JP3722994B2 - 物体の接触感シミュレーション装置 - Google Patents

物体の接触感シミュレーション装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は物体の接触感シミュレーション装置に関し、特に、物体表面の微小な凹凸感や粗面感に対する接触感を疑似的に体験させるためのシミュレーションを行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータを利用したシミュレーションは、種々の分野で採り入れられており、特に近年では、コンピュータの画像処理機能の向上により、いわゆるバーチャル・リアリティーと呼ばれている仮想現実の世界をディスプレイ画面上に表示するシミュレーション装置が普及してきている。この種のシミュレーション装置では、通常、オペレータは仮想の空間内を自由に移動することができ、オペレータの移動に伴ってディスプレイの表示画面がリアルタイムで描き換えられてゆく。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシミュレーション装置は、ディスプレイ上の映像などを利用して、オペレータの視覚を通じて仮想の世界を提示することに主眼が置かれており、オペレータの触覚を通じて仮想の世界を提示する機能に乏しい。もちろん、触覚を通じた疑似体験を提供することができるシミュレーション装置は、既にいくつかが提案されている。ところが、従来提案されているシミュレーション装置を用いて、表面に微小な凹凸構造が形成された物体に対する接触感を疑似的に体験させようとした場合、表面の凹凸構造を定義するための物体の形状データが膨大な量になるため、演算負荷がかなり重くなり、現在のところ実用化の目途が立っていない。
【0004】
そこで本発明は、表面に微小な凹凸構造が形成された物体に対する接触感を、効率的な演算によって疑似的に体験させることができる物体の接触感シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、所定の仮想物体を定義し、この仮想物体に対する接触感を疑似的に体験させるためのシミュレーションを行うことができる物体の接触感シミュレーション装置において、
仮想物体を定義するための情報を設定する物体情報設定手段と、
オペレータから加えられた力に基いて三次元の任意方向に移動可能な作用点を有する作用部と、作用点の三次元座標系上での位置を検出する位置検出部と、与えられた力制御ベクトルに基いて作用点に加える力を発生させる力発生部と、を有する力トランスデューサと、
位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報とに基づいて、作用点に加えるべき制御力を示す力制御ベクトルを求め、求めた力制御ベクトルを力トランスデューサへ与える制御を行う演算制御手段と、
を設け、
演算制御手段に、
位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報とに基いて作用点近傍の仮想物体表面を認識する近傍表面認識部と、
この近傍表面認識部が認識した仮想物体表面に立てた法線ベクトルに対して所定の角度θだけ傾斜した仮想法線ベクトルを定める仮想法線ベクトル演算部と、
仮想法線ベクトルの方向を向いた面反力を定義する面反力定義部と、
この面反力に基いて作用点に加えるべき制御力を示す力制御ベクトルを求める力制御ベクトル演算部と、
を設けるようにしたものである。
【0006】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
演算制御手段が、位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報により定義された仮想物体の位置とに基いて、作用点が仮想物体の内部にあるか否かを判断する相互位置関係認識部を更に有し、
面反力定義部が、相互位置関係認識部により作用点が仮想物体の内部にあると判断された場合にのみ、面反力の定義を行うようにしたものである。
【0007】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、仮想物体を定義するための情報として、仮想物体の硬さを示すパラメータKを設定し、
演算制御手段が、位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報により定義された仮想物体の位置とに基いて、仮想物体の表面と作用点との距離dを求める距離演算部を更に有し、
面反力定義部が、パラメータKと距離dとの積(K・d)に基いて面反力の大きさを決定するようにしたものである。
【0008】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、仮想物体の形状を示す形状データと、それぞれが三次元の任意方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなる仮想法線テクスチャとを設定し、
仮想法線ベクトル演算部が、仮想物体の表面に仮想法線テクスチャをマッピングすることにより仮想法線ベクトルを定めるようにしたものである。
【0009】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、仮想物体を定義するための情報として、仮想物体の表面を二次元多角形の集合体として表現する形状データを設定し、
面反力定義部が、作用点Pを最も近い二次元多角形α上に投影して投影点Psを求め、この投影点Psの近傍に定義されている仮想法線ベクトルNvを用いて面反力を求める演算を行うようにしたものである。
【0010】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第4または第5の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、同一平面について重ねてマッピングするための複数の仮想法線テクスチャを設定し、
仮想法線ベクトル演算部が、仮想物体の表面近傍に、複数の仮想法線テクスチャを層構造をなすように重ねてマッピングし、作用点に最も近い層にマッピングされた仮想法線テクスチャを用いて仮想法線ベクトルを定めるようにしたものである。
【0011】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第4〜第6の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、所定の凹凸構造を有する面の各部に定義される法線に応じた方向を向いた仮想法線ベクトルを平面上に配置してなる仮想法線テクスチャを設定したものである。
【0012】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第4〜第6の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
物体情報設定手段が、それぞれが三次元のランダム方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなるランダムテクスチャを設定するか、あるいは、全体的にフラクタル揺らぎを含む多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなるフラクタルテクスチャを設定したものである。
【0013】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
仮想法線ベクトル演算部が、作用点の位置が変わるごとに、ランダムに、あるいは、所定の規則に基いて、仮想法線ベクトルを定めるようにしたものである。
【0014】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第1〜第9の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
仮想物体を表示するためのディスプレイと、
