JP3758514B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関、特に、ディーゼルエンジンの排気ガス中には煤を主成分とするパティキュレートが含まれている。パティキュレートは有害物質であるために、大気放出以前にパティキュレートを捕集するためのフィルタを機関排気系に配置することが提案されている。このようなフィルタは、目詰まりによる排気抵抗の増加を防止するために、捕集したパティキュレートを焼失させることが必要である。
【0003】
このようなフィルタ再生において、パティキュレートは約600°Cとなれば着火燃焼するが、ディーゼルエンジンの排気ガス温度は、通常時において600°Cよりかなり低く、通常はフィルタ自身を加熱する等の手段が必要である。
【0004】
特公平7−106290号公報には、白金族金属とアルカリ土金属酸化物とをフィルタに担持させれば、フィルタ上のパティキュレートは、ディーゼルエンジンの通常時の排気ガス温度である約400°Cで連続的に焼失することが開示されている。
【0005】
しかしながら、このフィルタを使用しても、常に排気ガス温度が400°C程度となっているとは限らず、また、運転状態によってはディーゼルエンジンから多量のパティキュレートが放出されることもあり、各時間で焼失できなかったパティキュレートがフィルタ上に徐々に堆積することがある。
【0006】
このフィルタにおいて、ある程度パティキュレートが堆積すると、パティキュレート焼失能力が極端に低下するために、もはや自身でフィルタを再生することはできない。このように、この種のフィルタを単に機関排気系に配置しただけでは、比較的早期に目詰まりが発生して機関出力の大幅低下がもたらされることがある。
【0007】
この問題を解決するために、フィルタの排気上流側と排気下流側とを定期的又は不定期に逆転することが考えられる。この逆転により、フィルタ捕集壁の両面を捕集面として使用することができるために、各捕集面でのパティキュレート捕集量を低減してパティキュレート焼失能力を高く維持し、フィルタにパティキュレートを堆積し難くすることが可能となる。
【0008】
しかしながら、フィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転させるためには、弁体によって流路を切り換えることとなり、この切り換え途中において、排気ガスがフィルタをバイパスしてしまうことがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、機関出力を高めるためにターボチャージャを設けることは一般的である。こうして、ターボチャージャのタービンがフィルタの上流側又は下流側に配置されていると、前述した弁体の切り換え途中において、排気ガスがフィルタをバイパスすることによりパティキュレートフィルタでの圧力損失が低下するために、タービンの下流側の排気圧力が低下するか又は上流側の排気圧力が上昇し、いずれにしてもタービンの上流側と下流側との差圧が高められるためにコンプレッサによる過給圧が上昇する。それにより、燃料噴射量が自動的に増加してトルク変動が発生してしまう。
【0010】
このようなトルク変動は、前述のような逆転手段が設けられた場合だけでなく、例えば、機関運転状態又はフィルタの状態に応じて意図的に排気ガスがフィルタをバイパスするようにすることもあり、このような場合にも起こる問題である。
【0011】
従って、本発明の目的は、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスする時のトルク変動を防止することができるターボチャージャを備えた内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置は、機関排気系に配置されてパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを具備し、内燃機関はターボチャージャと吸入空気量抑制手段とを具備し、排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスする時には、前記吸入空気量抑制手段によって吸入空気量の増加を抑制し、高回転高負荷時には、前記吸入空気量抑制手段によって前記吸入空気量の増加を抑制せず、前記吸入空気量の増加に伴う燃料噴射量の増加を抑制することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記吸入空気量抑制手段は前記ターボチャージャの過給圧の増加を抑制することを特徴とする。
【0014】
また、本発明による請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記吸入空気量抑制手段は前記ターボチャージャの過給圧の増加に対して気筒内へ吸気が供給され難くすることにより前記吸入空気量の増加を抑制することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記パティキュレートフィルタへのパティキュレート捕集量の増加に伴う前記パティキュレートフィルタでの圧力損失増加に対して前記ターボチャージャの過給圧の低下を抑制する過給圧低下抑制手段を具備することを特徴とする。
【0017】
また、本発明による請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記パティキュレート捕集量が設定捕集量以上であると予測又は検出される時には、燃料噴射量を設定噴射量以下に抑制することを特徴とする。
【0018】
また、本発明による請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、機関排気系における前記ターボチャージャのタービンより上流側には、気筒内から排出される炭化水素の液化を抑制するために保温手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明による請求項7に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、機関排気系における前記ターボチャージャのタービンより上流側には、気筒内から排出される炭化水素の液化を抑制するために加熱手段が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明による請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1から7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置において、弁体を二つの遮断位置の一方から他方へ切り換えることにより前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転するための逆転手段を具備し、前記パティキュレートフィルタにおいては捕集したパティキュレートが酸化させられ、前記パティキュレートフィルタは、パティキュレートを捕集するための捕集壁を有し、前記捕集壁は第一捕集面と第二捕集面とを有し、前記逆転手段によって前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とが逆転されることによりパティキュレートを捕集するために前記捕集壁の前記第一捕集面と前記第二捕集面とが交互に使用され、前記弁体が二つの遮断位置の一方から他方へ切り換わる間において排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスすることを特徴とする。
【0021】
また、本発明による請求項9に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記捕集壁には活性酸素放出剤が担持され、前記活性酸素放出剤から放出される活性酸素がパティキュレートを酸化させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明による請求項10に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項9に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記活性酸素放出剤は、周囲に過剰酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で放出することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による排気浄化装置を備える4ストロークディーゼルエンジンの概略縦断面図を示しており、図2は図1のディーゼルエンジンにおける燃焼室の拡大縦断面図であり、図3は図1のディーゼルエンジンにおけるシリンダヘッドの底面図である。図1から図3を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5aはピストン4の頂面上に形成されたキャビティ、5はキャビティ5a内に形成された燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は一対の吸気弁、8は吸気ポート、9は一対の排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介してエアクリーナ14に連結される。吸気ダクト13内には電気モータ15により駆動されるスロットル弁16が配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド17へ接続される。
【0024】
図1に示されるように排気マニホルド17内には空燃比センサ21が配置される。排気マニホルド17とサージタンク12とはEGR通路22を介して互いに連結され、EGR通路22内には電気制御式EGR制御弁23が配置される。また、EGR通路22回りにはEGR通路22内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置24が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置24内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。
【0025】
一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管25を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール26に連結される。このコモンレール26内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ27から燃料が供給され、コモンレール26内に供給された燃料は各燃料供給管25を介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール26にはコモンレール26内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ28が取付けられ、燃料圧センサ28の出力信号に基づいてコモンレール26内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ27の吐出量が制御される。
【0026】
