JP3731913B2 - シス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、工業的に有用な、シス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シス−1−アミノインダン−2−オールは医薬中間体として重要である。例えば、J.Med.Chem.,35,2525(1992),J.Med.Chem.,35,1702(1992),J.Med.Chem.,35,1685(1992)等には本化合物が抗HIV薬の製造の有用中間体であることが開示されている。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1992,1673には、光学活性ヒドロキシエステル合成の原料として有用であることが開示されている。これまでに、シス−1−アミノインダン−2−オールの製造については、いくつかの方法が開示されている。例えば、ルッツ(Lutz)等[J.Am.Chem.Soc.,73,1639(1951)]は、トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オールを濃アンモニア水で処理してトランス−(±)−1−アミノインダン−2−オールとし、これを塩化ベンゾイルでアミド化した後に閉環してシス−(±)−2−フェニルオキサゾリン誘導体とし、これを加水分解することで目的とするシス−(±)−1−アミノインダン−2−オールを得ている。また、リットル(Rittle)等[Tetrahedron Lett.,1987,521]はシス−(±)−1−アミノインダン−2−オールをL−フェニルアラニンアミドに誘導し、これをクロマトグラフィーで分離した後、ナトリウムエトキシドで処理して、光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールを得ている(下記式)。
【0003】
【化26】
【0004】
ルッツ等の方法は比較的有効な方法ではあるものの、トランス−(±)−1−アミノインダン−2−オールを経由するために多段階を要し、大量の廃水や廃液を副生する、容積効率が悪い等の欠点を有している。
【0005】
ハスナー(Hassner)等[J.Org.Chem.,32,540(1967)]は、エチル−N−(トランス−2−ヨード−1−インダン)カーバメートを無水グライム中で加熱して閉環し、シス−インダノ[1,2−d]−2−オキサゾリドンを形成し、これを加水分解することにより、所望のシス−(±)−1−アミノインダン−2−オールを得ている(下記式)。
【0006】
【化27】
【0007】
しかしながら、この原料のカーバメート体はヨードイソシアネートのインデンへの付加反応によって得られるものの、ヨードイソシアネートの合成方法が困難であるため、工業的とは考えられず、オキサゾリドン体の生成には高い温度が必要である等の欠点を有する。
【0008】
ディディエ(Didier)等[Tetrahedron,47,4941(1991)]は、2−オキソインダン−1−カルボン酸メチルをパン酵母還元することにより、光学活性なシス−(+)−2−ヒドロキシ−1−カルボン酸メチルとし、これを原料として多段階の合成を行って、所望のシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールとシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールを得ている(下記式)。
【0009】
【化28】
【0010】
しかしながら、この方法は特殊な反応剤を使用する必要があり、さらに収率も低いといった問題がある。
【0011】
以上のように、シス−1−アミノインダン−2−オールはその満足できる製造方法が知られておらず、工業的かつ安価に製造することが困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シス−1−アミノインダン−2−オールの効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述のルッツ等の方法は、比較的安価な原料を用いている点で有効であるものの、トランス−1−アミノインダン−2−オールを中間体として経由する難点を有している。しかしながら、トランス−アミド誘導体の閉環によるシス−オキサゾリン誘導体を経由することでシス−1−アミノインダン−2−オールが得られることは注目すべき事実である。本発明者等は、重要中間体であるトランス−アミド誘導体およびシス−オキサゾリン誘導体の効率的な製造方法について検討し、安価に製造可能な原料を用いて、トランス−アミド誘導体およびシス−オキサゾリン誘導体の合成が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0015】
【化29】
【0016】
(ただし、式中、Xは酸性条件下において引き抜かれることにより、インダン骨格の1位にカルボカチオンを生成し得る置換基であり、Yはハロゲン原子であり、XとYはシス配置でもトランス配置でもよく、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表される1,2−ジ置換インダン類もしくは一般式(I′)
【0017】
【化30】
【0018】
(ただし、式中、Xは酸性条件下において引き抜かれることにより、インダン骨格の1位にカルボカチオンを生成し得る置換基であり、XとOH基はシス配置でもトランス配置でもよく、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表される1,2−ジ置換インダン類を酸性条件下に一般式(II)
【0019】
【化31】
【0020】
(ただし、式中、Rはフェニル基もしくは低級アルキル基である)で表されるニトリル類と反応させる工程を有する、1,2−ジ置換インダン類の製造方法を提供する。置換基Yとしてハロゲン原子を有する一般式(I)の1,2−ジ置換インダン類を選択した場合は一般式(III )
【0021】
【化32】
【0022】
(ただし、式中、Rはフェニル基もしくは低級アルキル基であり、Yはハロゲン原子であり、NHCOR基とYはトランス配置であり、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表されるトランス−アミド誘導体を形成し、これを閉環して一般式(IV)
【0023】
【化33】
【0024】
(ただし、式中、Rはフェニル基もしくは低級アルキル基であり、オキサゾリン環はシス配置であり、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表されるシス−オキサゾリン誘導体とする。出発原料として置換基としてOH基を有する一般式(I′)で表される1,2−ジ置換インダン類を用いた場合は、直接、一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体が生成する。
【0025】
一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン体を加水分解することにより、一般式(V)
【0026】
【化34】
【0027】
(ただし、式中、NH2 基とOH基はシス配置であり、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールが生成する。
【0028】
アルコール類が濃硫酸の存在下にニトリル類と反応してアミド類を生成する反応はリッター(Ritter)反応としてよく知られている。例えば、リッター(Ritter)等[J.Am.Chem.Soc.,70,4048(1948)]は第3級アルコールからのアミドの合成を報告している。さらに、この反応はハロアルコールにも適用可能であり、ルスキン(Lusskin)等[J.Am.Chem.Soc.,72,5577(1950)]は脂肪族ハロヒドリンを濃硫酸の存在下にニトリル類と反応させ、種々のN−(2−ハロ−1−エチル)アミド類を合成している。さらに、ウォール(Wohl)[J.Org.Chem.,38,3099(1973)]は、3−ブロモブタン−2−オールを濃硫酸中でアセトニトリルもしくはベンゾニトリル類と反応させて2−アミド−3−ブロモブタン類を得ている。また、これらのアミド類は不安定であり、容易に閉環して2−オキサゾリン類を生成することが報告されている。
【0029】
しかしながら、ハロアルコールとしてトランス−2−ハロインダン−1−オールを用いてのリッター反応の例はこれまで知られていない。本発明者等は、この反応についての検討を行った。
