JP3718869B2 - 偏心型真空ポンプ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポンプ室内に偏心して設けられたロータを回転させて気体を給排する偏心型真空ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の偏心型真空ポンプとして、一対のハウジングを接合してポンプ室を形成すると共に、そのポンプ室の内周面に当接するベーンを摺動可能に支承するロータを、ポンプ室内に偏心して設けたものが知られている。このような偏心型真空ポンプでは、ロータの回転に応じてベーンが伸縮し、隣接する一対のベーンで区画されたポンプ室の体積が変化する。この体積変化を利用して気体を給排することができるのである。
【0003】
また、この種の偏心型真空ポンプでは、例えば、特開平3−222889号公報に記載のように、ロータに外部から回転力を伝達するシャフトを次のようにして支承している。すなわち、上記一対のハウジングの互いに対向する部分に転がり軸受または滑り軸受を個々に設け、その間にシャフトを支承している。このため、シャフトはその軸を中心に回転可能で、かつ軸と垂直方向には揺動不可能に支承される。従って、このシャフトを介して外部から回転力を伝達すれば、上記ロータを回転させて気体の給排を実行することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この種の偏心型真空ポンプでは、各ハウジングに配設された転がり軸受および滑り軸受を、正確に対向させなければならない。これらが正確に対向していないと、シャフトに歪が加わり、充分な耐久性が得られないからである。このため、一対のハウジングに中心合わせのための特別な構成を設けたり、特殊な治具を使用したりする必要が生じ、延いては、偏心型真空ポンプの製造コストを充分に低減することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、一対のハウジングの中心合わせを厳密に行う必要のない偏心型真空ポンプを提供することを目的としてなされた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、
一方が略有底円筒状に他方が略平板状に構成され、互いに接合されて略円柱状のポンプ室を形成する一対のハウジングと、
上記一方のハウジングに設けられた軸受機構と、
上記ポンプ室内に偏心して配設されたシャフトであって、一端が上記他方のハウジングの内壁面近傍まで伸び、当該一端が上記他方のハウジングに支承される部分が存在せず、当該一端が開放端となると共に、他端が上記一方のハウジングに上記軸受機構を介して回転可能かつ軸と垂直方向に揺動不能に支承されたシャフトと、
上記ポンプ室の内周面に当接するベーンを摺動可能に支承すると共に、上記シャフトと一体に回転するロータと、
を備えたことを特徴とする偏心型真空ポンプを要旨としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、
上記軸受機構が、互いに隣接配置された転がり軸受および滑り軸受からなることを特徴とする請求項1記載の偏心型真空ポンプを要旨としている。
請求項3記載の発明は、
上記滑り軸受が上記ポンプ室に連通する油溝を有すると共に、
上記シャフトが、上記一方のハウジングに設けた潤滑油の給油経路と上記油溝とを、そのシャフトの回転角度に応じて間欠的に連通する油路を有することを特徴とする請求項2記載の偏心型真空ポンプを要旨としている。
【0008】
【作用および発明の効果】
このように構成された請求項1記載の発明では、ロータと一体に回転するシャフトが、一端が開放端とされると共に、他端が一方のハウジングに軸受機構を介して回転可能かつ軸と垂直方向に揺動不能に支承されている。すなわち、他方のハウジングにはシャフトを支承する部分が存在しない。従って、ポンプ室を形成する一対のハウジングの中心が多少ずれていてもシャフトに歪が加わらない。このため、各ハウジングの中心合わせを厳密に行う必要がない。この結果、偏心型真空ポンプの耐久性を低下させることなく、その製造コストを良好に低減することができる。
また、上記一方のハウジングは略有底円筒状に、他方のハウジングは略平板状に、それぞれ構成され、互いに接合されて略円柱状のポンプ室を形成する。
【0009】
請求項2記載の発明では、上記軸受機構が、互いに隣接配置された転がり軸受および滑り軸受によって構成されている。転がり軸受は、シャフトを回転可能に支承すると共に、シャフトの軸方向への移動を規制する。また、滑り軸受は、シャフトを回転可能に支承すると共に、シャフトの軸と垂直方向への揺動を規制する。このため、本発明の軸受機構は、シャフトの軸と垂直方向への揺動と共にその軸方向への移動も規制することができる。また、滑り軸受は一枚の円筒状の金属板により構成され、きわめてコンパクトであり、しかも上記転がり軸受に隣接配置されている。
【0010】
