JP3804824B2 - ディジタルミキサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンサートや演劇などを行なう会場などにおいて音響設備の集中的な制御を行なうディジタルミキサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンサートや演劇などの会場において音響設備を制御するためのミキサ装置が知られている。そのような会場の音響設備では、多数のマイクロフォンおよび多数のスピーカが使用され、効果音なども多種多様に使用される。ミキサ装置は、多数の入力をどのようにミキシングして、どのように効果を付与し、どの出力系統に出力するか、などを集中的に制御する。
【0003】
従来の一般的なディジタルミキサでは、コンソールとエンジンとを分離し、コンソールをオペレータ側に配置し、エンジンを演奏者側に配置し、それらの間をケーブルで接続するものが知られている。このように、コンソールとエンジンとを分離した方式とすることにより、演奏者の演奏をエンジンでミキシングし、演奏者の側のサウンドシステムに戻す配線経路が極めて短くできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したようなコンソールとエンジン分離型のディジタルミキサにおいては、下記のようにミキサに異常が生じたときの対策が取られていなかった。第1に、コンソールとエンジンとの間の結線(コネクタ、ケーブルなど)に異常が発生する可能性がある。第2にエンジンと入出力ユニット間の結線(コネクタ、ケーブルなど)に異常が発生する可能性がある。特に、使用形態からして、コンソールとエンジンとの間の距離はエンジンと入出力ユニットの間の距離より長くなる場合が多く、切断が起こる確率としてはコンソールとエンジンとの間の確率が高い。さらに第3としてエンジン自体に異常が発生する可能性がある。
【0005】
ディジタルミキサは、ライブステージ、スタジオレコーディング、あるいはイベント会場などで使用されるが、いずれの場合にも使用中に故障するのは望ましくない。特にプロの現場では使用中に故障するのは絶対に避けなくてはならないことであり、万一故障が生じた場合にも、短時間で使える状態に復帰する必要がある。
【0006】
この発明は、上述の従来技術における問題点に鑑み、コンソールとエンジン分離型のディジタルミキサにおいて、各種の異常が発生したとしても、正常な動作を継続することができる、いわゆるフェイルセーフの動作を実現したディジタルミキサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、前記コンソールは、前記エンジンと音声信号を授受するための2本の接続端子を備え、前記エンジンは、前記コンソールと音声信号を授受するための2本の接続端子を備え、1台のコンソールと1台のエンジンとを、前記2本の接続端子を接続する2本のケーブルであって、音声信号の授受と、該ケーブルを介して授受されている同期用のワードクロック信号の前記コンソールから前記エンジンへまたは前記エンジンから前記コンソールへの送信とが、時分割で行なわれるケーブルにより並列に接続するとともに、通常は前記2本のケーブルのうちの一方のケーブルを用いて音声信号の通信を行ない、該一方のケーブルに異常が生じたら、前記2本のケーブルのうちの他方のケーブルに切り換えて音声信号の通信を継続する手段と、前記ワードクロック信号が途切れたとき前記ケーブルに異常が発生したと判断する手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、前記コンソールは、少なくとも2台のエンジンを接続するためのそれぞれ2系統の制御接続端子および音声信号接続端子を備え、前記エンジンは、前記コンソールと接続するための制御接続端子および音声信号接続端子を備え、前記コンソールの第1の系統の制御接続端子および音声信号接続端子と第1のエンジンの制御接続端子および音声信号接続端子とを接続し、前記コンソールの第2の系統の制御接続端子および音声信号接続端子と第2のエンジンの制御接続端子および音声信号接続端子とを接続するとともに、前記コンソールから前記制御接続端子を介して前記第1および第2のエンジンに制御信号を送って、これら2台のエンジンに並行して同一の動作を行なわせる手段と、通常は前記第1のエンジンで実行されているミキシング処理の結果を使用してディジタルミキサの出力とし、前記第1のエンジンに異常が生じたとき、指示に応じて、前記第2のエンジンで実行されているミキシング処理の結果をディジタルミキサの出力として使用するように切り換えて、動作を継続する手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力ユニットの入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、前記入力ユニットは、少なくとも2系統の音響信号の出力端子を備え、前記エンジンは、前記入力ユニットから出力される音響信号を入力するための入力端子を備え、前記入力ユニットの第1の系統の出力端子を第1のエンジンの入力端子に接続し、前記入力ユニットの第2の系統の出力端子を第2のエンジンの入力端子に接続し、前記入力ユニットは、入力信号に対応する出力信号を前記第1および第2の系統の出力端子の両方に出力するようにするとともに、前記コンソールからの共通の制御信号により、前記第1および第2のエンジンに並列に同一の動作を行なわせる手段と、所定の指定信号により指定された前記第1および第2のエンジンのうちの一方のエンジンで実行されているミキシング処理を有効としてディジタルミキサの出力として使用する手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力ユニットの出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、前記出力ユニットは、少なくとも2系統の音響信号の入力端子を備え、前記エンジンは、前記出力ユニットへ音響信号を出力するための出力端子を備え、前記出力ユニットの第1の系統の入力端子を第1のエンジンの出力端子に接続し、前記出力ユニットの第2の系統の入力端子を第2のエンジンの出力端子に接続し、前記コンソールからの共通の制御信号により、前記第1および第2のエンジンに並列に同一の動作を行なわせ、前記出力ユニットは、所定の指定信号により指定された前記第1および第2のエンジンのうちの一方のエンジンの出力端子からの音響信号を入力し、出力信号を生成して出力することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のディジタルミキサにおいて、前記出力ユニットは、前記指定信号により指定されたエンジンが一方のエンジンから他方のエンジンに変更されたとき、該変更された旨を表示する手段を、さらに備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、2台のコンソールからそれぞれ出力される制御信号が何れも1台のエンジンに入力するようにこれらを接続し、一方のコンソールで行なわれた操作子への操作は、他方のコンソールにも反映されるようにし、一方のコンソールに異常が発生したとき、他方のコンソールを使用して前記エンジンの制御操作を継続できるようにすることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1から6の何れか1つに記載のディジタルミキサにおいて、前記コンソール、エンジン、入力ユニット、および出力ユニットの接続関係を表す接続モードを指定する手段をさらに備え、前記コンソール、エンジン、入力ユニット、および出力ユニットは、指定された接続モードに応じて接続関係を認識し、自己の動作を決定することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いてこの発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、この発明に係るディジタルミキサのシステムの全体図を示す。