【0030】
一般式(I)で表される出発原料のトランス−2−ハロインダン−1−オール類としては、トランス−2−クロロインダン−1−オール、トランス−2−ブロモインダン−1−オール、トランス−2−ヨードインダン−1−オール等があげられる。
【0031】
トランス−2−クロロインダン−1−オールはシュター(Suter)等[J.Am.Chem.Soc.,60,1360(1938)]のインデンクロリドを加水分解する方法により合成できる。トランス−2−ブロモインダン−1−オールはポター(Poter)等[J.Am.Chem.Soc.,57,2022(1935)]のインデンと臭素水による方法、もしくはガス(Guss)等[J.Am.Chem.Soc.,77,2549(1955)]のインデンとN−ブロモスクシンイミドの水中における反応等で合成できる。
【0032】
本発明者等はトランス−2−ハロインダン−1−オールを用いてリッター反応を行ったところ、反応は円滑に進行して所望の一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体が得られた。このトランス−アミド誘導体はこれまで知られていないものである。さらに、本発明者等は、このアミド誘導体が容易に閉環して一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体に転化することを見いだした。先のウォール等の報文からリッター反応は立体特異性保持で進行することから、トランス−2−ハロインダン−1−オールのリッター反応生成物は一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体であり、ルッツ等の報文から、一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体が閉環することによって生成するオキサゾリン誘導体はシス配置を有する。この化合物は容易に加水分解して一般式(V)で表される所望のシス−1−アミノインダン−2−オールを与えた。
【0033】
本発明者等はさらに検討を進めた結果、リッター反応終了後の反応混合物を水分散した後に一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体を単離せずとも、分散状態でかき混ぜることで連続的に一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体および一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールが生成することを見いだした。リッター反応はカルボカチオンの生成に引き続くニトリルの攻撃で進行することが知られている。トランス−2−ブロモ−1−インダン−1−オールとニトリル類の酸性条件下における反応によるトランス−アミド誘導体の生成は、インダン骨格の1位にカルボカチオンが容易に生成すること、さらに1位の置換基の配置は2位の置換基に対してシス配置でもトランス配置でも可能であることを示唆している。
【0034】
本発明者等は、インダン骨格の1位に酸性条件下で容易に引き抜きが起こり得る置換基Xを、2位には置換基Yとしてハロゲンを有する一般式(I)の1,2−ジ置換インダンを選択して、一般式(II)で表されるニトリル類との反応を検討した結果、リッター反応が進行して一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体が生成することを見いだした。
【0035】
一般式(I)で表される1,2−ジ置換インダン類の1位の置換基Xとしては塩素、臭素、沃素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、水酸基等があげられる。また、2位の置換基であるハロゲン原子Yとしては塩素、臭素、沃素等があげられる。さらに具体的な一般式(I)の化合物としては、2−クロロインダン−1−オール、2−ブロモインダン−1−オール、2−ヨードインダン−1−オール、1,2−ジクロロインダン、1,2−ジブロモインダン、1,2−ジヨードインダン、1−クロロ−2−ブロモインダン、1−クロロ−2−ヨードインダン、2−クロロ−1−アセトキシインダン、2−ブロモ−1−アセトキシインダン、2−ヨード−1−アセトキシインダン、2−クロロ−1−メトキシインダン、2−ブロモ−1−メトキシインダン、2−ヨード−1−メトキシインダン等があげられる。
【0036】
原料となる1,2−ジブロモインダンはG.E.ヒースリー(Heasley)等[J.Org.Chem.,45,5150(1980)]の方法により、インデンのブロム化により合成できる。なお、この文献によると、アセトニトリル中でのブロム化でのシス:トランス比は21:79である。また、1−クロロ−2−ブロモインダンもインデンとBrClとの反応で得ることができる。さらに、R.A.オースチン(Austin)等の方法[J.Org.Chem.,34,1327(1969)]により、トランス−2−クロロ−1−メトキシインダンはトランス−2−クロロ−1−インダノールとジアゾメタンの反応で、シスあるいはトランス−1−アセトキシ−2−クロロインダンは2−クロロインダン−1−オールと塩化アセチルの反応で、トランス−2−クロロ−1−ヨードインダンはインデンとIClの反応で得ることができる。
【0037】
一般式(I)で表される1,2−ジ置換インダン類と一般式(II)で表されるニトリル類との混合は酸性条件下で行う。この酸性条件を得るためには発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることが好ましいが、これらに限らず、過塩素酸、三フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ゼオライト、イオン交換樹脂等、適当な酸性物質を用いることによっても所望の条件を得ることができる。
【0038】
一般式(II)で表されるニトリル類の使用量は一般式(I)で表される1,2−ジ置換インダン類に対して等モル以上が好ましく、過剰に用いてもよい。経済性や回収を考慮すると、アセトニトリルの使用が好ましい。使用する酸の使用量は一般式(I)で表される1,2−ジ置換インダン類に対して等モル以上が好ましい。より好ましい酸としては発煙硫酸、濃硫酸である。これらの酸の使用量が少ないと反応は完結しないこともある。反応には不活性な溶媒を用いてもよい。この工程における反応温度は−30℃から100℃が好ましい。より好ましくは10〜100℃である。温度が低すぎると反応の進行が遅く、高すぎると副反応により収率が低下する。反応終了後に混合物を冷水中に分散すること等により、一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体となる。これを濾過や抽出等の適当な方法で分離して適当な条件で処理すると、一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体が得られる。一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体の2位の置換基Yはハロゲン原子であるため、水分散後にかき混ぜれば一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体を与える。一般式(IV)のシス−オキサゾリン体を加水分解すると一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールが得られる。反応生成物の一般式(V)で表されるシス−1−アミノンダン−2−オールは酸性では水に溶解している。このため、不純物を除去する目的でこの水溶液を塩化メチレン等の水に不溶の有機溶媒で洗浄した後に、水酸化ナトリウム等の水溶液を加えることが好ましい。強アルカリ性になると目的とする一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールが晶出するため、これを濾別した後に乾燥すればよい。
【0039】
【化35】
【0040】
