JP3764860B2 - 流量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体の流量を計測する流量計測装置に係り、例えば、内燃機関の吸入空気流量を測定するのに好適な流量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの内燃機関の吸入空気通路に設置され、吸入空気流量を計測する流量計測装置としては、熱式のものが質量流量を直接検知できることから主流となってきている。排気規制強化,燃費向上の点から、エンジンにおいて吸気脈動が発生する状態および脈動が大きくなりエンジンからエアクリーナーの方向に向かう空気流(逆流)が発生する状態においても、高精度に流量を計測する流量計測装置が必要となってきている。上述のエンジン状態においても高精度に空気流量を計測するためには、脈動に追従可能な応答速度及び方向検知機能を有する流量計測装置が必要である。一例として、特開平11−248505号公報に記載のものが公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平11−248505号公報では、順流に対する副通路内流体の流れが悪いので、順流に対する検出制度がよくない。また、脈動及び逆流発生時の吸気管の主通路中と副通路中の空気流の様相が変化してしまうため、脈動及び逆流発生時の計測誤差が大きくなり、特に逆流発生時に逆流の検出量不足により計測誤差が大きくなる傾向にある。一方、自動車の吸入空気にはダスト,オイル等の汚損物質が含まれるため、薄膜部が汚損し易いという問題もある。
【0004】
本発明の目的は、吸気管内にダストやオイルに対しても信頼性が高く、且つ脈動特性に優れた流量計測装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、流体が流れる主通路内に配置された副通路と、前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、を備えた流量計測装置であって、前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、前記副通路を構成する部材は、少なくとも2つの部材によって構成され、前記導入手段は前記2つの部材のうちの一方のみに形成されたことによって達成される。
【0006】
また、上記目的は、流体が流れる主通路内に配置された副通路と、前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、を備えた流量計測装置であって、前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、前記導入手段は、前記主通路に形成されたことによって達成される。
また、流体が流れる主通路内に配置された副通路と、前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、を備えた流量計測装置であって、前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、前記出口は2ヶ所あり、前記検出素子は基板の片面に形成され、前記片面と同じ側に形成された前記出口の付近にのみ、前記導入手段を設けたことによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本発明に使用される流量計測素子について図2を用いて説明する。
【0008】
流量計測素子1は半導体製造技術により作製される。以下にその説明をする。単結晶シリコン基板2上に電気絶縁層3として二酸化シリコン層を熱酸化あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法で形成、窒化シリコン層をCVD等の方法で形成する。次に多結晶シリコン層をCVD等の方法で形成し、所望の抵抗値とするために不純物としてリン(P)を熱拡散またはイオン注入によりドーピングする。その後、多結晶シリコン層をパターニングすることにより発熱抵抗体4,吸気温度検出抵抗体5,測温抵抗体6,7等を形成する。抵抗体としては、若干コストは高くなるが白金等を採用することにより温度係数の高い抵抗体を形成することも可能である。
【0009】
次に、保護層8として窒化シリコン層,二酸化シリコン層をCVD等の方法で形成する。その後、保護層8をパターニングして、電極13を形成する部分の保護層を取り除く。次に、アルミニウム層を形成し、エッチングによりパターンニングを行う。最後に、空洞部9を形成するために、単結晶シリコン基板2の発熱抵抗体4を形成していない面にCVD等の方法によりマスクとなる窒化シリコン層を形成してパターニングを行う。その後、異方性エッチングにより空洞部9を形成する。このように空洞化することにより発熱抵抗体4,測温抵抗体が配置されている領域は熱的に絶縁された薄膜構造体10となる。これにより高速応答を実現することが可能となる。最後にダイシングによりチップに分割する。分割された流量計測素子1は、例えば長辺が5mm、短辺が2.5mm程度である。
