JP3785143B2 - 冷凍機用蒸発器及び冷凍装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被冷却物（例えば水、ブライン等）と冷媒との間で熱交換を行って該被冷却物を冷却する冷凍機用蒸発器及びそれを用いた冷凍装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、ビルのような大規模構造物においては、冷凍機で冷却した冷水を該構造物内に布設した配管を通じて循環させ、この配管を循環する冷水と上記構築物の各スペースの空気との間の熱交換によって該スペースの冷房を行うようにしている。
図８は、冷凍機に具備される蒸発器の一例を示している。この蒸発器では、冷媒が導入される円筒形の容器１の中に、冷水を流通させる多数の伝熱管２が束状にかつ千鳥状に配列設置されている。
【０００３】
伝熱管２は、冷水入口３に連通する往路側の管と冷水出口４に連通する復路側の管とに別れている。冷水入口３から流入した冷水は、容器１内を通り水室（図示略）に至って折り返し、再び容器１内を通って冷水出口４から流出する。この過程において、冷水は容器１に導入された冷媒との間の熱交換によって冷却され、また冷媒は冷水から熱を受け取って沸騰し、気化する。
なお、気化した冷媒蒸気は、図示していない圧縮機で圧縮された後、凝縮機に送り込まれる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記蒸発器では、伝熱管のまわりで沸騰した冷媒の蒸気が吹き上げられるが、このとき、この蒸気の吹き上がり力によって冷媒の液滴も吹き上げられる。このため、従来、上記吹き上げられた冷媒の液滴の一部を上記圧縮機が吸入して、該圧縮機の性能低下やインペラの損傷を発生することがあった。
なお、上記沸騰によって発生する冷媒の気泡の通路として、伝熱管の束の中に上下に沿う抜き列（伝熱管が存在しない空隙）を形成することが試みられているが、この場合、上記抜き列の上方からの冷媒蒸気の吹き上げエネルギーが高くなる。
【０００５】
本発明の課題は、このような状況に鑑み、冷媒の液滴の吹き上がりを防止することができる冷凍機用蒸発器及びそれを用いた冷凍装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷媒が導入される容器の中に、被冷却物が流通する多数の伝熱管を配設した冷凍機用蒸発器であって、前記伝熱管の上方に吹上防止部材を配設し、前記冷媒の沸騰に伴って吹き上げられる該冷媒の液滴を前記吹上防止部材に衝突させるようにしている。
本発明の一実施例では、前記伝熱管を複数の管群に分けて、それらの管群をそれら間に上下方向に沿った空間が形成されるように配置し、前記吹上防止部材を前記空間の上方に配設するようにしている。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材と、前記伝熱管の内の最上段の伝熱管とのなす距離を、前記伝熱管の径の０．５〜２倍に設定している。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材が略逆Ｖ、Ｕ、Ｗ字状等の断面を有し、この吹上防止部材の頂角を６０°〜１２０°に設定している。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材の端部によって隣接する最上段の伝熱管の少なくとも一部、好ましくは半分または全部を覆うようにしている。
本発明の一実施例では、前記管群の内の前記容器の内周面側に位置した管群を、前記内面との間に該内周面に沿った空間が形成されるように配置し、前記吹上防止部材を前記該空間の上方に配設している。
