JP3764380B2 - 延性、めっき性、スポット溶接性および熱処理後の強度安定性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、電機、機械等の産業分野において、成形加工して部材を製造するのに用いられる薄鋼板に関するものであって、特性として優れた延性を有し、且つ熱処理条件の変動に関係なく高強度を確実に得ることができ(以下、この様な特性を単に「熱処理後の強度安定性」または「焼入れ後の強度安定性」ということがある)、更には耐食性、めっき性状およびスポット溶接性にも優れた薄鋼板に関するものである。尚、本発明の薄鋼板は、上記の様々な分野で使用されるものであるが、以下、代表的な用途例として自動車用鋼板に使用される場合を中心に説明を進める。
【0002】
【従来の技術】
薄鋼板を成形加工して得られる自動車用部材に求められる特性として、安全性の観点から、自動車衝突時に該部材が完全に破壊することなく変形して衝撃を吸収することが挙げられ、この様な特性を確保するため部材の板厚を一部厚くしたり、補強部材を重ねる等して強度を高めることが行われている。ところで近年では、自動車の燃費向上の観点から軽量化が進められており、上記補強等を行わなくても安全性を確保できるよう鋼板の強度をより高めることが進められている。しかしながら高強度鋼板は一般に加工性に乏しいため、部材成形時の加工性も同時に確保することが要求されている。この様な課題を解決する手段として、特開平11−152541号では、比較的延性の高い鋼板を成形加工した後、必要箇所を焼入れして部分的に強度を高めた高強度鋼板部材が提案されている。また特開2000−144319号では、Mnを添加することで強度および加工性を確保する技術が開示されている。
【0003】
この様な鋼材では、焼入れ後の強度を高めることを目的にC,Mn等が比較的多く添加されており、C添加量を増加させることで焼入れ後の強度は高まるが、強度向上と反比例して溶接性等が劣化しやすくなるため、Cの代わりにMn含有量を増加させることが行われている。しかしながらMn量を増加させると、鋼の二相域温度が低下するため、冷延後の再結晶焼鈍時にマルテンサイトやベイナイトなど硬質相が生じ易く、素材の延性が低下することとなる。従って、複雑な加工が行われる自動車用鋼板等として用いる場合には、Mn含有量を抑えてより優れた延性を確保することが重要となってくる。
【0004】
ところで、上述のように部材の強度を高めるため焼入れ処理が行われるが、高周波焼入れやプレス焼入れ等のいずれの方法で焼入れを行う場合も、加熱温度や冷却開始温度が50℃程度変動し易く、この様な焼入れ温度の変動に伴って焼入れ後の強度も変動しやすくなるため、部材として一定の高強度を確保することができないという問題がある。
【0005】
図1は、焼入れ温度と焼入れ後の引張強度との関係をMn濃度別に示したグラフであり、その実験条件は次の通りである。即ち、C:0.13%,Mn:1.5%を含む高Mn鋼、およびC:0.16%,Mn:0.38%を含む低Mn鋼を、それぞれ仕上圧延温度(FDT)890℃、巻取温度(CT)650℃の条件で熱間圧延を行って板厚2mmとした後、冷間圧延を行って板厚1mmとし、次に720℃で60秒間焼鈍を行い、最後にスキンパスを行って1%圧延した。この様にして得られた鋼板から1.0mm×30mm×300mmの平板を切り出し、700℃、800℃、850℃、900℃、950℃または1050℃の各温度にて焼入れを行った後、JIS5号試験片を採取して引張試験を行い、引張強度を測定したものである。
【0006】
図1に示されるように、焼入れ温度の変化に伴う焼入れ後の強度の変動(バラツキ)は、焼入れ温度を高くしたり、Mnを多量に添加したり、または設備的な改善を行うことで抑えることが可能であるが、焼入れ温度を高くすると、めっき鋼板における焼入れ部位のめっき密着性が劣化したりめっき層が消失し、また、熱延鋼板または冷延鋼板の塗装性を劣化させることとなり、結果として耐食性が劣化するため好ましくない。
【0007】
