JP3756753B2 - サンルーフ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、サンルーフ装置、特にリッドの前後移動範囲の中間にチルトアップ位置が設定されたサンルーフ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のサンルーフ装置としては、ルーフに形成された開口に前後移動するリッドを設け、このリッドにより開口を開閉する構造になっている(類似技術として、実公平8−5852号公報参照)。リッドの前後移動中の形態としては、開口を塞いだ全閉位置と、開口後方のルーフ内に収納されて開口を開放した状態となる全開位置と、後端を開口よりも上昇させたチルトアップ位置がある。従来は、全閉位置がリッドをコントロールするスライダの前後移動範囲の中央にあり、スライダが前側へ移動するとチルトアップ位置になり、後側へ移動すると全開位置になるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、水密性の確保や、風切り音防止のために、最も厳密な前後方向での位置保持が要求されるリッドの全閉位置が、リッドの前後移動範囲における中央に設定されていたため、リッドの安定した状態が得づらく、リッドの位置保持に高い精度と剛性が必要であった。つまり、リッドの前後移動範囲における中央位置は、前側にも、後側にも、移動可能な安定しない位置であるため、両方向での位置保持機構が必要になり、高い精度と剛性を備えたものとなり、構造も複雑になる。
【0004】
そこで、全閉位置をリッドの前後移動範囲における前端に変更し、中央にチルトアップ位置をもってきて、後端に全開位置をもってくる新規な構造が考えられる。このようにすれば、リッドを開口の前端に突き当てるだけで、リッドの前後方向における安定した位置保持状態が得られることになる。
【0005】
ところが、このような新規な構造では、リッドを開ける場合も、閉じる場合も、リッドの後端部が対向する開口の縁部に対し強く摺動した状態(この状態を疑似全閉という)を経てからチルトアップ位置に至るため、リッドの後端部に取付けられているウエザストリップに対する摺動回数が増し、ウエザストリップの耐久性を高める必要がある。
【0006】
また、チルトアップ位置は、サンルーフ用の開口を全開にするほどの必要がなく、換気のために少しだけ開ける場合の位置であり、通常、全閉状態から開方向に操作して得るものである。従って、開く場合のチルトアップ位置は重要だが、閉じる場合のチルトアップ位置は、一般的に重要でない。特に、全開位置から閉じる方向への操作は、サンルーフ用の開口を早く閉めたいのに、途中にチルトアップ位置があると遅くなるし、その直前で疑似全閉状態があるため、不要な動きとなっている。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、全開位置からの閉じ方向でのチルトアップ位置をなくすことができるサンルーフ装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、車体のルーフに形成された開口に、該開口を覆うことを可能なるように前後移動自在に設けられてなるリッドと、該リッドの下部に固定されてなると共に前端部を支点として後端部を上下に回動可能なガイド部材とより構成されてなり、該ガイド部材に前後端部が高く中間部が低い形状のガイド溝を形成し、該ガイド溝に駆動手段により前後移動するスライダのガイドピンを係合させ、該ガイドピンを前後に移動させることにより、ガイドピンがガイド溝の前端部に当接した状態でリッドにより開口が塞がれた状態となる全閉位置と、ガイドピンがガイド溝の最も低い中間部に係合することによりリッドが前端部を中心に回動して後端部が開口よりも上昇した状態となるチルトアップ位置と、ガイドピンがガイド溝の後端部に当接した状態でリッドの後端部が開口よりも下降したフラップ位置と、該フラップ位置を経てリッドが後方へスライドして開口を開放した状態となる全開位置とが得られるサンルーフ装置であって、前記ガイド溝の前端部と後端部との間に、前端部と同じ高さのバイパス溝を形成すると共に、ガイド溝の周辺に、ガイド溝の前端部から後側へ移動するガイドピンはガイド溝の中間部へ導き、ガイド溝の後端部から前側へ移動するガイドピンはバイパス溝に導く切換手段を、設けたものである。