JP3748097B2 - 圧電体薄膜素子、圧電体薄膜素子を備えるアクチュエータおよびアクチュエータを備えるインクジェット式記録ヘッド - Google Patents

圧電体薄膜素子、圧電体薄膜素子を備えるアクチュエータおよびアクチュエータを備えるインクジェット式記録ヘッド Download PDF

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は圧電体薄膜素子とその製造方法に関する。さらに、この発明は、この圧電体素子を備えた機械アクチュエータに関する。さらに、本発明は、圧電体薄膜を含む機能性膜の結晶構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電体薄膜素子は、圧電体歪み特性を発揮し、種々のアクチュエータとして機能するデバイスとして知られている。圧電体薄膜素子は、基板上に共通電極としての下電極を形成し、この上にパターン化された圧電体薄膜を形成し、さらに各圧電体薄膜のパターンの上に個別電極としての上電極を設けた構造を備える。すなわち、圧電体薄膜が一対の電極間に存在する構成である。上電極と下電極とに間に電圧を加えると、電圧が加わったパターンの圧電体薄膜素子に歪みが生じ、この歪みが機械的駆動源として利用される。
【0003】
この種のアクチュエータとして代表的なものに、インクジェット式プリンタ用ヘッドが存在する。このインクジェット式プリンタヘッドにおいては、特定の圧電体薄膜に歪みが発生すると、この圧電体薄膜に対応したインク溜まりからインクが印刷対象に対して吐出される。
【0004】
圧電体薄膜を構成する圧電体としては、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」と称することとする。)に代表される圧電材料からなるものが良く知られている。圧電体薄膜は、スパッタ法等の物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、ゾルゲル法等のスピンコート法等で成膜され、次いで、700〜1000℃の高温熱処理を受けることにより形成される。
【0005】
また、最近では水熱合成法と呼ばれ種結晶をアルカリ加熱水中で成長させる技術も提案されている。また、圧電体薄膜の結晶構造を改良して圧電体特性を高めるための試みが提案されている。圧電体薄膜の結晶構造は、圧電体薄膜を成す複数の結晶粒と、この結晶粒間に存在する結晶粒界から構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
膜の耐電圧の優劣の程度は、結晶粒内の例えば酸素欠損等の欠陥による影響と、粒界の状態による影響を主として受ける。後者の影響が多いと考えられている。圧電体薄膜は下電極の影響を少なからず受けて結晶成長をする。このとき、圧電体薄膜を成す結晶は、柱状になることが一般的である。柱状結晶における結晶粒界は、圧電体薄膜の下電極側から上電極側にかけて、すなわち、圧電体薄膜の膜厚方向に連続的に形成される。但し、このような結晶粒界は上電極と下電極との間のリーク電流の通路(リークパス)になる可能性がある。このリークパスによって、圧電体素子の耐電圧が低くなるという欠点がある。
【0007】
圧電体素子の耐電圧を上げるために、結晶粒をできるだけ大きくする等して、圧電体薄膜の粒界密度を小さくするか、あるいは圧電体薄膜を単結晶化するなどの試みが、JAE-HYUN JOO,YOU-JIN LEE,SEUNG-KI JOO,Feroelectrics,1997,Vol.196,pp.1-4においてなされている。しかしながら、発明者は、圧電体薄膜内の結晶粒界を数本以下あるいは圧電体を単結晶化することは、実際問題としてかなり困難なことであるとの知見を得ている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、圧電体内を連続する結晶粒界を極力少なくした圧電体薄膜素子を提供することである。本発明の他の目的は、耐電圧特性に優れた圧電体薄膜素子を提供することである。本発明のさらに他の目的は、耐電圧特性を高めた新規な圧電体の結晶構造を提供することである。本発明のさらに他の目的は、この圧電体素子を備えたアクチュエータ、特にインクジェットプリンタヘッドを提供することである。本発明のさらに他の目的は、これらを製造するための方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧電体薄膜の厚さ方向の一端から他端にかけて既述の結晶粒界が不連続になるようにしたことを特徴とする。すなわち、結晶粒界が連続していない結晶構造からなる複数の層が圧電体薄膜の厚さ方向に存在する。各層同士の間で結晶粒界が途切れている。
【0010】
本発明の他の形態は、各層に存在する結晶粒の粒径が隣接する層同士の間で異なるような構造を持つ圧電体薄膜を提供することである。あるいは、隣接する層同士の結晶粒の結晶粒界が重ならないように各層の結晶粒がシフトした構造を持つ圧電体薄膜を提供することである。
【0011】
