JP3716798B2 - ねじ締め機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天井や壁に使用する石膏ボード等にねじ締め作業を行う際に用いられるねじ締め装置(主に電動スクリュードライバ)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動スクリュードライバ等のねじ締め装置は、主に石膏ボード等の被締付材料を対象に使用される。このねじ締め装置は、ねじ締め作業の場合、ねじ締めの深さ位置を一定の深さにする必要があるため、本体の一部に軸方向移動調節可能なストッパを設け、ねじ締め作業中にストッパが被締結部材に当接する位置まで本体が移動すると、クラッチの遮断動作を行うねじ締め深さの調節機構が設けられている。一方、逆回転時のねじ緩め作業の場合、ワンウェイクラッチにより動力が伝達される機構が設けられている。
【0003】
従来のねじ締め装置の一例である特開平8−267367号公報に開示されているねじ締め装置を図1を用いて以下説明する。
【0004】
図1において、ねじ締め装置のハウジング2の先端にはストッパスリーブ3がねじ嵌合し取付けられている。ハウジング2に対してストッパスリーブ3を回転させることにより、ストッパスリーブ3とハウジング2との相対距離を調節することができ、これによりねじ送り距離(ねじ締込み深さ)が調節可能となる。
【0005】
ハウジング2内では図示省略のモータの出力軸に取付けられたピニオン19が駆動軸部材4の外周に設けられたギヤ5と噛み合っており、駆動軸部材4とギヤ5とは回転方向に一体であるため、ギヤ5を介してモータの回転が駆動軸部材4に伝達される。
【0006】
圧縮ばねであるクラッチスプリング6は図2に示すように左巻きで、上方端部と下方端部が軸方向に延びた形状をしている。
【0007】
係合ボール18を有し、係合ボール18によってビット10を一体回転可能に収納する出力軸部材7は、メタル部8によって回動及び軸方向移動可能に支持されると共にビット10側への移動位置が規制されている。また、出力軸部材7は駆動軸部材4の駆動軸側スリーブ4a内に保持されたワンウェイクラッチ16内に位置する部分を持ち、出力軸部材7はワンウェイクラッチ16内を軸方向移動可能であると共に、ワンウェイクラッチ16の作用によってワンウェイクラッチ16に対して一方向(ねじ締め方向)にのみ回動可能となっている。
【0008】
ストッパスリーブ3の駆動軸部材4側端部には、回転不能かつ軸方向移動可能に設けられ、圧縮ばね11によりストッパスリーブ3側に常時付勢されたロック部材12が当接しており、通常時にはストッパスリーブ3とロック部材12の当接部に両者に対して互いに噛み合うよう設けられた凹凸状の爪部が係合している。従って、ストッパスリーブ3の爪部とロック部材12の爪部とが噛み合っている状態では、ストッパスリーブ3はハウジング2に対して回転不能であり、軸方向位置が固定されている。なお、ねじ締込み深さの調整は、操作者がロック部材12を圧縮ばね11に抗して駆動軸部材4側に摺動させ、ストッパスリーブ3とロック部材12の爪部との係合を解除した状態でハウジング2に対してストッパスリーブ3を回転させることにより行うことができる。
【0009】
出力軸部材7の反ビット10側端部には駆動軸部材4内に軸方向移動可能に設けられた傘状部材13が当接されており、この傘状部材13の外周のテーパー部13aには駆動軸側スリーブ4aに設けられた貫通孔4b内に半径方向に移動可能に設けられたボール9が当接しており、また傘状部材13はスプリング15によって常時出力軸部材7側に押圧されている。
【0010】
図1に示す状態では、ビット10及び出力軸部材7は傘状部材13を介してスプリング15の押圧力により、図示下方に移動し、ビット10先端部はストッパスリーブ3先端よりも突出した状態にある。
【0011】
この状態からねじ締め作業を開始することにより、ビット10及び出力軸部材7は傘状部材13を介してスプリング15の押圧力に抗しながら図示上方に軸方向移動する。
【0012】
このようにビット10及び出力軸部材7が軸方向に移動すると、出力軸部材7から離れるに従って徐々に外径寸法が小さくなるよう傾斜した傘状部材13のテーパー部13aによって、テーパー部13aに当接しているボール9は駆動軸側スリーブ4a外周に突出する。
【0013】
なお、出力軸部材7には駆動軸側スリーブ4aとほぼ同寸法の外径を有する出力軸側スリーブ7aが設けられており、この出力軸側スリーブ7aには、出力軸側スリーブ7a及び駆動軸側スリーブ4a外周上に位置するクラッチスプリング6の一端部を固定する固定部14a及びクラッチスプリング6端面と当接しクラッチスプリング6の軸方向の位置を規制する出力軸側スリーブ7a外周上にに突出した突出部14bが設けられている。また、クラッチスプリング6の固定部14aに固定される端部は図2及び図3に示すように折り曲げられており、これによって軸方向移動不能に取付けられている。
【0014】
クラッチスプリング6の駆動軸部材4側の端部6aは自由端となっており、ビット10及び出力軸部材7が軸方向に移動する際には連動して軸方向に移動する。
【0015】
ねじ締め付け作業時には、ビット10及び出力軸部材7がスプリング15に抗して軸方向移動すると、クラッチスプリング6の駆動軸部材4側の端部6aは出力軸部材7に連動して軸方向移動し、ボール9の外周上に位置する。このビット10及び出力軸部材7の移動と共に傘状部材13が軸方向移動し、傘状部材13のテーパー部13aの作用によってボール9は駆動軸側スリーブ4aの外周上に突出する。このため、クラッチスプリング6の駆動軸部材4側の端部6aとボール9とは駆動軸部材4の回転方向において当接し、モータの回転力がギヤ5、駆動軸部材4、ボール9を介してクラッチスプリング6に伝達される。
【0016】