物体情報設定手段内に設定された情報および位置検出部が検出した作用点の位置の情報に基いて、ディスプレイの画面上の所定の表示位置に仮想物体の形状および作用点を描画する物体形状描画手段と、
を更に設けたものである。
【0015】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第1〜第10の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
XY平面上の任意の座標(x,y)に所定の濃度値が定義された関数A(x,y)で表現される二次元原画像を格納した画像格納部と、
この関数A(x,y)を変数xで偏微分して得られる関数θx(x,y)と変数yで偏微分して得られる関数θy(x,y)とを求める偏微分処理部と、
XY平面上の座標(x,y)の位置に、当該位置に立てた法線に対して、X軸方向に関数値θx(x,y)なる角度だけ傾斜し、Y軸方向に関数値θy(x,y)なる角度だけ傾斜した仮想法線ベクトルを配置することにより仮想法線テクスチャを作成するテクスチャ作成部と、
を有する仮想法線テクスチャ作成手段を更に設けるようにしたものである。
【0016】
(12) 本発明の第12の態様は、コンピュータを、上述の第1〜第10の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置における演算制御手段として機能させるためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録するようにしたものである。
【0017】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る物体の接触感シミュレーション装置において、
力トランスデューサの作用部を、オペレータの指先に嵌めて固定できる指サックにより構成したものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
§1. 装置の基本構成
以下、本発明を図示する実施形態に基いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る物体の接触感シミュレーション装置の基本構成を示すブロック図である。この装置では、所定の仮想物体が定義され、この仮想物体に対する接触感を疑似的に体験させるためのシミュレーションを行うことができる。この装置の構成要素は、図示のとおり、物体情報設定手段10と、ディスプレイ20と、物体形状描画手段30と、演算制御手段40と、力トランスデューサ50と、仮想法線テクスチャ作成手段60と、である。
【0019】
物体情報設定手段10は、仮想物体を定義するための種々の情報および仮想物体表面に適用される仮想法線ベクトルを定義するための情報を設定する機能を有する。オペレータが、この物体情報設定手段10に対してデータやパラメータなどの情報を入力すると、入力された情報は、この物体情報設定手段10内に格納され保持される。オペレータは、物体情報設定手段10に対して設定したデータやパラメータを変更することにより、シミュレーションの条件設定を適宜変えることができる。この実施形態では、仮想物体を定義するための情報として、図示のように、形状データ,質感データ,光源データなる3種類のデータと、仮想物体の硬さを示すパラメータKとを設定できるようにしており、仮想法線ベクトルを定義するための情報として、仮想法線テクスチャTなるデータを設定できるようにしている。これらのデータやパラメータについては、後に詳述する。また、仮想法線テクスチャ作成手段60は、物体情報設定手段10内に設定される仮想法線テクスチャTのデータを作成する処理を行う機能を有しており、この処理についても後述する。
【0020】
ディスプレイ20は、仮想物体を表示するための手段であり、図1では立方体形状の仮想物体Bが所定位置に表示されている状態が示されている。物体形状描画手段30は、物体情報設定手段10内に設定された情報(形状データ,質感データ,光源データ)に基いて、ディスプレイ20の画面上の所定位置に仮想物体Bの形状を描画する機能を有する。なお、物体形状描画手段30は、仮想物体Bだけでなく、後述する作用点Pの位置を、ディスプレイ20の画面上に描画する機能を有しており、図示のとおり、ディスプレイ20の画面上には、仮想物体Bとともに、作用点Pの位置が表示される。
【0021】
力トランスデューサ50は、作用部51、位置検出部52、力発生部53を有しており、演算制御手段40に接続されている。力トランスデューサ50は、オペレータに対するマン・マシン・インターフェイスとして機能し、オペレータから与えられる操作量を入力するとともに、オペレータに対して力を返す働きをする。この実施形態では、力トランスデューサ50は、1本の指としての機能を果たすことになり、仮想物体に対する接触感は、この指を介して体験することになる。
【0022】
作用部51上には、作用点Pが定義されており、この作用点Pはオペレータから加えられた力に基いて三次元の任意方向に移動可能となっている。図1のディスプレイ20上に表示されている作用点Pは、この作用部51上の作用点の位置である。位置検出部52は、作用部51上の作用点Pの三次元座標系上での位置を検出する機能を有する。具体的には、作用点Pの位置は、x座標,y座標,z座標の3つの座標値として検出されることになる。ここでは、この3つの座標値によって示された作用点Pの位置をP(x,y,z)なるデータで表わすことにする。
【0023】
この作用点の位置を示すデータP(x,y,z)は、演算制御手段40に与えられ、更に、物体形状描画手段30へと与えられる。物体形状描画手段30は、前述したように、この位置を示すデータに基いて、ディスプレイ20の画面上に作用点Pの位置を描画することになる。一方、演算制御手段40は、位置検出部52が検出した作用点Pの位置と物体情報設定手段10内の情報により定義された仮想物体の位置とに基いて、作用点Pと仮想物体Bとの相互位置関係を認識し、その認識結果に応じて作用点Pに生じるべき反力(仮想物体側からオペレータ側へと返される力)を求める演算を行う。ここで行われる具体的な演算内容については後に詳述する。こうして、作用点Pに生じるべき反力が得られたら、この反力に基いて作用点Pに加えるべき制御力を示す力制御ベクトルCが求められ、この力制御ベクトルCを示すデータは、力トランスデューサ50へ与えられる。力トランスデューサ50内の力発生部53は、演算制御手段40から与えられた力制御ベクトルCに基いて作用点Pに加える力を発生させる機能を有する。
【0024】
§2. 物体情報設定手段に設定される情報
続いて、図1に示すシミュレーション装置において、物体情報設定手段10内に設定される具体的な情報について説明する。前述したように、この実施形態では、形状データ,質感データ,光源データ,硬度を示すパラメータK,仮想法線テクスチャTが設定される。
【0025】
形状データは、仮想物体の三次元形状を特定するためのデータである。ここでは、仮想物体の表面を二次元多角形の集合体として表現するようにしており、二次元多角形の頂点座標を示す頂点テーブルと、各二次元多角形を構成する頂点の連結関係を示す面テーブルと、によって形状データを構成するようにしている。たとえば、図2(a) に示すような立方体からなる仮想物体を定義する場合を考える。この立方体は、6つの正方形の集合体として表現することができ、図に1〜8の番号を付した合計8個の頂点によって構成される。このような立方体についての形状データは、図2(b) に示す頂点テーブルと図2(c) に示す面テーブルによって構成できる。図2(a) に示す頂点テーブルは、8個の頂点のそれぞれについて、XYZ三次元座標系における位置座標を示している。図示の例では、図2(a) に示す立方体は、頂点1が座標系の原点に位置し、頂点1−2に沿った辺がX軸上、頂点1−4に沿った辺がY軸上、頂点1−5に沿った辺がZ軸上に位置しており、一辺の長さが1となる立方体である。図2(b) の頂点テーブルは、単に8個の頂点の位置座標を示すものであり、仮想物体の形状は、実際には、図2(c) の面テーブルによって定義されることになる。この面テーブルは、この立方体を構成する6個の面▲1▼〜▲6▼の頂点構成を示しており、たとえば、面▲1▼は、頂点1−2−6−5を連結することにより形成される面になる。
