JP3716946B2 - 熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規にして有用なる熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体と、水酸基含有含フッ素共重合体と、エステル交換触媒とを含有することから成るというものであって、上記カルボン酸アルキルエステル基中のエステル結合と、片や、水酸基含有含フッ素共重合体中の水酸基との間における、いわゆるエステル交換反応を、目的とする此の熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物の架橋硬化に利用したという、とりわけ、耐熱黄変性、貯蔵安定性ならびに特に耐候性などに優れるという、極めて、極めて実用性の高い熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性の粉体塗料は、昨今の公害規制の高まりや、優れた塗膜性能により、工業用塗装分野で以て、広範に利用されて来てはいるけれども、とかく、ポリエステル系粉体塗料分野にあっては、粉体塗料用の硬化剤として使用される、それぞれ、ブロック・イソシアネート化合物や、エポキシ化合物などの安全性が、頗る、疑問視されて来ている。
【0003】
かてて加えて、こうした硬化剤が、特に、ブロック・イソシアネート化合物であるという場合においては、実際の焼き付け炉による、高温で以て、粉体塗料の硬化を行なった際に、得てして、塗膜が黄変し易いという問題もある。
【0004】
また、アクリル系粉体塗料にあっては、それぞれ、ベース樹脂としてのグリシジル基含有アクリル系樹脂と、硬化剤としての多価カルボン酸との硬化方式が、主として、採用されてはいるけれども、これらの、ベース樹脂成分と硬化剤成分との反応性が高いという反面で、貯蔵安定性の面においては、頗る、問題があるということである。
【0005】
さらに、近年、粉体塗料において、塗膜の耐候性向上の要求が高まって来ており、これに対して、主剤として、フッ素樹脂を用いるという方法(特開平1−103670号公報)が提案されているが、この方法による場合にも、主剤と組み合わせて用いるべき硬化剤として、公知慣用の種々の硬化剤を使用しているというために、上述したような焼き付け時の塗膜の黄変や、貯蔵安定性などの上での問題は避けられない。
【0006】
加えて、充分に優れた耐候性を有する塗膜を得るというためには、主剤のフッ素樹脂のフッ素含有率を高くする必要があるが、斯かるフッ素含有率が高くなるに従って、硬化剤との相溶性などの問題から、混練時における、主剤と硬化剤との混合が不充分になり易く、ひいては、得られる塗膜の耐候性をはじめとする、塗膜諸物性の低下を惹起するという虞もあるということである。
【0007】
そこで、粉体塗料ないしは粉体塗料用樹脂組成物それ自体が安全であって、しかも、架橋反応時に黄変しにくく、加えて、耐候性などにも優れるという、新規なる粉体塗料の開発が待たれているというのが、実状である。
【0008】
これらの問題のうち、焼き付け時の塗膜の黄変と、貯蔵安定性との問題に対しては、既に、本発明者らは、カルボン酸アルキルエステル基を含有する特定の固形樹脂と、特定の水酸基含有化合物とに、さらに、エステル交換触媒を添加するという、新規な硬化方法を用いることにより、安全性の上で以て疑問視されている部類の化合物を用いることなしに、塗膜諸物性、就中、塗膜外観ならびに耐熱黄変性、貯蔵安定性にも優れるという、極めて実用性に高い熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物が得られることを見出している。
【0009】
しかしながら、此の発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を用いるという場合にも、得られる塗膜の、とりわけ、耐候性などは、在来の粉体塗料用アクリル樹脂組成物に比べれば、何ら遜色無いとは言うものの、市場の、より高耐候性化への要求に対しては、充分に、応えられるというようなものではなく、更なる耐候性の向上化が、依然として、求められているということである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の問題点ないしは欠点などを、悉く、解消し解決するということによって、取扱い時の安全性に問題がなく、塗膜諸物性、就中、塗膜外観、耐熱黄変性、塗料安定性にも優れるし、しかも、とりわけ、塗膜の耐候性に非常に優れるという、極めて実用性の高い、熱硬化性の粉体塗料用樹脂組成物を得るべく、鋭意、研究を開始した。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、取扱い時の安全性に問題が無く、しかも、塗膜諸物性、就中、塗膜外観ならびに耐熱黄変性にも、さらには、塗料安定性にも優れるし、加えて、とりわけ、塗膜の耐候性に非常に優れるという、極めて実用性の高い、熱硬化性の粉体塗料、つまり、粉体塗料用樹脂組成物を提供するということにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述したような、従来型の種々の熱硬化性粉体塗料における種々の欠点ないしは問題点などを解消し解決して、大幅に、改善化された形の粉体塗料を得るべく、鋭意、検討を重ねた結果、所望の、極めて実用性の高い熱硬化性粉体塗料が提供できるということを見出すに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0013】
すなわち、本発明は、基本的には、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体と、水酸基含有含フッ素共重合体とに、さらに、エステル交換触媒を添加するということによって、塗膜諸物性、特に、耐候性にも、耐熱黄変性にも、はたまた、貯蔵安定性にも優れるという、斬新なる熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を、つまり、熱硬化性粉体塗料を提供しようとするものである。
【0014】