図2は、焼入れ温度とめっき層中の鉄含有量の関係を示すグラフであり、図3は、めっき層中の鉄含有量と耐食性試験における最大穴あき深さの関係を示すグラフである。図2は、実験条件として連鋳スラブを4.0mmまで熱間圧延した後に酸洗し、冷間圧延で2.0mmまで圧延した後、溶融亜鉛めっきラインにてめっき処理(めっきの目付け量:両面共に45g/m2)、焼鈍および合金化を行ったものであり、焼入れは図1と同様にして行った。また図3は、前記の様にして焼入れを行った鋼板を用い、耐食性試験をJASO(自動車材料腐食試験方法)に従う条件で行ったものである。前記試験は2.0mm×70mm×150mmの試験片を用い、塩水噴霧(35℃、5%塩水)8時間、乾燥(60℃、相対湿度30%)4時間、湿潤(50℃、相対湿度90%)2時間を1サイクルとし、170サイクル後に最大穴あき深さを測定した。
【0008】
図2および図3から、めっき鋼板の焼入れ温度が高すぎると、めっき合金化が進みすぎてめっき層中のFe含有量が増加する傾向にあり、この様にめっき層中のFe含有量が増加すると錆が生じ易く、耐食性試験における最大穴あき深さが大きくなる、即ち耐食性が劣化することがわかる。
【0009】
この様に素材がめっき鋼板の場合、焼入れ部位の耐食性は、焼入れによる合金化程度あるいはめっき層の残存程度に依存し、焼入れ温度を高くするとめっき合金化が進みすぎたりめっき層が消失して、めっき層による防食効果が失われるのである。
【0010】
図4は、焼入れ温度と塗膜残存率の関係を示すグラフであり、実験条件として、めっき処理を施したことを除き図2および3と同様の条件で鋼板を製造し、塗膜残存率は、焼入れした鋼板にりん酸塩処理および電着塗装を施した後、碁盤目試験を行って測定した。
【0011】
この図4から、冷延鋼板や熱延鋼板の焼入れ温度を高くすると、塗膜残存率が低下することがわかるが、これは、焼入れ温度が高いと焼入れ部位に発生する酸化スケール層が厚くなり、該スケール層上に塗装を施しても塗膜がスケール層ごと剥離しやすくなるからであり、この様に塗膜が剥離して塗膜残存率が低下すると腐食の進行が懸念される。
【0012】
更に、焼入れ温度を高くすると成形加工品の熱変形が大きくなるという問題も生じてくる。また焼入れ後の強度の変動を抑えるためMnを多量に添加した場合には、上述の通り延性を確保することが困難となる。
【0013】
従って、延性を確保するため低Mn濃度とし、更に、焼入れ部位の酸化スケール層厚さを薄くしあるいはめっき合金化を抑えて、耐食性を未焼入れ部と同程度とするには、850〜950℃と比較的低温域で焼入れを行う必要があるが、この様な場合、焼入れ後の強度のバラツキが問題となってくる。
【0014】
しかしながら、この様に焼入れ後の強度のバラツキを低減することについては、これまで特筆すべき技術は開発されておらず、本発明者らは、特開2000−248338号にて、広範囲のMn濃度域を規定した高周波焼入用鋼板を既に提案しているが、この技術は、本発明の如く低Mn濃度域における焼入れ後の強度のバラツキについてまで検討しているものではない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複雑な成形を行うことのできる優れた延性、および熱処理温度条件の変動に関係なく焼入れ後の高強度を確実に得ることを同時に達成することができ、更には耐食性、めっき性状およびスポット溶接性に優れた有用な溶融亜鉛めっき鋼板を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板とは、質量%で、C:0.11〜0.22%、Mn:0.1〜0.5%未満、Cr及び/又はMo:総和で0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Ti:0.01〜0.04%、Al:0.06%以下を満たすとともに、
0.19≦{[C]+([Cr]+[Mo])/5}…(1)
{式中、[C]、[Cr]、[Mo]は、それぞれC、Cr、Mnの含有量(質量%)を示す}を満たし、残部鉄および不可避的不純物からなり、
焼入温度850℃で焼入れ後の引張強度と焼入温度950℃で焼入れ後の引張強度との差が100MPa以下であるところに特徴を有するものであり、式(1)における右辺は、0.28以下であることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前述した様な状況の下で、延性に優れかつ焼入れ後の高強度を確実に得ることができ、更には、焼入れ部の耐食性および溶接性にも優れた薄鋼板の実現を目指して鋭意研究を進めた結果、Mn量を低減した上で、特にC量と、Cr量及び/又はMo量とを組み合わせて規定することが有効であることを突き止め、これらの化学成分の定量的作用効果について更に追求を重ねた結果、上記本発明に想到したのである。
