JP3777848B2 - 平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷用の画像形成材料と平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の印刷工程は原稿画像からネガもしくはポジフィルムを作製し、フィルムを介して、アルミ砂目支持体上に感光層を有する平版印刷版材料に画像を露光し、アルカリ性現像液で現像処理を行うことで平版印刷版を作製し、これを印刷機に取り付け印刷を行っていた。
【0003】
近年、コンピューターの普及に伴い、フィルムなどを介さずに原稿画像の電子データを直接印刷版に描画するコンピューター・ツー・プレート(CTP)技術が普及しつつあり、フィルム作製に要していた時間短縮、コスト削減が可能となってきている。これらの技術に必要な平版印刷版材料としては、アルミ砂目支持体上に光重合性感光層を有するものや、銀塩を利用したものなどがあるが、これらの材料は画像形成のためアルカリ性現像液を使用する。
【0004】
又、CTP普及と同期して、印刷現場の作業環境もオフィス化が進み、また環境適性の面からもアルカリ現像を要しない平版印刷版材料が望まれるようになり、更には全く現像処理を必要としない平版印刷版材料が望まれるようになってきた。
【0005】
特開平9−123387号、同9−123388号、同9−131850号、同9−171249号、同9−127683号の各公報には、印刷用親水性支持体上に親水性結着剤に分散された疎水性熱可塑性重合体粒子を含有する層を有する平版印刷版と、その作製方法が開示されている。
【0006】
これらの材料は、画像部は疎水性熱可塑性重合体粒子の熱融着により形成され、非画像部は分散された疎水性熱可塑性重合体粒子は親水性結着剤と共に水で除去できるため、水現像処理可能な平版印刷版材料が提供できる。しかし画像部には、親水性結着剤が混在しているため、画像強度、耐刷力の劣化が懸念される。
【0007】
さらに画像描画後、印刷機のシリンダー上で、印刷用インキ及び/又は湿し水の存在下で現像処理が可能なため、実質的に現像処理機を必要としない刷版の作成が可能であるが、現像終了までにかなりの時間を要する。又、現像時の生成物が印刷機の湿し水に流れ込むため、湿し水供給の経路の汚染が激しく、安定した湿し水供給ができなくなり、結果として安定した印刷品質が得られないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のごとき問題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的は、画像強度、耐刷力の劣化がなく、安定した湿し水供給ができ、結果として安定した印刷品質を得ることの出来る画像形成材料と平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成の何れかを採ることにより達成される。
【0010】
〔1〕 印刷用親水性支持体上に、以下の1)及び2)の条件を満たすMFT(最低成膜温度)が異なる2種以上のポリマー粒子を、最も低いMFTを呈するポリマー粒子の含有重量と2番目に低いMFTを呈するポリマー粒子の含有重量の比率が60:40〜10:90の割合で含有する画像形成層を有し、更に該画像形成層及び/又は該支持体に光熱変換剤を含有し、該ポリマー粒子の少なくとも1種の熱融着性により画像形成がなされることを特徴とする平版印刷版材料。
1)25℃<ポリマー粒子の最も低いMFT≦75℃
2)90℃≦ポリマー粒子の2番目に低いMFT≦150℃
【0016】
〔2〕 前記画像形成層がポリマー粒子のみ、もしくはポリマー粒子と光熱変換剤のみからなることを特徴とする〔1〕記載の平版印刷版材料。
【0018】
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕記載の平版印刷版材料を印刷機のシリンダーに固定し、印刷用インク又は湿し水の少なくとも何れかの存在下で現像処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
なお、以下において「画像形成材料」は本発明に係る「平版印刷版材料」を指す。
【0019】
本発明の画像形成層には主にポリマー粒子、親水性結着剤、光熱変換剤などが含有されている。
【0020】
本発明に利用可能なポリマー粒子は、種々の樹脂のラテックス、エマルジョンなど水分散体の形態をとるものが挙げられ、ポリマー粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、合成ゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ワックス類などが挙げられる。
【0021】
本発明に利用可能なアクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸を必須成分とした共重合体が挙げられ、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン等を共重合したものが挙げられる。
【0022】
本発明に利用可能な合成ゴム類としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、メタアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
