JP3800316B2 - 抄紙機等の乾燥セクションにおける方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、例えば板紙抄紙機または仕上げ機(finishing machine)等の抄紙機等の乾燥セクションにおける方法及び装置であって、特許請求の範囲の独立項の前段部分に規定された方法及び装置に関する。
【0002】
本発明は、特に、以下の如く構成された方法及び装置に関する、
すなわち、ウェブが、例えばワイヤまたはフェルト等の支持ファブリックによって支持されて、例えば乾燥シリンダ、ロール等のシリンダ上を、そのシリンダと支持ファブリック間で搬送され、
支持ファブリックによって支持されて、ウェブがシリンダとファブリック間の開ニップから、例えば吸引ロール、ターン・ロール、ワイヤ・ガイド・ロール、別のシリンダ等のロールに向けて案内され、
開ニップからロールに向けたウェブの走行(run)がウェブと対向するワイヤの側で生成される負圧によって支持される。
【0003】
本発明は、特に抄紙機、板紙抄紙機、仕上げ機等の乾燥セクションへの適用を意図している。また、本発明は、二つのシリンダとこれらの下に在ってワイヤの走行方向を転向するロールとの間にワイヤ・ポケットを形成する、シングルまたはツインのワイヤ・ラン(wire run)を有する乾燥セクションに適用することができることを意図している。また、本発明は、いわゆる反転された走行のある乾燥セクション、即ち、ワイヤの移送方向を転向するロールが乾燥シリンダの上に設けられた乾燥セクション、これは、乾燥シリンダが二箇所以上の位置で互いに上に設けられている場合の解決手段であるが、そのような乾燥セクションに適用することができることをも意図している。更に、本発明は、上記の乾燥セクションを組み合せした乾燥セクションに適用することができる。また、本発明は、前記機械、装置の他の部分における適切な箇所に適用できることを目的とする。
【0004】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ウエブを乾燥シリンダの表面から確実に外すことができるように、ワイヤ・ポケット、特に乾燥シリンダとワイヤの間の開始ギャップに負圧が必要であることは、以前から注目されていた。ポケット全体の負圧を、必要とされる負圧まで増大させると、ある不都合を生ずる。ポケット全体の空間を同じ高レベル負圧にするには、多量のエネルギを使用しなければならない。また多量のエアの漏洩が負圧を充分な高レベルに達成させまた維持することを不可能にさせる。これまでは、送風ボックスによって、概ね、充分に負圧を増大させることが可能であった。
【0005】
更に、ポケット全体の負圧を高レベルの負圧に増大させると、他の不都合を生じさせることがある。ポケットの高さと同様の長さを持った長いワイヤ・ランに、高圧の負圧がかかると、ワイヤとウェブを屈曲させることがある。このとき、ワイヤは、送風ボックスの表面または他の可撓性のない表面に接触し、ワイヤを損傷し、また走行性(runability)を損なう。ウェブの中央部と端部とでは、屈曲の仕方が異なり、ウェブ内にストレッチを生じさせる。これは走行性を損なう。また、開ニップに高圧の負圧がかかると、ワイヤの解放点(係合が解除されるポイント、以下同様)を、乾燥シリンダ上より高い方にシフトさせることがある。
【0006】
これまでは、紙ウェブでのドロー(draw)を増大させることにより、乾燥シリンダとワイヤとの間の開始ギャップにおけるウェブの走行を確実にさせることが意図されてきた。ドローは、速度差を利用してウェブに伸張力を発生させることを意味する。しかし、過度のドローは、紙の伸張力を減少させ、紙の品質を損ない、しばしば走行性を損なう、つまり、多くのウェブ・ブレイク(断紙)を生じるので、ドローを増大させることは常に可能とはいえない。
【0007】
これまでに、より高い負圧を生成するため特別な吸引ボックスをシリンダとワイヤ間の開ニップに設けることが提案されてきた。米国特許第5,341,579号は、開ニップに特別な小型の吸引ボックスを設けて、その地点で或る負圧を保持することを提案している。しかしこの吸引ボックス20と吸引ロールでの負圧は同じ負圧ブロワ32によって生成される。従って、これらは、別々に制御することはできない。
【0008】
米国特許第5,782,009号は、二つの乾燥シリンダ間のポケットに吸引ボックスを設けることを開示する。これによって、吸引ボックスは二つのセクションに分割される。より高い負圧を持つ吸引ボックス・セクション1は、乾燥シリンダとワイヤ間の解放点の領域に設置される。この領域は、メカニカル・シールによって外部環境から分離される。ウェブの交差方向において、より高い負圧を有するセクション1はいくつかの部分に分割され、そこで、ウェブ端の走行を確保するために異なる負圧を生成することができる。
【0009】
米国特許第4,359,827は、二つの乾燥シリンダ間に形成されたポケットにマルチ・セクション吸引ボックスを設けることを開示する。その吸引ボックスの一つのセクションは、ワイヤの走行方向に関し、第1の乾燥シリンダにおけるワイヤの前方で、その乾燥シリンダとワイヤ間の解放点より前に設ける。このセクションに配された負圧は、ワイヤに接する吸引ボックスの他のセクションにおける負圧よりも高い。
【0010】
そこで、本発明は、次のような方法及び装置を対象とする。即ち、いわゆる過負圧領域(負圧が増大された領域、以下同様)での、つまり、支持ファブリックとシリンダ間の解放点の近傍での負圧が、いわゆる低負圧領域(負圧がより低い領域、以下同様)における、つまり、解放点から離れた箇所における負圧より高い、そのような方法と装置を対象とする。
【0011】
これは、意外なことだが、開ニップにおいてより高レベルの負圧が使用されていても、乾燥すべきウェブは、すべての外部環境で、最適の走行が得られるわけではないことが分かっている。努力しても、ウェブは乾燥シリンダから、常に、適切に解放されるわけでわない、即ち、この解放の後で、ウェブは、ワイヤに追従することが出来ないように伸張することがある。このときは、ウェブがブレク(断紙)しウェブ内に欠損が生じる。
【0012】
図1は、ワイヤ・ポケット20の領域でウェブに作用する力Fを示す。乾燥シリンダ10とワイヤ18との間の開ニップの始端で、高く狭い「力のピーク」F1がウェブに作用する。ここでのピークの値は可変である。このピークはウェブを伸張させ、そのため、例えば、ある条件で、ウェブ内に「バブル」を生じさせる。この「バブル」によって、ウェブは、もはや、ワイヤに充分追従することができなくなる。ウェブ内の「バブル」の位置では、脆弱なスポットが形成され、これがウエブの走行性を損なう。ワイヤの走行おける他端、例えばワイヤとロール間の閉ニップK2では、ウェブに作用する力F2は、図1に示すように実質的に小さい、すなわちこの力は、ウェブをワイヤに密接に押圧するように作用する。
【0013】
【問題を解決するための手段及び発明の概要】
