JP3761669B2 - 光ファイバ接続工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ接続器を利用した光ファイバの突き合わせ接続に用いて好適な光ファイバ接続工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバ接続器においては、突き合わせた2本の光ファイバを同一のハウジング内に固定する構造となっている。
このような光ファイバ接続器の位置決め調心構造としては、(1)精密細管(以下、「マイクロキャピラリー」)内にその両端から光ファイバを挿入して突き合わせる構造、(2)V溝において光ファイバどうしを突き合わせる構造、(3)3本の精密ロッドあるいは3個の精密ボールの中心に光ファイバを担持して位置決めする構造などがある。
このような光ファイバ接続器においては、一対の光ファイバは、調心、突き合わされた状態で接着により、あるいは機械的な挟持により固定されるようになっている。
【0003】
ところで、前記のような光ファイバ接続器の場合、光ファイバを単にハウジング内に固定する構造であることに起因して以下のような問題が生じていた。
すなわち、突き合わせた光ファイバを固定しているハウジングと光ファイバとの熱膨張率の差によって、温度変化を受けた際に光ファイバの突き合わせ状態が変化してしまう。これにより、光ファイバの接続損失が変動するという問題があった。
また、前記ハウジングにおいては弾性体によって光ファイバを保持しているが、この弾性体の経年劣化により光ファイバの保持力が低下して、光ファイバの突き合わせ状態が変化して接続損失が変動するといった問題もあった。
【0004】
さらに、接続損失の変動を抑えることができる手段を設けた場合、構造が複雑になることが考えられ、前述の調心位置決め構造を用いた光ファイバの接続に手間がかかることが懸念される。特に、光ファイバネットワークにおける断線や光部品の故障等の支障が発生した時の接続に使用する場合には、迅速に接続作業を完了することが要求されるので、光ファイバを簡単かつ正確に接続し得る光ファイバ接続器の開発が要望されていた。
【0005】
このような要望に応じて、出願人は、例えば特願平8−137206号に示すような光ファイバ接続器を提案している。
図9および図10に示す光ファイバ接続器1は、互いの長手方向を揃えて配置された二つ割り構造の素子2,2と、素子2,2の間に挟持力を付与して光ファイバ3(光ファイバ単心線)を挟持、固定するための付勢手段4(コ字状バネ)とを備えて構成されている。
この場合、一方および他方の光ファイバ3,3は、素子2,2の長手方向一端側および他端側において、突き合わせられかつ調心位置決めされた状態で、それぞれ個別に挟持されている。
【0006】
素子2には、長手方向に延在してV溝、U溝等の案内溝2a(図10にはV溝の例を示している。)が形成されている。光ファイバ3は、案内溝2aに案内されて素子2の長手方向中央部に形成された調心溝2cに導かれ、そこで素子2,2の長手方向両端から挿入した光ファイバ3どうしが精密に調心位置決めされるようになっている。
【0007】
さらに、素子2および付勢手段4には、それぞれ開口部2bおよび開口部4aが、位置を合わせて光ファイバ接続器1の長手方向に沿って複数形成されている。この構成により、光ファイバ接続器1の長手方向に直交する方向(図9において矢印Xで示している)から、楔5が開口部2b、4a内に差し込まれたときには、楔5は、付勢手段4の挟持力に抗して素子2,2どうしを互いに離間する方向に押し広げる。これにより、光ファイバ接続器1の長手方向側方からの光ファイバ3の挿入、光ファイバ接続器1の長手方向側方への光ファイバ3の引き抜き、あるいは光ファイバ3の交換等の作業が容易に達成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記光ファイバ接続器1は、サイズが小さいために、付勢手段4を押し広げる作業が大変であり、しかも、光ファイバ3の挿入時においては、付勢手段4を押し広げつつ素子2に光ファイバ3を挿入しなければならない。よって、所望の接続損失で光ファイバ3どうしを光接続するには、手間がかかり、作業性に不満があった。また、楔5の押込力が強すぎたり押込力が長時間作用すると、素子2に微小なひずみを生じたり、付勢手段4の挟持力が不安定になって光ファイバ接続器1における光ファイバ3の接続精度に影響を与える可能性があるので、作業には細心の注意を払う必要があった。