このシステムは、大きくは、観客席あるいはその後ろに配置されたミキサ室などに設置されるコンソール102、およびステージ側に配置されるエンジン122を備えている。エンジン122には、AIユニット132、AOユニット134、およびDIOユニット136が接続される。AIユニット132は、1ユニットに付き最大8枚のアナログ/ディジタル(A/D)変換カードをマウントできるアナログインプットボックスである。マウントするA/D変換カードは、マイク信号の入力用のAD変換入力カードまたはライン信号入力用のAD変換入力カードである。マイク信号入力用のカードは1カードで2入力が可能な2チャンネルの入力に対応し、ライン信号入力用のカードは1カードで4入力の4チャンネル対応のものである。AOユニット134は、1ユニットにつき最大8枚のディジタル/アナログ(D/A)変換カードをマウントできるアナログアウトプットボックスである。1枚のDA変換カードは、4チャンネル分の出力を行なうことができる。DIOユニット136は、1ユニットにつき最大8枚のディジタル入出力(I/O)カードをマウントできるディジタルIOボックスである。1枚のディジタルI/Oカードで、8チャンネル分の入力(ただし、ラインを2つ使用)および8チャンネル分の出力を行なうことができる。
【0019】
1台のエンジンには、入力ユニットとしてユニット132ないし136を10台まで、出力ユニットとしてユニット134ないし136を6台まで接続することができる。ユニット136は、入力ユニット1台、出力ユニット1台に相当する。なお、1台のエンジンに接続できるユニットの種類と数は設計で任意に変更できる。ユニット136のような入出力ユニットで、何台の入力ユニットと出力ユニットを兼用するかも、設計的事項で任意に変更可能である。
【0020】
エンジン122は、これらのユニットを介して入力したマイク信号やライン信号などを適宜ミキシングし、これらのユニットを介して出力する。どの入力チャンネルの信号をどのようにミキシングしてどの出力チャンネルに出力するかはコンソール102からの制御に従う。コンソール102は、複数の操作子や表示器を備え、制御信号用ライン110と音声信号用ライン112を介してエンジン122と接続されている。
【0021】
コンソール102には、MIDI端子が設けられており、例えばMIDIシーケンサ104などが接続可能である。また、コンソール102には、コンピュータ108が接続可能であり、このコンピュータ108からコンソール102をコントロールすることもできる。同様に、エンジン122には、MIDI機器と接続するMIDI端子が設けられており、例えばMIDIシーケンサ124などを接続することができる。またエンジン122にはコンピュータ128が接続可能であり、このコンピュータ128からエンジン122をコントロールすることもできる。
【0022】
コンソール102およびエンジン122は、いずれも外部機器とワードクロックを受信・送信するための端子を備えており、これによりクロック発生器106や126を接続できる。ワードクロックにより各種の同期動作が可能になる。ワードクロックは、当該システムで扱う音声信号のサンプリング周期を規定する信号である。ワードクロックをコンソールに入力した場合、そのワードクロックはコンソールからエンジンへ、また、エンジンから各入出力ユニットへ送信される。ワードクロックをエンジンに入力した場合、そのワードクロックはエンジンからコンソールへ、また、エンジンから各入出力ユニットへ送信される。何れからも供給されなかった場合は、システム内の、例えばエンジンでワードクロックを発生して、コンソールや各入出力ユニットへ送信する。
【0023】
コンソール102とエンジン122とを接続する制御信号用ライン110および音声信号用ライン112は、それぞれ二重化されている。すなわち、コンソール102は1系統で制御信号用ラインの接続端子を2つ備え、エンジン122は同様に1系統で制御信号用ライン接続用の端子を2つ備え、これらの端子を2本のケーブルで接続して制御信号用ライン110を構成している。これにより1本のケーブルに異常が発生しても他方のケーブルにより信号のやりとりが行なえフェイルセーフが実現される。音声信号用ライン112も同様に2重化されている。さらに、1台のコンソール102と1台のエンジン122とを接続するライン110,112を1系統として数えると、コンソール102は2台のエンジン122と接続できるように2系統の入出力端子を装備している。また、コンソール102は不図示のカスケード接続用端子を備えており、2台目のコンソールを接続できる。エンジン122も同様にカスケード接続用端子を備えており、2台目のエンジンをカスケード接続することができる。コンソールとエンジンとの接続形態は、後に詳しく説明する。
【0024】
図2は、コンソールおよびエンジンの配置例を示す。コンサートホール200の観客席側にコンソール102が配置されている。またステージ側にエンジン122およびステージスピーカ202が配置されている。
【0025】
図3は、コンソール102の内部構成を示すブロック図である。コンソール102は、中央処理装置(CPU)301、フラッシュメモリ302、ランダムアクセスメモリ(RAM)303、表示器304、電動フェーダ305、操作子306、波形入出力インターフェース307、データ入出力インターフェース308、通信入出力インターフェース309、およびバスライン320を備えている。
【0026】
CPU301は、このコンソール102全体の動作を制御する。フラッシュメモリ302は、CPU301が実行する制御用プログラムなどを記憶する。RAM303は、CPU301がプログラムを実行する際に使用するワーク領域などに使用される。表示器304は、各種の情報を表示してオペレータに知らせるディスプレイである。電動フェーダ305は、モータ付きのいわゆるムービングフェーダであり、CPU301からフェーダ305の位置を検出できるとともに、CPU301からの指示に応じてフェーダ305を指定された位置に移動することができるものである。操作子306は、オペレータがこのディジタルミキサに対して指示を与える際に使用する各種の操作子である。
【0027】
