JPH0565597A - 自動車ドア補強材用高強度焼入れ鋼管 - Google Patents

自動車ドア補強材用高強度焼入れ鋼管

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JPH0565597A
JPH0565597A JP25692891A JP25692891A JPH0565597A JP H0565597 A JPH0565597 A JP H0565597A JP 25692891 A JP25692891 A JP 25692891A JP 25692891 A JP25692891 A JP 25692891A JP H0565597 A JPH0565597 A JP H0565597A
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JP
Japan
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steel pipe
weight
strength
steel
steel tube
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JP25692891A
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English (en)
Inventor
Yuichi Higo
裕一 肥後
Fumio Mogami
二三男 最上
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 塗膜の形成が困難な高強度焼入れ鋼管の内周
側表面の防錆性を向上させ、機械的性質及び防錆性に優
れたインパクトバー等のドア補強材を得る。 【構成】 C:0.10〜0.30重量%,Si:0.
05〜0.50重量%,Mn:0.20〜1.50重量
%を基本成分とし、他にCr,B等を含有する鋼材から
得られた電縫鋼管であり、所定の製品長さに切り出され
た短尺鋼管10の両端開口部11,12が扁平加工等の
成形加工によって閉じている。この短尺鋼管を高周波誘
導焼入れするとき、引張り強さ130kgf/mm2
上の補強材となる。或いは、製品長さの整数倍の長さを
もつ長尺鋼管を焼入れした後、所定の製品長さに切断し
て短尺鋼管とすることも可能である。 【効果】 ドア補強材用高強度鋼管として要求される強
度及び靭性を有すると共に、内周側表面の防錆性が向上
し、長期使用における発錆に起因した外観劣化の防止及
び補強材としての機能の確保が図られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車のサイドドアに
取り付けられるインパクトバー等の補強部品として使用
される高強度焼入れ鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車、特に乗用車については、
安全対策の強化に対する要求が高くなってきている。こ
の要求の一つとして、側面から衝突があったときの衝撃
を吸収するため、サイドドアにインパクトバー等の補強
部品を装着することが採用されるようになってきてい
る。
【0003】インパクトバーとしては、100キロ級程
度の高張力冷延鋼板をプレス成形したものが従来から使
用されている。しかし、安全対策の強化に伴って、また
軽量化を狙って、130kgf/mm2 以上、好ましく
は150kgf/mm2 以上の引張り強さをもつ高強度
鋼管が有望な材料として注目されている。この関連にお
いて、特願平2−163132号では、高周波焼入れし
た自動車ドア補強材用焼入れ鋼管が提案されている。
【0004】ところで、自動車ドア補強材用の高強度焼
入れ鋼管は、通常1m前後のインパクトバー製品長さに
切断された状態で、両端に鋼板を成形して製造されたブ
ラケットが接合され、インパクトバーという一つの部品
となる。このインパクトバーは、両端に取り付けられた
ブラケットを介して、自動車のドアの内板と外板との間
に組み込まれる。そして、インパクトバーは、ドアと一