【0026】
このように、頂点テーブルと面テーブルとを用いれば、任意形状の仮想物体の表面を定義することができる。図2の例では、仮想物体の表面を四角形の集合体として定義したが、三角形や六角形など、用いる多角形はどのようなものでもかまわない。また、本発明を実施する上では、仮想物体の形状定義は必ずしも二次元多角形を用いる必要はない。たとえば、球や円錐などであれば、方程式を用いて定義することも可能であり、物体情報設定手段10に設定される形状データは、数値、式を問わず、形状を定義することができる情報であればどのようなものでもかまわない。なお、ここに示す実施形態では、形状データは座標を示す情報(図2の例では、頂点テーブル内の各座標値)を含んでいるため、形状とともに位置を定義する情報として機能する。もちろん、形状データとは別個に位置を示すための位置データを設定するようにしてもよい。
【0027】
物体情報設定手段10に設定される質感データは、形状データによって定義された仮想物体の表面の質感を示すためのデータである。具体的には、仮想物体を構成する各面(図2の例では、面▲1▼〜▲6▼)についての環境色,拡散色,鏡面色,鏡面係数などの値が質感データとして設定される。また、光源データは、この仮想物体を照明するための光源の性質を示すデータであり、光源の形状(点,線,面),光源の位置,光源色などを示すデータが光源データとして設定される。この質感データおよび光源データは、ディスプレイ20の画面上に、定義した仮想物体を表示するために利用されるデータである。物体形状描画手段30は、この質感データおよび光源データを考慮して、仮想物体Bの形状を描画することになる。
【0028】
一方、硬度を示すパラメータKは、仮想物体の表面の硬さを左右する要素であり、後述するように、物体表面からの面反力の大きさを決定する係数として機能する。このパラメータKは、仮想物体の個々の表面ごとにそれぞれ異なる値を設定することも可能であるが、本実施形態では、1つの仮想物体に対しては1つのパラメータKのみを設定するようにしている。したがって、1つの仮想物体については、どの面についての硬さも同じであるが、異なる仮想物体については、それぞれ異なるパラメータKを設定しているので、物体ごとに硬さの相違を体験することができる。もちろん、1つの仮想物体の面ごとに、これらの設定を変えれば、同一の仮想物体であっても、面ごとに異なる硬さを体験することができるようになる。
【0029】
仮想法線テクスチャTは、平面上にそれぞれ三次元の任意方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを定義したデータであり、一般の絵柄データと同様に、仮想物体の表面にマッピングして用いられるため、本願では「テクスチャ」という文言を用いている。図3(a) は、この仮想法線テクスチャTの概念を示す斜視図である。図示の例では、平面S上に三次元の任意方向を向いた多数の仮想法線ベクトルNvが定義されている。本発明では、これら仮想法線ベクトルNvの方向を示す情報を用いて、オペレータ側へと返される反力の演算が行われる。したがって、仮想法線ベクトルNvは、いずれも単位ベクトルとして定義すればよい。仮想法線ベクトルNvは、平面S上の任意の点に定義してもかまわないが、演算効率を高める上では、規則的な位置に定義するのが好ましい。ここに示す例では、縦横に所定ピッチで配置した格子点を定義し、各格子点上に仮想法線ベクトルNvを配置している。
【0030】
図3(b) は、この平面S上に定義された1本の仮想法線ベクトルNvを示す側面図である。そもそも「法線」とは、所定の面に対して垂直な線を指すべきものであり、平面S上に立てた法線ベクトルNは、図3(b) に示すように、平面Sに対して垂直な方向を向いたベクトルになる。これに対し、仮想法線ベクトルNvは、この本来の法線ベクトルに対して、所定角θだけ傾斜したベクトルである。このように、平面S上に定義された仮想法線ベクトルNvは、平面Sについての「法線」にはならないのにもかかわらず、「法線」なる文言を一部に用いている理由は、図示のとおり、仮想平面Svについての法線になっているためである。本発明の基本思想は、法線ベクトルNの代わりに仮想法線ベクトルNvを用いることにより、本来は平面Sが定義されているにもかかわらず、オペレータに対しては、仮想平面Svを意識させるようなシミュレーションを行う点にある。この点については後に詳述する。なお、本明細書では、説明の便宜上、「仮想法線ベクトル」と言った場合、θ=0に設定された法線ベクトルも含んだ概念を指すものとする。したがって、たとえば、図3(a) に示す多数の仮想法線ベクトルNvの中で、たまたまθ=0に設定されていたため「仮想」ではなく「本当の」法線ベクトルに該当するものが含まれていた場合でも、「仮想法線ベクトル」の範疇に含まれるものとして取り扱うことにする。
【0031】
この実施形態では、物体情報設定手段10内に、このような仮想法線テクスチャTが複数通り用意されており、各物体の形状データ内には、それぞれどの仮想法線テクスチャをどの面にどのような向きにマッピングすべきかを示すデータも付加されている。概念的には、図3(a) に示す仮想法線テクスチャTは、一般の二次元絵柄と考えることができ、仮想物体の任意の表面にマッピングすることが可能である。
【0032】
§3. 具体的な装置構成
図1に示すブロック図は、説明の便宜上、本発明に係る装置を機能要素の集合としてとらえ、個々の機能要素をブロックで示したものであり、実際には、このシミュレーション装置はコンピュータを利用して構築される。すなわち、図1に示す装置における物体情報設定手段10、物体形状描画手段30、演算制御手段40、仮想法線テクスチャ作成手段60は、汎用のコンピュータに、上述した各処理を実行するためのプログラムを組み込むことにより構成することができる。たとえば、物体情報設定手段10に対するデータやパラメータの設定は、キーボードやマウスなどのコンピュータ用入力機器を用いて行うことができ、設定されたデータやパラメータはメモリや種々の記憶装置に格納されることになる。また、物体形状描画手段30による描画機能や、演算制御手段40および仮想法線テクスチャ作成手段60による演算処理機能は、コンピュータに組み込まれたプログラムによって実現されることになり、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布することが可能である。なお、ディスプレイ20は、コンピュータ用の一般的なディスプレイ装置によって構成できる。
【0033】
一方、力トランスデューサ50は、オペレータの物理的操作をデジタルデータ(作用点の位置を示すデータ)に変換する第1の機能と、演算制御手段40から与えられるデジタルデータ(力制御ベクトルCを示すデータ)を物理的な力に変換してオペレータに与える第2の機能とを実行する物理的な構成要素である。一般的な物体に対する接触動作には、通常、指が用いられる。そこで、この実施形態では、上記機能が効果的に実行されるように、力トランスデューサ50の作用部51を、オペレータの指先に嵌めて固定できる指サックにより構成し、オペレータの指の動きに基いて作用点Pを移動できるようにするとともに、力制御ベクトルCに基く制御力がこの指サックを介してオペレータの指に伝達されるように構成した。
【0034】
図4は、この指サックの形態をした作用部51を用いて構成される力トランスデューサ50の機能を示すブロック図である。作用部51は、ゴムなどの弾力性をもった材料で構成されており、オペレータは、この作用部51を指の先端に装着して固定することができる。図示の例では、この作用部51の先端部分に作用点Pが定義されている(もちろん、作用点Pは作用部51のいずれの部分に定義してもかまわないが、操作性を向上する上では、指先位置に定義するのが好ましい)。本発明では、このような力トランスデューサを少なくとも1組用意する必要がある。
【0035】
