JP3757682B2 - 累進屈折力レンズの設計方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、視力補正用累進屈折力レンズに関し、特に、その光学性能の向上あるいはレンズの薄型化を目的とした、非球面累進屈折力レンズの設計方法に関する。
【従来の技術】
【0003】
近年、累進屈折力レンズは、光学性能向上のためさまざまな取リ組みがなされてきた。その一つとして注目されているのが、非球面設計を用いた累進屈折力レンズである。これは、眼鏡レンズを眼に装着したときと同条件を想定し、光線追跡により度数や、非点収差、プリズム等を計算し、球面設計ではエラーの出てしまう部分を補うものである。
【0004】
尚、累進屈折面はもともと、遠方視用と近方視用の異なる曲率の球面を、一面の中でなめらかにつないだものであるため、それ自体非球面であるが、ここで言う累進屈折力レンズの非球面設計とは、遠用中心や、近用中心などの累進屈折面の曲率が一定な領域においてさえも、数学的にへそ点でないことを意味する。
【0005】
このような非球面設計を用いた累進屈折力レンズは、特公平2−39768号公報に開示されており、球面設計に比べ、非点収差の減少や、レンズの薄型化といった効果をもたらしている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特公平2−39768号公報でレンズを設計・製作するには、いくつかの課題、あるいは不十分な点がある。
【0007】
第一に、特公平2−39768号公報では、累進屈折力レンズの遠近方向に延びる主子午線の近傍のみしか、その構造が開示されていない。確かに累進屈折力レンズの主子午線は主注視線とも呼ばれるほど重要な領域ではあるが、主子午線はあくまでも線であり、人間が視野情報を得るときはそれ以外の広い面積も使っている。
【0008】
第二に、累進屈折力レンズはレンズの場所によって度数が違うため、オリジナルの累進屈折面に付加する理想的な非球面付加量も、レンズの場所によって異なる必要がある。特公平2−39768号公報では、主子午線の遠用部と近用部で非球面付加量が異なるが、それ以外の部分ではどの様な非球面の設定をするかは不明である。
【0009】
また、主子午線の中でも、連続的に屈折力の変化する累進部領域への非球面付加は、理論的に必要であるにもかかわらず、開示されている先行技術がないのが現状である。
【0010】
さらに、累進屈折力レンズの累進屈折面は、レンズが一つの屈折面の中で連続的に境目無く構成されている必要がある。主子午線が連続していてもそれ以外の領域が光学的に連続な境目のない非球面形状にならなくては、非球面設計を施した意味がない。しかしながら従来技術では、非球面になっている主子午線の各々の点から主子午線に直交する方向に曲率を補間するくらいしか、なめらかに屈折面をつなぐ方法が無く、主子午線以外ではとても理想的な非球面形状が得られているとはいいがたい。
【0011】
また、累進屈折力の眼鏡レンズの受注生産では、度数、処方に応じた非点収差の減少や、レンズの薄型化といった効果をもたらす最適の非球面設計の累進面形状を簡便に作り出すことが要求されている。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便なレンズ設計により、最適な非球面設計が累進部を含んだレンズ全体に施された累進屈折力レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、球面設計の累進面形状を基にして、非球面設計の新たな累進屈折面形状を簡便な方法で作り出すレンズ設計、あるいは、ある処方に対して設計された非球面設計の累進面形状を基にして、他の処方に対して最適な非球面設計の新たな累進屈折面形状を簡便な方法で作り出すレンズ設計により、最適な非球面設計が累進部を含んだレンズ全体に施された累進屈折力レンズを提供するものである。
【0014】
即ち、各処方に対する非球面付加量を、いちいち光線追跡に基づいて求めてやる必要は無く、同じ基礎累進面を用いる処方の範囲に対して、その中の数例に対して、実際に光線追跡から最適な非球面付加量を求めてやり、それ以外の処方に対する非球面付加量を、内挿によって求めるものである。
【0015】
本発明は、次の5つの非球面付加量の計算方法により設計された累進屈折力レンズを提供する。
【0016】
すなわち、請求項1記載の発明は、眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、(x,y,z)=(0,0,0)とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の座標をztとしたとき、zt=zp+δであり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部ではδ=g(r)、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0である。また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、r0を球面設計部の半径とするとき、0≦r≦r0のときは、
g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
である。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数であり、nは2以上の整数である。
【0017】
