JP3736991B2 - 能動型防振支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動体の荷重を受ける弾性体と、弾性体が少なくとも壁面の一部を構成する液室と、液室の容積を変化させる可動部材と、可動部材の反液室側に接続されたアーマチュアをコイルが発生する電磁力で反液室側に吸引して駆動するアクチュエータとを備えた能動型防振支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる能動型防振支持装置は、特開平10−110771号公報により公知である。
【0003】
この能動型防振支持装置は、液室の容積を変化させる可動部材が、外周部をケースに固定された円板状の板ばねで構成されており、アクチュエータのコイルにより駆動されるアーマチュアは特別の軸受けを持たずに、可動部材の中央部下面に直接固定されて支持されている。そしてコイルの励磁によりアーマチュアを吸引して、このアーマチュアと一体に結合された前記可動部材を軸線に沿う方向に往復駆動するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の能動型防振支持装置は、液室の容積を変化させる可動部材が液室内の液体から受ける偏荷重によって前記軸線から偏倚すると、アーマチュアが軸受けで支持されていないために、可動部材と一体のアーマチュアも前記軸線に対して傾いてしまう。従って、アーマチュアが傾いてもヨークに接触しないようにエアギャップを大きく設定することが必要になり、結果として磁気回路の特性が悪化してしまう。この問題を解消するには、コイルを大型化して発生可能な磁力を増加させれば良いが、このようにするとコイルの消費電力が増加してしまう。
【0005】
そこで、アーマチュアが前記軸線に沿って移動するようにベアリングで支持し、アーマチュアの傾きによるヨークとの接触を回避することが考えられるが、このようにすると、可動部材から受ける偏荷重でアーマチュアとベアリングとの間にこじりが発生し、ベアリングが早期に摩耗してアクチュエータの耐久性が低下するという問題が発生する。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、能動型防振支持装置において、可動部材を駆動するアクチュエータの耐久性を低下させることなく消費電力の低減を図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、振動体の荷重を受ける弾性体と、弾性体が少なくとも壁面の一部を構成する液室と、液室の容積を変化させる可動部材と、可動部材の反液室側に接続されたアーマチュアをコイルが発生する電磁力で反液室側に吸引して駆動するアクチュエータとを備えた能動型防振支持装置において、アーマチュアをベアリングによって支持するとともに、可動部材と一体の連結ロッドの先端がアーマチュアを緩く貫通して該アーマチュアに係止され、アーマチュアに対して可動部材を液室側に付勢するばねの弾発力で前記係止が保持されることを特徴とする能動型防振支持装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、アクチュエータのアーマチュアをベアリングによって支持したので、アーマチュアの振れを防止してアクチュエータのエアギャップを最適の大きさに設定することが可能になり、コイルを小型化して消費電力を削減することができる。しかも可動部材と一体の連結ロッドが可動部材の反液室側に接続されたアーマチュアを緩く貫通した先端を、アーマチュアに対して可動部材を液室側に付勢するばねの弾発力でアーマチュアに係止したので、コイルがアマチュアを反液室側に吸引して駆動する際には、前記係止によってアマチュアと連結ロッドとを確実に一体化することができ、また液室から受ける荷重で可動部材に振れが発生しても、ばねが変形することで前記振れが直接アーマチュアに伝達されないようにしてベアリングの偏摩耗を防止し、アクチュエータの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0009】
尚、実施例のエンジンEは本発明の振動体に対応し、実施例の第1弾性体14は本発明の弾性体に対応し、実施例の第1液室24は本発明の液室に対応し、実施例の皿ばね42は本発明のばねに対応する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すもので、図1は能動型防振支持装置の縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3−3線断面図、図4は図1の要部拡大図である。
【0012】
図1〜図4に示す能動型防振支持装置Mは、自動車のエンジンEを車体フレームFに弾性的に支持するためのもので、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサS1 と、該能動型防振支持装置Mに入力される荷重を検出する荷重センサS2 と、エンジンEに作用する加速度を検出する加速度センサS3 とが接続された電子制御ユニットUによって制御される。
【0013】
能動型防振支持装置Mは軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、エンジンEに結合される板状の取付ブラケット11に溶接した内筒12と、この内筒12の外周に同軸に配置された外筒13とを備えており、内筒12および外筒13には厚肉のゴムで形成した第1弾性体14の上端および下端がそれぞれが加硫接着により接合される。中央に開口152 を有する円板状の第1オリフィス形成部材15と、上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第2オリフィス形成部材16と、同じく上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第3オリフィス形成部材17とが溶接により一体化されており、第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16の外周部が重ね合わされて前記外筒13の下部に設けたカシメ固定部131 に固定される。