本発明は、上述した問題点を最小化した、乾燥セクションにおける改良した方法及び装置を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、特にワイヤ・ポケットにおけるウェブの走行を、走行状態の間、制御する方法及び装置を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、特に、開ニップにおけるウェブの動作によって生ずる、前述した乾燥セクションでの走行性の問題が、別の走行条件において最小化することのできる方法及び装置を提供することである。
【0016】
また、本発明の別の目的は、前述した開ニップの位置に、適切なレベルの高い負圧を生成することができる方法及び装置である。
【0017】
上述した目的を達成するために、本発明の方法及び装置は、特許請求の範囲における独立請求項の特徴事項に記載する要件に特徴がある。
【0018】
抄紙機の乾燥セクションの、乾燥シリンダとワイヤ間に形成されたポケット空間における負圧に対する必要性は、一般に、多数の因子、生産パラメータ及び走行する紙の品質の双方に依存する。
【0019】
出願人は、ある条件、例えば、抄紙機の速度、ウェブの固形分(含有量)、使用するパルプ品質、ウェブの特性、ワイヤの張力、乾燥シリンダの温度等が、ワイヤの開ニップでウェブを乾燥ワイヤに密接に保持するのに必要な作用力に対し、特に影響を与え、そのため、これらの因子が走行性に特別な影響を与えることを発見した。制御可能な負圧は、ウェブをシリンダに付着させる他の変化する力を補償(相殺)するために、ウェブを、シリンダと対向する側の開ニップでシリンダの表面から解放するために必要である。ポケット空間での一般的な負圧制御とは別に、開ニップでの負圧の制御を可能とする必要がある。
【0020】
本発明に従う典型的な方法によれば、負圧Pnipは、乾燥セクションの過負圧領域で、ウェブの走行性に及ぼすところの、可変のまたは走行中変化する一つまたは複数のパラメータに従って制御される。かかるパラメータは、例えば
ウェブの速度、
ウェブの固形分(含有量)
使用されるパルプの組成(成分)
製造する紙または板紙の品質
ウェブの坪量
例えば多孔性のような、ウェブの特性
ウェブに作用するドロー、またはウェブの張力
シリンダの温度、及び/又は
走行状態、例えばウェブ・ブレイク(断紙、web break)、スレッディング(threading)の状態、または通常の走行。
その結果、ウェブはシリンダの表面から制御された状態で解放される、またシリンダとロールとの間に最適の走行性が維持される。
【0021】
また、本発明によれば、走行及び紙の品質によって規定されたパラメータに従い、高い、即ち増大された負圧の領域(過負圧領域)のレベルを制御することができる。そこで、
ウェブの湿気が多いほど、
走行速度が速いほど、
乾燥シリンダの表面がホットであるほど
ウェブが硬くないほど、あるいは
目標とする走行性が良好であるほど
過負圧領域の負圧をより高く保持することが有利であることに注目した。
【0022】
ウェブの乾燥固形分は、ウェブを乾燥シリンダから解放するのに本質的な影響を与える。ウェブの湿気が多いほど、ウェブをシリンダから解放するのが難しくなり、良好な走行性を得ることが困難であった。そこで、以前は、乾燥セクションにおいて良好な走行性を得るべく、ウェブの乾燥固形分をプレスでできるだけ高いレベルまで増大させておくことが目標であった。走行性に関しては、本発明を適用すれば、乾燥セクションに達するウェブの湿気を、以前と同じ程度に維持する必要はない。本発明の解法では、比較的湿気の多いウェブでもプレスから乾燥セクションに移すことができる。というのは、ウェブを乾燥シリンダから制御して解放すること、これは走行性に影響を与えるが、そのような制御された解放が、乾燥シリンダの開ニップでの高い負圧によって保証されるからである。本発明を適用すると、所望の特性を持った最終製品が得られるように、例えば、単に中程度にプレスされたバルク状の製品を得るように、湿気を選択することができる。
【0023】
過負圧領域では、例えば乾燥固定分(含有量)が65%のウェブが、ウェブの湿気に起因しウェブの解放を妨げる力を補償することをもはや必要としないほどに充分な強度に達するまで、その高い負圧を維持し制御することができる。その高い負圧は、典型的には、乾燥セクションの始端で維持、制御され、その結果、ウェブが多く乾燥し及び/または収縮し、そのため、ウェブの内部張力が、ウェブを乾燥シリンダの表面から制御された状態で解放させ、ワイヤに追従させる。特に、品質の悪いパルプを用いた場合には、乾燥セクションの全体で、過負圧(増大された負圧、以下同様)を用いることが有利であるかもしれない。
【0024】
本発明は、プレス及び乾燥セクションにおいて、全幅でのスレッディング(通紙)(threading)を利用することが可能である。プレスにおけるスレッディングは、例えば、次のようにして行われる。ピックアップ・ロールが下がってワイヤ部位から来る全幅のウェブに接触し、次いでその全幅のウェブが支持ファブリックに支持されてプレスを通過する。プレスで、一つの支持ファブリックから次ぎの支持ファブリックに転送されるとき、そのウェブの転送は負圧によって補助される。そこで、ウェブは全幅でプレスから乾燥セクションの第1の乾燥シリンダに転送される。乾燥セクションでは、ウェブはすぐにその走行を続けて乾燥セクションを通過させることができるから、ウェブは最大の幅を有する。次いで、乾燥シリンダ間のポケットにおける負圧、即ち、過負圧及びポケットの他の領域における負圧の双方がスイッチ・オンされる必要がある。過負圧領域の高い負圧は、急激にかつ効果的に、到着する最大幅のウェブを乾燥シリンダの各開ニップの支持ファブリックに付着する。
【0025】
他方、プレスから到来するウェブは、まず乾燥セクションの最初の乾燥シリンダのドクタ・ブレードで停止させることができ、次いでマシンより下に在るパルパー(溶解釜、pulper)等に降ることが可能となる。ウェブのパルパー等への移動は、最大幅のウェブの上方にある乾燥セクションの最初のポケット領域のボックス等に設けたドロップ・ブローによって、及びワイヤの最初のターン・ロールによる吸引と同様にポケットに設けたボックスの吸引及び送風を閉じることによって補助することができる。
【0026】
実際にウェブが乾燥セクション内をスレッディングするのは次のように行われる。プレスの負荷が所望の線圧に対しセットされる。ポケット領域においては、吐出ノズル及び/又は吸引装置を備えたボックス及びターン・ロール等で、吸引及び送風がスイッチオンされ、次いで、最初の乾燥シリンダを通過したウェブが、好ましくはマシンの前側及び後側の双方から、直ちにブローで裁断される。本発明によりスレッディングに適するように調整された、過負圧領域における高い負圧は、全幅のウェブが、乾燥セクションで、乾燥ワイヤに追従始めるのを保証する。そこで、吸引装置及びポケットで形成された負圧によって乾燥セクションの所望の箇所まで案内される際、ウェブは全幅を有することができ、全幅のウェブの前進は、適当な乾燥シリンダで、そのシリンダの後ろに在る、ウェブを搬送する吸引及び送風を閉じることによって停止することができる。ウェブが停止すると、従来のリーダ(leader)部分がアングル・カッターで遮断され、このリーダによって、ウェブのヘッド部分を、従来のようにして乾燥セクションの残部を通過(thread)することができる。