また、楔5を素子2の微小な開口部2bに挿入する作業は手間がかかり、しかも、楔5に作用させる押圧力の向きを安定させないと素子2を傷付けたり変形させたりするため、作業性に不満があった。このため、光ファイバ接続器1での光ファイバ3の突き合わせ接続を、素子2に側圧を過剰に作用させること無く簡便に行うための専用の工具の開発が求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、二つ割り構造の素子の間に光ファイバの対を突き合わせ接続して挟持するタイプの光ファイバ接続器を利用した光ファイバの突き合わせ接続を容易になし得る光ファイバ接続工具に係り、特に、(1)分離部材の移動安定性が向上して素子の所望の位置に正確に差し込むことができ、(2)しかも分離部材に作用する素子への押圧力の向きが安定して素子を傷付けたり変形させる心配が無く、素子での光ファイバの接続精度に影響を与えない光ファイバ接続工具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いの長手方向を揃えて配置されかつ付勢手段により互いの接近方向に付勢されている二つ割り構造の素子を有しかつ該素子の長手方向一端側および他端側においてそれぞれ個別に一方および他方の光ファイバを該素子の間に挟持して前記光ファイバどうしを突き合わせ接続可能に調心位置決めする光ファイバ接続器を利用して、前記光ファイバを突き合わせ接続するに際して使用される光ファイバ接続工具であって、前記光ファイバ接続器を支持する支持機構と、前記光ファイバ接続器の長手方向に直交する方向から前記素子間に差し込まれたときには前記付勢手段の付勢力に抗して前記素子どうしを離間させる方向に押し広げることにより前記光ファイバの挟持を解除する分離部材と、該分離部材を光ファイバ接続器に向けて押圧して素子間に差し込む押圧機構とを具備してなり、前記押圧機構が、回転軸と、該回転軸を回転操作するためのレバーと、分離部材を支持して支持機構に向けて進退自在に移動する移動台と、螺旋溝および該螺旋溝と係合する駆動突起を介して回転軸と移動台とを相対移動可能に連結するカム部とを備え、螺旋溝と駆動突起のいずれか一方を回転軸と連動して正逆回転させることで他方が移動台を移動して分離部材を支持機構に対して進退させる構成であり、前記光ファイバ接続器の目的位置に前記分離部材を差し込んだ際に前記駆動突起が遊動可能に収納される拡張部を螺旋溝に形成したことを特徴とする光ファイバ接続工具を前記課題の解決手段とした。
【0011】
付勢手段としては、断面C形スリーブ状のC形バネや、断面コ字状のコ字形バネ等のほか、素子を両側から互いの接近方向に付勢する構成であれば、各種構成の採用が可能である。
押圧機構のカム部としては、螺旋溝/駆動突起を形成した回転軸に、移動台に形成した駆動突起/螺旋溝を係合した構成や、回転軸や移動台とは別体の2部品に形成した螺旋溝と駆動突起とを係合した構成や、回転軸をピニオンとするラックピニオン機構等の構成を含む。これら構成のカム部は、分離部材がレバーの回転量に対応した移動量で正確に移動するので、レバーの操作によって素子への分離部材の差込量や押圧力を微調整することが可能である。また、回転軸を分離部材の差し込み時と逆向きに回転させると、カム部を介して移動台が支持機構から離間した位置に引き戻される。
カム部は、螺旋溝の形成範囲によって楔の移動ストローク等を設定することが可能なので、目的の螺旋溝を選択して採用することにより、支持台に支持した各種サイズの光ファイバ接続器に対応して楔の最適差し込み位置を設定することができる。また、螺旋溝を形成する部材は、交換可能であることが好ましい。
螺旋溝は、旋回ピッチを途中で変更したり、部分的に直線状の溝を組み込んだ構成等も採用可能である。これにより、例えば、光ファイバ接続器近傍での分離部材の移動速度を低下させたり、逆に光ファイバ接続器から離間した位置の移動速度を高めたりすることも可能である。
【0012】
また、本発明は、光ファイバ接続器の目的位置に分離部材を差し込んだ際に駆動突起が遊動可能に収納される拡張部を螺旋溝に形成した構成であるため、駆動突起が拡張部に収納された際には、該拡張部内での駆動突起の移動範囲内で分離部材の自由な移動が許容されるので、分離部材を光ファイバ接続器に差し込む方向へのレバーの回転軸の回転力を解除しておくと、該分離部材から光ファイバ接続器へ作用する無駄な側圧を解除することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバ接続工具の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1から図8は、本発明の光ファイバ接続工具10の一実施形態を示すものである。