【0010】
次に流量計測素子1を実装する支持体11について説明する。本発明の支持体11はガラスセラミック製積層基板により形成される。支持体11としては、他には高温焼成セラミック,金属板等を採用することも可能となる。しかし、流量計測素子1は熱的に周囲の部材から熱絶縁されることが望ましいため、熱伝導率の小さいガラスセラミック製積層基板を採用することが有効である。また、積層基板を採用することによって、流量計測素子1への電力供給および、流量計測素子1からの信号処理を行うための制御回路12を支持体11に一体化して形成することが可能となる。これにより部品点数を削減できることからコスト的,信頼性的に優位である。また、積層基板の内層導体を使用して流量計測素子1を制御するための回路を構成することにより回路の小型化を図ることができるため、流量計測装置100の小型化を図ることができる。
【0011】
流量計測素子1は支持体11にエポキシまたはシリコーン系接着剤で接着され、流量計測素子1の電極と支持体11の電極13は例えば金線等の接続線116により電気的に接続される。この流量計測素子1が実装された支持体11は図3に示すようにシリコーン系の接着剤によりハウジングケース15に実装される。さらにハウジングケース15は吸気通路16に挿入される。図3において、主通路17でエアクリーナからエンジンの方向に流れる空気(順流20)は副通路
18の入口31から出口32に向かう。
【0012】
次に、流量計測素子1の動作原理を図2及び図26により説明する。発熱抵抗体4は吸気温度検出抵抗体5に対して一定温度高くなるように制御される。この発熱抵抗体4の熱により上流側測温抵抗体6及び下流側測温抵抗体7が加熱されて所定の温度になる。無風時には理想的には上流側測温抵抗体6と下流側測温抵抗体7は発熱抵抗体4から等しく熱を受けるため同じ温度になるため、上流側測温抵抗体6と下流側測温抵抗体7の温度差はゼロとなる。ここで、図2の順流20の場合には、上流側測温抵抗体6は下流側測温抵抗体7よりも冷却されるため、上流側測温抵抗体6と下流側測温抵抗体7に温度差が発生する。従って抵抗値に差が生じて、これに応じた電位差が発生する。この温度差による電位差は流量に応じた値であり、流量検出が可能となる。
【0013】
一方、図2の逆流21の場合には、上述とは反対に、下流側測温抵抗体7が上流側測温抵抗体6よりも冷却されることにより流量が検出される。従って、本発明の流量計測素子1では、吸気温度検出抵抗体5が発熱抵抗体4からの熱伝達による影響を受けないならば、図23に示すように無風時の電圧に対して順流特性曲線22と逆流特性曲線24は全く反転対称な特性となる。
【0014】
次に、図25を用いて、信頼性の高い副通路18について説明する。流量計測素子1は空気(あるいは水素ガスなどの気体)間との熱伝達現象を利用して流量を検出するため、空気が流量計測素子1の表面に当たらなければ流量を検出することができない。しかし、本発明に採用している流量計測素子1は薄膜構造体10が厚さ1〜2μm程度であることから、吸入空気中に含まれるダストが衝突した場合、水分が付着した場合にはこの薄膜構造体10が破壊する場合がある。従って、長期間に渡って信頼性の高い流量計測装置100とするためには、空気は流量計測素子1の表面に当たるが、ダスト及び水分は当たらない構造とする必要がある。
【0015】
これを実現する手段として慣性効果により空気とダスト及び水分を分離することが可能な図25に示す副通路18が有効である。この副通路は入口31から流入した空気流が渦状の流路を通過して流量計測素子1に到達するまでの間に、ダスト,水分などの汚損物質は慣性効果により外周面に押付けられ、そのまま出口32から排出されるため、流量計測素子1の表面に汚損物質が到達することができない構造となっている。実験により5〜200μm程度の粒子を、主通路17に流速50m/s以上で連続投入した場合でも、流量計測素子1の表面には5μm以下のダストが衝突した痕跡しか検出されない。流量計測素子1は15μm程度の粒子が流速50m/sで衝突しても破壊しない程度には薄膜構造体10を強化することが可能であるため、副通路18によりダストによる破壊防止が可能となる。一方、水分においても、実験により20L/min.程度の水を主通路17に連続投入した場合でも、流量計測装置の出力が変動しないことから流量計測素子1の表面には水分が付着しないことが判る。
【0016】
以上述べたように副通路18の信頼性は非常に高いが、この副通路18は順流20,逆流21に対して非対称な形状であり、また空気の出口が側面となっていることから逆流21も流入し難い。従って脈動時の計測精度が十分なものではなかった。
【0017】
以下、本発明の副通路について説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施例を示しており、上述した図25の副通路18に比較して逆流21を導入し易くする構造としたものである。図4は図1の副通路18aの図を示している。図1及び図4に示した副通路18aでは流量計測装置を下流側から投影したときに出口部が動圧を受けるように段差33を形成した副通路カバー30aにより逆流21を導入し易くした構造を示している。