この力トランスデューサ50において、作用部51は三次元の自由度をもって移動可能な状態に支持されている必要がある。すなわち、作用点Pは、オペレータから加えられた力に基いて三次元の任意方向に移動可能な状態になっている必要がある(もちろん、作用点Pの移動可能空間は、所定の範囲内に制限されていてかまわない)。したがって、オペレータは、作用部51を指先に装着した状態で、指先を三次元空間内の任意の方向に移動させることができる。位置検出部52は、前述したように、作用点Pの三次元空間内の位置を、P(x,y,z)なる3つの座標値からなるデータとしてリアルタイムで逐次検出する機能を有している。一方、力発生部53は、演算制御手段40からリアルタイムで逐次与えられる力制御ベクトルCに基いて、力fを発生させ、これを作用点Pに逐次加える機能を果たす。ここで、作用点Pに加えられる力fは、力制御ベクトルCの向きおよび大きさをもった力である。
【0036】
結局、オペレータは、作用部51を装着した指を任意の方向に動かすことが可能ではあるが、逆に、作用点Pに加わる力fを常に指先に受け、物体からの反力を感じることになる(もちろん、f=0の場合は、何ら反力は感じない)。
【0037】
図5は、このような力トランスデューサ50の具体的構成例を示す斜視図である。図では、力トランスデューサ50の作用部51(指サック)を右手の人差し指に装着した状態が示されている。この指の先端部分に作用点Pが定義されており、オペレータは、作用部51を任意の方向に移動させながら、仮想物体に対する接触感を体感することができる。図示の力トランスデューサ50では、複数のリンク機構を用いて、上述した2つの機能を実現している。すなわち、作用部51は、複数の自在アームによって支持されているため、ある程度の範囲の空間内では、三次元の任意の方向に自由に移動させることが可能である。しかも、各自在アームの回転位置を検出する機構が備わっており、作用点Pの三次元座標値P(x,y,z)を検出することができる。更に、各自在アームに力を加えるためのモータが用意されており、これらのモータを駆動することにより、作用点Pに任意の方向、任意の大きさの力を作用させることができる。
【0038】
このような複数のリンク機構を用いた力トランスデューサは、既に公知の装置であるため、その構造や機構についての詳細な説明は省略する。市販の製品としては、たとえば、米国のセンサブル・デバイス社(SensAble Device Inc.)が「PHANToM」なる商品名で販売している装置を利用することができる。結局、本発明に係る接触感シミュレーション装置は、図5に示すような力トランスデューサを、汎用コンピュータに接続し、所定のプログラムをこのコンピュータに組み込むことにより実現することが可能になる。
【0039】
§4. 物体との接触による面反力の基本的な定義方法
続いて、物体からの反力の演算方法について述べる。いま、三次元座標系上の所定位置に、所定の仮想物体が定義されているものとする。この仮想物体は、実在の物体ではないので、たとえば、図5に示すような力トランスデューサ50を用いた場合、この力トランスデューサ50が設置されている三次元空間内のいずれかの位置に、仮想物体の存在が定義されているに過ぎない。ここで、オペレータが図5のような指サック状の作用部51を人差し指に装着し、この作用部51の先端に定義された作用点Pを移動させたところ、図6の側断面図に示すように、仮想物体B(αおよびβは、この仮想物体Bの表面を示す)の内部の位置に到達したとしよう。仮想物体Bは、実在の物体ではないので、もし、力トランスデューサ50に対して何ら力制御ベクトルが与えられていなければ、オペレータは、作用点Pを自由に移動させることができるので、図6に示すように仮想物体Bの内部にまで作用点Pを動かすことは可能である。
【0040】
ただ、実際には、このような作用点Pの動きは、仮想物体Bが実在の物体であった場合には矛盾する。すなわち、作用点が図示の点Pへ移動したということは、指先が物体の内部に侵入していることになり、物体が変形をしない限り、そのような作用点の移動は現実的には不可能である。もちろん、物体が弾性変形や塑性変形を生じるものとして、作用点が物体の内部に侵入した場合には、それに応じて物体の形状をリアルタイムで補正するという手法を採れば、図6に示すような作用点の移動に、現実的な矛盾は生じない。しかしながら、物体形状をリアルタイムで補正するには、膨大な演算処理が必要になり、特に、ディスプレイ20上にリアルタイムで物体を描画する場合、かなり高機能なコンピュータが要求されることになる。そこで、本実施形態では、仮想物体Bは剛体から構成されており、形状は一切変化しないものとして取り扱っている。
【0041】
このように、仮想物体Bを剛体として取り扱うと、図6における作用点Pの位置は、指先が剛体中にめり込んでいる状態に相当するため、現実の物理現象を忠実にシミュレートするという意味では、矛盾した移動になる。しかしながら、本発明の主眼は、オペレータに物体に対する接触感を体験させることにあるので、必ずしも現実の物理現象を忠実にシミュレートする必要はない。したがって、本発明では、図6に示すように、作用点Pが仮想物体Bの内部に侵入するような事象も認めることにする。ただし、オペレータに接触感を感じさせるためには、作用点Pが仮想物体Bの内部に侵入した際に、何らかの反力を作用点Pに戻してやる必要がある。このように、物体内部に作用点が移動したことに対して、物体側から作用点側に戻される反力を、ここでは面反力Fsと呼ぶことにする。
【0042】
本願発明者は、この面反力Fsの大きさを、作用点Pとこれに最も近い仮想物体の表面αとの距離dに基いて決定すれば、非常に現実的な接触感をオペレータに与えられることを見出だした。すなわち、作用点Pを表面αに投影して投影点Psを定義し、この投影点Psと作用点Pとの距離をdとする。そして、物体情報設定手段10内に設定されている硬さを示すパラメータKと、この距離dとの積(K・d)を物体からの面反力Fsの大きさと定義すれば、距離d(すなわち、表面αからの深さ)が大きくなればなるほど、面反力Fsは大きくなる。したがって、オペレータは、作用点Pをより深い位置へと移動させるためには、より大きな力(面反力Fsに対抗する力)が必要になり、仮想物体の表面に対する接触感を得ることができる。また、面反力Fsの絶対値は、パラメータKに依存するため、大きなパラメータKが設定されている面ほど硬く感じられ、小さなパラメータKが設定されている面ほど柔らかく感じられることになる。
【0043】
一方、面反力Fsを作用させる方向は、作用点Pに最も近い物体表面αに立てた法線の向きとすればよい。すなわち、図6に示すように、投影点Psの位置において表面αに立てた単位ベクトルを法線ベクトルNとすれば、面反力Fsは、この法線ベクトルNを用いた
Fs=(K・d)・N
なる式により、ベクトル量として与えられることになる。
【0044】
結局、作用点Pと仮想物体Bとの相互位置関係を認識し、作用点Pが仮想物体Bの内部にあると判断された場合には、上記式に基いて、面反力Fsをベクトル量として求める演算を行い、この面反力Fsに相当する力制御ベクトルCを力発生部53に与えるようにすれば、作用点Pには、この面反力Fsに相当する大きさおよび向きをもった力が作用することになる。これにより、オペレータは、仮想物体Bの面αの存在を触覚を通して認識することができるようになる。なお、作用点Pが仮想物体Bの外部にある場合には、面反力Fsを戻す必要はないので、このような演算は不要である。
【0045】
§5. 仮想法線ベクトルの適用による凹凸感表現方法
さて、仮想物体Bの表面αが図6に示すような位置に存在するのであれば、本来は、上述したように、この表面αに立てた法線ベクトルNの方向に面反力Fsを作用させるべきである。オペレータは、投影点Psから法線ベクトルNの方向に返される面反力Fsを指先で感じることにより、表面αの存在を認識することができるのである。
【0046】
それでは、法線ベクトルNの代わりに、仮想法線ベクトルNvを用いたらどうなるであろうか。図7は、投影点Psの位置において、法線に対して角度θだけ傾斜した仮想法線ベクトルNvを定義し、面反力Fsを、この仮想法線ベクトルNvを用いて、
Fs=(K・d)・Nv
