JP3769312B2 - コハク酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はマレイン酸の接触水素化反応によりコハク酸を製造する方法に関する。更に詳しくは、バッチ式または連続式接触水素化反応によりマレイン酸からコハク酸を製造する際に、それぞれ、繰り返しまたは長時間にわたり同一水素化触媒を用いて高収率でコハク酸を製造する方法に関する。
【0002】
コハク酸は一般に食品添加物、有機中間体などとして使用されている有用な化合物である。
【0003】
【従来の技術】
貴金属を用いた水素化触媒の存在下にマレイン酸を水素化してコハク酸を得ることは公知であり、バッチ式反応については特公昭44−29246号、特公昭6−11724号および特公昭6−11725号各公報に、また連続式反応については特開平2−121946号公報に記載されている。
【0004】
現在、工業的には、コハク酸はバッチ式反応によって製造されている。具体的には、加圧反応器に原料マレイン酸の水溶液と水素化触媒とを仕込み、これに水素を導入して水素化反応を行わせ、反応終了後コハク酸含有反応液を水素化触媒と分離して反応器から取り出した後、新たな原料マレイン酸の水溶液を反応器に導入して再度水素化反応を行わせるとの操作を数回ないし数十回繰り返す。
【0005】
しかし、同一水素化触媒を用いてバッチ式反応を繰り返して行くと、コハク酸の収率が低下して所定の収率を得るためには長い反応時間を必要とするようになる。例えば、第1回目のバッチ式反応に比べて、反応時間を2倍以上と非常に長い反応時間とすることが必要となる場合もある。こうした場合、通常、原因は水素化触媒の劣化と考え、触媒の廃棄、交換が行われてきた。
【0006】
しかしながら、所定の収率を得るために反応時間を延長すること、また触媒を頻繁に交換することは、貴金属の水素化触媒が高価であることから、経済的には不利であり、工業的には望ましいことではない。
【0007】
また、コハク酸の製造を連続式反応で行なう場合には、通常、マレイン酸に対して過剰量の水素を反応系内に導入する。触媒を含む反応系内を通過後の未反応水素ガスをそのまま廃棄することは不経済であるため、この未反応水素ガスは、通常、循環して再使用するが、反応の進行とともに徐々にコハク酸の収率低下が認められるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、バッチ式または連続式接触水素化反応によりマレイン酸からコハク酸を製造する際に起こる上記の問題点、すなわちコハク酸収率の低下、ひいては高価な水素化触媒の頻繁な交換にともなうコストアップなどを解決しようとするものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、バッチ式または連続式接触水素化反応によりマレイン酸からコハク酸を製造する方法であって、それぞれ、繰り返して、または長時間にわたって、同一水素化触媒を用いて高収率でコハク酸の製造を可能とする方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、反応系の気相中に含まれる一酸化炭素(CO)濃度が水素化反応に大きく関与すること、またその濃度を一定濃度以下とすると安定的に高い収率でコハク酸を製造できることを見出した。
【0011】
すなわち、前記のようなバッチ式反応を何度も繰り返してコハク酸収率が低下した時の反応器内の気相部のガス組成を分析したところ意外なことに一酸化炭素が含まれていることが判明した。マレイン酸の接触水素化反応の際に一酸化炭素が生成する理由は明らかではないが、通常、反応終了後にコハク酸含有反応液の取り出しと同時に反応器内のガスも完全に排出することはないので、操作を何度も繰り返すと反応器内の気相中には水素化反応中に生成した一酸化炭素が徐々に蓄積されるものと考えられる。そこで、コハク酸収率が低下した時の反応器内に残存するガスを完全に排出して、新たな水素を導入して、反応器内の気相部の一酸化炭素濃度を検出限界(10ppm)以下にして、水素化反応を行ったところ同一水素化触媒を使用しているにもかかわらず、第1回目のバッチ式反応と同程度のコハク酸収率が得られることが分かった。
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、次のとおりのものである。
(1)マレイン酸水溶液と水酸化触媒とを含む反応系に水素ガスを供給してバッチ式に水素化反応を行ってコハク酸を製造する方法であって、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下に制御しながら、水素化反応を同一水素化触媒の存在下に繰り返して行うことを特徴とするコハク酸の製造方法。
