JP3739676B2 - 合成樹脂製レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製レンズに関し、さらに詳しくは良好な光学的特性、染色性、耐衝撃性を有する、光重合が可能な組成物からなる合成樹脂製レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂製レンズの材料としては、眼鏡レンズの初期の代表的な例として、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを原料とする「CR−39」と呼ばれる材料がある。この材料は、屈折率が1.50程度と低いために、レンズ全体が肉厚となり、眼鏡用レンズとしては満足できるものではなかった。そのため、レンズの薄肉化を実現するために、高屈折率化の研究が盛んに行われた。その結果、例えばチオールとイソシアネートを重合して得られるウレタン樹脂製材料(特開平2−270859号公報)などでは、屈折率1.60以上が達成され、さらには、エピスルフィド化合物を含有するエピスルフィド樹脂製材料(特開平9−71580号公報)などでは、屈折率1.70以上が達成されるなど、レンズの薄肉化が急速に加速された。
【0003】
しかしながら、チオールとイソシアネートのウレタン重合による材料は、ウレタン反応によって得られる合成樹脂であり、高屈折率、高アッベ数かつ耐衝撃性に優れたレンズを得ることができるが、2液型で取扱いが不便である、レンズ加工時に臭いが発生する、成型性が悪い(合格率が低い)等の問題がある。また、エピスルフィド化合物を含有する材料では、臭いや成型性だけでなく、耐衝撃性やコストなどにも問題を有するというのが現状である。さらに、これらの高屈折率、および超高屈折率樹脂は、ウレタン反応、およびエピスルフィド開環反応によって得られる合成樹脂であり、光重合が困難であるために、ともに長い熱硬化時間を必要とする、熱重合による重合方法を必要とした。したがって、眼鏡用レンズの製造では、重合時間が10時間から20時間程度と長いために、レンズ製造時に使用する型、つまりガラス製モールドを占有する時間も長かった。したがって、レンズを大量生産する場合には、非常に多くのガラス製モールドと大きな重合設備を必要とするために、設備投資が非常に大きくなるという欠点を有していた。実際に、ウレタン反応やエピスルフィド開環反応による、高屈折率樹脂や超高屈折率樹脂が実用化されているが、いずれも熱重合方法を採用しているため、大きな設備投資を必要としているのが現状である。
【0004】
一方、光重合を用いてレンズを製造する方法は、光重合が熱重合に対して重合時間が短いため、レンズ製造時間の短縮が可能となるので、短時間でレンズを大量生産するには有効な重合方法である。眼鏡用レンズの製造でも、重合時間が数分程度となるため、使用するガラス製モールドの占有時間が非常に短くなる。したがって、熱重合によって一枚のレンズを製造する場合と同じ時間で、光重合ではレンズ製造の操作を何回も繰り返すことができる。つまり、レンズを大量生産する場合にも、熱重合と比較すると、多くのガラス製モールドや大きな重合設備を必要としないため、設備投資が大きくならないという特徴がある。
【0005】
光重合が可能な高屈折率材料としては、例えばチオールとビニルモノマーの予備重合生成物(プレポリマー)を調製して得られる材料(特開平4−57831号公報)や、新規の硫黄化合物を用いた材料(特開平8−183816号公報)、多官能チオメタクリレートと他の重合性モノマーを必須成分とした材料(特開平1−26613号公報)、多官能チオメタクリレートに多官能チオール等を必須成分とした材料(特開平6−199964号公報、特開平7−82376号公報、特開平9−302040号公報、特開平9−324023号公報)などが提案されている。これらの材料は、熱重合だけでなく光重合も可能な高屈折率材料であり、実際に、これらの中には屈折率1.60以上を達成しているものもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、眼鏡用レンズの材料としては、光重合を採用した光硬化性樹脂製レンズは、低屈折率のもののみが一部に実用化されているにすぎない。すなわち、特開平4−57831号公報のチオールとビニルモノマーの予備重合生成物を調製して得られる材料は、高屈折率の材料を得ることができるが、光重合に際して煩雑な予備重合工程を要するために、レンズ製造時間の短縮は達成されないという問題がある。特開平8−183816号公報の新規の硫黄化合物を用いた材料は、高屈折率の材料を得ることができるが、新規物質ゆえに大量生産技術が確立されておらず、そのうえコストが高い、比重が高い、耐衝撃性、染色性、アッベ数、透明性等の光学レンズに必要な特性が十分に得られないなど、非常に多くの問題を有している。特開平1−26613号公報の多官能チオメタクリレートと他の重合性モノマーを必須成分とした材料は、高屈折率で高い耐熱性を有する材料を得ることができる。しかしながら、多官能のモノマーは、架橋効果が大きく延性が不足するため、その分子構造や組み合わせるモノマーによって、得られる樹脂が硬くてもろくなるという危険性を有している。すなわち、特開平1−26613号公報では、眼鏡レンズの分野では重要な特性である、耐衝撃性や染色性についてはまったく考慮されていない。特開平6−199964号公報、特開平7−82376号公報、特開平9−302040号公報、特開平9−324023号公報などの多官能チオメタクリレートに多官能チオール等を組み合わせた材料は、架橋効果の大きい多官能チオメタクリレートに多官能チオール等を組み合わせることにより、適度の延性を付与して硬くて脆くなることを防ぎ、かつ硫黄含有率を高くできるために高屈折率と高アッベ数を同時に達成できる。しかしながら、これらの材料も高屈折率レンズとして実用には至っていない。