30は電子制御ユニットであり、空燃比センサ21の出力信号と、燃料圧センサ28の出力信号とが入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、電子制御ユニット30には、負荷センサ41の出力信号も入力され、さらに、クランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42の出力信号も入力される。こうして、電子制御ユニット30は、各種信号に基づき、燃料噴射弁6、電気モータ15、EGR制御弁23、及び、燃料ポンプ27を作動する。
【0027】
図2及び図3に示されるように本発明による実施例では燃料噴射弁6が6個のノズル口を有するホールノズルからなり、燃料噴射弁6のノズル口からは水平面に対しやや下向きに等角度間隔でもって燃料Fが噴射される。図3に示されるように6個の燃料噴霧Fのうちで2個の燃料噴霧Fは各排気弁9の弁体の下側面に沿って飛散する。図2及び図3は圧縮行程末期に燃料噴射が行われた時を示している。この時には燃料噴霧Fはキャビティ5aの内周面に向けて進み、次いで着火燃焼せしめられる。
【0028】
図4は排気行程中において排気弁9のリフト量が最大の時に燃料噴射弁6から追加の燃料が噴射された場合を示している。即ち、図5に示されるように圧縮上死点付近において主噴射Qmが行われ、次いで排気行程の中ほどで追加の燃料Qaが噴射された場合を示している。この場合、排気弁9の弁体方向に進む燃料噴霧Fは排気弁9の傘部背面と排気ポート10との間に向かう。即ち、云い換えると燃料噴射弁6の6個のノズル口のうちで2個のノズル口は、排気弁9が開弁している時に追加の燃料Qaの噴射が行われると燃料噴霧Fが排気弁9の傘部背面と排気ポート10との間に向かうように形成されている。なお、図4に示す実施例ではこの時に燃料噴霧Fが排気弁9の傘部背面に衝突し、排気弁9の傘部背面に衝突した燃料噴霧Fは排気弁9の傘部背面上において反射し、排気ポート10内に向かう。
【0029】
なお通常は追加の燃料Qaは噴射されず、主噴射Qmのみが行われる。図6は機関低負荷運転時においてスロットル弁16の開度及びEGR率を変化させることにより空燃比A/F(図6の横軸)を変化させたときの出力トルクの変化、及びスモーク、HC、CO、NOxの排出量の変化を示す実験例を表している。図6からわかるようにこの実験例では空燃比A/Fが小さくなるほどEGR率が大きくなり、理論空燃比(≒14.6)以下のときにはEGR率は65パーセント以上となっている。
【0030】
図6に示されるようにEGR率を増大することにより空燃比A/Fを小さくしていくとEGR率が40パーセント付近となり空燃比A/Fが30程度になった時にスモークの発生量が増大を開始する。次いで、更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくするとスモークの発生量が急激に増大してピークに達する。次いで更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると今度はスモークが急激に低下し、EGR率を65パーセント以上とし、空燃比A/Fが15.0付近になるとスモークがほぼ零となる。即ち、煤がほとんど発生しなくなる。この時に機関の出力トルクは若干低下し、またNOxの発生量がかなり低くなる。一方、この時にHC及びCOの発生量は増大し始める。
【0031】
図7(A)は空燃比A/Fが21付近でスモークの発生量が最も多い時の燃焼室5内の燃焼圧変化を示しており、図7(B)は空燃比A/Fが18付近でスモークの発生量がほぼ零の時の燃焼室5内における燃焼圧の変化を示している。図7(A)と図7(B)とを比較すればわかるようにスモークの発生量がほぼ零である図7(B)に示す場合はスモークの発生量が多い図7(A)に示す場合に比べて燃焼圧が低いことがわかる。
【0032】
図6及び図7に示される実験結果から次のことが言える。即ち、まず第1に空燃比A/Fが15.0以下でスモークの発生量がほぼ零の時には図6に示されるようにNOxの発生量がかなり低下する。NOxの発生量が低下したということは燃焼室5内の燃焼温度が低下していることを意味しており、従って煤がほとんど発生しない時には燃焼室5内の燃焼温度が低くなっていると言える。同じことが図7からも言える。即ち、煤がほとんど発生していない図7(B)に示す状態では燃焼圧が低くなっており、従ってこの時に燃焼室5内の燃焼温度は低くなっていることになる。
【0033】
第2にスモークの発生量、即ち煤の発生量がほぼ零になると図6に示されるようにHC及びCOの排出量が増大する。このことは炭化水素が煤まで成長せずに排出されることを意味している。即ち、燃料中に含まれる図8に示されるような直鎖状炭化水素や芳香族炭化水素は酸素不足の状態で温度上昇せしめられると熱分解して煤の前駆体が形成され、次いで主に炭素原子が集合した固体からなる煤が生成される。この場合、実際の煤の生成過程は複雑であり、煤の前駆体がどのような形態をとるかは明確ではないがいずれにしても図8に示されるような炭化水素は煤の前駆体を経て煤まで成長することになる。従って、上述したように煤の発生量がほぼ零になると図6に示される如くHC及びCOの排出量が増大するがこの時のHCは煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素である。
【0034】
図6及び図7に示される実験結果に基づくこれらの考察をまとめると燃焼室5内の燃焼温度が低い時には煤の発生量がほぼ零になり、この時には煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素が燃焼室5から排出されることになる。このことについて更に詳細に実験研究を重ねた結果、燃焼室5内における燃料及びその周囲のガス温度が或る温度以下である場合には煤の成長過程が途中で停止してしまい、即ち煤が全く発生せず、燃焼室5内における燃料及びその周囲の温度が或る温度以下になると煤が生成されることが判明したのである。
【0035】
ところで煤の前駆体の状態で炭化水素の生成過程が停止する時の燃料及びその周囲の温度、即ち上述の或る温度は燃料の種類や空燃比や圧縮比等の種々の要因によって変化するので何度であるかということは言えないが、この或る温度はNOxの発生量と深い関係を有しており、従ってこの或る温度はNOxの発生量から或る程度規定することができる。即ち、EGR率が増大するほど燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度は低下し、NOxの発生量が低下する。この時においてNOxの発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になった時に煤がほとんど発生しなくなる。従って上述の或る温度はNOxの発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になった時の温度にほぼ一致する。
【0036】
一旦、煤が生成されるとこの煤は単に酸化機能を有する触媒を用いた後処理でもって浄化することはできない。これに対して煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素は酸化機能を有する触媒を用いた後処理でもって容易に浄化することができる。このように、NOxの発生量を低減すると共に炭化水素を煤の前駆体又はその前の状態で燃焼室5から排出させることは排気ガスの浄化に極めて有効である。
【0037】
さて、煤が生成される前の状態で炭化水素の成長を停止させるには燃焼室5内における燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制する必要がある。この場合、燃料及びその周囲のガス温度を抑制するには燃料が燃焼した際の燃料回りにおけるガスの吸熱作用が極めて大きく影響することが判明している。
【0038】
即ち、燃料回りに空気しか存在しないと蒸発した燃料はただちに空気中の酸素と反応して燃焼する。この場合、燃料から離れている空気の温度はさほど上昇せず、燃料回りの温度のみが局所的に極めて高くなる。即ち、この時には燃料から離れている空気は燃料の燃焼熱の吸熱作用をほとんど行わない。この場合には燃焼温度が局所的に極めて高くなるために、この燃焼熱を受けた未燃炭化水素は煤を生成することになる。
【0039】
一方、多量の不活性ガスと少量の空気の混合ガス中に燃料が存在する場合には若干状況が異なる。この場合には蒸発燃料は周囲に拡散して不活性ガス中に混在する酸素と反応し、燃焼することになる。この場合には燃焼熱は回りの不活性ガスに吸収されるために燃焼温度はさほど上昇しなくなる。即ち、燃焼温度を低く抑えることができることになる。即ち、燃焼温度を抑制するには不活性ガスの存在が重要な役割を果しており、不活性ガスの吸熱作用によって燃焼温度を低く抑えることができることになる。
【0040】
この場合、燃料及びその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制するにはそうするのに十分な熱量を吸収しうるだけの不活性ガス量が必要となる。従って燃料量が増大すれば必要となる不活性ガス量はそれに伴って増大することになる。なお、この場合、不活性ガスの比熱が大きいほど吸熱作用は強力となり、従って不活性ガスは比熱の大きなガスが好ましいことになる。この点、CO2やEGRガスは比較的比熱が大きいので不活性ガスとしてEGRガスを用いることは好ましいと言える。
【0041】
図9は不活性ガスとしてEGRガスを用い、EGRガスの冷却度合を変えたときのEGR率とスモークとの関係を示している。即ち、図9において曲線AはEGRガスを強力に冷却してEGRガス温をほぼ90°Cに維持した場合を示しており、曲線Bは小型の冷却装置でEGRガスを冷却した場合を示しており、曲線CはEGRガスを強制的に冷却していない場合を示している。
【0042】
図9の曲線Aで示されるようにEGRガスを強力に冷却した場合にはEGR率が50パーセントよりも少し低いところで煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。一方、図9の曲線Bで示されるようにEGRガスを少し冷却した場合にはEGR率が50パーセントよりも少し高いところで煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ65パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。
【0043】
また、図9の曲線Cで示されるようにEGRガスを強制的に冷却していない場合にはEGR率が55パーセントの付近で煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ70パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。なお、図9は機関負荷が比較的高い時のスモークの発生量を示しており、機関負荷が小さくなると煤の発生量がピークとなるEGR率は若干低下し、煤がほとんど発生しなくなるEGR率の下限も若干低下する。このように煤がほとんど発生しなくなるEGR率の下限はEGRガスの冷却度合や機関負荷に応じて変化する。
【0044】