請求項2記載の発明は、眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、(x,y,z)=(0,0,0)とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の径方向の傾きをdzpで表し、径方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の径方向の傾きをdztとしたとき、dzt=dzp+δであり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部ではδ=g(r)、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0である。また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、r0を球面設計部の半径とするとき、0≦r≦r0のときは、
g(0)=0、h(0)=0
であり、r0<rのときは、
【0018】
【数11】
である。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数であり、nは2以上の整数である。
【0019】
請求項3記載の発明は、眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、(x,y,z)=(0,0,0)とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の径方向の曲率をcpで表し、径方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の径方向の曲率をctとしたとき、ct=cp+δであり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部ではδ=g(r)、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0である。また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、r0を球面設計部の半径とするとき、0≦r≦r0のときは、
g(0)=0、h(0)=0
であり、r0<rのときは、
【0020】
【数12】
である。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数であり、nは2以上の整数である。
【0021】
請求項4記載の発明は、眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、(x,y,z)=(0,0,0)とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδとしたとき、前記累進屈折面の座標ztが、下記式(3)で定義されるbp
【0022】
【数13】
を用いて、下記式(4)
【0023】
【数14】
で表され、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部ではδ=g(r)、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0である。また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、r0を球面設計部の半径とするとき、0≦r≦r0のときは、
g(0)=0、h(0)=0
であり、r0<rのときは、
【0024】
【数15】
である。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数であり、nは2以上の整数である。
【0025】
請求項5記載の発明は、眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、(x,y,z)=(0,0,0)とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδとしたとき、前記累進屈折面の座標ztが、下記式(3)で定義されるbp
【0026】
【数16】
を用いて、下記式(5)
【0027】
【数17】
で表され、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部ではδ=g(r)、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0である。また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、r0を球面設計部の半径とするとき、0≦r≦r0のときは、
g(0)=0、h(0)=0
であり、r0<rのときは、
【0028】
【数18】
である。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数であり、nは2以上の整数である。
【0029】
また、上記それぞれの非球面付加量の計算方法に対して、遠用部における最適な非球面付加量g(r)の割合αと近用部における最適な非球面付加量h(r)の割合βの分布を、累進開始点での角度に応じて補間することにより、非球面付加量を累進屈折面全体にわたってなめらかに与えることができる。
【0030】
従って、請求項6記載の発明は、請求項1〜5いずれかに記載の累進屈折力レンズにおいて、前記累進開始点から前記累進屈折面の外周方向に延びる直線と前記X軸とのなす角をwとするとき、前記αと前記βが、それぞれ下記式(6)及び(7)
α=0.5+0.5sin(w) …(6)
β=0.5−0.5sin(w) …(7)
の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法を提供する。
【0031】
なお、非球面付加量を内挿によって決定する際に、非球面付加量自体を内挿するのでは、データ量が多いので、計算が大変である。そこで、非球面付加量の分布を定義する関数を作ってやり、その関数を決める係数について内挿をして、各処方に対する係数の値を決めてやれば、計算量は大幅に減少し、簡便なレンズ設計となる。それが、上記式(1)、(2)である。
【0032】
また、レンズメータでの度数測定ポイントを考慮して、累進開始点からある半径r0までは非球面設計とせずに球面設計部とすることが好ましく、また、r0を超えた場合、上記式(1)、(2)のrの多項式で非球面付加量を表現することが好ましい。この場合、r0は度数測定ポイントをカバーできる7mm以上、12mm未満が好ましい。