連続した結晶粒界を持たない構造を圧電体薄膜に実現することは、圧電体薄膜形成工程を熱処理のための態様が異なる複数の熱処理工程から構成させることがその一例である。特に、好適な形態は、圧電体薄膜を形成するための一連の熱処理の工程において、第2の段階以降の各段階において、前段階迄で得られた結晶粒が再結晶化して、結果として連続した結晶粒界が生じないような熱処理の形態が採用されることである。たとえば、前段階迄の熱処理温度を越えないようにすることである。熱処理の過程で、既存の結晶粒が再結晶化すると、圧電体薄膜の厚さ方向に連続した結晶となり、この結晶の粒界も同方向に連続したものになる。それを防止するために、複数の熱処理工程を実行しながら圧電体薄膜を順次積層していく過程で、熱処理温度を各工程毎に下げていく。また、熱処理の加熱速度を各工程毎に上げたり、あるいは下げたりなど変化させることである。熱処理のための具体的な方法は、特に限定されない。RTAを利用する熱処理、あるいは、ファーネスアニール(拡散炉)を利用する熱処理とを各工程ごとに使用することができる。RTAによる熱処理のように、加熱速度が高いものを利用すると、たとえば、結晶粒径は3000−4000nmのような比較的大きなものになり、ファーネスアニーリングのように加熱速度がRTAに比べて低いものを用いると、50−80nm程度の結晶粒径をもつ圧電体結晶を得ることができる。また、加熱の際の最高温度を調節することにより結晶粒径を調整できる。結晶粒径が異なる圧電体結晶を後述の図に示すように複数の層から形成するような熱処理を多段階に実行することにより、各層の結晶の結晶粒界が連続しないようにできる。
【0012】
本発明の構造を備えることにより、結晶粒界が圧電体薄膜の厚さ方向に連続しないようできるので、圧電体薄膜の耐電圧特性を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
(インクジェット式記録ヘッド)
図1は、公知のインクジェット式記録ヘッドを側面から見た概略図である。同ヘッド1は、ノズル板10、圧力室基板20、振動板30を備えて構成されている。圧力室基板20は、キャビティ21、側壁22を備えている。キャビティ21は、圧力室であってシリコン等の基板をエッチングすることにより形成されるものである。側壁22は、キャビティ21間を仕切るよう構成されている。11はキャビティ21内のインクを後述の圧電体素子の変形によって、紙などの被印刷物に吐出するためのノズル孔である。
【0014】
振動板30は圧力室基板20の一方の面に貼り合わせ可能に構成されている。振動板30には本発明の圧電体素子40が設けられている。圧電体素子40は、ペロブスカイト構造を持つ強誘電体の結晶であり、振動板30上に所定の形状で形成されて構成されている。
【0015】
ノズル板10は、圧力室基板20に複数設けられたキャビティ(圧力室)21の各々に対応する位置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20に貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基板20は、さらに筐体に填められて、インクジェット式記録ヘッドを構成している。
【0016】
図1に示すように、振動板30は絶縁膜31および下部電極32を積層して構成され、圧電体素子40は圧電体層41および上部電極42を積層して構成されている。下部電極32、圧電体層41および上部電極42によって圧電体素子が構成されアクチュエータとして機能させることができる。
【0017】
絶縁膜31は、導電性のない材料、例えばシリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素により構成され、圧電体μ層の体積変化により変形し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に構成されている。
【0018】
下部電極32は、圧電体層に電圧を印加するための上部電極42と対になる電極であり、導電性を有する材料、例えば、白金(Pt)層をそれぞれ交互に配置した層から構成されている。
【0019】
圧電体層41は、強誘電体により構成されている。この強誘電体の組成としては、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O:PZT)、((Pb,La)ZrO:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O:PMN−PZT)のうちいずれかであることが好ましい。例えば、マグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛であれば、0.1Pb(Mg1/3Nb2/3)O−0.9PbZr0.56Ti0. 44という組成が好適である。なお、圧電体層はあまりに厚くすると、層全体の厚みが厚くなり、高い駆動電圧が必要となり、あまりに薄くすると、膜厚を均一にできずエッチング後に分離された各圧電体素子の特性がばらついたり、製造工数が多くなり、妥当なコストで製造できなくなったりする。したがって、圧電体層41の厚みは、0.1〜2.0μm程度が好ましい。
【0020】