【0027】
本発明の解法によれば、乾燥シリンダからのウェブの解放は、過負圧領域の負圧Pnipを下記の式に従って制御することにより、異なる速度で保証することができる。
dp/dx=48μνR2/x4
ここで、pは圧力、xは解放点からの距離、μはエアの粘度、νはウェブの速度、Rはシリンダの半径である。
【0028】
この式は、負圧レベルについて、示唆に富む値を提供する。実際の負圧に作用する限定的なパラメータがあるので、この計算値はしばしば実際に得られる値よりも高くなり得る。例えば、負圧の最大レベルはウェブとワイヤの複合した透過率によって決定される。
【0029】
抄紙機の速度が上がれば上がるほど、従来の乾燥セクションに在る乾燥シリンダとワイヤ間の開ニップにおけるウェブの通行を制御することは困難になる、というのは、ウェブが比較的しっかりシリンダ表面に付着しており、速度が増大するにつれてますます乾燥シリンダに追従しようとするからである。数百メータの速度増加は、例えば、500Paから1000Paのように、2倍のレベルの負圧が必要になることもある。
【0030】
過負圧領域の負圧レベルを制御することによって、しばしば、通常より品質が低下したパルプの使用が可能である。例えば、より少量の化学パルプを走行性に損害を与えることなく使用することが可能である。ファイバの一部をファイバより安価な充填物と置き換えることも可能である。添加物の一部をもっと安価な添加物に置き換えることの可能である。適切なレベルの高い負圧は、ウェブを乾燥シリンダから解放することを保証する。
【0031】
紙の走行性と乾燥セクションの効率は、マシン(抄紙機)の速度、紙の乾燥固形分(含有量)及び/又は紙の品質に従い、開ニップの負圧レベルを制御することによってのみ、以前より実質的に高いレベルに適正化することができる。
【0032】
本発明による解法を適用すると、乾燥シリンダの温度を以前より高いレベルまで上げることがしばしば可能となる。これは、温度を上げたことによるウェブの強度の変化を、制御可能な過負圧で補償することができるからである。そこで、本発明を適用すると、乾燥シリンダの温度を上げたことにより乾燥セクションに余剰の容量を提供することができる。
【0033】
以前は、例えば、プレス・セクションと乾燥セクション間のドローの差は、主として走行性に基づいて選択された。本発明を適用すると、すなわち、負圧制御によって開始端の走行性を改良すると、他の理由に基づく張力の差をも選択することができる。ドロー差は、紙の品質、紙の特性、例えば多孔性、亀裂の伸び等に基づいて選択することができる。
【0034】
マシンの速度が増加すると、従来の解法では、プレスと乾燥セクション間のドロー差が、ウェブの品質を劣化させるほどに増大するはずである。本発明による負圧制御は、ドロー差を、ウェブの品質、例えば多孔性を、現在以上に変化させない、少なくとも同じ位になるように低レベルに保持することができる。本発明を適用すれば、ウェブが固形成分65%に乾燥される前で、典型的には、全体のドロー差を4.5%より小さく、3%より小さくすることすら可能である。
【0035】
以前は、ウェブを制御して乾燥シリンダから解放するのに必要なドロー差を得るために、乾燥セクションを異なるグループに分割することが必要であった。本発明の解法では、以前と同じだけ走行性に影響を与える必要がないので、以前より長い乾燥グループを乾燥セクションの始端に設けることができる。
【0036】
そこで、本発明を、1500乃至2500m/min、典型的には約2000m/minの高速の抄紙機に適用すると、乾燥セクションの始端にシングル・ワイヤ・ラン乾燥グループ、典型的には8個以上の、好ましくは約10個の、あるいはそれ以上の乾燥シリンダを有する乾燥グループを設けることができる。長い乾燥グループは、コストの削減になる。
【0037】
本発明による解法では、過負圧領域において、走行状態によって、典型的には、負圧のレベルを、500Paより大きく、もっと一般的には1000Pa以上20000Pa以下、好ましくは10000Paより小さく維持する。もちろん、必要によっては、負圧を上記の値より大きく、または小さくすることが可能である。しかしながら、負圧レベルは、典型的には、ワイヤのターン・ロールの表面で有効な負圧Prollよりも大きい。ワイヤ・ポケットの他の部分における負圧はかなり低い、すなわち約10乃至700Pa、好ましくは100乃至500Pa、典型的には200乃至300Paである。
【0038】
過負圧領域は、典型的には、シリンダの開ニップにおけるワイヤ・ランをカバーするべく設ける。そのため、過負圧領域は、シリンダとワイヤ間の実際の解放点の少し前から始まり、必要な距離だけ前方に伸びる。特に解放点で、負圧を最も必要とする。走行の間に、解放点は前進しまたは後退する。そこで、送風ボックスは、充分な負圧の供給をすべての走行条件を通じて保証しなければならない。シングル・ワイヤ・ランを備えた乾燥セクションでは、過負圧領域は、典型的には、開ニップで、50乃至500mm、好ましくは100乃至200mmの長さをもった領域でよい。過負圧領域の長さは、ウェブの走行方向における、二つの手段、例えばシール手段、スロットル手段、送風ノズルの間の距離を意味し、その手段の間には、過負圧領域に隣接する空間における負圧よりも高い負圧がポケットの空間で生じることを意味する。
【0039】
過負圧を有する領域は、ウェブの交差方向に、狭い間隙状の領域を形成する。この領域は小さくかつリークもわずかであるから、負圧は容易にかつ低コストで所望のレベルに維持される。この領域はウェブの走行方向に関し短いから、ウェブとその支持ファブリックに、非常に短時間だけ作用し、それ故、高い負圧にもかかわらず、これらに、有害な伸張または他の不利益な変化をもたらさない。
【0040】
図1に示すように、負圧が打ち勝たなければならない「力のピーク」は、非常に限られた領域に位置する。過負圧領域は、開ニップの方向、つまりウェブの走行方向に、乾燥シリンダとワイヤ間の解放点から、せいぜい300mm、好ましくは40乃至140mm、典型的には80mm伸びた領域に位置することが可能であろうことが判明した。これに応じ、過負圧領域は、ウェブの走行方向に逆らって、せいぜい300mm、好ましくは40乃至100mm、典型的には70mm、ワイヤと乾燥シリンダ間の解放点から伸びる。
【0041】
本発明は、好適に、乾燥セクションに適用される。乾燥セクションでは、ウェブの走行をアシストする負圧が、送風ボックス、送風ボックス組み合せ、または吸引ボックス、吸引ボックス組み合せによって生成される。これらのボックス等は、ウェブの全幅に亘って伸び、乾燥シリンダから到来するワイヤ・ランの正面のワイヤ・ポケットに配置する。これらのボックスによって生じた負圧によって、ウェブは、開ニップの後を、所望の距離を超えてまでもワイヤに付着され続ける。従来の乾燥セクションでは、送風ボックスまたは吸引ボックスは、二つの乾燥シリンダと例えば吸引ロールである乾燥シリンダ間のターン・ロールとの間に形成されるポケット、いわゆるワイヤ・ポケットの大部分を占有する。
