JP4038753B2 - 強誘電体薄膜素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は強誘電体薄膜素子に関し、特に、ゾルゲル法を用いた製造方法およびこれにより得られた強誘電体薄膜素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジルコン酸チタン酸鉛に代表される強誘電性薄膜は、自発分極、高誘電率、電気光学効果、圧電効果、及び焦電効果等の機能を有し、広範なデバイス開発に応用されている。
【0003】
強誘電体薄膜は、それを構成する結晶の配向性によって特性が変わるため、強誘電体薄膜を成膜する際には結晶配向の制御が必要である。
【0004】
強誘電体薄膜の成膜方法としては、スパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法、レーザアブレーション法などがあるが、これらのうち、ゾルの塗布、乾燥、焼成という一連の工程により成膜するゾルゲル法は、結晶配向の制御性に優れていることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ゾルゲル法により強誘電体薄膜を成膜する際には、結晶を成長させ所望の配向を得るために焼成温度を高くする必要がある一方で、焼成温度を高くすると、ジルコン酸チタン酸鉛の鉛原子が下部電極のほうへ拡散するとともに、下部電極が酸化されてしまい、強誘電体薄膜素子としての所望の特性を得ることができないという問題がある。
【0006】
これは、鉛原子の下部電極への拡散および下部電極の酸化によって、強誘電体薄膜と下部電極との密着力が低下するとともに、下部電極が劣化して機械的強度が低下することに起因するものと考えられる。
【0007】
強誘電体薄膜の配向性の改善について、特開平6−5948号公報には、ゾルゲル法により複数回の成膜工程を経て強誘電体薄膜を形成するにあたり、当該複数回の成膜工程のうち初期の成膜工程では下地部材の結晶配向性を受継ぐことのできるような高温で焼成し、後期の成膜工程では低温で焼成する旨が記載されている。
【0008】
しかし、この方法においても、初期の成膜工程において高温で焼成するために、依然として、ジルコン酸チタン酸鉛の鉛原子が下部電極のほうへ拡散し、また、下部電極が酸化されてしまい、強誘電体薄膜素子の駆動中に下部電極が割れてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、強誘電体薄膜の配向性を適切に制御しつつ、鉛原子の下部電極への拡散および下部電極の酸化を防止して、特性の優れた強誘電体薄膜素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、この強誘電体薄膜素子をインク吐出駆動源とするインクジェット記録ヘッドおよびこれを用いたインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、強誘電体薄膜のうち上部電極側の部分の圧電特性が良好であれば、優れた強誘電体薄膜素子が得られることを見出し、本発明をなすに至った。さらには、強誘電体薄膜のうち下部電極側の部分については、下地である種Ti膜を核として結晶成長させることにより、比較的低い焼成温度によっても結晶を所望に配向させ得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
本発明に係る強誘電体薄膜素子は、上部電極および下部電極を備え、この間に強誘電体薄膜を備えてなる強誘電体薄膜素子であって、前記強誘電体薄膜は、複数の層が積層されてなり、当該複数の層において、上部電極側の層の結晶粒の平均粒径のほうが、下部電極側の層の結晶粒の平均粒径よりも小さいことを特徴とする。結晶粒の平均粒径を上部電極側と下部電極側とで変化させかつ上部電極側を小さくすることにより、圧電特性を低下させることなく、鉛原子の拡散および酸化を防止した優れた強誘電体薄膜素子を得ることができる。
【0013】
上部電極側の層の結晶粒の平均粒径が小さいということは、上部電極側の層の緻密度のほうが、下部電極側の層の緻密度よりも高いということである。上部電極側の層における緻密度が高いことにより、優れた強誘電体薄膜素子を得ることができる。さらに、強誘電体薄膜は、ペロブスカイト結晶構造を有しており、これは単位格子が単純立方格子から多少ゆがんだ結晶構造である。上部電極側の層の結晶粒の緻密度が高いということは、上部電極側の層の格子定数aのほうが下部電極側の層の格子定数aよりも小さいといえる。上部電極側の層における格子定数aが小さいことにより、優れた強誘電体薄膜素子を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る強誘電体薄膜素子は、上部電極側の層の厚みのほうが、下部電極側の層の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、圧電特性を低下させることなく、鉛原子の拡散および酸化を防止した優れた強誘電体薄膜素子を得ることができる。