その理由は、多官能チオメタクリレートと多官能チオールを組み合わせた材料は、その硫黄含有率の高さゆえに比重が高くなるという欠点を有し、多官能チオメタクリレートの分子構造により、多官能チオールと単独で組み合わせた場合には架橋効果が不足するために、染色性と耐衝撃性を維持した状態では、耐熱性が不足するという欠点も有している。前述の特開平7−82376号公報では、多官能チオメタクリレートと多官能チオールに、他の単量体、たとえばスチレンやジビニルベンゼンなどを組み合わせる方法を開示している。この方法であれば、スチレンやジビニルベンゼンなどの芳香族系単量体を組み合わせることで低比重化が可能である。しかしながら、スチレンやジビニルベンゼンなどの芳香族系単量体を組み合わせることは、低比重化は達成できるが、アッベ数が大幅に低下し、また、ビニル系単量体を含むことで光重合が非常に困難となる欠点がある。特開平9−324023号公報も、煩雑なチオウレタンのプレポリマー製造工程が必要となるので、レンズ製造工程は複雑になるという欠点がある。特開平9−302040号公報では、多官能チオメタクリレートと多官能チオール、および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を必須成分とする方法を開示している。この方法は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることで、耐熱性や耐衝撃性、染色性を同時に維持することを目的としている。しかしながら、これらの物性のバランスがとれるような混合比では、多官能(メタ)アクリレートは一般的に高粘度であるため、レンズモノマー混合物も高粘度となり、作業効率や収率(合格率)が悪くなるという問題を有している。さらに、低比重化が達成されない、モノマーの安定性やレンズの形状安定性(常温での柔軟性)が悪いなどの問題も、実用化に至らない原因である。
【0007】
多官能チオメタクリレートと多官能チオールに、適当な重合性単量体を組み合わせる方法において、該単量体に適当な2官能(メタ)アクリル化合物を選択することで、上記の課題は解決できる。しかしながら、低比重化は図れず、トータルバランスに欠け、実用面では満足するものではない。
【0008】
以上のように、これまでの高屈折率材料は、実用化されているものでも、取扱いや成型性、光重合が困難であるなどの問題があった。また、光重合が可能な高屈折率材料は、比重が高い、取扱いや光学的特性、耐衝撃性、染色性など光学レンズに必要な特性が十分に得られないなどの課題を有し、実用化には至っていない。
【0009】
したがって本発明の目的は、耐衝撃性や染色性などの光学レンズとして必要な特性を十分に備えるだけでなく、高屈折率、高アッベ数、低比重を同時に達成し、なおかつ光重合も可能であるような、光学レンズ材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定構造の多官能チオメタクリレートと多官能チオールに、特定構造の多官能(メタ)アクリレートを組み合わせることにより、耐衝撃性や染色性などの光学レンズとして必要な特性を損なうことなしに、低比重化が達成できることを発見した。その結果、高屈折率と高アッベ数を有するだけでなく、耐衝撃性や染色性などの光学レンズとして必要な特性を備えたうえに、低比重を同時に達成し、なおかつ熱重合だけでなく光重合も可能であり、取扱いも容易であるような、非常に優れた光学レンズ材料の開発に成功し、ここに本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記構造式(1)で表される、ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィド30〜70重量%、2官能以上のチオール15〜40重量%、下記2官能(メタ)アクリル化合物[A]15〜40重量%、および、これらと共重合可能な単量体0〜75重量%からなる組成物の共重合体であって、屈折率1.58以上かつアッベ数35以上で比重1.35以下であることを特徴とする、合成樹脂製レンズである。
CH2=C(CH3)COSCH2CH2SCH2CH2SCOC(CH3)=CH2
構造式(1)
2官能(メタ)アクリル化合物[A]: 2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパン及び(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選択された少なくとも1種の化合物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の合成樹脂製レンズは、構造式(1)で表される、ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィド30〜70重量%、2官能以上のチオール15〜40重量%、2官能(メタ)アクリル化合物[A]15〜40重量%、および、これらと共重合可能な単量体0〜75重量%からなる組成物より得られる共重合体である。
【0013】
本発明ではビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドは30〜70重量%含有する。ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドが20重量%未満の場合には、本発明の特徴である高屈折率を達成することが困難となり、80重量%を越える場合には、光学レンズとして十分な耐衝撃性、染色性を得ることが困難となる。
【0014】
また、本発明では2官能以上のチオールは15〜40重量%含有する。2官能以上のチオールが適量ならば、適度な延性を付与できるが、2官能以上のチオールが5重量%未満、あるいは50重量%を越える場合には、適度な延性を付与できなくなり、その結果、光学レンズとして十分な耐衝撃性や染色性、あるいは耐熱性を維持することが困難となる。