【0042】
本発明の適用に適した送風ボックスは、典型的には、送風用のエアを生成する手段と組み合せ、シリンダから離れたワイヤの側に、主として、ワイヤとシリンダ間の開ニップに設ける。そのため、ワイヤとシリンダ間の実際の解放点から、ワイヤの走行方向に少し前方に伸びている。送風ボックスは、典型的には、ウェブの走行方向に対し交差しかつワイヤに近接して設けた二つのノズル、例えば吐出ノズルを有し、または、一つの吐出ノズルと一つのシール手段を有する。
【0043】
第1の吐出ノズルまたはシール手段は、好適に、主として、ワイヤとシリンダ間の開ニップ、好ましくはワイヤとシリンダ間の解放点の前に設ける。第2のノズルまたはシール手段は、ウェブの走行方向で、第1のノズルと開ニップから離れた箇所、例えばターン・ロールまたは吸引ロールの閉ニップ(間隙)に設けてよい。あるいは第2のノズルは、ポケットの他方の側、例えば第2の乾燥シリンダ、または乾燥シリンダ間のロールに設けることができる。
【0044】
吐出ノズルは送風装置に設けられ、送風装置とワイヤ間の間隙からエア・ジェットを吹き出す。そのため、ノズルから吐出したエア・ジェットが余剰のエアがその間隙に入り込むのを阻止し、及び/又はそのジェット効果で送風装置とワイヤ間の間隙から吸気し、そこでウェブを支持する負圧がその間隙に維持される。
【0045】
実際の過負圧領域では、ワイヤと送風ボックス間の間隙を、スロットリング、吐出ノズル等によって二つの領域に分割し、また、その間隙の、ウェブの走行方向の最初のサブ領域、即ち、ワイヤの解放点の周辺の区域をカバーする部分で、負圧を増大させる。間隙の第2のサブ領域では、実質的により低い負圧レベルを維持することができる。
【0046】
間隙を分割するスロットル手段が単に機械的なシールである場合は、過負圧領域の負圧は、例えば最初の吐出ノズルの空気流を調整することによって制御できる。この制御によって、過負圧領域の負圧を増大しまたは減少させることができる。スロットル手段により、その制御は過負圧領域以外の部分の負圧に実質上影響を与えない。
【0047】
他方、スロットル手段が吐出ノズルであるときは、また、吐出ノズルの空気流を制御することによって過負圧領域の負圧を制御することができる。スロットル手段によって過負圧領域から放出されたエアは、他の負圧領域に流入することが許容される。というのは、その量が通常負圧領域のサイズに対して少量であり、またその放出されたエアが、ノズルのすぐ後で、ガイドプレートあるいは放出チャンネルによって、全体的に負圧領域の外に導かれるからである。
【0048】
本発明に適した送風ボックスは、典型的には、負圧を生成する手段、例えば吸引チャンネルに接続され、概ね吐出送風ボックスと同様に、ワイヤまたはシリンダから離れたファブリック上に設けられる。送風ボックスは、直接及び/又は吸引ロールを介し、ポケットの外側にあり負圧を生成させる手段に接続することができる。なお吸引ロールは、乾燥シリンダ間に位置しウェブの走行方向を向き直す。吸引ボックスとワイヤ間の間隙は、可撓性の又は偏向用のメカニカル・シーリング・レッジ(ledge)または吐出ノズルによってシールすることができる。
【0049】
本発明による過負圧のある分離したサブ領域は、また、送風装置を備えた他の多種の負圧領域に形成することができる。送風装置は、シングル・ワイヤ・ランまたはツイン・ワイヤ・ランを有する乾燥セクションにおいて、ワイヤ・ランの一部をカバーする送風ボックスとすることができる。あるいは、例えば抄紙機で、ある別のワイヤ・ランまたはフェルトをカバーする送風ボックスとすることができる。このときのワイヤ・ラン又はフェルトでは、ウェブがロールから解放され及び/若しくは負圧でワイヤに付加されてあり、そして過負圧を有する低負圧領域(負圧がより低い領域)が従来の負圧に加えて必要となる。
【0050】
もちろん、複数のスロットル手段、例えばメカニカル・シール、流入防止プレートまたは吐出ノズルを、ボックスとワイヤ・ラン間の負圧領域を二つ以上の異なる領域に分割するために用いることが可能である。千鳥状の負圧を有する、連続した数個の負圧領域を形成できる。
【0051】
実際の送風装置は、単一の簡素な構造から成る、即ち、複数のボックス構成要素で形成することができる。ボックスの構成要素間に、例えばエアを負圧領域から他の領域または外部に運び出すために、エア・チャンネルを設けることができる。
【0052】
負圧を生成するノズルは、簡単なギャップ・ノズルとすることができる。このノズルは、そこから流出したエアが負圧領域に入り込まないように設け、及び/又はボックスとワイヤ間の所望の点で吐出効果を発生させる。特殊なノズルを送風ボックスで有利に使用することができる。そのようなノズルは、弾性的にまたは回転自在に装着したノズルであって、必要なときに、例えば紙の塊りがワイヤを押してノズルの衝突する場合に、自由にワイヤから遠ざけて、ワイヤを破断しないようにする。
【0053】
エアを過負圧領域から外に導き出すために、本発明は、凸面を有効に利用しており、その凸面のコアンダ効果を用いて、エアを、制御した状態で所望の方向に、過負圧領域の外部にも導くことができる。コアンダ効果を利用した面により、過負圧領域から放出されたエアを、低負圧領域を通りエア放出口に向け、またはその放出口を通り、そこから、エアを、更に吐出または吸引を利用して所望の空間に放出することが出来る。
【0054】
過負圧領域において本発明の解法に従い生成した負圧は、更に、この領域に吸引発生手段を設けることにより強化することができる。吸引は、過負圧領域に接続され、例えば吸引チャンネルを介し吸引発生手段と連通した吸引口を、送風ボックス内に形成することによって生成できる。負圧レベルは、送風ボックスに配置され吸気を生成する手段によって、簡単に制御することができる。ボックスの吐出ノズルは個別に制御することは必要なく、これらは送風を生成する共通の手段に接続する。
【0055】
スロットル手段が、それ自身が能動的に及び制御可能に負圧を増大しない機械的な限定手段である場合に、特に、吸気は有効に利用できる。しかしながら、吸気は付加的なものとして、また他の場合には負圧も制御するために使用することができる。紙くずが負圧領域に入って吸引チャンネルに達することを防ぐために、吸引口の前に、ネットなどを設けることは有益である。
【0056】
吸引ボックスの場合と対照的に、ワイヤとボックス間で過負圧領域を画成する手段の位置で送風が行われる場合は、吸引を本発明に従う送風ボックスの解法と結合して使用するときは、ボックスとワイヤは相互に接触しない。
【0057】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を、添付の図面を参照に、更に詳細に述べる。
【0058】