(2)マレイン酸水溶液と水酸化触媒とを含む反応系に水素ガスを供給してバッチ式に水素化反応を行ってコハク酸を製造する方法であって、水素化反応を繰り返して行って水素化触媒の性能が低下したときには、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にして水素化触媒を再生することを特徴とするコハク酸の製造方法。
(3)反応系の気相が実質的に水素からなる上記(1)または(2)のコハク酸の製造方法。
(4)マレイン酸を水媒体中で水素ガスの存在下に水素化触媒に接触させて連続式にコハク酸を製造する方法であって、水素化反応後の未反応水素ガスを反応系に循環し、かつ、反応系に供給する水素ガス中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にして、水素化反応を同一水素化触媒の存在下に繰り返して行うことを特徴とするコハク酸の製造方法。
(5)マレイン酸を水媒体中で水素ガスの存在下に水素化触媒に接触させて連続式にコハク酸を製造する方法であって、水素化反応後の未反応水素ガスを反応系に循環し、水素化反応を繰り返して行って水素化触媒の性能が低下したときには、反応系に一酸化炭素濃度が2000ppm以下の水素ガスを供給して水素化触媒を再生することを特徴とするコハク酸の製造方法。
(6)マレイン酸水溶液と水素ガスとを水素化触媒を充填した固定床に供給して連続的に水素化反応を行う上記(4)または(5)のコハク酸の製造方法。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<バッチ式反応>
バッチ式反応にしたがってコハク酸を製造する場合、バッチ式反応それ自体は従来公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、加圧反応器にマレイン酸の水溶液と水素化触媒とを仕込み、この混合物を撹拌しながら水素ガスを導入して水素化反応を行わせ、反応終了後にコハク酸含有反応液を水素化触媒と分離して反応器から取り出す。引続き、新たなマレイン酸水溶液を反応器に導入して同一水素化触媒の存在下に水素化反応を行うとの操作を繰り返す。
【0015】
水素化触媒としては、従来公知の貴金属系水素化触媒を用いることができる。例えば、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)および白金(Pt)から選ばれる少なくとも一種の貴金属を含む水素化触媒を挙げることができる。これらのうち、白金およびパラジウム、特にパラジウムを含む水素化触媒が好適に用いられる。これら水素化触媒はそのまま使用することができるが、担体に担持し、所定の形状で使用することもできる。担体としては、シリカ、チタン、ジルコニアなどの酸化物またはこれらの複合酸化物、活性アルミナ、活性炭などを用いることができる。貴金属の担持量は、通常、担体の0.1〜10重量%である。活性炭の場合には、0.5〜5重量%とするのがよい。
【0016】
マレイン酸としては、一般に市販されているものを使用でき、反応に支障がなければ、その純度は特に問わないものである。無水マレイン酸の場合には、水に溶解してマレイン酸として使用する。
【0017】
水としては、通常、脱イオン水または水道水を使用するが、場合によっては、水素化反応後のコハク酸含有反応液からコハク酸を晶析し、ろ別した後の溶液を繰り返して使用することもできる。再使用する場合、溶液中のコハク酸濃度は液温度の飽和溶解度以下であればよい。
【0018】
水素としては、純粋な水素でもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスで希釈されてものも使用することができる。
【0019】
水素化反応は、大気圧ないし50kg/cm2までの水素加圧下で行うことができるが、通常、5〜30kg/cm2の水素加圧下に行うのが好ましい。水素圧力が低すぎると反応速度が遅く、反応完結までに時間がかかり、一方あまり高くしてもそれに見合った反応速度の増加は認められない。反応温度は20〜150℃、好ましくは80〜120℃である。反応温度が低すぎると反応速度が遅く、反応完結までに時間がかかり、一方高すぎるとリンゴ酸などの副生物が多くなって好ましくない。
【0020】
本発明により、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にしてバッチ式反応を行うことにより、使用する水素化触媒の活性を安定に保持して、バッチ式反応を繰り返し、高収率でコハク酸を製造することができる。反応系の気相中の一酸化炭素濃度はできるだけ少ないほうが好ましく、1500ppm以下、特に1000ppm以下とするのがよい。
【0021】
なお、水素ガスの反応系への供給に際しては、マレイン酸水溶液中に吹き込みながら行うのが好ましい。
【0022】
