JP3775952B2 - 難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ、耐衝撃性の良好な、高い難燃性を有するポリカーボネート系難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性、耐衝撃性等が良好である性質を有し、電気、電子機器、及び自動車分野等の幅広い用途に使用されている。またかかる樹脂単独では不十分な性質に対しては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、又はABS樹脂、AS樹脂等に代表されるスチレン系樹脂等とのブレンドした樹脂組成物とすることにより、その補強をすることで、更に広い分野において対応し、多くの製品に使用されている。
【0003】
近年は、これらの製品の安全性を高めるために、特にオフィスオートメーション機器や、家電製品等において難燃性が要求されており、特に近年、材料の絶対量を低くし、軽く、薄くという観点から、より薄肉成形品での難燃性が必要とされている。この場合、成形品の薄肉部分は樹脂の溶融滴下(ドリップ)が発生しやすいため、他の可燃物に燃え広がるおそれを内在する。従って、これらの用途に使用される樹脂組成物には、まずドリップしない高度の難燃性が要求される。
【0004】
難燃性を発現させる為には、各種方法が存在するが、ポリカーボネート系樹脂又はポリカーボネート系樹脂と他の熱可塑性樹脂との樹脂組成物の場合、通常はハロゲン系化合物の難燃剤及びアンチモン化合物等の難燃助剤が添加されている。しかし、この様な難燃剤は、一般に加工時或いは燃焼時に腐食性ガスの発生等があり成形加工時の金型の保守による工数増加等の問題があり、また場合によっては将来における製品廃棄時の環境への影響等の懸念もあり、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有しない難燃性樹脂組成物が望まれているのが現状である。
【0005】
また、ポリカーボネート系樹脂に対しては、従来から種々の非ハロゲン系難燃剤の使用が試みられており、特に有機リン系の化合物が現在広く使用されていると共に、多くの研究もなされている。かかる化合物としては、代表的にはトリフェニルフォスフェート(TPP)が挙げられる。しかしながら、TPPの添加は組成物の耐熱性を大きく低下させ、かつ、TPPの揮発性が高い為に、押出し時や成形時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があり、従来使用していたハロゲン系難燃剤を含有するポリカーボネート系難燃性樹脂組成物を代替するには不十分であった。
【0006】
さらに、上記問題に対し、縮合リン酸エステルを用いて樹脂組成物の性能を向上させる方法が多く提案されており、例えば特開平2−115262号公報、特開平6−228426号公報等に記載されている。しかしながら、かかる縮合リン酸エステルを用いても未だ耐熱性の十分な樹脂組成物は得られず、また、縮合リン酸エステルは、その多くが液体であることから、樹脂との混練には液注装置が必要となり混練時のハンドリング性にも問題があった。
【0007】
一方、ビフェノール誘導体含有環状リン酸エステル系化合物は、製造法に関してIndian Jounal of Chemistry Sect.B(1985),24B(11),1164−5で報告されているが、具体的用途に関しては触れられておらず、難燃剤としての有用性については一切記載されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、耐熱性に優れ、ハンドリング性の良好な、高度な難燃性を有するポリカーボネート系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するために、鋭意検討した結果、ポリカーボネート系樹脂もしくはポリカーボネート系樹脂とポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂とのブレンド物に、特定のビフェノール誘導体含有環状リン酸エステル系化合物を配合することにより、驚くべきことに、高度の難燃性を発揮すると共に、耐熱性に非常に優れ、ハンドリング性の良好なポリカーボネート系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、(A)ポリカーボネート系樹脂(A成分)99〜40重量%、(B)ポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B成分)0〜55重量%および(C)下記式(1)で表される骨格を有する環状リン酸エステル化合物(C成分)1〜20重量%からなる難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、mおよびnはそれぞれ0〜4の整数であり、R1は炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、あるいは置換又は非置換の炭素数3〜14の芳香族炭化水素基を表わし、R2およびR3は互いに同一または異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。)
【0012】
本発明のA成分として使用するポリカーボネート系樹脂とは、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂、または二価フェノール及び脂肪族二酸とカーボネート前駆体を反応させて得られるポリエステルカーボネート樹脂であり、芳香族ポリカーボネート樹脂が好適に使用される。
【0013】
使用される二価フェノールとしては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと称する)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが挙げられる。好ましい二価フェノールはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系であり、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0014】