なる式により、ベクトル量として定義した状態を示す側断面図である。仮想法線ベクトルNvとして単位ベクトルを用いるようにすれば、図6に示す面反力Fsと図7に示す面反力Fsとは、大きさは全く同じになり、向きだけが異なることになる。この面反力の向きの違いにより、オペレータが触覚を通じて認識する面の向きにも違いが生じることになる。すなわち、図7に示す例では、投影点Psの位置に、平面αではなく仮想平面αvが存在するような触覚感が得られることになる。このように、物体情報設定手段10内の形状データにより実際に定義されている仮想物体Bが有する面は平面αであるにもかかわらず、仮想法線ベクトルNvを用いて面反力Fsを演算するようにすれば、形状データとしては定義されていない仮想平面αvに対する接触感を提示することが可能になる。
【0047】
そこで、たとえば、側面図が図8のように表現される仮想法線テクスチャTを用意してみる。この仮想法線テクスチャTは、平面S上に7本の仮想法線ベクトルNv1〜Nv7を定義したものである。なお、実際には、仮想法線テクスチャTは二次元平面上に多数の仮想法線ベクトルNvを配置したものであるが、ここでは説明の便宜上、一次元的な配置のみを考えることにする。このような仮想法線テクスチャTを、仮想物体Bを構成する平面α上にマッピングしておき、面反力Fsを求める際には、投影点Ps上にマッピングされている仮想法線ベクトルを用いた演算を行うようにする。このようにすれば、図9の側断面図に示されているように、形状データとしては平面αの情報しか用意されていないにもかかわらず、オペレータは平面αの代わりに仮想曲面αvを触覚を通じて認識することができるようになる。別言すれば、平面α上に形成された曲面状の窪みを認識することができるようになる。
【0048】
逆に言えば、図9に示すような曲面状の窪みを表現したい場合には、このような窪み形成面上の各位置に定義される法線ベクトルを、仮想法線ベクトルNv1〜Nv7として平面S上に配置することによって図8に示すような仮想法線テクスチャTを作成し、これを物体情報設定手段10内に格納しておき、実際のシミュレーション時には、この仮想法線テクスチャTを平面α上にマッピングして、上述した手法により面反力Fsを決定する処理を行えばよいことになる。より一般的に言えば、所定の凹凸構造を有する面の各部に定義される法線に応じた方向を向いた仮想法線ベクトルNvを、平面S上に配置してなる仮想法線テクスチャTを用意しておき、これを仮想物体の表面にマッピングする処理を行い、作用点近傍にマッピングされた仮想法線ベクトルNvを用いて面反力Fsを求めるようにすれば、上記凹凸構造に対する接触感を疑似的に体験させることができるようになる。
【0049】
上述した本発明の手法は、3Dコンピュータグラフィックスの分野において、物体表面の細かな凹凸構造の陰影などを表現するためのいわゆるバンプマッピングと呼ばれる手法を応用したものである。この手法の最大のメリットは、演算負担を大幅に軽減させることができる点にある。
【0050】
たとえば、物体の接触感シミュレーション装置において、図9に示すような窪み(バンプ)が多数形成された表面に対する接触感のシミュレーションを行うには、原理的には、そのような形状データを物体情報設定手段10内に用意しておけばよい。しかしながら、このような自由曲面からなる窪みを形状データとして表現するには、膨大な情報量が必要になり、物体情報設定手段10としては、かなり容量の大きな記憶装置が必要になる。また、演算制御手段40は、物体情報設定手段10内の形状データと、位置検出部52が検出した作用点Pの位置座標P(x,y,z)とに基いて、両者の相互位置関係を認識する必要がある。特に、本実施形態では、作用点Pが仮想物体Bの内部にあるか否かを判断する必要がある(前述したように、本実施形態では、作用点Pが仮想物体Bの内部にある場合にのみ、面反力Fsがオペレータ側に返される)。ところが、形状データ内に、図9に示すような窪みの曲面データが含まれていると、内部にあるか否かの判断処理に多大な演算負担がかかることになり、リアルタイムでの処理を行うためには、演算制御手段40としてかなり高性能のハードウエアが必要になる。
【0051】
これに対し、本発明に係る手法を利用すれば、物体情報設定手段10内の形状データとしては、二次元多角形の集合体を示すデータを用意すれば足りる。たとえば、図2(a) に示す立方体形状の仮想物体の場合には、図2(b) に示すような8頂点の座標を示すデータと、図2(c) に示すような面テーブルとが用意できれば足りる。このため、形状データとして必要な情報量は非常に少なくてすむ。また、作用点Pが内部にあるか否かの判断は、二次元多角形の集合体として定義される仮想物体Bに対して行えばよいため、演算負担も軽くてすむ。たとえば、図9に示す例の場合、作用点Pが平面αの上下どちらにあるかによって、内部か外部かを判断することができ、仮想曲面αvについては考慮する必要はない。すなわち、微小な凹凸構造を考慮した複雑な内外判断を行う必要はなくなる。
【0052】
もちろん、本発明に係る手法を採れば、仮想物体の形状データの他に、仮想法線テクスチャTのデータが必要になるが、仮想法線テクスチャTは、平面S上に配置された仮想法線ベクトルNvの向きを示すデータだけで表現できるので、大きな情報量は必要ない。なお、仮想法線テクスチャT上に定義される仮想法線ベクトルNvの密度は、表現したい凹凸構造の解像度とデータ量との兼ね合いから、妥当な密度に設定すればよい。図9に示すような自由曲面からなる滑らかな窪み構造を表現するためには、できるだけ高密度で多数の仮想法線ベクトルNvが配置された仮想法線テクスチャTを用意するのが好ましいが、それなりにデータ量は増大することになる。
【0053】
また、このように、仮想物体Bの情報と、仮想法線テクスチャTの情報とを別個に用意しておき、必要に応じて、特定の仮想法線テクスチャを特定の仮想物体の特定の面にマッピングするという手法を採れば、同一の仮想物体の形状データを用いていたとしても、マッピングする仮想法線テクスチャを交換するだけで、種々の表面凹凸構造をもった仮想物体に対する接触感を体験することができるというメリットも得られる。
【0054】
なお、上述の例では、図7に示すように、作用点Pを仮想物体の表面α上へ投影して投影点Psを求め、この投影点Ps上に定義されている仮想法線ベクトルNvを用いて面反力Fsを求めるという説明を行ったが、実際には、図3(a) に示すように、仮想法線テクスチャT上には離散的に有限個の仮想法線ベクトルNvが定義されているだけであり、その密度は、上述したように、データ量との兼ね合いで決められることになる。したがって、実際には、投影点Ps(もしくは作用点P)の近傍にマッピングされた仮想法線ベクトルNvを用いて面反力を求める演算を行うようにすればよい。たとえば、図10に示すように、投影点Psの近傍に4つの格子点Q1〜Q4が定義され、これら各格子点Q1〜Q4にそれぞれ仮想法線ベクトルNv1〜Nv4が定義されていたとし、投影点Psと各格子点Q1〜Q4との距離がそれぞれL1〜L4であったとする。このような場合は、たとえば、投影点Psに最も近い格子点Q2に定義された仮想法線ベクトルNv2を用いるようにすればよい。あるいは、4つの仮想法線ベクトルNv1〜Nv4の合成ベクトルを用いるようにしてもよい。この場合、距離L1〜L4を考慮して、より投影点Psに近い仮想法線ベクトルの成分がより多く含まれるようなベクトル合成を行うことも可能である。
【0055】
また、図7に示す例では、作用点Pを平面αに垂直に投影して投影点Psを求めるようにしているが、平面αへの投影は必ずしも垂直にする必要はない。たとえば、図11に示すように、作用点Pが過去の位置P0から図の矢印に示す方向に移動して、現在の位置に至った場合、この移動軌跡と逆方向に投影して投影点Psを求めるようにしてもかまわない(この場合、投影点Psは、移動軌跡と平面αとの交点になる)。要するに、本発明では、作用点Pの近傍に存在する物体表面上のいずれかの点について、仮想法線ベクトルNvを求め、面反力を作用させるようにすればよい。
【0056】
§6. 仮想法線テクスチャの作成方法