図2はウェブに作用する力F、及び、二つの乾燥シリンダ10,12間に形成されるポケット、ターン・ロール14、ウェブ16及びワイヤ18間に形成されるポケット20において、力Fを補償する負圧Pの概要を示す図である。図2の場合では、ターン・ロールは穿孔されたまたは溝の付いた吸引ロールとすることができる。この吸引ロールには、負圧が、ロールの端部の軸を介し供給される。負圧は、また、ポケット空間に近接した周辺セクタを介し、ターン・ロールに供給することもできる。ターン・ロールは滑らかな表面または溝のついた表面を有することができる。紙ウェブ16は、ワイヤ18によって支持されながら屈曲して、シリンダ10,12を交互に及びターン・ロール14を交互に走行し、その結果、シリンダとターン・ロール間にポケット20が形成される。
【0059】
ワイヤ18は、いわゆる入力開ニップ22において、最初のシリンダ10の外面から解放され(外され)、ターン・ロール14の方へ走行する。その結果、最初のシリンダとターン・ロール間に、いわゆる入力ワイヤ・ラン24が形成される。これに対応し、ワイヤは、いわゆる出力ワイヤ・ラン26として、ターン・ロールから第2の乾燥シリンダ12に向け走行し、閉ニップ28を通過して第2のシリンダを走行する。
【0060】
ポケットの入力側では、開ニップ22及び閉ニップ22’において、ウェブをポケットの外側のワイヤから解放するピーク力F1及びF2が形成される。F1は実質的にF2より大きい。これらの力の間に、非常に小さい解放力F3がウェブに作用する。ターン・ロール14では、遠心力Fcがウェブをロールの周面から解放しようとする。ポケットの出力側においては、開ニップ28’と閉ニップ28で、ウェブを保持するピーク力F4、F5が形成される。
【0061】
送風ボックスまたは吸引ボックスはウェブを解放する力を補償するためポケット内に設置される。このボックスは、ウェブの外面に、ウェブを解放する力を補償する負圧を作用させる。開ニップ22では、負圧がPnipである過負圧領域Anipを設け、ポケットの他の領域では、負圧がPpocketである、低負圧領域Apocketを設ける。負圧Prollの吸引手段はターン・ロール内に設ける。
【0062】
ポケットの入力側の開ニップで形成されウェブを解放する力F1が、例えば、点線で図示するように、異なる走行パラメータによって変化するときは、過負圧Pnipは、これ対応して、値Pnip'に制御されて、変化した力F1'を補償する、
図3は、二つのシリンダ10,12間のポケット20で所望の負圧レベルを維持するための、例示的な一解法を示す。図3は図2と同じ参照符号を使用している。
【0063】
図3の場合は、ウェブの上に延在する送風ボックス30をポケット内に装備することによって、ボックスの一側面32が入力ワイヤ・ラン24とともに、比較的狭い間隙34を形成し、その間隙内で送風ボックスが負圧を生成する。送風ボックスの側面32の上位部分には、ボックス30からワイヤの方に突出するがワイヤに接触しない吐出送風ノズル36を設ける。送風ノズル36は、開ニップ22の上方にあるボックス内に、例えば、大概ワイヤの走行方向とは反対方向にノズルの間隙38からエアを放出するように、また、ワイヤ18とシリンダ10間の実際の解放点40より上方のポイント、すなわちワイヤの走行方向にについて解放点より前のポイントで、エアが放出されるように設置する。ノズル36から放出されたエアは、ワイヤとともに運ばれるエアがボックス30とワイヤ間の間隙34に入るのを防止し、更に、その内部で負圧を生成する間隙からエアを追い出す。ノズル36は、ノズルをワイヤの方に適切に押し付けるスプリング42により、ボックスに固定される。しかし、例えば、紙の塊りがワイヤとシリンダ間のノズルを通過する際には、ノズルがボックスの方に押されるように固定される。ノズル36は、放出された空気流を導くそれ自体知られたコアンダ表面で構成するのであれば有利である。
【0064】
送風ボックス30の他端、即ち、下方の端部には、第2のノズル、即ち簡単な間隙状のノズル44を形成する。このノズルはエア・ジェットを有する。このエア・ジェットはターン・ロールの回転方向とは反対に向けられ、そのため、エアがターン・ロールを通過しこのロール14とワイヤ18間の閉ニップの方に行くのを防止する。ノズルの送風は、また、ボックスとワイヤ間の間隙からエアを追い出すことができる。多くの乾燥セクションでは、吸引ロール、例えば出願人のVac(真空)ロールがターン・ロールとして用いられる。これは図示の矢印に示すようにポケット領域からエアを吸引する。
【0065】
更に、第2のシリンダ12の閉ニップ28に近接する送風ボックス30内で、閉ニップの若干後ろ、即ち、ワイヤが既にシリンダに付着したポイントに、第2の吐出ノズル46を設ける。この第2のノズルのエア・ジェットはポケットから外に、概ねワイヤの走行方向に向けられる。このエア・ジェットはエアがノズルとワイヤの間隙を通して負圧ポケットに入り込むのを阻止する。このようにして、負圧はポケット全体で維持される。
【0066】
更に、必要なときには、送風ボックス内に、例えばノズル44の上方に、いわゆるドロップ・ノズル(図示せず)を装着することができる。これはエア・ジェットを直接ウェブに向け吹き出すことにより、ウェブ16がスレッディング段階の初期でワイヤ18に追従してターン・ロールに行くのを阻止する。ドロップ・ノズルはウェブをシリンダ10の下方のドクタ・ブレード11の方に移動させる。これによってドクター・ブレードがウェブを下方、例えばマシンの下にあるパルパ等に案内する。
【0067】
本発明によれば、ボックス内で、第1のノズル36から若干離れた所にスロットル手段50を設ける。スロットル手段はボックス30とワイヤ18間の間隙34を二つのセクションに分割する。セクション34’は過負圧を有し、他のセクション34”はより低い負圧を有する。図3の場合は、スロットル手段はメカニカル・シールであって、セクション34”からセクション34’への空気流を阻止し、または少なくとも減じる。図3の場合、吐出ノズル36を、ポケット20の小部分34’からエアを除くために設ける。これによって、ポケットの他の部分の負圧と比較して、この小部分には、比較的容易に、非常に高い負圧をも発生する。望む場合は、スロットル手段50として別の吐出ノズルを設け、積極的にエアをウェブの走行方向に移す。そのため、このノズルは過負圧領域34’での負圧の生成に助力する。
【0068】
そこで、図3に示す場合では、この領域のボックスとワイヤ間の間隙を、より小さい負圧を有する他の領域から孤立化することによって、ワイヤの解放点40の負圧を増大することができる。弾性のスロットル手段又はボックスに弾性的に固定されたスロットル手段は、ボックス内で、ワイヤに非常に近く、ワイヤから10mm未満までも接近するように突出する。そのため、負圧領域34’をその他の周辺の空間から効果的に分離する。更に、ワイヤからノズルまでの距離が短く(20mm未満あるいは10mm未満でも)、かつ、このノズルからのエアジェットが充分である場合には、開ニップにおいて、多くの走行要件に対し充分な負圧が、他に何らのアクションなしに得ることができる。ポケットの他の部分では、これらの領域では充分な、実質的に低いレベルの負圧を保持することができる。こうしてワイヤの屈曲は避けられ、これにより走行性は改善される。
【0069】