【0019】
この段差33がある場合とない場合の脈動時の波形を図6に示す。段差33の有無にかかわらず順流20の波形にはほとんど相違が観られない。しかし、逆流21の波形については、段差33のある方が大きく逆流21が導入されていることが判る。従って、段差33の有無での平均流量を比較すると、段差33がない場合は平均流量が大きく、主通路17の平均流量に対してプラス誤差が大きく40%程度となる。一方、段差33がある場合には、主通路17の平均流量に対してやはりプラス誤差になるが、10%程度にまで低減することができる。
【0020】
ここで、図25に示す副通路18においては、出口が2箇所の構造となってしまうが、この両方に段差33を設けた場合には、計測誤差はあまり低減されない。これは、逆流21の導入量は増加するが、順流20の排出が促進されるためである。従って、2個所の出口のうち、一方に段差33を形成することが特に有効である。
【0021】
また、図示はしないが、2箇所の出口のうち1箇所は上記段差33を形成し、もう1箇所は順流20が排出され難い形状とすることにより、更に計測誤差を低減することができる。
【0022】
また、エンジンによって脈動の大きな場合には、段差33の高さを大きくすることで対応することが可能である。このときに、ハウジングケース15のように複雑な形状の部品に段差33を形成することは、コスト,開発スピードの点から好ましくない。従って、副通路カバーの方に段差33を設置することで設計変更が簡単に行える。更に、実験により流量計測素子1の表面側の出口に段差33を形成することが計測誤差低減には有効であることが判った。これは、流量計測素子側に段差33を設けることにより、支持体11の表面、つまり流量計測素子側に逆流21が導入され易くなるためである。逆流の場合でも、順流と同様の副通路の作用により、ダストや水分が流量計測素子表面に付着・衝突することは少ない。
【0023】
逆流21の導入が少ない場合の対策として、特表平8−511627号公報に記載の技術のように逆流特性曲線を補正することにより計測誤差を低減することも可能であるが、これはある程度逆流21が発生している領域においては有効な手段である。しかし、脈動状態では図6のB点に示すように必ず逆流21が発生し始める運転状態がある。このとき、場合によっては主通路17に逆流21が発生していても、副通路18内では逆流21が発生しない場合があり、この場合は逆流21の特性曲線を補正する手段では計測誤差を低減することができない。従って、このような慣性通路以外の通路においても逆流21を導入する手段は有効である。
【0024】
段差33の形状としては、図1,図4に示すように出口32の面全体を利用して形成する以外にも例えば図5に示すように突起形状34によっても同様の効果が得られる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0026】
図7は第2の実施例を示す図、図8は鳥瞰図を示している。図7,図8に示すように副通路に逆流21を導入するためのスリット35が形成されている副通路18aにおいて、その上流に逆流21の動圧を受けるための段差33を形成したものである。ここで、図示はしないが逆流21を導入する穴は円形でも良い。これにより、第1の実施例に示した効果に加えてスリット35への逆流導入が促進されるため、逆流21が発生した場合の計測誤差をより低減することが可能である。
【0027】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
【0028】
図9は本発明の第3の実施例を示す図を示している。図9は板状の部材36を副通路カバー30dに設置することによりさらに逆流導入を促進する構成となっている。
【0029】
近年の排気ガス規制に対応した排気ガスの一部を吸気管に戻す手段を備えたエンジンや、運転状態に応じてバルブタイミングを変化させるエンジン等においては非常に大きな脈動を発生するものがあり、前述の第1及び第2の実施例では十分な計測精度を得ることが困難なエンジンも存在する。第1及び第2の実施例だけで対応することも可能ではあるが、段差33が非常に大きくなってしまう。この場合、流量計測装置100での圧力損失や出力ノイズが大きくなる等、他の性能が不十分となってしまう。図9に示す手段は、このような場合に有効である。この場合も、第1の実施例と同様に2箇所の出口のうち、片側の出口のみに形成することが有効である。
【0030】
また、図10に示すように慣性効果を有していない副通路においても、脈動の大きい場合には板状の部材36を設置することにより計測誤差を低減する効果を得ることができる。
【0031】
また、第3の実施例における他の形状例を図11に示す。
【0032】
次に本発明の第4の実施例について説明する。
【0033】
