JP3725312B2 - 含クロム溶鋼の精錬方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロムの酸化損失を少なくするとともに、精錬炉の耐火物の溶損を軽減する含クロム溶鋼の精錬方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンレス鋼のような11mass%以上のクロムを含む含クロム溶鋼の脱炭精錬法としては、脱炭中期以降(例えば〔C〕0.7mass%以下)において、希釈ガスを吹込んで雰囲気中のCO分圧を下げる希釈脱炭法および取鍋に出鋼し取鍋内を減圧して処理を行う真空脱炭法が広く用いられている。前者は一般にAOD法および上底吹き転炉法と呼ばれ、後者はVOD法と呼ばれている。
【0003】
これらの方法は、いずれも溶鋼中〔Cr〕の酸化損失を抑えながら効率的に脱炭を進行させようとするものである。しかしながら、〔C〕濃度が低下するにつれて〔Cr〕の酸化が避けられず、〔Cr〕の酸化量が増大していた。
【0004】
従来、溶鋼中〔Cr〕の酸化損失を抑えるために、例えばVOD法では、特開昭55−89417号公報や特開昭55−152118号公報に示されているように、脱炭の進行に応じた酸素供給量の調整や真空度の調整(100Torr以下)を行っている。
【0005】
また、AOD法では〔C〕濃度の低下に応じて希釈ガス比率を上げる方法や、あるいは特開平3−68713号公報および特開平4−254509号公報に示されているように脱炭途中より真空精錬を付与する方法が行われている。
【0006】
これらの方法では、いずれも溶鋼温度の測定は間欠的に行うか、あるいは測定を行っていないために、溶鋼温度に応じた精錬操作が行われておらず、〔Cr〕の酸化は十分には抑えられていない。
【0007】
熱力学平衡的には、溶鋼中〔C〕濃度(mass%、以後〔%C〕と記す。)と溶鋼中〔Cr〕濃度(mass%、以後〔%Cr〕と記す。)と雰囲気中のCOガス分圧PCO(atm)および溶鋼温度T(℃)との間には次の▲2▼式に示す関係が知られている。
【0008】
Figure 0003725312
【0009】
平衡として考えた場合には、精錬中の〔%Cr〕と〔%C〕およびPCOにより▲2▼式で計算される溶鋼温度よりも、実際の溶鋼温度が低ければ〔Cr〕の優先酸化領域となるために、脱炭よりも先行して〔Cr〕の酸化損失が生じる。
【0010】
▲2▼式より、例えばPCOを0.1以下とするか、Tを1800℃以上とするように極端にPCOを下げるか、あるいはTを上げれば、理論的には〔Cr〕の酸化は抑えられる。
【0011】
しかし、極端にPCOを下げることは高価な希釈ガスを多量に使用することになり、精錬コストの上昇を招き、有効な手段ではない。また、極端に溶鋼温度を上げることは、高温状態で長時間の精錬を行うことになり、耐火物溶損が非常に大きくなるために、有効な手段にはならない。
【0012】
溶鋼温度との組み合わせで、〔Cr〕の酸化損失を抑える方法として、特開昭61−3815号公報には、上底吹き機能を有する精錬炉により高クロム含有鋼を製造する方法において、鋼浴中〔C〕濃度が2%以下で、溶鋼温度を1650〜1800℃以内に保ちながら、▲3▼式で定義されるBOC値を30以下に制御して吹錬することにより、〔Cr〕の酸化を抑制する方法が示されている。
【0013】
BOC=QO2/(W/τ)×〔%C〕─────▲3▼
O2:ランスおよびノズルから供給される酸素ガス流量(Nm3/min)
W :溶鋼量(ton)
τ :均一混合時間(sec)
【0014】
しかし、この方法でも〔Cr〕の酸化損失を抑制するために、1650〜1800℃の高温状態に長時間保持する必要があり、耐火物溶損が非常に大きいという問題が有る。
【0015】
一方、溶鋼温度を連続的に測定する手段としては、特開昭63−203716号公報に開示された方法がある。この方法は転炉等の反応容器の底部、側壁あるいは上部等から光ファイバーを溶鋼中に浸漬し、光ファイバーと接続する放射温度計により溶鋼温度を測定するものであり、この測定値により、冷却材等を使用して溶鋼温度を制御することが示されている。
【0016】
しかし、この方法は、消耗型の光ファイバーを使用するために、安定して連続に溶鋼温度を測定することは難しく、かつコスト的にも高価となる。また、含クロム溶鋼の〔Cr〕の酸化損失を抑える方法、耐火物の溶損を抑える方法、および脱炭精錬後還元あるいは仕上げ精錬後の出鋼温度の制御方法についての記載はなく、指針を与えるものではない。