【0018】
以下、本発明で化学成分を規定した理由について詳細に説明する。
【0019】
C:0.11〜0.22%
Cは鋼の焼入れ性を高めて高強度を確保するのに必要な元素であり、含有量が少なすぎると十分な焼入れを行っても所望の強度が得られ難いため、0.11%以上、好ましくは0.12%以上添加する。しかし、C含有量が多過ぎるとスポット溶接性が劣化し、溶接を行った場合に該溶接部位が脆くなるため、0.22%以下、好ましくは0.20%以下に抑える。
【0020】
Cr及び/又はMo:総和で0.1〜0.5%
Cr,Moは、焼入れ性を高めるのに必須の元素である。また、C量を増加させれば焼入れ後の強度安定性は向上するが、本発明では上述の通り、スポット溶接性を確保すべくCを0.22%以下と低濃度に抑え、焼入れ後の強度安定性を確保すべくCr,Moを総和で0.1%以上、好ましくは0.2%以上添加することとした。しかしCr,Moのいずれの元素も、含有量が多過ぎると不めっき、りん酸塩処理等の化成処理性劣化の原因となったり、製造時のめっき付着の不良(不めっき)が生じることとなるため、総和で0.5%以下、好ましくは0.45%以下に抑える必要がある。
【0021】
0.19≦{[C]+([Cr]+[Mo])/5} …(1)
図5は、後述する実施例の結果を用いて、C含有量と(Cr+Mo)含有量の関係が焼入れ後の強度バラツキに及ぼす影響を示したグラフであり、図中プロットの添え字は、本発明で定義する強度バラツキ(焼入温度850℃で焼入れ後の引張強度と焼入温度950℃で焼入れ後の引張強度との差)の値を示すものである。尚、図5中には、本発明範囲の枠から外れているにもかかわらず、強度バラツキの小さなものもみられるが、これらは、前述した成分規定理由または後述する実施例に示す通り、その他の必要な特性であるめっき処理後のめっき性状またはスポット溶接性に劣るものである。
【0022】
図5に示されるように、焼入れ後の強度バラツキ(焼入温度850℃で焼入れ後の引張強度と焼入温度950℃で焼入れ後の引張強度との差)を望ましい範囲内(100以下)とするには、本発明で規定するC量および、Cr及び/又はMoの総量を満たす範囲内で、上記式(1)の右辺が0.19以上、好ましくは0.20以上となるよう、C、CrおよびMoを含有させることが大変有効なのである。一方、上記式(1)の右辺の値が大きすぎても、溶接後の溶接部硬さが必要以上に上昇し、溶接部の接合強度の低下が懸念されるため、好ましくは0.28以下、より好ましくは0.27以下とするのがよい。
【0023】
Mn:0.1〜0.5%未満
図6は、Mn含有量に対する鋼板の伸びを示したグラフであり、実験条件として、下記表1に示すC,Mn量を含む鋼を、それぞれ仕上圧延温度(FDT)890℃、巻取温度(CT)650℃の条件で熱間圧延を行って板厚2mmの薄鋼板とした後、この薄鋼板からJIS5号試験片を採取し、引張試験を行って伸びを測定したものである。この図6から、Mn含有量を抑えることによって伸び、即ち延性が飛躍的に向上することがわかる。本発明では優れた延性を確保するため、Mn含有量を0.5%未満、好ましくは0.45%未満、より好ましくは0.4%以下に抑えることとした。
【0024】
【表1】
【0025】
一方、MnもCと同様、鋼の焼入れ性を高めて高強度を確保するのに有効な元素であり、かつ前記図1に示したように焼入れ後の強度の安定化を図るのにも有効であるため、Mn量の下限を0.1%、好ましくは0.2%とする。
【0026】
B:0.0005〜0.005%
Bは、焼入れ性を高めて低温でも十分な焼入れ組織を得るのに必要な元素であり、この様な効果を有効に発揮させるには、0.0005%以上、好ましくは0.001%以上添加する必要がある。しかしながらB含有量が多すぎると、鉄窒化物が多量に析出して延性が劣化する原因となるため、0.005%以下、好ましくは0.004%以下に抑える。
【0027】