図12は本発明の第4の実施例を示す平面図を示している。図12は副通路カバー30gの出口32から更に通路37を形成したものである。このような出口形状にすることによって、脈動状態において、逆流21の導入を促進することが可能となる。また、この形状では上述した第1〜第3の実施例に比較すると出力ノイズを低減する効果がある。しかし、この形状では非常に逆流21を導入するため、エンジン回転数が600〜1200rpm 程度の領域では非常に計測誤差が小さく良好な特性を示すが、回転数2000rpm 以上になると主通路17の脈動に対する追従性が悪化し、副通路18g内の流速が減速から加速に切替わる時間が長くなってしまい、主通路17の平均流量よりも低い平均流量となりマイナス誤差となる傾向がある。従って、本発明の第4の実施例は回転数600〜1200rpm 程度の領域で大きな逆流21を発生するエンジンに対しては非常に有効であるが、回転数2000rpm 以上で大きな逆流21を発生するエンジンに対しては、上述した第1〜第3の実施例に示した構造が優位である。
【0034】
図13は図12において2箇所であった副通路出口32を1箇所にした構造である。この形状とすることにより出力ノイズは図12の構造よりもさらに低減し、第1の実施例に比較して最大値で約60%程度に低減する効果がある。
【0035】
図14は図13に示す副通路に比較して入口31の位置を後退させることにより副通路入口31から流量計測素子1表面までの距離と流量計測素子1表面から出口32までの距離が略同じになるように副通路18kを形成したものである。図13の構造では図12の場合と同様に、エンジン回転数が600〜1200rpm 程度の領域では非常に計測誤差が小さく良好な特性を示すが、回転数2000rpm 以上の回転数になるとマイナス誤差となる傾向がある。しかし、図14の構造とすることによって回転数2000rpm において図12の形状に見られた波形の歪みが解消されるため、脈動振幅の大きいエンジンに対しては有効である。
【0036】
次に本発明の第5の実施例について説明する。
【0037】
図15は本発明の第5の実施例を示す図を示している。板型の流量計測素子1においては、図27に示すように空気流に対して傾斜させる構造とすることにより出力ノイズを低減することができることは公知の技術である。しかし、逆流検知式の流量計測装置においては順流20で特性が良好となるように傾斜させると逆流21に対しては感度及び出力ノイズ特性が悪化してしまい、脈動時の計測誤差が大きくなる。しかし、本発明の第5の実施例に示す副通路18iにおいては、順流20,逆流21何れも流量計測素子1表面に斜め方向から空気流が当たるため出力ノイズが低減し、脈動のように出力ノイズが発生し易い状態において計測誤差を低減することが可能となる。
【0038】
図16は図15の場合と同様に出力ノイズを低減する効果を持つ他の実施例を示す。
【0039】
次に本発明の第6の実施例について説明する。
【0040】
図17は本発明の第6の実施例を示す部分断面図であり、図4のE−E断面に相当する断面を示している。
【0041】
本発明に示すように渦形状により慣性効果を生じる副通路の場合、通路断面が方形の場合では流量計測素子1表面位置では、定常状態では渦の内側の方が外側よりも流速が大きくなる。しかし、脈動状態になると副通路内の流速分布が定常状態とは変化して一様になる。ここで、ダストや水分は慣性効果で副通路外周40を流れるため、流量計測素子1は薄膜構造体10が副通路内周41付近に位置するように配置される。従って、流量計測素子1表面付近は脈動状態では流速が低下する傾向がある。このため、脈動時にはマイナス誤差を生じ易い傾向にある。第6の実施例においては、図17に示すように縮流部42と流量計測素子1表面の距離が副通路外側40に向かって小さくなるようにしている。この構造により定常状態でも流量計測素子1の配置位置では流速分布が生じ難くなるため、脈動時の計測誤差を低減することが可能となる。
【0042】
次に本発明の第7の実施例について図18〜図20を用いて説明する。
【0043】
図18は流量計測素子1をエアクリーナ102に設置した図を示している。図18に示すように近年は低コスト化の点から流量計測装置100をエアクリーナ102に一体化する技術が公知である。
【0044】
ここで、吸気管内に発生する脈動はエンジンから吸気管の入口、つまりエアクリーナ102の最上流までの長さに大きく依存し、例えば吸気管の長さが変化すると逆流21が発生する回転数が大きく変化する等の現象が生じる。このように、同じエンジンであっても吸気管,エアクリーナ102の形状により大きく脈動の状態が変化し、また、エンジンが異なる場合には当然のことながら脈動の状態が変化する。このように様々に変化する脈動状態に対して、流量計測装置100だけで対応することは可能ではあるがエアクリーナやエンジン毎に前述したように流量計測装置の副通路構成を変化させる必要が生じる。
【0045】
従って、流量計測装置では十分に対応できないところを図19,図20に示すように流量計測装置を設置する吸気通路16の方に逆流導入部材43を設置して補うことは非常に有効な手段である。
