JP3733651B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の駆動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の駆動力制御技術として、従来、例えば特開昭64−60463号公報(文献1)に記載された駆動力制御装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
典型的な駆動力制御装置は、駆動輪の回転数と従動輪を基にして設定する目標回転数の回転数の違いに応じて駆動輪の駆動トルクを制御することができる。図9は、その駆動力制御の作動内容の基本を示しており、駆動力制御が行われる場合の車輪速とトルクダウン量の様子が表されている。図示のように、ドライバーのアクセルペダル踏込みによるステップ加速開始に伴い、車両の駆動輪速(駆動輪の回転数)が、従動輪を基にして設定する目標駆動輪速(目標回転数)に対し、図示の如くに上昇増加傾向をみせるとき、その差に応じ、目標となるトルクダウン量が設定され駆動力制御がなされる。
【0004】
このように、駆動輪速と目標駆動輪速の差に応じて駆動輪の駆動トルクを制御するものであるが、しかし、この場合、(従動輪速)=(車体速)という関係を前提としているため、通常の走行においては問題はないものの、従動輪に何らかの力が作用し、(従動輪速)≠(車体速)となった場合には、目標設定が正しく行われない。駆動力制御の目標値の設定が、正しく行われず、不適切であると、制御の過不足を招き、駆動トルクの減少量が足らず駆動輪のスリップが大きくなったり、駆動トルクを小さくし過ぎて加速性が悪化したりするという問題がある。
【0005】
また、上記文献1には、このような状況の一つとして、従動輪にハイドロプレーニング現象が生じ、従動輪がスリップして(従動輪速)<(車体速)となり、駆動輪が加速スリップしていると誤判断して、駆動トルクを減少させてしまうことの対策としてのハイドロプレーニング対策が開示され、従動輪がハイドロプレーニング状態か否かを判断して駆動トルクの減少を中断するものが示されている。
【0006】
また、加速時の駆動力制御中に、従動輪が雪の吹きだまりなどの外乱の影響により減速され、駆動輪との回転差が大きくなり、駆動トルクが更に減少され加速性が悪化するという問題に対しては、その外乱対策として、従動輪の回転数にフィルタやリミッを設けることで外乱に対し、その影響を弱めるなどの対策が施されているものもある。
【0007】
しかし、このような従来装置にあっても、ドライバーによる制動中(ブレーキペダル踏込時)か否かにかかわらず各輪の制動力を独立に制御し車両の操縦性および安定性を向上させようとする車両挙動制御装置が併用された場合には、次のような問題がある。
つまり、車両加速中に駆動力制御装置が作動している際に車両が不安定となり、その併用の車両挙動制御装置により従動輪に制動力を発生させた場合、加速中にもかかわらず従動輪は減速し駆動輪との回転差が大きくなり、これがため駆動トルクが更に減少され(図9)、結果、加速性が悪化する(図10参照)。
そもそも、この車両挙動制御の本来的狙いは上述の如く車両が不安定となる場面で操縦安定性を保つようにすることにあり、減速するために制動力を加えるわけではなく、あくまで車両挙動を制御するための制動であるため、減速させる(加速を抑える)必要はない。しかし、結果は逆であり、加速性の低下をもたらす。
【0008】
このような場合、前者のハイドロプレーニング対策では効果はなく、後者の従動輪の回転数にフィルタやリミットを設ける対策では、かかる外乱対策の無いものに対しては効果はあるものの、(従動輪)=(車体速度)という関係を前提としているため、それほど強いフィルタやリミットを設けるわけにはいかず、効果は小さい。また、やはり車両には減速度が発生してしまう(あるいは加速性が悪化してしまう)。
【0009】
本発明は、上述のような問題に着目してなされたもので、車輪の制動力を制御する制動力制御が車両加速時の駆動力制御と同時になされる場合でも、駆動力制御の目標設定が不適切なものにならず、加速性の悪化なども回避できる、車両の駆動力制御装置を提供しようというものである。
また、車両加速中に駆動力制御系が作動している際に車両が不安定となり、車両挙動制御系により従動輪に制動力を発生させた場合には、発生させる制動力をも予め考慮して、従動輪を基に設定する目標回転数を補正するようにすることより、たとえ車輪の制動力を独立に制御することで車両の操縦安定性を向上させる車両挙動制御と併用する場合でも、その車両挙動制御装置の導入が容易で、かつ両制御の両立を図ることのできる、車両の駆動力制御装置を提供しようというものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、下記の車両の駆動力制御装置が提供される。
すなわち、本発明は、車両の駆動輪の回転数と従動輪を基に設定する目標回転数との回転数の違いに基づいて駆動輪の加速スリップを検出する加速スリップ検出手段と、
この加速スリップ検出手段からの信号に基づいて、駆動輪回転を前記目標回転数に一致するよう前記駆動輪のトルクを制御する駆動トルク制御手段と、
前記車両の運動状態を検知する車両挙動検知手段と、
この車両挙動検知手段からの信号に基づいて車両の操縦安定性を保つように車両の各輪の制動力を独立に制御する車両挙動制御手段と、
この車両挙動制御手段によって従動輪に制動力が加えられる場合には、その制動力に応じて前記目標回転数を補正する目標回転数補正手段と
を備えてなることを特徴とするものである(図1)。
【0011】