【0014】
膜状のゴムで形成された第2弾性体18の外周が第3オリフィス形成部材17の内周に加硫接着により固定されており、この第2弾性体18の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材19が、軸線L上に上下動可能に配置された可動部材20に圧入により固定される。外筒13のカシメ固定部131 に固定されたリング部材21にダイヤフラム22の外周が加硫接着により固定されており、このダイヤフラム22の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材23が前記可動部材20に圧入により固定される。
【0015】
而して、第1弾性体14および第2弾性体18間に液体が封入された第1液室24が区画され、第2弾性体18およびダイヤフラム22間に液体が封入された第2液室25が区画される。そして第1液室24および第2液室25は、第1〜第3オリフィス形成部材15,16,17により形成された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0016】
上部オリフィス26は第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁261 の一側において第1オリフィス形成部材15に連通孔151 が形成され、前記隔壁261 の他側において第2オリフィス形成部材16に連通孔161 が形成される。従って、上部オリフィス26は、第1オリフィス形成部材15の連通孔151 から第2オリフィス形成部材16の連通孔161 までの略1周の範囲に亘って形成される(図2参照)。
【0017】
下部オリフィス27は第2オリフィス形成部材16および第3オリフィス形成部材17間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁271 の一側において第2オリフィス形成部材16に前記連通孔161 が形成され、前記隔壁271 の他側において第3オリフィス形成部材17に連通孔171 が形成される。従って、下部オリフィス27は、第2オリフィス形成部材16の連通孔161 から第3オリフィス形成部材17の連通孔171 までの略1周の範囲に亘って形成される(図3参照)。
【0018】
以上のことから、第1液室24および第2液室25は、直列に接続された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0019】
外筒13のカシメ固定部131 には、能動型防振支持装置Mを車体フレームFに固定するための環状の取付ブラケット28が固定されており、この取付ブラケット28の下面に前記可動部材20を駆動するためのアクチュエータ29を支持するアクチュエータ支持部材30が溶接される。
【0020】
アクチュエータ支持部材30にはヨーク32が固定されており、ボビン33に巻き付けられたコイル34が前記ヨーク32の内部に形成された空間に収納されてスプリングワッシャ35で固定される。環状のコイル34の内周に嵌合するヨーク32の筒状部321 にベアリング36が下方から嵌合し、ネジ蓋37により固定される。コイル34の上面に対向する円板状のアーマチュア38の中心から下方に延びる筒状の軸部381 が、前記ベアリング36に上下摺動自在に支持される。
【0021】
アーマチュア38の軸部381 の上部に連結ロッド39が隙間αを存して緩く嵌合しており、この連結ロッド39を下方から上方に貫通するボルト40が前記可動部材20に締結される。ボルト40の頭部401 はベアリング36の底面との間に配置したコイルばね41で上向きに付勢され、軸部381 の内周面に形成した段部382 に当接する。そして連結ロッド39に形成した段部391 と軸部381 の上面との間に皿ばね42が配置される。従って、可動部材20と一体の連結ロッド39は、コイルばね41および皿ばね42の弾発力でアーマチュア29に連結され、図4に矢印で示す偏荷重が作用すると、軸線Lから外れるように首を振ることができる。
【0022】
アクチュエータ29のコイル34が消磁状態にあるときのアーマチュア38には、コイルばね41の弾発力がボルト40の頭部401 を介して上向きに作用するとともに、液体の圧力および第2弾性体18の弾発力が下向きに作用しており、それら上下方向の力が釣り合う中立位置に停止している。この状態で、ヨーク32の上面開口に形成された円錐状のストッパ面322 と、それに対向するようにアーマチュア38の外周に形成された円錐状のストッパ面383 との間にエアギャップβが形成される。
【0023】
而して、自動車の走行中に低周波数のエンジンシェイク振動が発生したとき、エンジンEから入力される荷重で第1弾性体14が変形して第1液室24の容積が変化すると、上部オリフィス26および下部オリフィス27を介して接続された第1液室24および第2液室25間で液体が行き来する。第1液室24の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第2液室25の容積が縮小・拡大するが、この第2液室25の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、上部オリフィス26および下部オリフィス27の形状および寸法、並びに第1弾性体14のばね定数は前記エンジンシェイク振動の周波数領域で高ばね定数および高減衰力を示すように設定されているため、エンジンEから車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
【0024】
尚、上記エンジンシェイク振動の周波数領域では、アクチュエータ29は非作動状態に保たれる。