具体的には、含フッ素ビニル単量体(a−1)、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)と、ビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)とを、必須の原料成分として、共重合せしめることによって得られる、軟化点が約70〜約150℃なる範囲内の特定のカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、特定の水酸基含有含フッ素共重合体(B)と、エステル交換触媒(C)とから成り、しかも、フッ素共重合体(A)と、フッ素共重合体(B)との合計のフッ素含有率が12重量%以上であることという、極めて実用性の高い熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
このように、本発明は、含フッ素ビニル単量体(a−1)、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)と、ビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)とを、必須の原料成分として、共重合せしめることによって得られる、軟化点が70〜150℃で、しかも、フッ素含有率が7重量%以上なるカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、フッ素含有率が7重量%以上なる水酸基含有含フッ素共重合体(B)と、エステル交換触媒(C)とからなること、加えて、上記カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、上記水酸基含有含フッ素共重合体(B)との合計のフッ素含有率が12重量%以上であることから成る、熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を請求しているというものであるし、
【0017】
前記したカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)として、特に、上記した不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)が、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステルおよびイタコン酸ジアルキルエステルよりなる群から選ばれる、少なくとも一つの化合物を用いて得られるものであるという形の、熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物をも請求しているというものであるし、
【0018】
そして、前記したエステル交換触媒(C)として、特に、スルホン酸基を有する化合物を用いるものであるという形の、熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物をも請求しているというものである。
【0019】
以下に、本発明の構成を、詳細に述べることとする。
【0020】
まず、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を構成している諸必須成分のうちの、前記したカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)成分について述べることにする。
【0021】
当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)を調製するには、勿論、公知慣用の種々の方法が適用できるが、就中、含フッ素ビニル単量体類(a−1)と、不飽和カルボン酸アルキルエステルとを用い、さらには、必要に応じて、その他のビニル単量体類をも用いて、これらの各単量体類を、有機溶剤中で、ラジカル共重合せしめたのちに、脱溶剤せしめるという方法が、最も簡便であるので、推奨される。
【0022】
その際に用いられる、まず、含フッ素ビニル単量体類(a−1)とは、分子中に、フッ素原子を有し、しかも、重合性不飽和二重結合(以下、不飽和二重結合ともいう。)をも併せ有するというような形の化合物を指称するものであって、好ましくは、此の含フッ素ビニル単量体類が重合した場合において、次の一般式(I)
【0023】
【化1】
【0024】
[ただし、式中のW、X、YおよびZは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい、水素原子もしくはハロゲン原子またはアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基を表わすものとし、しかも、これらのW、X、YまたはZのうち
の少なくとも一つは、フッ素原子であるものとする。]
【0025】
で示されるフルオロオレフィン構造単位を、主鎖中に、導入せしめ得るというような形の化合物を指称するものである。
【0026】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフッ素含有−α−オレフィン類;
【0027】
あるいはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルの如き、各種のパーフルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル類などであるし、
【0028】
さらには、各種の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル類(ただし、このアルキル基の炭素数としては、1〜18なる範囲内であるものとする。)などでああり、これらの含フッ素ビニル単量体類(a−1)は、単独使用でも、2種以上の併用でもよいが、就中、耐候性などの上からは、上掲の一般式(I)で示されるフルオロオレフィン構造単位が、当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の分子中に、共重合反応を通して導入されるという処から、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンよりなる群から選ばれる、少なくとも1種の含フッ素ビニル単量体類の使用が望ましい。
【0029】
次に、当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)中に、カルボン酸アルキルエステル基を導入する為に使用される不飽和カルボン酸アルキルエステルについて述べることにする。
【0030】