体となったままで、カチオン電着塗装工程を経て塗装が
施される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】通常の高強度焼入れ鋼
管には、焼入れ時に発生した薄い酸化皮膜が内周面及び
外周面共に付着している。外周側表面については、カチ
オン電着塗装によって防錆効果の確保に有効な塗膜が形
成される。しかし、内周側表面については、管端近傍の
部分表面に塗膜を形成することができるものの、鋼管内
部に対する塗装液の侵入が不十分なことに起因して、内
周側表面の大部分はほとんど塗装されていないのが現状
である。
【0006】一方、自動車のドアの内部には雨水の侵入
があり、構成部材は腐食環境に晒される。そこで、内板
等を構成する部材として、防錆効果を高めたZnめっき
鋼板等の使用が進められている。これら内板等の部材と
同様に、インパクトバーも、雨水或いは湿潤な空気に晒
される雰囲気で使用される。
【0007】そのため、長期間経過後には腐食が発生
し、腐食発生部分を起点とした破壊によって補強材とし
ての機能が十分に発揮できなくなることが懸念される。
また、腐食に伴って発生する錆がドア内から滲み出す等
の現象が生じると、自動車の外観が著しく損なわれる。
【0008】このような使用環境から、インパクトバー
を構成する高強度焼入れ鋼管についても、防錆性に優れ
ていることが要求される。しかし、鋼管内部は、塗膜が
十分に形成される外周側表面に比較して厳しい腐食環境
にある。その結果、侵入した雨水によって腐食が鋼管内
部で進行する。すなわち、従来の高強度焼入れ鋼管は、
鋼管内部の塗装が十分でないため、インパクトバーに要
求される防錆性を十分満足しているものとはいえない。
【0009】雨水が鋼管内部に侵入することを防止する
ため、高強度焼入れ鋼管の両端にブラケットを接合する
際、鋼管の開口部を密閉するようなブラケット形状とし
て溶接接合する方法,開口部を樹脂等で覆う方法等が検
討されている。しかし、これらの方法は、溶接加工の煩
雑さや部品点数の増加等によってコストの増加を伴うも
のであり、工業的には必ずしも有効な解決策とはいえな
い。
【0010】また、鋼管素材である鋼板にめっきを施し
ても、焼入れ時の入熱でめっき層が酸化或いは溶損する
ため、依然として腐食の問題が残る。そこで、熱処理後
の焼入れ鋼管に対して溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっき
等を施すことにより、内周側表面を含めて十分な防錆を
図ることが考えられる。この方法は、技術的には可能で
あるものの、鋼管1本ごとの処理が必要となる。そのた
め、処理が煩雑になる分だけコスト高になることが避け
られず、有効な対策ではない。
【0011】以上のように、従来の高強度焼入れ鋼管で
は、コストの大幅な増加を招くことなく、防錆性、特に
内周側表面の防錆性の向上が図られたものを見い出すこ
とが困難であった。
【0012】本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、両端開口部を閉じることにより内
周側表面の防錆性を向上させ、且つ高周波焼入れによっ
て強度,靭性等の機械的性質を確保した自動車ドア補強
材用高強度焼入れ鋼管を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の自動車ドア補強
材用高強度焼入れ鋼管は、その目的を達成するため、
C:0.10〜0.30重量%,Si:0.05〜0.
50重量%,Mn:0.20〜1.50重量%,P:
0.020重量%以下,S:0.020重量%以下及び
Al:0.01〜0.10重量%を含有し、成形加工に
よって両端開口部が閉じられている電縫鋼管であって、
高周波焼入れで形成されたマルテンサイトを主体とする
組織をもっていることを特徴とする。
【0014】使用する電縫鋼管は、更にTi:0.01
〜0.10重量%,B:0.0005〜0.010重量
%,Ni:0.20〜1.50重量%,Cr:0.05
〜1.00重量%,Mo:0.05〜0.5重量%,
V:0.01〜0.20重量%,Nb:0.01〜0.