リッター反応によって得られた一般式(III )(ただし、式中、Yはハロゲン原子であり、Rはフェニル基もしくは低級アルキル基である)で表されるトランス−アミド誘導体は単離することなしに、そのまま分散状態でかき混ぜることによって目的とする一般式(V)のシス−1−アミノインダン−2−オールを得ることも可能である。この場合、アセトニトリルのような水溶性で揮発性の高いニトリルを過剰に使用した場合は、反応終了後に蒸留等によって除去した後に、溶媒洗浄して晶出させることが好ましい。出発原料はラセミ体でも光学活性体でもよく、光学活性な一般式(I)で表される1,2−ジ置換インダンを出発原料として用いた場合は、一般式(III )で表されるトランス−アミド誘導体、一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン体および最終的に得られる一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールも光学活性体になる。
【0041】
原料となるそれぞれの光学活性なトランス−2−ハロインダン−1−オール類はボイド(Boyd)等[J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,1982,2767]の方法によって、ラセミ体の一般式(I)で表されるトランス−2−ハロインダン−1−オールを(−)−メンチルオキシアセチルクロリドと反応させて、それぞれのジアステレオマーエステルとし、これをクロマトグラフィー等で分離した後ジボラン処理することで得られる。あるいはカサイ(Kasai)等[J.Org.Chem.,49,675(1984)]が報告しているようにラセミ体の一般式(I)で表されるトランス−2−ハロインダン−1−オールをアセチル化してラセミ体のトランス−2−ハロ−1−アセトキシインダンとし、これを微生物的に加水分解するか、イムタ(Imuta)等[J.Org.Chem.,43,4540(1978)]が報告しているように、2−ハロインダン−1−オンの微生物還元によって得られる。
【0042】
例えば、出発原料にトランス−(−)−2−ブロモインダン−1−オールを選択した場合はシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールが得られ、トランス−(+)−2−ブロモインダン−1−オールを選択した場合はシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールが得られる。
【0043】
また、それぞれの光学活性な一般式(I)で表される出発原料は光学活性な2−ハロインダン−1−オール類から誘導できる。
【0044】
さらに本発明者等は、1位に酸によって容易に引き抜きが起こり得る置換基を有し、2位の置換基としてOH基を有する前記一般式(I′)で表される1,2−ジ置換インダン類について前記反応条件でリッター反応の検討を行ったところ容易に反応が進行し、前記一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体が生成することを見いだした。これは前述のように加水分解することによって、一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールを生成した。
【0045】
一般式(I′)で表される1,2−ジ置換インダン類の酸で引き抜かれて1位にカルボカチオンを生成し得る置換基Xとしては、塩素原子、臭素原子、沃素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等があげられる。より具体的には、1,2−インダンジオール、1−アセトキシインダン−2−オール、1−エチルカルボニルオキシインダン−2−オール、1−ベンゾイルオキシインダン−2−オール、1−クロロインダン−2−オール、1−ブロモインダン−2−オール、1−ヨードインダン−2−オール、1−メトキシインダン−2−オール、1−エトキシインダン−2−オール等が使用できる。
【0046】
トランス−1,2−インダンジオールは、A.ガジス(Gagis)等の方法[J.Org.Chem.,37,3181(1972)]によりトランス−2−ブロモインダン−1−オールと希炭酸ナトリウム水溶液の反応によって得ることができる。また、シス−1,2−インダンジオールは、J.E.テイラー(Taylor)の方法[Synthesis,1142,(1985)]によって、インデンの過ギ酸酸化で得ることができる。さらに、シス−1−メトキシインダン−2−オールはM.イムタ(Imuta)等の方法[J.Am.Chem.Soc.,101,3990(1979)]によりシス−1,2−エポキシインダンのメタノール中における銅−ピリジン錯体の反応によって得ることができる。さらに、1−メトキシインダン−2−オールのシス:トランス=50:50混合物はシス−1,2−エポキシインダンと塩酸性メタノールの反応によって、トランス−1−メトキシインダン−2−オールはシス−1,2−エポキシインダンとナトリウムメトキシドの反応によって[G.H.ポスナー(Posner)等、J.Am.Chem.Soc.,99,8214(1977)]得ることができる。トランス−1−アセトキシインダン−2−オールは、G.H.ポスナー(Posner)等の方法[J.Am.Chem.Soc.,99,8208(1977)]を適用して、中性アルミナ存在下でシス−1,2−エポキシインダンと希酢酸の反応で得ることができる。
【0047】
出発原料はラセミ体でも光学活性体でもよく、光学活性な一般式(I′)で表される1−置換インダン−2−オールを出発原料として用いた場合は、一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体および最終的に得られる一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールも光学活性体となる。
【0048】
例えば、トランス−(−)−1,2−インダンジオールを出発原料として選択した場合はシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールが得られ、トランス−(+)−1,2−インダンジオールを出発原料として選択した場合はシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールが得られる。さらに、シス−(−)−1,2−インダンジオールを出発原料として選択した場合はシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールが得られ、シス−(+)−1,2−インダンジオールを出発原料として選択した場合はシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールが得られる。
【0049】
本発明者等は、さらに検討を進めた結果、一般式(VI)
【0050】
【化36】
【0051】
(ただし、式中、エポキシ環はシス配置であり、ラセミ体でも光学活性体でもよい)で表されるシス−1,2−エポキシインダンを出発物質とした場合でもリッター反応が進行し、所望の一般式(V)で表されるシス−1−アミノ−インダン−2−オールが得られることを見いだした。本反応は、下記のように一般式(VI)で表されるシス−エポキシドの酸による開裂に引き続くニトリル類の付加を経由して、一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体を生成するものと考えられる。これを加水分解すると一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールが生成する。
【0052】
【化37】
【0053】
この反応における出発原料の一般式(VI)で表されるシス−1,2−エポキシインダンは、ガジス(Gagis)等[J.Org.Chem.,37,3181(1972)]の方法により、トランス−2−ブロモインダン−1−オールと水酸化ナトリウム水溶液の反応で、もしくはフリンゲリ(Fringuelli)等[Org.Prep.Proced.Int.,21,757(1989)]の方法により、インデンの過酸化物酸化によって得ることができる。
【0054】
一般式(VI)で表されるシス−1,2−エポキシインダンと一般式(II)で表されるニトリル類との混合は酸性条件下で行う。この酸性条件を得るためには、濃硫酸もしくは発煙硫酸を用いることが好ましいが、これに限らず、過塩素酸、三フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ゼオライトやイオン交換樹脂等、適当な酸性物質を用いることによっても所望の条件を得ることができる。使用するニトリル類はシス−1,2−エポキシインダンに対し等モル以上が好ましく、過剰に用いても差し支えない。
【0055】