図10は不活性ガスとしてEGRガスを用いた場合において燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度にするために必要なEGRガスと空気の混合ガス量、及びこの混合ガス量中の空気の割合、及びこの混合ガス中のEGRガスの割合を示している。なお、図10において縦軸は燃焼室5内に吸入される全吸入ガス量を示しており、鎖線Yは過給が行われないときに燃焼室5内に吸入しうる全吸入ガス量を示している。また、横軸は要求負荷を示しており、Z1は低負荷運転領域を示している。
【0045】
図10を参照すると空気の割合、即ち混合ガス中の空気量は噴射された燃料を完全に燃焼せしめるのに必要な空気量を示している。即ち、図10に示される場合では空気量と噴射燃料量との比は理論空燃比となっている。一方、図10においてEGRガスの割合、即ち混合ガス中のEGRガス量は噴射燃料が燃焼せしめられたときに燃料及びその周囲のガス温度を煤が形成される温度よりも低い温度にするのに必要最低限のEGRガス量を示している。このEGRガス量はEGR率で表すとほぼ55パーセント以上であり、図10に示す実施例では70パーセント以上である。即ち、燃焼室5内に吸入された全吸入ガス量を図10において実線Xとし、この全吸入ガス量Xのうちの空気量とEGRガス量との割合を図10に示すような割合にすると燃料及びその周囲のガス温度は煤が生成される温度よりも低い温度となり、斯くして煤が全く発生しなくなる。また、このときのNOx発生量は10p.p.m 前後、又はそれ以下であり、従ってNOxの発生量は極めて少量となる。
【0046】
燃料噴射量が増大すれば燃料が燃焼した際の発熱量が増大するので燃料及びその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持するためにはEGRガスによる熱の吸収量を増大しなければならない。従って図10に示されるようにEGRガス量は噴射燃料量が増大するにつれて増大せしめなければならない。即ち、EGRガス量は要求負荷が高くなるにつれて増大する必要がある。
【0047】
一方、図10の負荷領域Z2では煤の発生を阻止するのに必要な全吸入ガス量Xが吸入しうる全吸入ガス量Yを越えてしまう。従ってこの場合、煤の発生を阻止するのに必要な全吸入ガス量Xを燃焼室5内に供給するにはEGRガス及び吸入空気の双方、或いはEGRガスを過給又は加圧する必要がある。EGRガス等を過給又は加圧しない場合には負荷領域Z2では全吸入ガス量Xは吸入しうる全吸入ガス量Yに一致する。従ってこの場合、煤の発生を阻止するためには空気量を若干減少させてEGRガス量を増大すると共に空燃比がリッチのもとで燃料を燃焼せしめることになる。
【0048】
前述したように図10は燃料を理論空燃比のもとで燃焼させる場合を示しているが図10に示される低負荷運転領域Z1において空気量を図10に示される空気量よりも少なくても、即ち空燃比をリッチにしても煤の発生を阻止しつつNOxの発生量を10p.p.m 前後又はそれ以下にすることができ、また図10に示される低負荷領域Z1において空気量を図10に示される空気量よりも多くしても、即ち空燃比の平均値を17から18のリーンにしても煤の発生を阻止しつつNOxの発生量を10p.p.m 前後又はそれ以下にすることができる。
【0049】
即ち、空燃比がリッチにされると燃料が過剰となるが燃焼温度が低い温度に抑制されているために過剰な燃料は煤まで成長せず、斯くして煤が生成されることがない。また、このときNOxも極めて少量しか発生しない。一方、平均空燃比がリーンのとき、或いは空燃比が理論空燃比の時でも燃焼温度が高くなれば少量の煤が生成されるが本発明では燃焼温度が低い温度に抑制されているので煤は全く生成されない。更に、NOxも極めて少量しか発生しない。
【0050】
このように、機関低負荷運転領域Z1では空燃比にかかわらずに、即ち空燃比がリッチであろうと、理論空燃比であろうと、或いは平均空燃比がリーンであろうと煤が発生されず、NOxの発生量が極めて少量となる。従って燃料消費率の向上を考えるとこのとき平均空燃比をリーンにすることが好ましいと言える。
【0051】
ところで燃焼室内における燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制しうるのは燃焼による発熱量が少ない比較的機関負荷が低いときに限られる。従って本発明による実施例では機関負荷が比較的低い時には燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制して第一燃焼、即ち低温燃焼を行うようにし、機関負荷が比較的高いときには第二燃焼、即ち従来より普通に行われている燃焼を行うようにしている。なお、ここで第一燃焼、即ち低温燃焼とはこれまでの説明から明らかなように煤の発生量が最大となる最悪不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない燃焼のことを言い、第二燃焼、即ち従来より普通に行われている燃焼とは煤の発生量が最大となる最悪不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少ない燃焼のことを言う。
【0052】
図11は第一燃焼、即ち低温燃焼が行われる第1の運転領域Iと、第二燃焼、即ち従来の燃焼方法による燃焼が行われる第2の燃焼領域IIとを示している。なお、図11において縦軸Lはアクセルペダル40の踏込み量、即ち要求負荷を示しており、横軸Nは機関回転数を示している。また、図11においてX(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域IIとの第1の境界を示しており、Y(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域IIとの第2の境界を示している。第1の運転領域Iから第2の運転領域IIへの運転領域の変化判断は第1の境界X(N)に基づいて行われ、第2の運転領域IIから第1の運転領域Iへの運転領域の変化判断は第2の境界Y(N)に基づいて行われる。
【0053】
即ち、機関の運転状態が第1の運転領域Iにあって低温燃焼が行われている時に要求負荷Lが機関回転数Nの関数である第1の境界X(N)を越えると運転領域が第2の運転領域IIに移ったと判断され、従来の燃焼方法による燃焼が行われる。次いで要求負荷Lが機関回転数Nの関数である第2の境界Y(N)よりも低くなると運転領域が第1の運転領域Iに移ったと判断され、再び低温燃焼が行われる。
【0054】
図12は空燃比センサ21の出力を示している。図12に示されるように空燃比センサ21の出力電流Iは空燃比A/Fに応じて変化する。従って空燃比センサ21の出力電流Iから空燃比を知ることができる。次に図13を参照しつつ第1の運転領域I及び第2の運転領域IIにおける運転制御について概略的に説明する。
【0055】
図13は要求負荷Lに対するスロットル弁16の開度、EGR制御弁23の開度、EGR率、空燃比、噴射時期及び噴射量を示している。図13に示されるように要求負荷Lの低い第1の運転領域Iではスロットル弁16の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近くから半開程度まで徐々に増大せしめられ、EGR制御弁23の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近くから全開まで徐々に増大せしめられる。また、図13に示される例では第1の運転領域IではEGR率がほぼ70パーセントとされており、空燃比はわずかばかりリーンなリーン空燃比とされている。
【0056】
言い換えると第1の運転領域IではEGR率がほぼ70パーセントとなり、空燃比がわずかばかりリーンなリーン空燃比となるようにスロットル弁16の開度及びEGR制御弁23の開度が制御される。なお、この時の空燃比は空燃比センサ21の出力信号に基づいてEGR制御弁23の開度を補正することによって目標リーン空燃比に制御される。また、第1の運転領域Iでは圧縮上死点TDC前に燃料噴射が行われる。この場合、噴射開始時期θSは要求負荷Lが高くなるにつれて遅くなり、噴射完了時期θEも噴射開始時期θSが遅くなるにつれて遅くなる。
【0057】
なお、アイドリング運転時にはスロットル弁16は全閉近くまで閉弁され、この時にはEGR制御弁23も全閉近くまで閉弁せしめられる。スロットル弁16を全閉近くまで閉弁すると圧縮始めの燃焼室5内の圧力が低くなるために圧縮圧力が小さくなる。圧縮圧力が小さくなるとピストン4による圧縮仕事が小さくなるために機関本体1の振動が小さくなる。即ち、アイドリング運転時には機関本体1の振動を抑制するためにスロットル弁16が全閉近くまで閉弁せしめられる。
【0058】
一方、機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わるとスロットル弁16の開度が半開状態から全開方向へステップ状に増大せしめられる。この時に図13に示す例ではEGR率がほぼ70パーセントから40パーセント以下までステップ状に減少せしめられ、空燃比がステップ状に大きくされる。即ち、EGR率が多量のスモークを発生するEGR率範囲(図9)を飛び越えるので機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わるときに多量のスモークが発生することがない。
【0059】
第2の運転領域IIでは従来から行われている燃焼が行われる。この燃焼方法では煤及びNOXが若干発生するが低温燃焼に比べて熱効率は高く、従って機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わると図13に示されるように噴射量がステップ状に低減せしめられる。
【0060】
第2の運転領域IIではスロットル弁16は一部を除いて全開状態に保持され、EGR制御弁23の開度は要求負荷Lが高くなると次第に小さくされる。この運転領域IIではEGR率は要求負荷Lが高くなるほど低くなり、空燃比は要求負荷Lが高くなるほど小さくなる。ただし、空燃比は要求負荷Lが高くなってもリーン空燃比とされる。また、第2の運転領域IIでは噴射開始時期θSは圧縮上死点TDC付近とされる。
【0061】
図14は第1の運転領域Iにおける空燃比A/Fを示している。図14において、A/F=15.5、A/F=16、A/F=17、A/F=18で示される各曲線は夫々空燃比が15.5、16、17、18である時を示しており、各曲線間の空燃比は比例配分により定められる。図14に示されるように第1の運転領域Iでは空燃比がリーンとなっており、更に第1の運転領域Iでは要求負荷Lが低くなるほど空燃比A/Fがリーンとされる。
【0062】
即ち、要求負荷Lが低くなるほど燃焼による発熱量が少なくなる。従って要求負荷Lが低くなるほどEGR率を低下させても低温燃焼を行うことができる。EGR率を低下させると空燃比は大きくなり、従って図14に示されるように要求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくされる。空燃比A/Fが大きくなるほど燃料消費率は向上し、従ってできる限り空燃比をリーンにするために本実施例では要求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくされる。
【0063】