20重量%,Ca:0.001〜0.01重量%から選
ばれた1種又は2種以上を含有することができる。
【0015】電縫鋼管としては、電縫溶接したままの鋼
管、及び更に電縫鋼管を角型等の異型断面に成形した鋼
管を使用することができる。また、高強度焼入れ鋼管と
しては、インパクトバー等の製品長さに切断された短尺
鋼管の両端開口部を閉じる用に成形加工したものを高周
波誘導加熱等で焼入れした鋼管がある。或いは、インパ
クトバー等の製品長さの複数倍の長さに切断された長尺
鋼管の両端部及び製品長さの間隙で設定された複数カ所
の部分を成形加工したものを焼入れし、焼入れ後の長尺
鋼管を切断して製品長さとした短尺鋼管等もある。
【0016】
【作 用】本発明者等は、高強度焼入れ鋼管としての強
度及び靭性を満足し、更には鋼管内周側表面の耐食性を
向上させる方法について、種々検討を重ねた。その結
果、インパクトバー等の補強部材としての用途に適した
高強度焼入れ鋼管を見い出した。すなわち、焼入れ前の
加工性,焼入れ鋼管の強度及び靭性レベルの向上、更に
は高周波焼入れに対応した焼入れ性を考慮して、鋼中の
成分・組成を調整すると共に、補強部材として使用中に
水又は湿潤雰囲気が鋼管内部に侵入すること防止して、
鋼管の内周側表面の防錆効果を高める目的で、インパク
トバー等の補強部材製品の端部にあたる鋼管の両端部を
成形加工によって扁平形状等とした。
【0017】以下、本発明で使用する鋼管の成分及び組
成について説明する。C:焼入れ後の鋼管の強度を得る
ために必要な元素であり、0.10重量%未満ではイン
パクトバー用高強度鋼管として要求される引張り強さ1
30kgf/mm2 以上の強度が得られない。しかし、
0.30重量%を超えてCを含有させると、焼入れ鋼管
としての強度の増加は得られるものの、靭性の低下が著
しく、衝撃荷重が負荷されたときに脆性的に破断し、イ
ンパクトバーとして好ましくない性質を呈する。更に、
焼入れ前の状態においても靭性の低下を招き、扁平加工
等の成形加工を行う際に割れ等の欠陥が発生し易くな
り、十分な成形加工が困難になる。したがって、C含有
量を0.10〜0.30重量%の範囲に規定した。
【0018】Si:鋼の脱酸剤として使用される元素で
あり、焼入れ性を高める上でも有効である。この作用を
得るため、Siを0.05重量%以上含有させることが
必要である。しかし、酸素との親和力が強い元素である
ため、電縫鋼管製造工程の電縫溶接時にペネトレータが
溶接部に形成され易くなり、健全な溶接部を得ることが
困難になる。そのため、扁平加工等の成形加工が難し
く、高強度焼入れ鋼管としたときの靭性を阻害する傾向
を示す。したがって、Si含有量は、上限を0.50重
量%に設定した。
【0019】Mn:鋼材の焼入れ性を高め、強靭化を図
る上で有用な元素である。しかし、過剰のMn含有は、
Mn系非金属介在物を増加させ、しかも縞状組織を発達
させる。その結果、靭性が低下する。更に、Mnは、S
iと同様に溶接部の健全性にも悪影響を及ぼす。これら
のことから、Mn含有量を0.20〜1.50重量%の
範囲に規定した。
【0020】P:焼入れ鋼管の靭性を劣化させる有害元
素である。そこで、P含有量の上限を、0.020重量
%に規制した。
【0021】S:鋼中に非金属介在物の生成を促進さ
せ、靭性の劣化,溶接部の健全性の低下等の欠陥を招
く。そこで、S含有量を0.020重量%以下に規制し
た。
【0022】Al:溶鋼の脱酸剤として有用な元素であ
り、0.01重量%以上の添加が必要とされる。しか
し、Al含有量が0.10重量%を超えると、鋼の清浄
度が損なわれると共に、表面疵が生じ易くなる。したが
って、Al含有量は、0.01〜0.10重量%の範囲
に規定した。
【0023】また、選択成分として添加されるTi,
B,Ni,Cr,Mo,V,Nb,Ca等は、それぞれ
次の作用を呈する。
【0024】Ti:熱処理時に固溶しにくい炭窒化物を
形成し、焼入れ時に結晶粒が粗大化することを防止する
作用がある。また、鋼中に固溶しているNを窒化物とし
て固定する上でも有効である。そのため、固溶Nによる
Bの消費が抑えられ、Bによる焼入れ性改善作用が効率
よく発揮される。これらの作用を得るため、Tiを0.