酸性条件を得るために硫酸もしくは発煙硫酸を用いる場合、その使用量はシス−1,2−エポキシインダンに対して等モル以上が好ましい。この工程における反応温度は−30℃から50℃が好ましい。より好ましくは−30℃から0℃である。反応終了後は混合物を冷水中に分散させる。生成した一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体は中和処理後に抽出等によって取り出すことができる。また、中和処理や抽出を行わずに、水に分散の後に加水分解することによっても、一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールを生成することができる。加水分解の反応温度は室温から100℃が好ましい。
【0056】
揮発性および水溶性の大きいアセトニトリルのようなニトリル類を過剰に用いた場合は、反応終了後に蒸留等でこれを除去することが好ましい。不純物は塩化メチレン等の水に不溶な有機溶媒で洗浄して除去することができる。目的とする一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールは酸性では水溶性のため、水酸化ナトリウム水溶液等を加えることにより、アルカリ性とし、晶析した目的物を固液分離すればよい。
【0057】
出発原料はラセミ体でも光学活性体でもよく、光学活性なエポキシドを出発原料とした場合は、得られる一般式(IV)で表されるシス−オキサゾリン誘導体および一般式(V)で表されるシス−1−アミノインダン−2−オールは光学活性体となる。例えば、シス−(+)−1,2−エポキシインダンを出発原料に選択した場合はシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールが得られ、シス−(−)−1,2−エポキシインダンを出発原料に選択した場合はシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールが得られる。
【0058】
出発原料のシス−(+)−1,2−エポキシインダンおよびシス−(−)−1,2−エポキシインダンは前述のボイド等の方法により、それぞれトランス−(+)−2−ブロモインダン−1−オールとトランス−(−)−2−ブロモインダン−1−オールの(−)−メンチルオキシアセチルエステルから合成することができる。
【0059】
以上説明した本発明の各製造方法において生じると推測される反応機構を模式的にまとめて例示すると以下のようになる。
【0060】
【化38】
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、安価に製造可能な1,2−ジ置換インダン類もしくはシス−1,2−エポキシインダンを原料としてトランス−アミド誘導体ないしシス−オキサゾリン誘導体を中間体として生成することによって、これまで工業的に製造することが困難であったシス−1−アミノインダン−2−オールを容易かつ効率的に製造し、これを医薬中間体として有効に利用することが可能になる。
【0062】
【実施例】
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明する。
【0063】
実施例1 トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)からトランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )の合成
300ml三ツ口フラスコにトランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I)21.3g(0.1mol)、アセトニトリル150mlを仕込んだ。冷却下に撹拌しつつ、懸濁状態で温度を10〜15℃に保ちながら発煙硫酸(SO3 含量25%)22.5gを1時間を要して滴下した。スラリーは徐々に溶解し、やがて黄色溶液となった。しばらく撹拌を続けると白色結晶が析出し、スラリーとなった。薄層クロマトグラフィーを行ったところ、原料の(I)は消滅していた。同温度で2時間かき混ぜた後、冷却しつつ15〜20℃で水100mlを加えた。
【0064】
白色結晶がいったん溶解した後に、再度白色の結晶が析出した。結晶を減圧濾過し、洗浄水が中性になるまで水洗し、減圧乾燥して14.2gの白色結晶を得た。母液と洗浄液から2次晶を濾別し同様に処理して6.73gの白色結晶を得た。
【0065】
ガスクロマトグラフィー分析の結果、1次晶の純度は96%、2次晶の純度は73%であった。1次晶のIR分析、1 H−NMR分析の結果、生成物は目的物のトランス−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )と確認した。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0066】
IR(KBr,cm-1) :3268(νNH),1653(νC=O )
1 H−NMR(CDCl3 ,ppm)
δ=7.19〜7.74(4H,m,arom.)
5.55(1H,dd,CH)
4.33(1H,q,CH)
3.24(1H,dd,CH2 )
3.54(1H,dd,CH2 )
6.26(1H,d,NHCO)
2.06(1H,s,CH3 )
実施例2 トランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
200ml三ツ口フラスコに実施例1で得られたトランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )の1次晶10.0g(0.039mol)と20%塩酸100mlを仕込み、かき混ぜながら加温した。約1時間を要して、20℃から75℃に昇温するとスラリーは徐々に減少し、75℃では無色透明な溶液となった。さらに108℃で2時間加熱撹拌した。その後、室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11にすると白色結晶が析出した。スラリーを減圧濾過し、水洗後に減圧乾燥して白色結晶3.26gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、生成物の純度は99.5%であった。また、IR分析、1 H−NMR分析の結果、ディディエ等(前出)の分析値と一致したことから、生成物は目的とするシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)と確認された。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0067】
IR(KBr,cm-1):3339(νNH),3272(νNH),3600(νOH).
1 H−NMR(CDCl3 ,ppm)
δ=7.23〜7.32(4H,m,arom.)
4.32(1H,d,CH)
4.38(1H,td,CH)
2.94(1H,dd,CH2 )
3.10(1H,dd,CH2 )
2.17(1H,s,OH)
2.22(2H,s,NH2 )
実施例3 トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)からトランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )の合成
200mlの四ツ口フラスコにアセトニトリル50ml、トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I)21.3g(0.1mol)を仕込み、かき混ぜながら5〜8℃で1時間を要して97%硫酸15.0gを滴下した。その後同温度で1時間、20〜25℃で2時間かき混ぜると白色のスラリーとなった。
【0068】
反応混合物の0.75gを採取し、水5ml中に分散して析出結晶をすばやく濾過して水洗後に未乾燥のまま重クロロホルム5mlに溶解した。この溶液を2時間後と4時間後に1 H−NMR分析を行ったところ、トランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )とシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )が生成していることが確認された。
【0069】
得られたシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )の1 H−NMRスペクトルは以下の通りであった。
【0070】
1 H−NMR(CDCl3 ,ppm)
δ=7.74〜7.76(1H,m,arom.)
7.19〜7.74(3H,m,arom.)