上部電極膜42は、圧電体層に電圧を印加するための一方の電極となり、導電性を有する材料、例えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。
(製造方法)
次に、上記条件を満たす圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドの製造方法について図2乃至図3を参照して説明する。圧電体薄膜を製造する方法として、既に存在する公知の方法を広く適用できるが、下記に示すいわゆるゾルーゲル法が好適である。本実施形態では酢酸系溶媒からPZTを強誘電体とした圧電体素子を製造する。
【0021】
アルコール系溶媒(圧電体前駆体)製造工程:まずチタニウムテトライソプロポキシド及びペンタエトキシニオブをブトキシエタノールに溶解させ、これにジエタノールアミンを加え更に室温下で攪拌する。次いで、酢酸鉛3水和物とジルコニウムアセチルアセトナート及び酢酸マグネシウム4水和物とを加え、これを摂氏80度に加温し攪拌する。30分程度攪拌した後に室温まで自然冷却し、これにポリエチレングリコールを加え室温下で5分程度攪拌する以上の工程によってアルコール系溶媒が完成する。
【0022】
絶縁膜形成工程(図2(a)):上記アルコール系溶媒の製造と並行して、圧力室基板の基礎となるシリコン基板20に絶縁膜31を形成する。シリコン基板20は、例えば200μm程度、絶縁膜31は、1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には、公知の熱酸化法等を用いる。
【0023】
下部電極膜形成工程(同図(b)):次いで、絶縁膜31の上に下部電極32を形成する。下部電極32は、例えば、白金層を400nmの膜厚に形成した。これら層の製造は、公知の直流スパッタ法等を用いる。
【0024】
圧電体層形成工程(同図(c)):次いで、上記アルコール系溶媒を用いて上部電極32上に圧電体層41を形成する。圧電体層はゾルゲル法によって製造される。本発明の工程は、既述のように複数の熱処理工程を重ねることによる。RTA(Rapid thermal annealing)−拡散炉(ファーネスアニール)−RTAのように、熱処理の方法および温度を変えて行う。熱処理のための温度は、段階が進んでも前段階までの熱処理温度を越えないようにする。
【0025】
先ず、第1の段階であるRTAを用いた熱処理について説明する。前記アルコール系溶媒を一定の厚みに塗布する。例えば、公知のスピンコート法を用いる場合には、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗布後、一定温度(例えば摂氏180度)で一定時間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒であるブトキシエタノールが蒸発する。
【0026】
乾燥後、さらに大気雰囲気下において所定の高温(例えば摂氏400度)で一定時間(30分間)脱脂する。脱脂により金属に配位している有機の配位子が熱分解され、金属が酸化されて金属酸化物となる。この塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数、例えば5回繰り返して5層のセラミックス層を積層する。これらの乾燥や脱脂により、溶液中の金属アルコキシドが加水分解や重縮合され金属−酸素−金属のネットワークが形成される。
【0027】
アルコール系溶媒を5層重ね塗りした後には、さらに圧電体層の結晶化を促進し圧電体としての特性を向上させるために、所定の雰囲気下で熱処理する。例えば、酸素雰囲気下において、RATで、650度で5分間、さらに900度で1分間加熱する。この熱処理によりアモルファス状態の溶媒からペロブスカイト結晶構造が形成される。この結晶化の際に、上記したような条件に合致する結晶構造になる。上記処理により圧電体層41が所定の厚み、例えば0.5μm程度で形成される。
【0028】
この結果、3000nm−4000nmの粒径を有する、柱状の圧電体結晶が構成される。なお、基板としては、圧電体結晶を作る際の種となるTiが形成されていない(Pt/Ti/SiO=(200/20/1000nm))が使用される。ここで、種結晶が存在しないことも、本発明の圧電体膜の層構成を得る上で有効であるという可能性についての知見を、発明者は認識している。
【0029】
以上の熱処理を纏めると、(スピンコート−乾燥(180度10分)−脱脂(400度30分))からなる工程を5回−RTA(摂氏650度5分−摂氏900度1分)となる。この結果、3000nm乃至4000nmの粒径を持つ圧電体の柱状結晶が得られる。
【0030】
次に、第2段階目の熱処理について説明する。この段階の熱処理は、前記スピンコートののち直ちに拡散炉(焼結摂氏800度10分、酸素雰囲気)にて熱処理を行い、以上を繰り返し10回行い、0.5μm程度の厚みの圧電体膜を形成する。ここで、明らかなようにこの時の熱処理温度は、第1段階目の熱処理温度を越えない値としている。この結果、結晶粒径が50nm−80nmの圧電体薄膜が形成される。
【0031】