01重量%以上含有させることが必要である。しかし、
0.10重量%を超えてTiを含有させると、粗大な窒
化物が形成され、靭性の劣化を招く。したがって、Ti
含有量は、0.01〜0.10重量%の範囲とした。
【0025】B:鋼の焼入れ性は、Bの添加によって大
きく向上する。また、Tiによって鋼中のNが固定され
ているので、B含有量0.0005重量%以上のごく微
量でも十分に焼入れ性の向上が図られる。しかし、B含
有量が0.01重量%を超えると、鋼中に化合物が形成
され、逆に焼入れ性の低下を招くばかりか、靭性にも悪
影響を及ぼす。この点から、0.0005〜0.01重
量%の範囲にB含有量を定めた。
【0026】Ni:鋼の焼入れ性を向上させ、靭性の劣
化を抑えながら強度化を図る上で有効な元素である。こ
の作用を得るために、0.20重量%以上のNiを含有
させることが必要である。しかし、1.50重量%を超
えてNiを含有させても、性質改善効果が飽和し、鋼材
のコスト上昇を招く。したがって、Ni含有量は、0.
20〜1.50重量%の範囲に規定した。
【0027】Cr:鋼の焼入れ性を向上させるために有
効な元素であり、0.05重量%以上のCrを含有させ
ることが必要である。しかし、1.00重量%を超えて
Crを含有させると、造管時の溶接部にペネトレータが
発生し易くなり、扁平加工等の加工性を低下させると共
に、高強度鋼管としての靭性も劣化させる。そのため、
0.05〜1.00重量%の範囲にCr含有量を定め
た。
【0028】Mo:鋼の焼入れ性を高める上で有効な元
素であり、0.05重量%以上のMoを含有させること
が必要である。しかし、Moは、高価な合金元素であ
り、0.5重量%を超えて含有させても、それに見合っ
た効果が得られず、経済的に不利になる。そこで、Mo
含有量を0.05〜0.5重量%の範囲に規定した。
【0029】V:安定な炭窒化物を形成し、焼入れ時の
結晶粒の粗大化を抑制し、靭性の劣化を防止する等の有
効な作用を呈する。このような作用を得るためには、
0.01重量%以上のVを含有させることが必要であ
る。しかし、V含有量が0.20重量%を超えると、ご
く短時間で鋼材が焼入れ温度までに加熱される高周波焼
入れでは、炭化物の固溶不足に起因してマトリックスの
C濃度が低下する。その結果、必要な強度が得られな
い。そこで、V含有量を0.01〜0.20重量%の範
囲に規定した。
【0030】Nb:Vと同様に、結晶粒の粗大化を抑制
する上で、有効な元素である。しかし、マトリックスに
対する炭化物の固溶を減少させて、強度低下を招く原因
となる。従って、Nb含有量は、Vと同様に0.01〜
0.20重量%の範囲に設定した。
【0031】Ca:S系非金属介在物の形態を制御して
無害化し、焼入れ前の加工性及び焼入れ後の靭性を高め
る上で有効な元素である。この作用を得るためには、
0.001重量%重量%以上のCaを含有させることが
必要である。しかし、0.01重量%を超えてCaを含
有させるとき、鋼中の非金属介在物の量が増大し、却っ
て靭性の劣化が見られる。そこで、Ca含有量は、0.
