JP3776623B2 - 開口仮封止栓付缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、容易に開蓋することができるとともに、缶体に封入された飲料等が飲みやすい形状または注ぎ出しやすい形状を有する開口仮封止栓付缶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イージーオープン缶として、スコア線によって缶蓋に区画形成された開口片を押圧し、その開口片をスコア線に沿って破断させるタイプの缶が知られている。これらの缶として、例えば特開平8−169454号公報に記載されたものと米国特許第4976368号明細書に記載されたものとがある。
【0003】
特開平8−169454号公報に記載された発明は、蓋部材において環状移行部からスカートまたはエプロンが容器本体から離れる方向であってその中心軸に近づく方向に向かって伸び、その先端に頭部を介してトップが形成されている。そしてそのトップには下部側にスコア線によって囲まれた凹型押し下げタブが形成されている。そして缶蓋を開ける場合には、その凹型押し下げタブを指で押圧することによりスコア線を破断しつつ凹型押し下げタブを容器本体内部に押し下げて、開口片を吊り下げ状態にすることによって缶蓋を開ける。
【0004】
また米国特許第4976368号明細書に記載された発明は、缶蓋上方へ突出した外周壁とその外周壁から内方へ平坦な環状パネルが延出し、更に環状パネルから下方に内周壁が垂下し、その内周壁の下端が折り畳まれて三重層になっており、その最下層に形成されたスコア線により開口片が区画されて形成されている。そしてこの開口片には凸タブが形成されており、缶蓋を開ける場合には、その凸タブを指で押し下げて開口片をスコア線の部分で破断し、開口片を缶蓋の内面側に吊り下げ状態にして缶蓋を開ける。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の二つの発明では、指で直接に開口片を押し下げ、スコア線部分を破断しつつ開口片を缶体内へ押し下げて缶蓋を開けるので、缶体に封入された飲料等が指に付着する可能性がある。特に炭酸含有飲料では、開蓋時に飲料が噴き出ることがあるので、飲料が指に付着する可能性が高い。また開蓋の際に開口片の縁部によって指を傷つける可能性があるとともに、消費者の指の大きさや長さ、押圧力の大小等の個人差によって、指で缶蓋を開けることが容易ではない場合が生じる可能性がある。なお小さな押圧力でも缶蓋を開けることができるように、スコア線を全周にわたって深く刻むことも考えられる。
【0006】
しかしながら缶体の輸送中に受ける衝撃により、スコア線が破断する可能性があり、また内圧力が高くなった場合に、スコア線が破断して封入された飲料が噴き出る可能性があるから、スコア線を広範囲にわたって深くすることができない。また缶蓋を開けた際に、開口部を封鎖していた開口片は缶体内部に押し下げられてしまうので、いわゆるペットボトルのように蓋によって仮封止することができないのは、通常のイージーオープン缶と同様である。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、容易に缶蓋を開けることができると共に、開けられた缶蓋を仮封止することができ、しかも製品品質が高く、かつ生産性に優れる開口仮封止栓付缶を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、缶胴の開口端に巻き締め固着されるフランジ部を外周部に備えた缶蓋であって、その軸線方向にこのフランジ部よりも外方へ突出した環状の突出部が形成されると共に、この突出部に、両端部が離隔した曲線状を成し、かつ押圧力によって破断する易破断線で区画されたほぼ円形の開口片が設けられた缶蓋を、前記フランジ部により前記缶胴の開口端に巻き締め固着し、更に前記突出部に対して開口仮封止栓が前記開口片ならびに突出部の先端外周縁を覆った状態で冠着された開口仮封止栓付缶において、前記突出部における先端面の周縁部