次に、第3段階目の熱処理を行う。ここでの第1段階目の熱処理と異なるのはRTAによる加熱温度第1段階目の摂氏900度を摂氏800度に変えた点である。この第3段階目の熱処理温度は、第1段階目及び第2段階目の熱処理の最高温度を越えない値となっている。熱処理の最高温度で結晶粒径が決まるとともに、熱処理の最高温度を越えると結晶粒の再結晶化が起こる。この第3段階目の熱処理によって、100nm−500nmの粒径を持つ圧電体結晶層が得られる。熱処理工程の最高温度が異なる点を除けば、他の工程の一切は図3における1の層と同じである。
【0032】
図3は第1段階目から第3段階目の熱処理を実行することによって得られた、圧電体薄膜結晶の構造を示す。第2段階目及び第3段階目の熱処理は、それぞれ前段階の熱処理温度を越えないように管理されることにより、図3に示す構造が得られる。すなわち、各段階の熱処理に応じて、圧電体薄膜が1乃至3の複数の層から構成され、各層の結晶粒の結晶粒界は、圧電体薄膜の厚さ方向に連続していない、圧電体薄膜の厚さ方向の途中で途切れている等の特徴を有している。換言すれば、圧電体薄膜の厚さ方向の途中に結晶粒界の不連続領域が1以上存在する。各層の結晶粒の粒径が互いに異なるか、あるいは各層の結晶粒が、結晶粒界が連続しないようにシフトされて配置されているかのような結晶構造によって既述のように結晶粒界が連続しない構造が得られる。
【0033】
図3に示す構造、即ち粒径が小さい層2の上に粒径が大きい層3を形成する場合は、全層において、膜厚方向に対する結晶配向を同一にすることが好ましい。結晶配向を単一にすることで、結晶の連続性が保たれ、圧電性能を維持できるからである。結晶配向が幾つかの配向の混合である場合(例えば111と100或いは111と001)は、粒径を徐々に小さくするように構成すれば良い。この時配向が混合であっても、結晶の膜厚方向での連続性を保ちつつ、粒界の不連続領域を形成することができる。
【0034】
次に、上部電極形成工程(図2(d))を説明する。圧電体層41の上に、さらに電子ビーム蒸着法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極42を形成する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは100nm程度にする。
【0035】
以上の工程が終了した後、公知のエッチング工程を行う。この工程は、各層を形成後、振動板膜上の積層構造である圧電体膜及び上部電極を、各キャビティ21に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする。不要な部分の圧電体層41および上部電極42を取り除く。エッチングのために、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成してから露光し現像して、成形されたレジストが上部電極42上に形成される。これに通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な層構造部分を除去する。
【0036】
さらに、公知の圧力室形成工程を行う。圧電体素子40が形成された圧力室基板20の他方の面をエッチングしてキャビティ21を形成する。例えば、異方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、キャビティ21空間のエッチングを行う。エッチングされずに残された部分が側壁22になる。
【0037】
さらに、公知のノズル板貼り合わせ工程を行う。エッチング後のシリコン基板20にノズル板10を、樹脂等を用いて貼り合わせる。このとき、各ノズル穴11がキャビティ21各々の空間に配置されるよう位置合せする。ノズル板10の貼り合わせられた圧力室基板20を筐体に取り付け、インクジェット式記録ヘッド1が完成する。なお、ノズル板10を貼り合わせる代わりに、ノズル板と圧力室基板を一体的にエッチングして形成してもよい。ノズル穴はエッチングで設ける。以上の工程により、圧電体薄膜素子が形成される。
【0038】
なお、本発明では圧電体薄膜を3段階の熱処理で形成したが、これに限られることはない。また、圧電体薄膜以外の、たとえば、メモリー用強誘電薄膜等の機能性膜についても本発明を適用することが可能となる。
【0039】
次に、本発明者は、結晶粒界の不連続領域を形成するために、結晶粒径を変更するための方法について種々検討したところ次のような知見を得た。表1及び表2に示すグラフはこの知見の根拠となった実験結果を示すためのものである。
【0040】
【表1】
Figure 0003748097
【0041】
【表2】
Figure 0003748097
第1は、圧電体の組成を変更することである。例えば、Zr/Ti比を変えると粒径も大きく変化する(No.9)。なお、この比を変更すると結晶系も同時に変化する。この比が60/40を越えると菱面体晶系、この比が45/55未満では正方晶系となる。
【0042】
過剰鉛(化学量論比を上回る鉛)によっても粒径は変化するが、結晶化装置がRTAであると〜700nmと大きく(No.2)、拡散炉であると標準(100〜200nm)である(No.10)。RTAと拡散炉の相違は、主として昇温レートの違いにあることは既述のとおりである。RTAはおよそ毎秒摂氏250度であるのに対して拡散炉はせいぜい毎分摂氏200度である。