【0033】
従って、請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法を用いて、前記r0が7mm以上、12mm未満であることを特徴とする累進屈折力レンズを提供する。
【0034】
さらに、累進屈折面を眼球側の屈折面に設けることにより、累進屈折力レンズの欠点であるゆれや歪みを軽減することができる。
【0035】
従って、請求項8記載の発明は、請求項1〜7いずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法を用いて、前記累進屈折面が、眼球側の屈折面に設けられていることを特徴とする累進屈折力レンズを提供する。
【発明の実施の形態】
【0036】
以下、本発明の累進屈折力レンズの設計方法の実施の形態について説明する。本発明の累進屈折力レンズは、視力補正用のレンズであり、眼鏡レンズを構成する物体側と眼球側の2つの屈折面のうち、少なくともどちらか1つの屈折面が異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有する。この累進屈折面は、球面設計の累進面形状を基にして、新たな非球面設計の累進面形状が簡便な方法で作り出されたものである。あるいは、ある処方に対して設計された非球面設計の累進面形状を基にして、他の処方に対して最適な非球面設計の新たな累進面形状が簡便な方法で作り出されたものである。
【0037】
本発明においては、特に、非球面累進レンズに対して、その非球面付加量を各処方毎に最適化し、常に最適な累進面形状を簡単な計算方法で得ることができるため、受注生産方式に適している。
【0038】
まず、累進屈折力レンズの座標系を、図1に示すように、累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、遠用部の下端となる累進開始点Oを、(x,y,z)=(0,0,0)(原点)とする座標系を定義する。
【0039】
本発明では、上述したように、各処方に対する非球面付加量を、いちいち光線追跡に基づいて求めるのではなく、同じ基礎累進面を用いる処方の範囲に対して、その中の数例に対して、実際に光線追跡から最適な非球面付加量を求めてやり、それ以外の処方に対する非球面付加量は、最適な非球面付加量を基にして、新たな累進屈折面を、非球面付加量の分布を定義する関数を作ってやり、内挿によって決める。この非球面付加量の計算方法として、次の5つの計算方法がある。
【0040】
まず、第1の非球面付加量の計算方法は、Z軸方向の非球面付加量の座標を直接計算する方法である。基になる累進屈折面の奥行き方向の座標zpは、
zp=f(x,y)
というように、座標(x,y)の関数で表される。zpにZ軸方向の非球面付加量δを付加すると、付加された後のZ軸方向の合成座標、すなわち新たな累進屈折面の座標をztとしたとき、
zt=zp+δ
である。
【0041】
このとき、レンズの光軸近傍(累進開始点Oの近傍)は、プリズムも少なく非点収差も発生しずらいため、非球面付加量は少なくてよいが、レンズ外周部は眼から入射する光線に角度がつくため、非点収差が発生しやすく、それを補正するための非球面付加量も大きくなるのが一般的である。実際に付加する理想的な非球面付加量は、使用者の処方(レンズの度数)により千差万別であるが、光軸(累進開始点O)からの距離rに応じて変化していく。以上より、付加する最適な非球面付加量δは、累進開始点Oからの距離
r=(x2+y2)1/2
の関数となる。
【0042】
また、累進屈折力レンズは遠用部と近用部で異なる屈折力を備えているので、付加する最適な非球面付加量も遠用部と近用部で異なることが好ましい。よって付加座標δは、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部及び近用部ではそれぞれ、
δ=g(r)
δ=h(r)
g(r)≠h(r)
なる条件を満たす。但し、累進開始点Oではg(0)=0であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。
【0043】
本発明の累進屈折力レンズで、遠用部における最適な非球面付加量g(r)と近用部における最適な非球面付加量h(r)の大小関係は、レンズの処方によリ異なり特定することはできないが、ある一枚の累進屈折力レンズ内であるならば、レンズの度数は一般的に遠用度数から近用度数の範囲内しかありえないため、付加する非球面成分δもg(r)からh(r)の中に設定するとよい。このとき本発明では、累進屈折力レンズの各領域毎に設定された目的距離に応じて、g(r)とh(r)の比を決める。例えば、遠用部領域ではδを、100%のg(r)と0%のh(r)で構成し、近用部領域ではδを、0%のg(r)と100%のh(r)で構成する。累進部領域では、δをg(r)からh(r)に徐々に変化させることにより、光学的に連続した屈折面形状を得る。従って、遠用部領域と近用部領域の中間には、例えばδが50%のg(r)と50%のh(r)で構成されている領域がある。
【0044】
以上より、非球面付加量δは、累進屈折力レンズの累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部及び近用部以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
α+β=1.0
0≦α≦1
0≦β≦1
なる関係をもち、α,βの値を累進屈折力レンズの任意の点毎に決まっている目的距離に合わせて設定することにより、容易に理想的な非球面形状をオリジナルの累進屈折面に付加することができる。
【0045】
この第1の非球面付加量の計算方法は、座標を直接求めることができるため、計算が楽であるという利点を有する。
【0046】