が平坦面に形成されると共に、その平坦面を成す周縁部の内周側に、前記開口片が前記周縁部の面の高さ以下の高さであって、しかもその面の高さに近い高さになる様に設けられ、更に前記突出部の外周部に、傾斜した姿勢で円周方向に延び、かつ突出部における半径方向での突出量が両端部を除いてほぼ一定に設定された係合突起部が、円周方向で所定の間隔をあけて複数形成されると共に、前記開口仮封止栓には、前記各係合突起部を覆う状態で前記突出部に対して嵌合可能な第一円筒部と、この第一円筒部の内周面に形成され、かつ前記係合突起部に対して係合可能な第一仮止め突起部と、第一円筒部とは軸線方向での反対側に突出し、かつ前記各係合突起部を覆う状態で前記突出部に対して嵌合可能な第二円筒部と、この第二円筒部の内周面に、円周方向で所定の間隔をあけて複数設けられると共に、前記係合突起部の傾斜に対応して傾斜し、かつ係合突起部に対して係合可能な第二仮止め突起部と、第二円筒部の内周側において第二円筒部と軸線方向での同一方向に突出し、かつ前記開口片を押圧して前記易破断線を破断させる開口嵌合凸部とが備えられていることを特徴とするものである。
【0009】
従って請求項1の発明によれば、第一円筒部の第一仮止め突起部が缶蓋の係合突起部と係合する様に、開口仮封止栓を缶蓋に冠着させた状態で缶体を輸送・販売することができる。また易破断線を破断し開蓋するために開口仮封止栓の開口嵌合凸部が用いられることによって、指で直接に開口片を押圧して易破断線を破断し開蓋する場合と比較して指を傷つけたり、指に飲料等の内容液が付着するおそれがない。更に無理なく開口片を押圧して易破断線を破断し開蓋することができる。更にまた、缶体内の飲料を直接缶体から飲む際またはコップ等に注ぐ際に、開口部から流下する飲料が触れる缶蓋の突起部の先端面およびその周縁部が、缶体の輸送時や販売時に開口仮封止栓で覆われているので、埃等が付着せず衛生的である。
【0010】
更に開蓋後には、開口仮封止栓によって缶蓋の開口部を仮封止できる。具体的には、第二円筒部と突出部とを対向させた姿勢に開口仮封止栓を突出部に被せるとともに、第二円筒部の中心軸線を中心に回転させることによって、各第二仮止め突起部が各係合突起部にそれぞれ係合し、その結果、開口仮封止栓が突出部に対して強固に冠着される。従って缶体を倒した場合のように飲み残した飲料または使い残した内容液をこぼしてしまうことを防ぐことができ、また仮封止した缶体を持ち運ぶことができる。
【0011】
また請求項1の発明では、各係合突起部が突出部の先端面における外周縁を潰し成形することによって形成される構造ではなく、材料の余り(弛み)等に起因したシワやバリの発生を防止でき、缶蓋材料または缶蓋表面の保護被膜に対する成形ダメージを低減させることができる。つまり製品品質を向上させることができる。そのうえ突起部の先端面の周縁部が全周に亘って平坦面となっているので、見栄えが良好になる利点も生じる。
【0012】
また請求項1の発明では、突出部の先端面の周縁部と開口片とがほぼ面一またはそれに近い構造であるから、第二円筒部および開口嵌合凸部の長さをそれぞれ短く設定することが可能となり、それに伴って開口仮封止栓の材料コストの低廉化を図ることができる。また更に請求項1の発明によれば、開口仮封止栓のいわゆる台座部となる突出部の先端面の周縁部が平坦面に形成されていて、缶蓋に対する開口仮封止栓の組み付け性が安定しているから、大きな荷重に耐えることができ、また開口仮封止栓が缶蓋から外れたり、あるいは開口片が不用意に押し下げられることがない。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、前記開口嵌合凸部に、その開口嵌合凸部の基端部に向けて拡径し、かつ最大外径が前記易破断線を破断させた後に形成される開口部の内径よりも小さく設定されたテーパ部が備えられると共に、そのテーパ部と前記第二円筒部との間に、その第二円筒部と軸線方向での同一方向に突出し、前記開口嵌合凸部を前記開口部の内側に挿入させ、かつ前記第二仮止め突起部を前記係合突起部に係合させた状態で、開口部の内周縁に沿って密着する環状突出部が備えられていることを特徴とするものである。