また、本発明は、上記において、前記駆動トルク制御手段は、エンジンの出力トルク、駆動力伝達装置の伝達効率、または駆動輪に作用する制動力の少なくともいずれかを制御することにより駆動輪の駆動トルクを制御する、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、前記車両挙動検知手段は、車両に発生するヨーレイトを検知する手段か、車両に発生するヨーレイト、操舵角、車速を検知する手段か、車両に発生するヨーレイト、横加速度、車速を検知する手段か、車速、操舵角を検知する手段かのいずれかである、ことを特徴とするものである。
【0013】
また、前記車両挙動制御手段は、前記車両挙動検知手段からの信号より車両に発生しているヨーレイトを少なくとも操舵角および車速から算出された目標ヨーレイトに一致させるように、左右の車輪の制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする、ことを特徴とするものである。
また、前記車両挙動制御手段は、前記車両挙動検知手段からの信号より車両横すべり角を推定し、その車両横すべり角を或る設定値以下に抑えるように、左右の車輪に制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする、ことを特徴とするものである。
【0014】
また、前記目標回転数補正手段は、制動力が加わる直前の従動輪の状態と加える制動力の大きさに応じ補正量を決定する、ことを特徴とするものである。
また、前記目標回転数補正手段は、制動力が加わる直前の従動輪の加速状態を維持した場合の回転数となるように補正する、ことを特徴とするものである。
また、前記目標回転数補正手段は、前記車両挙動制御手段により車両を減速するように制御されている場合には補正量を小さくする、ことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、請求項1記載の如く、車両の駆動輪の回転数と従動輪を基に設定する目標回転数との回転数の違いに基づいて駆動輪の加速スリップを検出する加速スリップ検出手段と、この加速スリップ検出手段からの信号に基づいて、駆動輪回転を前記目標回転数に一致するよう前記駆動輪のトルクを制御する駆動トルク制御手段と、前記車両の運動状態を検知する車両挙動検知手段と、この車両挙動検知手段からの信号に基づいて車両の操縦安定性を保つように車両の各輪の制動力を独立に制御する車両挙動制御手段と、この車両挙動制御手段によって従動輪に制動力が加えられる場合には、その制動力に応じて前記目標回転数を補正する目標回転数補正手段とを備える構成として、好適に実施できる。
【0016】
この場合、車両加速中に駆動力制御が作動している際に車両が不安定となり、車両挙動制御により従動輪に制動力を発生させた場合には、発生させる制動力をも予め考慮して、従動輪を基に設定する目標回転数を補正することができ、加速時に駆動力制御が作動している場合に、車両挙動制御により従動輪に制動力が発生した際、加速性を悪化することなく両制御が行われる。したがって、上記効果が得られるとともに、前述したハイドロプレーニング対策や外乱対策に比べて、優れて効果的であるし、また、従来装置によっては、車両挙動制御と単に併用しただけでば両制御の両立は難しいのに対して、本発明に従えば、上記加速スリップ検出手段、および駆動トルク制御手段を備える駆動力制御装置と、上記車両挙動検知手段、および車両挙動制御手段を備える制動力制御装置とに、上記目標回転数補正手段を付加する構成とすることで容易に実現でき、よって、制動力制御による車両挙動制御を併用しようとする場合でも、その車両挙動制御の導入が容易でかつ両制御の両立を図ることができるという点でも、効果は大である。
【0017】
この場合において、好ましくは、本発明適用の対象となる前記駆動トルク制御手段については、請求項2記載の如く、エンジンの出力トルク、駆動力伝達装置の伝達効率、または駆動輪に作用する制動力の少なくともいずれかを制御することにより駆動輪の駆動トルクを制御する構成として、本発明は実施でき、この場合も請求項1と同様の効果を得ることができる。エンジン出力トルク制御が対象のときは、例えばフューエルカット制御とリタード制御のいずれか一方、または双方を用いることができる。また、この場合、スロットル制御を併用したり、駆動輪の制動力制御を併用してもよい。制動力制御を併用する場合には、車両挙動制御による駆動輪への制動と駆動力制御による駆動輪への制動を総合的に制御するのがよい。
【0018】
また、請求項3記載のように、前記車両挙動検知手段は、車両に発生するヨーレイトを検知する手段か、車両に発生するヨーレイト、操舵角、車速を検知する手段か、車両に発生するヨーレイト、横加速度、車速を検知する手段か、車速、操舵角を検知する手段かのいずれかの手段で構成して、本発明は実施でき、同様にして上記効果を得ることができる。ここに、少なくともヨーレイトを検知する態様とすれば、かかる検知手段からの信号に基づいて車両の操縦安定性を保つように車両の各輪の制動力を独立に制御する車両挙動制御をヨーレイト対応制御とすることができる。また、同様に、ヨーレイトのほか、少なくとも操舵角、車速を検知する態様とすれば、請求項4記載の如くの車両挙動制御とすることができる。
また、ヨーレイト、横加速度、車速を検知する態様の場合は、これらから車両横すべり角を求め、あるいは推定して、車両挙動制御を請求項4記載の如くの車両横すべり角対応制御とすることができ、車速、操舵角を検知する態様とする場合は、これら検知情報を用いるとともに、車両モデルを利用して、車両横すべり角を推定して求めることができ、この場合は、ヨーレイト、横加速度のためのセンサを使用しないで実施できる。
【0019】