脂肪族二酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族二酸である。かかる脂肪族二酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであっても良く、またα、ω−ジカルボン酸が好ましい。好ましい脂肪族二酸の例としては、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、セバシン酸およびドデカン二酸が特に好ましい。
【0015】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0016】
ポリカーボネート系樹脂を製造するに当り、上記二価フェノールを単独で用いても又は二種以上を併用してもよく、又二価フェノール及び脂肪族二酸をそれぞれ単独で用いても又は二種以上を併用してもよい。かかる二価フェノール及び脂肪族二酸の含有割合は任意に調整可能であるが、かかるポリカーボネート系樹脂中少なくとも40モル%以上が、ビスフェノールA由来のものであることが望ましい。また、脂肪族二酸成分はかかるポリカーボネート系樹脂中20モル%以下であることが耐熱性及び難燃性の向上という観点から好ましい。ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、二種以上のポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
【0017】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限する必要はないが、あまりに低いと強度が十分でなく、あまりに高いと溶融粘度が高くなり成形し難くなるので、粘度平均分子量で表して通常10,000〜50,000、好ましくは、15,000〜40,000である。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求めたものである。
ηSP/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10-4M0.83
(但し[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度で0.7)
【0018】
次にポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いる界面重縮合法では、通常酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、及びピリジン等のアミン化合物が挙げられる。脂肪族二酸を含有する場合には、かかる脂肪族二酸を予めナトリウム塩等の塩の形として、これを二価フェノールが存在する反応容器中に添加する等の方法が好ましく使用できる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。又反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。尚、分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0019】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノールを炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌し、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら反応を完結させる。かかる反応の初期段階で二価フェノール等と同時に又は反応の途中段階で末端停止剤を添加させることができる。また、反応を促進するためにエステル交換反応に用いられる触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等があげられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。又脂肪族二酸を含有する場合には、かかる脂肪族二酸を予めジフェニルエステル等のエステルの形とすることが好ましい。
【0020】
本発明のB成分であるポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂とは、ポリカーボネート系樹脂にブレンド可能な熱可塑性樹脂であれば、特に制限するものではなく、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
これらのうち、ポリカーボネート系樹脂との相溶性の観点から、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び熱可塑性ポリエステルエラストマーから選択された1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。
【0022】
本発明でいうスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等のスチレン誘導体の単独重合体又は共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレン及び/又はスチレン誘導体、又はスチレン及び/又はスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。かかるスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SEPS)、衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。尚かかるスチレン系樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。またポリカーボネート系樹脂との相溶性改良等を目的として、かかるスチレン系樹脂に無水マレイン酸やN置換マレイミドといった官能基を持つ化合物を共重合することも可能である。これらの中でも耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましく、耐衝撃性の観点からABS樹脂が最も好ましい。また、スチレン系樹脂を2種以上混合して使用することも可能である。