【0017】
一般に、耐火物の溶損は溶鋼温度、精錬時間に依存しており、高温状態で長時間の精錬を行えば急激な耐火物の溶損が進行する。また、耐火物の溶損にはスラグの性状も大きく影響しており、スラグが溶融状態で存在する脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬では精錬時間が長くなればなるほど耐火物の溶損量は増大する。しかしながら、従来の技術では溶鋼温度を連続的に測定する手段が十分でなく、そのため、脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬の精錬時間を短時間に制御するための十分な指針は与えられておらず、耐火物の溶損量は高位にあった。
【0018】
これまでの含クロム溶鋼の精錬では、溶鋼温度を連続的に測定することは容易でないために、〔Cr〕の酸化を抑制するための吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率、合金の添加量、スクラップ等の冷却材の添加量、CaO等の副原料の添加量の各操作要因を適正に制御することが出来なかった。
【0019】
したがって、〔Cr〕の酸化損失を抑制するために、例えば必要以上の高温状態で吹錬を実施し耐火物の損耗を招いてしまうことや、必要以上に吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率を低下させてしまい、生産性の低下を招いてしまうことや、合金、冷却材、副原料の添加が遅れてしまい、生産性の低下および耐火物の溶損を招いてしまうといった問題点を生じていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、含クロム溶鋼の精錬において、前記の従来の開示されている技術では、〔Cr〕の酸化損失の抑制が十分でなく、かつ、耐火物の溶損が大きいという問題点や、これらを解決するための処置をとれば生産性の低下を招くという問題点を解決するものであり、溶鋼温度を連続的に測定する手段を備えることで、適度な酸素ガス比率に制御しながら、必要十分な溶鋼温度に維持、制御した上で、〔Cr〕の酸化損失を抑制し、かつ耐火物の溶損を低減できる含クロム溶鋼の精錬方法を提供することを目的としたものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、含クロム溶鋼の精錬において、溶鋼温度を連続的に測定し、脱炭精錬では溶鋼温度の変化に応じて、吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率、合金、冷却材、副原料の添加量を制御することで〔Cr〕の酸化損失を抑制し、かつ耐火物の溶損を抑制することが可能であることを見い出した。さらに、脱炭精錬後の還元精錬および仕上げ精錬ではガス吹込み時間、冷却材と副原料の添加量を制御することで、耐火物の溶損を抑制することが可能であることを見い出した。
【0022】
本発明の要旨は、以下の各方法にある。
【0023】
含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%以上の領域で、溶鋼温度が下記(1)式で求まる温度tよりも低い場合には、吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率を0.1以上低下させるか、又はSi濃度が0.1mass%以上になるようにシリコンを含む合金を添加する。
【0024】
t=110/〔%C〕+1450 (℃) (1)
〔%C〕:溶鋼中〔C〕濃度(mass%)
【0025】
含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%以上の領域で、溶鋼温度が前記(1)式で求まる温度tより100℃以上高い場合には、溶鋼とtとの差が30℃以上80℃以下になるように、合金、冷却材、副原料の1種又は2種以上を添加する。
【0026】