また、前記車両挙動制御手段については、好ましくは、請求項4または請求項5記載の如く、前記車両挙動検知手段からの信号より車両に発生しているヨーレイトを少なくとも操舵角および車速から算出された目標ヨーレイトに一致させるように、左右の車輪の制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする構成とするか、あるいは、前記車両挙動検知手段からの信号より車両横すべり角を推定し、その車両横すべり角を或る設定値以下に抑えるように、左右の車輪に制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする構成として、本発明は実施できる。いずれの態様の車両挙動制御を本発明適用の対象とするの場合も、加速時に駆動力制御が作動している場合に、そのヨーレイト対応制御または車両横すべり角対応制御による車両挙動制御により従動輪に制動力が発生した際、加速性を悪化することなく駆動力制御および車両挙動制御の両制御が行われ、上記と同様の効果が得られ、加速性の悪化を回避し、車両の操縦安定性を保つこととの両立が図れる。
【0020】
また、本発明は、車両挙動制御手段によって従動輪に制動力が加えられる場合、前記目標回転数を補正するにあたっては、その制動力に応じて補正することができるが、より好ましくは、請求項6あるいは請求項7記載の如く、前記目標回転数補正手段は、制動力が加わる直前の従動輪の状態と加える制動力の大きさに応じ補正量を決定する態様の構成として、あるいは、制動力が加わる直前の従動輪の加速状態を維持した場合の回転数となるように補正する態様の構成として、好適に実施できる。
前者の態様の場合は、上記効果のほか、加えられる制動力の大きさのみならず、その制動力が加わる直前の従動輪の状態を含めて、それら両方に対応させて目標回転数補正が実現でき、よりきめ細かな補正をなしえて、制御の多様性を増し、上記駆動力制御および車両挙動制御の両制御の高度の両立を図ることができる。
【0021】
この場合において、特に、請求項8記載のように、目標回転数補正手段が、車両挙動制御手段により車両を減速するように制御されている場合には補正量を小さくするよう構成してあると、車両がアンダステア状態となって、車両挙動制御により左右輪に差圧を発生させるだけでなく、減速するために制動力を発生させる場合にも対応可能なものとなり、そのような加速中の限界走行での車両挙動制御場面にも適合するものとすることができる等の効果が、更に得られる。
【0022】
また、後者の態様の目標回転数補正の場合のように、制動力が加わる直前の従動輪の加速状態を維持した場合の回転数となるように補正すれば、制動力を制御して車両挙動制御が開始されても、その時の加速性の低下が避けられ、減速感ももたらさない。よって、理想加速状態に近いスムーズな制御となるため、ドライバーにとっても、応答性の良い状態で自己の望んだ加速フィーリングが得られ、違和感が生ずることもない等の効果が、更に得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図2は、本発明の一実施例の構成図である。本実施例では、車両は後輪駆動車であり、また、駆動力制御についてはエンジンの出力を制御するタイプの装置を、また車両挙動制御については前後輪とも左右の制動力(制動液圧)を独立に制御できる制動装置を想定している。
【0024】
図中、1L,1Rは左右前輪(従動輪)、2L,2Rは左右後輪(駆動輪)をそれぞれ示す。各車輪は、それぞれブレーキディスク3L,3R,4L,4Rと、液圧の供給により該ブレーキディスクを摩擦挟持して各輪毎にブレーキ力(制動力)を与えるホイールシリンダ(W/C)5L,5R,6L,6Rとを備え、これらブレーキユニットの各ホイールシリンダに圧力カーボユニット(圧力制御ユニット)7からの液圧を供給される時、各車輪は個々に制動される。
【0025】
圧力サーボユニット7は、これを含んで後述のコントローラとともに制動力制御装置を構成するもので、入力信号により油圧発生源8からの油圧を調節し、各輪のホイルシリンダ5L,5R,6L,6Rへ供給する制動液圧を制御する。圧力サーボユニット7は、前後輪左右の各液圧供給系(各チャンネル)個々にアクチュエータを含んで構成される。アクチュエータとしては、アンチスキット制御用にも供する減圧、保持、増圧制御可能なものを使用することができる。
【0026】
上記圧力サーボユニット7では、各供給系の液圧制御用のアクチュエータをもって、入力液圧指令信号、詳しくは前輪右液圧指令値P1(COM) 、前輪左液圧指令値P2(COM) 、後輪右液圧指令値P3(COM) 、後輪左液圧指令値P4(COM) の各信号に応じ個々に対応車輪の制動液圧P1,P2,P3,P4(ホイールシリンダ液圧)の調圧をなすものとする。
【0027】
圧力サーボユニット7への上記の各信号はこれらをコントローラ9から供給し、このコントローラ9には、例えば、ブレーキペダル10の踏込力Fpを検出する踏力センサ11からの信号、ハンドル12の操舵角δを検出する操舵角センサ13からの信号、車両に作用する実ヨーレイトφを検出するヨーレイトセンサ14からの信号、車両の前後,左右方向加速度Ygを検出する加速度センサ15からの信号、また各車輪に設置された車輪速センサ16〜19からの車輪速Vwi(i=1〜4)信号などをそれぞれ入力する。
また、コントローラ9は、本実施例では、エンジン20を制御するエンジン用コントローラ21(エンジン制御コントローラ)とつながっており、エンジン20の作動状態(スロットル開度θなど)の情報や駆動トルクの減少指令信号TD(s)のやり取りを行う。
【0028】
ここに、車両に発生するヨーレイトφ、前後および左右加速度Xg,Yg、操舵角δなどは、車両の運動状態を検知するのに用いることができ、車両の各輪の制動力を独立に制御することで車両の操縦安定性を保つように、車両挙動を制動力制御によって制御する場合における車両挙動制御情報として使用することができる。
【0029】