【0023】
かかるABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜80重量%であるのが好ましい。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を挙げることができ、またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン及びα−メチルスチレンを挙げることができる。かかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の含有割合は、かかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%が好ましい。更にメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することができ、これらの含有割合はABS樹脂中15重量%以下であるものが好ましい。このABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよく、また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
【0024】
本発明でいう芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸とジオール、又はそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0025】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
【0026】
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0027】
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
具体的なポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等のような共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートが好ましく使用できる。
【0029】
かかるポリエステル系樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水又は低級アルコールを系外に排出することにより行われる。
【0030】
またポリエステル系樹脂の分子量については、o−クロルフェノールを溶媒としてで25℃で測定した固有粘度が0.6〜1.3、好ましくは0.75〜1.15である。
【0031】
本発明で使用するポリアリレート樹脂とは、全芳香族ポリエステル樹脂全体を指すものである。ポリアリレート樹脂の呼称は、非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂のみを指す場合もあるが、本発明においては、いわゆる液晶ポリマーと称されるタイプの結晶性ポリエステル樹脂を含むものである。
【0032】
本発明で使用する非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂とは、二価フェノール、又は二価フェノールとハイドロキノン及び/又はレゾルシノールをジオール成分とし、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸をジカルボン酸成分とする全芳香族ポリエステル樹脂をいう。かかる二価フェノール成分としては、前記ポリカーボネート系樹脂の説明において記載したようなビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系が好ましく使用できるが、特にビスフェノールAが好ましい。またハイドロキノン及び/又はレゾルシノールの使用は、本発明の樹脂組成物の耐薬品性を向上させる点から好ましく使用できるものである。かかる場合、特にハイドロキノンの使用が好ましい。
【0033】
非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂の成形加工製及び耐薬品性を高めるのに好ましい態様の1つとしては、ハイドロキノンとビスフェノールAとをジオール成分とし、イソフタル酸を酸成分として、ハイドロキノンとビスフェノールAとの割合は50/50〜70/30当量%とするものが挙げられる。また本発明の樹脂組成物の耐熱温度を高めるのに有用な他の1つの態様としては、ビスフェノールAをジオール成分とし、テレフタル酸を酸成分として使用する場合が挙げられる。
【0034】
かかる非晶性の全芳香族ポリエステルの製造方法としては特に制限はないが、例えば、酸成分としてテレフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを用い、ジオール成分とアルカリ成分等の触媒を用いて反応させる界面重合法、又は溶液重合法により製造する方法が挙げられる。又、酸成分としてテレフタル酸アリールエステル又はイソフタル酸ジアリールエステルを用い、チタンテトラブトキシド等のチタン化合物の他、ポリエステル重合体の溶融重縮合触媒として既に知られているゲルマニウム化合物、アンチモン化合物及び錫化合物等の触媒を用いてジオール成分と反応させる溶融重合法、及び酸成分としてテレフタル酸又はイソフタル酸を用い、ジオール成分としてp―ジアセトキシベンゼンや2,2’―ビス(4―アセトキシフェニル)プロパンを用い、上記の溶融重縮合触媒を用いて反応させる溶融重合法等を適宜使用することが可能である。
【0035】
本発明の非晶性の全芳香族ポリエステル樹脂はフェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、35℃にて測定した固有粘度が、耐熱性、成形加工性の観点から0.3〜1.2となることが好ましく、特に、0.4〜0.9が好ましい。
【0036】