【0015】
本発明においては上部電極側の層の厚みのほうが、下部電極側の層の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0016】
本発明においては、下部電極と強誘電体薄膜との間に、種Ti膜が形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明においては、下部電極側の層が2成分系の強誘電体材料からなり、上部電極側の層が3成分系の強誘電体材料からなることが好ましい。
【0018】
本発明においては、下部電極がイリジウムを含んでいることが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、強誘電体薄膜の膜厚が0.8m以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明によるインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出させるための圧電アクチュエータとして、上記強誘電体薄膜素子を備えてなる。
【0021】
本発明によるインクジェットプリンタは、上記インクジェット記録ヘッドを印字手段として備えてなる。
【0022】
本発明に係る強誘電体薄膜素子の製造方法は、下部電極の上にゾルを塗布した後に焼成する成膜工程を複数回行って強誘電体薄膜を形成した後、上部電極を形成する方法であって、下部電極側の層の成膜工程における焼成温度のほうが、上部電極側の層の成膜工程における焼成温度よりも低いことを特徴とする。下地である種Ti膜を核として、下部電極側の部分を結晶成長させることにより、比較的低い焼成温度によっても結晶を所望に配向させることができるので、高温に焼成することによる下部電極への鉛原子の拡散および下部電極の酸化を防止することができる。また、上部電極側の部分については、比較的高温にて焼成することにより、十分に結晶化をさせ所望に配向させ、優れた圧電特性を得ることができる。
【0023】
本発明においては、下部電極側の層の成膜工程における焼成温度と、上部電極側の層の成膜工程における焼成温度との差が、100℃以上200℃以下であることが好ましい。両者の焼成温度の差が100℃未満では、十分に結晶化することができないか、あるいは下部電極への鉛原子の拡散および下部電極の酸化による特性劣化が生じてしまう。一方、両者の焼成温度の差が200℃より大きいと、下部電極側の層が十分に結晶化されず良好な特性が得られないという問題がある。
【0024】
本発明においては、最も下部電極側の層の成膜工程において、焼成を550℃以上750℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。550℃未満では、下部電極側の層の結晶化が十分図られず、一方、750℃より大きいと下部電極への鉛原子の拡散および下部電極の酸化による特性劣化が生じてしまう。
【0025】
上記強誘電体薄膜は、ゾルの塗布、乾燥、脱脂、比較的低温での焼成を3回繰り返して3層からなる初期層を形成した後、ゾルの塗布、乾燥、脱脂、比較的高温での焼成を3回以上繰り返して3層以上からなる後期層を形成して、合計6層以上とすることが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(インクジェットプリンタの全体構成)
図1に、インクジェットプリンタの斜視図を示す。プリンタには、本体2に、トレイ3、排出口4および操作ボタン9が設けられている。
【0028】
本体2はプリンタの筐体であって、用紙5をトレイ3から供給可能な位置に給紙機構6を備え、用紙5に印字できるようにインクジェット記録ヘッド1が配置されている。また、本体2の内部には制御回路8が設けられている。
【0029】
トレイ3は、印字前の用紙5を供給機構6に供給可能に構成され、排出口4は、印刷が終了した用紙5を排出する出口である。
【0030】
インクジェット記録ヘッド1は、本発明に係る強誘電体薄膜素子を備えており、制御回路8から出力される信号Sdに対応して、ノズルからインクを吐出可能に構成されている。
【0031】
給紙機構6は、モータ600、ローラ601、602を備えている。モータ600は制御回路8から出力される信号Shに対応して回転し、この回転力がローラ601、602に伝達され、ローラ601、602の回転によってトレイ3にセットされた用紙5を引き込み、ヘッド1によって印字可能に供給するようになっている。