制動力および駆動力制御を行う本制駆動制御装置では、上記コントローラ9は、入力情報に基づき、車両の運動状態が車両挙動を制御すべき状態に該当することとなるときは、ドライバーによるブレーキペダル10の操作中か否かにかかわらず、車両の操縦性・安定性を向上させるべく車両挙動の制御のため必要な制動力制御を実行する。したがって、かかる車両挙動制御側の制御は、車両加速時の駆動力制御中でも実行可能である。
一方、エンジン制御用のコントローラ20は、通常はドライバーの操作するアクセルペダル(不図示)の操作量に従ってエンジン20を制御する。更には、車両加速時(アクセルペダル踏込みに対応するスロットル開度θ増加時)の駆動力制御では、駆動輪加速スリップを防止するべく、エンジン出力トルクを低減させることで駆動輪の駆動トルクを減少制御するよう、エンジン20に対する制御を実行する。
本実施例では、このエンジン制御は、運転気筒の休止制御としてのフューエルカット制御を行うか、または点火時期を遅延させるリタード制御を行うか、もしくはそれらの双方で行わせるものとする。運転気筒の休止によるエンジン出力トルクの低減は、点火カット制御によっても同等の効果が得られるが、より好ましくのは、燃料遮断を行うフューエルカット制御である。
【0030】
更にまた、本実施例では、上記エンジン20の出力制御による駆動力制御に際し、駆動輪の回転数と、従動輪を基にして設定する目標回転数の回転数の違いに応じて駆動輪の駆動トルクを制御することを基本とするが、この場合において、車両加速中に駆動トルク制御が作動している際に車両挙動を制御すべき状態(車両が不安定な状態)となり、車両挙動制御により従動輪に制動力を発生させることとなった場合には、図3に一例をフローチャートで示す制御プログラムに従い、その発生させられる制動力をも予め考慮して、上記目標回転数を補正する補正制御をも実行する。
【0031】
図3は、コントローラ9により実行される制御プログラムの一例のフローチャートである。
この処理は図示せざるオペレーティングシステムで一定の時間毎の定時割り込み遂行される。
まず、ステップS100では、前記各センサ等からの信号に基づき、前後加速度Xg、左右加速度Yg、ブレーキ踏力Fp、発生ヨーレイトφ、各車輪速Vwi(i=1〜4)、スロットル開度θ等を読み込む。
【0032】
続くステップS101では、車体速Vを算出する。本実施例では、各車輪速Vwi(i=1〜4)にフィルタをかけたVwfi(i=1〜4)より算出したV1=(Vwf1+Vwf2)/2と前後加速度Xgを積分し求めたV2との大きい方を車体速Vとして選択するものとする。
ここでは、単純な計算により車体速とVを求めているが、加速度センサの信号を車両のピッチングを考慮して補正したり、車体の横すべり角に応じて補正したりした後積分するなどしてもよい。また、当然、センサドリフトなどの対策を行なったりしてもよい。
【0033】
次に、ステップS102にて、車両の重心点の横すべり角βを算出する。本実施例では、次式1〜3のように、前記のセンサ信号である左右加速度Yg、ヨーレイトφ、および車体速Vを用いて積分して車両左右速度Vyを求め、更に横すべり角βを算出する手法を採用する。
【数1】
ΔVy=Yg(n) −φ(n) ・V(n) ・・・1
Vy(n) =Vy(n-1) +ΔVy・ΔT ・・・2
β(n) =V(n) /Vy(n) ・・・3
(ΔTは制御周期、nは今回の値、n−1は前回の値を示す)
【0034】
ここで、本実施例では各センサ信号より積分計算(式1,2)を用いることにより、車両横すべり角βを算出しているが、コントローラ内に車両モデルをもち、車体速Vおよび操舵角δなどより、βを推定してもよい。したがって、例えば車両挙動制御の態様を、本実施例の如く、車両の横すべり角βに応じた制御内容のものとし、横すべり角βが所定の或る設定値以下に抑えるられるようにすることで車両の安定状態を保つように制動力制御を行わせる場合においても、その車両横すべり角βは上記の推定によって求める方法で実施することもできる。この場合は、その推定に用いる上記操舵角δの情報は、前記ステップS100でデ−タを読み込むようにすることができる。
【0035】
次に、ステップS103にて、ブレーキ踏力Fpより基準ホイルシリンダ圧Poを算出する。
本実施例では、次式4に従ってPoを算出する。
【数2】
Po=K1×Fp ・・・4
ここで、K1は比例定数であり、基準ホイルシリンダ圧Poは、ブレーキ踏力Fpに比例するものとする。
【0036】
次に、車両の横すべり角βに応じて車両挙動制御を行わせるべく、ステップS104にて、車両横すべり角βより各輪の目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPi(i=1〜4)を算出する。
本実施例では、図4に示すような特性図により、前輪左右輪に発生させる差圧ΔPx(図中実線特性)、前後輪間に発生させる差圧ΔPy(図中一点鎖線特性)を求め、更に、次式5a〜5dに従い、各値ΔPi(i=1〜4)求める。
【数3】
ΔP1=−ΔPx ・・・5a
ΔP2= ΔPx ・・・5b
ΔP3=−ΔPy ・・・5c
ΔP4=−ΔPy ・・・5d
【0037】
図4に示すように、ΔPxを得るための実線特性は、ΔPyの特性と異なり、所定値−βo〜+βo(不感帯)間を境に特性が反転している。また、上記ステップS102で求めた横すべり角値βが、図4に例示したプラスの値β1である場合と、符号が反対のマイナスの横すべり角値であった場合とでは、式5a,5bの関係から、前輪1L,1R間に発生させるべき左右の差圧の向き関係も逆になることが分かる。本実施例では、このようにすることで、車両の横すべり角βに応じた車両挙動制御とされ、左右の車輪の制動力(本例では、前輪左ホイールシリンダ圧,前輪右ホイールシリンダ圧)を制御して車両の安定性を保つように車両挙動の制御が行われることとなる。
【0038】