波形I/O307は、音声信号入出力用のインターフェースである。データI/O308は、エンジン122との間の各種のディジタルデータ入出力用のインターフェースであり、図1の音声信号用ライン112に接続される。通信I/O309は、エンジン122との間のシリアルデータ入出力用のインターフェースであり、図1の制御信号用ライン110に接続される。その他I/O310は、その他の機器へ接続するためのインターフェースであり、図1のコンピュータ接続用端子などである。
【0028】
カスケード接続用I/O311は、もう1台のコンソールとカスケード接続するためのインターフェースである。詳しく言うと、カスケード接続用I/O311は、もう1台のコンソールのカスケードイン端子と接続するためのカスケードアウト端子、およびもう1台のコンソールのカスケードアウト端子と接続するためのカスケードイン端子からなる。カスケードイン端子とカスケードアウト端子は、それぞれ、2重化した接続を実現するため、接続端子を2つずつ用意してある。バスライン320は、これら各部を相互に接続するバスラインである。
【0029】
1台のコンソール102は、上述した音声信号用ライン112への接続用の端子(音声信号端子)を全部で4つ備え、同様に、上述した制御信号用ライン110への接続用の端子(制御端子)を全部で4つ備えている。図1で説明したように、2重化×2系統とするためである。さらに、安全性を考慮し、同じ信号線をそのままパラレルに接続するのでなく、そのI/O回路である後述のデータI/O音声信号)と通信I/O(制御信号)を4つ(2系統×2)ずつ備えている(なお、後述する内部構成の図では図示しないが、各機器における入出力端子においては1つの端子に1つのI/Oを対応させて安全性を確保している)。以上により、1台のコンソール102に、エンジンを2台まで接続することが可能である。接続された2台のエンジンは、それぞれ異なるチャンネルを処理させる(チャンネル数を増加)か、または、同じチャンネルを処理させる(ミラーリング)ことができる。ミラーリングの場合は、オペレータがコンソールの操作子を操作することにより、2台のうちの何れをマスタとするかを指定できる。コンソール、エンジン、およびユニットで機器間の接続の状態を検出して、何れのエンジンをマスタとするか自動選択するようにしてもよい。さらに、1台のコンソールに、もう1台のコンソールをカスケード接続することが可能である。このような接続形態については、後に詳述する。
【0030】
図4は、エンジン122の内部構成を示すブロック図である。エンジン122は、CPU401、フラッシュメモリ402、RAM403、表示器404、信号処理部(ディジタルシグナルプロセッサ:DSP)405、データI/O406、通信I/O407、データI/O408、通信I/O409、その他I/O410、カスケード接続用I/O411、およびバスライン420を備える。
【0031】
CPU401は、このエンジン122の動作全体を制御する。フラッシュメモリ402は、CPU401が実行する制御プログラムなどを記憶する。RAM403は、CPU401がプログラムを実行する際のワーク領域などに使用する。表示器404は、エンジン122の動作状況などを表示する表示器である。信号処理部405は、後に図6で詳述するミキシング処理を行なう処理部である。データI/O406および通信I/O407は、各種のI/Oユニットを接続するためのディジタルデータおよびシリアルデータ入出力用のインターフェース(図1のユニット132,134,136との接続端子)である。データI/O408は、コンソール102との間の各種のディジタルデータ入出力用のインターフェースであり、図1の音声信号用ライン112に接続される。通信I/O409は、コンソール102との間のシリアルデータ入出力用のインターフェースであり、図1の制御信号用ライン110に接続される。その他I/O410は、その他の機器へ接続するためのインターフェースであり、図1のコンピュータ接続用端子などである。
【0032】
カスケード接続用I/O411は、もう1台のエンジンとカスケード接続するためのインターフェースである。詳しく言えば、カスケード接続用I/O411は、もう1台のエンジンのカスケードイン端子と接続するためのカスケードアウト端子、およびもう1台のエンジンのカスケードアウト端子と接続するためのカスケードイン端子からなる。カスケードイン端子とカスケードアウト端子は、それぞれ、2重化した接続を実現するため、接続端子を2つずつ用意してある。バスライン420は、これら各部を相互に接続するバスラインである。
【0033】
1台のエンジン122は、上述した音声信号用ライン112への接続用の端子(音声信号端子)を全部で2つ備え、同様に、上述した制御信号用ライン110への接続用の端子(制御端子)を全部で2つ備えている。図1で説明したように、2重化×1系統とするためである。これにより、1台のエンジン122に、1台のコンソール102を接続することが可能である。さらに、1台のエンジンに、もう1台のエンジンをカスケード接続することが可能である。このような接続形態については、後に詳述する。
【0034】
図5は、DIOユニット136の内部構成を示すブロック図である。DIOユニット136は、CPU501、フラッシュメモリ502、RAM503、表示器504、その他I/O505、通信I/O506、データI/O507、カードI/O508、およびバスライン520を備える。
【0035】
CPU501は、このユニットの動作全体を制御する。フラッシュメモリ502は、CPU501が実行する制御プログラムなどを記憶する。RAM503は、CPU501がプログラムを実行する際のワーク領域などに使用する。表示器504は、当ユニットの動作状況などを表示する表示器である。その他I/O505は、その他の機器へ接続するためのインターフェースである。通信I/O506およびデータI/O507は、エンジン122との間でシリアルデータおよびディジタルデータ入出力用のインターフェース(図1のエンジン122との接続端子)である。カードI/O508は、当ユニットにマウントする各種のI/Oカード(後述のDin608、Dout646に相当する)との間のインターフェースであり、8枚のカードがマウントできるように8つのコネクタ511〜518に接続されている。バスライン520は、これら各部を相互に接続するバスラインである。
【0036】
入力/出力ユニットであるDIOユニット136は、エンジン122への接続用の端子として、入力用に制御信号と音声信号を時分割多重化した多重化端子を2つ、出力用に制御信号と音声信号を時分割多重化した多重化端子を2つ、備えている。各端子は2重化されておらず、1重で(ケーブル1本で接続されているということである)エンジンと接続するものである。1台のDIOユニット136には、そこへ出力を送り込む2台のエンジンを接続する(1重化×2系統)ことが可能である。DIOユニット136は、接続された2台のエンジンのうち、制御信号の1つである指定信号により指定された1つのエンジン(マスタエンジン)からの音声信号を外部機器へディジタル出力し、また、該1つのエンジンからの制御信号により動作が制御される。また、1台のDIOユニット136には、そこから入力を取り込む2台のエンジンを接続する(1重化×2系統)ことが可能である。DIOユニット136は、接続された2台のエンジンの両方に対して外部機器からディジタル入力した音声信号を入力し、制御信号の1つである指定信号により指定された1つのエンジンからの制御信号により動作が制御される。マスタエンジンからの制御信号が途絶えたら、自動的に、もう一方のスレーブエンジンからの制御信号を受信する。