含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%未満の領域では、溶鋼温度が1670℃以上、1740℃以下になるように、吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率、合金の添加量、冷却材の添加量、CaO等の副原料の添加量の1種又は2種以上を制御する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細な内容について説明する。図1に本発明の実施態様例を模式図で示す。AOD炉1には溶鋼3が装入されており、溶鋼3上にはクロム酸化物を含むスラグ2が存在している。そこに、合金、冷却材、副原料を収容したホッパー8から切り出し装置9、投入シュート10を経て、合金、冷却材および副原料が添加される。合金としては、フェロクロム(Fe−Cr)、フェロニッケル(Fe−Ni)、フェロシリコン(Fe−Si),アルミ合金等が含まれ、冷却材には種々形状、銘柄のスクラップ、副原料にはCaO,CaF,MgO,SiO等が含まれており、精錬する鋼種により種々選択することが可能である。
【0028】
AOD炉1の内側には上吹きランス4、側壁には底吹き羽口5が設置され、上吹きランス4および底吹き羽口5から、酸素ガスと不活性ガスが吹き込まれる。AOD炉1の炉底には測温用羽口14が設置され、測温用羽口14に接続されたパージガス供給ライン15の中には輝度によって溶鋼温度を測定するイメージファイバー16が挿入されている。パージガスには通常はArガスを用いるが、窒素ガス、COガスであっても構わない。また、測温用羽口14の先端が閉塞した場合には該羽口を開口するために、必要に応じて酸素ガス、空気、CO2 ガスを供給することも可能である。
【0029】
イメージファイバー16で得られた情報は測温処理装置17において、画像処理と信号処理がなされて輝度から温度の情報に変換され、溶鋼温度情報として出力される。また、排ガス設備11内に設置された排ガス流量・組成測定装置18から、物質収支計算により溶鋼中の〔C〕濃度情報が出力される。さらに、装入した溶鋼3の量および〔Cr〕濃度、切り出し装置9から添加した合金の量および〔Cr〕品位より、物質収支計算により溶鋼中〔Cr〕濃度情報が出力される。
【0030】
制御演算装置24は、これらの溶鋼温度、〔C〕濃度、〔Cr〕濃度の情報により〔Cr〕の酸化損失および耐火物の溶損を抑制するための操業条件の計算を行い、その指示を上吹きガスライン6に設けた上吹きガス制御装置12、底吹きガスライン7に設けた底吹きガス制御装置13、および切り出し装置9に伝達して、操業条件を制御する。
【0031】
図2に他の実施態様例の模式図を示す。図1と異なる点は、AOD炉1の底部に分析用羽口20を設置し、該羽口20に接続された分析用パージガス供給ライン22内に分析用ファイバー21を挿入して設けた点である。パージガスとしては〔C〕や〔N〕のような軽元素成分を測定するためにはArガスを用いるが、窒素ガス、COガスであっても構わない。また、閉塞した羽口先端を開口するために必要に応じて酸素ガス、空気、CO2 ガスを供給することも可能である。
【0032】
分析方法としては、例えば、特開昭60−42644号公報に開示されているようなレーザーによる発光を利用した分析方法がある。本実施態様では、前記実施態様の排ガスからの〔C〕濃度情報および溶鋼からの〔Cr〕濃度情報の代わりに、分析システム23から〔C〕濃度情報および溶鋼組成情報が得られ、これを基に、制御指示が可能となる。
【0033】
図1に示した装置を用いて、酸素ガスと不活性ガスの吹込みガスによる脱炭精錬を行う含クロム溶鋼の脱炭精錬、および不活性ガスを用いて脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬を行う含クロム溶鋼の精錬を実施する場合は、溶鋼温度を連続的に測定する手段が備えられているために、得られた溶鋼温度の情報に応じて、吹込みガス流量、吹込みガスの酸素ガス比率、合金の添加量、冷却材の添加量、副原料の添加量の1種又は2種以上を制御することが可能になる。
【0034】
この制御により、冶金特性上の必要な溶鋼温度以上の高温状態として、耐火物の溶損を招くことや、必要以上に吹込みガスの酸素ガスの比率を低下させること、又は合金、冷却材、副原料の添加時期を遅らせることで処理時間が延長し、生産性を低下させるというような問題点が解決され、効率的な含クロム溶鋼の精錬が可能となる。
【0035】