本発明は、以上に示した通り、Mn含有量を抑えて十分に優れた延性を確保した上で、本発明で規定する量のC、B、Cr及び/又はMoを組み合わせて添加することによって、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のバラツキを抑えて薄鋼板の高強度を確実に得ることができたものである。また上記の如く成分を規定することで、スポット溶接性、および焼入れ後の耐食性をも確保することができたのである。
【0028】
本発明における代表的な化学成分組成は以上の通りであるが、必要によってはTi,Alを適量含有させて、次の様な改善効果を得ることも有効である。即ちTiは、Bを窒化物として析出させずに固溶状態ままにしてBの焼入れ効果を高めるのに有効であるため、0.01%以上添加することが好ましいが、添加量が多すぎると延性が劣化するため、好ましくは0.04%以下に抑える。また、Alは脱酸材として有効であるが、含有量が多過ぎると「へげ・スリバ」等の表面欠陥が増加するため、0.06%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.05%以下である。
【0029】
本発明鋼板中に含まれる元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、該鋼板中に微量の不可避不純物の含有が許容されるのは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で、更に他の元素を積極的に含有させることも可能である。積極添加が許容される他の元素の例としては、焼入れ性改善効果を有するSi,Cu,Ni等が挙げられる。
【0030】
尚、本発明は薄鋼板の製造方法まで特定するものではなく、本発明の薄鋼板は熱間圧延、またはその後に冷間圧延を行って得られるものでもよいし、圧延後、更にめっき処理を施してめっき鋼板としてもよく、これら熱間圧延における再加熱温度、仕上げ圧延温度、冷却、巻取等の条件や、冷間圧延における冷延率、再結晶焼鈍等の条件、またはめっき処理におけるめっき浴の種類、めっき浴温度、めっき付着量、めっき合金化処理等の条件まで特定するものでもない。
【0031】
また本発明は、焼入れの方法を限定するものでもなく、高周波加熱−焼入れ(高周波焼入れ)、加熱炉での加熱−焼入れ、または加熱後、成形と同時に金型内で焼入れ(プレス焼入れ)する等、どの様な熱処理法で焼入れを行なった場合であっても適用可能である。
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。即ち以下の実施例では、冷延鋼板またはめっき鋼板を最終製品とし、熱処理を高周波焼入れ法で行っているが、上述したように本発明は薄鋼板の製造条件を特定するものではなく、種々の製造条件で製造されたものに本発明を適用することも本発明範囲に含まれる。
【0033】
【実施例】
表2に示す化学成分組成を満たす鋼を溶製して厚さ230mmのスラブを製造した後、このスラブを用いて下記表3に示す条件で熱間圧延を行い板厚2.0mmとした後、更に冷間圧延を行って板厚1.0mmの薄鋼板とした。表2および表3に示すNo.10は、冷間圧延して得られた薄鋼板を表3に示す温度で40秒間焼鈍した後、最後にスキンパス圧延(伸び率1%)を行ったものである。またNo.1〜9は、次に示すようにめっき処理を施したものである。即ち、冷間圧延して得られた薄鋼板を表3に示す温度で40秒間焼鈍した後、溶融亜鉛めっき処理を施し、更に該めっきの合金化を表3に示す温度で行い、最後にスキンパス圧延(伸び率1%)を実施したものである。
【0034】
この様にして得られた薄鋼板から、1.0mm×30mm×300mmの平板を、850℃、900℃および950℃の各焼入れ温度につき3枚ずつ切り出し、高周波焼入れを行った。焼入れは、上記平板を鋼板ガイドから対向配置された高周波コイルの間に送り込み、850℃、900℃または950℃の各焼入温度で平板全体に焼入れを施した。焼入温度到達後は速やかにシャワー冷却を行った。その後、各平板からJIS5号試験片を作製して引張試験を行い引張強度(TS)を測定した。表3に示す強度偏差(ΔTS)は、850℃で焼入れした試料のうちのTS最低値と、950℃で焼入れした試料のうちのTS最高値との差を示している。
【0035】
尚、表3に示す焼入れ前の鋼板の機械的特性は、上記平板と同サイズの板を焼入れ前の鋼板から切り出してJIS5号試験片を作製し、引張試験を行って降伏点(YP)、引張強度(TS)および伸び(El)を測定したものである。