【0023】
本発明に利用可能なワックス類としてはカルナウバワックス、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、ホホバ油、ラノリン、オゾケライト、パラフィンワックス、モンタンワックス類、キャンデリンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0024】
画像形成層中のポリマー粒子の含有量は、画像形成を可能とするために、70wt%以上、好ましくは95wt%以上、さらに好ましくは100wt%であるのがよい。
【0025】
本発明における画像形成層には、少なくとも2種類以上のポリマー粒子を含有していることが好ましく、とりわけ異なる最低成膜温度(MFT)が、好ましくは15℃以上異なるMFTを示すポリマー粒子を含んでいるものがよい。
【0026】
さらに好ましくは、それらのポリマー粒子のMFTが、
▲1▼25℃<ポリマー粒子の最も低いMFT≦75℃、
▲2▼ポリマー粒子の2番目に低いMFTが90℃以上、
の関係を有していることが好ましく、特に望ましいのは、
▲3▼前記2番目に低いMFTを呈するポリマー粒子の融点が150℃以下、
であることが好ましい。
【0027】
画像形成層に上記条件▲1▼のポリマー粒子を含有させることにより、適度な被膜形成性が付与され、擦過性などが向上し、画像形成材料の取り扱い性が向上する。また低い温度で融着が可能であるため、少ない露光エネルギーで画像形成することにも寄与する。
【0028】
又、画像形成層に上記条件▲2▼、▲3▼のポリマー粒子を含有させることにより、画像部にハード成分を付与することができ、耐刷性を向上させることが可能となる。また、非画像部においては、低温での融着を防ぎ、保存時のかぶりを防止できる。ポリマー粒子が上記の条件を持たせるため、樹脂の組成を選択することになる。とりわけ▲2▼、▲3▼の条件を満たすポリマー粒子として上述したスチレン−アクリル系共重合樹脂、ワックス類の粒子が適している。
【0029】
ポリマー粒子の最低成膜温度(MFT)は、たとえば「高分子ラテックスの化学」(室井宗一著;高分子刊行会)に記載された方法で測定できる。すなわち、高温から低温までの温度勾配を有するアルミ板の上にポリマー粒子分散液を薄く流延し乾燥させる。ポリマー粒子が成膜すると透明性が得られるため、透明になり始めた点のアルミ板の温度を測定し、それを最低成膜温度とする。
【0030】
▲1▼と▲2▼の条件を満たす画像形成層に含まれるポリマー粒子の重量比率は60:40〜10:90が好ましく、この比率をはずれると、被膜強度と印刷機上現像性、耐刷性のバランスが得にくくなることがある。
【0031】
本発明の画像形成層には被膜性を向上させるために、親水性結着剤を少量含有させても良い。親水性結着剤としては公知のものが利用でき、水溶性(コ)ポリマー、即ち、合成ホモポリマーもしくはコポリマーが用いられる。例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルメチルエーテル、又は天然結合剤、例えばゼラチン、多糖類、デキストラン、プルラン、セルロース、アラビアゴム、アルギニン酸等である。また親水性結着剤は、フェノール性ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を有する水に不溶性、アルカリ溶解性又は膨潤性樹脂であっても良い。
【0032】
本発明において親水性結着剤の含有量は、印刷機上の現像性を早めるため、また印刷機の汚染を防止するために、画像形成層の被膜形成を確保できる範囲で少ない方が好ましい。画像形成層の構成成分の5wt%以下、さらには全く含有しないのが好ましい。親水性結着剤の量が5wt%を越えると、印刷機上現像性が遅く、5wt%以下にすると印刷機上現像性が早くなる。これは親水性結着剤含有量が多い場合には湿し水による親水性結着剤の溶解が現像に大きく寄与し、親水性結着剤が少ない場合には、印刷用の粘調なインキによりポリマー粒子が支持体から引き剥がされるのが現像に大きく寄与する、現像機構の違いのためと推測される。
【0033】
また親水性結着剤の量が5wt%を越えると、現像物中のポリマー粒子が親水性結着剤と共に湿し水に混入やすくなる傾向があり、そうなれば印刷機、とりわけ湿し水供給部を汚染してしまう。
【0034】
本発明の画像形成層には、レーザー記録するために、レーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換剤が含有されていても良い。光熱変換剤としてはカーボンブラック、チタンブラック、金属カーバイド、ホウ化物、窒化物、炭化窒化物、青銅構造酸化物及び構造的に青銅属に関連するがA成分がない酸化物、例えばWO2.9、導電性ポリマー分散液、例えばポリピロール又はポリアニリンに基づく導電性ポリマー分散液やシアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクワリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体などが好適に用いられる。
【0035】