なお、ここで、上記ΔPx、ΔPyは、車両横すべり角βの関数とする手法以外に、車速Vと横すべり角βの関数としてもよい。また、走行状態により踏面μを推定して、その路面μに応じて特性を変化させてもよい。また、単に横すべり角βの大きさだけでなく、その変化率も考慮にいれて、制御量ΔPx、ΔPyを算出してもよい。
【0039】
そして、次のステップS105で、上記の目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPiと基準ホイルシリンダ圧Poより、次式6に従って各輪の目標ホイルシリンダ圧Pi* (i=1〜4)を求める。
【数4】
Pi* =Po+ΔPi ・・・6
ここでは、通常の前後制動力配分(いわゆるプロポーショニングバルブによるもの)については省略したが、当然考慮にいれてもよい。
また、前後の差圧の発生方法として、後輪側の減圧のみにより発生させているが、前輪の増圧を行ってもよい。
なお、上式6において、Po=0(Fp=0)のとき、Pi* =ΔPiとなる。結果、これにより後記ステップS109(ブレーキ液圧制御)の処理が実行されると、ドライバーのブレーキぺダル10の踏込による制動中でなくても、制動力制御による車両挙動制御が実行されることになる。
【0040】
次にステップS106では、車両加速中で駆動力制御が作動している場合において車両挙動制御により従動輪に制動力を発生させたときであっても、発生させるその制動力を予め考慮した駆動力制御となるように目標回転数補正をするべく、図5に示すフローチャートに従って、目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPiに応じて駆動力制御に用いる目標駆動輪速Vwd*を算出する。
【0041】
まず、図5中、ステップS200で、目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPi(i=1〜2)より車両挙動制御によって従動輪(前2輪)に制動力が発生させられるか否かを判断する。その結果、ΔPi(i=1〜2)=0の場合は、車両挙動制御によっては、従動輪に制動力が発生させられていないため、ステップS201に進み、補正値Vwdi(i=1〜2)にはその従動輪速Vwiをそのまま用いる。
【0042】
一方、ΔPi(i=1〜2)≠0の場合は、車両挙動制御によって従動輪に制動力が発生させられているため(前記式5a,5b)、ステップS202に進み、目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPi(i=1〜2)より補正値Vwdi(i=1〜2)を算出する。本実施例では、次式7,8に従って補正値Vwdi(i=1〜2)を算出する。
【数5】
ΔVwdi(n) =ΔVwdi(n-1) −h・K・ΔPi ・・・7
Vwdi(n) =Vwdi(n-1) +ΔVwdi(n) ・・・8
【0043】
ここで、Kは車両の諸元より求められる定数、hは補正量を決定する補正係数であり、図7に示す特性に従って変化するものとする。h=1の場合は通常の従動輪に制動力が作用した時の車輪の回転状態を表す。つまり、補正しない場合である。一方、h=0の場合は制動が加わる前の従動輪の加速状態を維持した場合となる。
【0044】
図7の特性をみると、この特性例では、補正係数hは、値1〜0の範囲の係数値とされ、基本的に所定のΔPi値を超える状態では、ΔPiによらずh=1となり、それ未満のΔPi値においてh=1〜0の可変値となる特性としてある。
また、その可変域(補正域)では、図示に示す特性傾向に従い、同一値の目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPiであっても(したがって、加えられることとなる制動力の大きさが同じであっても)、車速状態に応じて、車速が低い(車速値V小)ほどhは小なる値をとり、車速が高い(車速値V大)ほどhは大なる値をとるよう、ΔPiのみならず車速によっても変化する補正係数hとされている。
【0045】
よって、本実施例では、上記式7,8に基づき設定される補正値Vwdi(i=1〜2)は、車両挙動制御のため発生させる制動力を予め考慮するに際し、このような特性の補正係数hと目標ホイルシリンダ圧変化量ΔPiに応じて決定されこととなり、単に制動力に応じて目標回転数の補正を施す場合に比し、よりきめ細かな制御が行われる。
【0046】
なお、ステップS202で適用する上述のような補正の演算式に関し、更に補足して説明する。図6(a),(b)は、車輪の運動についての考察図であり、図中および下記式9〜14中の使用表記はそれぞれ次の内容を表す。
【数6】
B;ブレーキ力(制動力)
B ;ブレーキトルク(制動トルク)
(d/dt)Vw;車輪加速度(車輪速Vwの微分値)
(d/dt)Vwo;制動直前の車輪加速度(制動直前の車輪速Vwoの微分値)
I;慣性モーメント
Tw ;車両進行方向の発生トルク
【0047】
従動輪の場合、次式9の関係が成り立つ。
【数7】
I・(d/dt)Vw=Tw ・・・9
一方、ブレーキが作用し、制動が発生すると、同図(a)より、
【数8】
I・(d/dt)Vw=Tw −TB ・・・10
となり、式10右辺のTw −TB は、発生制動トルク分を減じたものとなる。
ここで、Tw は、非制動時より推定し、制動直前の車輪加速度(d/dt)Vwoを用いて、
【数9】
Tw =I・(d/dt)Vwo ・・・11
【数10】
∴I・(d/dt)Vw=I・(d/dt)Vwo−k・B ・・・12
これは、式11を式10右辺第1項に適用するとともに、式10右辺第2項を定数kとブレーキ力Bとの積値で置き換えたものである。
【0048】
更に、式12はこれを変形して、次式13のように書き表せる。
【数11】
(d/dt)Vw=−(k/I)・B+(d/dt)Vwo ・・・13