図1において、符号11は支持機構、20は楔(分離部材)、30は押圧機構、50はホルダ保持台、60は保持台回動機構、70は押付力印加機構、80は光ファイバホルダ、90はレンズ台、100はベースである。
【0015】
ベース100は概略十字状のプレートであり、光ファイバ接続工具10を構成する構成部品は全てベース100上に搭載されている。
支持機構11は、光ファイバ接続器1を光ファイバ接続工具10内において定位置に支持するためのもので、図1および図2に示すようにベース100の中央部に設けられ、支持台12、保持蓋13、位置決めブロック14を備えて構成されている。
【0016】
図3(b)に示すように、支持台12は、光ファイバ接続器1を定位置に支持するためのものである。
保持蓋13は、ピン13aにより支持台12に回動自在に取り付けられ、支持台12に光ファイバ接続器1が載置された際に、上から被せるようにして光ファイバ接続器1上に載せて、光ファイバ接続器1が支持台12上から飛び出すことを防止する。図1に示すように、保持蓋13には鉄板等の磁気吸着板13bが取り付けられており、支持台12に支持された光ファイバ接続器1上に載せた場合に、支持台12上部に設置した磁石13cによって磁気吸着板13bが吸着されるので、これにより保持蓋13と支持台12との間に光ファイバ接続器1が挟み込まれる。光ファイバ接続器1は付勢手段(コ字状バネ)4の開口部4aを横に向けて支持台12上に載置され、上から保持蓋13が載せられることにより、支持台12に対して傾斜することなく安定に押さえられる。
図3(b)中符号13dは保持蓋載置台であり、支持台12からレンズ台90方向に回動した保持蓋13が載置され、この保持蓋13を磁石13eで磁気吸着することで、支持台12での光ファイバ接続器1の着脱中に保持蓋13を定位置に保持しておく。
【0017】
位置決めブロック14は支持台12上に互いに離間させて一対設置されており、光ファイバ接続器1はこれら位置決めブロック14の間に配置するようになっている。位置決めブロック14には溝15が形成されており、この溝15に光ファイバ3を挿通すると、該光ファイバ3を支持台12上の光ファイバ接続器1中心軸線上に概略位置決めすることができる。
また、位置決めブロック14の近傍には、当接壁16が立設されている。この当接壁16は、押圧機構30の移動台31(後述)が支持台12に接近した時に、該移動台31の最接近位置を設定するものである。
【0018】
楔20は、例えば図7に示すように鋭利な先端形状を有する複数の刃体21が一体的に形成されてなるものである。そして、光ファイバ接続器1の長手方向に直交する方向から開口部2bを通して素子2,2間に差し込まれたときには付勢手段4の付勢力に抗して素子2,2どうしを離間させる方向に押し広げるためのものである。
図3(b)および図8(a)〜(d)に示すように、楔20には径2.5ミリメートル程度の小孔20bが開口されており、この小孔20bには押圧機構30の移動台31(後述)に螺着された径2.0ミリメートル程度の係合ピン31aが挿入されている。
【0019】
押圧機構30は、図3(b)に示すように、支持機構11に隣設されており、移動台31、レバー32、回転軸33、溝カム34、楔取付台35を備えて構成されている。
移動台31は、支持台12と該支持台12から離間して設けられた回転軸ブラケット36との間を往復動可能になっている。図3(a)に示すように、これら支持台12と回転軸ブラケット36との間にはガイド棒37が架設され、移動台31はこのガイド棒37にガイドされつつスムーズに移動する。図3(a)、(b)に示すように、移動台31の中央部には筒状の溝カム34がネジ31bで固定され、この溝カム34内面に形成された螺旋溝34aに前記回転軸33から回転半径方向に突設した駆動突起33a(ピン)が移動可能に嵌込まれる。回転軸33は、回転軸ブラケット36を貫通して設けられ、ブッシュ36aを介して回転自在に支持される。回転軸33の一端は溝カム34内に達して駆動突起33aを介して螺旋溝34aと係合し、回転溝33の他端は回転軸ブラケット36を介して支持台11と対向する側に突出し、この突出された部分にレバー32が取り付けられる。
図3(b)に示すように、楔取付台35は移動台31の上部(図上側)に形成され、前記係合ピン31aが螺着され、この係合ピン31aとの間に楔20をスライド移動可能に挟み込む。
【0020】