001〜0.01重量%の範囲に規定した。
【0032】以上の成分系をもつ鋼から鋼管を製造する
ためには、種々の方法を採用することが可能である。た
とえば、製品特性の均質性の面からするとき、継ぎ目の
ないシームレスパイプを製造することもできる。しか
し、製造コストを考慮すると、高周波誘導抵抗加熱で板
材を溶接して電縫鋼管を製造する方法が、インパクトバ
ー等の自動車ドア補強材用鋼管の製造に最も適してい
る。
【0033】高周波溶接で電縫鋼管を製造する場合、十
分な成形加工性を得る目的で、素材となる鋼板として焼
鈍材を使用することが有利である。しかし、熱間圧延条
件を調節することにより、熱間圧延したままの鋼板を素
材として使用することも可能である。
【0034】また、電縫鋼管では、電縫溶接部が焼き入
れられて硬質になっている。そこで、造管後に鋼管全体
を焼鈍するか、或いは電縫溶接部のみを高周波誘導加熱
等で加熱するシームアニール等を施すことによって、成
形加工性を確保することも有効な手段である。
【0035】鋼管形状に関しては、造管したままの円形
断面で使用することが、鋼管素材のコストの面や熱処理
作用の容易性等の面から有利である。しかし、矩形断面
をもつ角型鋼管として使用することも可能である。矩形
断面としては、必ずしも正方形である必要はなく、縦横
の長さが異なる扁平角型の断面を採用することもでき
る。この角型鋼管は、インパクトバー等の補強材として
車両に装着したとき、曲げ荷重が負荷された場合に変形
初期の変形抵抗が大きく、またドアの外板と内板との間
隙に装着する場合の設計が容易である等の利点をもって
いる。
【0036】本発明法の電縫鋼管は、インパクトバー等
の補強材として使用されるときの長さに切断され、図1
に示すように、両端開口部11,12が密着した扁平形
状等に成形される。このときの成形は、必ずしも両端開
口部を完全に密着させる必要はない。また、管端開口部
が閉じられている形状である限り、扁平形状に限ったも
のではなく、たとえば図2に示す十字状に成形加工する
こともできる。ただし、両端部11,12を余り複雑な
形状に成形すると、成形加工自体が困難となるばかりで
なく、成形加工によって生じた間隙をアーク溶接等で埋
める作業も面倒なものとなり、好ましくない。
【0037】扁平加工等を行うことによって加工部分の
幅が広がり、熱処理作業等に支障を来す場合がある。こ
のような場合には、図3に示すように、成形加工後の短
尺鋼管10の両端部11,12にトリミングを施し所定
の幅に仕上げる。
【0038】成形加工が施される短尺鋼管10の両端部
11,12の長さは、特に限定されるものではない。し
かし、過剰に長いと補強材として要求される曲げ剛性が
得られなくなるため、ドアに対する取付け部分の寸法を
考慮しながら、成形加工長さを適宜設定する。
【0039】また、本発明の高強度焼入れ鋼管は、数m
長さの長尺鋼管を焼き入れた後で、製品長さの短尺鋼管
に切断することによって、インパクトバー等の補強材を
製造することもできる。
【0040】この場合には、図4に示すように、長尺鋼
管20に対して、両端部21,22の他に最終製品長さ
に相当する間隔で設定した複数カ所の部分23,24,
25で、鋼管内面が接するように成形加工を施す。成形
加工後の長尺鋼管20は、そのまま高周波焼入れ等が施
された後、成形加工された部分23,24,25から切
断される。これによって、鋼管内周側表面が接すること
によって両端開口部が閉じられ、所定の製品長さをもつ
複数の短尺鋼管26〜29が製造される。
【0041】焼き入れ前の鋼管に対する成形加工として
は、特に限定されるものではなく、縮管加工等による成
形加工も採用可能であるが、加工の簡便性等を考慮する
とき、通常のプレス成形が好ましい。また、単純な扁平
加工を採用するとき、造管後の切断工程でプレス成形を
並行的に行うこともできる。
【0042】鋼管の焼入れは、種々の方法を採用するこ
とができるが、焼入れ組織の均質性や焼入れ後の形状安
定性等を考慮すると、高周波焼入れが有効な手段であ
る。
【0043】焼入れ後の鋼管には、引張り強さ130k
gf/mm2 以上の強度が要求される。引張り強さ13
0kgf/mm2 未満の強度では、高張力冷延鋼板と強
度的に大差なく、軽量化のメリットを得ることができな
い。
【0044】焼入れ組織は、引張り強さ130kgf/