このようにして、制動力が発生させられることとなる場合は、図6(b)に示す如くに、加わるブレーキ力Bに応じ、車輪加速度(d/dt)Vwは、制動直前の車輪加速度(d/dt)Vwoの状態(B=0)から、図示特性の傾きをもって、例えばブレーキ力B1の大きさでは、車輪加速度値(d/dt)Vw1へと低下するように減少する。
そして、上記の式13を積分すると、以下のようになる。
【数12】
Vw=∫{(d/dt)Vwo}dt
=−(k/I)・∫Bdt+Vwo ・・・14
よって、式13が、前記ステップS202の補正式、すなわち
【数13】
ΔVwdi(n) =ΔVwdi(n-1) −h・K・ΔPi
=−h・K・ΔPi+ΔVwdi(n-1)
に相当するものとなる。
【0049】
図5に戻り、ステップS203へ進んで、本ステップS203にて従動輪の上記補正値Vwdiより、駆動力制御用の目標駆動輪速Vwd*を算出する。
本実施例では、前輪側の従動輪2輪の平均値を目標駆動輪速Vwd*とするものとする。
すなわち、車両挙動制御によって従動輪に制動力が発生させられている場合は、補正して得られる、Vwd*=(Vwd1+Vwd2)/2となり、また、車両挙動制御によって従動輪に制動力が発生させられていない場合は、従動輪速をそのまま用いた、Vwd*=(Vw1+Vw2)/2となる。
【0050】
図3に戻り、以上のようにしてステップS106で目標駆動輪速Vwd*を算出後は、実際の駆動輪速と、上記の如く従動輪を基に設定した目標駆動輪速Vwd*との回転数の差から駆動輪トルクを制御する場合の加速スリップ状態を求める。
ここでは、ステップS106で求められた目標駆動輪速Vwd*と、後2輪側の駆動輪速Vwi(i=3〜4)の平均値Vwr((Vw3+Vw4)/2)より、次式15により、次のステップS107にて駆動輪の加速スリップ量ΔVwr(駆動輪速の目標値との差)を求める。
【数14】
ΔVwr=Vwr−Vwd* ・・・15
【0051】
そして、上記加速スリップ量ΔVwr検出後は、ステップS108にて、加速スリップ量ΔVwrを基にして、駆動輪速Vwi(i=3〜4)がその目標駆動輪速Vwd* と一致するよう(上記差ΔVwrが零となるよう)、すなわち駆動輪のトルクを減少せるべく制御し加速スリップを防止し得る状態でドライバーの意図した加速が達成できるよう、目標駆動トルクダウン量TDを算出する。
本実施例では次式16に従ってこのTD量を求めるものとする。
【数15】
TD=k′(α・∫ΔVwrdt+β・ΔVwr+γ・(d/dt)ΔVwr)・・・15
ただし、∫ΔVwrdtはΔVwrの積分値、(d/dt)ΔVwrはΔVwrの微分値であり、α,β,γはそれぞれフィードバックゲイン(積分制御,比例制御,微分制御の各ゲイン)である。ここで、フィードバックゲインはエンジン20や車両の諸元に応じて決められる。
なお、制御形式は、かかる比例+積分+微分制御によるものに限定されないことはいうまでもない。
【0052】
そして、ステップS109にてブレーキ液圧(制動力)制御処理を実行する。この処理内容は、各輪毎の目標ホイルシリンダ圧Pi* (ステップS105)に相当する制御信号を個々に決定して圧力サーボユニット7に出力する処理からなり、これら信号の圧力サーボユニット7への供給により、上記目標ホイルシリンダ圧Pi* に従って実際のホイルシリンダ液圧Pi(i=1〜4)が調節されて各輪毎のホイルシリンダ5L,5R,6L,6Rに与えられることになる。
【0053】
そして、ステップS110では、エンジン制御コントローラ21に対し上記算出した目標駆動トルクダウン量TDに従って制御信号(駆動トルク減少指令信号TD(s))を出力し、エンジン制御を行い、本プログラムを終了する。
ここに、エンジン制御コントローラ21は、通常はドライバーの操作したアクセルペダルの操作量に従ってエンジン20を制御しているが、駆動力制御中は目標駆動トルクダウン量TDにも応じてエンジン21を制御する。そして、この場合、更に、駆動力制御中、既述の如く同時に制動力制御による車両挙動制御によって従動輪に制動力が発生させられるときは、前述のように補正された目標駆動輪速Vwd* に基づき設定される、過不足のない適切な目標駆動トルクダウン量TDに従う制御信号が出力され、これによりエンジン制御による駆動力制御が上記車両挙動制御とともに実行される。
【0054】
以上のような制駆動制御によると、たとえ車輪の制動力を制御することで車両挙動を制御する車両挙動制御が車両加速時の駆動力制御と同時になされる場合でも、駆動力制御の目標設定は正確に行われ、不適切なものにならず、駆動トルクの減少量が不足し、あるいは駆動トルクを小さくし過ぎる等の制御の過不足を避けられ、加速性の悪化なども回避し得るとともに、その車両の操縦安定性のための制動力制御による車両挙動の制御も、その本来の機能を発揮させる状態で行わせることができ、従来の問題も良好に解消される。
【0055】
図8は、本制御を行った場合の制御内容の一例を示す時系列グラフである。一方、図10は、図8と対比して示すための従来装置によったとした場合の比較例である。これらの対比にも示されるように、本制御によると、加速時に駆動力制御が作動している場合に、車両挙動制御により従動輪(前輪左右)に制動力(W/C圧)が発生した際、加速性を悪化することなく両制御が行われる。
いずれも、車両加速中に駆動力制御が作動している際(トルクダウン量TD参照)に、その途中で、車両挙動を制御すべき状況となり(図中、車両挙動制御により従動輪に制動力が加わる期間参照)、かつ所定時間の間、その制動力制御による車両挙動制御が実行された後、引き続き車両加速状態で車両走行が継続される、といった同じケースを例としてあり、かかる場面での駆動輪速、従動輪速、目標駆動輪速、設定トルクダウン量TD、従動輪W/C圧等の諸量の時間(t)変化推移を表すものである。