本発明で使用される此の不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、不飽和モノカルボン酸アルキルエステル、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルなどのような公知慣用の種々の不飽和カルボン酸アルキルエステルが使用可能であるが、就中、硬化反応時の水酸基との反応性などの面からは、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)の使用が、特に望ましいものである。
【0031】
かかる不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)について、さらに詳細に説明をすることにすると、そのアルキル基が1〜8個なる炭素原子を有する、直鎖状ないしは分岐状(分枝状)のものであるような、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステルの使用が望ましく、そうした形のものとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0032】
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジtert−ブチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジオクチル、フマル酸ジ2−エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジtert−ブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、
【0033】
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジヘキシル、イタコン酸ジオクチルまたはイタコン酸ジ−2−エチルヘキシルの如き、種々の不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルなどであるが、これらは1種のみの使用でも、あるいは2種以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0034】
さらに、そのほかにも、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートもしくはベンジルメタクリレートの如き、各種のメタクリル酸エステル類;
【0035】
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートもしくはシクロヘキシルアクリレートの如き、各種のアクリル酸エステル類;またはマレイン酸もしくはフマル酸の如き、各種のα,β−不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1〜18なる1価アルコールとのモノエステル類などもまた、使用することが出来る。
前記不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)は、7〜30重量%用いられることが好ましい。
【0036】
さらに、上記した含フッ素ビニル単量体(a−1)および不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)に加えて、ビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)をも使用することが望ましい。
【0037】
これらのビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)は、含フッ素ビニル単量体(a−1)および不飽和カルボン酸ビニルエステル(a−2)との共重合性に優れ、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)中に、フッ素原子ならびにカルボン酸アルキルエステル基を、効率よく、導入せしめることが出来るというものである。
【0038】
かかるビニルエーテル(a−3)およびカルボン酸ビニルエステル(a−4)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、まず、前者のビニルエーテル(a−3)としては、
【0039】
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテルもしくはn−オクチルビニルエーテルなどをはじめ、
【0040】
2−エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェネチルエチルビニルエーテルの如き、各種の(置換)アルキルビニルエーテルないしはアラルキルビニルエーテル類;
【0041】
またはシクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類などであるし、
【0042】
他方、後者のカルボン酸ビニルエステル(a−4)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニルもしくはステアリン酸ビニルなどをはじめ、
【0043】
さらには、炭素数が9なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素数が10なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニルもしくは炭素数が11なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニルの如き、各種の脂肪族カルボン酸ビニルエステル類;
【0044】
またはシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp−tert−ブチル安息香酸ビニルの如き、環状構造を有する、各種のカルボン酸ビニルエステル類などである。
前記ビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)は、34〜50重量%用いられることが好ましい。
【0045】
さらに、上掲した種々の化合物以外にも、必要に応じて、その他の共重合性の単量体類(a−5)も亦、使用することが出来る。その他の共重合性の不飽和単量体類として特に代表的なもののみを挙げれるにとどめれば、エチレン、プロピレンもしくはブテン−1の如き、各種のα−オレフィン類;
【0046】