図4(a)、(b)に示すように、押圧機構30は、レバー32を回転操作して回転軸33を回転駆動し、駆動突起33aを螺旋溝34a内で移動することにより、移動台31(溝カム34)を支持機構11に対して進退させる。これにより、移動台31とともに楔20が一体的に支持機構11に対して進退される。レバー32の回転操作による楔20の移動範囲は、溝カム34の中心軸線方向での螺旋溝34aの形成範囲である。螺旋溝34aの後端部(回転軸ブラケット36側の端部)には螺旋溝34aと駆動突起33aとの係合状態がフリーになる拡張部34bを形成しているので、楔20をその移動範囲で最も支持機構11に接近させた際に、駆動突起33aが拡張部34bに入り込み、移動台31が微小距離後退することを許容する。
この押圧機構30では、溝カム34を交換すると、光ファイバ接続器1の各種サイズに対応することができる。すなわち、螺旋溝34aの形成範囲が広い場合には楔20の駆動ストロークが長くなる。また、螺旋溝34aの形成範囲が溝カム34において回転軸ブラケット36側に偏在している場合には、支持機構11に対する楔20の最接近位置が支持機構11から遠くなり、径寸法等の大きい光ファイバ接続器1に対応することができる。
なお、回転軸33と溝カム34とは請求項1記載のカム部を構成する。
【0021】
図1および図5(a)、(b)に示すように、ホルダ保持台50は、支持機構11の両側に配置され、それぞれ、外観長方形板状の光ファイバホルダ80が着脱自在に載置される構造になっている。
各ホルダ保持台50は、ベース100(図5(a)、(b)中では図示していない)上に分離可能に載置される保持台本体51と、該保持台本体51にガイドされつつ支持台12に対して接近離間する方向に移動するガイド台52とを備えて構成されている。ガイド台52は、支持台12上に配置した光ファイバ接続器1の中心軸線の延長線にほぼ沿って細長い形状であり、平坦な上面53を有している。図1に示すように、ガイド台52の支持台12から離間した端部には突壁54が突設され、上面53上には該ガイド台52の長手方向に延在するガイド体55が設けられている。ガイド体55はガイド台52の上面53と平行な平坦な上面を有しており、ガイド台52とガイド体55の上に設置した光ファイバホルダ80は支持台12に対して接近離間する方向にスライド移動自在に支持される。
図5(a)、(b)に示すように、ガイド台52の下部には引戻用部材57が固定されている。引戻用部材57は保持台本体51内に設置されたベアリング収納部56上に載せられており、ガイド台52と引戻用部材57とは一体的に支持台12に対して接近離間する方向に移動する。
【0022】
図6において、保持台回動機構60は、回動軸61と、アーム62とを備えて構成されている。
回動軸61は、支持機構11の両側で、光ファイバ接続器1の長手方向に垂直な向きで配置されている。
アーム62は、L字状であって、一端が回動軸61に取り付けられ、他端がホルダ保持台50、50の内部に配置され、回動軸61を中心として回動することにより、ホルダ保持台50、50をベース100に対して傾斜する方向に回動させる。
【0023】
図5(a)、(b)に示すように、押付力印加機構70は、各ホルダ保持台50に設けられており、印加レバー71、偏心カム72、バネ73を備えて構成されている。
偏心カム72は保持台本体51に回転自在に支持され、ベアリング収納部56と引戻用部材57との間の隙間74に設置されており、印加レバー71を手動操作することにより回転される。
バネ73は、保持台本体51に反力をとって、ガイド台52を常時支持台12方向に押圧している。
したがって、偏心カム72には常時引戻用部材57が当接されており、印加レバー71を操作して偏心カム72を回転させることにより、ガイド台52が支持台12に対して接近離間するようになっている。
【0024】
図1において、光ファイバホルダ80は、台部81、蓋82を備えて構成されている。
台部81は細長長方形板状であり、上面を長手方向に貫通する位置決め溝83が形成されている。台部81の下部には脚部84が突設されている。脚部84は、台部81の幅方向(長手方向に直交する方向)両側に形成された突条であり、光ファイバホルダ80をガイド台52上に載置した際にガイド体55の両側に配置されて光ファイバホルダ80をホルダ保持台50に対して位置決めするとともに、ガイド台52上での安定なスライド移動を可能にしている。
蓋82は、図示しない軸を以て回動することにより開閉され、閉じた状態では、位置決め溝83に配置した光ファイバ3を位置決め溝83の最深部方向に押し付けて台部81との間にクランプする。
【0025】