従って、本発明では、請求項1記載の発明の効果に加えて、更に次のような効果が生じる。すなわち、シャフトの軸方向への移動が規制されるので、例えばヘリカルギヤなどのように、回転軸に沿った押圧力が加わる伝達部材を介してシャフトへ回転力を伝達することができる。また、滑り軸受はコンパクトであり、かつ転がり軸受に隣接配置されているので、偏心型真空ポンプ全体を小型化することができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、上記滑り軸受が上記ポンプ室に連通する油溝を有すると共に、上記シャフトが、上記一方のハウジングに設けた潤滑油の給油経路と上記油溝とを、そのシャフトの回転角度に応じて間欠的に連通する油路を有している。このため、給油経路に供給された潤滑油は、油路および油溝を介してポンプ室内に間欠的に供給される。また、この潤滑油の供給量は、油路および油溝の寸法を調整して所望の値に設定することができる。
【0012】
従って、本発明では、請求項2記載の発明の効果に加えて、更に次のような効果が生じる。すなわち、潤滑油を供給するための構成を特別に設ける必要がないので、偏心型真空ポンプを一層小型化することができる。また、油路および油溝の寸法を調整することにより、潤滑油の供給量を容易に所望の値に設定することができる。
【0013】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面と共に説明する。図1は、実施例の偏心型真空ポンプ(以下、単に真空ポンプという)1の構成を表す縦断正面図であり、図2は、そのA−A線断面図である。
【0014】
図1に示すように、略有底円筒状のハウジング3と、略平板状のハウジング5とは、ボルト7などを介して互いに接合され、略円柱状のポンプ室9を形成する。ロータ11とスプライン結合するシャフト13は、ポンプ室9内に偏心して配設され、その一端13aがハウジング5の内壁面近傍まで伸び、自由端となっている。また、シャフト13の他端13bは、軸受機構15を介してハウジング3に回転可能かつ軸と垂直方向に揺動不能に支承され、更にその先端にはヘリカルギヤ17が焼き嵌め固定されている。
【0015】
ここで、軸受機構15は、ポンプ室9側から順次配設された滑り軸受21および転がり軸受23を備えて構成されている。滑り軸受21はハウジング3に圧入されており、転がり軸受23は、若干の締代によりハウジング3に圧入され、スナップリング25により位置決め固定されている。シャフト13は各軸受21,23を貫通すると共に、ヘリカルギヤ17のポンプ室9側端面とスナップリング27により転がり軸受23を位置決め固定している。
【0016】
また、滑り軸受21の軸受面には、図3の展開図に示すような油溝31,33が形成されている。すなわち、滑り軸受21には、途中で屈曲して形成され、ポンプ室9に連通する第1油溝31と、第1油溝31の円周方向に沿って形成された溝片31aとほぼ180°対向して形成され、ハウジング3に形成された潤滑油の給油経路35と連通する第2油溝33とが形成されている。一方、図1に戻って、シャフト13には、溝片31aおよび第2油溝33と対向する位置に、一本の直径に沿って油路37が形成されている。このため、油路37の開口部が溝片31aおよび第2油溝33と対向すると、ポンプ室9に給油経路35の潤滑油が供給される。
【0017】
ハウジング3にはポンプ室9に連通する空気および油の吐出口41が形成され、ハウジング5には空気の吸入口43が形成されている。また、図2に示すように、ロータ11の外周面には3個の半径方向の溝11aが円周方向に等間隔で設けられ、この溝11a内にベーン45が半径方向に摺動可能に支承されている。ベーン45は、ロータ11の回転に伴う遠心力を受けると共に、ハウジング3に形成したカムリング47(図1)と当接することにより、ポンプ室9の内周面に常時当接する。
【0018】
次に、このように構成された真空ポンプ1の動作を説明する。図示しない駆動機構からヘリカルギヤ17に回転力が伝達されると、シャフト13およびロータ11がヘリカルギヤ17と一体に回転し、ベーン45は先端をポンプ室9の内周面に当接させながら回転する。シャフト13はポンプ室9に偏心して配設されているので、ロータ11の回転に応じてベーン45が伸縮し、隣接する一対のベーン45と、ロータ11の外周面と、ハウジング3,5の内壁とで囲まれた空間の体積が変化する。この体積変化に応じて、吸入口43から空気が吸入され、吐出口41から空気が吐出される。
【0019】
このとき滑り軸受21は、シャフト13を回転可能に支承すると共に、そのシャフト13の軸と垂直方向への揺動を規制する。このため、シャフト13の一端13aが開放端となっているにも関わらず、シャフト13の回転軸を固定して上記空気の給排を良好に実行することができる。また、転がり軸受23は、シャフト13を回転可能に支承すると共に、そのシャフト13の軸方向への移動を規制する。このため、ヘリカルギヤ17などからシャフト13の回転軸に沿った押圧力などが加わっても、シャフト13の軸方向の位置を固定することができる。更に、給油経路35の潤滑油は第2油溝33,油路37,および第1油溝31を介して間欠的にポンプ室9へ供給されるので、ロータ11の回転を常時円滑にすると共に、ポンプ室9の気密性を保持することができる。