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、フルオロオレフィンを除く、各種のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル化合物類;
【0047】
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの如き、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;
【0048】
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;またはtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ビチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアミノ基含有単量体類;
【0049】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸の如き、各種のカルボキシル基含有単量体類;ジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェートもしくはジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェートの如き、各種の燐酸エステル基含有単量体類;
【0050】
グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アリルグリシジルエーテルの如き、各種のエポキシ基含有単量体類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランもしくはアリルトリメトキシシラン、
【0051】
トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルもしくはメチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、
【0052】
またはγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランの如き、加水分解性シリル基を有する、各種の単量体類などである。
【0053】
かくして得られる、当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)のフッ素含有率としては、7重量%以上であることが、好ましくは、10重量%以上であることが望ましい。フッ素含有率が7重量%未満の場合は、本発明において用いられる、前記した水酸基含有含フッ素共重合体(B)と組み合わせた形で使用した場合にも、充分なる耐候性を有するという、実用性の高い塗膜が得られないので、好ましくない。
前記水酸基含有フッ素共重合体(A)のフッ素含有率を7重量%以上にするには、前記含フッ素ビニル単量体(a−1)を9.2重量%以上用いればよく、10重量%以上にするには13.2重量%以上用いればよい。
【0054】
一方、当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)のカルボン酸アルキルエステル基の含有量としては、とりわけ、塗膜の機械的物性などの面から、0.05〜0.5(モル/共重合体100g)なる範囲内が適切である。
【0055】
カルボン酸アルキルエステル基の含有量が0.05(モル/共重合体100g)よりも少ない場合には、どうしても、とりわけ、得られる塗膜の機械的物性などが劣り易くなるので、好ましくない。
【0056】
また、当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の軟化点としては、70〜150℃なる範囲内が適切である。軟化点が70℃未満となるような場合には、どうしても、粉体塗料の貯蔵安定性が悪くなり易いし、一方、150℃を超えて余りにも高くなるという場合には、どうしても、塗膜外観などが低下し易くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0057】
当該カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の数平均分子量としては、500〜50,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜10,000なる範囲内が適切である。この数平均分子量が500よりも小さくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の機械的物性などが劣り易くなるし、一方、50,000を超えて余りにも大きくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の平滑性などが低下し易くなって来るので、いずれの場合も好ましくない。
【0058】
次いで、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物の別の一必須構成成分たる、前記した水酸基含有含フッ素共重合体(B)について、より詳細に説明をすることにする。
【0059】
当該水酸基含有含フッ素共重合体(B)を調製するには、勿論、公知慣用の種々の方法を適用することが出来るが、就中、含フッ素ビニル単量体類(a−1)と、水酸基含有単量体類とを用い、さらには、必要に応じて、その他のビニル単量体類をも用い、これらの各単量体類を、有機溶剤中で、ラジカル共重合せしめたのちに、脱溶剤せしめるという方法が、最も簡便であるので、推奨される。
【0060】
その際に用いられる、上記した含フッ素ビニル単量体類(a−1)としては、前述したようなカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の調製の際に使用することが出来るものとして掲げたような、種々の含フッ素ビニル単量体類が、そのまま、使用可能である。
【0061】
次に、上記した水酸基含有ビニル単量体類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;または上掲したような各種のビニルエーテル類と、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