本発明に使用する結晶性全芳香族ポリエステル樹脂とは、1種以上のアルキレン基を含有しない二価フェノールと、1種以上の芳香族ジカルボン酸及び/又は1種以上の芳香族ジヒドロキシカルボン酸から得られるものである。より具体的には、かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールをアセテート等の誘導体とし、かかる二価フェノールの活性を高めたものを使用する方法や、又はかかる芳香族ジカルボン酸を酸クロリド及びフェニルエステル等の誘導体としカルボン酸の活性を高めたものを使用する方法から得られるものである。さらに芳香族ジカルボン酸を直接使用し、p−トルエンスルホニルクロリド等の縮合剤によりカルボン酸の活性を高める方法により得られたものが使用できる。
【0037】
かかるアルキレン基を含有しない二価フェノールのうち好ましいものとしては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0038】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂に使用する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0039】
更に芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼン、1−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼン、2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレン、及びその芳香族環に1個以上の低級アルキル基、ハロゲノ基、フェニル基等の非反応性官能基を含むもの等が挙げられる。
【0040】
本発明の結晶性全芳香族ポリエステル樹脂の好ましい態様の1つとしては、1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと2−カルボキシ−6−ヒドロキシナフタレンとを、70/30〜85/15当量%とするものが挙げられる。また他に1−カルボキシ−4−ヒドロキシベンゼンと4,4’−ジヒドロキシジフェニルとテレフタル酸とを、40/30/30〜30/20/20当量%とするものが挙げられる。
【0041】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が望ましい。
【0042】
本発明で使用するジエン系樹脂としては、1,2−ポリブタジエン樹脂、トランス−1,4−ポリブタジエン樹脂等ジエン構造を有する単量体単独またはこれと共重合可能な単量体との共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
本発明で使用するポリアミド樹脂としては、例えば環状ラクタムの開環重合体、アミノカルボン酸の重縮合体、2塩基酸とジアミンとの重縮合体等が挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)等の脂肪族−芳香族ポリアミドおよびこれらの共重合体および混合物を挙げることができる。
【0044】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂としては、2,6−ジメチルフェノールの重合体、及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの重合体等が挙げられ、特に2,6−ジメチルフェノールの重合体、すなわちポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の使用が好ましい。かかるポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば塩化第一銅とピリジン等のコンプレックスを触媒として使用し、2,6−キシレノールを酸化重合したものが使用でき、また得られたポリフェニレンエーテル樹脂の分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは0.30〜0.55dl/gの範囲である。
【0045】
本発明において使用されるポリスルホン樹脂とは、ビスフェノールAとジクロロジフェニルスルフォンから得られるものが挙げられる。かかる化合物をジメチルスルホキシド溶媒中、水酸化カリウム等の存在下、脱塩化カリウムの縮合反応により得ることができる。
【0046】
本発明において使用されるポリフェニレンサルファイド樹脂とは、p−ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムの脱塩化ナトリウム反応により得ることができるものである。
【0047】
本発明において使用されるポリアルキルメタアクリレート樹脂とは、メチルメタクリレートを主成分とするものであり、メチルメタクリレート単独の重合体、もしくはその共重合体である。かかる共重合体の共重合成分としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、又エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、1種または2種以上用いてよい。
【0048】
かかるポリアルキルメタクリレート樹脂におけるメチルメタクリレート成分の割合としては、ポリアルキルメタクリレート樹脂100重量%中、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上含有するものである。さらに共重合成分としてはメチルアクリレートがより好ましく使用できる。
【0049】
本発明で使用する熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、有機ポリイソシアネート、ポリオール及び官能基を2乃至3個有し且つ分子量が50〜400の鎖延長剤の反応により得られるものであり、各種熱可塑性ポリウレタンエラストマーが使用可能である。かかる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えばクラレ(株)製「クラミロンU」(商品名)等容易に入手可能である。
【0050】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、二官能性カルボン酸成分、アリキレングリコール成分、及びポリアルキレングリコール成分を重縮合して得られるものであり、各種熱可塑性ポリエステルエラストマーの使用が可能である。かかる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば東洋紡(株)製「ペルプレン」(商品名)、帝人(株)製「ヌーベラン」(商品名)の等容易に入手可能なものである。