ここで、酸素ガスと不活性ガスの吹込みガスによる脱炭精錬、および不活性ガスを用いた脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬を含クロム溶鋼の精錬に限定したのは以下の理由による。
【0036】
含クロム溶鋼の脱炭精錬では、前記の他に大気圧下で酸素ガスのみを用いて脱炭する場合および減圧下で酸素ガスのみを用いて脱炭する場合もあるが、これらの場合には溶鋼温度の情報が得られても、それに応じて脱炭精錬を制御する手段に乏しく、かつ、いずれの場合も1700℃以上の高温下で脱炭を行う場合が主体であるために、〔Cr〕の酸化損失の変動する率が小さく、溶鋼温度制御の効果代は小さい。
【0037】
一方、酸素ガスと不活性ガスによる脱炭精錬では、一般に精錬炉への装入直後の溶鋼温度は1400〜1600℃レベルであるが、その後の精錬中に1700℃以上となる。溶鋼温度が1700℃以上になると、吹込み酸素の脱炭に使用される割合(以後、脱炭酸素効率と記す。)が大きくなると共に溶鋼温度、〔C〕濃度および吹込みガスの酸素ガス比率に依存して変化し、〔Cr〕の酸化損失量が変動する。そのために、連続的に測定された溶鋼温度に応じて、溶鋼温度の制御および吹込みガスの酸素ガス比率の制御を行う精錬制御は、〔Cr〕の酸化損失の抑制および耐火物の溶損の抑制に効果的な手段となる。
【0038】
不活性ガスを用いた脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬を行う含クロム溶鋼の精錬では、精錬時間が長いほど耐火物の溶損が大幅に増大する。また、出鋼後の目標温度よりも溶鋼温度を下げてしまうと、酸素ガスを吹込んで昇温操作を行うような再精錬等の処置が必要になり、精錬炉への負荷の増大および生産性の低下を招いてしまう。このような問題を解決するために、連続的に測定された溶鋼温度に応じて、ガス吹込み時間の制御および溶鋼温度の制御を行う精錬制御は効果的な手段となる。
【0039】
次に、本発明における数値の限定理由について説明する。
前記に記載の〔C〕濃度0.5mass%以上における(1)式の〔%C〕と溶鋼温度tの関係は、本発明者らが、酸素ガスと不活性ガスの吹込みによる含クロム溶鋼の脱炭精錬において見い出したものである。図3に実際の溶鋼温度とtの差と〔Cr〕酸化指数の関係を示し、図4に実際の溶鋼温度とtの差と耐火物溶損指数の関係を示す。なお、〔Cr〕酸化指数は実際の溶鋼温度とtの差が0の時の〔Cr〕酸化量を1として比例換算した値であり、耐火物溶損指数は実際の溶鋼温度とtの差が100の時の耐火物溶損量を1として比例換算した値である。
【0040】
図3より、実際の溶鋼温度がtよりも低い場合には〔Cr〕の酸化損失が大幅に増大すること、および図4より、実際の溶鋼温度がtよりも100℃以上高い場合には急激に耐火物の溶損が進行することを導き出した。
【0041】
実際の溶鋼温度がtよりも低い場合には〔Cr〕の酸化損失を抑える制御が必要になるが、その手段としては前記▲2▼式の関係よりPCOを低下させるか、溶鋼温度Tを上昇させることが有効である。本発明者らは種々の実験より、〔Cr〕の酸化損失を抑えるためのPCOの低下代として、少なくとも吹込みガスの酸素ガス比率を0.1以上低下させる必要があること、および溶鋼温度Tの上昇についてはSi濃度0.1mass%以上とすることが必要であることを見い出した。
【0042】
吹込みガスの酸素ガス比率が0.1未満であればPCOの変化代が小さいために、〔Cr〕の酸化損失の抑制はほとんど認められない。なお、酸素ガス比率をあまりにも下げ過ぎると酸素供給速度の低下を招き生産性が低下すること、および不活性ガスの使用量が増大しコスト増につながるために、酸素ガス比率の低下代としては0.3以下が望ましい。
【0043】
Siを添加すれば、Si+O2 =(SiO2 )の反応が進行し、この反応が発熱反応であることより溶鋼温度が上昇する。Siの添加量が少なければ発熱量は小さく、溶鋼温度の上昇にはつながらない。そのためにSi濃度は0.1mass%以上が必要であることを導き出した。なお、Siの添加量が多いほど溶鋼温度が上昇して〔Cr〕の酸化は抑えられるが、スラグの性状が変化して耐火物の溶損を招いたり、コスト的には不利になるために、添加量としてはSi濃度で0.3mass%以下が望ましい。
【0044】