第2の非球面付加量の計算方法は、基になる累進屈折面の径方向の傾きをdzpで表し、新たな累進屈折面の傾きをdztとしたとき、dzt=dzp+δの関係を用いる。非球面付加量δは、第1の非球面付加量の計算方法と同じく、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部ではδ=g(r)、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)である。
【0047】
但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、rは累進開始点Oからの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、g(r)≠h(r)、かつ、g(0)=0である。
【0048】
この第2の非球面付加量の計算方法は、傾きの分布を求めるため、プリズム量の制御が容易であるという利点を有する。Z座標は、原点から積分することにより求めることができる。
【0049】
第3の非球面付加量の計算方法は、基になる累進屈折面の径方向の曲率をcpで表し、新たな累進屈折面の曲率をctとしたとき、ct=cp+δの関係を用いる。非球面付加量δは、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部ではδ=g(r)、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)である。
【0050】
但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、rは累進開始点Oからの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、g(r)≠h(r)、かつ、g(0)=0である。
【0051】
この第3の非球面付加量の計算方法は、曲率の分布を求めるため、光学的評価が簡単であり、設計しやすく、目的とする処方が容易に得られるという利点がある。 Z座標は、原点から積分することにより求めることができる。
【0052】
第4の非球面付加量の計算方法は、基になる累進屈折面の座標をzpで表し、新たな累進屈折面の座標ztが、累進屈折面のZ座標を曲率に置き換える下記式(3)で定義されるbp
【0053】
【数19】
を用いて、下記式(4)
【0054】
【数20】
で表わされる関係を用いる。非球面付加量δは、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部ではδ=g(r)、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)である。
【0055】
但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、rは累進開始点Oからの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、g(r)≠h(r)、かつ、g(0)=0である。
【0056】
この第4の非球面付加量の計算方法は、曲率の分布を求めるため、光学的評価が簡単であり、設計しやすく、目的とする処方が容易に得られ、また、Z座標が積分によらず直接計算出来るという利点がある。
【0057】
第5の非球面付加量の計算方法は、基になる累進屈折面の座標をzpで表し、新たな累進屈折面の座標ztが、累進屈折面のZ座標を曲率に置き換える下記式(3)で定義されるbp
【0058】
【数21】
を用いて、下記式(5)
【0059】
【数22】
で示される関係を用いる。非球面付加量δは、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の遠用部ではδ=g(r)、累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の近用部では、δ=h(r)、これら以外の部分では、δ=α・g(r)+β・h(r)である。
【0060】
但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、rは累進開始点Oからの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数であり、g(r)≠h(r)、かつ、g(0)=0である。
【0061】
第5の非球面付加量の計算方法は、曲率の変化がなめらかになるように設計でき、急激な度数変化などの無い自然な累進面形状が得られる。
【0062】
上記非球面付加量δの遠用部における最適な非球面付加量g(r)と近用部における最適な非球面付加量h(r)のそれぞれの割合を示すαとβの補間方法として種々の形態が考えられる。
【0063】
例えば、図2に示すように、オリジナルの累進屈折面を、遠用部、累進部、近用部とを直線的に区分し、遠用部ではg(r)の比が100%なのでα:β=100:0、近用部ではα:β=0:100、屈折力が変化する累進部では目的距離に合わせ、α:βが徐々に変化した領域区分とすることができる。
【0064】
また、図3に示すように、遠用部の下端となる累進開始点Oをほぼ中心とした扇形で区分されることが多い。このような場合には、付加する非球面の遠近比率α:βの値も、オリジナルの累進屈折面の領域区分に合わせて決めることにより、より効果的な光学性能向上あるいはレンズの薄型化が行える。
【0065】
さらに、図4に示すように、累進開始点Oから累進屈折面の外周部方向に延びる直線OQと、X軸とのなす角をwとするとき、前記α,βの値を角度wによりぞれぞれ以下のような式(6)、(7)に設定することで、累進屈折面全域になめらかに非球面成分を付加することができる。
【0066】
α=0.5+0.5sin(w) …(6)
β=0.5−0.5sin(w) …(7)
例えば上式をもとに主子午線の遠用部を計算すると、w=90度であるから、α=1,β=0となり遠用の非球面成分だけとなるし、累進屈折力レンズの水平方向の非球面成分は、w=0度、あるいはw=180度のため、α=β=0.5と遠近それぞれの非球面成分を均等に入れることができ、かつ、非球面成分の移り変わりは累進屈折面全体でなめらかに推移する。