【0025】
前記エンジンシェイク振動よりも周波数の高い振動、即ちエンジンEのクランクシャフトの回転に起因するアイドル振動やこもり音振動が発生した場合、第1液室24および第2液室25を接続する上部オリフィス26および下部オリフィス27内の液体はスティック状態になって防振機能を発揮できなくなるため、アクチュエータ29を駆動して防振機能を発揮させる。
【0026】
電子制御ユニットUはエンジン回転数センサS1 、荷重センサS2 および加速度センサS3 からの信号に基づいてアクチュエータ29のコイル34に対する通電を制御する。具体的には、振動によってエンジンEが下方に偏倚して第1液室24の容積が減少して液圧が増加するときには、コイル34を励磁してアーマチュア38を吸引する。その結果、アーマチュア38はコイルばね41を圧縮しながら可動部材20と共に下方に移動し、可動部材20に内周を接続された第2弾性体18を下方に変形させる。これにより、第1液室24の容積が増加して液圧の増加を抑制するため、能動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレームFへの下向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を発生する。
【0027】
逆に振動によってエンジンEが上方に偏倚して第1液室24の容積が増加して液圧が減少するときには、コイル34を消磁してアーマチュア38を吸引を解除する。その結果、アーマチュア38はコイルばね41の弾発力で可動部材20と共に上方に移動し、可動部材20に内周を接続された第2弾性体18を上方に変形させる。これにより、第1液室24の容積が減少して液圧の減少を抑制するため、能動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレームFへの上向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を発生する。
【0028】
さて、アクチュエータ29の作動中に上下方向に往復移動するアーマチュア38は、その軸部381 がヨーク32に固定したベアリング36によって摺動自在に支持されるため、左右方向に振れることなく軸線Lに沿う正しい姿勢に保持される。従ってアーマチュア38とヨーク2とのエアギャップβを小さく設定することが可能になり、コイル34を必要最小限に小型化して消費電力を節減することができる。
【0029】
また可動部材20が上下方向に往復移動する際に、第2弾性体18やダイヤフラム22が液体から横方向の偏荷重を受けても、第2弾性体18やダイヤフラム22を支持する可動部材20と一体の連結ロッド39と、アーマチュア38の軸部381 との間に隙間αが形成されているため、連結ロッド39はコイルばね41および皿ばね42を変形させながら図4の矢印方向に首を振ることが可能となる。これにより、可動部材20の振れがアーマチュア38に直接伝達されなくなり、アーマチュア38の軸部381 を支持するベアリング36の摩耗を防止してアクチュエータ29の耐久性および信頼性を高めることができる。
【0030】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、実施例では自動車のエンジンEを支持する能動型防振支持装置Mを例示したが、本発明の能動型防振支持装置は工作機械等の他の振動体の支持に適用することができる。また能動型防振支持装置Mによってエンジンシェイク領域の振動を低減する必要がない場合には、第2液室25、上部オリフィス26、下部オリフィス27およびダイヤフラム22は省略可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、アクチュエータのアーマチュアをベアリングによって支持したので、アーマチュアの振れを防止してアクチュエータのエアギャップを最適の大きさに設定することが可能になり、コイルを小型化して消費電力を削減することができる。しかも可動部材と一体の連結ロッドが可動部材の反液室側に接続されたアーマチュアを緩く貫通した先端を、アーマチュアに対して可動部材を液室側に付勢するばねの弾発力でアーマチュアに係止したので、コイルがアマチュアを反液室側に吸引して駆動する際には、前記係止によってアマチュアと連結ロッドとを確実に一体化することができ、また液室から受ける荷重で可動部材に振れが発生しても、ばねが変形することで前記振れが直接アーマチュアに伝達されないようにしてベアリングの偏摩耗を防止し、アクチュエータの耐久性および信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 能動型防振支持装置の縦断面図
【図2】 図1の2−2線断面図
【図3】 図1の3−3線断面図
【図4】 図1の要部拡大図
【符号の説明】
E エンジン(振動体)
14 第1弾性体(弾性体)
20 可動部材
24 第1液室(液室)
29 アクチュエータ
34 コイル
36 ベアリング
38 アーマチュア
42 皿ばね(ばね)
Claims (1)
- 振動体(E)の荷重を受ける弾性体(14)と、
弾性体(14)が少なくとも壁面の一部を構成する液室(24)と、
液室(24)の容積を変化させる可動部材(20)と、
可動部材(20)の反液室(24)側に接続されたアーマチュア(38)をコイル(34)が発生する電磁力で反液室(24)側に吸引して駆動するアクチュエータ(29)と、
を備えた能動型防振支持装置において、
アーマチュア(38)をベアリング(36)によって支持するとともに、可動部材(20)と一体の連結ロッド(39)の先端がアーマチュア(38)を緩く貫通して該アーマチュア(38)に係止され、アーマチュア(38)に対して可動部材(20)を液室(24)側に付勢するばね(42)の弾発力で前記係止が保持されることを特徴とする能動型防振支持装置。
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