反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にするには、(1)反応終了後に反応系内の気相の一部または全部を反応系外に排出して気相部の一酸化炭素を水素ガスとともに反応系外に取り出す方法、(2)マレイン酸水溶液を仕込んで反応開始する前に気相の一部または全部を反応系外に排出する方法、(3)水素ガスを導入しながら、反応系内の気相の一部または全部を連続または間欠的に反応系外に排出する方法などの方法によって行うことができる。
【0023】
そのほか、マレイン酸水溶液の濃度を低くして一酸化炭素の生成を少なくする間接的な方法などによって行うことができるが、この方法はコハク酸収量が低下するので必ずしも工業的に好適な方法とはいえない。
【0024】
なお、反応系外に排出した一酸化炭素を含む水素ガスを、活性炭、一酸化炭素反応性物質などと接触させて一酸化炭素を除いた後、反応系に循環して使用することもできる。
【0025】
上記のような反応系内の気相部の一酸化炭素濃度の制御は、バッチ式反応を行う毎に行ってもよいが、通常、バッチ式反応を数回ないし数十回繰り返してコハク酸収率が低下した時点で行えばよい。
【0026】
バッチ式反応の好ましい態様によれば、同一水素化触媒を用いてバッチ式反応を繰り返して、コハク酸収率が低下したときには(この際、反応釜に残存する水素ガス中の一酸化炭素濃度が2000ppmを超えているとする)、例えば上記(1)の方法により一酸化炭素濃度を1500ppm以下、好ましくは1000ppm以下に調整した後、新たなマレイン酸水溶液を導入して水素化反応を行う。そして、さらに水素化反応を繰り返すことにより再度コハク酸収率が低下したときは、上記と同じ操作を繰り返す。このようにして、ほぼ同程度の反応時間で高いコハク酸収率を維持しながら、同一水素化触媒を用いてバッチ式反応を繰り返して実施することが可能となる。
【0027】
上記のように、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を制御することによりコハク酸収率が回復する理由は未だ明らかではないが、なんらかの理由により劣化した水素化触媒が再生されているものと考えられる。
【0028】
一酸化炭素濃度の測定は、ガスクロマトグラフィーや一酸化炭素の赤外吸収を利用した測定機器などを用いて行うことができる。また、簡易的な一酸化炭素の測定方法としては、マレイン酸の反応率から予め一酸化炭素の発生量を予測し、この値に基づいて反応系の気相中の一酸化炭素濃度を推定し、その濃度を制御してもよい。
【0029】
反応終了後のコハク酸含有反応液を水素化触媒と分離した後、冷却などによってコハク酸を晶析させた後、ろ別することによってコハク酸が得られる。なお、前記のとおり、コハク酸を分離した後の溶液にマレイン酸を添加して反応系に循環、供給することもできる。
【0030】
<連続式反応>
連続式反応それ自体は従来公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、固定床多管式または単管式の反応器、あるいは流動床反応器を用いて行うことができる。特に、多管式反応器に水素化触媒を充填した固定床にマレイン酸水溶液および水素ガスを供給することにより水素化反応を行うのが好ましい。マレイン酸水溶液および水素ガスを反応器の下部から供給しても、あるいは水素ガスを反応器の下部から、マレイン酸水溶液を上部から供給してもよい。
【0031】
連続式反応において、使用する水素化触媒、マレイン酸および水素、ならびに採用する反応条件(圧力および温度)などついてはバッチ式反応に関して説明したのと同じでよい。反応系の気相中の一酸化炭素濃度もできるだけ少ないほうが好ましく、1500ppm以下、特に1000ppm以下とするのがよい。
【0032】
連続式反応の場合、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にするには、一酸化炭素濃度が2000ppm以下の水素ガス、あるいは窒素、ヘリウム、アルゴンなどで希釈した水素ガスを反応系に供給すればよい。なお、反応系外に排出した一酸化炭素を含む未反応水素ガスをそのまま廃棄するのは経済的でないので、未反応水素ガスを循環使用するのが好ましい。
【0033】
連続式反応の好ましい態様によれば、同一水素化触媒を用い未反応水素ガスを循環しながら反応を行って、コハク酸収率が低下したときには(この際、未反応水素ガス中の一酸化炭素濃度は、例えば2000ppmを超えている)、未反応水素ガスの循環使用をやめて、反応器を窒素で置換した後、フレッシュな水素、例えば一酸化炭素濃度が検出限界(10ppm)以下の水素を反応器に供給して、反応を継続する。そして、同一水素化触媒を用い、未反応水素ガスを循環しながら更に反応を継続することにより、再度コハク酸収率が低下したときには上記と同様の操作を繰り返す。このようにして、同一水素化触媒を用いて長時間にわたり、ほぼ同程度の接触時間で、コハク酸を高収率で製造することが可能となる。
【0034】