【0014】
従って請求項2の発明によれば、開口嵌合凸部を開口部の内側に挿入させると共に、第二仮止め突起部を係合突起部に係合させることによって、開口部の内周縁に沿って環状突出部が密着するので、開けられた缶蓋に対する密封性が向上する。なおこのように密封性を高めることによって、開口仮封止栓を缶蓋から外す方向に作用する圧力が高められるが、前述の通り、第一仮止め突起部と係合突起部とがいわゆるネジ状に係合しているから、開口仮封止栓が確実に固定される。つまり炭酸含有飲料のように、缶体の内圧が高い飲料を対象とした場合に特に有効である。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明の具体例を図面を参照して説明する。図1はこの発明の一具体例を示すものであって、ここには開口部突出缶蓋30と開口仮封止栓31とが示されている。まず、開口部突出缶蓋30について説明する。この開口部突出缶蓋30は、アルミニウム合金などの金属製の平板材(図示せず)から形成されている。なおこの平板材の一方の表面には、合成樹脂からなる図示しない内面被膜(塗膜)が予め形成されている。この内面被膜は、保護塗料や樹脂フィルムから形成されている。
【0016】
その塗料としては、熱硬化性および熱可塑性樹脂からなる任意の保護塗料、例えばフェノール−エポキシ塗料、アミノ−エポキシ塗料等の変性エポキシ塗料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ−フェノール変性ビニル塗料等のビニルまたは変性ビニル塗料等の単独または2種以上の組み合わせが使用される。またその樹脂フィルムとしては、エチレン−テレフタレートを基本構成とするポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、更にはポリエチレンテレフタレート−イソフタレート(PET/I)等のコポリマーでも適用できる。また樹脂フィルムが内面被膜に用いられる場合、その樹脂フィルムは、未延伸のものでも二軸延伸のものでもよい。
【0017】
開口部突出缶蓋30の外周側には、円筒状の缶胴32の開口部に巻き締め固着して巻締部33を形成する周知形状のフランジ部(図示せず)が形成されている。またその巻締部33から開口部突出缶蓋30の半径方向内側には、図1でのほぼ下方向に窪むU字形である環状溝34が形成されている。
【0018】
環状溝34から缶胴32の中心軸側に向かうと共に、図1での上方向に延出してスカート壁35が形成されている。このスカート壁35は、その断面が缶胴32の軸線方向に突出するように弧を描くように延出している。またこのスカート壁35の図1における上端部に続けて***部36が形成されている。更にその***部36の図1での上端部には、側壁面が缶胴の中心軸線とほぼ平行に形成された口首部37が形成されている。すなわち口首部37自体は、その長さ方向で外径が一定の円筒状を成している。更に口首部37の側面には、半径方向での外側へ突出している係合突起部38が円周方向での等間隔で3個形成されている。
【0019】
より具体的には、係合突起部38は、図1での左上側から右下側に向けて傾斜した直線状の突条であり、半径方向での突出量が両端部を除いて一定となっている。つまり係合突起部38の長さ方向での中間部は、口首部37の側面とほぼ平行となるように湾曲しており、これに対して係合突起部38の両端部は、口首部37の側面に対して斜めに交差するように裾広がり状を成している。なお口首部37とスカート壁35と***部36とによって、突出部70が形成されている。
【0020】
他方、口首部37の上縁部に繋がる壁面は、内周側に向けて狭い幅で折り曲げられている。つまり口首部37の上縁部を塞ぐような面が備えられていて、更にその面における内周部は、軸線方向で図1での上側に僅かに突出すると共に、全体として円形を成すように三重層に折り畳まれていて、ここが折り畳部39として形成されている。その折り畳部39の図1での最上層40は、平坦面を成していて、開口部突出缶蓋30の中心軸線と直交した線に対して平行となっている。従って最上層40が、この発明の突出部における先端面の周縁部に相当する。なお折り畳部39の内径が、後述する開口片44を押し下げた状態で現れる開口部41の内径に相当する。