【0046】
図21,図22は図10に示した副通路18eでの本発明の第7の実施例を示す。
【0047】
次に本発明の第8の実施例について説明する。
【0048】
図23は本発明の第8の実施例を示す流量と流量計測装置出力の特性曲線を示す。図23において、逆流特性曲線24に上述したように順流特性曲線22に対して反転対称な特性曲線となっている。ここで、流量計測素子1を順逆非対称な副通路に配置する時点で、逆流特性曲線23からは大きく外れることになる。
【0049】
従って、順逆非対称な副通路における流量と出力の特性をもって逆流特性曲線とすることが望ましい。しかし、主通路17および副通路内の脈動時の流れと定常時の流れは全く異なるため、定常時での空気流量と流量計測装置出力をもって逆流特性曲線としてもあまり有効ではない。
【0050】
そこで、本発明の第8の実施例は主通路17での脈動時の流量とその時の流量計測装置100の出力により逆流特性曲線23を決定するものである。まず、主通路17内での流量を▲1▼脈動に十分追従可能な100kHz程度応答速度を有する流量計、▲2▼副通路内に配置した流量計測素子1による流量計測装置100により同時計測を行う。次に、得られた2つの波形から主通路17に配置した流量計の流量を流量計測装置100で得られた出力に割り振ることにより逆流特性曲線23を設定する。
【0051】
第8の実施例の手段を用いて、エンジン毎に逆流特性曲線23を設定することにより、エンジン毎に流量計測装置100の形状を変更したり、第7の実施例に示したような手段を採用する必要がなくなるため、本技術は非常に有効である。
【0052】
しかし、上述の技術では副通路内においては、主通路17内の脈動に対して完全には追従できないため、前述の手段では順流20の主通路17内脈動に対する追従性は若干悪く、逆流21の追従性は主通路17内のものと全く同じとなるため、平均流量は若干マイナスになる傾向がある。従って、この順流20の追従できない分だけ逆流特性曲線23を補正することは有効な手段である。
【0053】
また、図24はガソリンエンジン等の内燃機関のシステム図を示す。エンジンへの吸入空気はエアクリーナ102,吸気通路16,スロットル角度センサ103,アイドルスピードコントロールバルブ104,スロットルボディ105が吸気マニホールド106と一体で構成する吸気通路16を流れる途中に、本発明を施した流量計測装置100で流量及び流れ方向が検出され、検出された信号は電圧または周波数により車両コントロールユニット107に取込まれる。
【0054】
流量信号はインジェクタ108,回転速度計109,エンジンシリンダ110,排気マニホールド111,酸素濃度計112から構成される燃焼部構造およびサブシステムの制御に用いられる。
【0055】
尚、図示はしないが、ディーゼルエンジンシステムの場合も基本構成はガソリンシステムとほぼ同じであり、本発明の流量計測装置を適用することが可能である。
【0056】
本実施例によれば、吸気管内にダスト,水分の存在する状態においても流量計測素子が破壊することがなく、長時間の使用に際しても信頼性が高く、且つ脈動特性に優れた流量計測装置を提供することができる。また、脈動振幅の大きなエンジンにおいても計測誤差の少ない流量計測装置を提供することができる。また、あらゆる回転域で逆流21を発生するエンジンにおいても計測誤差の少ない流量計測装置を提供することができる。
【0057】
また、本実施例により定常状態においても従来の慣性効果を有する通路よりも出力ノイズの小さい流量計測装置を提供することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、吸気管内にダストやオイルに対しても信頼性が高く、且つ脈動特性に優れた流量計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流量計測装置の副通路形状を示す分解図。
【図2】本発明の流量計測装置に採用の流量計測素子の平面図及び断面図。
【図3】本発明の流量計測装置を吸気通路に設置した状態の部分平面図。
【図4】本発明の第1の実施例を示す図及び断面図。
【図5】本発明の第1の実施例の別形状の構成を示す図及び断面図。
【図6】本発明による計測特性の一例を示す図。
【図7】本発明の第2の実施例を示す図及び断面図。
【図8】本発明の第2の実施例を示す鳥瞰図。
【図9】本発明の第3の実施例を示す図及び断面図。
【図10】本発明の第3の実施例の別形状の構成を示す図及び断面図。
【図11】本発明の第3の実施例の別形状の構成を示す断面図。
【図12】本発明の第4の実施例を示す図及び断面図。
【図13】本発明の第4の実施例の別形状の構成を示す断面図。
【図14】本発明の第4の実施例の別形状の構成を示す平面図。
【図15】本発明の第5の実施例を示す断面図。
【図16】本発明の第5の実施例の別形状の構成を示す断面図。
【図17】本発明の第6の実施例を示す断面図。