また本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機において圧縮された前記冷媒を凝縮、液化する凝縮器と、前記液化された冷媒を減圧する絞り機構と、前記凝縮及び減圧された液冷媒と被冷却物との間で熱交換を行わせて該被冷却物を冷却するとともに、前記液冷媒を蒸発、気化させる蒸発器とを具備してなる冷凍装置であって、前記蒸発器として上記の何れかに記載の蒸発器が用いられている。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る冷凍機用蒸発器の実施形態について説明する。
図１は、本発明の一実施例における冷凍機の概略構成を示している。この冷凍機は、冷却水と気体状の冷媒との間で熱交換を行わせて冷媒を凝縮、液化する凝縮器１０と、凝縮された冷媒を減圧する膨張弁（絞り弁）１１と、凝縮された冷媒と冷水（被冷却物）との間で熱交換を行わせて該冷水を冷却する蒸発器１２と、蒸発器１２で蒸発、気化した冷媒を圧縮した後に上記凝縮器１０に供給する圧縮機１３とを備えている。なお、上記蒸発器１２において冷却された冷水は、ビルの空調等に利用される。
【０００８】
図２は、図１のＩＩ−ＩＩ断面図である。この図２に示すように、蒸発器１２は、冷媒が導入される円筒形の容器１４と、この容器１４の中に束状に配設した多数の伝熱管１５とを備えている。
伝熱管１５は、被冷却物である冷水を流通させるものであり、容器１４の長手方向（図２の紙面に垂直な方向）に沿って配設されている。伝熱管１５は、図１に示す冷水入口１６ａに連通する往路側のものと、冷水出口１６ｂに連通する復路側のものとに別れており、冷水入口１６ａに連通する伝熱管１５での冷水の流通方向と冷水出口１６ｂに連通する伝熱管１５での冷水の流通方向とでは冷水の流れる方向が異なる。
【０００９】
伝熱管１５は、容器１４内の下半部において複数の群、例えば、４つの群Ａ〜Ｄに分けられている。各管群Ａ〜Ｄ間には、上下方向に沿う空間１７が形成され、また、管群Ａと容器１４の内周面との間および管群Ｄと容器１４の内周面との間には、該内周面に沿った空間１８がそれぞれ形成されている。なお、上記空間１７、１８は、本来はそこに配列する伝熱管１５を抜いて形成したものであるから、以下、抜き列という。
【００１０】
上記各抜き列１７上には、略逆Ｖ字状の断面を有した吹上防止板１９がそれぞれ配設され、また、上記各抜き列１８上には、平板状の吹上防止板２０が水平方向に配設されている。吹上防止板１９及び２０の形状は特に限定されるものではなく、略逆Ｕ字、略逆Ｗ字、等、適宜使用することができる。
【００１１】
図３に拡大して示すように、この実施形態における吹上防止板１９は、その頂角θが６０°〜１２０°に設定されている。そして、左右の端部がそれぞれ隣接する最上段の伝熱管１５の少なくとも一部、好ましくは半部または全部を覆うように、また、左右の縁端が対応する伝熱管１５から該伝熱管１５の直径Ｄの０．５〜２倍だけ上方に位置されるように配設されている。
一方、吹上防止板２０は、図４に拡大して示すように、その先端が隣接する最上段の伝熱管１５の少なくとも一部を覆い、かつ、その先端が対応する伝熱管１５から該伝熱管１５の直径Ｄの０．５〜２倍だけ上方に位置する態様で配設されている。
なお、上記実施形態では、抜き列からの上昇流を防止するため、吹上防止板２０の先端部を下方に折り曲げてあるが、この吹上防止板２０として平板状のものを使用しても何ら不都合は生じない。
【００１２】
上記管群Ａ〜Ｄにおける伝熱管１５の配列本数は、例えば、５００本程度に設定される。また、各管群Ａ〜Ｄの伝熱管１５は、千鳥状に配列している。すなわち、上下段の伝熱管１５が横方向にその配列間隔の１／２だけオフセットする態様で配列している。
【００１３】
上記のように構成された蒸発器１２においては、容器１４の下部から冷媒が導入される。この冷媒は、伝熱管１５を流通する冷水との熱交換によって沸騰するので、各管群Ａ〜Ｄの比較的下方に位置した伝熱管１５のまわりで発生した蒸気が上記抜き列１７、１８を抜けて浮上することになる。
この蒸気は、冷媒の液滴を伴いながら抜き列の上方に向かって勢い良く吹き出すことになるが、上記吹上防止板１９、２０に衝突するため、その上昇エネルギーが大きく減少される。
【００１４】