既に述べたように、図1に示す仮想法線テクスチャ作成手段60は、図3(a) に示すような仮想法線テクスチャTを作成する機能を有し、作成された仮想法線テクスチャTは、物体情報設定手段10内に格納され、後に、演算制御手段40によって、仮想物体の表面にマッピングされることになる。そこで、ここでは、仮想法線テクスチャ作成手段60によって行われる仮想法線テクスチャTの作成方法の一例を述べておく。
【0057】
いま、図12(a) に示すように、X軸方向に濃淡変化が現れる原画像パターン(グラデーションパターン)を用意する。図12(b) は、この原画像パターンのX軸に沿った一次元的な濃淡変化を示すグラフである。図12(a) に示す画像パターンは、図12(b) のグラフでは、濃度値A=A(x)なる関数で表現されることになり、濃度値Aは、X軸上の座標位置x3において最大値をとる。いま、この関数A=A(x)を変数xで微分することにより、dA(x)/dxなる微分関数を求め、これに所定の係数kを乗じて、
θ=k・dA(x)/dx
なる関数θ(x)を定義する。なお、係数kは、θが0°を中心とした角度の値をとるような適当な値に設定されているものとする。図12(c) はこのような微分関数θ(x)を示すグラフである。
【0058】
ここで、いくつかの関数値に着目してみると、θ(x1)=θ(x3)=θ(x5)=0°、θ(x2)=+15°、θ(x4)=−15°となっている。そこで、図12(d) に示すように、平面S上に、座標位置x1〜x5をプロットし、それぞれ法線に対して角度θ(x)だけ傾斜した仮想法線ベクトルNv1〜Nv5を定義してみる。すると、これらの仮想法線ベクトルは、図12(a) に示す原画像パターンの濃淡変化に応じた方向を向いていることがわかる。仮に、図12(a) に示す原画像パターンにおいて、濃度値の高い黒い部分は凹部を示し、濃度値の低い白い部分は凸部を示しているとすれば、この原画像パターンは、中央部分が窪んだなだらかな一次元凹凸構造を表現していることになり、図12(d) に示す仮想法線ベクトルNv1〜Nv5からなる一次元の仮想法線テクスチャは、原画像パターンに応じた一次元凹凸構造を触覚的に提示できることになる。
【0059】
以上、説明の便宜上、一次元の原画像パターンについて述べたが、実際には、二次元平面上の凹凸構造を濃淡パターンとして表現した二次元原画像を用意すれば、図13に示すように、この二次元原画像に基いて、二次元の仮想法線テクスチャを作成することができる。すなわち、まず、図13(a) に示すように、二次元原画像が用意される。この原画像は、XY平面上の任意の座標(x,y)に所定の濃度値A(x,y)が定義された関数として定義される。次に、この関数A(x,y)を、図13(b) に示すようにX方向に微分するとともに、図13(c) に示すようにY方向に微分し、図13(d) に示すようなX方向微分画像および図13(e) に示すようなY方向微分画像を求める。図13(d) に示すX方向微分画像は、関数A(x,y)を変数xで偏微分して得られる関数θx(x,y)で示される画素値をもった画像であり、この関数θx(x,y)は、角度θに対応した画素値が得られるように、所定の係数kを用いて、
θx(x,y)=k・dA(x,y)/dx
なる式で求められることになる。同様に、図13(e) に示すX方向微分画像は、関数A(x,y)を変数yで偏微分して得られる関数θy(x,y)で示される画素値をもった画像であり、この関数θy(x,y)は、角度θに対応した画素値が得られるように、所定の係数kを用いて、
θy(x,y)=k・dA(x,y)/dy
なる式で求められることになる(なお、電子出願の制約上、明細書上では、偏微分記号の代わりに通常の微分記号dを用いている)。
【0060】
このようにして、X方向微分画像とY方向微分画像とが得られたら、両画像の画素値に基いてX軸方向の傾斜角度およびY方向の傾斜角度を決めることにより、仮想法線ベクトルを定義すればよい。たとえば、XY平面上の座標(x,y)の位置には、当該位置に立てた法線に対して、X軸方向に関数値θx(x,y)なる角度だけ傾斜し、Y軸方向に関数値θy(x,y)なる角度だけ傾斜した仮想法線ベクトルNvを配置するようにすればよい。こうして、XY平面上の個々の位置にそれぞれ仮想法線ベクトルを配置すれば、図13(a) に示す二次元原画像の濃淡パターンに応じた二次元凹凸構造を触覚的に提示することが可能な仮想法線テクスチャを得ることができる。
【0061】
なお、物体表面上に表現したい凹凸構造は、必ずしも特定の形状をもった窪み構造や***構造だけではない。たとえば、いわゆる梨子地と呼ばれている粗面構造を表現したい場合もある。この場合、オペレータに対しては、ザラザラした接触感を伝えることができれば足りる。このようなザラザラした接触感を生じさせるための仮想法線テクスチャが必要な場合、乱数を用いてランダムテクスチャを作成すればよい。すなわち、それぞれが三次元のランダム方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置すれば、ランダムテクスチャを得ることができる。このランダムテクスチャ上の各仮想法線ベクトルには、その方向に関する周期性や規則性がないため、これをマッピングした仮想物体の表面では、ランダムな方向に面反力が作用することになり、結果的に、ザラザラした粗面構造を表現することができる。ランダムテクスチャの代わりに、全体的にフラクタル揺らぎを含む多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなるフラクタルテクスチャを用いても、同様に、ザラザラした粗面構造を表現することができる。
【0062】
§7. 本発明に係るシミュレーション装置の動作
続いて、本発明に係る物体の接触感シミュレーション装置の動作を、図14に示す流れ図を参照しながら説明する。
【0063】
まず、ステップS1において、仮想物体の定義が行われる。具体的には、§2で述べたように、仮想物体を定義するための形状データ、質感データ、光源データ、硬度を示すパラメータKが、物体情報設定手段10に対して設定されることになる。続くステップS2では、仮想法線テクスチャTが作成される。これは、たとえば、§6で述べた手法により仮想法線テクスチャ作成手段60を用いて、所望の仮想法線テクスチャTを作成すればよい。実用上は、必要に応じて、複数種類の仮想法線テクスチャが作成されることになる。次のステップS3では、物体情報設定手段10内に設定された仮想物体に対して、同じく物体情報設定手段10内に設定された仮想法線テクスチャTをマッピングする処理が、演算制御手段40によって行われる。この実施形態では、§2で述べたように、各仮想物体は、二次元多角形の集合体として定義されているので、各二次元多角形に、それぞれ所定の仮想法線テクスチャを、所定の向きにマッピングする処理が行われることになる。このテクスチャマッピングの処理は、既に、公知のコンピュータグラフィックス技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。以上、ステップS1〜S3は、シミュレーションを行う前の準備段階の処理である。
【0064】
さて、実際のシミュレーション動作は、ステップS4以下の手順によって行われる。これらの手順は、演算制御手段40によって実行される手順である。まず、ステップS4において、作用点の現在位置P(x,y,z)が、位置検出部52から入力される。そして、ステップS5において、この作用点の現在位置が、仮想物体の内部か否かが判断される。既に述べたように、物体情報設定手段10内に設定されている仮想物体の形状データは、三次元空間内での仮想物体の位置の情報を含んでいるので、作用点の現在位置Pの座標値を参照することにより、作用点が仮想物体の内部にあるか外部にあるかを判断することができる。ここで、作用点が仮想物体の外部にあると判断された場合には、再びステップS4の手順へ戻ることになる。別言すれば、作用点が仮想物体の内部に侵入するまで、ステップS6以降の手順(面反力を作用させる手順)は実行されないことになる。
【0065】