【0021】
折り畳部39における最下層42には、一部を除いてスコア線43が形成されており、換言すれば、スコア線43は折り畳部39に沿うように形成されており(折り畳部39の内周側先端部または内周側折曲部よりも外側に形成される)、両端部の離隔した円形状を成している。なお開蓋性を良くするために、スコア線43の一部を完全に切断しておいてもよい。ここで突出部70における円周方向での係合突起部38の配置は、スコア線43の端部同士の間の部分に対して円周方向で対向した位置を避けた配置となっている。
【0022】
他方、スコア線43の内周側には、開口片44が形成されている。この開口片44は、折り畳部39における最下層42と一体に繋がる壁面からなり、スコア線43によって区画されたほぼ円形のものである。従って開口片44は、スコア線43の端部同士の間の部分をヒンジとして突出部70の内側に押し下げられる構造となっている。更に開口片44および折り畳部39の最上層40のうちスコア線43に隣接した部分には、プラスチゾル45が塗布されている。
【0023】
このプラスチゾル45は、缶体の内圧の変化によってスコア線43が破断することを防ぐと共に、スコア線43を形成することによる塗膜の損傷を補修し、飲料の侵入による開口部突出缶蓋30の腐食を防ぐためのものである。プラスチゾル45を塗布することによって、スコア線43の一部が完全に切断されていても、内容液の漏洩を防止できる。なおスコア線43が、この発明の易破断線に相当する。
【0024】
また開口片44における折り畳部39よりも内周側には、図1での上側に向けて突出した環状凸部46が形成されている。具体的には、この環状凸部46は、折り畳部39の内周側から中心軸線に向けて図1での上方に傾斜した外周斜面部47と、その外周斜面部47の周縁部(上縁部)に連続し、かつ折り畳部39の最上層40よりも約1mm下方に配置された平坦な頂面部48と、その頂面部48に内周側の縁部に連続し、かつ同図での下方に傾斜した内周斜面部49とを備えている。
【0025】
更に開口片44における環状凸部46の内周側には、開口嵌合凹部50が形成されている。より詳細には、開口嵌合凹部50は、環状凸部46における内周斜面部49とその内周側に設けられた凸部51における斜面とによって区画された平坦な溝部あるいは谷部であって、寸法ならびに形状が開口仮封止栓31における後述の押圧面64のそれと実質的に一致している。つまり内周斜面部49の図1での下縁部と凸部51の下縁部との間隔が、押圧面64の内周縁と外周縁との間隔に一致している。
【0026】
また開口嵌合凹部50は、缶胴の中心軸線に対して直交した線と平行で、かつ折り畳部39の最下層42よりも約0.8mm下方位置に設けられている。なお開口嵌合凹部50の中心軸線は、開口部突出缶蓋30の中心軸線とそれぞれ同軸上に配置されている。なお開口片44のうち開口嵌合凹部50の内周側に形成された凸部51の図1での最上面は、平坦面を成していて、環状凸部46の頂面部よりは上方位置で折り畳部39の最上層40よりも約0.4mm下方位置に設けられている。この凸部51の最上面の位置は、意図しない押し下げ力が開口片44に加えられるのを防止するという観点からは折り畳部39の最上層40よりも下方位置であることが好ましく、製造時の積重ね性、使用材料の節減、開口操作性等を考慮すると、折り畳部39の最上層40から下方に1mm以内の範囲が特に好ましい。
【0027】