レンズ台90は、ベース100に立設されたポール91、該ポール91の上部に取り付けられたレンズホルダ92、ライトホルダ93を備えて構成されている。
ポール91は支持機構11の押圧機構30と対向する側部に立設されている。
レンズホルダ92は、ポール91の上端部にて該ポール91を中心として水平に旋回可能に設けられている。レンズホルダ91の先端にはレンズ94が水平に支持され、図7に示すように、レンズホルダ92の旋回によるレンズ94の中央部の移動軌跡が、支持台12に支持した光ファイバ接続器1の長手方向両端部の直上を通るようになっている。
図1に示すように、ライトホルダ93はレンズホルダ92より下方でポール91に取り付けられ、ポール91を中心として水平方向に旋回可能になっている。ライトホルダ93に支持したライト95の発光方向は、支持台12に支持した光ファイバ接続器1上でレンズ94の中心軸線と交差するようになっている。
【0026】
〔接続例〕
次に、上記構成を有する光ファイバ接続工具10を使用した場合の光ファイバ接続器1を利用した光ファイバ3を突き合わせ接続する方法について説明する。
ここでは、光ファイバ接続器1を利用して新規に2本の光ファイバ3,3を光接続する場合について説明する。
【0027】
突き合わせ接続に際しては、光ファイバ接続工具10を水平に定置し、光ファイバ接続器1を支持台12上に載置する。
このとき、光ファイバ接続器1は、保持蓋13、位置決めブロック14,14間に所望の向きで確実に保持されることになる。
【0028】
次に、楔20を所定位置に移動させる。ここでは、まず、長手方向両側方から2本の光ファイバ3,3を新規に挿入するので、楔20は、図8(a)に示す標準位置とする。
【0029】
そして、レバー32を図2において時計回り(図4(a)反時計回り)方向に回転操作する。すると、螺旋溝34aと駆動突起33aとの係合位置が変化することにより移動台31が支持機構11に接近し、楔20が、光ファイバ接続器1の長手方向に直交する方向から開口部2bを通して素子2,2間に差し込まれ、付勢手段4の付勢力に抗して素子2,2どうしを離間させる方向に押し広げることになる。
なお、レンズ94等を利用すれば、楔20と開口部2bとの相対位置を簡便に確認することができる。
【0030】
この場合、図8(a)に示すように、当初、楔20と移動台31との間にはd1=0.5ミリ程度のクリアランスが介在されているが、楔20の刃体21が光ファイバ接続器1の素子2,2に接触して圧入が開始されると、図8(b)に示すように、移動台31が楔20に対してスライドしつつ前進を継続する結果クリアランスが解消され、最終的に移動台31の進行方向前面が楔20に当接して楔20を押圧して素子2,2間に圧入する。
また、楔20を圧入する途中で、例えば開口部2bの向きのずれ等を発見した場合には、レバー32を逆回転することで、作業をやり直すことができる。これにより、楔20で素子2,2を傷付けることを防止することができ、素子2,2の目的位置に確実に楔20を挿入することができる。しかも、駆動突起33aと螺旋溝34aとの噛み合わせにより楔20を安定に移動することができるので、圧入作業を確実に行うことができ、圧入直後にも楔20の押圧力が目的方向以外の方向に作用することが無く、素子2,2を保護することができる。
【0031】
レバー32を所定位置にまで回転すると、素子2,2間の所定深さまで楔20が挿入される。
この時、図4(b)に示すように、駆動突起33aが螺旋溝34aの拡張部34bに入り込み、移動台31が微小距離後退することが許容されるので、レバー32の回転力を解除すると素子2,2に楔20の圧入による側圧が作用しない。これにより、楔20の圧入による素子2,2の変形等を防止することができ、光ファイバ接続器1における光ファイバ3の接続精度が向上する。また、移動台31に付勢手段を取り付けて回動軸ブラケット36方向への付勢力を常時与えるようにすると、拡張部34bに駆動突起33aが入り込むと同時に、拡張部34b内での駆動突起33aの移動範囲内で移動台31が後退する。この時、図8(c)に示すように、移動台31が移動しても楔20は素子2,2間のクランプ力による引き抜き抵抗の作用で素子2,2間に差し込まれたままの状態で変位せず、移動台31のみが楔20に対してスライド移動しつつ後退するため、係合ピン31aが小孔20bの中央部まで移動し、楔20と移動台31との間に再びクリアランスが形成される。
【0032】