mm2 以上の強度である限り、基本的には必ずしもマル
テンサイト組織である必要はない。しかし、高周波焼入
れでは、冷却速度の厳密な制御が困難である。そのた
め、たとえばベーナイト等が混在する組織をもった鋼材
に高周波焼入れを施すと、冷却速度の如何に応じて機械
的性質が大きく変動し易くなる。そこで、強度が冷却速
度に依存しないマルテンサイトを主体とした組織にする
ことが、機械的性質を安定化させる上で有効である。
【0045】また、扁平加工等の成形加工を施した部分
は、成形していない他の部分と加熱条件や冷却条件等が
異なることから、焼入れ状態が変動し、引張り強さ13
0kgf/mm2 以上の強度を有する組織を得られない
ことが生じる。しかし、自動車のドアに衝撃荷重が負荷
された場合、この鋼管両端部にはほとんど曲げモーメン
トが作用しないため、実質的な問題とはならない。
【0046】以上に述べたように、鋼管の両端開口部が
閉じられた状態となった焼入れ鋼管では、インパクトバ
ーとしてドアに装着されたとき、ドア内に侵入した雨水
や湿潤雰囲気が鋼管の内部まで侵入しない。そのため、
内周側表面に対してカチオン塗装による塗膜の形成が十
分に行われていなくても、錆の発生が抑えられる。
【0047】成形加工によって両端開口部を十分に密着
させることができない場合、或いは成形加工後の熱処理
における熱歪み等に起因して密着性の劣化が生じる場合
には、図5に示すようにアーク溶接等によって鋼管端面
にビード13,14を盛って、管端の隙間を埋めること
が有効である。このときの溶接は、開口したままの鋼管
の周囲を全周溶接して開口部を密閉状態にすることに比
較して、直線的に溶接ビード13,14を盛るだけでよ
いため、極めて容易な溶接加工となる。
【0048】
【実施例】以下、実施例によって、本発明を具体的に説
明する。表1に示した成分・組成をもつ鋼を転炉で溶製
し、スラブに連続鋳造した。このスラブを通常のホット
ストリップミルで熱間圧延し、板厚2.3mmの熱延鋼
板を製造した。得られた熱延鋼板を酸洗後、一部につい
ては更に焼鈍を施した後、所定の幅にスリットし、造管
機で外径25.4mmの電縫鋼管とし、電縫溶接部にシ
ームアニールを施した。次いで、電縫鋼管を700mm
の長さに切断し、一部についてはプレス成形機を使用し
鋼管両端の80mmの範囲に対し両端開口部を閉じるよ
うにほぼ密着状態に扁平加工した。
【0049】
【表1】
【0050】これらの鋼管を高周波誘導加熱によって9
00〜1000℃まで昇温した後、水冷することにより
焼入れを施した。このときの高周波焼入れにおいては、
上下のチャック部分で鋼管を保持し、回転を与えながら
高周波誘導化熱コイルと水冷リングとの間を通過させる
方式を採用した。
【0051】焼入れ後の鋼管を引張り試験及び衝撃曲げ
試験に付し、その機械的性質を調査した。なお、衝撃曲
げ試験は、焼入れ鋼管を500mmの間隙で二点支持
し、その上に100kgの質量で先端部が半径50mm
の円弧状となった重錘を2mの高さから落下させ、鋼管
の変形及び破壊状態を観察した。
【0052】鋼管の発錆性試験としては、焼入れ鋼管の
外周側表面にシールペイントを塗布した後、24時間の
塩水噴霧試験を行い、試験後に鋼管を切断し内周側表面
における発錆状況を調べた。このとき、扁平加工した鋼
管については、扁平加工のままのものと、最端部の間隙
に沿ってアーク溶接したものについて試験した。試験結
果を、表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】表2から明らかなように、鋼管の両端開口
部が閉じられているものの、本発明で規定する範囲を外
れる成分・組成を有する試験番号1及び8の比較例で
は、引張り強さ130kgf/mm2 以上の強度が得ら
れていないか、または靭性が不足して衝撃荷重が負荷さ
れたとき脆性的な破断を生じている。一方、本発明で規
定する範囲の成分・組成をもつ鋼材を使用した場合にあ
っても、両端開口部が解放されたままの鋼管を使用した
試験番号2,3及び6の比較例では、内周側表面のほぼ
全域にわたって赤錆が発生していた。
【0055】これに対し、成分・組成及び両端形状が本
発明で規定される条件を満足する鋼管を使用した試験番
号4,5及び7の例では、ドア補強部材用高強度鋼管と
して十分満足する機械的性質を有すると共に、内周側表
面における発錆も皆無又はごく微小であった。すなわ