【0062】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類;または上掲したような各種のアリルエーテル類と、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
【0063】
あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−トもしくはポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−トの如き、各種の水酸基含有(メタ)アクリレ−ト類;または上掲したような各種の(メタ)アクリレ−トと、ε−カプロラクトンの付加反応生成物などである。
【0064】
さらに、必要に応じて、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の調製の際に用いることが出来るものとして掲げたような其の他の共重合性の単量体類(a−5)をも使用することが出来る。
【0065】
かくして得られる当該水酸基含有含フッ素共重合体(B)は、常温において固形状であることが望ましい。
【0066】
当該水酸基含有含フッ素共重合体(B)の水酸基価としては、20〜200(mgKOH/g固形分;以下同様)なる範囲内が好適である。
【0067】
水酸基価が20よりも小さいという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の機械的物性などが劣るというようになるし、一方、200を超えて余りにも大きくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の耐水性などが低下し易くなって来るので、いずれの場合も好ましくない。
【0068】
また、当該水酸基含有含フッ素共重合体(B)のフッ素含有率は、7重量%以上であることが、好ましくは、10重量%以上であることが望ましい。フッ素含有率が7重量%未満の場合には、前述したカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と組み合わせて使用した場合にも、充分なる耐候性などを有する塗膜が得られない。
前記水酸基含有フッ素共重合体(B)のフッ素含有率を7重量%以上にするには、前記含フッ素ビニル単量体(a−1)を9.2重量%以上用いればよく、10重量%以上にするには13.2重量%以上用いればよい。
【0069】
さらに、それぞれ、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、水酸基含有含フッ素共重合体(B)との合計のフッ素含有率は、12重量%以上であることが望ましい。此の総フッ素含有率が、12重量%未満の場合には、どうしても、得られる塗膜の充分なる耐候性などを付与するということができなくなって来るので、好ましくない。
総フッ素含有率を12重量%以上にするためには、次式に基づいて共重合体(A)と共重合体(B)との使用量を計算することができる。
例えば共重合体(A)のフッ素含有率が7重量%であり、X重量%使用すると仮定したとき、下式により共重合体(B)のフッ素含有率Yと重量比(100−X)とを求めることができる。
12重量%=7重量%×(X/100)+Y重量%×[(100−X)/100]
【0070】
本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物中の、それぞれ、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、水酸基含有含フッ素共重合体(B)との使用比率としては、前者共重合体(A)中のカルボン酸アルキルエステル基のモル数と、後者共重合体(B)中の水酸基のモル数との比、つまり、A/Bなる比が、4/1〜1/4となるような範囲内が好適である。
【0071】
此のA/Bなる比が4/1よりも余りにも大きくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の機械的物性などが劣るというようになって来るし、一方、此のA/B比が1/4よりも余りにも小さくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の耐水性などが低下し易くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0072】
本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物の更なる一必須構成成分たる、前記したエステル交換触媒(C)とは、前述したようなカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)中のカルボン酸アルキルエステル基と、前述したような水酸基含有含フッ素共重合体(B)中の水酸基との間でのエステル交換反応を促進化せしめるという形の化合物を指称するというものであって、一般的には、酸性ないしは塩基性の化合物が用いられるというものである。
【0073】
当該エステル交換触媒(C)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸またはスルホン酸などのような、各種の酸性化合物;LiOH、KOHまたはNaOHなどのような、各種の塩基性化合物などをはじめ、さらには、PbO、酢酸亜鉛、酢酸鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートまたはモノブチル錫酸などのような、各種の金属化合物などであるが、
【0074】
就中、本発明の効果を充分に発揮せしめるものとしては、分子中にスルホン酸基を有する化合物またはスルホン酸のアルカリ金属塩ないしはアミン塩からなる基、つまり、アルカリ金属塩基ないしはアミン塩基を有する化合物などの使用が、特に望ましいというものである。
【0075】
ここにおいて、まず、上記したスルホン酸基を有する化合物とは、たとえば、分子中にスルホン酸基;または次式
【0076】
【化2】
【0077】
を有するような化合物を指称するというものであるし、
【0078】
他方、上記したスルホン酸のアルカリ金属塩基ないしはアミン塩基を有する化合物とは、たとえば、スルホン酸基の塩;または次式
【0079】
【化3】
【0080】
〔ただし、式中のMは、アルカリ金属原子または−NR3 (ただし、このRは、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい、水素原子またはアルキル基を表わすものとする。)を表わすものとする。〕