セクション34’における過負圧は、主にワイヤの解放点40で、ウェブがシリンダ10の表面から解放されるのを助力し、ウェブをワイヤに確実に付着させる。セクション34”のより小さな負圧は、既にシリンダから解放され更にターン・ロールまでワイヤに付着されたウェブを保持するのに充分である。典型的には、ウェブをターン・ロールの表面に付着・保持するために、吸引手段をターン・ロールに設ける。この吸引手段はまたポケット内で効果を持つ。第2の吐出ノズル46は、ボックスと第2の乾燥シリンダ間の間隙をシールし、ポケット内に負圧を確保し、また、ウェブが閉ニップ28でポーチ(pouch)を形成しないことを保証する。本発明の解法では、間隙34’を除くポケットの他の部分では比較的低い負圧、典型的には、200乃至300Paで充分である。
【0070】
図3に示す解法においては、送風ボックスは比較的狭く、ポケットの一部だけを占有するにすぎない。ターン・ロールとボックス間には、比較的大きな空間が残る。望む場合は、送風ボックスの構造をポケットのほとんど全空間を占有するほどに大きくし、小さな間隙のみがボックス30の低位部分とターン・ロール間に残るようにすることができる。この場合には、ノズル44はボックスの下端部で、閉ニップの側、即ち通過するウェブ26の側に設けることができる。
【0071】
共通の送風エアの供給、または各ノズルで個別に制御されたエアの供給をボックス30の送風ノズルに対し設けてもよい。ノズル36がそれ自身で供給できる場合は、過負圧のレベルは、このノズルで個別に制御することができる。本発明によれば、エアの供給は、負圧を制御しようとする走行パラメータに依存するようにアレンジすることができる。
【0072】
本発明の解法では、更に必要であるならば、ノズル36とスロットル手段50の間に、吸引チャンネル52、例えばウェブ全体を横切って延びる間隙に接続した吸引口54を形成することができる。この間隙によって、間隙34’を介しより多くのエアを過負圧領域から取り除くことができる。
【0073】
紙くずが吸引チャンネルに達するのを防止するため、吸引口の前にネットなどを設けることは有益である。吸引チャンネルは、ウェブ・ブレイク(断紙)が生じたときにエアを間隙34’内に吹き出して間隙を清掃するため、送風機に接続できるように形成することができる。
【0074】
吸引動作は送風ノズル36によって可能となる。このノズルは、支持ファブリック及びウェブが吸引されてボックスに近づきすぎるのを阻止する。送風は支持ファブリックがボックスの構成物に接触するのを防ぐ。
【0075】
本発明の解法によれば、過負圧領域の負圧のレベルは、上述した方法に加え、またはこれに替えて、様々な方法で制御することができる。例えば、負圧レベルは、吸引口54を通るエアの放出を調整することによって制御できる。それから吐出ノズルから吹き出す空気流を一定に保持することもできる。他方、ウェブ24と、ノズル36のコアンダ表面及び/又はスロットル手段50との距離を調整することによって、あるいは、例えば吐出ノズル36から吹き出すエアの量を調整することによって、負圧を制御することができる。
【0076】
図4では、本発明の解法がツイン・ワイヤ・ランを備えた乾燥セクションに適用されている。上位のワイヤ18は巻装されて最初の乾燥シリンダ10からターン・ロール14を介し第2のシリンダ12まで通過する。こうして、シリンダ間にワイヤとターン・ロールによって画成されたポケット20が形成される。このポケットでは、大概、図3のそれと同様の送風ボックス30が配置され、吐出ノズル36とスロットル50がワイヤの解放点46で過負圧領域を画成する。第2の送風ノズル46は、また、漏れたエアがポケットの空間に流入するのを阻止するために送風ボックス内に設置される。
【0077】
図4に示す乾燥セクションにおいて、本発明に従う対応の送風ボックスを、下位のワイヤ・ランの領域に設け、下方の乾燥シリンダ10’からウェブ16が解放されて下位のワイヤ18’上の短い距離を走行できるようにすることができる。
【0078】
図5は図3の変形である。図3と同じ参照符号は、それが適用可能であるときは、図5においても使用している。図5のボックス30は、その下位部分が広がってターン・ロール14の周辺部の大部分を覆っている。そこで、ターン・ロールの周辺部とボックスの下位の面との間に狭い間隙が形成される。図5の場合、ウェブの入力側で、ターン・ロールに沿って間隙31から間隙34をエアが通過するのは、間隙31の始端に設けたシーリング・レッジ33によって阻止される。ボックスは、ターン・ロール14とワイヤ24間の閉ニップに、図3のエア・ブロウ44(ノズル)を備えていない。図5の場合は、ボックス30と第2のシリンダ12間の吐出ノズルも必要ない。出力側ワイヤ・ラン26とボックス30間の間隙37は上方が広がっており、これにより間隙に入ったエアは間隙から容易に除去される。図5の場合は、ロール14はエアを間隙34,31,37から吸引する吸引ロールである。
【0079】
図6は、図3及び図5の変形を示す。送風ボックス30がポケット20の大部分を覆う。ボックスの第1の面が、過負圧領域34’を、乾燥シリンダ10とワイヤ間の解放点に形成する。送風ボックスは、過負圧領域に向けた吸引装置を有する別の吸引ボックス30”を備える。
【0080】
更に、ボックスの第2の面は、第2のシリンダ12とワイヤ間の係合点に非常に接近して延びる。ボックスの壁面と出力側のワイヤ・ラン26間には狭い間隙だけが残る。このため、間隙はポケットの外側からエアが流入するのを制限する。そこで、所望の負圧がポケット内に維持される。
【0081】
図7は、また、図3の変形である。以前の図と同じ参照符号は、それが適用可能であれば、図7に使用される。図7のボックス30は図3のボックスより小型であり、第2の乾燥シリンダ12まで延びていない。このようなボックスは、ボックスによって供給される負圧がターン・ロール14と第2の乾燥シリンダ間のワイヤ・ラン26で負圧が必要でない場合に使用することができる。ボックス30のノズル36,44は、互いに異なる送風チャンネル30’a、30’bに接続され、別々に制御可能である。弾性のスロットル手段50は、負圧領域を二つのセクション34’、34”に分割し、そのセクションでそれぞれ異なる負圧レベルが維持される。
【0082】
図8は、図3の更に別の変形である。以前の図と同じ参照符号は、それが適用可能であれば、図8に使用される。図8では、大概、ポケット全体のサイズを持った吸引ボックス60が、ポケット空間20に設置される。狭い間隙62,62’は吸引ボックスとワイヤ・ラン間に形成される。開口66を有する吸引ボックスの下位部分は、ターン・ロールの形状に従うように屈曲されており、そのため吸引ボックスとロール間に狭い空間68が残る。その空間の端部はメカニカルな手段70,70’によってシールされる。吸引ボックスの表面は解放、例えば穿孔されており、このため吸引ボックスがターン・ロールで負圧を生成することができる。ターン・ロールはワイヤ・ランと吸引ボックス間の間隙62,62’からエアを吸引し、その間隙に、ウェブの走行に対し必要な負圧を生成する。
【0083】