また、水素ガスの一部を一酸化炭素ガスとともに連続または間欠にガスパージしながら連続式に行ってもよい。そのほか、反応後の未反応水素ガスを活性炭、一酸化炭素反応性物質などと接触させて一酸化炭素濃度を2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、特に1000ppm以下にした後、反応器に循環して使用してもよい。
【0035】
反応終了後のコハク酸含有反応液は、冷却などによってコハク酸を晶析させた後、ろ別することによってコハク酸が得られる。なお、コハク酸を分離した後の溶液にマレイン酸を添加して反応系に循環、供給することもできる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、高いコハク酸収率を維持しながら、同一水素化触媒を用いてバッチ式反応を繰り返して実施することが可能となる。
【0037】
本発明によれば、連続式反応により、同一水素化触媒を用いて長時間にわたりコハク酸を高収率で製造することが可能となる。
【0038】
本発明によれば、水素化触媒の触媒活性が効果的に再生され、ひいては触媒寿命が延長される。このため、バッチ式反応の場合、高価な水素化触媒の頻繁な交換が必要でなくなり、コハク酸製造コストが削減できる。連続式反応の場合も同様にコハク酸製造コストが削減できる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0040】
実施例および比較例におけるマレイン酸転化率およびコハク酸収率の%はモル%を意味する。
【0041】
なお、水素ガス中のCO濃度は、1000ppm以上の場合はガスクロマトグラフィーにより、また1000ppm以下の場合には、赤外吸収値によるCOメーターにより測定した。
【0042】
実施例1
<バッチ式>
内容積1L(リットル、以下同じ)のステンレス製オートクレーブに無水マレイン酸220gと水420gとを仕込み、濃度40重量%のマレイン酸水溶液を調製した。これにPd5%担持粉末活性炭1.2gを添加した。タービン撹拌羽根を用いて600rpmで撹拌し、水素ガスを反応液中に吹き込みながら100℃まで昇温した。水素圧力は最大14kg/cm2であった。なお、使用した水素ガスを分析したところガス中のCO濃度は検出限界(10ppm)以下であった。2.5時間反応を行った後、水素ガスの供給を停止した。冷却後、オートクレーブ上蓋部に取り付けた液抜き出し管から反応液を抜き出した。反応釜残圧でPd触媒を含んだ反応液を押し出し、抜き出し管に取り付けたろ過器を用いてPd触媒と反応液との分離を行い清澄なコハク酸含有反応液を得た。この時の反応釜中の水素残圧は2.2kg/cm2であって、反応釜には水素ガスが残存していた。
【0043】
コハク酸含有反応液を分析したところ、マレイン酸転化率100%、コハク酸収率99.5%であった。また、反応後に反応釜中の水素ガスを分析したところガス中のCO濃度は50ppmであった。
【0044】
実施例2
<バッチ式>
実施例1の反応後、ろ過器出口からオートクレーブ側へ反応液の取り出しとは反対方向に、実施例1と同じ量の無水マレイン酸と水とを均一溶液として圧入した。この操作により、オートクレーブ上蓋部に取り付けた抜き出し管を通じてオートクレーブ本体に原料溶液とPd触媒とを仕込んだ。反応後の反応釜に残存した水素を排出せずに、かつ同じ条件下で水素化反応を39回繰り返した。なお、いずれの場合もマレイン酸転化率100%となるまで反応させた。40回目の反応では、反応時間3.4時間でマレイン酸転化率は100%、コハク酸収率は99.3%であった。反応後、反応釜中の水素ガスを分析したところCO濃度は2000ppmであった。
【0045】
実施例1〜2の結果から、反応後の反応釜に残存した水素を排出せずにバッチ式反応を繰り返すと水素ガス中のCO濃度が増加し、反応速度が低下していくことが分かる。
【0046】
実施例3
<バッチ式>
実施例2の40回目の反応後、反応釜に残存した水素を一部排出して、反応釜の水素残圧2.2kg/cm2を0.6kg/cm2にまで解圧した。その後、実施例1と同じ量の無水マレイン酸および水を仕込み、実施例1と同一触媒を用い、再び水素ガスを吹き込んで実施例1と同様にして反応を行ない、3.0時間で反応を終了させた。反応時間3.0時間で、マレイン酸転化率は100%、コハク酸収率は99.6%であった。反応後の反応釜中の水素ガスを分析したところ水素ガス中のCO含有量は1230ppmであった。
【0047】
この結果から、水素ガス中のCO濃度を2000ppmから1230ppmに低下させると、より短い反応時間で、ほぼ同程度のコハク酸収率が得られ、触媒活性が回復していることが分かる。
【0048】
実施例4
<バッチ式>