実際の溶鋼温度がtより100℃以上高い場合には、溶鋼温度を下げる操作が必要になるが、その操作には合金、冷却材、副原料の添加量を制御することが有効である。また、制御後の溶鋼温度範囲として、tとの差を30℃以上80℃以下とする必要がある。これは30℃未満までに下げるには多量の添加が必要となり、精錬時間の延長を招くこと、80℃を超えると再度、100℃以上となる場合が多数回出てしまい、精錬操作が複雑になってしまうためである。
【0045】
〔C〕濃度が0.5mass%未満になれば、脱炭反応が進行し難くなるために、一般にはPCOを下げた状態で、溶鋼温度を出来るだけ高温側にして精錬することが指向される。本発明者らは1670℃以上の溶鋼温度であれば〔Cr〕酸化損失は十分に抑制できること、および1740℃以下の溶鋼温度であれば耐火物の溶損が十分に抑制できることを導き出した。
【0046】
図5に〔C〕濃度0.5mass%未満における平均溶鋼温度と精錬コスト指数の関係を示す。なお、精錬コスト指数は平均溶鋼温度が1700℃の場合の精錬コストを1として、比例換算した値である。図5より、溶鋼温度範囲が1670〜1740℃の範囲を外れると、〔Cr〕の酸化損失量の増大、あるいは耐火物の溶損量の増大を招き、精錬コストが大幅に上昇する。
【0047】
この溶鋼温度範囲に制御するための有効な手段として、吹込みガスの酸素ガスの比率、合金の添加量、冷却材の添加量、副原料の添加量の制御がある。これらの手段は、精錬後の目標とする溶鋼組成、スラグ組成に応じて、任意に1種又は2種以上を制御することが可能である。
【0048】
【実施例】
SUS304ステンレス鋼(18mass%Cr−8mass%Ni)の精錬を図1に示す60tAOD炉にて実施した。電気炉にて溶解した粗溶鋼(〔C〕=2.0mass%,〔Si〕=0.3mass%,〔Ni〕=7.5mass%,〔Cr〕=19mass%,温度=1450℃)55tonをAOD炉に装入した後、上底吹きにより吹錬を開始した。
【0049】
AOD炉は上底吹きが可能な複合吹錬タイプのもので、上吹きは22mmφ×2孔のランスを用い、最大4000Nm3 /Hrの酸素ガスを供給した。底吹きは炉の側壁に設けた5本の2重管羽口より最大4000Nm3 /Hrの酸素ガス、ArガスとN2 ガスの不活性ガスを供給した。脱炭反応の進行にともなう〔C〕濃度の低下に応じて、上吹きは酸素ガス供給速度を低下させ、底吹きは吹込みガスの酸素ガス比率を低下させた。
【0050】
炉底に設けた内径4mmφのArガス吹込み孔(測温用羽口)にイメージファイバーを挿入し輝度イメージを得た。得られた輝度イメージはArガス気泡を介して見た溶鋼の輝度だけではなく、羽口の周囲や羽口先端に生成された地金(マッシュルーム)の輝度も含まれているために、これを画像処理して、真の溶鋼部の輝度情報のみを抽出し溶鋼温度に換算した。Arガス流量は5Nm3 /Hrとした。溶鋼中〔C〕濃度はAOD炉に装入する際の溶鋼中〔C〕濃度と、排ガス濃度、排ガス流量および、必要に応じて吹錬中に採取した中間サンプルの分析値により、吹錬中の推移を求めた。
【0051】
表1に〔C〕≧0.5mass%での実績温度(以下、Tと略す)と前記▲1▼式より求められる温度tとの差の平均値、Tがtより低くなった時間、Tとtとの差が100℃を超えた時間、〔C〕<0.5mass%での実績温度範囲、脱炭精錬後の還元精錬開始から出鋼までの精錬時間および出鋼後の目標温度と実績温度の差を示す。
【0052】
なお、No.1〜No.5の例は本発明例、No.6〜No.9の例は本発明の条件外の例を示す。ここでの本発明例では、〔C〕≧0.5mass%でTがtより低くなった場合には、Si濃度0.2mass%分のフェロシリコンの添加を行うか、または吹込みガスの酸素ガスの比率を0.15低下させる操作行い、Tがtよりも100℃以上高くなった場合には、その都度、温度差が50℃になるように、冷却材の添加を行った。
【0053】
また、〔C〕<0.5mass%では溶鋼温度情報に応じて、適宜、溶鋼温度が1670℃以上、1740℃以下になるように、冷却材の添加またはCaOの添加を行った。脱炭終了後の還元精錬では還元材としてのフェロシリコンを添加後、溶鋼温度情報に応じて冷却材を添加し、並行して目標温度にするためにガス吹込み時間を設定し、温度推移を確認しながら、目標温度になったら、直ちに出鋼操作を開始した。
【0054】