【0037】
ここではDIOユニット136の内部構成を説明したが、AIユニット132およびAOユニット134の構成も同様のものである。
【0038】
ただし、入力ユニットであるAIユニット132は、エンジン122への接続用の端子として、制御信号と音声信号を時分割多重化した多重化端子を3つ、備えている。各端子は2重化されておらず、1重(すなわち、ケーブル1本で)でエンジンと接続するものである。1台のAIユニット132の出力に3台のエンジンを接続する(1重化×3系統)ことが可能である。接続された3台のエンジンには、当ユニットにマウントされたA/D変換入力カードでA/D変換された音声信号を出力する。接続された3台のエンジンのうちの、制御信号の1つである指定信号により指定された1台のエンジン(マスタエンジン)からの制御信号により動作が制御される。また、マスタエンジンからの制御信号が途絶えたら、自動的に、もう一方のスレーブエンジンからの制御信号を受信する。
【0039】
また、出力ユニットであるAOユニット134は、エンジン122への接続用の端子として、制御信号と音声信号を時分割多重化した多重化端子を3つ、備えている。1台のAOユニット134への入力に3台のエンジンを接続する(1重化×3系統)ことが可能である。接続された2台のエンジンのうちの、制御信号の1つである指定信号により指定された1つのエンジン(マスタエンジン)からの音声信号を選択的に入力し、当ユニットにマウントされたD/A変換出力カードでD/A変換する。また、該マスタエンジンからの制御信号により動作が制御される。マスタエンジンからの制御信号が途絶えたら、自動的に、もう一方のスレーブエンジンからの制御信号を受信する。
【0040】
図6は、この実施の形態のディジタルミキサの機能に着目したブロック構成を示す。602〜618は、ミキシング処理への入力側を示す。ユニット602は、AIユニット132およびDIOユニット136の入力部分に相当する。ユニット602には、MADin604、ADin606、およびDin608がマウントされる。MADin604は、マイク信号のA/D変換入力カードによる入力を示す。ADin606は、ライン信号のA/D変換入力カードによる入力を示す。Din608は、ディジタル入力カードによる入力を示す。図1で説明したようにMADin604、ADin606、およびDin608の3種類のカードを最大数マウントすることで、320の入力信号を入力できる。
【0041】
内蔵エフェクタ610は、本ディジタルミキサに内蔵してある8個のエフェクタからの入力を示す。それぞれ、ステレオ信号を入力し、選択されたエフェクトを付与してステレオ信号を出力するエフェクタである。内蔵イコライザ612は、本ディジタルミキサに内蔵してある24個のイコライザからの入力である。それぞれ、シングル信号を入力し、イコライザ処理してシングル信号を出力するものである。なお、「シングル」は、ステレオではない単一チャンネルであることを示すものとする。コンソール614のトークバック入力616は、コンソールのオペレータが舞台側との指示連絡用に用いるヘッドホンなどによる音声入力を示す。パネル入力618は、コンソールに直接入力される効果音などの波形入力を示す。
【0042】
入力パッチ620は、上述した最大320シングル入力(MADin604、ADin606、Din608)、内蔵エフェクタ出力(8ステレオ出力)610、および内蔵イコライザ出力(24シングル出力)612から、入力チャンネル(48×2シングル入力)622およびステレオ入力チャンネル(2×8ステレオ入力)624への任意結線を行なう。その設定は、ユーザが所定の画面を見ながら任意に行なうことができる。
【0043】
入力チャンネル622には、入力パッチ620で選択された入力信号が入力する。同様にステレオ入力チャンネル624には、入力パッチ620で選択された入力信号が入力する。入力チャンネル622とステレオ入力チャンネル624は、同様の構成を備えるものであり、違いはステレオ入力チャンネル624ではステレオの左信号(L)と右信号(R)がペアで制御される点である。入力チャンネル622からは、48×2本のMIXバス626あるいはステレオバス(Stereo_L/R)628の任意の1乃至複数のチャンネルへ選択的に出力することができる。同様に、ステレオ入力チャンネル624からは、MIXバス626あるいはステレオバス628の任意の1乃至複数のチャンネルへ選択的に出力できる。入力チャンネル622およびステレオ入力チャンネル624の各チャンネルでは、各MIXバス626およびステレオバス628への送出レベルをそれぞれ独立に設定することができる。また、入力チャンネル622およびステレオ入力チャンネル624から、後述するCUE_L/Rバス630あるいはKEY_INバス632へ選択的に出力をすることもできる。
【0044】
MIXバス(96本)626は、入力チャンネル622あるいはステレオ入力チャンネル624から入力する信号をミキシングする。ミキシングされた信号は、対応するMIX出力チャンネル636に出力される。MIXバス626とMIX出力チャンネル636とは、1対1の対応で各チャンネルが対応づけられている。ステレオバス(2×1本)628は、入力チャンネル622あるいはステレオ入力チャンネル624から入力する信号をミキシングする。ミキシングされたステレオ信号は、2つのステレオ出力チャンネル634へ並行して出力される。CUE_L/Rバス630は、各チャンネルにどのような信号が入力しているかを確認するためのバスである。コンソールのパネル上の各チャンネル操作子の下にCUEボタンが設けられており、それをオンすると、そのチャンネルの信号のみがこのバス630を経由して例えばヘッドフォンなどで確認できる(後述する656〜662の構成を使用する)。KEY_INバス632は、シングル入力が4チャンネル分のバスであり、コンプレッサを制御するためのものである。
【0045】
ステレオ出力チャンネル(2×2ch)634は、ステレオのLとRが常時ペアで制御される。ステレオ出力チャンネル634の出力は、出力パッチ640およびマトリックス出力チャンネル638へ出力される。MIX出力チャンネル(48ch)636は、MIXバス626からの出力を出力パッチ640またはマトリックス出力チャンネル638へ出力する。MIX出力チャンネル636では、(2N+1)番目のチャンネルと(2N+2)番目のチャンネルをペアにすることができる。
【0046】
マトリックス出力チャンネル(24ch)638は、ステレオ出力チャンネル634とMIX出力チャンネル636から任意の1乃至複数のチャンネルの信号を選択的に入力することができ、選択入力された1乃至複数の信号をさらにミキシングすることができる。信号処理の構成は、ステレオ出力チャンネル634およびMIX出力チャンネル636と同様である。マトリックス出力チャンネル638の出力は、出力パッチ640へ出力される。