つぎに開口仮封止栓31について説明する。ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成樹脂で成形された開口仮封止栓31は、図1に示すように、その外周側には図1の下方向に延出する第一円筒部52が形成されている。この第一円筒部52の下端内面には、半径方向での内側に突出した第一仮止め突起部53が円周方向での等間隔で6個形成されている。各第一仮止め突起部53は、直線状の突条であって、第一円筒部52の中心軸線と直交した姿勢となっている。なお第一仮止め突起部53が開口部突出缶蓋30の係合突起部38を弾性変形して乗り越え、その下側の口首部37に密着することによって、開口仮封止栓31が開口部突出缶蓋30に着脱可能に固定される。
【0028】
第一円筒部52の図1での上側には、第二円筒部54が一体に形成されている。この第二円筒部54は、第一円筒部52と同径でかつ長さの等しい円筒状を成していて、第一円筒部52と同軸上に配置されている。第二円筒部54の内面には、第二仮止め突起部55が円周方向での等間隔で3個設けられている。この第二仮止め突起部55は、全体として各係合突起部38と平行となるように(図1での左側から右側に向けて)傾斜した断面台形状の突条であると共に、図1での上面部には長さ方向での中間部から同図での右端部に向けて幅が狭くなるような傾斜の大きいテーパが付けられている。
【0029】
第二円筒部54と第一円筒部52との内周面における中間部には、第一円筒部52の半径方向での内側に向けて平板状のパネル部56が延出している。このパネル部56は、第一円筒部52の中心軸線と直交した姿勢となっている。パネル部56の内周箇所には、第二円筒部54と軸線方向での同一方向に突出した弾性変形可能な厚さの環状突出部57が形成されている。すなわちパネル部56は、リング状に形成されており、環状突出部57は、ほぼ円筒状に形成されている。
【0030】
より具体的には、環状突出部57は、その内周面が第二円筒部54とほぼ平行で、かつ外周面が先端部に向けて縮径するテーパの付けられた円筒状を成しており、その軸線方向での中間部の外径は、開口部突出缶蓋30に形成される開口部41の内径以上に設定されている。更に環状突出部57の長さは、一例として第二円筒部54の長さの1/3程度となっていて、これは開口部41に後述の開口嵌合凸部58を挿入させ、かつ第二仮止め突起部55を係合突起部38に係合させた状態で、先端部から開口部41に進入し、開口部41の内径よりも大径の中間部が進入して、その外周面と開口部41の内周縁とが圧接触する状態で停止する長さである。
【0031】
環状突出部57の内周側には、第二円筒部54と軸線方向での同一方向に突出した円筒状のテーパ部59が形成されている。このテーパ部59には、その上縁部に向けて縮径する方向のテーパが備えられていて、その長さは環状突出部57よの長さよりも短く設定されている。またテーパ部59の図1での上縁部には、側面が開口部突出缶蓋30の中心軸線とほぼ平行に揃えられた円筒状の垂直部60が形成されている。更に垂直部60の上縁部には、テーパ部59よりもテーパ角の大きな傾斜部61が形成されていて、その傾斜部61の上縁部には、長さの短い円筒状の押圧部62が形成されている。
【0032】
押圧部62の内周側の基端部には、パネル部56と平行な端板部63が形成されている。つまりこの端板部63によって押圧部62の内周側の開口部分が閉じられた構成となっている。なおテーパ部59と垂直部60と傾斜部61と押圧部62と押圧面64と端板部63とによって開口嵌合凸部58が構成されている。また押圧部62の端面が、押圧面64として形成されている。この押圧面64は、第二円筒部54の端面よりも軸線方向での若干内側に位置している。換言すれば、第二円筒部54から開口嵌合凸部58が突出しない構成となっている。
【0033】
つぎに上記のように構成されたこの発明の作用について説明する。缶体は、図1に示す状態、すなわち開口部突出缶蓋30の係合突起部38に対して開口仮封止栓31の第一仮止め突起部53を係合させた状態で保管あるいは販売される。その場合、平坦面を成しているパネル部56の図1での下面部が、平坦面を成している折り畳部39の最上層40に対して全周に亘って接触すると共に、開口片44に対しては非接触な状態に保持されていて、両者の組み付け姿勢の安定性が高く、従って開口仮封止栓31に対して大きい荷重が作用しても、開口仮封止栓31が変形して外れたり、あるいは開口片44を押し下げて意図しない開蓋を起こしてしまうおそれがない。