【0020】
ここで、本実施例の真空ポンプ1では、シャフト13の一端13aが開放端となっており、ハウジング5にはシャフト13を支承する部分が存在しない。従って、ハウジング3,5の中心が多少ずれて接合されても、シャフト13に歪が加わらない。このため、各ハウジング3,5の中心合わせを厳密に行う必要がない。この結果、真空ポンプ1の耐久性を低下させることなく、その製造コストを良好に低減することができる。
【0021】
また、滑り軸受21は一枚の円筒状の金属板により構成され、きわめてコンパクトであり、しかも転がり軸受23に隣接配置されている。従って、真空ポンプ1全体を小型化することができる。更に、滑り軸受21の油溝31,33、およびシャフト13の油路37は、容易に寸法を調整することができ、この調整によって潤滑油の供給量を変更することができる。従って、潤滑油の供給量をきわめて容易に所望の値に設定することができる。また更に、滑り軸受21を介して潤滑油を供給するので、潤滑油を供給するための構成を特別に設ける必要がない。このため、真空ポンプ1を一層小型化することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施することができる。例えば、カムリング47はハウジング5の側に設けてもよい。また、油溝31,33および油路37の形態は上記実施例の他にも種々考えることができる。例えば、特開平3−222889号公報に記載されたものと同様の形態に構成することができる。なお、この油溝31,33および油路37は、特に設けなくてもよく、この場合も、各ハウジング3,5の中心合わせを簡略化するなどの効果は得られる。
【0023】
また更に、軸受機構15は、シャフト13を回転可能かつ軸と垂直方向に揺動不能に支承するものであればよく、上記実施例の他にも種々の構成を考えることができる。例えば、転がり軸受23を2個隣接配置して構成してもよく、1個のころ軸受によって構成してもよい。また、シャフト13に回転軸に沿った力が加わらない場合は、軸受機構15を滑り軸受21のみによって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の偏心型真空ポンプの構成を表す縦断正面図である。
【図2】実施例の偏心型真空ポンプの構成を表すA−A線断面図である。
【図3】実施例の偏心型真空ポンプの滑り軸受の構成を表す展開図である。
【符号の説明】
1…偏心型真空ポンプ 3,5…ハウジング 9…ポンプ室
11…ロータ 13…シャフト 15…軸受機構
21…滑り軸受 23…転がり軸受 31…第1油溝
33…第2油溝 35…給油経路 37…油路
41…吐出口 43…吸入口 45…ベーン
Claims (3)
- 一方が略有底円筒状に他方が略平板状に構成され、互いに接合されて略円柱状のポンプ室を形成する一対のハウジングと、
上記一方のハウジングに設けられた軸受機構と、
上記ポンプ室内に偏心して配設されたシャフトであって、一端が上記他方のハウジングの内壁面近傍まで伸び、当該一端が上記他方のハウジングに支承される部分が存在せず、当該一端が開放端となると共に、他端が上記一方のハウジングに上記軸受機構を介して回転可能かつ軸と垂直方向に揺動不能に支承されたシャフトと、
上記ポンプ室の内周面に当接するベーンを摺動可能に支承すると共に、上記シャフトと一体に回転するロータと、
を備えたことを特徴とする偏心型真空ポンプ。 - 上記軸受機構が、互いに隣接配置された転がり軸受および滑り軸受からなることを特徴とする請求項1記載の偏心型真空ポンプ。
- 上記滑り軸受が上記ポンプ室に連通する油溝を有すると共に、
上記シャフトが、上記一方のハウジングに設けた潤滑油の給油経路と上記油溝とを、そのシャフトの回転角度に応じて間欠的に連通する油路を有することを特徴とする請求項2記載の偏心型真空ポンプ。
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JPH08200260A JPH08200260A (ja) | 1996-08-06 |
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JP01009495A Expired - Fee Related JP3718869B2 (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 偏心型真空ポンプ |
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1995
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