【0047】
出力パッチ640は、上述した3種類の出力チャンネル(72シングル出力+2ステレオ出力)から、最大192シングル出力(DAout644、Dout646)、内蔵エフェクタ(8ステレオ入力)648、あるいは内蔵イコライザ(24シングル入力)650への任意の結線を行なう。DAout644は、ディジタル/アナログ変換出力カードへの出力を示す。Dout646は、ディジタル出力カードへの出力を示す。出力パッチ640からの出力は、内蔵エフェクタ648あるいは内蔵イコライザ650に出力することもできる。
【0048】
モニタ用セレクタ656では、ステレオ出力チャンネル634、MIX出力チャンネル636、マトリックス出力チャンネル638、および入力パッチ620への入力の各信号の中から選択した1つ乃至複数の信号が選択的に入力される。その入力信号はモニタ用ミキサ658でミキシングされ、コンソール660のモニタ用DAout662から出力される。モニタ用ミキサ658にはキュー入力があり、何れかの入力または出力でキューが指定されているときは、上記選択された信号のミキシングの代わりに、キュー指定された信号を出力する。以上の構成により、コンソールのオペレータは各種の信号をモニタすることができる。
【0049】
カスケードイン652とカスケードアウト654は、ミキシングを実行するエンジン部分をカスケード接続する場合の入出力を示す。すなわち、エンジンをカスケード接続した場合は、第1のエンジンのカスケードアウト654を第2のエンジンのカスケードイン652に接続し、同様に、第2のエンジンのカスケードアウト654を第1のエンジンのカスケードイン652に接続する。これによりバス626〜632を2つのエンジンで共有できるようにしている。
【0050】
図7〜図11により、コンソールとエンジンとの接続例を説明する。
【0051】
図7は、1台のコンソールA702と1台のエンジンA704を接続した例である。712は制御信号用ライン(図1の110に相当)、714は音声信号用ライン(図1の112に相当)である。これらのライン712,714は、それぞれ、2重化されている。すなわち、コンソールA702とエンジンA704はともに2本の接続端子を有しており、2本のケーブルでパラレルに接続する。図では、太い線で2重化されたラインを示している(以下の図8〜図11も同じである)。706は、上述の入力/出力用のユニット132,134,136を示す。これらのユニット706とエンジンA704とは、それぞれ1重(ケーブル1本)のライン716で接続されている。
【0052】
2重化されている制御信号用ライン712による制御信号の授受については、通常は、一方のケーブルで制御通信を行なうが、該一方のケーブルに異常が生じたら、他方のケーブルに切換えて制御通信を継続する。異常の検出方法としては、「最低でもXミリ秒に一回送信を行なう」などのルールを決めておき、受信側で(1つのケーブルについて)Yミリ秒(≧Xミリ秒)以上受信がなければ、「異常あり」と判断する。同様に、2重化されている音声信号用ライン714による音声信号の授受については、通常は、一方のケーブルで音声信号通信を行なうが、該一方のケーブルに異常が生じたら、他方のケーブルに切換えて音声信号通信を継続する。異常の検出方法としては、音声信号のケーブルには、音声信号と時分割で、コンソールからエンジン、または、エンジンからコンソール向けに同期用のワードクロックが流れているので、その信号が途切れたら「異常あり」と判断するようにする。以下の図8〜図11も2重化されているラインは同じである。なお、音声信号のケーブルでは、音声信号の授受と、該ケーブルを介して授受されている同期用のワードクロックのコンソールからエンジンへまたはエンジンからコンソールへの送信とが、時分割で行なわれており、この仕様により「ワードクロックが来ない」ことが「音声信号のラインが途切れている」ことの確認となる。
【0053】
なお、エンジンは1台で96入力chのミキシング処理を行なうことができる。コンソールは1台で入力chに関して表/裏の切り換えを行なって、48ch×2面の形態で96chの操作を行なうことができる。操作すべきch数が多いと、コンソールのパネル上に全chについての操作子をすべて配置することができないため、パネル上には48ch分の操作子を配置し、表/裏の切り換えを行なうスイッチを別に設け、そのスイッチで表が指示されているときはパネル上の操作子で第1〜48chの操作ができるようにし、そのスイッチで裏が指示されているときはパネル上の操作子で第49〜96chの操作ができるようにしている。
【0054】
図7の構成によれば、離れた位置に配置されるコンソールA702とエンジンA704との間の制御信号用ライン712と音声信号用ライン714を2重化しているので、一方のケーブルに異常が生じても他方のケーブルで動作を継続することができ、フェイルセーフが実現される。なお、図7では制御信号用ライン712と音声信号用ライン714との両方を2重化しているが、どちらか一方を2重化するだけでも、2重化した方は信頼性が向上しフェイルセーフが実現される。
【0055】
図8は、1台のコンソールA802と2台のエンジンA806およびB808を接続した例である。822はコンソールA802とエンジンA806との間の制御信号用ライン、824はコンソールA802とエンジンA806との間の音声信号用ライン、826はコンソールA802とエンジンB808との間の制御信号用ライン、828はコンソールA802とエンジンB808との間の音声信号用ラインである。これらのライン822〜828は、それぞれ、2重化されている。また、エンジンA806とエンジンB808とは、それぞれ2重化されたライン830,832によりカスケード接続されている。810,812は、上述の入力/出力用のユニット132,134,136を示す。これらのユニット810,812とエンジンA806,B808とは、それぞれ1重(ケーブル1本)のライン834,836で接続されている。
【0056】
カスケード接続された2台のエンジンA806,B808により、96ch×2=192入力chのミキシング処理を行なうことができる。コンソールA802は、入力chに関してエンジンA/エンジンBおよびそれぞれの表/裏の切り換えを行なうことができるものとする(48ch×2×2)。
【0057】
図8の構成によれば、2重化されたラインについては、それによる信頼性の向上が見込める。また、エンジンをさらに1台以上追加することにより、ミキシング処理の入力ch数を増やすことができる。
【0058】
図8では点線で記載した2台目のコンソールB804をコンソールA802とカスケード接続してもよい。この場合、通常は、例えばコンソールA802でエンジンA/エンジンBおよびそれぞれの表/裏を切り換えて操作を行ない、コンソールA802に異常が発生した場合はコンソールB804に切り換えて、コンソールB804でエンジンA/エンジンBおよびそれぞれの表/裏を切り換えて操作を継続すればよい。また、通常は、コンソールA802でエンジンAの表/裏の操作を、コンソールB804でエンジンBの表/裏の操作を、それぞれ行ない、どちらかのコンソールに異常が発生した場合は、もう一方のコンソールで全体の操作を行なうようにしてもよい。