【0034】
なお開口仮封止栓31が開口部突出缶蓋30から脱落しないように、また店頭陳列中に開口仮封止栓31に埃が付着したり、いたずらされないように、開口仮封止栓31と開口部突出缶蓋30とを透明または不透明な熱収縮性のプラスチックフィルム等によってシュリンク包装してもよい。消費者は、缶体に封入された飲料を飲むために、まず開口仮封止栓31を開口部突出缶蓋30から取り外す。その際、それらがプラスチックフィルム等によってシュリンク包装されている場合には、最初にフィルムを除去する。
【0035】
更に開口仮封止栓31をその押圧面64が開口部突出缶蓋30の開口片44に対向するように保持し、その後、図4に示すように、開口仮封止栓31の押圧面64を開口部突出缶蓋30の開口嵌合凹部50に嵌め込むように当てがい、更にその状態から押圧する。その際に、開口片44の表面において押圧面64と一致する形状の開口嵌合凹部50がその内周側および外周側に全体として環状の斜面を備えた構造であることから、開口仮封止栓31を開口部突出缶蓋30における開口片44に対して簡単かつ確実にセンタリングさせることができる。
【0036】
すなわち押圧面64と開口嵌合凹部50との相対位置が半径方向で若干ズレていても、押圧面64あるいは押圧部62の内周縁および外周縁が、開口嵌合凹部50を挟んで対向した環状凸部46の内周斜面部49と凸部51の斜面に沿って滑り落ちるようにして開口嵌合凹部50まで導かれ、その結果、開口仮封止栓31が、その中心軸線を開口片44の中心軸線に対して揃えた状態に位置決めされる。
【0037】
従って開口片44に対して開口仮封止栓31の押圧荷重が良好に作用し、そのためスコア線43の形成されていない部分をヒンジとして開口片44が開口部突出缶蓋30の内側に押し下げられて、開口部41が現れる。つまり開口部突出缶蓋30が確実かつスムースに開口する。また前述の通り、押圧面64を位置決めした状態で押圧力を生じさせるから、開口片44および開口仮封止栓31には変形が生じない。
【0038】
開口部41が形成されることにより、消費者は開口部41に嵌入した開口仮封止栓31を開口部突出缶蓋30から引き離し、その後缶体を傾けて開口部41を伝わって流下する飲料を飲むことができる。その際に、突出部70の先端外周部分のうち消費者が実際に下唇を接触させる部位、すなわち前記ヒンジに対して円周方向で対向した部分には係合突起部38が形成されていないから、消費者は違和感なく飲料を飲むことができる。
【0039】
一方、消費者は開口仮封止栓31を用いて、開口部突出缶蓋30の開口部41を仮封止することができる。この場合には、開口嵌合凸部58を開口部41に対向させた姿勢に開口仮封止栓31を保持すると共に、開口部突出缶蓋30の開口部41の内周部に対して環状突起部57が当接するまで開口仮封止栓31を開口部41に押し込み、更に開口部突出缶蓋30の折り畳部39に対してパネル部56が当接するまで中心軸線を中心に回転させて、各第二仮止め突起部55を各係合突起部38に対してそれぞれ係合させる。
【0040】
すると外周面がテーパ面となっており、先端部の直径が開口部41の直径よりも小径で、中間部の直径が開口部41の直径よりも大径となっている環状突出部57の開口部41内に進入し、開口部41の内径よりも大径の部分の外周面が開口部41の内縁部の全周に亘って弾性的に密着する(圧接触する)と共に、開口部41における環状突出部57よりも内周側の空間に開口仮封止栓31が嵌合する。その結果、開口部突出缶蓋30が開口仮封止栓31によって密封された状態に仮封止される。特に第二仮止め突起部55と係合突起部38とがネジとして機能しているから、缶内圧の高い炭酸含有飲料が対象であっても、開口仮封止栓31を開口部突出缶蓋30に対して強固に固定することができる。また開口仮封止栓31の環状突出部57が、開口部41の内径よりも大径部分の外周面で開口部41の内周縁と圧接触するので、仮封止時の密封性は良好となる。