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、リッドを開くために、ガイドピンを後側へ移動させると、切換手段により、通常の通り、ガイドピンはガイド溝側へ導かれるため、チルトアップ位置が得られる。しかし、全開位置からリッドを閉じるために、ガイドピンを前側へ移動させると、ガイドピンはガイド溝に戻らず、バイパス溝に入るため、チルトアップ位置にならずに、直ちに全閉状態となる。従って、チルトアップ位置は、開く方向で一回だけ得られる構造になるため、リッドの後端部が開口の前端部に対して強く摺動する回数が減り、ウエザストリップの耐久性が向上すると共に、リッドに不要な動作もない。
【0010】
請求項2記載の発明は、切換手段として、中間部がガイド溝とバイパス溝との間に軸支された前後方向に長いレバーを取付け、該レバーは、後端部を下げる方向に付勢された状態で、前端部の下縁でガイド溝の上縁を形成し且つ後端部の上縁でバイパス溝の下縁を形成した状態に支持されている。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前後方向に長いレバーを用いているため、ガイドピンの移動方向を、ガイド溝の前端部や後端部からすぐにガイド溝やバイパス溝に導くことができるため、ガイドピンの移動方向の切換えが確実である。
【0012】
請求項3記載の発明は、ガイド部材に樹脂製のキャップ部材を取付け、該キャップ部材に非貫通状のガイド溝及びバイパス溝を形成した。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、樹脂製のキャップ部材にガイド溝及びバイパス溝を形成しているため、ガイド部材に直接形成する場合に比べて加工が容易である。また、ガイドピンが樹脂との接触になるため、摺動抵抗が少なく、ガイドピンの移動が円滑になる。更に、キャップ部材のガイド溝及びバイパス溝が非貫通状のため、キャップ部材の剛性低下もない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な一実施形態を図1乃至図9に基づいて説明する。尚、図2乃至図7は、説明の便宜上それぞれの部品の一部を透過して示した。
【0015】
自動車のルーフ1には、サンルーフ用の開口2が形成されている。リッド3は、前後移動自在で、前記開口2の開閉を行うようになっている。開口2の左右両側且つ前記ルーフ1の下側には、左右対称に形成された押出成形品のサイドレール4がそれぞれ配置されている。前記開口2の前部には、「駆動手段」としてのモータ5が設けられている。このモータ5から左右両側の各サイドレール4内にケーブル6(図8・図9)が配索されている。ケーブル6は、モータ5のギアと係合しており、モータ5の回転に応じて左右同時に前後方向に送り出されるようになっている。
【0016】
サイドレール4には、ケーブル6に連結された状態で、ケーブル6と一緒に前後に移動するスライダ7と、フック8(図3)とが設けられている。スライダ7の上端には、ガイドピン9が設けられている。
【0017】
一方、前記リッド3の左右両端下面には、前後方向に沿うガイド部材10が固定され、リッド3と一体に前後移動するようになっている。ガイド部材10は、サイドレール4内に前後摺動自在に係合された前側脚部(前端部)11を中心に後側が上下に回動自在で、後側脚部12はフック8に対して前側から係脱自在になっている。
【0018】
ガイド部材10には、その中央部に樹脂製のキャップ部材14が嵌め込まれている。このキャップ部材14には、図2に示すように、ガイド溝15とバイパス溝16が非貫通状態で凹設されている。このガイド溝15とバイパス溝16には、前記スライダ7の上端に形成したガイドピン9が移動自在に係合されている。このように、樹脂製のキャップ部材14にガイド溝15及びバイパス溝16を形成すれば、金属製のガイド部材10に直接形成する場合に比べて加工が容易である。また、ガイドピン9が樹脂との接触になるため、摺動抵抗が少なく、ガイドピン9の移動が円滑になる。更に、キャップ部材14のガイド溝15及びバイパス溝16が非貫通状のため、キャップ部材14の剛性低下もない。