【0032】
制御回路8は、図示しないCPU、ROM、RAM、インターフェース回路などを備えている。制御回路8は、図示しないコネクタを介してコンピュータから供給される印字情報に対応させて、信号を給紙機構6やヘッド1の駆動機構に出力する。
【0033】
(インクジェット記録ヘッドの構成)
図2に、本発明に係る強誘電体薄膜素子の分解斜視図を示す。
【0034】
ヘッドは、ノズル板10、圧力室基板20、振動板30、下部電極42、強誘電体薄膜43および上部電極44から構成される。
【0035】
圧力室基板20は、圧力室21、側壁22、リザーバ23および供給口24を備えている。圧力室21は、シリコン等の基板をエッチングすることによりインクなどを吐出するために貯蔵する空間として形成されたものである。側壁22は、圧力室21を仕切るよう形成されている。リザーバ23は、インクを共通して各圧力室21に充たすための流路となっている。供給口24は、リザーバ23から各圧力室21へインクを導入できるように形成されている。
【0036】
ノズル板10は、圧力室基板20に設けられた圧力室21の各々に対応する位置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20の一方の面に貼りあわせられている。
【0037】
圧力室21およびノズル穴11は、一定のピッチで連設されて構成されている。このノズル間のピッチは、印刷精度に応じて適時設計変更が可能であり、例えば400dpi(dot per inch)となるように配置される。
【0038】
振動板30の上には、各圧力室21に対応する位置に、下部電極42、強誘電体薄膜43および上部電極44が設けられており、これらは圧電アクチュエータとして機能する。振動板30には、インクタンク口35が設けられて、図示しないインクタンクに貯蔵されているインクを圧力室基板20内部に供給可能になっている。
【0039】
(層構成)
図3に、強誘電体薄膜素子の断面図を示す。図3に示すように、強誘電体薄膜素子100は、ノズル板10を備えた圧力室基板20の上に振動板30が積層され、この上に下部電極42、種Ti膜45、強誘電体薄膜43、上部電極44が順次積層されて構成されている。
【0040】
圧力室基板20としては、厚さ220μm程度のシリコン単結晶基板が好ましい。
【0041】
振動板30は、二酸化ケイ素膜、酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などか好適である。特に、圧力室基板20の上に形成される二酸化ケイ素(SiO)からなるSiO膜31と、当該SiO膜31の上に形成される酸化ジルコニウム(ZrO)からなるZrO膜32との積層からなることが好ましい。
【0042】
下部電極42は、イリジウムの単層膜で構成されるか、または、振動板30側からイリジウム層/白金層、白金層/イリジウム層、イリジウム層/白金層/イリジウム層といった積層構造を有していることが好ましい。または、イリジウムと白金の合金からなる膜としてもよい。
【0043】
下部電極42の上には、種Ti膜45を形成する。種Ti膜45を形成することにより、その上に成膜される強誘電体薄膜43の配向を制御することができる。種Ti膜45の膜厚は、好ましくは3nm〜10nmであり、より好ましくは5nmである。この種Ti膜は一様の厚みで形成するほかに、島状となっていてもよい。
【0044】
振動板30と下部電極42との間には、両者間の密着力を向上させるために、極薄のチタン薄膜やクロム薄膜等の適当なバッファ層を介在させてもよい。チタン薄膜の膜厚としては、10nm以上20nm未満が好適である。
【0045】
強誘電体薄膜43は、下部電極側の初期層431と、上部電極側の後期層432との積層からなる。初期層431および後期層432は、チタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO),マグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg,Nb)O)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)、又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)などからなることが好ましい。
特に、チタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)との二成分系や、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg,Nb)O)とジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)との三成分系からなることが好ましい。