【0015】
このときの2官能以上のチオールの例としては、エチレングリコールビスチオグリコレート(EGTG)、チオジエタンチオール(DMDS)などの2官能硫黄化合物、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)などの3官能硫黄化合物、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコネート(PETG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)などの4官能硫黄化合物、その他が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このときの2官能以上のチオールは、必ずしも1種類である必要はなく、2種類、あるいはそれ以上を組み合わせることも可能である。
【0016】
また、本発明では2官能(メタ)アクリル化合物[A]は15〜40重量%含有する。2官能(メタ)アクリル化合物が5重量%未満の場合には、本発明の特徴である低比重化を達成できないだけでなく、耐衝撃性や耐熱性を同時に維持することが困難となり、50重量%を越える場合には、本発明の特徴である高屈折率を達成できなくなる。
【0017】
このときの2官能(メタ)アクリル化合物[A]は、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパンである。このときの2官能(メタ)アクリル化合物は、必ずしも1種類である必要はなく、2種類、あるいはそれ以上を組み合わせることも可能である。
【0018】
本発明で使用する2官能(メタ)アクリル化合物は、本発明の特徴である低比重の達成や、耐衝撃性と耐熱性を同時に維持するためには、低比重かつ架橋効果の高い前述の成分を用いることが好ましい。特に、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパンの導入は低比重化の達成に非常に効果的であり、また、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの導入は耐衝撃性や耐熱性の発揮には非常に効果的である。たとえば、低比重と耐衝撃性や耐熱性の維持を同時に達成するには、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパンと、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの両成分を、組み合わせて使用することが最も好ましい。ただし、このとき使用する2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパンと(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートは、EO付加数が多い場合には耐熱性が不足するため、EO付加数は少ない方が好ましい。2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパンで10以下、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートで4以下が好ましい。
【0019】
また、本発明の光硬化性樹脂は、得られる樹脂にさまざまな特性を付与するために、上記成分の他に、それらの成分と共重合可能な単量体を必要により加えることができる。しかしながら、75重量%を越えて加えた場合には、本発明の特徴である、高屈折率、高アッベ数を達成することが困難となるため、0〜75重量%の範囲が好ましい。
【0020】
このときの単量体は、上記の必須成分と共重合可能であれば、どのようなものでもかまわない。例としては、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−フェニルフェノールポリエトキシアクリレート(OPP)などの単官能アクリル化合物、テトラメチロールメタントリアクリレート(TMM)などの多官能アクリル化合物、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ベンジルメタクリレート(BZMA)などの単官能メタクリル化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)などの多官能メタクリル化合物、ジビニルベンゼン(DVB)、スチレン(St)、α−メチルスチレンダイマー(MSD)などのビニル化合物、安息香酸アリル(AKA)、フタル酸ジアリル(DAP)、などのアリルエステル、その他が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、このときの単量体は、必ずしも1種類である必要はなく、2種類、あるいはそれ以上を組み合わせることも可能である。しかしながら、本発明の特徴である、高屈折率と高アッベ数を維持するためには、複屈折が大きくて、アッベ数を低下させやすいような、環状構造を含んだ単量体はあまり好ましくない。さらに、耐衝撃性や染色性などの、光学レンズとして必要な特性を維持するためには、機械強度を極端に低下させるような、単官能の単量体もあまり好ましくない。つまり、非環状構造かつ2官能以上の単量体がより好ましく、環状構造、単官能の単量体を採用する場合には、その使用量には注意を有する。
【0021】
本発明の合成樹脂製レンズは、以上のようにして得られる組成物をラジカル重合することにより得られるが、前記各成分の比率を適当に組み合わせることにより、組成物の粘度を十分に低くして、流動性が十分に高い状態にすることが可能である。したがって、例えば板状、レンズ状、円筒状などの用途に応じて設計された注型容器内において、一括して実行することが可能であり、容易かつ低コストで製造することができる。
【0022】