過負圧領域は、入力側の間隙62の上方部分に、その上端部63をシール手段72,72’で間隙から隔離することによって、及びこの上端部を吸引口74に接続することによって、形成する。開口は、放出チャンネル76を介し、別々に制御された放出ブロワ75に接続する。間隙63から放出された空気流を制御することによって、それぞれの状況に対し最適なレベルの過負圧を、ワイヤの解放点の領域に生成することができる。そこで、この制御された負圧レベルがウェブを乾燥シリンダからターン・ロールに導く。
【0084】
もちろん、エアを間隙62から追い出すために、図3に示された送風ノズルを吸引ボックスに接続することも考えられる。
【0085】
図9は、図3のもう一つの変形を示す。図9においては、ボックスは数個のセクションからなる。そこには、二つの加圧ボックスセクション30’a、30’bと、ひとつの負圧ボックスセクション30”が在る。これらのボックスは、ターン・ロール14からある距離をおいて、主として、一方が第1の乾燥シリンダ10とワイヤ18間の解放点40であり、他方が第2の乾燥シリンダ12とワイヤ間の係合点40’である双方の間に設ける。
【0086】
ボックスは、主として、ポケットの上位部分だけを占有する。負圧はロール14の吸引効果によって、また付加的に、送風ボックス内に設けた吐出ノズル36,46によって生成される。これによって、吐出ノズルはエアをポケットから除去し、または少なくともエアがポケットに入り込むのを阻止する。
【0087】
過負圧は、過負圧領域34’で吐出ノズル50によって生成される。吐出ノズルは、送風ボックスの下位セクション30’bで、ワイヤに近接して、かつワイヤの走行方向の、解放点40から少し離れた箇所に設ける。エアはワイヤとボックス間の間隙34’からポケットの下位部分に追い出される。間隙34’から吐出ノズルによって除去されたエアの量は少なく、ボックスより下のポケットの負圧レベルに、著しくに影響を与えるものではない。エアは、吐出により二つの方向で、過負圧領域から除去することができる。これに加えて、あるいは替えて、エアは、吸引ボックス30”に形成された吸引口54及び制御プレートを備えた放出チャンネル52を通して放出することが出来る。もし吸引のみによってエアを放出することを望むのであれば、吐出ノズルはシール手段に置き換えることができる。
【0088】
更に、図9は制御プレート80’、82’を備えたチャンネル80,82を示す。ブロワ84により、エアが、これらのチャンネルを通して、過負圧領域の境界で吐出ノズル36,50に接続された送風ボックスセクション30’a、30’b内に吹き込まれる。本発明によれば、過負圧領域の負圧は図9に示す制御プレート52’、80’、82’によって制御することができる。そのため、負圧は優勢な(または一般の)走行状況に関し所望の大きさを有する。
【0089】
最後に図10は、図3の更に一つの変形を示す。吐出ノズル50は、図10の送風ボックス内で、過負圧領域の低端部に設ける。そのため吐出ノズルがエアを領域34’から放出する。領域34’から吐出したエアは、ボックス30のより下位にあるセクションに設けたチャンネル86によって、ボックス30と第2の乾燥セクション12間の間隙を通じポケットから外に向けられる。チャンネル86の入力側の開口88は過負圧領域を去った空気流に対し開けられている。更に、チャンネル86は下方に屈曲するように形成され、そのためほとんどターン・ロール14の表面にまで延びるている。これによってチャンネル86とロール14間に狭い空間90が形成される。この空間は、空気流がターン・ロールの回転方向をポケットの出力側20”から入力側20’に流れるのを制限する。
【0090】
図11は、例として、マシンの異なる速度に対する、良好な走行性を可能とする負圧の限度(範囲)を示すグラフである。曲線aは、走行条件が良好な場合であって、良好な走行性を得るために比較的小さな一定の負圧が必要である場合を示す。曲線bは、走行条件が悪く、しかし良好な走行性を得るには比較的高い負圧が有効である場合を示す。曲線b’は、ある走行条件が良好だがある走行条件が悪い場合であって、悪い条件にもかかわらず、適当に過負圧が良好な走行性をもたらす場合を示す。もし走行条件が非常に悪くても、ある場合には、それはどちらの条件が悪いかに依存するが、曲線bより下でも負圧を増大することによって良好な走行性を得ることが可能である。しかし、これは全ての場合に当てはまらない。多くの場合は、走行条件は、負圧が曲線aとbとの間のどこかに制御されなければならない類のものである。
【0091】
過負圧領域では、負圧は、測定されたまたは何か別の方法で決定された可変パラメータ、例えば、速度、乾燥固定分、ドローの差、またはウェブの張力などに従う制御手段によって制御される。制御の必要性を観察するための、及び正しい制御レベルを設定するための測定情報は、例えばプロセス情報から制御装置に与えることができる。他方、制御の必要性は、視覚的点検によって観察することができる。例えば、低下したウェブの張力は、しばしば視覚的点検によって検知できる。
【0092】
本発明によれば、負圧レベルは、例えば、プレスで、所望のドローの差、例えば3%が得られるように制御することができる。これにより、紙の特性は、更なるプロセスの必要性に従い最適化することができる。
【0093】
本発明は上述した例示的な実施例に限定されずに、特許請求の範囲に記載の請求項によって規定された範囲内で、広く適用可能であることが意図されている。本発明は乾燥セクションにおける走行性の改良にだけ関係するように限定することを意図していない。本発明では、また、他の目的に適用すること、例えばウェブをプレスから乾燥セクションに導く際に適用することができる。
【0094】
過負圧領域は、ウェブを横切って、あるいはそのウェブの横断方向をウェブの一部に亘って延びることができる。過負圧領域は、例えば、ウェブの端部領域にのみ、あるいはスレッディング領域の前方にのみ設けることができる。走行条件に従う過負圧領域での負圧の制御に加えて、ウェブの横断方向のウェブの異なる位置で別個に負圧を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ・ポケット領域のウェブに作用する力の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の解法によって生成した負圧と、図1に示すような、ポケットで発生する力に逆らう力を生成する負圧とを対応させて示す説明図である。
【図3】シングル・ワイヤ・ランを持つ抄紙機の乾燥セクションにおける二つの乾燥シリンダ間のポケットを示す縦断面図である(これによって、本発明に従う制御可能の過負圧レベルを有する送風ボックスが、このポケットに配置される)。
【図4】ツイン・ワイヤ・ランを持つ乾燥セクションにおいて、図3の解法を示す断面図である。
【図5】図3の別の態様を示す断面図である。
【図6】図3の別の態様を示す断面図である。
【図7】図3の別の態様を示す断面図である。
【図8】制御可能の負圧レベルを有する吸引ボックスがポケットに設置された場合に、図3に従う解法を示す断面図である。
【図9】図3の別の態様を示す断面図である。
【図10】図3の別の態様を示す断面図である。
【図11】マシンの速度が、必要とされる負圧にどのようにに依存するかを示すグラフである。
Claims (21)