【0043】
最も大きな結晶粒は、種層であるTiを用いない基板上にホットプレートで脱脂した前駆体膜をRTAで結晶化させた時に得られたもので、2200nmである(No.8)。最も小さな結晶は、脱脂工程を省略し、拡散炉内において、脱脂と結晶化とを同時に行った時に得られた80nmである。
【0044】
これら以外の条件下では、結晶粒径はおおよそ100〜300nmの範囲で安定している。すなわち、粒径制御は結構難しい。逆に既述の条件を適宜組み合わせることによって、結晶粒径を調整することが可能となる。
【0045】
共通電極(下電極)を構成する白金の粒径は30〜60nmの範囲であって、PZT粒径は100〜300nmとこれを大きく上回る。白金とPZTとの間に相関関係、すなわち白金の粒径が大きくなるとPZTの粒径が大きくなる、が認められるが決定的なものではない。
【0046】
結晶化する際の膜中に存在する有機物、すなわち、脱脂後の前駆体膜中に存在する有機物、または結晶化する際の膜中に存在する有機物は、結晶化を規制し結晶化速度の低下を招くおそれがある。この為、結晶は自由成長ではなく、基盤(白金)に束縛された111配向になり易い。結晶核の形成が多くなるため、小粒径に成りやすい。
【0047】
過剰鉛の存在はPbOの形成を促進する。PbOの001配向はPZTの100配向の基となる。また、PbOの結晶成長開始温度はPZTより低く、自由成長し易いため過剰鉛を含む膜の粒径は大きくなり易い。但し、有機物を多く含む前駆体膜は既述の理由から大きな粒には成長しない。
【0048】
下電極(白金)上にチタンが存在すると、これが種結晶として機能することは本出願人の出願に係わる特願平9−72209により知られたところである。隣り合う核(種)から成長して互いに接する境界が結晶粒界となる。層毎に種結晶が形成される密度を変えることにより結晶粒径を各層毎に変えることができ、これにより、結晶粒界が連続しないようにすることができる。 本発明によれば、結晶粒径を制御する既述の要素を適宜組み合わせることによりそれが可能となる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、圧電体薄膜結晶の結晶粒界を連続しないような構成を実現したことにより、圧電体素子の耐電圧特性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる圧電体素子を側面から示した図。
【図2】それの製造工程図。
【図3】圧電体薄膜の結晶構造を説明する模式図。
【符号の説明】
1 インクジェット式記録ヘッド
32 下部電極
41 圧電体膜
42 上部電極

Claims (5)

  1. 一対の電極間に圧電体薄膜を配置して基板上に形成してなる圧電体薄膜素子において、
    前記圧電体薄膜は、
    基板から順に配置された第1、第2および第3の層であって、
    第1粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第1の層と、
    第2粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第2の層と、
    第3粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第3の層と、
    からなり、
    前記第2粒径は、前記第1粒径より小さく、かつ、前記第3粒径より小さく、
    前記第1から第3の層の各層の結晶粒界は、各層の境界においてその膜厚方向に連続していないことを特徴とする圧電体薄膜素子。
  2. 前記第1から第3の層の結晶は、その膜厚方向に対する結晶配向が同一であることを特徴とする請求項1記載の圧電体薄膜素子。
  3. 一対の電極間に圧電体薄膜を配置して基板上に形成してなる圧電体薄膜素子において、
    前記圧電体薄膜は、
    基板から順次配置された第1、第2および第3の層であって、
    第1粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第1の層と、
    第2粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第2の層と、
    第3粒径を有し、その膜厚方向に柱状に構成される結晶よりなる第3の層と、
    からなり、
    前記第1から第3の層の各層の結晶粒界は、各層の境界においてその膜厚方向に連続しておらず、
    また、前記各層の結晶は、その膜厚方向に対する結晶配向が幾つかの配向の混合であり、
    前記第2粒径は、前記第1粒径より小さく、かつ、前記第3粒径は、前記第2粒径より小さいことを特徴とする圧電体薄膜素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項記載の圧電体薄膜素子を機械的駆動源として備えるアクチュエータ。
  5. 請求項4記載のアクチュエータをインク吐出用駆動源として備えるインクジェット式記録ヘッド。
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