なお、空燃比を図14に示す目標空燃比とするのに必要なスロットル弁16の目標開度STが図15(A)に示されるように要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されており、空燃比を図14に示す目標空燃比とするのに必要なEGR制御弁23の目標開度SEが図15(B)に示されるように要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。
【0064】
図16は第二燃焼、即ち従来の燃焼方法による普通の燃焼が行われるときの目標空燃比を示している。なお、図16においてA/F=24、A/F=35、A/F=45、A/F=60で示される各曲線は夫々目標空燃比24、35、45、60を示している。空燃比をこの目標空燃比とするのに必要なスロットル弁16の目標開度STが図17(A)に示されるように要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されており、空燃比をこの目標空燃比とするのに必要なEGR制御弁23の目標開度SEが図17(B)に示されるように要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。
【0065】
こうして、本実施例のディーゼルエンジンでは、アクセルペダル40の踏み込み量L及び機関回転数Nとに基づき、第一燃焼、すなわち、低温燃焼と、第二燃焼、すなわち、普通の燃焼とが切り換えられ、各燃焼において、アクセルペダル40の踏み込み量L及び機関回転数Nとに基づき、図15又は図17に示すマップによってスロットル弁16及びEGR弁の開度制御が実施される。
【0066】
図18は、本発明による排気浄化装置を備えるディーゼルエンジンの全体構成図である。前述した以外の構成を説明する。本ディーゼルエンジンは、ターボチャージャ35を備えており、吸気ダクト13にはターボチャージャ35のコンプレッサ36が配置されている。また、排気マニホルド17の下流側には排気ダクト18が接続され、この排気ダクト18には、コンプレッサ36に連結されたターボチャージャ35のタービン37が配置されている。38は吸気ダクト13におけるコンプレッサ36の上流側に配置されたエアフローメータである。また、39は各排気ポートと排気マニホルド17との間に配置された気筒数と同数の電気ヒータである。
【0067】
低温燃焼時には、前述したように、煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素は比較的多く排出される。低温燃焼は、燃焼温度が低いために、排気ガス温度も比較的低く、排気マニホルド17又は排気ダクト18において、排気ガスがさらに冷却されると、前述の炭化水素が容易に液化して霧状になる。本ディーゼルエンジンでは、排気ダクト18にタービン37が配置されており、液化した炭化水素がタービン37の回転軸等に付着すると、タービン回転に悪影響を与える。また、タービン37は、可変ノズルを有しており、機関運転状態によって変化する排気ガス圧力に対してタービンの所望回転を実現可能となっている。この可変ノズルの可動部に液化した炭化水素が付着すると、可変ノズルの作動の悪影響を与え、最悪の場合には可変ノズルを固着させてしまう。
【0068】
このようなタービンに悪影響を与える炭化水素の液化を防止するために、低温燃焼時には、制御装置30によって電気ヒータ39を作動させ、排気ガス温度を高めるようになっている。また、低温燃焼時でも、特に排気ガスが低温となる低回転低負荷側領域にだけ電気ヒータ39を作動させるようにして、電力消費を必要最小限としても良い。もちろん、実際の排気ガス温度を検出して、炭化水素が液化すると判断された時にだけ電気ヒータ39を作動させるようにしても良い。電気ヒータ39の位置は、各排気ポートと排気マニホルド17との間としたが、単一の電気ヒータをタービン37の上流側で排気マニホルド17における排気合流部より下流側に配置するようにしても良い。また、電気ヒータにより必要に応じて排気ガスを加熱することに加えて又は代えて、タービン37の上流側において排気マニホルド17及び排気ダクト18の全部又は一部に断熱材を配置し、タービン37へ流入する排気ガスを保温するようにしても良い。断熱材の配置は、排気マニホルド17及び排気ダクト18の外側であっても内側であっても、また、その両方でも良い。
【0069】
図19は本実施例の排気浄化装置を示す平面図であり、図20はその側面図である。本排気浄化装置は、排気ダクト18におけるターボチャージャ35のタービン37の下流側に接続された切換部71と、パティキュレートフィルタ70と、パティキュレートフィルタ70の一方側と切換部71とを接続する第一接続部72aと、パティキュレートフィルタ70の他方側と切換部71とを接続する第二接続部72bと、切換部71の下流側の排気通路73とを具備している。切換部71は、切換部71内で排気流れを遮断することを可能とする弁体71aを具備している。弁体71は、負圧アクチュエータ又はステップモータ等によって駆動される。弁体71aの第一遮断位置において、切換部71内の上流側が第一接続部72aと連通されると共に切換部71内の下流側が第二接続部72bと連通され、排気ガスは、図19に矢印で示すように、パティキュレートフィルタ70の一方側から他方側へ流れる。
【0070】
また、図21は、弁体71aの第二遮断位置を示している。この遮断位置において、切換部71内の上流側が第二接続部72bと連通されると共に切換部71内の下流側が第一接続部72aと連通され、排気ガスは、図21に矢印で示すように、パティキュレートフィルタ70の他方側から一方側へ流れる。こうして、弁体71aを第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換えることによって、パティキュレートフィルタ70へ流入する排気ガスの方向を逆転することができ、すなわち、パティキュレートフィルタ70の排気上流側と排気下流側とを逆転することが可能となる。
【0071】
このように、本排気浄化装置は、非常に簡単な構成によってパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転することを可能とする。また、パティキュレートフィルタにおいては、排気ガスの流入を容易にするために大きな開口面積が必要とされるが、本排気浄化装置では、図19及び20に示すように、車両搭載性を悪化させることなく、大きな開口面積を有するパティキュレートフィルタを使用可能である。
【0072】
この一方で、本排気浄化装置は、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転するために、弁体71aを第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ回動させる間において、図22に示すように、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしてしまう。
【0073】
図23にパティキュレートフィルタ70の構造を示す。なお、図23において、(A)はパティキュレートフィルタ70の正面図であり、(B)は側面断面図である。これらの図に示すように、本パティキュレートフィルタ70は、長円正面形状を有し、例えば、コージライトのような多孔質材料から形成されたハニカム構造をなすウォールフロー型であり、多数の軸線方向に延在する隔壁54によって細分された多数の軸線方向空間を有している。隣接する二つの軸線方向空間において、栓53によって、一方は排気下流側で閉鎖され、他方は排気上流側で閉鎖される。こうして、隣接する二つの軸線方向空間の一方は排気ガスの流入通路50となり、他方は流出通路51となり、排気ガスは、図23(B)に矢印で示すように、必ず隔壁54を通過する。排気ガス中のパティキュレートは、隔壁54の細孔の大きさに比較して非常に小さいものであるが、隔壁54の排気上流側表面及び隔壁54内の細孔表面上に衝突して捕集される。こうして、各隔壁54は、パティキュレートを捕集する捕集壁として機能する。本パティキュレートフィルタ70において、捕集されたパティキュレートを酸化除去するために、隔壁54の両側表面上、及び、好ましくは隔壁54内の細孔表面上にもアルミナ等を使用して以下に説明する活性酸素放出剤と貴金属触媒とが担持されている。
【0074】
活性酸素放出剤とは、活性酸素を放出することによってパティキュレートの酸化を促進するものであり、好ましくは、周囲に過剰酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で放出するものである。
【0075】
貴金属触媒としては、通常、白金Ptが用いられており、活性酸素放出剤としてカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRbのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa、ストロンチウムSrのようなアルカリ土類金属、ランタンLa、イットリウムYのような希土類、および遷移金属から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
【0076】
なお、この場合、活性酸素放出剤としては、カルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、即ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用いることが好ましい。
【0077】
次に、このような活性酸素放出剤を担持するパティキュレートフィルタによって、捕集されたパティキュレートがどのように酸化除去されるかについて、白金PtおよびカリウムKの場合を例にとって説明する。他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属を用いても同様なパティキュレート除去作用が行われる。
【0078】
ディーゼルエンジンでは通常空気過剰のもとで燃焼が行われ、従って排気ガスは多量の過剰空気を含んでいる。即ち、吸気通路および燃焼室内に供給された空気と燃料との比を排気ガスの空燃比と称すると、この空燃比はリーンとなっている。また、燃焼室内ではNOが発生するので排気ガス中にはNOが含まれている。また、燃料中にはイオウSが含まれており、このイオウSは燃焼室内で酸素と反応してSO2となる。従って排気ガス中にはSO2が含まれている。従って過剰酸素、NOおよびSO2を含んだ排気ガスがパティキュレートフィルタ70の排気上流側へ流入することになる。
【0079】
図24(A)および(B)はパティキュレートフィルタ70における排気ガス接触面の拡大図を模式的に表わしている。なお、図24(A)および(B)において60は白金Ptの粒子を示しており、61はカリウムKを含んでいる活性酸素放出剤を示している。
【0080】
上述したように排気ガス中には多量の過剰酸素が含まれているので排気ガスがパティキュレートフィルタの排ガス接触面内に接触すると、図24(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 -又はO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 -又はO2-と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で酸化されつつ活性酸素放出剤61内に吸収され、カリウムKと結合しながら図24(A)に示されるように硝酸イオンNO3 -の形で活性酸素放出剤61内に拡散し、硝酸カリウムKNO3を生成する。このようにして、本実施例では、排気ガスに含まれるNOxをパティキュレートフィルタ70に吸収し、大気中への放出量を大幅に減少させることができる。