【0036】
まためっき性状の評価は、得られためっき処理鋼板の表面性状が良好なものを「○」、不めっきが発生したものを「×」と判断して行った。これらの結果を表3に併記する。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
表2および表3に示す実験結果より、No.2〜4,6は本発明の規定を満たすものであり、延性が良好で焼入れ後の強度のバラツキが小さく、かつ不めっきも発生しないめっき性状の良好な薄鋼板が得られた。これに対し、No.1,5,7〜9は本発明の規定を満たすものではないため、No.1,5,9では焼入れ後の強度安定性が劣る結果となり、またNo.7,8ではめっき性状、延性またはスポット溶接性のいずれかが劣る結果となった。
【0040】
即ちNo.1は、C量が不足し、かつ前記式(1)も満足しないため、焼入れ後の強度バラツキが大きくなる結果となった。No.9は、Cr及び/又はMoの総量および前記式(1)の右辺がともに本発明の範囲を下回るものとなり、No.5は、C量と、Cr及び/又はMoの総量について本発明範囲を満たしているものの、前記式(1)の右辺が0.19未満であるため、焼入れ後の強度バラツキが大きくなる結果となった。No.7は、Cr及び/又はMoの総量が規定範囲を超えているため、めっき前の素地鋼板表面上に酸化物が形成されて不めっきが発生する結果となった。No.8は、Mnが規定量を超えているため、焼入れ後の強度バラツキは小さいものの延性が劣る結果となった。
【0041】
尚、No.10は参考例として示すものであり、この様にCを本発明の規定範囲を超えて多く添加すると、焼入れ後の強度のバラツキを小さくすることができるが、スポット溶接性を確保することが困難となるため好ましくない。
【0042】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、上述の如く化学成分組成を適切に制御することによって、焼入れにより高強度を確実に得ることおよび優れた延性の確保を同時に達成することができ、更には良好な耐食性、めっき性状およびスポット溶接性も確保することができたのである。そして、この様な延性および焼入れ後の強度安定性に優れた薄鋼板の実現によって、複雑な成形が行われ、かつ高強度であることが求められる自動車用鋼板や建築用鋼板、機械構造部材用鋼板等を供給できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼入れ温度と焼入れ後の引張強度との関係をMn濃度別に示したグラフである。
【図2】焼入れ温度とめっき層中の鉄含有量の関係を示すグラフである。
【図3】めっき層中の鉄含有量と耐食性試験における最大穴あき深さの関係を示すグラフである。
【図4】焼入れ温度と塗膜残存率の関係を示すグラフである。
【図5】焼入れ後の強度バラツキに影響を及ぼす、C含有量と(Cr+Mo)含有量の関係を示したグラフである。
【図6】鋼板中のMn含有量と鋼板の伸びの関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 質量%で(以下、同じ)、
C :0.11〜0.22%、
Mn:0.1〜0.5%未満、
Cr及び/又はMo:総和で0.1〜0.5%、
B :0.0005〜0.005%、
Ti:0.01〜0.04%、
Al:0.06%以下、および
0.19≦{[C]+([Cr]+[Mo])/5}
{式中、[C]、[Cr]、[Mo]は、それぞれC、Cr、Mnの含有量(質量%)を示す}を満たし、残部鉄および不可避的不純物からなり、
焼入温度850℃で焼入れ後の引張強度と焼入温度950℃で焼入れ後の引張強度との差が100MPa以下であることを特徴とする延性、めっき性、スポット溶接性および熱処理後の強度安定性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。 - 前記{[C]+([Cr]+[Mo])/5}が0.28以下である請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
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