【0041】
また上記の具体例によれば、開口嵌合凸部58が第二円筒部54の開口端から突出しておらず、実質的な平坦面とされた構造であるから、例えば開口仮封止栓31をベルトコンベアなどで搬送する際に、第二円筒部54を下側に向けた状態でも姿勢が安定し、つまり設置面に対する開口仮封止栓31の向きを統一させる工程が不要であり、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【0042】
更に上記の具体例では、開口仮封止栓31を用いた開口部41を仮封止する際にパネル部56が当接する部位である折り畳部39の最上層40と、開口嵌合凸部58の押圧面64が当接する部位である開口片44との距離が極めて小さいことに伴って、開口嵌合凸部58の長さを短く設定することが可能となり、その結果、開口仮封止栓31の材料コストの削減を図ることができる。
【0043】
つぎに係合突起部38の成形方法の一例について簡単に説明する。図6に示すように、成形装置80には、対象とする係合突起部38に倣う形状の突条81を外周部に備え、かつ上面が平坦面を成す構造のフォーミングダイ82と、そのフォーミングダイ82の外周側に配置され、かつ突条81と対向した位置に矩形断面の溝部83を備えた構造のフォーミングパンチ84と、フォーミングダイ82の上側に配置され、かつ下面が平坦面を成すパッド85とが備えられている。更にフォーミングダイ82とフォーミングパンチ84のそれぞれは、図6に矢印で示すように、所定の範囲内で同図での左右方向に自在に移動するように構成されており、これに対してパッド85は、図6での上下方向に移動可能な構成となっている。
【0044】
この成形装置80を利用して係合突起部38を形成するにあたっては、まず折り畳部39が形成されていない状態の開口部突出缶蓋30をフォーミングダイ82に被せた状態に設置すると共に、パッド85を下降させて開口部突出缶蓋30を挟持した状態に保持する。つぎにフォーミングダイ82をフォーミングパンチ84に向けて移動させ、かつフォーミングパンチ84をフォーミングダイ82側に向けて移動させて、開口部突出缶蓋30の口首部37の内周面を突条81によって押圧させる。すると両者の当接部分が外周側に張り出され、その結果、係合突起部38が完成する。
【0045】
従って上記の成形方法によれば、係合突起部38を形成するにあたり突出部70の軸線方向への潰し成形を施さないため、材料の余りが生じず、シワやバリ等の発生を未然に防止できると共に、開口部突出缶蓋30の材料あるいは保護被膜に対する成形ダメージを低減させることができる(缶蓋の耐食性を向上させることができる)。また突出部70の先端面である折り畳部39が平坦面を成す構造であり、換言すれば、飲み口に段差の無い構造であって、その分だけ開口部突出缶蓋30の材料に余裕があるから、開口部41(折り畳部39)の内径を拡大して飲み口を一般的なペットボトルと同じ程度まで大きくすることが可能となる。それに加えて、開口部突出缶蓋30における突出部70の見栄えが良好になる利点も生じる。
【0046】
なお上記の具体例では、易破断線としてスコア線を挙げたが、易破断線は、要は開口仮封止栓によって開口片を押圧した場合に簡単に破断され、かつ缶体の運搬・保管時等において内容液の漏洩が生じないものであればよいのであって、例えば開口部突出缶蓋における壁面の厚さ方向に貫通した切断線をプラスチゾル等の密封材または接着剤で封鎖したものであってもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明では、開口仮封止栓の取り付け台座部となる突出部の先端面に全周に亘る平坦面が備えられていて、缶蓋に対する開口仮封止栓の組み付け性が安定しているから、大きな荷重に耐えることができ、また開口仮封止栓が缶蓋から外れたり、あるいは開口片が不必要に押し下げられることを未然に防止することができる。
【0048】