具体的には特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の画像形成材料の支持体としては公知のものが利用でき、たとえばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、あるいはポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムや、紙、合成紙、樹脂コーティングした紙に前述の金属薄膜をラミネート又は蒸着したもの、例えばポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルムなどが利用できる。
【0037】
これらの支持体には、レーザー記録をするために光熱変換機能を付与することができ、たとえば、上記支持体上に、カーボンブラックや特開昭52−20842号公報に記載の金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、アンチモン、テルル、ビスマス、セレン等のメタルブラックの蒸着層、蒸着膜を形成する方法が挙げられる。またプラスチックフィルムの場合には、前述した光熱変換剤をフィルム成形前に練り混んでおく方法も挙げられる。
【0038】
本発明の画像形成材料は支持体として印刷用親水性支持体を用いることもできる。印刷用親水性支持体としては表面を砂目立て、陽極酸化処理、封孔処理を施したアルミニウム板が挙げられる。砂目立て処理の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。機械的方法としては、例えば、ボール研磨法、ブラシ研磨法、液体ホーニングによる研磨法、バフ研磨法が挙げられる。
【0039】
アルミニウム材の組成等に応じて上述の各種方法を単独もしくは組合せて用いることができる。好ましいのは電解エッチングによる方法である。電解エッチングは、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸を単独ないし2種以上混合した浴で行われる。砂目立て処理の後、必要に応じてアルカリあるいは酸の水溶液によってデスマット処理を行い中和して水洗する。
【0040】
陽極酸化処理は、電解液として硫酸、クロム酸、シュウ酸、燐酸、マロン酸等を一種または二種以上含む溶液を用い、アルミニウム板を陽極として電解して行われる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。封孔処理は、沸騰水処理、水蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理等が具体例として挙げられる。
【0041】
この他にアルミニウム板支持体に対して、水溶性高分子化合物や、フッ化ジルコン酸等の金属塩の水溶液による下引き処理を施すこともできる。親水性支持体はその表面の水に対する接触角が60度以下、より好ましくは40度以下である。
【0042】
親水性支持体の厚さは、50〜1000μm、好ましくは75〜500μmの範囲であるものを好適に使用することができる。
【0043】
感光層側の表面粗さがRaで0.2〜0.8μmの範囲及び/又はRzで3.0〜6.0μmの範囲であるアルミニウム支持体を用いることが好ましい。封孔処理された親水性支持体には、珪酸ナトリウムなどで親水化処理することができる。
【0044】
印刷用親水性支持体としては、上述した支持体に親水性層を塗設することにより作製することもできる。親水性層としては、親水性結着剤を架橋することで層を形成したもの、金属酸化物微粒子など高親水性の粒子を自己造膜させたものが挙げられる。
【0045】
親水性層を構成する親水性結着剤としては、親水性(コ)ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー又はコポリマーなどのアクリル樹脂、あるいはマレイン酸/ビニルメチルエーテルコポリマー、ポリエステル類、ポリウレタン類、セルロース類、ゼラチン等を用いることができる。
【0046】
親水性結着剤を架橋するための架橋剤としては、たとえばメラミン樹脂、ホルムアルデヒド、グリオキサル、ポリイソシアナート、加水分解テトラ−アルキルオルトシリケート等が利用できる。
【0047】
金属酸化物微粒子としては、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他のいずれの形態でも良い。平均粒径としては3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。上記のなかでも特にコロイダルシリカが比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高く好ましい。
【0048】
親水性層には、親水性、保水性を高めるため、また親水性層表面粗さを好適な範囲にするため、多孔質無機粒子を含有していても良い。多孔質無機粒子としては、多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子、あるいはゼオライト粒子が好ましい。又、多孔質粒子は塗布層全体の30〜95wt%であることが好ましい。
【0049】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で,細孔容積で1.0cc/g以上であることが好ましく、1.2cc/g以上であることがより好ましく、さらには1.8〜2.5cc/gであることが好ましい。
【0050】