ち、扁平加工したままの鋼管では、両端に間隙がある部
分に赤錆の発生が見られたが、間隙を溶接ビードで密閉
したものでは内周側表面における発生は皆無であった。
このことから、本発明に従った高強度焼入れ鋼管は、防
錆性にも優れていることが判る。
【0056】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、使用する電縫鋼管の成分・組成を調整すると共に、
鋼管の両端開口部を閉じる成形加工を施すことによっ
て、自動車ドア補強部材用高強度焼入れ鋼管として要求
される強度及び靭性を有すると共に、内周側表面の防錆
性も兼ね備えているため、優れたインパクトバー等の補
強材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 両端部を扁平加工した短尺鋼管
【図2】 両端部を十字形状に成形加工した短尺鋼管
【図3】 扁平加工した両端部をトリミングした短尺鋼
【図4】 両端部及び複数の中央部を扁平加工した長尺
鋼管
【図5】 扁平加工後に溶接ビードが端部間隙に盛られ
た短尺鋼管
【符号の説明】
10 短尺鋼管 11,12 成形加工され
た管端部 13,14 溶接ビード 20 長尺鋼管 21,22 扁平加工された管端部 23〜25 扁平加工された中央部 26〜29 長尺鋼管から切り出される短尺鋼管 L インパクトバー等の補強材の製品長さに相当する長
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/06 38/54

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.10〜0.30重量%,Si:
    0.05〜0.50重量%,Mn:0.20〜1.50
    重量%,P:0.020重量%以下,S:0.020重
    量%以下及びAl:0.01〜0.10重量%を含有
    し、成形加工によって両端開口部が閉じられている電縫
    鋼管であって、高周波焼入れで形成されたマルテンサイ
    トを主体とする組織をもっていることを特徴とする自動
    車ドア補強材用高強度焼入れ鋼管。
  2. 【請求項2】 C:0.10〜0.30重量%,Si:
    0.05〜0.50重量%,Mn:0.20〜1.50
    重量%,P:0.020重量%以下,S:0.020重
    量%以下,Al:0.01〜0.10重量%及びTi:
    0.01〜0.10重量%,B:0.0005〜0.0
    10重量%,Ni:0.20〜1.50重量%,Cr:
    0.05〜1.00重量%,Mo:0.05〜0.5重
    量%,V:0.01〜0.20重量%,Nb:0.01
    〜0.20重量%,Ca:0.001〜0.01重量%
    から選ばれた1種又は2種以上を含有し、成形加工によ
    って両端開口部が閉じられている電縫鋼管であって、高
    周波焼入れで形成されたマルテンサイトを主体とする組
    織をもっていることを特徴とする自動車ドア補強材用高
    強度焼入れ鋼管。
JP25692891A 1991-09-09 1991-09-09 自動車ドア補強材用高強度焼入れ鋼管 Pending JPH0565597A (ja)

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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002241895A (ja) * 2000-12-15 2002-08-28 Kobe Steel Ltd 延性および熱処理後の強度安定性に優れた薄鋼板
KR101231947B1 (ko) * 2011-03-08 2013-02-08 현대하이스코 주식회사 2000㎫ 인장강도를 갖는 고강도 열간 성형 도어 빔 및 그 제조 방법
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KR101258766B1 (ko) * 2011-03-08 2013-04-29 현대하이스코 주식회사 1800㎫ 인장강도를 갖는 고강도 열간 성형 도어 빔 제조 방법
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