済みの加工用ポリプロピレンフィルムに替え、表2に示す性質を有する各種加工用ポリプロピレンフィルムを用い、実施例1に準じた成型体を製造した。実施例1と同様の観察、強度測定を行なった結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表中、○;良好、△;やや不良、×;不良
*印;エチレン含有量1重量%
熱収縮率の数値はいづれも長尺方向の値
【0039】
上記の結果から、実施例1で用いた加工用ポリプロピレンフィルムは、比較例1〜7で用いた加工用ポリプロピレンフィルムに比較し、繊維強化プラスチックの成型に際し、高い形状精度と高い強度とを賦与することが可能であることが明らかとなった。
Claims (2)
- 心軸材にマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させた繊維素材からなるプリプレグを巻き付けてなる棒状の一次成型体を熱硬化して二次成型するに際し、一次成型体を巻き締め、硬化完了後に除去されるポリプロピレンフィルムであって、プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理してなり、該フィルムを80〜100℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ−0.5〜+0.5%の範囲であり、120〜130℃の温度範囲に15分間曝した場合の第一の延伸方向と第二の延伸方向の熱収縮率がそれぞれ0〜+3.5%の範囲であり、かつ第一の延伸方向と第二の延伸方向の引張強度がそれぞれ18〜30kg/mm2であることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルム。
- プロピレンの単独重合体又はエチレンを0.3重量%以下含有するプロピレン共重合体にて形成された厚さが15〜40μmの二軸延伸フィルムを120〜140℃の温度範囲で熱処理することを特徴とする請求項1記載の繊維強化エポキシ樹脂一次成型巻き締め加工用ポリプロピレンフィルムの製造方法。
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