作用点が仮想物体の内部にあるとの判断がなされたら、ステップS5からステップS6へと進み、作用点Pを最も近傍にある物体表面に投影して投影点Psを求め、この投影点Ps上の仮想法線ベクトルNvを認識する(投影点Ps上に仮想法線ベクトルが定義されていない場合は、図10に示すように、近傍に定義された仮想法線ベクトルを利用する)。そして、次のステップS7において、面反力Fsの演算が行われる。すなわち、作用点Pと物体表面との距離dと、硬度を示すパラメータKと、ステップS6で認識した仮想法線ベクトルNvとにより、面反力Fsは、
Fs=(K・d)・Nv
なる式によりベクトル量として求まることになる。
【0066】
こうして、面反力Fsが求まったら、ステップS8において、この面反力Fsに基いて、作用点に加えるべき制御力を示す力制御ベクトルCを決定し、この力制御ベクトルCを力発生部53に対して出力する。実際には、面反力ベクトルFsをそのまま力制御ベクトルCとして出力すればよい。かくして、オペレータの指には、力発生部53から力制御ベクトルCに応じた制御力が加えられることになる。ここで、再びステップS4へ戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0067】
§8. 種々の変形例
以上、本発明を図示する実施形態に基いて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の形態で実施可能である。以下にいくつかの変形例を述べておく。
【0068】
(1) 上述の実施形態では、仮想物体の表面上に単一の仮想法線テクスチャTをマッピングしているが、仮想物体の表面近傍に、複数の仮想法線テクスチャを層構造をなすように重ねてマッピングすることも可能である。たとえば、図15は、仮想物体の表面である面α(0)上に仮想法線テクスチャT(0)をマッピングするとともに、面α(0)よりも距離d1だけ深い位置に定義された面α(d1)上に別な仮想法線テクスチャT(d1)をマッピングし、更に、面α(0)よりも距離d2だけ深い位置に定義された面α(d2)上に別な仮想法線テクスチャT(d2)をマッピングした例である。すなわち、面α(0)の近傍に、3枚の仮想法線テクスチャT(0),T(d1),T(d2)を層構造をなすように重ねてマッピングしたことになる。この場合、作用点に最も近い層にマッピングされた仮想法線テクスチャ上の仮想法線ベクトルを用いて面反力を求める演算を行うようにすればよい。
【0069】
たとえば、図示の例の場合、作用点P(x,y,z)に最も近い層が、面α(d1)であったとすれば、作用点P(x,y,z)を面α(d1)に投影して投影点Psを求め、仮想法線テクスチャT(d2)上の仮想法線ベクトルを用いて面反力を求める演算を行えばよい。このように、複数の仮想法線テクスチャを層構造をもって定義すると、立体的により複雑な凹凸構造を表現することが可能になる。
【0070】
(2) 上述の実施形態では、予め物体情報設定手段10内に所定の仮想法線テクスチャTを用意しておき、演算制御手段40内において、この仮想法線テクスチャTを物体表面にマッピングする演算を行い、作用点近傍にマッピングされた仮想法線ベクトルを用いて面反力を求めるようにしていたが、本発明を実施するにあたり、仮想法線テクスチャは必ずしも用意する必要はない。本発明の基本概念は、作用点近傍の仮想物体表面αを認識し、この仮想物体表面αに立てた法線ベクトルNに対して、所定の角度θだけ傾斜した仮想法線ベクトルNvを定め、この仮想法線ベクトルNvの方向を向いた面反力Fsをオペレータに提示することにある。したがって、仮想法線ベクトルNvとしては、必ずしも予め定義されてマッピングされたものを用いる必要はない。
【0071】
たとえば、いわゆる梨子地と呼ばれている粗面構造を表現したい場合であれば、前述したように、予めランダムテクスチャやフラクタルテクスチャを用意して、これをマッピングするような手法も可能であるが、その都度、ランダムにあるいはフラクタル揺らぎをもつように、所定の方向を向いた仮想法線ベクトルNvを発生させる作業を行ってもよい。すなわち、演算制御手段40は、作用点Pの位置が変わるごとに、ランダムに、あるいは、所定の規則に基いて仮想法線ベクトルNvをその都度発生させる作業を行い、この発生させた仮想法線ベクトルを用いて面反力を求める演算を行えばよい。また、作用点Pの座標値に基いて周期的に方向が変わるような仮想法線ベクトルNvを発生させるようにすれば、周期的な凹凸構造を表現することも可能である。
【0072】
(3) §4では、面反力Fsを定義する方法として、物体表面と作用点との距離dに基いて面反力の大きさを決定する方法を示したが、面反力Fsの定義方法は、このような方法に限定されるものではない。たとえば、作用点が物体表面上を通過してからの経過時間に応じて、面反力Fsの大きさを決定するような方法を採ることもできる。
【0073】
(4) 上述の例では、1組の力トランスデューサ50のみを用いているが、複数組の力トランスデューサ50を用意すれば、仮想物体に対する把持動作を体験させることも可能である。図16には、2組の力トランスデューサ50を用い、両作用部51(指サック)をそれぞれ親指と人差し指とに装着した状態が示されている。いずれも指の先端部分に作用点Pが定義されており、オペレータは、両作用部51を任意の方向に移動させながら、仮想物体Bを把持する動作を体感することができる。また、仮想物体Bの把持動作には、仮想物体Bの表面に定義した摩擦係数を考慮したシミュレーションを行うことができる。
【0074】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る物体の接触感シミュレーション装置によれば、仮想物体の表面に仮想法線ベクトルを定義し、この仮想法線ベクトルの方向に所定の大きさの面反力を作用させるようにしたため、表面に微小な凹凸構造が形成された物体に対する接触感を、効率的な演算によって疑似的に体験させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る物体の接触感シミュレーション装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すシミュレーション装置において定義された仮想物体およびその形状データの一例を示す図である。
【図3】図1に示すシミュレーション装置において定義された仮想法線テクスチャの一例を示す斜視図および側面図である。
【図4】図1に示すシミュレーション装置における力トランスデューサの機能を示すブロック図である。
【図5】図4に示す力トランスデューサの具体的な構成例を示す斜視図である。
【図6】本発明における面反力Fsの求め方の基本概念を説明するための物体の側断面図である。
【図7】本発明において、仮想法線ベクトルNvを利用して面反力Fsを求める手法を説明するための物体の側断面図である。
【図8】平面S上に定義された複数の仮想法線ベクトルNvから構成される仮想法線テクスチャTを示す側面図である。
【図9】図8に示す仮想法線テクスチャTを平面α上にマッピングすることにより体感することができる窪み状の仮想曲面αvを示す側断面図である。
【図10】作用点近傍の仮想法線ベクトルを適用する方法を示す平面図である。
【図11】作用点Pに対する投影点Psを求める別な手法を示す側断面図である。
【図12】本発明で用いる仮想法線テクスチャの作成方法の原理を示す図である。
【図13】本発明で用いる仮想法線テクスチャの具体的な作成方法を示す図である。
【図14】本発明に係るシミュレーション装置の動作手順を示す流れ図である。
【図15】仮想物体の同一平面上に層構造をなすように複数の仮想法線テクスチャをマッピングした状態を示す斜視図である。
【図16】2組の力トランスデューサを用いた本発明の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1〜8…頂点
10…物体情報設定手段
20…ディスプレイ
30…物体形状描画手段
40…演算制御手段
50…力トランスデューサ
51…作用部
52…位置検出部
53…力発生部
60…仮想法線テクスチャ作成手段