ラジカル重合の方法については、従来から公知の方法を採用することができる。その例としては、光増感剤存在下に紫外線照射などにより光重合する方法、ラジカル重合開始剤存在下に加熱重合する方法、電子線照射により重合する方法などを挙げることができるが、重合時間、設備投資などを総合的に考えると、短時間での重合が可能であり、なおかつ比較的簡易な設備で重合が可能である、紫外線照射により光重合する方法が最も好ましい。
【0023】
光増感剤存在下に紫外線照射により光重合する方法は、装置や取扱いが比較的簡便であり、硬化速度が非常に速く、重合時間の短縮が可能である。したがって、短時間でより多くの重合体が得られるため、低コスト、高効率で重合体が得られるという、非常に優れた重合方法である。
【0024】
このとき使用できる光増感剤の例としては、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、ベンジルジメチルケタール、チオキサン、2−クロロチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
紫外線照射に使用するランプは、ランプの発する光の有効波長により、有効波長が250〜350のDeep−UVランプ、有効波長が400〜500のキセノンランプ、有効波長が300〜400のメタルハライドランプなどの種類がある。本発明において、ランプの種類はとくに限定されるものではないが、本発明の構成成分を、より短時間で効率的にラジカル重合するには、有効波長が300〜400nmのメタルハライドランプを使用することが最も好ましい。
【0026】
また、紫外線の照射光量が少ない場合には、ラジカル重合が不十分となるため、得られる樹脂が柔らかくて脆くなる。紫外線の照射光量が多すぎる場合には、紫外線による樹脂の劣化が生じる。したがって、紫外線の照射に際しては、適度な照射光量を維持する必要がある。具体的には、360nmにおいて積算光量100〜100,000mj/cm2の範囲が好ましく、1,000〜10,000mj/cm2の範囲が最も好ましい。
【0027】
ラジカル重合開始剤存在下に加熱重合する方法は、最も一般的な方法であり、装置や取扱いも簡便であるが、硬化速度が遅いという欠点がある。
【0028】
電子線照射により重合する方法は、硬化速度が速いだけでなく、触媒や光増感剤の不存在下でも重合が可能なため、共重合体への不純物の混入を少なくできるという特徴があるが、装置が非常に高価であるという欠点がある。
【0029】
また、このときの組成物には、必要に応じて着色剤、熱安定剤、その他の補助資材をあらかじめ含有させておくことが可能である。さらに、得られた共重合体の表面に、ハードコート剤、無反射コート、その他の表面コートを施すことも可能である。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂は、以上のようにして得られる共重合体であるということに特徴を有し、したがって、注型重合法以外にも、板材その他の共重合体を得てから削り出す方法によっても、製造することが可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた諸物性の評価方法は以下のとおりである。
【0032】
屈折率
10mm×20mm×3mmの試験片を作成し、アタゴ社製「DR−M2」を用い、接触液にα−ブロモナフタリンを使用して、室温(20℃)における屈折率を測定した。
【0033】
アッベ数
上記の屈折率測定と同様の測定装置、測定方法によりアッベ数を測定した。
【0034】
比重
10mm×20mm×3mmの試験片を作成し、メトラートレド社製「SGM−6」を用いて比重を測定した。
【0035】
耐衝撃性
直径78mm、曲率半径0.1m、中心厚2mmの試験用サンプルを10枚作製し、これに重さ16.2g(直径10/16インチ)の鋼球を1.27mの高さから落下させ、FDA落球衝撃強さの規格に従って、10枚とも割れなかったものを良好とし、1枚でも割れたものを不良とした。
【0036】
染色性
純水1000mlに、服部セイコー社製のセイコープラックスブラウン、および助剤をそれぞれ1g混合することにより染色液を作成し、得られたレンズをその染色液に92℃で10分間浸すことにより染色を行い、島津製作所社製の紫外、可視分光光度計「UV−2200」を用いて全光線透過率を測定して40%以下のものを良好とし、40%を越えるものを不良とした。
【0037】
透明性
中心厚2.0mmの平板を作成し、スガ試験機社製「HGM−2DP」を用いてヘーズを測定し、ヘーズ0.3以下のものを良好とし、0.3を越えるものを不良とした。
【0038】
(実施例1)
ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィド(TES)60g、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)20g、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(4G)10g、ビス(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニルプロパン(BPE200)10gを200mlビーカーに測り取り、光重合開始剤のIRGACURE184(日本チバガイギー(株))を1000ppm加えて十分に撹拌した後に、2枚のガラス板とガスケットで構成された注型鋳型に注入し、紫外線照射装置にて、照射線量800mw/cm2、照射距離50cm、照射時間10minの条件で、光重合を行った。その後に注型鋳型から共重合体を取り出して完成品を得た。
【0039】
得られた共重合体は、表1記載のような物性値であり、屈折率1.58以上、アッベ数35以上、比重1.35以下かつ、耐衝撃性、染色性、透明性ともに良好な成形品が得られた。
【0040】
(実施例2〜6)