【0051】
B成分として使用されるポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂のうち、ポリカーボネート系樹脂との相溶性、及び難燃性の観点から、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性ポリエステルエラストマーから選択される1種又は2種以上がより好ましく使用でき、難燃剤成分の高い熱安定性を有効に活かす観点から、更に好ましくはスチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂および芳香族ポリエステル樹脂とポリアリレート樹脂とのブレンド物が使用される。
【0052】
本発明のC成分として使用される環状リン酸エステル化合物は、下記式(1)で表される骨格を有する化合物である。
【0053】
【化3】
【0054】
(式中、mおよびnはそれぞれ0〜4の整数であり、R1は炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、あるいは置換又は非置換の炭素数3〜14の芳香族炭化水素基を表わし、R2およびR3は互いに同一または異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。)
【0055】
前記式中、R1は炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、あるいは置換又は非置換の炭素数3〜14の芳香族炭化水素基であり、置換又は非置換の炭素数3〜14の芳香族炭化水素基が好ましく、置換又は非置換の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0056】
R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−ジフェニルフェニル基、アントリル基、4−ベンゼンスルホニルフェニル基、ピリジル基およびトリアジル基等が挙げられ、なかでもフェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−ジフェニルフェニル基、アントリル基および4−ベンゼンスルホニルフェニル基が好ましく、特に好ましくはフェニル基、クレジル基およびキシリル基である。
【0057】
また、前記式中R2およびR3の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基およびネオペンチル基等が挙げられる。また、前記式中mおよびnは0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0058】
かかる環状リン酸エステル化合物は、例えばオキシ3塩化リンの塩素の一部をフェノール、2,6−ジメチルフェノール、クレゾール等のフェノール類で変成したアリールリン酸ジクロライドと、2,2′−ビフェノールとを反応させる方法で容易に製造することが可能である。かかる反応は、例えば、Indian Jounal of Chemistry Sect.B(1985),24B(11),1164−5に記載されている。
【0059】
次に各成分の含有量について説明する。本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、A成分99〜40重量%、B成分0〜55重量%およびC成分1〜20重量%からなり、好ましくはA成分98〜50重量%、B成分0〜45重量%およびC成分2〜18重量%からなり、より好ましくはA成分97〜55重量%、B成分0〜40重量%およびC成分3〜15重量%からなる。B成分が55重量%を越えると難燃効果が不十分となり好ましくない。C成分が1重量%未満では難燃効果が十分でなく、20重量%を越えると耐熱性および難燃性が低下し、ハンドリング性も劣り好ましくない。
【0060】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物には、さらに(D)ドリップ防止剤(D成分)を配合することが好適に採用される。かかるドリップ防止剤としては、超高分子量ポリエチレン及びフッ素樹脂が挙げられ、フッ素樹脂が好ましく用いられる。フッ素樹脂には、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。また滴下防止性能を損なわない範囲で、前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、アクリレート等の重合性モノマーを共重合してもよい。これらのフッ素樹脂の中で、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。好ましいポリテトラフルオロエチレンはASTM規格によれば、タイプ3と呼ばれるものである。
【0061】
なお、フッ素樹脂は慣用の方法、例えば、米国特許第2,393,967号明細書に記載の乳化重合法等により得ることができる。またフッ素樹脂は固体状態でも、また乳濁液の状態でも使用可能であるが、本発明の樹脂組成物においては樹脂の熱安定性等の点から、固体状態での使用が好ましい。
【0062】
D成分のドリップ防止剤は、A〜C成分よりなるポリカーボネート系樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部配合される。かかる範囲内では、ドリップ防止効果により良好な難燃性が得られ、樹脂成形品の表面に不均一感が生じ難く外観に優れ好ましい。