A(x)…濃度関数
B…仮想物体
C…力制御ベクトル
d,d0,d1,d2…作用点と仮想物体の表面との距離
Fs…面反力
f…作用点Pに加わる力
K…硬さを示すパラメータ
L1〜L4…距離
N…法線ベクトル
Nv,Nv1〜Nv4…仮想法線ベクトル
P…作用点
P0…作用点の過去の位置
Ps…投影点
P(x,y,z)…作用点Pの現時点の位置
Q1〜Q4…格子点
S…平面
Sv…仮想平面,仮想曲面
T,T(0),T(d1),T(d2)…仮想法線テクスチャ
α,β…仮想物体の表面
α(0),α(d1),α(d2)…表面近傍の層
θ…仮想法線ベクトルと法線ベクトルとのなす角度

Claims (13)

  1. 所定の仮想物体を定義し、この仮想物体に対する接触感を疑似的に体験させるためのシミュレーションを行う装置であって、
    仮想物体を定義するための情報を設定する物体情報設定手段と、
    オペレータから加えられた力に基いて三次元の任意方向に移動可能な作用点を有する作用部と、前記作用点の三次元座標系上での位置を検出する位置検出部と、与えられた力制御ベクトルに基いて前記作用点に加える力を発生させる力発生部と、を有する力トランスデューサと、
    前記位置検出部が検出した作用点の位置と前記物体情報設定手段内の情報とに基づいて、前記作用点に加えるべき制御力を示す力制御ベクトルを求め、求めた力制御ベクトルを前記力トランスデューサへ与える制御を行う演算制御手段と、
    を備え、
    前記演算制御手段が、
    前記位置検出部が検出した作用点の位置と前記物体情報設定手段内の情報とに基いて作用点近傍の仮想物体表面を認識する近傍表面認識部と、
    前記近傍表面認識部が認識した仮想物体表面に立てた法線ベクトルに対して所定の角度θだけ傾斜した仮想法線ベクトルを定める仮想法線ベクトル演算部と、
    前記仮想法線ベクトルの方向を向いた面反力を定義する面反力定義部と、
    前記面反力に基いて前記作用点に加えるべき制御力を示す力制御ベクトルを求める力制御ベクトル演算部と、
    を有することを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  2. 請求項1に記載のシミュレーション装置において、
    演算制御手段が、位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報により定義された仮想物体の位置とに基いて、作用点が仮想物体の内部にあるか否かを判断する相互位置関係認識部を更に有し、
    面反力定義部が、前記相互位置関係認識部により作用点が仮想物体の内部にあると判断された場合にのみ、面反力の定義を行うことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  3. 請求項2に記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、仮想物体を定義するための情報として、仮想物体の硬さを示すパラメータKを設定し、
    演算制御手段が、位置検出部が検出した作用点の位置と物体情報設定手段内の情報により定義された仮想物体の位置とに基いて、仮想物体の表面と作用点との距離dを求める距離演算部を更に有し、
    面反力定義部が、前記パラメータKと前記距離dとの積(K・d)に基いて面反力の大きさを決定することを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、仮想物体の形状を示す形状データと、それぞれが三次元の任意方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなる仮想法線テクスチャとを設定し、
    仮想法線ベクトル演算部が、前記仮想物体の表面に前記仮想法線テクスチャをマッピングすることにより仮想法線ベクトルを定めることを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  5. 請求項4に記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、仮想物体を定義するための情報として、仮想物体の表面を二次元多角形の集合体として表現する形状データを設定し、
    面反力定義部が、作用点Pを最も近い二次元多角形α上に投影して投影点Psを求め、この投影点Psの近傍に定義されている仮想法線ベクトルNvを用いて面反力を求める演算を行うことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  6. 請求項4または5に記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、同一平面について重ねてマッピングするための複数の仮想法線テクスチャを設定し、
    仮想法線ベクトル演算部が、仮想物体の表面近傍に、複数の仮想法線テクスチャを層構造をなすように重ねてマッピングし、作用点に最も近い層にマッピングされた仮想法線テクスチャを用いて仮想法線ベクトルを定めることを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、所定の凹凸構造を有する面の各部に定義される法線に応じた方向を向いた仮想法線ベクトルを平面上に配置してなる仮想法線テクスチャを設定したことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  8. 請求項4〜6のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    物体情報設定手段が、それぞれが三次元のランダム方向を向いた多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなるランダムテクスチャを設定するか、あるいは、全体的にフラクタル揺らぎを含む多数の仮想法線ベクトルを平面上に配置してなるフラクタルテクスチャを設定したことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    仮想法線ベクトル演算部が、作用点の位置が変わるごとに、ランダムに、あるいは、所定の規則に基いて、仮想法線ベクトルを定めることを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    仮想物体を表示するためのディスプレイと、
    物体情報設定手段内に設定された情報および位置検出部が検出した作用点の位置の情報に基いて、前記ディスプレイの画面上の所定の表示位置に仮想物体の形状および作用点を描画する物体形状描画手段と、
    を更に設けたことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    XY平面上の任意の座標(x,y)に所定の濃度値が定義された関数A(x,y)で表現される二次元原画像を格納した画像格納部と、
    この関数A(x,y)を変数xで偏微分して得られる関数θx(x,y)と変数yで偏微分して得られる関数θy(x,y)とを求める偏微分処理部と、
    XY平面上の座標(x,y)の位置に、当該位置に立てた法線に対して、X軸方向に関数値θx(x,y)なる角度だけ傾斜し、Y軸方向に関数値θy(x,y)なる角度だけ傾斜した仮想法線ベクトルを配置することにより仮想法線テクスチャを作成するテクスチャ作成部と、
    を有する仮想法線テクスチャ作成手段を更に設けたことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載のシミュレーション装置における演算制御手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載のシミュレーション装置において、
    力トランスデューサの作用部を、オペレータの指先に嵌めて固定できる指サックにより構成したことを特徴とする物体の接触感シミュレーション装置。
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