この結果、容器１４の上方からは、気化した冷媒の蒸気のみがデミスタ２１を介して流出することになる。つまり、図１に示した圧縮機１３に冷媒の液滴が供給されることが防止される。なお、上記冷媒の蒸気は、圧縮機１３に吸入されて圧縮される。
このように、この実施形態に係る蒸発器によれば、容器１４の上方に冷媒の液滴が吹き上がるのを吹上防止板１９、２０が阻止するので、冷媒の液滴を圧縮機１３が吸い込むことがなく、したがって、該液滴の吸入に起因する圧縮機１３の性能低下やインペラの損傷等を防止することができる。
【００１５】
上記実施形態では、吹上防止板１９を抜き列１７、１８の上方のみに配設しているが、上記液滴の吹上げ現象は、各管群Ａ〜Ｄ内の伝熱管１５間を上昇する冷媒の気泡によっても発生する虞がある。そこで、図５に示すように、吹上防止板１９を各管群Ａ〜Ｄの上方全域に配設すれば、上記液滴が圧縮機１３側に流入するのをより確実に阻止することができる。
この例では、各吹上防止板１９の位置を上下にずらすとともに、隣接する吹上防止板１９の端部相互をラップさせるようにしているが、該吹上防止板１９をこれとは異なる態様で配置することも当然可能である。
【００１６】
上記実施形態の蒸発器１２では、各管群Ａ〜Ｄ中における気泡の存在量を減少させるために上記抜き列１７、１８を設けてあるが、液滴の吹上を防止するという本発明の技術は、この抜き列１７、１８を設けない構成の蒸発器に対しても有効に適用することができる。
なお、上記各管群Ａ〜Ｄにおいては、伝熱管１５を千鳥状に配列してあるが、これは、上方に向かって流れる冷媒液と伝熱管１５とのコンタクトをより促進して熱伝達率の向上を図るためである。
【００１７】
次に、上述した蒸発器を用いた本発明の一実施例における冷凍装置の全体構成を図６及び図７によって説明する。
図に示す冷凍装置は、上述の蒸発器１２と、蒸発器１２において気化された冷媒を圧縮する圧縮機１３と、圧縮機１３において圧縮された冷媒を凝縮、液化する凝縮器１０と、凝縮器１０において液化された冷媒を減圧する膨張弁（絞り弁）１１と、凝縮器１０において液化された冷媒を一時的に溜め置いて冷却する中間冷却器２５と、凝縮器１０において冷却された冷媒の一部を利用して圧縮機１３の潤滑油を冷却する油冷却器２６とを備えている。
【００１８】
また、圧縮機１３には、これを駆動するモータ（駆動機構）２７が連結されている。
凝縮器１０、絞り弁１１、蒸発器１２、圧縮機１３、及び中間冷却器２５は、冷媒を循環させる閉じた系を構成するべく主配管２８によって接続されている。
圧縮機１３には、２段式（多段式）の遠心圧縮機、いわゆるターボ圧縮機が採用されており、このターボ形圧縮機１３には、複数の羽根車２９が設けられ、これら羽根車２９の上流側の第１段羽根車２９ａで冷媒を圧縮し、その冷媒をさらに第２段羽根車２９ｂに導入してさらに圧縮したのち凝縮器１０に送出する。
【００１９】
凝縮器１０は、主凝縮器１０ａと補助凝縮器であるサブクーラ１０ｂとからなり、主凝縮器１０ａ、サブクーラ１０ｂの順に冷媒が導入されるが、主凝縮器１０ａにおいて冷却された冷媒の一部がサブクーラ１６ｂを経ずに油冷却器２６へ導入されて潤滑油を冷却する。
また、それとは別に、主凝縮器１０ａにおいて冷却された冷媒の一部は、サブクーラ１０ｂを経ずに後述するモータ２７のケーシング３１内に導入され、図示しないステータやコイルを冷却する。
【００２０】
絞り弁１１は、凝縮器１０と中間冷却器２５との間、中間冷却器２５と蒸発器１２との間にそれぞれ配設されており、凝縮器１０において液化された冷媒を段階的に減圧する。
中間冷却器２５の構造は中空の容器に等しく、主凝縮器１０ａ、サブクーラ１０ｂにおいて冷却され、絞り弁１１において減圧された冷媒を一時的に溜め置いてさらに冷却を進める。なお、中間冷却器２５の気相成分は、蒸発器１２を経ずにバイパス配管２３を通じて圧縮機１３の第２段羽根車２９ｂに導入される。
【００２１】
【発明の効果】