反応後の反応釜に残存した水素を排出せずに、実施例1と同じ量の無水マレイン酸および水を仕込み、実施例1と同一触媒を用い、かつ同じ条件下で水素化反応を55回繰り返した。なお、いずれの場合もマレイン酸転化率100%となるまで反応させた。56回目の反応では、反応時間3.8時間でマレイン酸転化率は100%、コハク酸収率は99.3%であった。反応後、反応釜中の水素ガスを分析したところCO濃度は2600ppmであった。
【0049】
そこで、実施例1と同量のマレイン酸および水を仕込み、引続き水素ガスを導入して一旦10.5kg/cm2まで昇圧した後、0.5kg/cm2まで解圧した。その後、水素ガスを吹き込んで実施例1と同様にして反応を行い、2.5時間で反応を終了させた。反応時間2.5時間でマレイン酸転化率は100%、コハク酸収率は99.6%であった。反応後の反応釜中の水素ガスを分析したところ水素ガス中のCO濃度は780ppmであった。
【0050】
この結果から、水素ガス中のCO濃度を2600ppmから780ppmに低下させると、より短い反応時間で、ほぼ同程度のコハク酸収率が得られ、触媒活性が回復していることが分かる。
【0051】
実施例5
<連続式>
Pd1%担持ペレット状成型活性炭(1.4〜2.8mm)触媒を22φ×400mmステンレス製反応管に充填した。反応管をオイルバスに入れ、100℃に保温した。水素ガスと原料マレイン酸水溶液(45重量%濃度)とを反応管の管底からそれぞれ連続的にフィードを行なった。水素ガス圧力20kg/cm2、ガス線速2.8cm/sとした。また、マレイン酸を20重量%水溶液とし、LHSV1.7hr-1(液線速2.6×10-4m/s)とした。この時、水素:マレイン酸モル比は8.3:1となる。なお、使用した水素ガスを分析したところガス中のCO濃度は検出限界(10ppm)以下であった。
【0052】
フィード開始後2時間経過し反応が安定したことを確認後、反応液組成と排出ガス組成を分析した。コハク酸収率は99.8%であり、排出ガス中のCO濃度は16ppmであった。
【0053】
実施例6
<連続式>
実施例5において、水素ガスとしてCO濃度が500ppmの水素ガスを用いた以外は実施例5と同様にして反応を行なった。
【0054】
フィード開始後2時間経過し、反応が安定したことを確認後、反応液を分析した。コハク酸収率は99.7%であった。この反応でのCO濃度では、反応収率にほとんど影響がないことが分かる。
【0055】
実施例7
<連続式>
実施例5において、水素ガスとしてCO濃度が4000ppmの水素ガスを用いた以外は実施例5と同様にして反応を行った。
フィード開始後2時間経過し反応が安定したことを確認後、反応液を分析した。コハク酸収率は44.0%であり、高濃度のCOガスの存在によって反応収率が低下することを確認した。
【0056】
そこで、反応後、反応管および配管を窒素で置換した。再び、COを含有しない水素を用いて実施例5と同じ条件で反応を行った。
【0057】
コハク酸収率は99.9%と実施例5と同程度であり、反応性の回復を確認した。また、排出ガス中のCO濃度は検出限界(10ppm)以下であった。
【0058】
Claims (6)
- マレイン酸水溶液と水酸化触媒とを含む反応系に水素ガスを供給してバッチ式に水素化反応を行ってコハク酸を製造する方法であって、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下に制御しながら、水素化反応を同一水素化触媒の存在下に繰り返して行うことを特徴とするコハク酸の製造方法。
- マレイン酸水溶液と水酸化触媒とを含む反応系に水素ガスを供給してバッチ式に水素化反応を行ってコハク酸を製造する方法であって、水素化反応を繰り返して行って水素化触媒の性能が低下したときには、反応系の気相中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にして水素化触媒を再生することを特徴とするコハク酸の製造方法。
- 反応系の気相が実質的に水素からなる請求項1または2記載のコハク酸の製造方法。
- マレイン酸を水媒体中で水素ガスの存在下に水素化触媒に接触させて連続式にコハク酸を製造する方法であって、水素化反応後の未反応水素ガスを反応系に循環し、かつ、反応系に供給する水素ガス中の一酸化炭素濃度を2000ppm以下にして、水素化反応を同一水素化触媒の存在下に繰り返して行うことを特徴とするコハク酸の製造方法。
- マレイン酸を水媒体中で水素ガスの存在下に水素化触媒に接触させて連続式にコハク酸を製造する方法であって、水素化反応後の未反応水素ガスを反応系に循環し、水素化反応を繰り返して行って水素化触媒の性能が低下したときには、反応系に一酸化炭素濃度が2000ppm以下の水素ガスを供給して水素化触媒を再生することを特徴とするコハク酸の製造方法。
- マレイン酸水溶液と水素ガスとを水素化触媒を充填した固定床に供給して連続的に水素化反応を行う請求項4または5記載のコハク酸の製造方法。
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