【0081】
で示されるような基を有する化合物を指称するというものである。
【0082】
これらの諸々の化合物のうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸あるいは此等のナトリウム塩などをはじめ、さらには、此等のアンモニウム塩ないしはアミン塩などである。
【0083】
当該エステル交換触媒(C)は、通常は、カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、水酸基含有含フッ素共重合体(B)との合計の固形分100重量部に対し、0.01〜10重量部なる範囲内で以て、好ましくは、0.1〜5重量部なる範囲内で以て添加されるというのが適切である。
【0084】
この添加量が、0.01重量部よりも少なくなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗膜の硬化性などが劣るようになり易いし、一方、10重量部よりも多くなるという場合には、どうしても、とりわけ、塗料の保存安定性などが劣るようになり易いので、いずれの場合も好ましくない。
【0085】
また、これらのエステル交換触媒は、単独使用であってもよいし、あるいは2種以上の併用であってもよいことは、勿論である。
【0086】
以上に詳説して来たような、必須の諸構成成分を用いて得られる、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物から、粉体塗料を調製する方法としては、勿論ながら、公知慣用のいずれもが採用できるというものである。
【0087】
それらのうちでも特に代表的なる方法としては、まず、以上に詳説して来たような、必須の諸構成成分を、必要に応じては、顔料や流展剤などのような公知慣用の種々の添加剤類と共に混合せしめるという工程;次いで、かくして得られる混合物(ないしは配合物)を溶融混練せしめるという工程;しかるのち、微粉砕化工程(微粉砕工程)を経、そして、分級化工程(分級工程)を経るということによって、目的とする粉体塗料を得る、いわゆる機械的粉砕方式などが挙げられる。
【0088】
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、有機系ないしは無機系の顔料類をはじめ、流動調整剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤などのような、公知慣用の種々の添加剤類;ニトロセルロースもしくはセルロース・アセテート・ブチレートの如き、各種の繊維素誘導体類;あるいは塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、石油樹脂、エポキシ樹脂または塩化ゴムなどのような、公知慣用の種々の樹脂類を添加せしめるということも出来る。
【0089】
かくして得られる、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物は、常法により、種々のの基材類に塗布され、次いで、常法により、焼き付け乾燥せしめるということによって、とりわけ、塗膜外観、硬化性、耐候性ならびに機械的諸物性などに優れた塗膜を与えることが出来るというものである。
【0090】
そして、かくして得られる、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物は、主として、自動車上塗り用または自動車中塗り用の、あるいは自動車部品用の、建材用の、さらには、各種金属製品用の塗料などとして、広範に、利用し適用することが出来るというものである。
【0091】
したがって、本発明の熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物を、粉体塗料として利用し適用する際に用いられる、いわゆる被塗物基材として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルミニウム、ステンレス・スチール、クロム・メッキ、トタン板またはブリキ板の如き、各種の金属素材または金属製品類;あるいは瓦類;ガラス類;または各種の無機質建材類などであり、
【0092】
具体的には、自動車車体または自動車(用)部品類、二輪車または二輪車(用)部品類などをはじめ、さらには、門扉またはフェンス類の如き、各種の建材類;アルミサッシ類の如き、各種の建築内外装用資材類;あるいはアルミホイルなどのような種々の鉄ないしは非鉄金属類の諸素材類ないしは諸製品類などである。
【0093】
【実施例】
次に、本発明を参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明することにするが、本発明は、これらの例示例のみに、決して、限定されるものではない。以下において、特に断りの無い限りは、部は、すべて、重量部を意味するものとする。
【0094】
参考例1〜6〔カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)の調製例〕
【0095】
内容積が3,000ミリ・リットルのステンレス製のオートクレーブに、キシレン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込んで、オートクレーブ内の空気を置換した。
【0096】
次に、このオートクレーブ内を75℃にまで昇温し、第1表に示すような量の、単量体類および重合開始剤を、8時間に亘って加えたのちに、1時間のあいだ温度を保持し、tert−ブチルパーオキシピバレートの5部を加えて、さらに、8時間のあいだ反応を続行させて、重合反応を完結せしめた。
【0097】
かくして得られた共重合体の溶液から、溶剤を除去せしめるということによって、目的とするカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)を得た。それぞれのカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体の諸特性値を、まとめて、同表に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
《第1表の脚注》
「CTFE」………………クロロトリフルオロエチレンの略記
「HFP」…………………ヘキサフルオロプロピレンの略記
「TFE」…………………テトラフルオロエチレンの略記