一方、両ホルダ保持台50のガイド台52には、図2に示すように、光ファイバ3をクランプ支持した光ファイバホルダ80を載置する。光ファイバホルダ80は、光ファイバ3の切断工程および被覆除去工程から一貫して光ファイバ3をクランプ支持したままガイド台52上に移設するだけで、光ファイバ3に所望の突出長(光ファイバホルダ80からの突出長)や被覆除去長が得られている。
この時、ガイド台52は、印可レバー71の操作によって支持台12から離間させておく。
【0033】
そして、図5(b)に示すように、両ホルダ保持台50,50をベース100から持ち上げるようにして回動し、光ファイバホルダ80をガイド台52上で滑らせて、光ファイバ接続器1の長手方向端部から光ファイバ3を素子2,2間に挿入する。これにより、光ファイバ3が素子2,2に対して傾斜され、しかも、光ファイバ接続器1の長手方向側面に形成したテーパ状の導入口2dの内面により垂直に近い角度で突き当てられるので、光ファイバ3を素子2,2間に真横から挿入する場合に比べて、作業が容易になる。光ファイバ接続器1に両側から挿入した光ファイバ3,3は光ファイバ接続器1の中央部で突き合わせ、突き合わせが終わったら、ホルダ保持台50,50をベース100上に戻す。
【0034】
この時、光ファイバ接続器1と光ファイバホルダ80との間の光ファイバ3,3は位置決めブロック14の溝15内に収納され、光ファイバ接続器1の中心軸線上に概略保持される。
光ファイバ3の挿入作業は、レンズ94を導入口2dの直上に位置させて、光ファイバ3を目視しながら行う。
【0035】
次に、印可レバー71を手動操作してガイド台52を光ファイバ接続器1に向けて接近させると、突き合わせ状態の光ファイバ3,3間にバネ73の付勢力で突き合わせ力が与えられる。突き合わせ力は印可レバー71を元の位置に戻さない限り継続して与えられ、この状態を維持したまま、レバー32を逆方向(図2中反時計回り)に回転すると移動台31が光ファイバ接続器1から離間した位置に引き戻され、図8(d)に示すように、楔20が係合ピン31aに引っ掛けられるようにして移動台31とともに後退して光ファイバ接続器1から引き抜かれ、光ファイバ3,3どうしは、調心かつ突き合わされた状態で付勢手段4によりクランプされる。
【0036】
以上により、光ファイバ接続工具10を使用した場合の光ファイバ接続器1を利用した光ファイバ3の突き合わせ接続を完了する。
接続作業の完了した光ファイバ接続器1を光ファイバ接続工具10から取り出すには、保持蓋13を反転開放した上、両光ファイバホルダ80をホルダ保持台50から取り出すか、蓋82を開放して両光ファイバ3,3を光ファイバホルダ80から取り出す。
以下、光ファイバ3をクランプ支持した光ファイバホルダ80を新たにホルダ保持台50に載置し、同様の手順で本工具10を操作することにより、次の接続作業も簡便に実施することができる。
【0037】
以上説明したように、光ファイバ接続工具10を使用した場合の光ファイバ接続器1を利用した光ファイバ3を突き合わせ接続においては、以下の有利な効果がある。
(I)支持機構11により、光ファイバ接続工具10内において、光ファイバ接続器1を確実に支持することができる。
(II)押圧機構30により、楔20を光ファイバ接続器1の素子2,2間に容易かつ確実に差し込んで、付勢手段4の挟持力に抗して素子2,2を容易に押し広げることができる。
(III)楔20の差し込み時に、レバー32を一旦所定深さまで押し込んでから該レバー32の回転力を解除すると同時に楔20を光ファイバ接続器1に圧入する押圧力が解除されて、側圧がかからない状態で素子2,2間の開放状態を維持することができる。これにより、素子2に微小なひずみを生じさせたり付勢手段4を弱めるといった心配が無くなり、光ファイバ3どうしの突き合わせ接続の精度が向上し、所望の接続損失を確実に得ることができる。
(IV)(III)の時、光ファイバ接続器1に作用する側圧が高い場合には、螺旋溝34aの拡張部34bでの駆動突起33aの可動範囲内で楔20が自由に移動するので、光ファイバ接続器1の変形を確実に防止することができ、接続した光ファイバ3,3間に所望の接続損失が確実に得られる。
(V)ホルダ保持台50により、光ファイバ3をクランプ支持したまま切断工程および被覆除去工程を終えた光ファイバホルダ80を設置するだけで、所望の突出長および被覆除去長が得られる。
(VI)保持回動機構60により、光ファイバ接続器1への光ファイバ3の挿入作業が容易になる。
(VII)押付力印可機構70により、光ファイバ3,3どうしの突き合わせ力を容易に高めることができ、しかも、突き合わせ力を過不足無く与えることができるので、所望の接続損失を確実に得ることができる。