【0019】
ガイド溝15は、前端部15a及び後端部15cよりも中間部15bが低くなった概略逆「へ」の字状をしている。前端部15aと後端部15cとでは、後端部15cの方が若干高く設定されている。バイパス溝16は、ガイド溝15の前端部15aと後端部15cの間に形成され、前端部15aと同じ高さで水平に真っ直ぐ形成されている。
【0020】
キャップ部材14の内側には、「切換手段」としてのレバー17が設けられている。レバー17の中間部17bがピン18(図9)により軸支され、前後を上下に回動させることができる。レバー17は、ガイド溝15の前端部15a付近から後端部15c付近に至る前後長さを有し、前端部17aの下縁でガイド溝15の上縁を形成でき、また後端部17cの上縁でバイパス溝16の下縁を形成できるようになっている。
【0021】
レバー17のピン18にはバネ19が取付けられ、その一方の脚部の先端はキャップ部材14の突起20に係合し、他方の脚部の先端はキャップ部材14の長孔21を貫通した状態でレバー17の孔に係止されている。従って、このレバー17はバネ19により、後端部17cが下がる方向(図2反時計方向)に付勢されている。このようにバネ19で付勢されていることにより、図2のように、ガイド溝15の前側が開放されて、レバー17の前端部17aの下縁でガイド溝15の上縁を形成した状態となり、またバイパス溝16の後側が開放されて、レバー17の後端部17cの上縁でバイパス溝16の下縁を形成した状態となる。
【0022】
従って、全閉の状態(図3)から、モータ5の駆動力をケーブル6を介してスライダ7に伝達して後退させると、スライダ7のガイドピン9がガイド溝15の前端部15aから中間部15bに至り、リッド3はチルトアップ位置になる(図4)。バイパス溝16の前側の入口はレバー17により塞がれているため、ガイドピン9は必ずガイド溝15側に導かれる。
【0023】
ガイドピン9は、中間部15bを経て後端部15cに至り、リッド3は、後端を開口2よりも下げたフラップ位置になる(図5)。ガイドピン9は、中間部15bを越えた時にレバー17の後端部17cに下側から当たるが、バネ19の力に抗して、レバー17の後端部17cが上側へ回動可能なため、このレバー17を越えて、ガイド溝15の後端部15cに至り、リッド3の後端が下降したフラップ位置となる。尚、チルトアップ位置からフラップ位置になる時に、図示されていないが、リッド3の後端のウエザストリップ3aが、対向する開口2の縁部に当たり、一瞬、開口2が閉じられた状態となる(疑似全閉)。
【0024】
ガイドピン9は、ガイド溝15の後端部15cに係合したまま、リッド3を開口2の後側へ引き込んで、開口2を完全に開放した全開状態にする(図6)。
【0025】
そして、全開位置からリッド3を閉めるために、スライダ7を前進させると、ガイドピン9が、ガイド溝15の後端部15cの前側の傾斜部に当たった状態で、リッド3が前側へ出てくる(リッド3が上に移動できないため)。リッド3が開口2側に完全に出て、上方への回動が自由になると、ガイドピン9がガイド溝15の後端部15cから更に前側へ移動しはじめる。この時、ガイド溝15の中間部15b側がレバー17の後端部17cにより塞がれているため、ガイドピン9は必ずバイパス溝16に入る。
【0026】
バイパス溝16は、ガイド溝15の前端部15aと同じ高さであるため、図3に示す全閉状態と同様に、リッド3の後端のウエザストリップ3aは対向する開口2の縁部に当接した状態で停止する。そして、ガイドピン9だけがバイパス溝16内を前側へ移動し、レバー17の前端部17aをバネ19に抗して押し下げて、そのままガイド溝15の前端部15aに至り、完全な全閉状態となる。この間、リッド3の後端のウエザストリップ3aが開口2の縁部に当接した状態に変化はなく、ウエザストリップ3aに負荷が加わらない。
【0027】