【0059】
図9は、1台のコンソールA902と2台のエンジンA906およびB908を接続した例であり、エンジンのミラーリングを実現したものである。912はコンソールA902とエンジンA906との間の制御信号用ライン、914はコンソールA902とエンジンA906との間の音声信号用ライン、916はコンソールA902とエンジンB908との間の制御信号用ライン、918はコンソールA902とエンジンB908との間の音声信号用ラインである。これらのライン912〜918は、それぞれ、2重化されている。910は、上述の入力/出力用のユニット132,134,136を示す。これらのユニット910とエンジンA906とはそれぞれ1重(ケーブル1本)のライン920で接続されている。同様に、これらのユニット910とエンジンB808とは、それぞれ1重(ケーブル1本)のライン922で接続されている。すなわち、各入出力ユニットについて、2台のエンジンを並列に接続している。
【0060】
図9の構成で、コンソールから見たエンジンのミラーリングが実現できる。すなわち、コンソールA902からの制御に応じて、2台のエンジンA906,B908は並行して同一の動作を行なう。通常は、一方のエンジン(例えばエンジンA906)をマスタとして使用するが、そのエンジンに異常が生じたとき、指示に応じて、他方のエンジン(例えばエンジンB908)をマスタに切換えて、動作を継続することができる。上記マスタの切換えでは、各出力ユニットにおいて新たにマスタとなったエンジンの音声信号を選択出力するように切換えるとともに、各入出力ユニットにおいて同マスタになったエンジンからの制御信号で制御されるように切換える。1台のエンジンでは96入力chのミキシング処理を行なうことができるので、2台のエンジンでそのミキシング処理を2重化して並列に実行する。コンソールA902は、入力chに関して表/裏の切り換えを行なう(48ch×2)。また、コンソールA902は、ミラーリングに関してエンジンA/エンジンBの切り換えを行なう。
【0061】
図9の構成は、入力ユニットから見たエンジンのミラーリングも実現している。すなわち、1つの入力ユニット910は(少なくとも)2系統の出力端子を備えており、それに接続された2本のラインのうち一方のライン920を一方のエンジンA906に、他方のライン922を他方のエンジンB908に接続してある。入力ユニット910は、入力信号に対応するディジタル音声信号を2本のライン920,922の両方に出力する。また、共通の制御信号に応じて、2台のエンジンA906,B908は並行して同一の動作を行なう。制御信号の1つである指定信号により2台のエンジンA906,B908のうちの一方のエンジンが指定され、入力ユニットは指定されたエンジンから送られてくる制御信号に従って動作を行なう。
【0062】
さらに図9の構成は、出力ユニットから見たエンジンのミラーリングも実現している。すなわち、1つの出力ユニット910は(少なくとも)2系統の入力端子を備えており、それに接続された2本のラインのうち一方のライン920を一方のエンジンA906に、他方のライン922を他方のエンジンB908に接続してある。また、共通の制御信号に応じて、2つのエンジンA906,B908は並行して同一の動作を行なう。制御信号の1つである指定信号により2台のエンジンA906,B908のうちの一方のエンジンが指定され、出力ユニット910は、指定されたエンジンのラインが接続された入力端子から音声信号を入力して、楽音信号の出力動作を行なうとともに、同指定されたエンジンから送られてくる制御信号に従って動作を行なう。
【0063】
なお、ミラーリング表示として、入力ユニットや出力ユニットは、指定されたエンジンが一方のエンジンから他方のエンジンに変更されたとき、該変更した旨を表示器に表示するようにしてもよい。入出力ユニットは、指定信号でマスタの切換えを行なった場合だけでなく、マスタエンジンからの制御信号が途絶えた場合にも他方のエンジンに切換える。該表示器によれば、各入出力ユニットが、現在どちらのエンジンをマスタとして動作しているか視認できる。
【0064】
図9の構成によれば、2重化されたラインについては、それによる信頼性の向上が見込める。また、エンジンをミラーリングしているので、一方のエンジンに異常が生じても、すぐに他方のエンジンで代替できる。これによりフェイルセーフが実現される。さらに、エンジンを1台追加してミラーリングすることにより、信頼性を上げることができる。すなわち、片方のエンジンに関して何らかの異常が生じた場合でも、他方によりミキシング処理を継続できるようにすることができる。本実施形態では、エンジンのミラーリングにおいて、入出力ユニットも切換えるようになっているが、必ずしもそうしなくてもよい。つまり、各エンジンごとに別の入出力ユニットを持ち、エンジンの切換え時に入出力ユニットも同時に切換えるようにしてもよい。
【0065】
図9では点線で記載した2台目のコンソールB904をコンソールA902とカスケード接続してもよい。この場合、通常は、例えばコンソールA902でミラーリングしたエンジンA/エンジンBの表/裏を切り換えて操作を行ない、コンソールA902に異常が発生した場合はコンソールB904に切り換えて、コンソールB904でエンジンA/エンジンBの表/裏を切り換えて操作を継続すればよい。また、通常は、コンソールA902でエンジンA/エンジンBの表(第1〜48ch)の操作を、コンソールB904でエンジンA/エンジンBの裏(第49〜96ch)の操作を、それぞれ行ない、どちらかのコンソールに異常が発生した場合は、もう一方のコンソールで全体の操作を行なうようにしてもよい。
【0066】
図10は、2台のコンソールA1002,B1004と1台のエンジンA1006を接続した例である。コンソールA1002とコンソールB1004とは、それぞれ2重化されたライン1014,1016によりカスケード接続されている。1010はコンソールA1002とエンジンA1006との間の制御信号用ライン、1012はコンソールA1002とエンジンA1006との間の音声信号用ラインである。これらのライン1010,1012は、それぞれ、2重化されている。1008は、上述の入力/出力用のユニット132,134,136を示す。これらのユニット1008とエンジンA1006とはそれぞれ1重(ケーブル1本)のライン1018で接続されている。
【0067】
図10の構成で、コンソールのミラーリングが実現できる。すなわち、両方のコンソールA1002,B1004で、1台のエンジンA1006を制御することができる。一方のコンソールで行なわれた操作子への操作は、他方のコンソールの操作子に反映される。すなわち、1台のエンジンA1006で96入力chのミキシング処理を行なっているが、各コンソールA1002,B1004は、それぞれ上記入力chに関して表/裏の切り換えを行ない操作することができる(48ch×2)。片方のコンソールの具合が悪いとき(操作子まわりには不具合が発生することが多い)、他方のコンソールを使用して操作を継続することができる。