【0063】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与するものとして従来から知られている、本発明のC成分以外のリン酸エステル、赤リン、スルホン酸金属塩及びシリコーン系の難燃剤を使用することも可能である。これらの難燃剤の使用量は、C成分の重量を1とした場合に、重量比で好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下の範囲である。更に、耐衝撃性の改良を目的としてアクリル系エラストマー、アクリル重合体とポリオルガノシロキサン重合体がIPN構造を有するエラストマー等の弾性重合体を添加することも可能である。また種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤等の劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、摺動剤、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の補強繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト、ガラスフレーク等の充填剤、顔料等の着色剤等を添加してもよい。前記添加剤の使用量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、機械的強度等を損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適宜選択できる。
【0064】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、通常ポリカーボネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂、環状リン酸エステル化合物及びドリップ防止剤等のその他の各成分を別々の供給機より、又はかかる成分の一部又は全部を混合機により予備混合した混合物及び混合物以外の各成分を各々の供給機より、混練機に供給し、溶融混合することで製造される。混合機としては例えば、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター及びヘンシェルミキサー等が挙げられる。また混合機としては種々の溶融混合機が使用できるが、例えば、ニーダー、一軸又は二軸押出機等が使用できる。なかでも二軸押出機等を用いて樹脂組成物を溶融して押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。この場合例えば200〜320℃、好ましくは220〜290℃程度の温度で1個以上の脱気孔を備えた押出機を使用し、減圧下において溶融混練することが好ましい。
【0065】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、家庭電化製品、OA機器等のハウジングやエンクロージャー、携帯情報機器等のハウジングやケーシング等の種々の用途に好適に使用される。このような成形品は慣用の方法、例えば、ペレット状の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物を、射出成形機を用いて、例えば220〜290℃程度のシリンダー温度で射出成形することにより製造することができる。
【0066】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[参考例1] ビフェニルフェニルホスフェート(前記式(1)において、mおよびnは0、R1はフェニル基である化合物)の合成
撹拌装置、還流冷却管、滴下漏斗、オイルバスを備えた10リットル三つ口フラスコに、オキシ塩化リン5757.7g、無水塩化マグネシウム15.35gを仕込み、窒素還流下でオイルバスを約110℃に加熱し、オキシ塩化リンを還流する状態とした後、滴下漏斗よりフェノール1024.3gをクロロベンゼン1707mlに溶解した溶液を約30分かけて注入し、その後30分更に反応させた。発生する塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。これによりモノフェニルジクロロホスフェートを得た。反応後溶媒と過剰のオキシ塩化リンを留去した。31P−NMR(重クロロホルム溶媒)測定を行い、3.4ppmの単一ピークを確認した。
【0068】
次に撹拌装置、還流冷却管、滴下漏斗、オイルバスを備えた5リットルの三つ口フラスコにピリジン227.9g、2,2′−ビフェノール259.9g、ジオキサン1Lを加え、窒素雰囲気下、室温でメカニカルスターラーにより攪拌した。この溶液に、上記で得たモノフェニルジクロロホスフェート300.4gとジオキサン1Lとの混合液を滴下ロートから徐々に滴下した。滴下終了後、還流下1時間30分加熱し反応を完結させた。その後溶媒を留去し、目的生成物458gを得た。31P−NMR(重クロロホルム溶媒)より、−4.5ppmに単一のピークであることを確認し、ビフェニルフェニルホスフェート(以下、この化合物をBPPと称する。)であることを確認した。示差走査熱量計(DSC)分析による融点は82℃であった。
【0069】
[参考例2] ビフェニル−2,6−ジメチルフェニルホスフェート(前記式(1)においてmおよびnは0、R1はキシリル基である化合物)の合成
参考例1において、フェノール1024.3gを2,6−ジメチルフェノール1330gに変更した以外は参考例1と同様にして、2,6−ジメチルフェニルジクロロホスフェートを合成後、2,6−ジメチルフェニルジクロロホスフェート334.6gを参考例1と同様にして2,2′−ビフェノールと反応させ、ビフェニル−2,6−ジメチルフェニルホスフェート(以下、この化合物をBDMPと称する。)を得た。示差走査熱量計(DSC)分析による融点は98℃であった。
【0070】
[参考例3] ビフェニル−m−クレジルホスフェート(前記式(1)においてmおよびnは0、R1はクレジル基である化合物)の合成
参考例1において、フェノール1024.3gをm−クレゾール1176.8gに変更した以外は参考例1と同様にして、m−クレジルジクロロホスフェートを合成後、m−クレジルジクロロホスフェート315gを参考例1と同様にして2,2′−ビフェノールと反応させ、ビフェニル−m−クレジルホスフェート(以下、この化合物をBCPと称する。)を得た。示差走査熱量計(DSC)分析による融点は79℃であった。
【0071】
[実施例1〜16、比較例1〜7]