多孔質無機粒子の粒径としては,親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以下であることが好ましい。1μmより大きい粗大な多孔質無機粒子を除去するために、親水性層塗布液を機械的に分散処理を行い、粗大粒子を破砕してもよい。
【0051】
上記親水性層にはレーザー記録をするために光熱変換機能を付与することができ、前述した光熱変換剤を含有させることができる。
【0052】
本発明の画像形成材料はサーマルヘッドにより潜像付与しても良い。また、画像形成層及び/又は支持体に光熱変換機能がある場合には、レーザー光線による記録も可能である。レーザー光源としてはアルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザーなどが挙げられる。
【0053】
潜像が付与された画像形成材料は水やアルカリ性の現像液などで現像処理が可能である。支持体として、親水性支持体を使用する場合、上記の現像処理方法の他に、画像形成材料を印刷機のシリンダーに取り付け、シリンダーを回転させながら印刷用インキ供給及び/又は印刷用湿し水を供給することにより、印刷機上で現像することが出来る。又、同様に印刷用インキ供給及び/又は印刷用湿し水を供給しながらシリンダーを数回回転させた後、印刷用紙を搬送することにより、現像物を印刷用紙で除去する方法も採ることが出来る。更にはシリンダーに画像形成材料を取り付けた後、いきなり印刷状態(シリンダー回転と同時に印刷用インキ供給、印刷用湿し水供給及び紙の搬送を行う)にすることにより、印刷機上で現像することが出来る。
【0054】
【実施例】
次に本発明を実施例にて更に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0055】
親水性支持体の作製1
厚さ200μmのPETフィルムに15W/(m2・min)の条件でコロナ放電処理を行った後、コロナ面に下記組成からなる下引層塗布液をワイヤーバー#9を用いて塗布し、150℃、10分間乾燥させ乾燥膜厚約3μmからなる下引層を有する支持体を得た。
【0056】
−下引層組成−
下記組成をガラスビーズを用いて1時間ミル分散し、親水性層塗布液を得た。得られた塗布液をワイヤーバー#10で塗布し100℃、10分間乾燥させて、乾燥膜厚約3μmからなる親水性層を有する支持体を得た。
【0057】
親水性支持体の作製2
厚さ200μmのPETフィルムに15W/(m2・min)の条件でコロナ放電処理を行った後、コロナ面に下記組成からなる下引層塗布液をワイヤーバー#9を用いて塗布し、150℃、10分間乾燥させ乾燥膜厚約3μmからなる下引層を有する支持体を得た。
【0058】
下記組成をガラスビーズを用いて1時間ミル分散し、親水性層塗布液を得た。得られた塗布液をワイヤーバー#10で塗布し100℃、10分間乾燥させて、乾燥膜厚約3μmからなる親水性層を有する支持体を得た。
【0059】
親水性支持体の作製3
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間脱脂処理を行なった後水洗した。この脱脂したアルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後水洗した。
【0060】
次いで、このアルミニウム板を0.3重量%の硝酸水溶液において、温度25℃、電流密度100A/dm2の条件で交流電流により60秒間電解粗面化を行なった後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行なった。
【0061】
デスマット処理を行なった粗面化アルミニウム板を15%硫酸溶液中で、温度25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件で1分間陽極酸化処理を行ない、更に3%硅酸ソーダ、温度90℃で封孔処理を行なって親水性支持体1を作製した。珪酸処理後の支持体上のRaは0.43μmであった。
【0062】
ポリマー粒子の水分散液1
1,000mlの4つ口フラスコに撹拌器、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入し脱酸素を行いつつ蒸留水350ccを加えて内温が80℃となるまで加熱した。
【0063】
分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム3.5g添加し、さらに開始剤として過硫酸アンモニウム0.45gを添加し、次いで下記モノマー組成1を滴下ロートで約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH7に調整し、最後に不揮発分が50wt%となるように純水を添加してポリマー粒子の水分散液−1を得た。
【0064】
得られたポリマー粒子の水分散液をアルミ板に塗布し、室温で乾燥した。これを加熱器に入れ、25℃から2℃/minで昇温させ、ポリマー粒子が溶融してフィルム状に透明になる温度(MFT)を確認した結果、60℃であった。また示差熱分析により融点を測定した結果、融点は63℃であった。
【0065】
モノマー組成1
スチレン 60g
ブチルアクリレート 25g
メタアクリル酸 5g
ポリマー粒子の水分散液2