5.99(1H,td,CH)
5.90(1H,d,CH)
3.47(1H,d,CH2 )
3.64(1H,dd,CH2 )
2.43(3H,s,CH3 )
また、(III )と(IV)のメチルプロトンの積分比によれば、2時間後と4時間後の組成は以下の通りであった。
【0071】
【表1】
【0072】
この結果から、トランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )は不安定であって、徐々に閉環してシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )に変化することが認められた。
【0073】
反応終了後のスラリーの全量を、24時間放置後に冷却しながら10%炭酸水素ナトリウム水溶液215g中に注加した。析出結晶を濾過し、水100mlで洗浄後に減圧乾燥し、白色結晶の粗トランス−(±)−アミド誘導体(III :Y=Br,R=CH3 )23.8g(粗収率93.7%)を得た。
【0074】
実施例4 トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
200ml四ツ口フラスコに酢酸50ml、トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I)21.3g(0.1mol)、アセトニトリル4.52g(0.11mol)を仕込み、撹拌しつつ、23〜25℃で35分を要して97%硫酸12.1g(0.12mol)を滴下した。結晶は完全に消滅した。反応液はそのまま室温で20時間かき混ぜた。水200ml中に反応液を分散すると白色スラリーとなった。これを撹拌しつつ60℃で6時間加熱すると結晶は溶解した。室温まで冷却し、反応液を塩化メチレン100mlで2回洗浄し、分液した。水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11にすると結晶が析出した。これを減圧濾過し、水100mlで洗浄後、減圧乾燥すると白色結晶のシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)5.33gを得た。液体クロマトグラフィーによる純度は96.9%であった。
【0075】
実施例5 トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
200ml四ツ口フラスコに、トランス−(±)−2−ブロモインダン−1−オール(I)21.3g(0.1mol)とアセトニトリル50mlを仕込み、25℃で97%硫酸15.2gを約1時間を要して滴下し、その後、室温で2時間かき混ぜた。スラリー状の反応混合物を水140ml中に分散し、60℃で5時間かき混ぜた。次いで減圧下に過剰のアセトニトリルを留去し、さらに60℃で1時間かき混ぜた。室温まで冷却し、塩化メチレンで不純物を抽出によって除去した後、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11とした。析出結晶を減圧濾過し、水80mlで洗浄した後に減圧乾燥して白色結晶のシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)10.35gを得た。その分析値は以下の通りであった。
【0076】
融点:127.4〜129.2℃
液体クロマトグラフィーによる純度:98.2%
過塩素酸滴定による純度:99.4%
実施例6 シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
200ml四ツ口フラスコに、シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)9.24g(70mmol)とアセトニトリル35mlを仕込み、冷却下にかき混ぜながら、97%硫酸10.62gを30分を要して20〜25℃で滴下した。室温で1時間かき混ぜた後、30℃以下で水72.5mlを加えると黄色スラリー状となった。60℃で5時間加熱し、かき混ぜた後、アセトニトリルを減圧下に留去した。さらに60℃で1時間かき混ぜた。室温まで冷却し、塩化メチレン20mlと10mlで混合物から不純物を抽出して除去した。水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11とし、析出した結晶を濾別後に減圧乾燥すると灰白色結晶のシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)4.76g(粗収率45.7%)を得た。その2gを10℃のアセトニトリル6mlで洗浄し、濾過後、減圧乾燥すると白色結晶の(V)を1.68g回収した。液体クロマトグラフィーによるその純度は98.9%であった。
【0077】
実施例7 トランス−およびシス−(±)−1,2−ジブロモインダン(I:X=Y=Br)混合物からのシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
1)インデンからの(±)−1,2−ジブロモインダンの合成
1000ml四ツ口フラスコにインデン78.1g(純度96%,0.646mol)とアセトニトリル75mlを仕込み、氷浴で冷却した。0℃で予めアセトニトリル75mlに溶解しておいた臭素103.2g(0.646mol)を6時間を要して0〜5℃で滴下した。同温度で1.5時間かき混ぜ、最終的に黄色の1,2−ジブロモインダン(純度:HPLCで87.3%)のアセトニトリル溶液を得た。
【0078】
2)(±)−1,2−ジブロモインダンからのシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
1,2−ジブロモインダンのアセトニトリル溶液259.5g(インデン0.559molの臭素化に相当)を1000mlの四ツ口フラスコに仕込み、40℃に加温した。この溶液に、95%硫酸86.57g(0.839mol)を1.5時間を要して40〜46℃で滴下した。同温度で5時間かき混ぜた。HPLC分析すると、1,2−ジブロモインダンが約15%残存していた。さらに95%硫酸43.29gを加え、50〜60℃で1.5時間かき混ぜた。HPLC分析では、1,2−ジブロモインダンはほとんど消滅し、トランス−アミド誘導体(III :R=CH3 ,Y=Br)が11.0%,シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )が25.3%生成していた。
【0079】
水840mlを加えると、茶色の結晶が析出した。60℃で加温しつつかき混ぜると、結晶が徐々に溶解し、黄土色の溶液となった。そのまま4.5時間、撹拌を続けたところ、HPLC上ではシス−オキサゾリンのピークは消失した。
【0080】
常圧下に96〜97℃でアセトニトリル150mlを共沸蒸留した。25℃まで冷却し、ジクロロメタンを加えてかき混ぜた後に分液した。水層を2000mlのビーカーに採取し、25%水酸化ナトリウムを加えてpHを9〜10とした。析出結晶を減圧で濾過し、水洗、乾燥すると、シス−1−アミノインダン−2−オールの白色結晶48.3g(インデンからの収率:57.8%)を得た。
【0081】
実施例8 シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300ml四ツ口フラスコに、シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)10.0g(75.8mmol)、アセトニトリル50ml、ジクロロメタン40mlを仕込んだ。ドライアイス−アセトン浴で−30℃まで冷却し、これに100%硫酸(97%硫酸と発煙硫酸から調製)11.14g(113.6mmol)を−30〜−27℃で1時間を要して滴下した。1時間を要して室温に戻すと、白濁してスラリーとなった。内容物のHPLC分析ではシス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )が46.8%生成していた。また、トランス−アミド誘導体(III ′:R=CH3 ,Y=OH)は検出されなかった。水72mlを加え加温しつつ、アセトニトリル−ジクロロメタン−水共沸混合物を1時間を要して100ml留出させた。室温まで冷却してジクロロメタン100mlで2回洗浄して分液した。水層に25%水酸化ナトリウムを加えて強アルカリ性とし、析出結晶を減圧濾過し、水洗、乾燥して、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の白色結晶7.53g(収率:66.8%)を得た。HPLCによる純度は95.5%であった。
【0082】
実施例9 シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)から、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300ml四ツ口フラスコにシス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)10.0g(75.8mmol)、アセトニトリル40mlを仕込み、氷塩浴で−16℃に冷却した。これに発煙硫酸(無水硫酸25%を含む)10.62g(113.6mmol)を−13〜−17℃で1.5時間を要して滴下した。滴下終了後に1.5時間を要して室温まで戻した。HPLC分析によると、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )を21.2%含んでいた。また、トランス−アミド誘導体(III ′:R=CH3 ,Y=OH)は検出されなかった。次いで水72mlを加えた。実施例8と同様に処理し、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の白色結晶5.62g(収率:49.8%)を得た。HPLCによる純度は98.7%であった。
【0083】
実施例10 トランス−(±)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