- ウェブが、支持ファブリックによって支持されて、シリンダ上をそのシリンダと前記支持ファブリック間で搬送され、
前記支持ファブリックによって支持されて、前記ウェブが前記シリンダと前記支持ファブリック間の開ニップからロールに向けて案内され、
前記開ニップから前記ロールに向けた前記ウェブの走行が前記ウェブと反対の前記支持ファブリックの側で生成される負圧によって支持され、
前記支持ファブリックと前記シリンダ間の解放点の周辺の負圧が、前記解放点から離れた箇所の低負圧領域の負圧よりも高い、抄紙機の乾燥セクションにおける方法において、
前記解放点の周辺から前記低負圧領域に亘る領域を、前記解放点の周辺の第1の領域と前記低負圧領域の第2の領域に分割して、前記第1の領域の負圧を増大させて過負圧領域にし、
過負圧Pnipが、前記過負圧領域において前記ウェブの走行性に及ぼすところの、可変のまたは走行中変化する一つまたは複数のパラメータに従って制御され、その結果、前記シリンダと前記ロール間で所望の走行性が維持されることを特徴とし、
かかるパラメータは、
前記ウェブの速度、
前記ウェブの固形分(含有量)、
使用されるパルプの組成(成分)、
前記ウェブの坪量、
前記ウエブの張力、
前記ウェブに作用するドロー、及び
前記シリンダの温度、
から成る群から選択される方法。 - 請求項1に記載の方法において、前記支持ファブリックはワイヤまたはフェルトであることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記ウェブが搬送される前記シリンダは乾燥シリンダ又はロールであることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記ウェブが案内されて向かう前記ロールは吸引ロール、ターン・ロール、ワイヤ・ガイド・ロール、又は第2のシリンダであることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記過負圧領域の過負圧Pnipが、500Paより大きく20000Pa以下、また前記低負圧領域の負圧Pwireは10乃至700Paであることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記過負圧領域が、ウェブの走行方向に、前記支持ファブリックと前記シリンダ間の前記解放点から、300mmまで延在することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記過負圧領域が、前記ウェブの走行方向に逆らって、前記支持ファブリックと前記シリンダ間の解放点から、300mmまで延在することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記乾燥セクションで、前記ウェブの乾燥固形分が65%以下であるとき、前記ウェブの走行が、前記開ニップで形成された前記過負圧Pnipによって支持されることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記過負圧領域において、前記ウェブの乾燥固形分の含有量が高ければそれだけ低い負圧によって、前記ウェブの走行が支持されることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記過負圧領域において、前記ウェブの強度が低ければそれだけ高い負圧によって、前記ウェブの走行が支持されることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、全幅でスレッディングを用いる前記乾燥セクションの始端で、各乾燥シリンダの開ニップで発生する前記過負圧Pnipによって、前記ウェブの走行が前記乾燥セクションで支持されることを特徴とする方法。
- 請求項11に記載の方法において、前記過負圧領域の過負圧が、通常の走行またはウェブ・ブレイクの間よりも全幅でのスレッディングの間に使用されることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、パルプから形成したウェブの乾燥が行われている前記乾燥セクションにおける各乾燥シリンダの前記開ニップで発生する過負圧によって、前記ウェブの走行が支持されることを特徴とする方法。
- 乾燥セクションは、ウェブの走行を向き直すために、シリンダを少なくとも一つと、支持ファブリックと、ロールを有しており、
前記装置は、前記支持ファブリックによって支持された前記ウェブを、前記シリンダ上を、そのシリンダと前記支持ファブリック間で搬送する手段と、
前記支持ファブリックによって支持されているときに、前記ウェブを前記シリンダと前記支持ファブリック間の開ニップから、ロールに向けて案内する手段と、
前記ウェブが前記開ニップから前記ロールに通過するとき、前記ウェブの走行を、前記ウエブと反対の前記支持ファブリックの側で支持する負圧を生成する手段とからなり、
該手段が、
前記支持ファブリックと前記シリンダ間の解放点の周辺の区域をカバーする部分に高負圧を、また前記解放点から離れた領域に低負圧を生成する、抄紙機の乾燥セクションにおける装置において、
前記高負圧から前記低負圧に亘る負圧の領域を、前記解放点の周辺の第1の領域と前記解放点から離れた第2の領域に分割する手段を有し、該手段が前記第1の領域の負圧を増大して過負圧領域にし、
前記装置が、さらに、過負圧P nip を、前記過負圧領域で前記ウェブの走行性に及ぼすところの、可変のまたは走行中変化する一つまたは複数のパラメータに従って制御し、その結果、前記シリンダと前記ロール間で所望の走行性を維持することを特徴とし、
かかるパラメータは、
前記ウェブの速度、
前記ウェブの固形分(含有量)、
使用されるパルプの組成(成分)、
前記ウェブの坪量、
前記ウエブの張力、
前記ウェブに作用するドロー、及び
シリンダの温度、
から成る群から選択される装置。 - 請求項14に記載の装置において、前記支持ファブリックはワイヤまたはフェルトであることを特徴とする装置。
- 請求項14に記載の装置において、前記ウェブが搬送される前記シリンダは乾燥シリンダ又はロールであることを特徴とする装置。
- 請求項14に記載の装置において、前記過負圧領域の過負圧が、500Paより大きく20000Pa以下であることを特徴とする装置。
- 請求項14に記載の装置において、前記過負圧領域が、前記ウェブの走行方向を、前記支持ファブリックと前記シリンダ間の解放点から、300mmまで延在し、また、ウェブの走行方向に逆らって、300mmまで延在することを特徴とする装置。
- 請求項14に記載の装置において、前記制御手段が、測定によって得られた速度に従い、前記過負圧領域の過負圧を制御する手段を有する装置。
- 請求項14に記載の装置において、前記制御手段が、測定によって得られた乾燥固形物(含有量)に従い、前記過負圧領域の過負圧を制御する手段を有する装置。
- 請求項14に記載の装置において、該装置が、シングル・ワイヤ・ランまたはツイン・ワイヤ・ランを備えた抄紙機の乾燥セクションに設置されたことを特徴とする装置。
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