ポリマー粒子の水分散液1のモノマー組成を下記に変更した以外、同様の操作によりポリマー粒子の水分散液を製造した。得られたポリマー粒子のMFTは68℃であり、融点は71℃であった。
【0066】
モノマー組成2
スチレン 65g
ブチルアクリレート 20g
メタアクリル酸 5g
ポリマー粒子の水分散液3
ポリマー粒子の水分散液1のモノマー組成1を下記に変更した以外、同様の操作によりポリマー粒子の水分散液を製造した。得られたポリマー粒子のMFTは81℃であり、融点は85℃であった。
【0067】
モノマー組成3
スチレン 70g
ブチルアクリレート 15g
メタアクリル酸 5g
ポリマー粒子の水分散液4
ポリマー粒子の水分散液1のモノマー組成1を下記に変更した以外、同様の操作によりポリマー粒子の水分散液を製造した。得られたポリマー粒子のMFTは95℃であり、融点は102℃であった。
【0068】
モノマー組成4
スチレン 75g
ブチルアクリレート 10g
メタアクリル酸 5g
画像形成層
表1の通り、親水性支持体上に下記の各画像形成層塗布液をワイヤーバー#5で塗布し、50℃、3分間乾燥して積層し平版印刷版材料を得た。画像形成層は乾燥重量で約1.0g/m2であった。
【0069】
評価内容
−画像形成層塗膜強度−
作製した平版印刷版材料の画像形成層塗膜の強度を、指で擦ることにより下記の様に評価した。
【0070】
○…指の擦り跡が見られず、印刷に十分使用できるレベル、
△…指の擦り跡があるが、印刷には使用できるレベル、
×…指の擦り跡状に画像形成層の欠落があり、印刷には使用できないレベル。
【0071】
次に、作製した平版印刷版材料に半導体レーザー(波長830nm、出力100mW)で画像露光を行った。レーザー光径はピークにおける強度の1/e2で13μmであった。また解像度は走査方向、副走査方向とも2000dpiとした。
【0072】
画像描画した平版印刷版を現像処理することなく印刷機(ハイデルGTO)のシリンダーに設置し、エッチング液としてSEU−3(コニカ社製)の45倍水希釈液を、インキとしてハイエコー紅(東洋インキ製造株式会社製)を用い、印刷を行った。
【0073】
評価項目
−現像性−
得られた印刷物の非画像部反射濃度が0.05以下になった点を現像終点として、印刷開始から反射濃度が0.05以下になるまでの印刷枚数を現像性の指標とした。
【0074】
−感度−
現像終了後の印刷物上の画像で、175線相当の細線が鮮明に得られる露光エネルギー量を平版印刷版材料の感度の指標とした。
【0075】
−耐刷性−
印刷物上の画像で、175線相当の細線にカスレが生じるまでの印刷枚数を耐刷性の指標とした。
【0076】
−保存性評価−
相対湿度80%、40℃の環境下で3日間保存した平版印刷版について、上記と同様に現像性の評価を行った。
【0077】
−印刷機の汚染具合の評価−
各平版印刷版材料を印刷機上で連続5回現像処理を行った後、湿し水を供給するためのモルトンを24時間放置することにより乾燥させた。乾燥させたモルトンを再度印刷機に設置し、ポジ型PS版VS(富士写真フィルム工業社製)を用いて印刷を行い以下のように評価した。
【0078】
○…吸水性は劣化せず、印刷初期から非画像部の汚れは発生しないレベル、
△…印刷初期において、吸水性は劣化していたが、時間と共に元の吸水性に回復し、十分印刷に使えるレベル、
×…吸水性がなく、印刷時に水供給できず使えないレベル。
【0079】
結果は下記表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明のごとく、MFTの異なるポリマー粒子を含む画像形成層を利用することにより塗膜強度と耐刷性や現像性などの印刷適性が改良された。また画像形成層に親水性結着剤を含有させないことにより、現像性がさらに向上し、印刷機汚染性も低減された。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、画像強度、耐刷力の劣化がなく、安定した湿し水供給ができ、結果として安定した印刷品質を得ることの出来る画像形成材料と平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することが出来る。
Claims (3)
- 印刷用親水性支持体上に、以下の1)及び2)の条件を満たすMFT(最低成膜温度)が異なる2種以上のポリマー粒子を、最も低いMFTを呈するポリマー粒子の含有重量と2番目に低いMFTを呈するポリマー粒子の含有重量の比率が60:40〜10:90の割合で含有する画像形成層を有し、更に該画像形成層及び/又は該支持体に光熱変換剤を含有し、該ポリマー粒子の少なくとも1種の熱融着性により画像形成がなされることを特徴とする平版印刷版材料。
1)25℃<ポリマー粒子の最も低いMFT≦75℃
2)90℃≦ポリマー粒子の2番目に低いMFT≦150℃ - 前記画像形成層がポリマー粒子のみ、もしくはポリマー粒子と光熱変換剤のみからなることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料。
- 前記請求項1または2に記載の平版印刷版材料を印刷機のシリンダーに固定し、印刷用インク又は湿し水の少なくとも何れかの存在下で現像処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
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