(VIII)レンズ台90により、光ファイバ接続器1への光ファイバ3の挿入作業が容易になる。
(IX)駆動突起33aと螺旋溝34aとが常に係合した状態を維持しつつ互いの係合位置を変更することで移動台31に支持した楔20を移動する構造であるので、楔20の移動精度が向上して素子2の目的位置に確実に挿入することができ、素子2を傷める心配が無い。
(X)押圧機構30のレバー32の回転操作によって、楔20の移動を微調整することが可能になり、また、圧入作業を中断して楔20を元の位置に戻すことも容易であるので、素子2の目的位置に確実に挿入することができ、素子2を傷める心配が無く、光ファイバ接続器1内での光ファイバ3の接続精度を確保することができる。
(XI)螺旋溝34aの形成範囲や形成位置の異なる溝カム34を交換するだけで、各種サイズの光ファイバ接続器1に容易に対応することができ、汎用性が向上する。
(XII)部品点数が少なく、低コストで製作することができる。
【0038】
光ファイバ接続工具10は、既に2本の光ファイバ3,3が接続されている光ファイバ接続器1を支持台12上に載置して押圧機構30を操作すれば、光ファイバ3,3の接続状態の解除にも簡便に利用することができる。
この使用方法では、両光ファイバ3,3を位置決めブロック14の溝15内に収納することで、光ファイバ接続器1が浮き上がったり、光ファイバ3,3に無駄な湾曲が生じるといった不都合が防止される。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、以下のような変形を行っても、もちろん本発明の主旨を逸脱することはない。
a)本発明の光ファイバ接続工具10を光ファイバ接続器1に対して適用することに代えて、開口の数、全体形状、大きさ等において設計変更のなされた光ファイバ接続器に対して適用すること。
その場合には、光ファイバ接続工具10は、光ファイバ接続器に合わせて、適宜設計変更されることはもちろんである。
b)図示形状の光ファイバホルダ80に代えて、別形状の光ファイバホルダを使用すること。
この場合、光ファイバのクランプ支持用の蓋の数や、位置決め溝形状等の変更が含まれる。
また、光ファイバホルダの形状に合わせて、ホルダ保持台50も設計変更されることは勿論である。
c)図示形状の楔20に代えて、同様の機能を有する他の任意形状の楔20を使用すること。
d)押圧機構30に代えて、同様の機能を有する他の任意の押圧機構を使用すること。
e)係止機構40に代えて、同様の機能を有する他の任意の係止機構を使用すること。
f)ホルダ保持台50に代えて、同様の機能を有する他の任意のホルダ保持台を使用すること。
g)保持台回動機構60に代えて、同様の機能を有する他の任意の保持台回動機構を使用すること。
h)押付力印可機構70に代えて、同様の機能を有する他の任意の押付力印可機構を使用すること。
i)押付力印可機構70を両ホルダ保持台80に設置すること。
j)係合ピン31aに代えて、同様の機能を有する任意形状の係合部材を使用すること。
k)素子2に差し込んだ楔20の引き戻しを、係合ピン31aに代えて別途設置した楔引き戻し機構で行うようにすること。
l)光ファイバ接続器1が多心用であること。
この場合、光ファイバホルダも多心の光ファイバに対応して適宜設計変更することは言うまでも無い。
m)ホルダ保持台50を、支持機構11の片側にのみ設置すること。
この場合、支持機構11の反対側には、別構造の光ファイバ支持手段が設置される。
n)旋回ピッチが途中で変更されている螺旋溝や、途中に直線部や拡張部が形成された螺旋溝を有する溝カムを使用すること。
o)回転軸に形成した螺旋溝と、溝カムに形成した駆動突起とを係合させること。
p)ホルダ支持台、保持台回動機構、押圧力印加機構、レンズ台等を有していない構成。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る光ファイバ接続工具によれば、回転軸と、該回転軸を回転操作するためのレバーと、分離部材を支持して支持機構に向けて進退自在に移動する移動台と、螺旋溝および該螺旋溝と係合する駆動突起を介して回転軸と移動台とを相対移動可能に連結するカム部とを備え、螺旋溝と駆動突起のいずれか一方を回転軸と連動して正逆回転させることで他方が移動台を移動して分離部材を支持機構に対して進退させる構成の押圧機構によって、支持機構に支持した光ファイバ接続器に分離部材を圧入して素子を開閉するようにしたことにより、(イ)楔の移動が安定して素子の目的位置に確実に差し込むことができる、(ロ)(イ)により素子の開閉作業性が向上し、しかも、素子を傷付けたり、変形させたりする心配が無く、光ファイバ接続器における光ファイバの接続精度を維持することができる、(ハ)カム部を交換して該カム部の螺旋溝の形成範囲等を選択することで、各種サイズの光ファイバ接続器の素子に簡便に対応して開閉作業を行うことができる、(ニ)部品点数が減少して、低コストで簡便に製作することができるといった優れた効果を奏する。