【0056】
図10の場合は、制動力を独立に制御し車両の操縦性および安定性を向上させる車両挙動制御装置を、単に車両の組み込んだだけで、したがって、何ら上記のようなケースでの両制御の同時作動の場合における駆動トルク、制動力を考慮しない制御内容のものとなっている。このため、駆動力制御作動途中で一旦車両が不安定となり、車両挙動制御により従動輪に制動力を発生させたとき、以後の駆動輪速、従動輪速、目標駆動輪速、トルクダウン量TDはそれぞれ図示のような変化推移となる。つまり、加速中にもかかわらず、従動輪は減速し駆動輪との回転差が大きくなり、トルクダウン量TDはその車両挙動制御実行期間にわたり図示の如く相当多めに設定され、よって、駆動トルクは更に減少し、加速性は悪化し、かかる車両挙動制御が作動しなかったなら得られたであろう理想加速状態(図中、二点鎖線)を達成させることは困難である。
【0057】
これに対し、図8の場合によれば、所要の必要な適正トルクダウン量TDに設定された駆動力制御中に、図示のように、同様に車両挙動制御が実行されたとしても、そのような事態の発生を良好に防止できている。車両加速中、そのトルクダウン量TDで駆動力制御が作動している際に車両が不安定となって、車両挙動制御により従動輪に制動力を発生させたときでも、発生させる制動力をも予め考慮し、図示のように、従動輪速に対し、目標駆動輪速も補正されたものとなるため、トルクダウン量TDも図10のようには多めに設定されることなく、車両挙動制御開始前の状態で適正に推移し、加速性も図10のようには悪化することもなく、減速感ももたらさない。しかも、車両挙動制御の方も安定性を保つよう必要な制御は同時に行われており、その車両安定化制御も狙い通りに実行され、所定時間経過後の安定性を確保した車両挙動制御終了後は、再びその適正トルクダウン量TDに設定された駆動力制御でドライバーの意図した車両加速状態が確保できていることも分かる。また、加速性の低下をももたらす、図示の如く理想加速状態に近いスムーズな制御となるため、ドライバーにとっても、応答性の良い状態で自己の望んだ加速フィーリングが得られ、違和感が生ずることもない。
また、前記図5図8に示す如くの目標駆動輪速の補正は、既述のハイドロプレーニング対策や外乱対策に比べて、優れて効果的である。更に、図10の場合のように車両挙動制御と単に併用しただけでは両制御の両立は難しいが、本実施例に従えば、対象となる駆動力制御(例えばエンジン制御)と、対象となる制動力制御による車両挙動制御(例えば車両横すべり角対応制御)とに、上記目標駆動輪速補正を付加することで実現でき、したがって、車両挙動制御を併用しようとする場合でも、その車両挙動制御の導入が容易でかつ両制御の両立を図ることができるという点でも、効果は大である。
【0058】
なお、本発明は、以上で述べた実施の形態や、その変形例等に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、アンチスキット制御(ABS制御)について具体的には述べなかったが、各輪の車輪速を検知し、アンチスキット制御も同時に行なっても問題ない。その場合には、制動力制御を前後あるいは左右の差圧によるヨーイング制御とするのではなく、各輪のスリップ率をコントロールすることでヨーイング制御するとしてもよい。
【0059】
また、上記実施例では、駆動力制御はエンジン制御(例えばフューエルカット制御とリタード制御のいずれか一方、または双方)のみの場合であるが、これに限らない。例えば、スロットル制御(電制スロットル)を併用したり、あるいは駆動輪の制動力制御を併用してもよい。制動力制御を併用する場合には、当然、車両挙動制御による駆動輪への制動と駆動力制御による駆動輪への制動を総合的に制御するのが望ましい態様である。
また、駆動トルク制御は、例えば駆動力伝達装置の伝達効率の制御による態様でもよい。本発明は、これらエンジンの出力トルク、駆動力伝達装置の伝達効率、駆動輪に作用するブレーキ力の単独制御、またはそれらの二以上の組合せによる制御でも、実施することを妨げない。
【0060】
また、上記実施例では、車両の横すべり角βに応じて車両挙動制御をしているが、これに限られず、例えば車両に発生しているヨーレイトφと少なくとも車速V、操舵角δを基に設定される目標ヨーレイトとの偏差に応じて各輪の制動力を制御するものとしてもよい。
したがって、本発明は、車両挙動制御のための制動力制御は、車両の横すべり角βを求め、または推定し、その車両横すべり角を或る設定値以下に抑えるように、各輪の制動力を制御して、好ましくは少なくとも左右の車輪に制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする態様のほか、上記のようにヨーレイトφを検知し、その実際値を、車速Vおよび操舵角δにより算出される目標ヨーレイトに一致させるように、少なくとも左右の車輪の制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする態様で実施することもできる。
この場合でも、上述したのと同様の作用効果が得られ、加速性の悪化を回避し、車両の操縦安定性を保つこととの両立が図れる。
【0061】
更に、上記のようなヨーレイト偏差に応じて制御する場合には、車両がアンダステア状態となった時には、車両挙動制御により左右輪に差圧を発生させるだけでなく、減速するために各輪に制動力を発生させるようにしてもよい。例えば、現在の車速Vを保ったまま目標のヨーレイトを発生することが可能かどうかを,発生するであろう横加速度Ygより判別し、不可能な場合には限界横加速度より限界速度を求め、現在の速度Vと限界速度の関係より目標減速度を算出、各輪に発生させるべき制動力ΔPsを算出し、それを上記ステップS103で求めた基準ホイルシリンダ圧Po(前記式4)に加える。
【0062】