【0081】
一方、上述したように排気ガス中にはSO2も含まれており、このSO2もNOと同様なメカニズムによって活性酸素放出剤61内に吸収される。即ち、上述したように酸素O2がO2 -又はO2-の形で白金Ptの表面に付着しており、排気ガス中のSO2は白金Ptの表面でO2 -又はO2-と反応してSO3となる。次いで生成されたSO3の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ活性酸素放出剤61内に吸収され、カリウムKと結合しながら硫酸イオンSO4 2-の形で活性酸素放出剤61内に拡散し、硫酸カリウムK2SO4を生成する。このようにして活性酸素放出触媒61内には硝酸カリウムKNO3および硫酸カリウムK2SO4が生成される。
【0082】
排気ガス中のパティキュレートは、図24(B)において62で示されるように、パティキュレートフィルタに担持された活性酸素放出剤61の表面上に付着する。この時、パティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面では酸素濃度が低下する。酸素濃度が低下すると酸素濃度の高い活性酸素放出剤61内との間で濃度差が生じ、斯くして活性酸素放出剤61内の酸素がパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向けて移動しようとする。その結果、活性酸素放出剤61内に形成されている硝酸カリウムKNO3がカリウムKと酸素OとNOとに分解され、酸素Oがパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かい、NOが活性酸素放出剤61から外部に放出される。外部に放出されたNOは下流側の白金Pt上において酸化され、再び活性酸素放出剤61内に吸収される。
【0083】
一方、このとき活性酸素放出剤61内に形成されている硫酸カリウムK2SO4もカリウムKと酸素OとSO2とに分解され、酸素Oがパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かい、SO2が活性酸素放出剤61から外部に放出される。外部に放出されたSO2は下流側の白金Pt上において酸化され、再び活性酸素放出剤61内に吸収される。但し、硫酸カリウムK2SO4は、安定化しているために、硝酸カリウムKNO3に比べて活性酸素を放出し難い。
【0084】
一方、パティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かう酸素Oは硝酸カリウムKNO3や硫酸カリウムK2SO4のような化合物から分解された酸素である。化合物から分解された酸素Oは高いエネルギを有しており、極めて高い活性を有する。従ってパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かう酸素は活性酸素Oとなっている。これら活性酸素Oがパティキュレート62に接触するとパティキュレート62は数分から数十分の短時間で輝炎を発することなく酸化せしめられる。また、パティキュレート62を酸化する活性酸素Oは、活性酸素放出剤61へNO及びSO2が吸収される時にも放出される。すなわち、NOXは酸素原子の結合及び分離を繰り返しつつ活性酸素放出剤61内において硝酸イオンNO3 -の形で拡散するものと考えられ、この間にも活性酸素が発生する。パティキュレート62はこの活性酸素によっても酸化せしめられる。また、このようにパティキュレートフィルタ70上に付着したパティキュレート62は活性酸素Oによって酸化せしめられるがこれらパティキュレート62は排気ガス中の酸素によっても酸化せしめられる。
【0085】
ところで白金Pt及び活性酸素放出剤61はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど活性化するので単位時間当りに活性酸素放出剤61から放出される活性酸素Oの量はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど増大する。また、当然のことながら、パティキュレート自身の温度が高いほど酸化除去され易くなる。従ってパティキュレートフィルタ上において単位時間当りに輝炎を発することなくパティキュレートを酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど増大する。
【0086】
図25の実線は単位時間当りに輝炎を発することなく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量Gを示しており、図25において横軸はパティキュレートフィルタの温度TFを示している。なお、図25は単位時間を1秒とした場合の、すなわち、1秒当たりの酸化除去可能微粒子量Gを示しているがこの単位時間としては、1分、10分等任意の時間を採用することができる。例えば、単位時間として10分を用いた場合には単位時間当たりの酸化除去可能微粒子量Gは10分間当たりの酸化除去可能微粒子量Gを表すことになり、この場合でもパティキュレートフィルタ70上において単位時間当たりに輝炎を発することなく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量Gは図25に示されるようにパティキュレートフィルタ70の温度が高くなるほど増大する。
【0087】
さて、単位時間当りに燃焼室から排出されるパティキュレートの量を排出微粒子量Mと称するとこの排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、例えば、1秒当たりの排出微粒子量Mが1秒当たりの酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、或いは10分当たりの排出微粒子量Mが10分当たりの酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、即ち図25の領域Iでは燃焼室から排出された全てのパティキュレートがパティキュレートフィルタ70上において輝炎を発することなく順次短時間のうちに酸化除去せしめられる。これに対し、排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも多いとき、即ち図25の領域IIでは全てのパティキュレートを順次酸化するには活性酸素量が不足している。図26(A)〜(C)はこのような場合におけるパティキュレートの酸化の様子を示している。
【0088】
即ち、全てのパティキュレートを酸化するには活性酸素量が不足している場合には図26(A)に示すようにパティキュレート62が活性酸素放出剤61上に付着するとパティキュレート62の一部のみが酸化され、十分に酸化されなかったパティキュレート部分がパティキュレートフィルタの排気上流側面上に残留する。次いで活性酸素量が不足している状態が継続すると次から次へと酸化されなかったパティキュレート部分が排気上流面上に残留し、その結果図26(B)に示されるようにパティキュレートフィルタの排気上流面が残留パティキュレート部分63によって覆われるようになる。
【0089】
このような残留パティキュレート部分63は、次第に酸化され難いカーボン質に変質し、また、排気上流面が残留パティキュレート部分63によって覆われると白金PtによるNO,SO2の酸化作用及び活性酸素放出剤61による活性酸素の放出作用が抑制される。それにより、時間を掛ければ徐々に残留パティキュレート部分63を酸化させることができるが、図26(C)に示されるように残留パティキュレート部分63の上に別のパティキュレート64が次から次へと堆積する。即ち、パティキュレートが積層状に堆積すると、これらパティキュレートは、白金Ptや活性酸素放出剤から距離を隔てているために、例え酸化され易いパティキュレートであっても活性酸素によって酸化されることはない。従ってこのパティキュレート64上に更に別のパティキュレートが次から次へと堆積する。即ち、排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも多い状態が継続するとパティキュレートフィルタ上にはパティキュレートが積層状に堆積してしまう。
【0090】
このように図25の領域Iではパティキュレートはパティキュレートフィルタ上において輝炎を発することなく短時間のうちに酸化せしめられ、図25の領域IIではパティキュレートがパティキュレートフィルタ上に積層状に堆積する。従って、排出微粒子量Mと酸化除去可能微粒子量Gとの関係を領域Iにすれば、パティキュレートフィルタ上へのパティキュレートの堆積を防止することができる。その結果、パティキュレートフィルタ70における排気ガス流の圧損は全くと言っていいほど変化することなくほぼ一定の最小圧損値に維持される。斯くして機関の出力低下を最小限に維持することができる。しかしながら、これが常に実現されるとは限らず、何もしなければパティキュレートフィルタにはパティキュレートが堆積することがある。
【0091】
本実施例では、前述の電子制御ユニット30により弁体71aを作動制御することにより、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転させ、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの堆積を確実に防止している。弁体71aを二つの遮断位置の一方から他方へ切り換えるための切り換え時期は、例えば、設定時間又は設定走行距離毎とされている。
【0092】
図27は、パティキュレートフィルタの隔壁54の拡大断面図である。前述したように、排気ガスが主に衝突する隔壁54の排気上流側表面及び細孔内の排気ガス流対向面は、一方の捕集面としてパティキュレートを衝突捕集し、活性酸素放出剤により放出された活性酸素によって捕集パティキュレートを酸化除去するが、設定時間又は設定走行距離を走行する間には、図25の領域IIでの運転が実施されることもあり、図27(A)は格子で示すように、酸化除去が不十分となってパティキュレートが残留することがある。この程度のパティキュレートの堆積に伴うパティキュレートフィルタの排気抵抗は車両走行に悪影響を与えるほどではないが、さらにパティキュレートが堆積すれば、機関出力の大幅な低下等の問題を発生する。しかしながら、この時点でパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とが逆転されれば、隔壁54の一方の捕集面に残留するパティキュレート上には、さらにパティキュレートが堆積することはなく、一方の捕集面から放出される活性酸素によって残留パティキュレートは徐々に酸化除去される。また、隔壁の細孔内に残留するパティキュレートは、逆方向の排気ガス流によって、図27(B)に示すように、容易に破壊されて細分化され、下流側へ移動する。
【0093】