【0103】
「EVE」…………………エチルビニルエーテルの略記
「IBVE」………………イソブチルビニルエーテルの略記
「tBVE」………………tert−ブチルビニルエーテルの略記
【0104】
「VAc」…………………酢酸ビニルの略記
「VCH」…………………シクロヘキサンカルボン酸ビニルの略記
「VV−9」………………「ベオバ−9」の略記であって、オランダ国シェル社製の、炭素数が9の分岐脂肪族酸のビニルエステルの商品名
【0105】
「VTB」…………………p−tert−ブチル安息香酸ビニルの略記
「TBPV」………………tert−ブチルパーオキシピバレートの略記
「AIBN」………………アゾビスイソブチロニトリルの略記
【0106】
「フッ素含有率」…………アリザリン・コンプレクソン法によって測定した共重合体中のフッ素含有率であって、単位は重量%である。
【0107】
「カルボン酸アルキルエステル基含有量」…共重合体のカルボン酸アルキルエステル基の含有量を示す値であって、その単位はモル/100g−共重合体である。
【0108】
参考例7〜10〔水酸基含有含フッ素共重合体(B)の調整例〕
内容積が3,000ミリ・リットルのステンレス製のオートクレーブに、キシレンの1,000部およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル)セバケートの10部を仕込み、窒素ガスを吹き込んで、オートクレーブ内の空気を置換した。
【0109】
次に、このオートクレーブ内を75℃にまで昇温し、第2表に示すような量の、単量体類および重合開始剤を、8時間に亘って加えたのちに、1時間のあいだ温度を保持し、tert−ブチルパーオキシピバレートの5部を加えて、さらに、8時間のあいだ反応を続行させて、重合反応を完結せしめた。
【0110】
かくして得られた、共重合体の溶液から、溶剤を除去せしめるということによって、目的とする水酸基含有含フッ素共重合体(B)を得た。それぞれの水酸基含有含フッ素共重合体の諸特性値を、まとめて、同表に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
参考例11〔カルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体(D−1)の調製例〕
【0113】
温度計、攪拌器、還流、冷却器および窒素導入口を備えた反応容器中に、キシレンの667部を仕込み、窒素で反応容器中の空気を置換し、加熱して、還流を行なった。
【0114】
そこへ、スチレンの750部およびフマル酸ジブチルの250部と、アゾビスイソブチロニトリルの40部とからなる、単量体類と重合開始剤との混合物を、4時間に亘って加えたのちに冷却してから、約100℃の温度で、アゾビスイソブチロニトリルの5部を加えて、重合反応を完結せしめた。
【0115】
かくして得られた、アクリル共重合体の溶液から、溶剤を除去せしめるということによって、目的とするカルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体(D−1)を得た。此処に得られたカルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体中のカルボン酸アルキルエステル基含有量は、0.11(モル/共重合体100g)であった。
【0116】
参考例12〔エポキシ基含有含フッ素共重合体(D−2)の調製例〕
内容積が3,000ミリ・リットルのステンレス製のオートクレーブに、キシレンの1,000部を仕込み、窒素ガスを吹き込んで、オートクレーブ内の空気を置換した。
【0117】
次に、このオートクレーブ内を75℃にまで昇温し、クロロトリフルオロエチレンの500部、シクロヘキシルビニルエーテルの300部およびグリシジルビニルエーテルの200部と、アゾビスイソブチロニトリルの80部とからなる、単量体類と重合開始剤とを、8時間に亘って加えたのちに、1時間のあいだ温度を保持し、tert−ブチルパーオキシピバレートの5部を加えて、さらに、8時間のあいだ反応を続行させて、重合反応を完結せしめた。
【0118】
かくして得られた、共重合体の溶液から、溶剤を除去せしめるということによって、目的とするエポキシ基含有含フッ素共重合体(D−2)を得た。此処に得られたエポキシ基含有含フッ素共重合体(D−2)のフッ素含有率は24.1(重量%)であり、しかも、エポキシ当量は500(g/eq)であった。
【0119】
参考例13〔酸基含有含フッ素共重合体(D−3)の調製例〕
四つ口フラスコ内で以て、参考例9で得られた水酸基含有含フッ素共重合体(B−3)の100部を、キシレン中に溶解せしめ、次いで、無水コハク酸の5.6部を加えて、100℃で、4時間のあいだ攪拌を続けたのちに、溶剤を除去せしめるということによって、目的とする酸基含有含フッ素共重合体(D−3)を得た。
【0120】
此処に得られた酸基含有含フッ素共重合体(D−3)のフッ素含有率は15.7(重量%)であり、しかも、酸価は30(mgKOH/g共重合体)であった。
【0121】
実施例1〜8ならびに比較例1〜8
【0122】
(1) 粉体塗料の調製例
【0123】
第3表に示すように、参考例1〜6で得られたカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、参考例7〜10で得られた水酸基含有含フッ素共重合体(B)と、エステル交換触媒(C)と、熱硬化性粉体塗料において用いられる、各種の樹脂類、硬化剤類、添加剤類および顔料とを、
【0124】
さらに、比較対照用として、参考例11〜13で得られたカルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体(D−1)と、エポキシ基含有含フッ素共重合体(D−2)と、酸基含有含フッ素共重合体(D−3)と、熱硬化性粉体塗料において用いられる、各種の樹脂類、硬化剤類、添加剤類および顔料とを、
【0125】
110℃において、「コニーダー PR−46型」(スイス国ブス社製の商品名)で以て溶融混練せしめ、冷却し、粉砕せしめた。次いで、150メッシュのスクリーンを用いて、それぞれの粉砕物を通過したものを集めるということによって、各種の粉体塗料を得た。
【0126】
(2) 粉体塗料についての評価
【0127】