本発明に係る冷凍機用蒸発器によれば、伝熱管の上方に吹上防止部材を配設して、冷媒の沸騰に伴って吹き上げられる該冷媒の液滴をこの吹上防止部材に衝突させるようにしているので、冷媒の液滴を圧縮機が吸い込むことがない。したがって、液滴の吸入に起因する圧縮機の性能低下やインペラの損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る蒸発器が適用される冷凍機の概略構成を示す断面図である。
【図２】 図１のＩＩ−ＩＩ線による断面図である。
【図３】 逆Ｖ字状断面を有する吹上防止板の配設態様を示す拡大部分断面図である。
【図４】 平板からなる吹上防止板の配設態様を示す拡大部分断面図である。
【図５】 平板状の吹上防止部材の配設態様を示す拡大図である。
【図６】 本発明の実施の形態の蒸発器及びそれを備えた冷凍装置の構成及び構造を説明する冷凍装置の斜視図である。
【図７】 本発明の実施の形態の蒸発器及びそれを備えた冷凍装置の構成を説明する冷凍装置の概略配管図である。
【図８】 従来の蒸発器の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
１０ 凝縮器
１２ 蒸発器
１３ 圧縮機
１４ 容器
１５ 伝熱管
１７、１８ 空間
１９，２０ 吹上防止版
【発明の属する技術分野】
本発明は、被冷却物（例えば水、ブライン等）と冷媒との間で熱交換を行って該被冷却物を冷却する冷凍機用蒸発器及びそれを用いた冷凍装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、ビルのような大規模構造物においては、冷凍機で冷却した冷水を該構造物内に布設した配管を通じて循環させ、この配管を循環する冷水と上記構築物の各スペースの空気との間の熱交換によって該スペースの冷房を行うようにしている。
図８は、冷凍機に具備される蒸発器の一例を示している。この蒸発器では、冷媒が導入される円筒形の容器１の中に、冷水を流通させる多数の伝熱管２が束状にかつ千鳥状に配列設置されている。
【０００３】
伝熱管２は、冷水入口３に連通する往路側の管と冷水出口４に連通する復路側の管とに別れている。冷水入口３から流入した冷水は、容器１内を通り水室（図示略）に至って折り返し、再び容器１内を通って冷水出口４から流出する。この過程において、冷水は容器１に導入された冷媒との間の熱交換によって冷却され、また冷媒は冷水から熱を受け取って沸騰し、気化する。
なお、気化した冷媒蒸気は、図示していない圧縮機で圧縮された後、凝縮機に送り込まれる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記蒸発器では、伝熱管のまわりで沸騰した冷媒の蒸気が吹き上げられるが、このとき、この蒸気の吹き上がり力によって冷媒の液滴も吹き上げられる。このため、従来、上記吹き上げられた冷媒の液滴の一部を上記圧縮機が吸入して、該圧縮機の性能低下やインペラの損傷を発生することがあった。
なお、上記沸騰によって発生する冷媒の気泡の通路として、伝熱管の束の中に上下に沿う抜き列（伝熱管が存在しない空隙）を形成することが試みられているが、この場合、上記抜き列の上方からの冷媒蒸気の吹き上げエネルギーが高くなる。
【０００５】
本発明の課題は、このような状況に鑑み、冷媒の液滴の吹き上がりを防止することができる冷凍機用蒸発器及びそれを用いた冷凍装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷媒が導入される容器の中に、被冷却物が流通する多数の伝熱管を配設した冷凍機用蒸発器であって、前記伝熱管の上方に吹上防止部材を配設し、前記冷媒の沸騰に伴って吹き上げられる該冷媒の液滴を前記吹上防止部材に衝突させるようにしている。
本発明の一実施例では、前記伝熱管を複数の管群に分けて、それらの管群をそれら間に上下方向に沿った空間が形成されるように配置し、前記吹上防止部材を前記空間の上方に配設するようにしている。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材と、前記伝熱管の内の最上段の伝熱管とのなす距離を、前記伝熱管の径の０．５〜２倍に設定している。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材が略逆Ｖ、Ｕ、Ｗ字状等の断面を有し、この吹上防止部材の頂角を６０°〜１２０°に設定している。