それにより、細分化された多くのパティキュレートは、隔壁の細孔内に分散し、すなわち、パティキュレートは流動することにより、隔壁の細孔内表面に担持させた活性酸素放出剤と直接的に接触して酸化除去される機会が多くなる。こうして、隔壁の細孔内にも活性酸素放出剤を担持させることで、残留パティキュレートを格段に酸化除去させ易くなる。さらに、この酸化除去に加えて、排気ガスの逆流によって上流側となった隔壁54の他方の捕集面、すなわち、現在において排気ガスが主に衝突する隔壁54の排気上流側表面及び細孔内の排気ガス流対向面(一方の捕集面とは反対側の関係となる)では、排気ガス中の新たなパティキュレートが付着して活性酸素放出剤から放出された活性酸素によって酸化除去される。これらの酸化除去の際に活性酸素放出剤から放出された活性酸素の一部は、排気ガスと共に下流側へ移動し、排気ガスの逆流によっても依然として残留するパティキュレートを酸化除去する。
【0094】
すなわち、隔壁における一方の捕集面の残留パティキュレートには、この捕集面から放出される活性酸素だけでなく、排気ガスの逆流によって隔壁の他方の捕集面でのパティキュレートの酸化除去に使用された残りの活性酸素が排気ガスによって到来する。それにより、弁体の切り換え時点において、隔壁の一方の捕集面にある程度パティキュレートが積層状に堆積していたとしても、排気ガスを逆流させれば、残留パティキュレート上に堆積するパティキュレートへも活性酸素が到来することに加えて、さらにパティキュレートが堆積することはないために、堆積パティキュレートは徐々に酸化除去され、次回の逆流までに、ある程度の時間があれば、この間で十分に酸化除去可能である。こうして、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側との逆転によってパティキュレートの捕集にパティキュレートフィルタ捕集壁の第一捕集面と第二捕集面とが交互に使用されると、常に単一の捕集面でパティキュレートを捕集する場合に比較して、各捕集面でのパティキュレート捕集量を低減することができ、パティキュレートの酸化除去に有利となるために、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの堆積を確実に防止することができる。
【0095】
弁体の切り換えは、設定時間又は設定走行距離毎のように定期的に実施しなくても不定期に実施するようにしても良い。また、機関減速時毎に弁体を切り換えるようにしても良い。機関減速時の判断には、運転者が車両の減速を意図する動作、例えば、アクセルペダルの開放、ブレーキペダルの踏み込み、及びフューエルカット等のいずれかを検出することが利用可能である。
【0096】
また、パティキュレートフィルタへのパティキュレート堆積量が設定量となった時に弁体を切り換えるようにしても良い。パティキュレート堆積量の推定には、例えば、パティキュレート堆積量の増加に伴って増大するパティキュレートフィルタ70の直上流側と直下流側との間の差圧を利用することができ、また、パティキュレート堆積量の増加に伴って低下するパティキュレートフィルタ所定隔壁上の電気抵抗値を利用しても良く、また、パティキュレート堆積量の増加に伴って低下するパティキュレートフィルタ所定隔壁上の光の透過率又は反射率を利用しても良い。また、図25のグラフに基づき、現在の機関運転状態から推定される排出微粒子量Mが現在の機関運転状態から推定されるパティキュレートフィルタの温度を考慮した酸化除去可能微粒子量Gを上回る時の差(M−G)をパティキュレート堆積量として積算するようにしても良い。
【0097】
また、排気ガスの空燃比をリッチにすると、すなわち、排気ガス中の酸素濃度を低下させると、活性酸素放出剤61から外部に活性酸素Oが一気に放出される。この一気に放出された活性酸素Oによって、堆積パティキュレートは酸化され易いものとなって容易に酸化除去される。一方、空燃比がリーンに維持されていると白金Ptの表面が酸素で覆われ、いわゆる白金Ptの酸素被毒が生じる。このような酸素被毒が生じるとNOXに対する酸化作用が低下するためにNOXの吸収効率が低下し、斯くして活性酸素放出剤61からの活性酸素放出量が低下する。しかしながら空燃比がリッチにされると白金Pt表面上の酸素が消費されるために酸素被毒が解消され、従って空燃比が再びリッチからリーンに切り換えられるとNOXに対する酸化作用が強まるためにNOXの吸収効率が高くなり、斯くして活性酸素放出剤61からの活性酸素放出量が増大する。従って、空燃比がリーンに維持されている時に空燃比を時折リーンからリッチに一時的に切り換えるとその都度白金Ptの酸素被毒が解消されるために空燃比がリーンである時の活性酸素放出量が増大し、斯くしてパティキュレートフィルタ70上におけるパティキュレートの酸化作用を促進することができる。さらに、この酸素被毒の解消は、言わば、還元物質の燃焼であるために、発熱を伴ってパティキュレートフィルタを昇温させる。それにより、パティキュレートフィルタにおける酸化除去可能微粒子量が向上し、さらに、残留及び堆積パティキュレートの酸化除去が容易となる。弁体71aによってパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを切り換えた直後に排気ガスの空燃比をリッチにすれば、パティキュレートが残留していないパティキュレートフィルタ隔壁における他方の捕集面では、一方の捕集面に比較して活性酸素を放出し易いために、さらに多量に放出される活性酸素によって、一方の捕集面の残留パティキュレートをさらに確実に酸化除去することができる。もちろん、弁体71aの切り換えとは無関係に時折排気ガスの空燃比をリッチにしても良く、それにより、パティキュレートフィルタへパティキュレートが残留及び堆積し難くなる。
【0098】
排気ガスの空燃比をリッチにする方法としては、例えば、前述の低温燃焼を実施すれば良い。また、単に燃焼空燃比をリッチにしても良い。また、圧縮行程での通常の主燃料噴射に加えて、機関燃料噴射弁によって排気行程又は膨張行程において気筒内に燃料を噴射(ポスト噴射)しても良く、又は、吸気行程において気筒内に燃料を噴射(ビゴム噴射)しても良い。もちろん、ポスト噴射又はビゴム噴射は、主燃料噴射との間に必ずしもインターバルを設ける必要はない。また、機関排気系に燃料を供給することも可能である。
【0099】
こうして、パティキュレートフィルタへ比較的多くのパティキュレートを堆積させないようにすることは、排気抵抗の増加に伴う機関出力の低下を防止するために必要であると共に、多量の堆積パティキュレートが一度に着火燃焼すると、パティキュレートフィルタが非常に高温度となって溶損することがあり、この危険を回避するためにも必要である。
【0100】
ところで、排気ガス中のカルシウムCaはSO3が存在すると、硫酸カルシウムCaSO4を生成する。この硫酸カルシウムCaSO4は、酸化除去され難く、パティキュレートフィルタ上にアッシュとして残留することとなる。従って、硫酸カルシウムの残留によるパティキュレートフィルタの目詰まりを防止するためには、活性酸素放出剤61としてカルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばカリウムKを用いることが好ましく、それにより、活性酸素放出剤61内に拡散するSO3はカリウムKと結合して硫酸カリウムK2SO4を形成し、カルシウムCaはSO3と結合することなくパティキュレートフィルタの隔壁を通過する。従ってパティキュレートフィルタがアッシュによって目詰まりすることがなくなる。こうして、前述したように活性酸素放出剤61としてはカルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、即ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用いることが好ましいことになる。
【0101】
また、活性酸素放出剤としてパティキュレートフィルタに白金Ptのような貴金属のみを担持させても、白金Ptの表面上に保持されるNO2又はSO3から活性酸素を放出させることができる。ただし、この場合には酸化除去可能微粒子量Gを示す実線は図25に示す実線に比べて若干右側に移動する。また、活性酸素放出剤としてセリアを用いることも可能である。セリアは、排気ガス中の酸素濃度が高いと酸素を吸収し(Ce2O3→2CeO2)、排気ガス中の酸素濃度が低下すると活性酸素を放出する(2CeO2→Ce2O3)ものであるために、パティキュレートの酸化除去のために、排気ガス中の空燃比を定期的又は不定期にリッチにする必要がある。セリアに代えて、鉄又は錫を使用しても良い。
【0102】
また、活性酸素放出剤として排気ガス中のNOx浄化に使用されるNOx吸蔵還元触媒を用いることも可能である。この場合においては、NOx又はSOxを放出させるために排気ガスの空燃比を少なくとも一時的にリッチにする必要がある。
【0103】
本実施例において、パティキュレートフィルタ自身が活性酸素放出剤を担持して、この活性酸素放出剤が放出する活性酸素によりパティキュレートが酸化除去されるものとしたが、これは、本発明を限定するものではない。例えば、活性酸素及び活性酸素と同等に機能する二酸化窒素等のパティキュレート酸化成分は、パティキュレートフィルタ又はそれに担持させた物質から放出されても、外部からパティキュレートフィルタへ流入するようにしても良い。パティキュレート酸化成分が外部から流入する場合においても、パティキュレートを捕集するために、捕集壁の第一捕集面と第二捕集面とを交互に使用することで、排気下流側となった一方の捕集面では、新たにパティキュレートが堆積することはなく、この堆積パティキュレートを、他方の捕集面から流入するパティキュレート酸化成分によって徐々にでも酸化除去して、堆積パティキュレートをある程度の時間で十分に酸化除去することが可能である。この間において、他方の捕集面では、パティキュレートの捕集と共にパティキュレート酸化成分による酸化が行われるために、前述同様な効果がもたらされる。
【0104】
ところで、本ディーゼルエンジンは、前述したように、ターボチャージャ35を備えている。このターボチャージャ35におけるタービン37の可変ノズルの開度制御は、図28に示す第一フローチャートに従って制御される。先ず、ステップ101において、クランク角センサ42によって現在の機関回転数Nが検出され、負荷センサ41によって現在の機関負荷Lが検出される。次いで、ステップ102では、現在の機関回転数Nと現在の機関負荷Lとによって定まる現在の機関運転状態に最適な可変ノズルの基準開度THがマップ(図示せず)等を使用して決定される。ステップ103では、同様に、現在の機関運転状態における基準燃料噴射量Qがマップ(図示せず)等を使用して決定される。
【0105】
次いで、ステップ104において、パティキュレートフィルタ70の排気上流側と排気下流側とを逆転するために、弁体71aが切り換え中であるか否かが判断される。すなわち、弁体71aが第一遮断位置と第二遮断位置との間の位置であるか否かが判断される。この判断には、弁体71aの位置を直接的に検出しても良いし、弁体71aのアクチュエータの動作に基づき弁体71aの位置を間接的に検出しても良い。この判断が否定される時、すなわち、弁体71aが第一遮断位置又は第二遮断位置であって、排気ガスがパティキュレートフィルタを通過している時には、ステップ105において、可変ノズルの開度は基準開度THに制御される。
【0106】
その後、ステップ106ではエアフローメータ38によって吸入空気量GNが検出され、ステップ107において、この吸入空気量GNに基づき燃料噴射量の補正係数kがマップ(図示せず)等を使用して決定される。ステップ103において決定された基準燃料噴射量Qは、ターボチャージャ35による過給によって吸入空気量が増加することを考慮しておらず、補正係数kは、過給によって実際に気筒内へ供給された吸入空気量GNに合わせて基準燃料噴射量Qを補正するためのものである。