100ml四ツ口フラスコに、トランス−(±)−1,2−インダンジオール(I′)4.48g(30.3mmol)、アセトニトリル40mlを仕込み、懸濁させた。室温でかき混ぜながら、97%硫酸6.14g(60.6mmol)を20分かけて加えた。内温は19℃から35℃に上昇した。スラリーは完溶し、微黄色透明溶液となった。24℃で1時間、60℃でさらに1時間かき混ぜた。HPLC分析すると、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )が70.8%生成しており、トランス−アミド誘導体(III ′:Y=OH,R=CH3 )は検出されなかった。水30mlを加え、60℃で3時間かき混ぜた。アセトニトリルを共沸蒸留で留去し、ジクロロメタンで洗浄後に分液し、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えると、結晶が析出した。これを減圧濾過、水洗して乾燥すると、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オールの白色結晶2.70g(収率:59.7%)を得た。HPLCによる純度は97.7%であった。
【0084】
実施例11 トランス−およびシス−(±)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
(±)−1,2−インダンジオール(シス:トランス=81.1:15.7)(I′)2.0g(13.33mmol)とアセトニトリル30mlを100ml四ツ口フラスコに仕込み、懸濁させた。30℃でかき混ぜながら、97%硫酸2.02g(20.0mmol)を30分かけて滴下した。ジオールのスラリーは硫酸の滴下とともに減少した。60℃で2時間かき混ぜると、HPLCではジオールは消滅し、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )は48.8%であった。水25mlを加え、60℃で24時間かき混ぜた。反応液は赤褐色溶液となった。アセトニトリルを減圧下で留去し、ジクロロメタン100mlで3回洗浄した後、水層を25%水酸化ナトリウムで強アルカリ性にした。ジクロロメタン100mlで2回抽出し、ジクロロメタン層を減圧で濃縮し、灰白色結晶1.10gを得た。HPLC分析では、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)が89.2%含まれており、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )から(V)生成の際の加水分解中間体である、シス−(±)−2−ヒドロキシ−1−アセトアミノインダンが9.3%含まれていた。
【0085】
実施例12 (±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′:X=OCH3 )から、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
1) シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)からトランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′:X=OCH3 )の合成
500ml四ツ口フラスコにメタノール120mlを仕込み、粉末のナトリウムメトキシド16.4g(0.304mol)を溶かした。30℃で、メタノール80mlに溶解したシス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)20.0g(0.152mol)を90分かけて滴下した。30℃で5時間かき混ぜた後、水100mlを加え、1N塩酸270mlで中和し、メタノールを減圧で留去した。ジクロロメタン200mlで2回抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウムで一夜乾燥した。ジクロロメタン層を減圧下に濃縮して、オレンジ色の油状物質28.5gを得た。これをクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って精製し、淡黄色オイルのトランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′)16.32g(収率:65.5%)を得た。HPLC分析による純度は95.4%であった。
【0086】
1 H−NMRスペクトルおよびIRスペクトルは、G.H.ポスナー(Posner)等、[J.Am.Chem.Soc.,99,8214(1977)]の値と一致した。
【0087】
2)トランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′:X=OCH3 )からシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300ml三ツ口フラスコにアセトニトリル70ml、トランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′)10.0g(0.061mol)を仕込んだ。30℃で、アセトニトリル35mlに溶解したメタンスルホン酸11.7g(0.122mol)を1時間で滴下した。60℃で4時間かき混ぜたところ、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )がHPLC分析で60.0%生成した。水50mlを加え、60℃で3時間かき混ぜた。アセトニトリルを減圧で留去し、ジクロロメタン100mlで2回洗浄した。水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10とした。析出結晶を減圧で濾過し、水洗、乾燥して白色結晶3.36gを得た。この結晶をHPLC分析すると、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オールが79.5%含まれていた。また、加水分解不十分の場合の副生成物であるシス−(±)−1−アセトアミドインダン−2−オールが18.6%含まれていた。この副生成物はクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って分離し、標品(シス−(±)−1−アミノインダン−2−オールと塩化アセチルから合成した)とのIRスペクトルが一致したことでその構造を確認した。
【0088】
実施例13 トランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′:X=OCH3 )からのシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
トランス−(±)−1−メトキシインダン−2−オール(I′)14.5gをアセトニトリル100mlに溶解し、30℃に加温した。これにアセトニトリル50mlに溶解した97%硫酸11.49g(113.6mmol)を同温度で1時間を要して滴下し、60℃で3時間かき混ぜた。HPLC分析の結果、シス−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )が53.3%生成していた。水72mlを加え、60℃で4時間かき混ぜ、実施例12と同様に処理して、白色結晶4.34gを得た。HPLC分析の結果によると、この結晶はシス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)53.4%とシス−(±)−1−アセトアミドインダン−2−オール46.6%を含んでいた。
【0089】
実施例14 シス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)からシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )の合成
300ml四ツ口フラスコにシス−(±)−1,2−エポキシインダン(VI)10.0g(75.75mmol)、アセトニトリル170ml、ジクロロメタン170mlを仕込み、かき混ぜながら−16℃に冷却した。同温度で25%発煙硫酸14.2g(151.5mmol)を1時間を要して滴下した。さらに1時間を要して23℃まで昇温し、23℃で4時間かき混ぜた。析出結晶を濾過し、アセトニトリル20ml、ジクロロメタン50mlで洗浄した後に減圧乾燥し、白色結晶の粗シス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )の硫酸塩9.98gを得た。50mlナス型フラスコに水10mlを仕込み、水酸化ナトリウム1.0g(25mmol)を溶かした。ジクロロメタン20mlを加え、先に得た硫酸塩3.0gを加えた。10分間かき混ぜた後に分液し、水層をさらにジクロロメタン20mlで抽出した。ジクロロメタン層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後に溶媒を留去して、白色結晶のシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )1.22gを得た。その融点は65.0〜66.5℃であった。この物質の1 H−NMRスペクトルは実施例3のシス−(±)−オキサゾリン誘導体(IV:R=CH3 )のスペクトルと一致した。
【0090】
実施例15 光学活性なトランス−(−)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)から、光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
トランス−(−)−1,2−インダンジオール(トランス体:98.0%、シス体:2.0%、光学純度100%e.e)(I′)3.0g(20.1mmol)をアセトニトリル40mlに溶かし、室温で97%硫酸3.2g(31.7mmol)を30分を要して滴下した。室温で1時間かき混ぜると、(I′)はHPLC上で消失した。反応液に水20mlを加え、すぐに加熱して、常圧でアセトニトリル−水共沸混合物を42ml留去した。さらに、常圧下で1.5時間還流して反応を完結させた。反応液を室温まで冷却し、ジクロロメタン10mlで2回洗浄し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。析出した灰白色鱗片状結晶を減圧濾過後に少量の水で洗浄し、減圧乾燥してシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の1次晶1.77gを得た。さらに、晶析後の母液をジクロロメタン抽出後に抽出層を濃縮して(V)の2次晶0.69gを得た。
【0091】
1次晶の分析結果
純度 :97.5%(HPLC内部標準物質法)
純分含量:1.73g(収率:57.7%)
光学純度:99.8%e.e.