【0067】
ここで、前記各計算方法において、遠用部における最適な非球面付加量g(r)と近用部における最適な非球面付加量h(r)が、それぞれrの多項式で表現された下記式(1)、(2)
【0068】
【数23】
の関係を満たすことが好ましい。但し、上記式中、Gn、Hnはg(r)及びh(r)を決める係数であり、ある一つの累進屈折面に対してはrによらない定数である。また、nは2以上の正数である。
【0069】
非球面付加量を、内挿によって決定する際に、非球面付加量自体を内挿するのでは、データ量が多いので、計算が大変である。そこで、非球面付加量の分布を定義する上記関数g(r)、h(r)を上記式(1)、(2)で表現し、これらの関数を決める係数Gn、Hnを同じn項について内挿をして、各処方に対する係数の値を決めてやれば、計算量は大幅に減少し、簡便なレンズ設計となる。
【0070】
次に、レンズメータでの度数測定を考慮した累進屈折力レンズを説明する。累進屈折力レンズは、図5に示すように、累進開始点Oから累進的に加入度数が入ってくる。従って、レンズメータで度数を測定するときは、レンズメータの光線幅を加味して、累進開始点Oよリ5〜10mm遠用側にオフセットした位置に度数測定ポイントを設定することが一般的である。しかしながら、累進開始点Oの近傍まで非球面設計を施してしまうと、レンズメータで度数を測定したときに、非点収差が発生し、レンズの度数が保証できなくなってしまう。
【0071】
そこで、図5に示すように、累進開始点Oからrが所定の距離r0までは、非球面を付加せずに球面設計部とすることが好ましい。 具体的には、0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0、すなわちδ=0であり、r0<rのときは、g(r)、h(r)は上記式(1)、(2)の関係を有するようにする。r0は度数測定ポイントをカバーできる7mm以上、12mm未満が好ましい。
【0072】
このような球面設計部を設けても、累進開始点Oの近傍は光軸に近く、もともと付加する理想的な非球面付加量が小さいため、光学性能にさほど影響を及ぼすことはない。
【0073】
以上、本発明の累進屈折力レンズの実施の形態をいくつか述べてきたが、本発明の累進屈折力レンズは、累進屈折面を内面側、即ち、眼球側の屈折面に配置することにより、最善の実施形態をとることができる。
【0074】
内面に累進屈折面を配置することにより、外面側の屈折面を球面にすることができる。これにより、累進屈折力レンズの欠点である、ゆれや歪みといった要素が低減でき、光学性能が向上することが知られている(W097/19382)。内面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズに本発明を適用すれば、W097/19382に開示されるゆれや歪みの減少効果に加え、本発明の効果である非点収差の削減、あるいはレンズの薄型化も同時に実現できる。
【0075】
W097/19382の累進屈折面に本発明を適用する方法は、図1に示した座標系を、図6の様に定義し直すとよい。
【0076】
また、乱視処方への対応は、W097/19382に開示された、累進屈折面と乱視面の合成を行った後の自由曲面に対し、前述した方法で非球面を付加することで実現できる。
【0077】
すなわち、眼球側の面の任意の点P(x,y,z)における座標zは、球面設計の累進屈折面の任意の点Pでの近似曲率Cpと、球面設計の累進屈折面に付加するトーリック面のx方向の曲率Cx及びy方向の曲率Cyとを用いて次の式(8)で表される。
【0078】
【数24】
この式を用いて計算した累進屈折面と乱視面の合成を行った後の自由曲面に、本発明に従い非球面付加量を付加すればよい。この場合、非球面付加量の計算方法は、上述した第4の非球面付加量の計算方法を用いることが好ましい。
【0079】
内面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズに、本発明を適用することのメリットがさらにある。外面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズは、外面側で加入度数を保証しておき、球面度数、乱視度数は、内面側を所定の曲率に研磨することで得ている。従って、内面側は眼鏡使用者毎に異なる形状であるが、外面の累進屈折面は全製作範囲の中のある度数からある度数までは同一形状を採用している。よって、累進屈折面に付加する非球面も、度数毎に量適な非球面を付加することができず、最適でない度数があるにもかかわらず一律にせざるを得ない。
【0080】
しかしながら、内面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズは、内面の形状だけで使用者一人一人により異なる、球面度数、乱視度数、加入度数を得るため、完全なオーダーメード設計となる。従って内面に付加する非球面付加量も、予め製作する処方がわかっているので、その処方に最適な非球面付加量を加味して設計・製作できる。
【実施例】
【0081】
次に、本発明の実施例について説明する。図7に、S=+4.0D、C=0D、加入度2.0Dの処方の眼球側に累進屈折面を形成した球面設計の眼鏡レンズの非点収差分布を示す。図8に、図7に示した処方と同じ処方の内面累進のレンズに非球面項を付加して非球面設計としたレンズの非点収差分布を示す。非球面設計とすることにより、非点収差が改善され、光学性能が向上したことが認められる。
(第1実施例)
図8に示した非球面設計の内面累進のレンズを得るために、上述した第1の非球面付加量の計算方法におけるg(r)及びh(r)を上記式(1)と式(2)のrの多項式で表現した場合の各パラメータの値を表1に示す。球面設計部の半径r0は10mmである。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示したパラメータを用いて、累進開始点Oからの角度wに対する上記式(6)と(7)を用いたα、βの値と共に、累進開始点Oからの距離rと累進開始点Oからの角度wに対して非球面付加量δ(単位はμm)を計算した結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