【0107】
次いで、ステップ113では、基準燃料噴射量Qは補正係数kによって補正されて実際の燃料噴射量Qとされ、ステップ114において、燃料噴射弁6による燃料噴射は、この燃料噴射量Qに制御される。ステップ113における補正は、補正係数の乗算としたが、もちろん、補正係数によっては加算されることもある。
【0108】
一方、弁体71aが切り換え中である時、すなわち、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしている時には、ステップ108において、現在の機関運転状態が高回転高負荷時であるか否かが判断される。この判断が否定される時には、ステップ109において、可変ノズルの開度は基準開度THを所定量aだけ増加させた開度に制御される。その後、前述したと同様に、ステップ106以降の処理が実施される。
【0109】
排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスしている時には、パティキュレートフィルタ70での圧力損失が発生しないために、タービン37の直下流側の排気圧力が低下することとなり、可変ノズルを基準開度THとすると、タービン37が意図する以上に回転してコンプレッサ36による過給圧が過剰となる。それによる吸入空気量の増加に伴って燃料噴射量が増加すると、機関出力が急増してトルク変動が発生してしまう。本フローチャートでは、排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスしている時には、パティキュレートフィルタ70での圧力損失がない分だけ可変ノズルを基準開度THより大きく開くことにより、タービン37の所望回転数を実現し、コンプレッサ36による過給圧過剰を防止している。それにより、ステップ106において検出される吸入空気量GNは現在の機関運転状態に対して適当な吸入空気量であり、ステップ107において決定される補正係数kも適当な値となる。可変ノズルの開度増加分aは、簡単のために定数としたが、もちろん、各機関運転状態でタービンの所望回転数を正確に実現するためには、機関運転状態により決定される基準開度THに応じて変化させることが好ましい。
【0110】
排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスしている時には、当然のことながら、排気ガス中にパティキュレートが含まれていれば、このパティキュレートは大気中へ放出されてしまう。低負荷側の運転領域であって低温燃焼が実施されていれば、排気ガス中にはパティキュレートが殆ど含まれておらず、また、機関負荷及び機関回転数がそれほど高くなければ、普通燃焼が実施されていても、排気ガス中にはそれほど多くのパティキュレートが含まれておらず、弁体71aが切り換わる間の短時間だけ排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしても特に問題とはならない。しかしながら、高回転高負荷時には、排気ガス中に多量のパティキュレートが含まれており、この排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスすることは問題である。
【0111】
本フローチャートでは、弁体の切り換え中において高回転高負荷時である時には、ステップ108における判断が肯定され、ステップ110において、可変ノズルの開度は、パティキュレートフィルタの圧力損失がなくても基準開度THに制御し、ステップ111において吸入空気量GNが検出される。この時の吸入空気量GNは、前述したように、コンプレッサ36による過給圧過剰によって、現在の機関運転状態においては必要以上の吸入空気量である。ステップ112では、この吸入空気量GNに基づき過給圧過剰がないとした吸入空気量GN’を算出し、この吸入空気量GN’に基づき燃料噴射量の補正係数kがマップ(図示せず)等を使用して決定される。
【0112】
次いで、ステップ113では、この補正係数kに基づき基準燃料噴射量Qを補正し、ステップ114において、補正された燃料噴射量Qに基づき燃料が噴射される。こうして、現在の機関運転状態に対して吸入空気量は過剰であるが燃料噴射量は適当であるために、機関出力は急増せず、トルク変動は発生しない。また、過剰に供給された吸入空気は燃焼空燃比を通常よりリーン側とするために、パティキュレートの発生を抑制する。それにより、弁体が切り換わる間の短時間だけ排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしてもそれほど問題とはならない。
【0113】
本フローチャートは、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側との逆転時に排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスすることを前提とした。しかしながら、パティキュレートフィルタに、このような逆転機構が設けられていなくても、バイパス通路が設けられていて、例えば、パティキュレートフィルタへの多量のパティキュレートの堆積を防止するために、又は、他の理由によって、意図的に排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにすることも考えられる。このバイパス時にも本フローチャートは有効である。こうして、本フローチャートは、パティキュレートフィルタに逆転機構が設けられているか否かに係わらず、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスする機会があれば有効となる。
【0114】
また、本フローチャートでは、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしている時で、好ましくは、高回転高負荷時でない時に、可変ノズルの開度を大きくしてタービン効率を低下させることによりターボチャージャの過給圧増加を抑制するようにした。しかしながら、ターボチャージャのタービンをバイパスする通路、すなわち、ウェストゲート通路が設けられていれば、可変ノズルの開度を制御することに代えて、ウェストゲート通路に設けられたウェストゲートバルブの開度を制御し、タービン効率を低下させることによりターボチャージャの過給圧増加を抑制するようにしても良い。こうして、可変ノズルを有さないターボチャージャでもウェストゲート通路が設けられていれば、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスする時のトルク変動を防止することができる。
【0115】
また、本ディーゼルエンジンは、前述したように、自由に開度設定が可能なスロットル弁16を有している。第一フローチャートにおいて、このスロットル弁16はステップ101により決定された機関運転状態に応じて最適な開度とされている。この最適な開度は、機関負荷及び機関回転数に対してマップ化されている。例えば、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしている時で、好ましくは、高回転高負荷時でない時に、可変ノズルは機関運転状態に応じた基準開度とし、ターボチャージャの過給圧を過剰とするが、この時に、スロットル弁16を最適な開度から閉側に制御することにより、気筒内へ吸気を供給され難くして、吸入空気量を抑制するようにしても良い。このようにしても、吸入空気量に基づく燃料噴射量の補正は適当なものとなり、トルク変動を防止することができる。
【0116】
また、前述したように、EGR通路22にはEGR制御弁23が設けられており、このEGR制御弁23を制御することにより気筒内へ再循環させるEGRガス量を制御可能である。EGR制御弁22もスロットル弁16と同様に、機関負荷及び機関回転数に対してマップ化された最適な開度に基づき制御されている。再循環させるEGRガス量を増加させれば、その分、気筒内へ吸気が供給され難くなる。こうして、スロットル弁の制御と同様に、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスしている時で、好ましくは、高回転高負荷時でない時に、可変ノズルは機関運転状態に応じた基準開度とし、ターボチャージャの過給圧を過剰とするが、この時に、EGR制御弁23を最適な開度から開側に制御することにより、気筒内へ吸気を供給され難くして、吸入空気量を抑制するようにしても良い。
【0117】
図29は、第一フローチャートに代えて実施されるターボチャージャタービンの可変ノズル及び燃料噴射量の制御を示す第二フローチャートである。これを以下に説明する。先ず、ステップ201において、クランク角センサ42によって現在の機関回転数Nが検出され、負荷センサ41によって現在の機関負荷Lが検出される。次いで、ステップ202では、現在の機関回転数Nと現在の機関負荷Lとによって定まる現在の機関運転状態に最適な可変ノズルの基準開度THがマップ(図示せず)等を使用して決定される。ステップ203では、同様に、現在の機関運転状態における基準燃料噴射量Qがマップ(図示せず)等を使用して決定される。
【0118】
次いで、ステップ204において、可変ノズルの開度は基準開度THに制御される。その後、ステップ205において、タービン37の下流側における排気ガス圧力Pが圧力センサ(図示せず)によって検出され、ステップ206では、この排気ガス圧力Pが、タービン37の上流側の排気ガス圧力と可変ノズルの基準開度THとに基づくタービン37での圧力損失と、パティキュレートが捕集されてない時のパティキュレートフィルタ70自身の圧力損失とに基づき推定される適当な圧力P’より異常に高いか否かが判断される。タービン37の上流側の排気ガス圧力は、現在の機関運転状態に基づき推定される気筒内から排出される排気ガス量と、EGR通路22を介して再循環するEGRガス量とを考慮して推定可能である。EGRガス量は、EGR通路22の上流側である排気通路内の現在の圧力と下流側である吸気通路内の現在の圧力との圧力差と、EGR弁23の現在の開度とに基づき推定可能である。
【0119】
パティキュレートフィルタ70にパティキュレートが堆積し始めると、パティキュレートフィルタ70の圧力損失が徐々に大きくなるために、パティキュレートフィルタの上流側の排気ガス圧力、すなわち、ターボチャージャタービン37の下流側の排気ガス圧力が徐々に高くなる。こうして、実測されるタービン37の下流側の排気ガス圧力Pは、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの堆積量の増大と共に推定される適当な圧力P’から徐々に高くなる。ステップ206における判断が否定される時には、パティキュレートフィルタには、それほど多量のパティキュレートが堆積しておらず、ステップ207において、実測されたタービン37の下流側の排気ガス圧力Pに基づき可変ノズルの開度THを補正する。実測された排気ガス圧力Pが、推定された適当な圧力P’とほぼ等しいならば、可変ノズルの開度THを補正する必要はなく、ターボチャージャ35によって意図する過給圧が実現される。しかしながら、実測された排気ガス圧力Pが、推定された適当な圧力P’を上回っている時には、可変ノズルを基準開度THとしても、タービン37での意図する圧力損失が行われておらず、すなわち、タービン37での仕事が不十分であり、ターボチャージャ35によって意図する過給圧が実現されていないこととなる。それにより、可変ノズルの現在の開度THは閉側に補正され、タービン効率を高めてターボチャージャ35により意図する過給圧を実現する。