第3表に示すような組成割合で以て調製した、それぞれの粉体塗料を、静電スプレー塗装機で以て、燐酸亜鉛処理を施した、0.8mm厚の梨地鋼板上に、50±5マイクロ・メーター(μm)となるように塗装せしめ、180℃で、20分間の焼き付けを行なって、各種の試験板(つまり、硬化塗膜の載っている塗装板)を得た。
【0128】
次いで、それぞれの塗装板について、第4表に示すような、各種の試験項目に関して、塗膜の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、同表に示す。
【0129】
【表6】
【0130】
《第3表の脚注》
「A−224S」………………「ファインディック A−224S」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、グリシジル基含有アクリル樹脂の商品名;エポキシ当量=525
【0131】
「M−8020」………………「ファインディック M−8020」の略記であって、同上社製の、水酸基含有ポリエステル樹脂の商品名;水酸基価=30
【0132】
「B−1530」………………「IPDI-adduct B−1530」の略記であって、ドイツ国ヒュルス社製の、ブロック・イソシアネート化合物の商品名
【0133】
「PTSA」……………………パラトルエンスルホン酸の略記
「DBSA」……………………ドデシルベンゼンスルホン酸の略記
【0134】
「タイペーク CR−90」…石原産業(株)製の、ルチル型酸化チタンの商品名
【0135】
「アクロナール4F」…………ドイツ国BASF社製の、流動調整剤の商品名
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
《第3表の脚注》
「D−1」………カルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体(D−1)の略記
「D−2」………カルボン酸アルキルエステル基含有アクリル共重合体(D−2)の略記
【0139】
「B−1」………水酸基含有含フッ素共重合体(B−2)の略記
【0140】
「DBTDR」………ジブチル錫ジラウレートの略記
「CR−90」………「タイペ−ク CR−90」の略記
【0141】
【表9】
【0142】
《第3表の脚注》
「A−5」………カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A−5)の略記
【0143】
「D−3」………酸基含有含フッ素共重合体(D−3)の略記
【0144】
「B−3」………水酸基含有含フッ素共重合体(B−3)の略記
「B−4」………水酸基含有含フッ素共重合体(B−4)の略記
【0145】
【表10】
【0146】
《第4表の脚注》
耐黄変性…………焼き付けを行なった際の塗膜の黄変の度合いを、目視によって評価判定をした。
【0147】
エリクセン………エリクセン試験器による絞り出し試験であって、塗面に亀裂の入らない限界値(mm数)で以て表示をした。
この値が大きいほど、塗膜が可撓性に優れているということを意味している。
【0148】
耐衝撃性…………デュポン衝撃試験機を用い、JIS K−5981に準拠し、500gの荷重を用い、1/2インチのノッチ付きという条件で以て行なった。
【0149】
ゲル分率…………焼き付け後の塗膜を単離し、常温で、24時間のあいだ、アセトン中に浸漬させた際の残存重量を、初期重量で以て除した値を、百分率で以て表示をした。
【0150】
この値が大きいほど、硬化性が高いということを意味している。
【0151】
促進耐候性………スガ試験機(株)製のサンシャイン・ウェザオメーターによる2000時間後における試験片(硬化塗膜)の光沢保持率(%)によって評価判定をした。
【0152】
貯蔵安定性………粉体塗料を、40℃の恒温槽中に、1ヵ月のあいだ貯蔵したのち、その粉体塗料を塗装した際の塗装作業性によって評価判定をした。
【0153】
【表11】
【0154】
【表12】
【0155】
【表13】
【0156】
このように、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物は、塗料の貯蔵安定性は勿論のこと、とりわけ、塗膜外観、塗膜諸物性ならびに特に、耐候性などにも優れた、極めて実用性の高いものであることが、無理なく、知り得よう。
【0157】
【発明の効果】
以上に詳述して来たように、本発明に係る熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物は、安全性が疑問視されているような化合物を、わざわざ、用いるということもなく、黄変しにくいというものであるし、しかも、塗膜の、それぞれ、とりわけ、外観ならびに塗膜諸物性にも優れるし、さらには、貯蔵安定性にも優れるというものであるし、加えて、特に、耐候性などにも優れるというものであって、極めて実用性の高いものである。
Claims (3)
- 含フッ素ビニル単量体(a−1)、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)と、ビニルエーテル(a−3)および/またはカルボン酸ビニルエステル(a−4)とを、必須の原料成分として、共重合せしめることによって得られる、軟化点が70〜150℃で、しかも、フッ素含有率が7重量%以上なるカルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、フッ素含有率が7重量%以上なる水酸基含有含フッ素共重合体(B)と、エステル交換触媒(C)とからなること、加えて、上記カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)と、上記水酸基含有含フッ素共重合体(B)との合計のフッ素含有率が12重量%以上であることを特徴とする、熱硬化性粉体塗料用樹脂組成物。
- カルボン酸アルキルエステル基含有含フッ素共重合体(A)が、その不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル(a−2)として、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステルおよびイタコン酸ジアルキルエステルよりなる群から選ばれる、少なくとも一つの化合物を用いて得られるものである、請求項1記載の組成物。
- 前記したエステル交換触媒(C)がスルホン酸基を有する化合物である、請求項1または2記載の組成物。
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