【0046】
初期層431は後期層432に比べて、結晶密度が低く、格子定数aが大きく、または(100)面が膜厚方向に配向する配向率が低くなっている。
【0047】
初期層431の厚みは、後期層432の厚みより小さいことが好ましく、初期層431の厚みは強誘電体薄膜の全体の膜厚の半分以下、後期層の432の厚みは強誘電体薄膜の全体の膜厚の半分以上であることが好ましい。初期層と後期層とからなる強誘電体薄膜の全体の膜厚は0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0048】
上部電極44は、通常電極として用いることができる導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Pt、RuO2 、Ir、IrO2 等の単層膜又はPt/Ti、Pt/Ti/TiN、Pt/TiN/Pt、Ti/Pt/Ti、TiN/Pt/TiN、Pt/Ti/TiN/Ti、RuO2 /TiN、IrO2 /Ir、IrO2 /TiN等の2層以上の積層膜であってもよい。
【0049】
(印刷動作)
以下に、上記インクジェット記録ヘッドの印刷動作を説明する。制御回路から駆動信号が出力されると、供給機構が動作し用紙がヘッドによって印刷可能な位置まで搬送される。制御回路から吐出信号が供給されず圧電体素子の下部電極と上部電極との間に電圧が印加されていない場合、圧電体薄膜層には変化を生じない。吐出信号が供給されていない圧電体素子が設けられている圧力室には圧力変化が生じず、そのノズル穴からインク滴は吐出されない。
【0050】
一方、制御回路から吐出信号が供給され圧電体素子の下部電極と上部電極との間に一定電圧が印加された場合、圧電体薄膜層に変形を生じる。吐出信号が供給された圧電体素子が設けられている圧力室ではその振動板が大きくたわむ。このため圧力室内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル穴からインク滴が吐出される。ヘッド中で印刷させたい位置の圧電体素子に吐出信号を個別に供給することで、任意の文字や図形を印刷させることができる。
【0051】
(製造方法)
次に、図4および5を参照しながら、強誘電体薄膜素子の製造工程を説明する。
【0052】
振動板の成膜工程
まず、図4(A)に示すように、シリコンからなる圧力室基板20上に、熱酸化やCVD法等の成膜法を用いて、膜厚約1μmのSiO膜31を形成する。
【0053】
次に、図4(B)に示すように、SiO膜31の上に、膜厚400nm程度のZrO膜32を成膜する。ZrO膜32の成膜法としては、ジルコニウムをターゲットとした酸素ガスの導入による反応性スパッタリング法や、酸化ジルコニウムをターゲットとしたRFスパッタリング法や、あるいは、DCスパッタリング法でジルコニウムを成膜した後に熱酸化する方法などを用いる。
【0054】
下部電極の成膜工程
次いで、図4(C)に示すように、振動板の上に、下部電極42を形成する。下部電極42の成膜は、CVD法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法などを用いる。例えば、膜厚200nm程度の白金層を形成したり、あるいは、膜厚100nm程度の白金層を形成した後、この上に膜厚100nm程度のイリジウム層を形成する。
【0055】
種Ti膜の成膜工程
続いて、図4(D)に示すように、DCマグネトロンスパッタ法、CVD法、蒸着法等の成膜法を用いて、下部電極42の上に種Ti膜45を形成する。種Ti膜45の膜厚は、3nm〜10nmの範囲が好ましい。この種Ti膜は一様の厚みで形成するほかに、島状となっていてもよい。
【0056】
強誘電体薄膜の成膜工程
次に、図4(E)に示すように、ゾルゲル法やMOD法(Metal Organic Decomposition)などを用いて、種Ti膜45の上に強誘電体薄膜43を成膜する。ゾルゲル法は、金属の水酸化物の水和錯体(ゾル)を、脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物を成膜するというものである。ゾルゲル法を用いると、下部電極42上に設けられた種Ti膜45側から上方に向けて順にPZT結晶が成長していくため、配向性に優れたPZT膜を成膜することができる。
【0057】
まず、チタン、ジルコニウム、鉛、亜鉛などの金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシドもしくはブトキシドなどのアルコキシドまたはアセテート化合物を、酸などで加水分解して、ゾルを調整する。
【0058】