【図18】本発明の流量計測装置をエアクリーナに設置した状態の部分平面図。
【図19】本発明の第7の実施例を示す図。
【図20】本発明の第7の実施例を示す断面図。
【図21】本発明の第7の実施例の別形状の構成を示す図。
【図22】本発明の第7の実施例の別形状の構成を示す断面図。
【図23】本発明の第8の実施例による流量計測装置の特性曲線図。
【図24】本発明の流量計測装置を用いた内燃機関の制御システム図。
【図25】渦型流路により慣性効果を有する副通路形状を示す分解図。
【図26】本発明に採用した流量計測素子による流量及び方向検出原理を示す図。
【図27】支持体を傾斜させた断面図。
【符号の説明】
1…流量計測素子、2…単結晶シリコン基板、3…電気絶縁層、4…発熱抵抗体、5…吸気温度検出抵抗体、6…上流側測温抵抗体、7…下流側測温抵抗体、8…保護層、9…空洞部、10…薄膜構造体、11…支持体、12…制御回路、13…電極、14…接続線、15…ハウジングケース、16…吸気通路、17…主通路、18,18a〜18j…副通路、20…順流、21…逆流、22…順流特性曲線、23,24…逆流特性曲線、30,30a〜30j…副通路カバー、31…入口、32…出口、33…段差、301…上流側曲部、302…下流側曲部。
Claims (10)
- 流体が流れる主通路内に配置された副通路と、
前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、
を備えた流量計測装置であって、
前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、
前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、
前記副通路を構成する部材は、少なくとも2つの部材によって構成され、前記導入手段は前記2つの部材のうちの一方のみに形成されたことを特徴とする流量計測装置。 - 流体が流れる主通路内に配置された副通路と、
前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、
を備えた流量計測装置であって、
前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、
前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、
前記導入手段は、前記主通路に形成されたことを特徴とする流量計測装置。 - 流体が流れる主通路内に配置された副通路と、
前記副通路内に配置され、ある方向へ流れる気体の流量と逆の方向へ流れる気体の流量とを計測可能な計測素子と、
を備えた流量計測装置であって、
前記副通路は、前記主通路の径方向に開口する出口と、少なくとも前記計測素子の上流側に曲部とを備え、
前記副通路の出口付近に、前記主通路の逆方向の流れを、前記出口を介して前記副通路内に導入する導入手段を備え、
前記出口は2ヶ所あり、
前記検出素子は基板の片面に形成され、
前記片面と同じ側に形成された前記出口の付近にのみ、前記導入手段を設けたことを特徴とする流量計測装置。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記導入手段は、前記逆方向の流れによって発生する動圧により、前記出口を介して前記副通路内に前記逆方向の流れを導入することを特徴とする流量計測装置。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記副通路は、前記出口と前記計測素子との間に曲部を備えたことを特徴とする流量計測装置。 - 請求項4において、
前記導入手段は、前記出口よりも前記逆方向の下流側の面を、前記出口よりも前記逆方向の上流側の面よりも高くなるように構成した段差であることを特徴とする流量計測装置。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記導入手段は、前記主通路の順方向の流れよりも、前記主通路の逆方向の流れを導入し易く構成されたことを特徴とする流量計測装置。 - 請求項7において、
前記導入手段は、前記順方向の流れが前記出口を介して前記副通路内に入るのを阻害することを特徴とする流量計測装置。 - 請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記副通路の入口から前記計測素子までの副通路の長さと、前記計測素子から前記副通路の出口までの副通路の長さと、がほぼ等しいことを特徴とする流量計測装置。 - 内燃機関と、
前記内燃機関の吸気管に設置された請求項1〜9のいずれか記載の流量計測装置と、
前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置と、
前記流量計測装置からの信号に基づいて、前記燃料供給装置を制御する制御装置と、
を備えた内燃機関制御システム。
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