このような制御を行った場合は、車両に減速度を発生させることが目的であるため、このΔPs分は減速度を発生させるよう上記ステップS202で行う補正値の演算を以下のようにするなどとしてもよい。
【数16】
ΔVwdi(n) =ΔVwdi(n-1) −h・K・ΔPi−K・ΔPs・・・17
Vwdi(n) =Vwdi(n-1) +ΔVwdi(n) ・・・18
したがって、この場合は、前記式7,8の方法に比し、−K・ΔPsに対応する分、更に目標駆動輪が補正されることとなる。
このようにして、制動力が加わる直前の従動輪の状態と加える制動力の大きさに応じ補正量を決定する場合において、車両挙動制御により車両を減速するように制御されている場合には補正量を小さくするような補正をしてもよい。このようにすると、上記した如く、車両がアンダステア状態となって、車両挙動制御により左右輪に差圧を発生させるだけでなく、減速するために制動力を発生させる場合にも、対応でき、そのような車両挙動制御場面にも適合する補正内容とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の車両の駆動力制御装置の基本概念を示す図である。
【図2】 本発明の車両の駆動力制御装置の一実施例の構成を示すシステム図である。
【図3】 同例のコントローラ系が実行する制御プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図4】 制御内容の作用の説明に供する図で、同プログラムに適用できるホイールシリンダ変化量設定のための特性の一例を示す特性図である。
【図5】 同じく、目標駆動輪速算出プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図6】 同じく、その目標駆動輪速算出のための補正値演算の説明に供する図である。
【図7】 同じく、その補正値演算に適用できる補正係数の特性の一例を示す特性図であである。
【図8】 本発明に従う制御内容の一例を示すタイミングチャートで、駆動力制御中に車両挙動制御が実行された場合の諸量の推移変化を示す図である。
【図9】 従来の駆動力制御装置による作動状態を示す図である。
【図10】 図8と対比して示すための比較例であって、駆動力制御と車両挙動制御とが併用されることとなった場合において、従来装置によったとした場合の問題点を示す考察図である。

Claims (8)

  1. 車両の駆動輪の回転数と従動輪を基に設定する目標回転数との回転数の違いに基づいて駆動輪の加速スリップを検出する加速スリップ検出手段と
    この加速スリップ検出手段からの信号に基づいて、駆動輪回転を前記目標回転数に一致するよう前記駆動輪のトルクを制御する駆動トルク制御手段と、
    前記車両の運動状態を検知する車両挙動検知手段と、
    この車両挙動検知手段からの信号に基づいて車両の操縦安定性を保つように車両の各輪の制動力を独立に制御する車両挙動制御手段と、
    この車両挙動制御手段によって従動輪に制動力が加えられる場合には、その制動力の変化と該制動力の変化に応じて可変な補正係数とに応じて前記目標回転数を補正する目標回転数補正手段と
    を備えてなることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
  2. 前記駆動トルク制御手段は、
    エンジンの出力トルク、駆動力伝達装置の伝達効率、または駆動輪に作用する制動力の少なくともいずれかを制御することにより駆動輪の駆動トルクを制御する、
    ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  3. 前記車両挙動検知手段は、
    車両に発生するヨーレイトを検知する手段か、
    車両に発生するヨーレイト、操舵角、車速を検知する手段か、
    車両に発生するヨーレイト、横加速度、車速を検知する手段か、
    車速、操舵角を検知する手段か
    のいずれかである、ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  4. 前記車両挙動制御手段は、
    前記車両挙動検知手段からの信号より車両に発生しているヨーレイトを少なくとも操舵角および車速から算出された目標ヨーレイトに一致させるように、左右の車輪の制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする、ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  5. 前記車両挙動制御手段は、
    前記車両挙動検知手段からの信号より車両横すべり角を推定し、その車両横すべり角を或る設定値以下に抑えるように、左右の車輪に制動力を制御して車両の安定状態を保つようにする、ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  6. 前記目標回転数補正手段は、
    制動力が加わる直前の従動輪の状態と加える制動力の大きさに応じ補正量を決定する、ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  7. 前記目標回転数補正手段は、
    制動力が加わる直前の従動輪の加速状態を維持した場合の回転数となるように補正する、ことを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  8. 前記目標回転数補正手段は、
    前記車両挙動制御手段により車両を減速するように制御されている場合には補正量を小さくする、ことを特徴とする請求項6記載の車両の駆動力制御装置。
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