次いで、調整したゾルを種Ti膜45の上に塗布する。塗布に際しては、スピンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの方法を用いる。
【0059】
ゾルを塗布した後、これを一定温度下にて一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させる。乾燥温度は150℃以上200℃以下であることが好ましく、乾燥時間は5分以上15分以下であることが好ましい。より好ましくは、180℃にて10分乾燥させる。
【0060】
乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度にて一定時間脱脂する。脱脂の方法としては、基板全体をホットプレートに密着させ、ホットプレートからの熱が基板全体に熱伝導するようにして加熱する方法が好ましい。脱脂温度は300℃以上500℃以下であることが好ましい。500℃以下とすることにより、結晶化が開始してしまうのを防止することができ、300℃以上とすることにより、十分に脱脂することができる。脱脂時間は5分以上90分以下であることが好ましい。90分以下とすることにより、結晶化が開始してしまうのを防止することができ、5分以上とすることにより、十分に脱脂することができる。より好ましくは360℃以上400℃以下にて10分脱脂する。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解離し酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
【0061】
次に、これを焼成して、結晶化させて初期層431とする。焼成には、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置や拡散炉などを用いる。焼成温度は、550℃以上750℃以下であることが好ましい。550℃未満では、下部電極側の層の結晶化が十分図られず、一方、750℃より大きいと下部電極への鉛原子の拡散および下部電極の酸化による特性劣化が生じてしまう。
【0062】
上記のようにして、単層からなる初期層431を成膜する場合に限られず、必要に応じて、上記の塗布、乾燥、脱脂、焼成の工程を複数回繰り返して、複数層からなる初期層を成膜してもよい。あるいは、塗布、乾燥、脱脂の工程を複数回繰り返した後に焼成して初期層を成膜してもよい。
【0063】
さらに、初期層431の上に所望に調整したゾルを塗布し、上記同様に乾燥、脱脂、焼成の工程を適宜行い後期層432を成膜する。後期層432における焼成温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。700℃未満では、上部電極側の層の結晶化が十分図られず、強誘電体薄膜全体としての圧電特性を十分に確保できない一方、900℃より大きいと空気中への鉛原子の飛散による特性劣化が生じてしまう。あるいは、鉛原子が初期層を通して下部電極に拡散してしまう。また、初期層431の焼成温度との差が、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0064】
上記のようにして、単層からなる後期層432を成膜する場合に限られず、必要に応じて、上記の塗布、乾燥、脱脂、焼成の工程を複数回繰り返して、複数層からなる後期層を成膜してもよい。あるいは、塗布、乾燥、脱脂の工程を複数回繰り返した後に焼成して後期層を成膜してもよい。
上部電極の成膜工程
以上により形成された強誘電体薄膜43上に、図4(F)に示すように、上部電極44を形成する。例えば、イリジウムを100nmの膜厚となるようにDCスパッタ法により成膜する。
【0065】
エッチング工程
次に、図5(A)に示すように、上部電極44上にレジストをスピンコートし、圧力室が形成されるべき位置に合わせて露光・現像してパターニングする。残ったレジストをマスクとして上部電極44、強誘電体薄膜431、432、種Ti膜45および下部電極42をイオンミリングやドライエッチン法などでエッチングする。
【0066】
圧力室形成工程
続いて、図5(B)に示すように、圧力室が形成されるべき位置に合わせてエッチングマスクを施し、平行平板型反応性イオンエッチングなどの活性気体を用いたドライエッチングにより、予め定められた深さまで圧力室基板20をエッチングし、圧力室21を形成する。ドライエッチングされずに残った部分は側壁22となる。
【0067】
ノズル板貼り合わせ工程
最後に、図5(C)に示すように、接着剤を用いてノズル板10を圧力室基板20に貼り合わせる。この際には、各ノズル11が圧力室21の各々の空間に対応して配置されるよう位置合せする。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基板20を図示しない筐体に取り付け、インクジェット記録ヘッドを完成させる。