本発明の一実施例では、前記吹上防止部材の端部によって隣接する最上段の伝熱管の少なくとも一部、好ましくは半分または全部を覆うようにしている。
本発明の一実施例では、前記管群の内の前記容器の内周面側に位置した管群を、前記内面との間に該内周面に沿った空間が形成されるように配置し、前記吹上防止部材を前記該空間の上方に配設している。
また本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機において圧縮された前記冷媒を凝縮、液化する凝縮器と、前記液化された冷媒を減圧する絞り機構と、前記凝縮及び減圧された液冷媒と被冷却物との間で熱交換を行わせて該被冷却物を冷却するとともに、前記液冷媒を蒸発、気化させる蒸発器とを具備してなる冷凍装置であって、前記蒸発器として上記の何れかに記載の蒸発器が用いられている。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る冷凍機用蒸発器の実施形態について説明する。
図１は、本発明の一実施例における冷凍機の概略構成を示している。この冷凍機は、冷却水と気体状の冷媒との間で熱交換を行わせて冷媒を凝縮、液化する凝縮器１０と、凝縮された冷媒を減圧する膨張弁（絞り弁）１１と、凝縮された冷媒と冷水（被冷却物）との間で熱交換を行わせて該冷水を冷却する蒸発器１２と、蒸発器１２で蒸発、気化した冷媒を圧縮した後に上記凝縮器１０に供給する圧縮機１３とを備えている。なお、上記蒸発器１２において冷却された冷水は、ビルの空調等に利用される。
【０００８】
図２は、図１のＩＩ−ＩＩ断面図である。この図２に示すように、蒸発器１２は、冷媒が導入される円筒形の容器１４と、この容器１４の中に束状に配設した多数の伝熱管１５とを備えている。
伝熱管１５は、被冷却物である冷水を流通させるものであり、容器１４の長手方向（図２の紙面に垂直な方向）に沿って配設されている。伝熱管１５は、図１に示す冷水入口１６ａに連通する往路側のものと、冷水出口１６ｂに連通する復路側のものとに別れており、冷水入口１６ａに連通する伝熱管１５での冷水の流通方向と冷水出口１６ｂに連通する伝熱管１５での冷水の流通方向とでは冷水の流れる方向が異なる。
【０００９】
伝熱管１５は、容器１４内の下半部において複数の群、例えば、４つの群Ａ〜Ｄに分けられている。各管群Ａ〜Ｄ間には、上下方向に沿う空間１７が形成され、また、管群Ａと容器１４の内周面との間および管群Ｄと容器１４の内周面との間には、該内周面に沿った空間１８がそれぞれ形成されている。なお、上記空間１７、１８は、本来はそこに配列する伝熱管１５を抜いて形成したものであるから、以下、抜き列という。
【００１０】
上記各抜き列１７上には、略逆Ｖ字状の断面を有した吹上防止板１９がそれぞれ配設され、また、上記各抜き列１８上には、平板状の吹上防止板２０が水平方向に配設されている。吹上防止板１９及び２０の形状は特に限定されるものではなく、略逆Ｕ字、略逆Ｗ字、等、適宜使用することができる。
【００１１】
図３に拡大して示すように、この実施形態における吹上防止板１９は、その頂角θが６０°〜１２０°に設定されている。そして、左右の端部がそれぞれ隣接する最上段の伝熱管１５の少なくとも一部、好ましくは半部または全部を覆うように、また、左右の縁端が対応する伝熱管１５から該伝熱管１５の直径Ｄの０．５〜２倍だけ上方に位置されるように配設されている。
一方、吹上防止板２０は、図４に拡大して示すように、その先端が隣接する最上段の伝熱管１５の少なくとも一部を覆い、かつ、その先端が対応する伝熱管１５から該伝熱管１５の直径Ｄの０．５〜２倍だけ上方に位置する態様で配設されている。
なお、上記実施形態では、抜き列からの上昇流を防止するため、吹上防止板２０の先端部を下方に折り曲げてあるが、この吹上防止板２０として平板状のものを使用しても何ら不都合は生じない。