表1の実施例2〜6に示したような組成比にて重合組成物を混合し、光重合開始剤のIRGACURE184(日本チバガイギー(株))を1000ppm加えて十分に撹拌した後に、2枚のガラス板とガスケットで構成された注型鋳型に注入し、紫外線照射装置にて、照射線量800mw/cm2、照射距離50cm、照射時間10minの条件で、光重合を行った。その後に注型鋳型から共重合体を取り出して完成品を得た。
【0041】
得られた共重合体は、表1記載のような物性値であり、屈折率1.58以上、アッベ数35以上、比重1.35以下かつ、耐衝撃性、染色性、透明性ともに良好な成形品が得られた。
【0042】
(比較例1)
ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドが20重量%未満の条件として、表1の比較例1のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な熱重合を行った。その結果として得られた樹脂は、屈折率が1.58未満であり、屈折率に問題が確認された。
【0043】
(比較例2)
ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドが80重量%を越える条件として、表1の比較例2のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、耐衝撃性と染色性に問題が確認された。
【0044】
(比較例3)
2官能以上のチオールが50重量%を越える条件として、表1の比較例3のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、室温でも柔らかいほど機械的強度が不足しており、屈折率その他の物性を測定することも不可能であった。
【0045】
(比較例4)
ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィド、2官能以上のチオール、2官能(メタ)アクリル化合物が合計25重量%未満で、それらと共重合可能な単量体が75重量%を越える条件として、表1の比較例4のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、屈折率が1.58未満であり、屈折率に問題が確認されただけでなく、耐衝撃性、染色性にも問題が確認された。
【0046】
(比較例5)
2官能以上のチオールが5重量%未満の条件として、表1の比較例5のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、屈折率が1.58未満であり、屈折率に問題が確認されただけでなく、耐衝撃性、染色性にも問題が確認された。
【0047】
(比較例6)
ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドと環状構造を有する重合性単量体のみを使用した例として、表1の比較例6のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、アッベ数が35以下であるだけでなく、耐衝撃性と染色性にも問題が確認された。
【0048】
(比較例7)
2官能(メタ)アクリル化合物が合計5重量%未満の例として、ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドと2官能以上のチオールのみを使用して、表1の比較例7のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、比重が1.35を越えるだけでなく、室温でも若干柔らかいほど機械的強度が不足しており、耐衝撃性にも問題が確認された。
【0049】
(比較例8)
2官能(メタ)アクリル化合物が合計5重量%未満の例として、ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィドと2官能以上のチオールのみを使用して、表1の比較例8のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、比重が1.35を越えるだけでなく、染色性にも問題が確認された。
【0050】
(比較例9)
2官能(メタ)アクリル化合物が合計50重量%を越える例として、表1の比較例9のような比率にて組成物を調製し、上記実施例と同様な光重合を行った。その結果として得られた樹脂は、屈折率が1.58未満であり、屈折率に問題が確認された。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明は、高屈折率と高アッベ数、低比重を同時に達成するだけでなく、耐衝撃性や染色性などの光学レンズとして必要な特性を十分に備えるという、非常に優れた合成樹脂製レンズを、光重合法などの簡素化した工程により、短時間で容易に大量生産できるというものである。
Claims (1)
- 下記構造式(1)で表される、ビス−2−メタクリロイルチオエチルスルフィド30〜70重量%、2官能以上のチオール15〜40重量%、下記2官能(メタ)アクリル化合物[A]15〜40重量%、および、これらと共重合可能な単量体0〜75重量%からなる組成物の共重合体であって、屈折率1.58以上かつアッベ数35以上で比重1.35以下であることを特徴とする、合成樹脂製レンズ。
CH2=C(CH3)COSCH2CH2SCH2CH2SCOC(CH3)=CH2
構造式(1)
2官能(メタ)アクリル化合物[A]: 2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ・(ポリ)エトキシ)フェニル)プロパン及び(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選択された少なくとも1種の化合物である。
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