【0068】
【実施例】
まず、シリコンからなり厚み200μmの圧力室基板上に、熱酸化によって膜厚1μmのSiO膜を形成し、さらにその上に、反応性スパッタリング法によって膜厚400nmのZrO膜を形成した。次いで、CVD法によって膜厚100nmの白金層を成膜した後CVD法によって膜厚100nmのイリジウム層を成膜して、下部電極を形成した。続いて、DCマグネトロンスパッタ法によって、下部電極の上に膜厚5nmの種Ti膜を形成した。
【0069】
そして、PZT膜の出発原料として、PbTiO、PbZrOの混合溶液からなる2成分系のゾルを調整した。また、Pb(Mg,Nb)O、PbTiO、PbZrOの混合溶液からなる3成分系のゾルを別途調整した。
【0070】
この2成分系のゾルを1500rpm条件下にて種Ti膜の上に0.1μmの厚さにスピンコーティングした。次いで、これを400℃の温度環境下で脱脂してゲル化した。そして、このゲルを焼成温度650℃にて5分間の焼成を行い結晶化させた。
【0071】
以上の2成分系ゾルのスピンコーティング、ゲル化、脱脂、結晶化の工程を3回繰り返すことにより、3層の積層からなり、3層の膜厚の合計が0.2μmである強誘電体薄膜の初期層を得た。
【0072】
次に、上記3成分系のゾルを1500rpm条件下にて種Ti膜の上にスピンコーティングした。次いで、これを400℃の温度環境下で脱脂してゲル化した。そして、このゲルをRTA装置を用いて焼成温度800℃にて5分間の焼成を行い結晶化させた。
【0073】
以上の3成分系ゾルのスピンコーティング、ゲル化、結晶化の工程を8回繰り返すことにより、8層の積層からなり、8層の膜厚の合計が0.8μmである強誘電体薄膜の後期層を得た。
【0074】
次に、強誘電体薄膜の後期層の上に、DCスパッタ法を用いて、イリジウムを成膜し、膜厚100nmの上部電極を形成した。
【0075】
以上のようにして形成された強誘電体薄膜素子は、膜厚方向における結晶配向は100面優先配向となり、良好な圧電特性が得られた。また、強誘電体薄膜の格子定数は初期層では4.07Å、後期層では4.06Åであった。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、鉛原子の下部電極への拡散および下部電極の酸化を防止しつつ、特性の優れた強誘電体薄膜素子ならびにこれを用いたインクジェット記録ヘッドおよびインクジェットプリンタを得ることができる。
【0077】
特に、結晶化に高い焼成温度が必要とされる場合においても、鉛原子の下部電極への拡散および下部電極の酸化を防止しつつ、十分に結晶化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】 インクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】 強誘電体薄膜素子の断面図である。
【図4】 強誘電体薄膜素子の製造工程断面図である。
【図5】 強誘電体薄膜素子の製造工程断面図である。
【符号の説明】
10…ノズル板、11…ノズル穴、20…圧力室基板、30…振動板、31…SiO膜、32…ZrO膜、42…下部電極、43…強誘電体薄膜、431…初期層、432…後期層、44…上部電極、45…種Ti膜、100…強誘電体薄膜素子、1…インクジェット記録ヘッド、2…本体、3…トレイ、4…排出口、5…用紙、6…給紙機構、8…制御回路、600…モータ、601…ローラ、602…ローラ、9…操作ボタン

Claims (3)

  1. 下部電極の上に種Ti膜の下地を形成する工程と、当該種Ti膜の上に鉛原子を含む強誘電体材料のゾルを塗布した後に焼成する成膜工程を複数回行って強誘電体薄膜を形成する工程と、当該強誘電体薄膜の上に上部電極を形成する工程と、からなる強誘電体薄膜素子を製造する方法であって、
    下部電極側の層の成膜工程における焼成温度のほうが、上部電極側の層の成膜工程における焼成温度よりも低いことを特徴とする、強誘電体薄膜素子の製造方法。
  2. 下部電極側の層の成膜工程における焼成温度と、上部電極側の層の成膜工程における焼成温度との差が、100℃以上200℃以下であることを特徴とする、請求項1記載の強誘電体薄膜素子の製造方法。
  3. 最も下部電極側の層の成膜工程において、焼成を550℃以上750℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項1記載の強誘電体薄膜素子の製造方法。
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