【００１２】
上記管群Ａ〜Ｄにおける伝熱管１５の配列本数は、例えば、５００本程度に設定される。また、各管群Ａ〜Ｄの伝熱管１５は、千鳥状に配列している。すなわち、上下段の伝熱管１５が横方向にその配列間隔の１／２だけオフセットする態様で配列している。
【００１３】
上記のように構成された蒸発器１２においては、容器１４の下部から冷媒が導入される。この冷媒は、伝熱管１５を流通する冷水との熱交換によって沸騰するので、各管群Ａ〜Ｄの比較的下方に位置した伝熱管１５のまわりで発生した蒸気が上記抜き列１７、１８を抜けて浮上することになる。
この蒸気は、冷媒の液滴を伴いながら抜き列の上方に向かって勢い良く吹き出すことになるが、上記吹上防止板１９、２０に衝突するため、その上昇エネルギーが大きく減少される。
【００１４】
この結果、容器１４の上方からは、気化した冷媒の蒸気のみがデミスタ２１を介して流出することになる。つまり、図１に示した圧縮機１３に冷媒の液滴が供給されることが防止される。なお、上記冷媒の蒸気は、圧縮機１３に吸入されて圧縮される。
このように、この実施形態に係る蒸発器によれば、容器１４の上方に冷媒の液滴が吹き上がるのを吹上防止板１９、２０が阻止するので、冷媒の液滴を圧縮機１３が吸い込むことがなく、したがって、該液滴の吸入に起因する圧縮機１３の性能低下やインペラの損傷等を防止することができる。
【００１５】
上記実施形態では、吹上防止板１９を抜き列１７、１８の上方のみに配設しているが、上記液滴の吹上げ現象は、各管群Ａ〜Ｄ内の伝熱管１５間を上昇する冷媒の気泡によっても発生する虞がある。そこで、図５に示すように、吹上防止板１９を各管群Ａ〜Ｄの上方全域に配設すれば、上記液滴が圧縮機１３側に流入するのをより確実に阻止することができる。
この例では、各吹上防止板１９の位置を上下にずらすとともに、隣接する吹上防止板１９の端部相互をラップさせるようにしているが、該吹上防止板１９をこれとは異なる態様で配置することも当然可能である。
【００１６】
上記実施形態の蒸発器１２では、各管群Ａ〜Ｄ中における気泡の存在量を減少させるために上記抜き列１７、１８を設けてあるが、液滴の吹上を防止するという本発明の技術は、この抜き列１７、１８を設けない構成の蒸発器に対しても有効に適用することができる。
なお、上記各管群Ａ〜Ｄにおいては、伝熱管１５を千鳥状に配列してあるが、これは、上方に向かって流れる冷媒液と伝熱管１５とのコンタクトをより促進して熱伝達率の向上を図るためである。
【００１７】
次に、上述した蒸発器を用いた本発明の一実施例における冷凍装置の全体構成を図６及び図７によって説明する。
図に示す冷凍装置は、上述の蒸発器１２と、蒸発器１２において気化された冷媒を圧縮する圧縮機１３と、圧縮機１３において圧縮された冷媒を凝縮、液化する凝縮器１０と、凝縮器１０において液化された冷媒を減圧する膨張弁（絞り弁）１１と、凝縮器１０において液化された冷媒を一時的に溜め置いて冷却する中間冷却器２５と、凝縮器１０において冷却された冷媒の一部を利用して圧縮機１３の潤滑油を冷却する油冷却器２６とを備えている。
【００１８】
また、圧縮機１３には、これを駆動するモータ（駆動機構）２７が連結されている。
凝縮器１０、絞り弁１１、蒸発器１２、圧縮機１３、及び中間冷却器２５は、冷媒を循環させる閉じた系を構成するべく主配管２８によって接続されている。
圧縮機１３には、２段式（多段式）の遠心圧縮機、いわゆるターボ圧縮機が採用されており、このターボ形圧縮機１３には、複数の羽根車２９が設けられ、これら羽根車２９の上流側の第１段羽根車２９ａで冷媒を圧縮し、その冷媒をさらに第２段羽根車２９ｂに導入してさらに圧縮したのち凝縮器１０に送出する。
【００１９】
凝縮器１０は、主凝縮器１０ａと補助凝縮器であるサブクーラ１０ｂとからなり、主凝縮器１０ａ、サブクーラ１０ｂの順に冷媒が導入されるが、主凝縮器１０ａにおいて冷却された冷媒の一部がサブクーラ１６ｂを経ずに油冷却器２６へ導入されて潤滑油を冷却する。