【0120】
また、弁体71aの切り換え中等により排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスする時には、パティキュレートフィルタの圧力損失がほぼゼロとなるために、実測された排気ガス圧力Pは、推定された適当な圧力P’を下回る。この時には、第一フローチャートで説明したように、可変ノズルの現在の開度THを開側に補正し、タービン効率を低下させターボチャージャ35により意図する過給圧を実現する。
【0121】
次いで、第一フローチャートと同様に、ステップ208ではエアフローメータ38によって吸入空気量GNを検出し、ステップ209では、この吸入空気量GNに基づき燃料噴射量の補正係数kを決定し、ステップ210において、この補正係数kに基づき基準燃料噴射量Qを補正し、ステップ211において、補正された燃料噴射量に基づき燃料噴射を実施する。
【0122】
このようにして、パティキュレート捕集量の増加に伴いパティキュレートフィルタでの圧力損失が増加しても、ターボチャージャの過給圧の低下は抑制され、各機関運転状態で所望の過給圧を実現することができる。また、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスすることによりパティキュレートフィルタでの圧力損失が低下しても、ターボチャージャの過給圧の増加は抑制される。
【0123】
一方、ステップ206における判断が肯定される時、すなわち、測定されたタービン下流側の排気ガス圧力Pが、推定される適当な圧力P’より異常に高い時には、パティキュレートフィルタに多量のパティキュレートが堆積していて圧力損失が異常に高くなった時であり、可変ノズルを最大に閉側としても所望過給圧を実現することが困難である。この時には、ステップ211において、可変ノズルの開度THは、閉側の所定開度TH1に固定すると共に、燃料噴射量の補正は実施されず、ステップ212において、過給を考慮せずに定められた基準燃料噴射量Qでの燃料噴射を実施する。
【0124】
パティキュレートの堆積によってパティキュレートフィルタの圧力損失が異常に高くなった時は、もはや異常状態であり、早急に修理工場への搬入が必要とされる。この搬入時において、燃料噴射量を各機関運転状態で基準燃料噴射量に抑制することにより、パティキュレートの排出量が抑制され、パティキュレートフィルタへさらに多量のパティキュレートが堆積することを防止し、修理工場への搬入の間における車両走行を確保する。この車両走行における排出パティキュレートをさらに低減するために、運転者がアクセルペダルを最大に踏み込んでも、燃料噴射量が設定噴射量より多くならないようにし、緊急避難的に車両を走行させることも可能である。本フローチャートは、パティキュレートフィルタに排気上流側と排気下流側とを逆転するための逆転機構が設けられていなくても有効である。
【0125】
本実施例において、パティキュレートフィルタは、ターボチャージャのタービン下流側に配置したが、タービン上流側に配置することも可能である。この場合において、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスすれば、パティキュレートフィルタでの圧力損失が低下し、タービン上流側の排気ガス圧力が高まる。こうして、可変ノズルを基準開度としていると過給圧の過剰となり、トルク変動がもたらされる。それにより、この場合において第一フローチャートは有効である。また、パティキュレートフィルタへのパティキュレート捕集量が増加してパティキュレートフィルタでの圧力損失が増加すれば、タービン上流側の排気ガス圧力が低下する。こうして、可変ノズルを基準開度としていると過給圧が不足する。それにより、この場合において第二フローチャートは有効である。
【0126】
本実施例のディーゼルエンジンは、低温燃焼と通常燃焼とを切り換えて実施するものとしたが、これは本発明を限定するものではなく、もちろん、通常燃焼のみを実施するディーゼルエンジン、又はパティキュレートを排出するガソリンエンジンにも本発明は適用可能である。
【0127】
【発明の効果】
本発明による内燃機関の排気浄化装置は、機関排気系に配置されてパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを具備し、内燃機関はターボチャージャと吸入空気量抑制手段とを具備し、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスする時には、パティキュレートフィルタでの圧力損失が低下し、このままではターボチャージャによる過給圧が上昇するために、吸入空気量抑制手段によって吸入空気量の増加を抑制するようになっている。それにより、吸入空気量の増加に伴って機関出力が高まることにより発生するトルク変動は防止される。また、高回転高負荷時には、吸入空気量抑制手段によって吸入空気量の増加を抑制せず、吸入空気量の増加に伴う燃料噴射量の増加を抑制するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による排気浄化装置を備えるディーゼルエンジンの概略縦断面図である。
【図2】図1の燃焼室の拡大縦断面図である。
【図3】図1のシリンダヘッドの底面図である。
【図4】燃焼室の側面断面図である。
【図5】吸排気弁のリフトと燃料噴射を示す図である。
【図6】スモークおよびNOxの発生量等を示す図である。
【図7】燃焼圧を示す図である。
【図8】燃料分子を示す図である。
【図9】スモークの発生量とEGR率との関係を示す図である。
【図10】噴射燃料量と混合ガス量との関係を示す図である。
【図11】第1の運転領域Iおよび第2の運転領域IIを示す図である。
【図12】空燃比センサの出力を示す図である。
【図13】スロットル弁の開度等を示す図である。
【図14】第1の運転領域Iにおける空燃比を示す図である。
【図15】スロットル弁等の目標開度のマップを示す図である。
【図16】第二燃焼における空燃比を示す図である。
【図17】スロットル弁等の目標開度を示す図である。
【図18】本発明による排気浄化装置を備えるディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図19】排気浄化装置を示す断面図である。
【図20】図19の側面図である。
【図21】弁体のもう一つの遮断位置を示す図である。
【図22】弁体の中間位置を示す図である。
【図23】パティキュレートフィルタの構造を示す図である。
【図24】パティキュレートの酸化作用を説明するための図である。
【図25】酸化除去可能微粒子量とパティキュレートフィルタの温度との関係を示す図である。
【図26】パティキュレートの堆積作用を説明するための図である。
【図27】パティキュレートフィルタの隔壁の拡大断面図である。
【図28】ターボチャージャタービンの可変ノズルの開度制御及び燃料噴射量制御を示す第一フローチャートである。
【図29】ターボチャージャタービンの可変ノズルの開度制御及び燃料噴射量制御を示す第二フローチャートである。
【符号の説明】
6…燃料噴射弁
16…スロットル弁
35…ターボチャージャ
36…コンプレッサ
37…タービン
70…パティキュレートフィルタ
71…切換部
71a…弁体
Claims (10)
- 機関排気系に配置されてパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを具備し、内燃機関はターボチャージャと吸入空気量抑制手段とを具備し、排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスする時には、前記吸入空気量抑制手段によって吸入空気量の増加を抑制し、高回転高負荷時には、前記吸入空気量抑制手段によって前記吸入空気量の増加を抑制せず、前記吸入空気量の増加に伴う燃料噴射量の増加を抑制することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
- 前記吸入空気量抑制手段は前記ターボチャージャの過給圧の増加を抑制することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記吸入空気量抑制手段は前記ターボチャージャの過給圧の増加に対して気筒内へ吸気が供給され難くすることにより前記吸入空気量の増加を抑制することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記パティキュレートフィルタへのパティキュレート捕集量の増加に伴う前記パティキュレートフィルタでの圧力損失増加に対して前記ターボチャージャの過給圧の低下を抑制する過給圧低下抑制手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記パティキュレート捕集量が設定捕集量以上であると予測又は検出される時には、燃料噴射量を設定噴射量以下に抑制することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 機関排気系における前記ターボチャージャのタービンより上流側には、気筒内から排出される炭化水素の液化を抑制するために保温手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 機関排気系における前記ターボチャージャのタービンより上流側には、気筒内から排出される炭化水素の液化を抑制するために加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 弁体を二つの遮断位置の一方から他方へ切り換えることにより前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転するための逆転手段を具備し、前記パティキュレートフィルタにおいては捕集したパティキュレートが酸化させられ、前記パティキュレートフィルタは、パティキュレートを捕集するための捕集壁を有し、前記捕集壁は第一捕集面と第二捕集面とを有し、前記逆転手段によって前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とが逆転されることによりパティキュレートを捕集するために前記捕集壁の前記第一捕集面と前記第二捕集面とが交互に使用され、前記弁体が二つの遮断位置の一方から他方へ切り換わる間において排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記捕集壁には活性酸素放出剤が担持され、前記活性酸素放出剤から放出される活性酸素がパティキュレートを酸化させることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記活性酸素放出剤は、周囲に過剰酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で放出することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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