(第2実施例)
図8に示した内面累進のレンズを得るために、上述した第2の非球面付加量の計算方法におけるg(r)及びh(r)を上記式(1)と式(2)のrの多項式で表現した場合の各パラメータの値を表3に示す。球面設計部の半径r0は10mmである。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示したパラメータを用いて、累進開始点Oからの角度wに対する上記式(6)と(7)を用いたα、βの値と共に、累進開始点Oからの距離rと累進開始点Oからの角度wに対して非球面付加量δ(実際の値を10000倍した値)を計算した結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
(第3実施例)
図8に示した内面累進のレンズを得るために、上述した第3の非球面付加量の計算方法におけるg(r)及びh(r)を上記式(1)と式(2)のrの多項式で表現した場合の各パラメータの値を表5に示す。球面設計部の半径r0は10mmである。
【0090】
【表5】
【0091】
表5に示したパラメータを用い、累進開始点Oからの角度wに対する上記式(6)と(7)を用いたα、βの値と共に、累進開始点Oからの距離rと累進開始点Oからの角度wに対して非球面付加量δ(実際の値を100000倍した値)を計算した結果を表6に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
(第4実施例)
図8に示した内面累進のレンズを得るために、上述した第4の非球面付加量の計算方法におけるg(r)及びh(r)を上記式(1)と式(2)のrの多項式で表現した場合の各パラメータの値を表7に示す。球面設計部の半径r0は10mmである。
【0094】
【表7】
【0095】
表7に示したパラメータを用い、累進開始点Oからの角度wに対する上記式(6)と(7)を用いたα、βの値と共に、累進開始点Oからの距離rと累進開始点Oからの角度wに対して非球面付加量δ(実際の値を100000倍した値)を計算した結果を表8に示す。
【0096】
【表8】
【0097】
(第5実施例)
図8に示した内面累進のレンズを得るために、上述した第5の非球面付加量の計算方法におけるg(r)及びh(r)を上記式(1)と式(2)のrの多項式で表現した場合の各パラメータの値を表9に示す。球面設計部の半径r0は10mmである。
【0098】
【表9】
【0099】
表9に示したパラメータを用いて、累進開始点Oからの角度wに対する上記式(6)と(7)を用いたα、βの値と共に、累進開始点Oからの距離rと累進開始点Oからの角度wに対して非球面付加量δ(実際の値そのまま)を計算した結果を表10に示す。
【0100】
【表10】
【発明の効果】
【0101】
本発明の累進屈折力レンズは、簡便な設計によりレンズ全体にわたって最適な非球面成分が付加され、非点収差の低減などの光学性能の向上とレンズの薄型化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】 外面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズの座標系を示すもので、(a)は累進開始点を通るX軸とZ軸の平面で切断した断面図、(b)は正面図である。
【図2】 本発明の累進屈折力レンズの累進屈折面の領域毎に、付加する2種類の非球面成分の割合の領域区分を示した正面図である。
【図3】 累進屈折力レンズの累進屈折面の付加する2種類の非球面成分の割合の領域区分を示す正面図である。
【図4】 本発明の累進屈折力レンズの累進屈折面の座標系を示す正面図である。
【図5】 累進屈折力レンズの累進屈折面の主子午線の度数変化と、度数測定ポイントを示した正面図である。
【図6】内面に累進屈折面を配置した累進屈折力レンズの座標系を示すもので、(a)は累進開始点を通るX軸とZ軸の平面で切断した断面図、(b)は正面図である。
【図7】 球面設計の内面側に累進屈折面を設けた累進屈折力レンズの非点収差分布を示す正面図である。
【図8】 本発明の内面側に非球面設計を施した累進屈折面を設けた累進屈折力レンズの非点収差分布を示す正面図である。
【符号の説明】
【0103】
X:三次元座標のX軸
Y:三次元座標のY軸
Z:三次元座標のZ軸
x:X座標
y:y座標
z:Z座標
α:遠用部用の非球面付加量の割合
β:近用部用の非球面付加量の割合
w:フィッティングポイントから累進屈折力レンズの外周部方向に延びる直線と前記X軸とのなす角
O:累進開始点
Q:フィッティングポイントから累進屈折力レンズの外周部方向に延びる直線とレンズ外径との交点
r0:球面設計部の半径
Claims (6)
- 眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、
(x,y,z)=(0,0,0)
とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の座標をztとしたとき、
zt=zp+δ
であり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部では、
δ=g(r)
前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、
δ=h(r)
これら以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
(但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0であり、また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。)の関係を有し、さらには、r0を球面設計部の半径とするとき、