また、それとは別に、主凝縮器１０ａにおいて冷却された冷媒の一部は、サブクーラ１０ｂを経ずに後述するモータ２７のケーシング３１内に導入され、図示しないステータやコイルを冷却する。
【００２０】
絞り弁１１は、凝縮器１０と中間冷却器２５との間、中間冷却器２５と蒸発器１２との間にそれぞれ配設されており、凝縮器１０において液化された冷媒を段階的に減圧する。
中間冷却器２５の構造は中空の容器に等しく、主凝縮器１０ａ、サブクーラ１０ｂにおいて冷却され、絞り弁１１において減圧された冷媒を一時的に溜め置いてさらに冷却を進める。なお、中間冷却器２５の気相成分は、蒸発器１２を経ずにバイパス配管２３を通じて圧縮機１３の第２段羽根車２９ｂに導入される。
【００２１】
【発明の効果】
本発明に係る冷凍機用蒸発器によれば、伝熱管の上方に吹上防止部材を配設して、冷媒の沸騰に伴って吹き上げられる該冷媒の液滴をこの吹上防止部材に衝突させるようにしているので、冷媒の液滴を圧縮機が吸い込むことがない。したがって、液滴の吸入に起因する圧縮機の性能低下やインペラの損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る蒸発器が適用される冷凍機の概略構成を示す断面図である。
【図２】 図１のＩＩ−ＩＩ線による断面図である。
【図３】 逆Ｖ字状断面を有する吹上防止板の配設態様を示す拡大部分断面図である。
【図４】 平板からなる吹上防止板の配設態様を示す拡大部分断面図である。
【図５】 平板状の吹上防止部材の配設態様を示す拡大図である。
【図６】 本発明の実施の形態の蒸発器及びそれを備えた冷凍装置の構成及び構造を説明する冷凍装置の斜視図である。
【図７】 本発明の実施の形態の蒸発器及びそれを備えた冷凍装置の構成を説明する冷凍装置の概略配管図である。
【図８】 従来の蒸発器の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
１０ 凝縮器
１２ 蒸発器
１３ 圧縮機
１４ 容器
１５ 伝熱管
１７、１８ 空間
１９，２０ 吹上防止版
Claims (5)
- 冷媒が導入される容器の中に、被冷却物が流通する多数の伝熱管を所定間隔で配設し、前記伝熱管の上方に吹上防止部材を配設し、前記冷媒の沸騰に伴って吹き上げられる該冷媒の液滴を前記吹上防止部材に衝突させるようにした冷凍機用蒸発器において、
前記伝熱管を複数の管群毎に分け、各管群をそれらの間に前記各伝熱管毎の所定間隔より大きい間隔の上下方向に沿った空間が形成されるように配置し、
前記吹上防止部材を前記各空間の上方に各々その端部が隣接する前記管群の最上段の伝熱管の一部を覆うように配設したことを特徴とする冷凍機用蒸発器。 - 前記吹上防止部材と前記伝熱管の内の最上段の伝熱管とのなす距離を、前記伝熱管の径の０．５〜２倍に設定していることを特徴とする請求項１記載の冷凍機用蒸発器。
- 前記吹上防止部材が略逆Ｖ字状の断面を有し、この吹上防止部材の頂角を６０°〜１２０°に設定していることを特徴とする請求項１又は２に記載の冷凍機用蒸発器。
- 前記管群の内の前記容器の内周面側に位置した管群を、前記内周面との間に該内周面に沿った空間が形成されるように配置し、前記吹上防止部材を前記空間の上方に配設していることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の冷凍機用蒸発器。
- 冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機において圧縮された前記冷媒を凝縮、液化する凝縮器と、前記液化された冷媒を減圧する絞り機構と、前記凝縮及び減圧された液冷媒と被冷却物との間で熱交換を行わせて該被冷却物を冷却するとともに、前記液冷媒を蒸発、気化させる蒸発器とを具備してなる冷凍装置であって、
前記蒸発器として請求項１〜４のいずれか１項に記載の蒸発器が用いられていることを特徴とする冷凍装置。
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