2次晶の分析結果
純度 :91.6%(HPLC内部標準物質法)
純分含量:0.63g(収率:21.0%)
光学純度:99.8%e.e.
実施例16 光学活性なシス−(−)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)から、光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
シス−(−)−1,2−インダンジオール(シス体:97.5%、トランス体:2.5%、光学純度100%e.e.)(I′)3.0g(20.1mmol)およびアセトニトリル40mlを100ml四ツ口フラスコに仕込み、溶かした。室温で97%硫酸3.2g(31.7mmol)を30分を要して滴下した。室温で1時間かき混ぜると、HPLC分析で原料の(I′)は消失した。反応液に水20mlを加え、すぐに加熱し、常圧で水−アセトニトリル共沸混合物42mlを留去した。さらに還流下に1.5時間かき混ぜ反応を完結させた。室温まで冷却し、反応液をジクロロメタン10mlで2回洗浄し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。析出した灰白色鱗片状結晶を減圧濾過後に少量の水で洗浄し、減圧乾燥してシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の1次晶0.78gを得た。さらに母液をジクロロメタン抽出し、抽出層を濃縮して(V)の2次晶1.93gを得た。
【0092】
1次晶の分析結果
純度 :98.9%(HPLC内部標準物質法)
純分含量:0.77g(収率:25.7%)
光学純度:99.9%e.e.
2次晶の分析結果
純度 :98.7%(HPLC内部標準物質法)
純分含量:1.90g(収率:63.3%)
光学純度:99.9%e.e.
実施例17 光学活性なシス−(+)−1,2−エポキシインダン(VI)から、光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300mlフラスコにアセトニトリル30mlを仕込み−16℃に冷却した。同温度で、シス−(+)−1,2−エポキシインダン(光学純度:95.1%e.e.)(VI)10.0g(75.8mmol)をアセトニトリル10mlに溶かした溶液と97%硫酸11.5g(113.6mmol)をそれぞれ同時に滴下した。滴下には2時間10分を要した。反応液の冷却を止めて徐々に室温に戻した。水72mlを加えると白色結晶が析出した。反応混合物を加熱し、常圧で水−アセトニトリル共沸混合物を74ml留去し、還流下に1時間かき混ぜた。オキサゾリン誘導体の白色結晶は消失し、透明な溶液となった。室温まで冷却し、反応液をジクロロメタン50mlで2回洗浄し、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。析出した白色鱗片状結晶を減圧濾過し、少量の水で洗浄した後に減圧乾燥して、シス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)6.69g(収率:59.3%)を得た。この結晶の化学純度は96.9%であり、光学純度は99.6%e.e.であった。
【0093】
実施例18 光学活性なシス−(−)−1,2−エポキシインダン(VI)から、光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300mlフラスコにアセトニトリル30mlを仕込み、−18℃に冷却した。同温度で、シス−(−)−1,2−エポキシインダン(光学純度:94.0%e.e.)(IV)10.0g(75.8mmol)をアセトニトリル10mlに溶かした溶液と97%硫酸11.5g(113.6mmol)をそれぞれ同時に滴下した。滴下には2時間30分を要した。反応液を室温に戻し、水72mlを加えると白色結晶が析出した。かき混ぜながら反応混合物を加熱し、常圧で水−アセトニトリル共沸混合物を75ml留去し、さらに還流下に1時間かき混ぜた。オキサゾリン誘導体の白色結晶は消失し、透明な溶液となった。室温まで冷却し、反応液をジクロロメタン50mlで洗浄し、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。析出した白色鱗片状結晶を減圧濾過し、少量の水で洗浄した後に減圧乾燥して、シス−(+)−1−アミノインダン−2−オール(V)6.78g(収率:60.0%)を得た。この結晶の化学純度は98.2%であり、光学純度は98.2%e.e.であった。
【0094】
実施例19 トランス−(±)−2−クロロインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Cl)から、シス−(±)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
300mlフラスコにトランス−(±)−2−クロロインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Cl)23.6g(140mmol)とアセトニトリル70mlを仕込み、かき混ぜながら、20〜30℃で98%硫酸23.8g(238mmol)を100分で滴下した。水190mlを加え、60℃で2時間かき混ぜた。さらに、常圧下にアセトニトリル−水共沸混合物130mlを留去し、水50mlを加えて更に3時間還流した。室温まで冷却し、不溶物を減圧濾過した後、濾液をジクロロメタン60mlで洗浄した。水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11に調整した。析出結晶を減圧濾過し、少量の水で洗浄後に減圧乾燥して白色結晶9.76gを得た。この結晶を内部標準物質法で分析すると、目的とする(V)が6.95g(収率:33.2%)含まれていた。先の濾過母液をジクロロメタン200mlで抽出し、有機層を濃縮して白色結晶2.25gを得た。この結晶を内部標準物質法で分析すると、目的とする(V)が1.42g(収率:6.8%)含まれていた。
【0095】
実施例20 光学活性なトランス−(+)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)から、光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
トランス−(+)−1,2−インダンジオール(トランス体:98.3%、シス体:1.7%、光学純度93.0%e.e.)(I′)3.0g(20.1mmol)およびアセトニトリル40mlを100ml反応フラスコに仕込み、室温でかき混ぜながら97%硫酸4.06g(40.2mmol)を30分で加えた。同温度で1時間、さらに60℃で4時間かき混ぜた後、水20mlを加え室温で一夜かき混ぜた。常圧下にアセトニトリル−水共沸混合物を44ml留去し、さらに3.5時間還流した。室温まで冷却し、反応液をジクロロメタン10mlで2回洗浄後、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11に調整した。析出結晶をジクロロメタンで溶解、抽出した後に有機層を濃縮し、白色結晶の(V)を2.37g得た。HPLCによる内部標準物質法で求めた純度は96.7%であり、目的物収量は2.29g(収率:76.3%)であった。また、光学純度は96.8%e.e.であった。
【0096】
実施例21 光学活性なシス−(+)−1,2−インダンジオール(I′:X=OH)から、光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
シス−(+)−1,2−インダンジオール(シス体:97.2%,トランス体:2.8%,光学純度93.0%e.e.)(I′)3.0g(20.1mmol)およびアセトニトリル40mlを100ml反応フラスコに仕込み、室温でかき混ぜながら97%硫酸4.06g(40.2mmol)を30分で加えた。同温度で1時間、さらに60℃で2時間かき混ぜた。反応液に水20mlを加えた後に加熱し、内温が101℃になるまでアセトニトリル−水共沸混合物を常圧下に留去した。さらに還流下に2時間かき混ぜ、室温まで冷却した。反応液をジクロロメタン10mlで2回洗浄し、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約11に調整した。ジクロロメタン抽出後に抽出層を飽和食塩水10mlで洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧下に濃縮し、白色結晶の(V)2.37gを得た。HPLCによる内部標準物質法で求めた純度は96.5%であり、目的物収量は2.29g(収率:76.3%)であった。また、光学純度は97.6%e.e.であった。
【0097】
実施例22 光学活性なトランス−(+)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)から、光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