また請求項1の発明では、各係合突起部が突出部の先端面における外周縁を潰し成形することによって形成される構造ではないから、シワやバリの発生を防止でき、缶蓋材料または缶蓋表面の保護被膜に対する成形ダメージを低減させることができる。つまり製品の品質を向上させることができ、そのうえ見栄えが良好になる利点も生じる。
【0049】
また請求項2の発明では、開口嵌合凸部を開口部の内側に挿入させると共に、第二仮止め突起部を係合突起部に係合させた状態において、開口部の内周縁に沿って環状突出部が密着するから、缶蓋の仮封止を完全なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の開口仮封止栓付缶の開口部突出缶蓋と開口仮封止栓との具体例を示す断面図である。
【図2】 開蓋前のスコア線の近傍を示す部分断面図である。
【図3】 開口部突出缶蓋の突出部を示す平面図である。
【図4】 開口片に対して開口仮封止栓の開口嵌合凸部を当接させた状態を示す断面図である。
【図5】 開蓋後に開口部を開口仮封止栓により仮封止した状態を示す断面図である。
【図6】 係合突起部を形成するための成形装置の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
30…開口部突出缶蓋、 31…開口仮封止栓、 32…缶胴、 38…係合突起部、 39…折り畳部、 40…最上層、 41…開口部、 42…最下層、 43…スコア線、 44…開口片、 52…第一円筒部、 54…第二円筒部、 55…第二仮止め突起部、 57…環状突出部、 58…開口嵌合凸部、
70…突出部、 80…成形装置。
Claims (2)
- 缶胴の開口端に巻き締め固着されるフランジ部を外周部に備えた缶蓋であって、その軸線方向にこのフランジ部よりも外方へ突出した環状の突出部が形成されると共に、この突出部に、両端部が離隔した曲線状を成し、かつ押圧力によって破断する易破断線で区画されたほぼ円形の開口片が設けられた缶蓋を、前記フランジ部により前記缶胴の開口端に巻き締め固着し、更に前記突出部に対して開口仮封止栓が前記開口片ならびに突出部の先端外周縁を覆った状態で冠着された開口仮封止栓付缶において、
前記突出部における先端面の周縁部が平坦面に形成されると共に、その平坦面を成す周縁部の内周側に、前記開口片が前記周縁部の面の高さ以下の高さであって、しかもその面の高さに近い高さになる様に設けられ、更に前記突出部の外周部に、傾斜した姿勢で円周方向に延び、かつ突出部における半径方向での突出量が両端部を除いてほぼ一定に設定された係合突起部が、円周方向で所定の間隔をあけて複数形成されると共に、
前記開口仮封止栓には、前記各係合突起部を覆う状態で前記突出部に対して嵌合可能な第一円筒部と、この第一円筒部の内周面に形成され、かつ前記係合突起部に対して係合可能な第一仮止め突起部と、第一円筒部とは軸線方向での反対側に突出し、かつ前記各係合突起部を覆う状態で前記突出部に対して嵌合可能な第二円筒部と、この第二円筒部の内周面に、円周方向で所定の間隔をあけて複数設けられると共に、前記係合突起部の傾斜に対応して傾斜し、かつ係合突起部に対して係合可能な第二仮止め突起部と、第二円筒部の内周側において第二円筒部と軸線方向での同一方向に突出し、かつ前記開口片を押圧して前記易破断線を破断させる開口嵌合凸部とが備えられていることを特徴とする開口仮封止栓付缶。 - 前記開口嵌合凸部に、その開口嵌合凸部の基端部に向けて拡径し、かつ最大外径が前記易破断線を破断させた後に形成される開口部の内径よりも小さく設定されたテーパ部が備えられると共に、そのテーパ部と前記第二円筒部との間に、その第二円筒部と軸線方向での同一方向に突出し、前記開口嵌合凸部を前記開口部の内側に挿入させ、かつ前記第二仮止め突起部を前記係合突起部に係合させた状態で、開口部の内周縁に沿って密着する環状突出部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の開口仮封止栓付缶。
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