比較例では本発明例と同一の方法により溶鋼温度情報は得ていたが、精錬操作は従来法のままで行い、〔C〕約0.5mass%、〔C〕約0.2mass%、脱炭末および還元終了後に測温と溶鋼サンプリングを実施し、その時の温度情報を基に、制御操作を実施した。表1はこの時に得ていた温度情報より、本発明例と同様の指標にて整理を行ったものである。
【0055】
【表1】
Figure 0003725312
【0056】
表2に実施結果について、〔Cr〕酸化指数、耐火物溶損指数および精錬コスト指数を示す。これらの指数は本発明例のNo.1の例を100として比例換算した値である。
【0057】
【表2】
Figure 0003725312
【0058】
本発明例では連続的に測定される溶鋼温度に応じて、精錬制御操作を行うために、目標温度域に溶鋼温度を制御することが可能であり、また、還元精錬開始から出鋼温度までの精錬時間も短縮できる。その結果、〔Cr〕の酸化損失および耐火物溶損を低位に安定させ、精錬コストを低減出来た。一方、比較例では、溶鋼温度に応じた精錬制御が不可能であり、そのために実際の溶鋼温度がばらつき、〔Cr〕酸化あるいは耐火物溶損のいずれかを過大に進行させてしまい、精錬コストの増を招いてしまった。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、含クロム溶鋼の精錬において〔Cr〕の酸化損失を抑制し、かつ耐火物溶損を抑制する脱炭精錬が可能になり、さらには脱炭精錬後の還元精錬あるいは仕上げ精錬を効率的に行うことも可能になって、精錬コスト低減および生産性の向上を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様例の模式図である。
【図2】本発明の実施態様例の模式図である。
【図3】実際の溶鋼温度とtの差と〔Cr〕酸化指数のの関係を示す図である。
【図4】実際の溶鋼温度とtの差と耐火物溶損指数の関係を示す図である。
【図5】〔C〕濃度0.5mass%未満における平均溶鋼温度と精錬コスト指数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1−AOD炉
2−スラグ
3−溶鋼
4−上吹きランス
5−羽口
6−上吹きガスライン
7−底吹きガスライン
8−合金・冷却材・副原料ホッパー
9−切り出し装置
10−投入シュート
11−排ガス設備
12−上吹きガス制御装置
13−底吹きガス制御装置
14−測温用羽口
15−パージガス供給ライン
16−イメージファイバー
17−測温処理装置
18−排ガス流量・組成測定装置
19−〔Cr〕濃度測定機構
20−分析用羽口
21−分析用ファイバー
22−分析用パージガス供給ライン
23−分析システム
24−制御演算装置

Claims (3)

  1. 含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%以上の領域で、溶鋼温度が下記(1)式で求まる温度tよりも低い場合には、吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率を0.1以上低下させるか、又はSi濃度が0.1mass%以上になるようにシリコンを含む合金を添加することを特徴とする含クロム溶鋼の精錬方法。
    t=110/〔%C〕+1450 (℃) (1)
    〔%C〕:溶鋼中〔C〕濃度(mass%)
  2. 含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%以上の領域で、溶鋼温度が下記(1)式で求まる温度tより100℃以上高い場合には、溶鋼とtとの差が30℃以上80℃以下になるように、合金、冷却材、副原料の1種又は2種以上を添加することを特徴とする含クロム溶鋼の精錬方法。
    t=110/〔%C〕+1450 (℃) (1)
    〔%C〕:溶鋼中〔C〕濃度(mass%)
  3. 含クロム溶鋼に酸素ガスと不活性ガスを吹込んで脱炭精錬を行う方法において、前記溶鋼の温度を連続的に測定し、溶鋼中〔C〕濃度が0.5mass%未満の領域では、溶鋼温度が1670℃以上、1740℃以下になるように、吹込みガスの全ガス量に対する酸素ガス量の比率、合金の添加量、冷却材の添加量、CaO等の副原料の添加量の1種又は2種以上を制御することを特徴とする含クロム溶鋼の精錬方法。
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