【0041】
さらに、光ファイバ接続器の目的位置に分離部材を差し込んだ際に駆動突起が遊動可能に収納される拡張部を螺旋溝に形成した構成により、駆動突起が拡張部に収納された際には、該拡張部内での駆動突起の移動範囲内で分離部材の自由な移動が許容されるので、分離部材を光ファイバ接続器に差し込む方向へのレバーの回転軸の回転力を解除しておくと該分離部材から光ファイバ接続器へ作用する無駄な側圧が解除されて素子の変形等の心配が無くなり、これにより、この光ファイバ接続器にて突き合わせ接続する光ファイバ間に目的の接続損失が確実に得られるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバ接続工具の一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】 図1に示す光ファイバ接続工具を示す全体斜視図であって、図1と反対の方向から見た構造を示す。
【図3】 図2の押圧機構を示す図であって、(a)は平断面図、(b)は側断面図である。
【図4】 図3の押圧機構を示す部分拡大斜視図であり、(a)は初期状態、(b)は分離部材の差し込み時を示す。
【図5】 図1に示す光ファイバ接続工具におけるホルダ保持台を示す図であって、(a)は初期状態を示す断面図、(b)は光ファイバホルダの移動時(光ファイバ挿入時)を示す断面図である。
【図6】 図1に示す光ファイバ接続工具における保持台回動機構を示す図であって、(a)は初期状態を示す断面図、(b)は回動時(光ファイバ挿入時)を示す断面図である。
【図7】 図1に示す光ファイバ接続工具のレンズ台90を示す平面図である。
【図8】 楔の作動状況を示す概念図であって、(a)は初期状態、(b)はレバーの押込時、(c)はレバーの押込力の解除時、(d)はレバーの上昇時を示す。
【図9】 光ファイバ接続器を示す斜視図である。
【図10】 光ファイバ接続器を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ接続器、2…素子、3…光ファイバ、4…付勢手段(コ字状バネ)、10…光ファイバ接続工具、11…支持機構、20…分離部材(楔)、30…押圧機構、31…移動台、32…レバー、33…回転軸、33a…駆動突起(ピン)、34…溝カム、34a…螺旋溝、34b…拡張部。
Claims (1)
- 互いの長手方向を揃えて配置されかつ付勢手段(4)により互いの接近方向に付勢されている二つ割り構造の素子(2)を有しかつ該素子の長手方向一端側および他端側においてそれぞれ個別に一方および他方の光ファイバ(3,3)を該素子の間に挟持して前記光ファイバどうしを突き合わせ接続可能に調心位置決めする光ファイバ接続器(1)を利用して、前記光ファイバを突き合わせ接続するに際して使用される光ファイバ接続工具であって、前記光ファイバ接続器を支持する支持機構(11)と、前記光ファイバ接続器の長手方向に直交する方向から前記素子間に差し込まれたときには前記付勢手段の付勢力に抗して前記素子どうしを離間させる方向に押し広げることにより前記光ファイバの挟持を解除する分離部材(20)と、該分離部材を光ファイバ接続器に向けて押圧して素子間に差し込む押圧機構(30)とを具備してなり、前記押圧機構が、回転軸(33)と、該回転軸を回転操作するためのレバー(32)と、分離部材を支持して支持機構に向けて進退自在に移動する移動台(31)と、螺旋溝(34a)および該螺旋溝と係合する駆動突起(33a)を介して回転軸と移動台とを相対移動可能に連結するカム部(33、34)とを備え、螺旋溝と駆動突起のいずれか一方を回転軸と連動して正逆回転させることで他方が移動台を移動して分離部材を支持機構に対して進退させる構成であり、前記光ファイバ接続器の目的位置に前記分離部材を差し込んだ際に前記駆動突起が遊動可能に収納される拡張部(34b)を螺旋溝に形成したことを特徴とする光ファイバ接続工具。
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1997
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