表1および表2記載の各成分を、表1および表2記載の配合割合(重量部)で、さらに熱安定剤としてトリメチルフォスフェート(大八化学工業(株)製)を0.05重量部加え、タンブラーを使用して均一に混合した後、15mmφベント付き二軸押出機((株)テクノベル社製 KZW−15)にて樹脂温度260℃でペレット化し、得られたペレットを熱風乾燥機にて95℃で4時間乾燥した。このペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製J75Si)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃で各テストピースを成形した。但し、比較例2および比較例5については、ペレットの乾燥温度は70℃とした。作成したテストピースを用いて、下記の難燃性、耐熱性およびハンドリング性の評価を行った。
【0072】
(1)難燃性
難燃性は厚さ1.6mmのテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に従って評価した。なお、評価結果のnotVとは、Vランクに満たない不合格品を意味する。
【0073】
(2)耐熱性(荷重たわみ温度)
荷重たわみ温度(HDT)は、ASTM−D648に準拠した方法により1/4インチ試験片を用いて荷重1.81MPa(18.5kgf/cm2)で測定した。
【0074】
(3)押出し時のハンドリング性およびガス発生の有無
押出し時のサンプル調製で操作性の良否を見た。また、押出し機のノズル側から発生するガスを目視で観察し、ガスの発生が観察されるものを不良とした。さらに、押出し時にシュートアップやストランド引き不良が起こるものを成形不良とした。
【0075】
なお、表1および表2記載の各成分を示す記号は以下の通りである。
(A成分)ポリカーボネート系樹脂
PC;ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製 パンライトL−1225WP、粘度平均分子量22,500)
(B成分)ポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂
ABS;ABS樹脂(三井東圧(株)製 サンタックUT−61)
AS;AS樹脂(旭化成工業(株)製 スタイラックAS769)
PET;ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製 TR8580)
PBT;ポリブチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製 TRB−J)
U8000;ポリアリレートとポリエチレンテレフタレートとのアロイ樹脂(ユニチカ(株)製 U−8000)
PAR;イソフタル酸成分と、ハイドロキノン/ビスフェノールAの比が7/3(モル比)であるジフェノール成分とからなり、フェノール/テトラクロロエタンの比が6/4(重量比)の混合溶媒での35℃における固有粘度が0.45のポリアリレート樹脂(帝人(株)製)
PBN;o−クロロフェノール溶媒での35℃における固有粘度が0.79であるポリブチレンナフタレート樹脂(帝人(株)製)
A950;液晶ポリアリレート樹脂(ポリプラスチックス(株)製 ベクトラA950)
(C成分)環状リン酸エステル化合物
参考例1〜3において合成したBPP、BDMPおよびBCPを使用した。
(C成分以外のリン酸エステル)
TPP;トリフェニルホスフェート(大八化学(株)製 S−4)
CR−733S;縮合リン酸エステル{大八化学(株)製 レゾルシノール−ビス(ジフェニルホスフェート) 商品名CR−733S}
(D成分)フッ素樹脂
PTFE;ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製 ポリフロンFA500)
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
これらの表から明らかなように、従来のリン酸エステル系難燃剤を用いた場合、例えば比較例3では樹脂組成物の難燃性は充分であるが、難燃剤自体が液体のため樹脂との混練時にハンドリング性の問題があり、比較例7では用いている難燃剤の揮発性が高く、溶融押出し中にノズル部より多量のガスが目視で確認された。また、これらのリン酸エステル系難燃剤を用いた場合は、本発明の環状リン酸エステル化合物を用いた場合(実施例3および実施例4)に比べ、耐熱性に劣ることが判る。また、比較例2や比較例5のように規定量よりもC成分を多く配合すると溶融押出し時にシュートアップやストランド引き不良が起こり成形不良となることが判る。
【0079】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤を含むことなく高度な難燃性を有し、耐熱性も良好で、溶融押出し時のハンドリング性に優れることから、難燃性、耐熱性、その他耐薬品性等が必要とされるOA機器、家電製品等に有用である。
Claims (6)
- 前記A成分、B成分およびC成分の合計量100重量部あたり、さらに、(D)ドリップ防止剤(D成分)0.01〜3重量部を含有する請求項1記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
- B成分のポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアルキルメタアクリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーから選択された1種又は2種以上である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
- B成分のポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
- B成分のポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂が、芳香族ポリエステル樹脂およびポリアリレート樹脂から選択された1種又は2種である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
- C成分の環状リン酸エステル化合物が、前記式(1)において、mおよびnは0である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
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