0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
- 眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、
(x,y,z)=(0,0,0)
とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の径方向の傾きをdzpで表し、径方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の径方向の傾きをdztとしたとき、
dzt=dzp+δ
であり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部では、
δ=g(r)
前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、
δ=h(r)
これら以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
(但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0であり、また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。)の関係を有し、さらには、r0を球面設計部の半径とするとき、
0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
- 眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、
(x,y,z)=(0,0,0)
とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の径方向の曲率をcpで表し、径方向の非球面付加量をδ、前記累進屈折面の径方向の曲率をctとしたとき、
ct=cp+δ
であり、前記δが、前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記遠用部では、
δ=g(r)
前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、
δ=h(r)
これら以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
(但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0であり、また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。)の関係を有し、さらには、r0を球面設計部の半径とするとき、
0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
- 眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、
(x,y,z)=(0,0,0)
とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδとしたとき、前記累進屈折面の座標ztが、下記式(3)で定義されるbp
δ=g(r)
前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、
δ=h(r)
これら以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
(但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0であり、また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。)の関係を有し、さらには、r0を球面設計部の半径とするとき、
0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
- 眼鏡レンズを構成する2つの屈折面のうち、少なくともどちらか一つの屈折面が、異なる屈折力を備えた遠用部及び近用部とこれらの間で屈折力が累進的に変化する累進部とを備えた累進屈折面を有し、前記累進屈折面を眼鏡装用時の正面から見て、左右方向をX軸、上下方向(遠近方向)をY軸、奥行き方向をZ軸、前記遠用部の下端となる累進開始点を、
(x,y,z)=(0,0,0)
とする座標系を定義し、前記累進屈折面の基になる任意の処方に基づく累進屈折面の座標をzpで表し、Z軸方向の非球面付加量をδとしたとき、前記累進屈折面の座標ztが、下記式(3)で定義されるbp
δ=g(r)
前記累進屈折面のほぼY軸に沿って延びる主子午線の前記近用部では、
δ=h(r)
これら以外の部分では、
δ=α・g(r)+β・h(r)
(但し、上記式中、α、βは、α+β=1.0、0≦α≦1、0≦β≦1であり、さらには、前記遠用部の上端では、α=1.0、β=0、前記近用部の下端では、α=0、β=1.0であり、また、rは累進開始点からの距離で、r=(x2+y2)1/2であり、g(r)及びh(r)は、それぞれrのみに依存する関数である。)の関係を有し、さらには、r0を球面設計部の半径とするとき、
0≦r≦r0のときは、g(0)=0、h(0)=0であり、
r0<rのときは、
- 請求項1〜5のいずれかに記載の累進屈折力レンズにおいて、前記累進開始点から前記累進屈折面の外周方向に延びる直線と前記X軸とのなす角をwとするとき、前記αと前記βが、それぞれ下記式(6)及び(7)
α=0.5+0.5sin(w) …(6)
β=0.5−0.5sin(w) …(7)
の関係を有することを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法。
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