【0068】
図10の構成によれば、2重化されたラインについては、それによる信頼性の向上が見込める。また、コンソールをミラーリングしているので、一方のコンソールに異常が生じても、すぐに他方のコンソールで代替できる。これによりフェイルセーフが実現される。なお、図10では2台のコンソールがエンジンに対して直列に接続されているように構成したが、コンソールにおける不具合は、主に操作子や表示器で発生し、コンソールのメイン基板が故障することは少ない。したがって、エンジンに近い側のコンソールに不具合が生じた場合でも、そのコンソールのメイン基板を通じてエンジンから遠い側のコンソールもエンジンと通信できる。ただし、コンソールのメイン基板を、メイン基板のCPUが暴走した場合でも通信が可能なように設計することも可能である。
【0069】
図10の構成では、コンソールの拡張動作を行なわせることもできる。すなわち、2台のコンソールのうちの一方のコンソールは、96入力chの表の48入力ch(第1〜48ch)の制御を行ない、他方のコンソールは裏の48入力ch(第49〜96ch)の制御を行なうようにしてもよい。これにより、オペレータは表と裏の全96chを全部手動制御することができる。さらに、上記表/裏の切り換えにより、以上の2つの目的の両方に使用することができる。すなわち、通常は「拡張動作時」のように使用しておいて、問題が生じたら「ミラーリング動作時」のような動作に切り換えて使用することができる。
【0070】
図11は、2台のコンソールA1102,B1104と2台のエンジンA1106,B1108とを接続した例である。エンジンA1106とエンジンB1108とは、それぞれ2重化されたライン1130,1132によりカスケード接続されている。1114はコンソールA1102とエンジンA1106との間の制御信号用ライン、1116はコンソールA1102とエンジンA1106との間の音声信号用ライン、1118はコンソールB1104とエンジンB1108との間の制御信号用ライン、1120はコンソールB1104とエンジンB1108との間の音声信号用ラインである。これらのライン1114〜1120は、それぞれ、2重化されている。1110,1112は、上述の入力/出力用のユニット132,134,136を示す。ユニット1110とエンジンA1106とは、それぞれ1重(ケーブル1本)のライン1122で接続されている。ユニット1112とエンジンB1108とは、それぞれ1重(ケーブル1本)のライン1124で接続されている。
【0071】
カスケード接続された2台のエンジンA1106,B1108により、96ch×2=192入力chのミキシング処理を行なうことができる。一方のコンソールA1102は、エンジンA1106の入力chに関して表/裏の切り換えを行なって操作することができる(48ch×2)。他方のコンソールB1104は、エンジンB1108の入力chに関して表/裏の切り換えを行なって操作することができる(48ch×2)。
【0072】
図11の構成によれば、エンジンを2台とし、それに応じてコンソールも2台として、操作できる入力ch数を増やしているので、より大きな規模のミキシングを行なうことができる。
【0073】
図12は、この実施の形態のディジタルミキサのセッティング操作の手順を示す。ステップ1201で、用意した機器間をケーブルで接続する。接続は、例えば図7〜図11で説明したような接続形態で行なう。次に、ステップ1202で、コンソールの操作子により接続モードを設定する。これは、接続形態に応じたモードに設定することにより、システムに当該接続形態を認識させる処理である。ステップ1204では、入出力ユニットに必要なカードを装着する。ステップ1206では、該カードにマイク、ギター、レコーダなどをケーブルで接続する。以上で、セッティングが完了する。
【0074】
図13(a)は、接続例3(図9)の接続形態を採った場合に、マスタをエンジンAからエンジンBに切り換える指定操作があったときのコンソールでの処理手順を示す。ステップ1301で、コンソールAから制御信号の1つである指定信号(マスタをエンジンAからエンジンBに切り換える指示)をエンジンA,Bに送出する。次に、ステップ1302で、表示を更新する。コンソールAでは、そこで行なわれている各種表示のデータソースをエンジンAからエンジンBに切換えるとともに、マスタエンジンを示すマスタエンジン表示をエンジンAからエンジンBに変更する。ここでは、指定信号をオペレータの指定操作に応じて発生していたが、エラーを検出した本システム自体が指定信号を発生し、自動的にマスタ切換えを行なうようにしてもよい。さらに、その切換え条件を、オペレータが設定できるようにしてもよい。
【0075】
図13(b)は、図13(a)のようにコンソールAから送出された制御信号の1つである指定信号を受信したエンジンA,Bの処理を示す。ステップ1311で、制御信号の1つである指定信号(マスタをエンジンAからエンジンBに切り換える指定)を接続された各入出力ユニットに送出する。次に、ステップ1312で、当該エンジンのマスタ/スレーブ表示を更新する。なお、マスタをエンジンAからエンジンBに切り換えても、マスタであるエンジンが入力ユニットからの音声信号を受け取るのと同じくスレーブのエンジンも音声信号を受け取り、マスタであるエンジンが出力ユニットへ音声信号を出力するのと同じくスレーブのエンジンも出力ユニットへ音声信号を出力する。ただし、出力ユニットは、スレーブのエンジンが出力した音声信号を受け取らないようにしている。
【0076】
なお、機器間接続は、図7〜図11で説明した接続例に限らない。その他の形態で接続を行なってもよい。
【0077】
また、2重化したラインで一方のケーブルに異常が発生し他方のケーブルに切り替わったことは、コンソールのオペレータに何らかの形(音声や画面表示でワーニングメッセージを出力するなど)で通知するようにしても良い。また、通知せずとも、画面で確認できるようにしても良い。2本のケーブルのうちの1本で動作をしているときに、もう一方のケーブルの接続が正常か否かを常にモニタしておくようにするとよい。これにより、常時、使っていない方のケーブルも正常であることが確認できる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、コンソールとエンジン分離型のディジタルミキサにおいて、これらを接続するラインを2重化しているので、一方のケーブルに異常が発生しても動作を継続でき、フェイルセーフの動作を実現できる。また、エンジンやコンソールをミラーリングしているので、一方に異常が発生しても他方の装置で動作を継続でき、これによってもフェイルセーフの動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るディジタルミキサのシステムの全体図
【図2】コンソールおよびエンジンの配置例を示す図
【図3】コンソールの内部構成を示すブロック図
【図4】エンジンの内部構成を示すブロック図
【図5】DIOユニットの内部構成を示すブロック図