以上のように、レバー17の切換作用により、ガイドピン9はガイド溝15及びバイパス溝16内を、図中における反時計方向にのみ回転するようになり、開く方向では、通常の通り、チルトアップ位置が得られるものの、全開位置からの閉じ方向ではチルトアップ位置がない。このように、チルトアップ位置は、開く方向で一回だけ得られる構造になるため、リッド3の後端のウエザストリップ3aが開口2前端に対して強く摺動する回数が減り、ウエザストリップ3aの耐久性が向上する。また、閉じ方向では疑似全閉状態もなくなるため、リッド3を閉じる際の不要な動きもない。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、リッドを開くために、ガイドピンを後側へ移動させると、切換手段により、通常の通り、ガイドピンはガイド溝側へ導かれるため、チルトアップ位置が得られる。しかし、全開位置からリッドを閉じるために、ガイドピンを前側へ移動させると、ガイドピンはガイド溝に戻らず、バイパス溝に入るため、チルトアップ位置にならずに、直ちに全閉状態となる。従って、チルトアップ位置は、開く方向で一回だけ得られる構造になるため、リッドの後端部が開口の縁部に対して強く摺動する回数が減り、ウエザストリップの耐久性が向上すると共に、リッドを閉じる際の不要な動きもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るサンルーフ装置の平面図。
【図2】図3のガイド溝及びバイパス溝を示す拡大図。
【図3】図1のリッドが全閉位置にある状態を示す概略断面図。
【図4】図1のリッドがチルトアップ位置にある状態を示す概略断面図。
【図5】図1のリッドがフラップ位置にある状態を示す概略断面図。
【図6】図1のリッドが全開位置にある状態を示す概略断面図。
【図7】図1のリッドの閉じ方向におけるチルトアップ位置が空振りしている状態を示す概略断面図。
【図8】図3中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図9】図3中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 ルーフ
2 開口
3 リッド
3a ウエザストリップ
5 モータ(駆動手段)
7 スライダ
9 ガイドピン
10 ガイド部材
14 キャップ部材
15 ガイド溝
15a 前端部
15b 中間部
15c 後端部
16 バイパス溝
17 レバー(切換手段)
Claims (3)
- 車体のルーフに形成された開口に、該開口を覆うことを可能なるように前後移動自在に設けられてなるリッドと、該リッドの下部に固定されてなると共に前端部を支点として後端部を上下に回動可能なガイド部材とより構成されてなり、
該ガイド部材には、前後端部が高く中間部が低い形状のガイド溝を形成し、該ガイド溝に駆動手段により前後移動するスライダのガイドピンを係合させ、
該ガイドピンを前後に移動させることにより、ガイドピンがガイド溝の前端部に当接した状態でリッドにより開口が塞がれた状態となる全閉位置と、ガイドピンがガイド溝の最も低い中間部に係合することによりリッドが前端部を中心に回動して後端部が開口よりも上昇した状態となるチルトアップ位置と、ガイドピンがガイド溝の後端部に当接した状態でリッドの後端部が開口よりも下降したフラップ位置と、該フラップ位置を経てリッドが後方へスライドして開口を開放した状態となる全開位置とが得られるサンルーフ装置であって、
前記ガイド溝の前端部と後端部との間に、前端部と同じ高さのバイパス溝を形成すると共に、
ガイド溝の周辺に、ガイド溝の前端部から後側へ移動するガイドピンはガイド溝の中間部へ導き、ガイド溝の後端部から前側へ移動するガイドピンはバイパス溝に導く切換手段を、設けたことを特徴とするサンルーフ装置。 - 請求項1記載のサンルーフ装置であって、
切換手段として、中間部がガイド溝とバイパス溝との間に軸支された前後方向に長いレバーを取付け、
該レバーは、後端部を下げる方向に付勢された状態で、前端部の下縁でガイド溝の上縁を形成し且つ後端部の上縁でバイパス溝の下縁を形成した状態に支持されていることを特徴とするサンルーフ装置。 - 請求項1又は請求項2記載のサンルーフ装置であって、
ガイド部材に樹脂製のキャップ部材を取付け、該キャップ部材に非貫通状のガイド溝及びバイパス溝を形成したことを特徴とするサンルーフ装置。
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