10mlのナス型フラスコにトランス−(+)−2−ブロモインダン−1−オール(光学純度:81.6%e.e.)(I:X=OH,Y=Br)1.07g(5.0mmol)およびアセトニトリル2.6mlを仕込み、マグネチックスタ−ラ−でかき混ぜるとともに水浴で冷却しながら、97%硫酸0.76g(7.5mmol)を2時間で滴下した。1時間室温でかき混ぜ、水6.5mlを加えた。アセトニトリル−水共沸混合物を浴温40℃,200mmHgの減圧下に留去した後に常圧下で80℃に加熱し、同温度で4.5時間かき混ぜた。反応液を室温まで冷却し、ジクロロメタン10mlで2回洗浄した。分液後の水層に25%水酸化ナトリウムを加えてpHを11に調整した。ジクロロメタン10mlで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後に溶媒を留去して0.60gの粗生成物を得た。これを97%硫酸に溶かし、ジクロロメタン10mlで2回洗浄した。その後、室温に冷却しながら、25%水酸化ナトリウムでpHを7に調整し、ジクロロメタン10mlで2回洗浄した。水層に25%水酸化ナトリウムを加えてpHを11に調整し、ジクロロメタンで抽出後に無水硫酸ナトリウムで乾燥後に減圧乾固して、白色結晶のシス−(−)−1−アミノインダン−2−オール(V)0.38g(収率:51.0%)を得た。このもののHPLCによる化学純度は98.5%であり、光学純度は82.0%e.e.であった。
【0098】
実施例23 光学活性なトランス−(−)−2−ブロモインダン−1−オール(I:X=OH,Y=Br)から光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オール(V)の合成
10mlナス型フラスコに、トランス−(−)−2−ブロモインダン−1−オール(比旋光度による光学純度:42.5%)(I:X=OH,Y=Br)1.07g(5.0mmol)およびアセトニトリル2.6mlを仕込み、マグネチックスターラーでかき混ぜながら、室温で97%硫酸0.76g(7.5mmol)を2時間で加えた。室温で1時間かき混ぜた後、水6.5mlを加えた。40℃、200mmHgの減圧下にアセトニトリル−水共沸混合物を留去し、次いで60℃で4.5時間かき混ぜた。反応液を室温まで冷却し、反応液をジクロロメタン10mlで2回洗浄した。水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7に調整し、ジクロロメタン10mlで2回洗浄した。さらに、水層に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11とした。ジクロロメタン10mlで3回抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後に減圧留去し、白色結晶のシス−(+)−1−アミノインダン−2−オール0.47g(収率:63.0%)を得た。HPLCによる化学純度は98.8%,比旋光度による光学純度は42.0%であった。
Claims (30)
- 一般式(I)
- 一般式(I)において、XがOH基であり、Yが臭素原子であり、XとYはトランス配置であるトランス−2−ブロモインダン−1−オールを用いることを特徴とする請求項1記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I)において、XおよびYが臭素原子である1,2−ジブロモインダンを用いることを特徴とする請求項1記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法
- 一般式(II)においてRがメチル基であるアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項1記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 前記酸性条件を得るために発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることを特徴とする請求項1記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I)において、XがOH基であり、Yが臭素原子であり、XとYはトランス配置である光学活性なトランス−(−)−2−ブロモインダン−1−オールを用いることを特徴とする請求項1記載の光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I)において、XがOH基であり、Yが臭素原子であり、XとYはトランス配置である光学活性なトランス−(+)−2−ブロモインダン−1−オールを用いることを特徴とする請求項1記載の光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がトランス配置であるトランス−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がトランス配置である光学活性なトランス−(−)−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載の光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がトランス配置である光学活性なトランス−(+)−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載の光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がシス配置であるシス−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がシス配置である光学活性なシス−(−)−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載の光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基であり、両OH基がシス配置である光学活性なシス−(+)−1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項8記載の光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(II)において、Rがメチル基であるアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項8記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 前記酸性条件を得るために発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることを特徴とする請求項8記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(III )においてRがメチル基であるトランス−アミド誘導体を用いることを特徴とする請求項17記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
- 前記酸性条件を得るために発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることを特徴とする請求項19記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
- 一般式(I′)において、XがOH基である1,2−インダンジオールを用いることを特徴とする請求項19記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
- 一般式(II)において、Rがメチル基であるアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項19記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
- 一般式(VI)
- 一般式(II)においてRがメチル基であるアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項23記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 前記酸性条件を得るために発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることを特徴とする請求項23記載のシス−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(VI)において、光学活性なシス−(+)−1,2−エポキシインダンを用いることを特徴とする請求項23記載の光学活性なシス−(−)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(VI)において、光学活性なシス−(−)−1,2−エポキシインダンを用いることを特徴とする請求項23記載の光学活性なシス−(+)−1−アミノインダン−2−オールの製造方法。
- 一般式(II)において、Rがメチル基であるアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項28記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
- 前記酸性条件を得るために発煙硫酸もしくは濃硫酸を用いることを特徴とする請求項28記載のシス−オキサゾリン誘導体の製造方法。
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