【図6】実施の形態のディジタルミキサの機能に着目したブロック構成図
【図7】1台のコンソールと1台のエンジンの接続例1を示す図
【図8】1台のコンソールと2台のエンジンの接続例2を示す図
【図9】1台のコンソールと2台のエンジンの接続例3を示す図
【図10】2台のコンソールと1台のエンジンの接続例4を示す図
【図11】2台のコンソールと2台のエンジンの接続例5を示す図
【図12】セッティング操作の手順を示すフローチャート図
【図13】マスタをエンジンAからエンジンBに切り換える指定操作があったときのコンソールおよびエンジンでの処理手順を示すフローチャート図
【符号の説明】
102…コンソール、122…エンジン、132…AIユニット、134…AOユニット、136…DIOユニット、604…MADin(マイク信号のアナログ/ディジタル変換入力カード)、606…ADin(ライン信号のアナログ/ディジタル変換入力カード)、608…Din(ディジタル入力カード)、610…内蔵エフェクタ、612…内蔵イコライザ、620…入力パッチ、622…入力チャンネル、624…ステレオ入力チャンネル、626…MIXバス、628…ステレオバス、630…CUE_L/Rバス、632…KEY_INバス、634…ステレオ出力チャンネル、636…MIX出力チャンネル、638…マトリックス出力チャンネル、640…出力パッチ、644…DAout(ディジタル/アナログ変換出力カード)、646…Dout(ディジタル出力カード)。
Claims (7)
- 表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、
前記コンソールは、前記エンジンと音声信号を授受するための2本の接続端子を備え、
前記エンジンは、前記コンソールと音声信号を授受するための2本の接続端子を備え、
1台のコンソールと1台のエンジンとを、前記2本の接続端子を接続する2本のケーブルであって、音声信号の授受と、該ケーブルを介して授受されている同期用のワードクロック信号の前記コンソールから前記エンジンへまたは前記エンジンから前記コンソールへの送信とが、時分割で行なわれるケーブルにより並列に接続するとともに、通常は前記2本のケーブルのうちの一方のケーブルを用いて音声信号の通信を行ない、該一方のケーブルに異常が生じたら、前記2本のケーブルのうちの他方のケーブルに切り換えて音声信号の通信を継続する手段と、
前記ワードクロック信号が途切れたとき前記ケーブルに異常が発生したと判断する手段と
を備えたことを特徴とするディジタルミキサ。 - 表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、
前記コンソールは、少なくとも2台のエンジンを接続するためのそれぞれ2系統の制御接続端子および音声信号接続端子を備え、
前記エンジンは、前記コンソールと接続するための制御接続端子および音声信号接続端子を備え、
前記コンソールの第1の系統の制御接続端子および音声信号接続端子と第1のエンジンの制御接続端子および音声信号接続端子とを接続し、前記コンソールの第2の系統の制御接続端子および音声信号接続端子と第2のエンジンの制御接続端子および音声信号接続端子とを接続するとともに、
前記コンソールから前記制御接続端子を介して前記第1および第2のエンジンに制御信号を送って、これら2台のエンジンに並行して同一の動作を行なわせる手段と、
通常は前記第1のエンジンで実行されているミキシング処理の結果を使用してディジタルミキサの出力とし、前記第1のエンジンに異常が生じたとき、指示に応じて、前記第2のエンジンで実行されているミキシング処理の結果をディジタルミキサの出力として使用するように切り換えて、動作を継続する手段と
を備えたことを特徴とするディジタルミキサ。 - 表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力ユニットの入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、
前記入力ユニットは、少なくとも2系統の音響信号の出力端子を備え、
前記エンジンは、前記入力ユニットから出力される音響信号を入力するための入力端子を備え、
前記入力ユニットの第1の系統の出力端子を第1のエンジンの入力端子に接続し、前記入力ユニットの第2の系統の出力端子を第2のエンジンの入力端子に接続し、
前記入力ユニットは、入力信号に対応する出力信号を前記第1および第2の系統の出力端子の両方に出力するようにするとともに、
前記コンソールからの共通の制御信号により、前記第1および第2のエンジンに並列に同一の動作を行なわせる手段と、
所定の指定信号により指定された前記第1および第2のエンジンのうちの一方のエンジンで実行されているミキシング処理を有効としてディジタルミキサの出力として使用する手段と
を備えたことを特徴とするディジタルミキサ。 - 表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力ユニットの出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、
前記出力ユニットは、少なくとも2系統の音響信号の入力端子を備え、
前記エンジンは、前記出力ユニットへ音響信号を出力するための出力端子を備え、
前記出力ユニットの第1の系統の入力端子を第1のエンジンの出力端子に接続し、前記出力ユニットの第2の系統の入力端子を第2のエンジンの出力端子に接続し、
前記コンソールからの共通の制御信号により、前記第1および第2のエンジンに並列に同一の動作を行なわせ、
前記出力ユニットは、所定の指定信号により指定された前記第1および第2のエンジンのうちの一方のエンジンの出力端子からの音響信号を入力し、出力信号を生成して出力する
ことを特徴とするディジタルミキサ。 - 請求項4に記載のディジタルミキサにおいて、
前記出力ユニットは、前記指定信号により指定されたエンジンが一方のエンジンから他方のエンジンに変更されたとき、該変更された旨を表示する手段を、さらに備えたことを特徴とするディジタルミキサ。 - 表示手段や操作子をパネル上に備えたコンソールと、複数の入力系統から入力した複数の音響信号に対し任意にミキシング処理して複数の出力系統に出力するエンジンとを備えたディジタルミキサであって、
2台のコンソールからそれぞれ出力される制御信号が何れも1台のエンジンに入力するようにこれらを接続し、
一方のコンソールで行なわれた操作子への操作は、他方のコンソールにも反映されるようにし、
一方のコンソールに異常が発生したとき、他方のコンソールを使用して前記エンジンの制御操作を継続できるようにする
ことを特徴とするディジタルミキサ。 - 請求項1から6の何れか1つに記載のディジタルミキサにおいて、
前記コンソール、エンジン、入力ユニット、および出力ユニットの接続関係を表す接続モードを指定する手段をさらに備え、
前記コンソール、エンジン、入力ユニット、および出力ユニットは、指定された接続モードに応じて接続関係を認識し、自己の動作を決定することを特徴とするディジタルミキサ。
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