クラッチスプリング6はモータが正回転である時には、外径寸法を小さくするよう変形し、駆動軸側スリーブ7a外周及び出力軸側スリーブ4a外周上に巻き付き、両者部材を一体に回転させるよう働き、これによって駆動軸部材4の回転力がクラッチスプリング6を介して出力軸部材7に伝達され、ビット10が回転してねじ締め作業が行われる。
【0017】
なお、ねじ締め付け作業が進むと、ストッパスリーブ13の端面が被締付部材に当接するが、そのねじが締めつけられるに伴って、ビット10及び出力軸部材7はスプリング15の押圧力によってビット10先端側に軸方向移動する。ビット10及び出力軸部材7がビット10先端側に所定量移動した際に傘状部材13のテーパー部13aに当接し駆動軸側スリーブ4a外周上に突出していたボール9が突出しなくなる。これによってクラッチスプリング6の駆動軸側スリーブ4a外周上及び出力軸側スリーブ7a外周上への巻き付きが解除され、出力軸部材7及びビット10の回転伝達が遮断され、ねじ締め作業が終了する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような従来のねじ締め装置は、ねじ締め付け作業の終了を出力軸部材7及び傘状部材13の軸方向移動によりボール9を沈下させることにより行う構造であるが、クラッチスプリング6の一端部6aは出力軸部材7の固定部14aに係止されているため、出力軸部材7の移動に伴ってクラッチスプリング6が出力軸側スリーブ7a上で軸方向に移動する。ボール9が沈下し回転動作が遮断されるとクラッチスプリング6は初期状態(コイル間が密着した状態)に復帰するが、出力軸部材7の外周面の状態などにより部分的にコイル間隔に隙間が生じるようにコイススプリング6が変形してしまう、あるいはコイルスプリング6端部が突出部14bに当接しない状態(初期状態に戻らない状態)となってしまう場合があり、図4に示すようにビット10及び駆動軸部材4がスプリング15に抗して軸方向移動していないにもかかわらずクラッチスプリング6の駆動軸部材4側端部がボール9外周上に突出してしまう、あるいは図5に示すように正常な状態に比べクラッチスプリングの6の端部6aが軸に対して傾く場合がある。
【0019】
クラッチスプリング6の端部6aが図4に示すような状態でねじ締めを行うと、通常よりクラッチスプリング6の端部6aが駆動側スリーブ4aの奥まで入り込むため、ねじ締め付け終了時、すなわち出力軸部材7への回転伝達の遮断時にクラッチスプリング6の端部6aとボール9との当接が解除するタイミングが遅くなり、ねじの締付け深さが設定より深くなってしまうという問題があった。
【0020】
また、クラッチスプリング6が傾いた状態でねじ締めを行うと、駆動軸側スリーブ4aの溝内にクラッチスプリング6の端部6aが噛み込んでしまい、出力軸部材7への回転伝達が遮断できずに出力軸部材7及びビット10が回転し続ける現象(共回り)が発生するという問題があった。
【0021】
本発明は、上記した欠点を解消し、クラッチスプリングが固定側の軸部材上で軸方向に移動することを防止することで、ねじの締込み過ぎや、共回り現象が生じないねじ締め装置を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、駆動装置からの動力を伝達する駆動軸部材と、ビットを保持し、軸方向に移動可能に支持された出力軸部材と、出力軸部材と駆動軸部材間とを互いに離隔させるよう作用する押圧手段と、駆動軸部材と出力軸部材の同軸上に、各々の円筒面にまたがってコイル状に配設され、出力軸部材及び駆動軸部材のどちらか一方に一部が固定され、かつ他方の部材に出力軸部材の移動に応じて係止可能なクラッチスプリングと、駆動軸部材と出力軸部材間に取付けられたワンウェイクラッチとを有するねじ締め装置であって、クラッチスプリングの一部を固定する固定側の軸部材外周に、クラッチスプリングの軸方向の移動を規制する凸部を設けることにより達成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明ねじ締め装置の一実施形態を図1、図6及び図7を用いて以下説明する。なお、本実施形態においては出力軸部材7以外の部分については従来のねじ締め装置と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0024】
図6は本発明ねじ締め装置を構成する出力軸部材の一実施形態を示す斜視図、図7は図6のA−A線断面図、図8は本発明ねじ締め装置を構成する出力軸部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【0025】
図6及び図7に示すようにクラッチスプリング6の一端部を固定する出力軸部材7の出力軸側スリーブ7a外周上には、クラッチスプリング6の一端部と係合する固定壁14a及びクラッチスプリング6の端部が当接する突出部14bが設けられていると共に、出力軸側スリーブ7a上に突出すると共に軸方向に直交する方向に延びる形状をした複数の凸部17が設けられている。
【0026】
この凸部17の間隔は、図7に示すようにクラッチスプリング6のコイル間に凸部17が突出するように形成されており、これによって出力軸部材17の出力軸側スリーブ17a上にクラッチスプリング6を配置させた際には、凸部17がクラッチスプリング6の軸方向の位置を規制するよう働く。
【0027】
このような構成とすることにより、ねじ締め付け終了間際にビット10及び出力軸部材7がスプリング15の押圧力により駆動軸部材4から離れる方向に移動する際に、クラッチスプリング6が出力軸側スリーブ17a上で軸方向に移動してしまうことを抑制することができ、出力軸側スリーブ17a上においてクラッチスプリング6がコイル間隔が広がるように変形すること及びクラッチスプリング6の端面が突出部14bに当接せずに軸に対して傾いてしまうことを防止することができる。これによって、ねじの締込み過ぎや共回り現象の発生を抑制することができると共に、次回のねじ締込み時もクラッチスプリング6の端部6aとボール9との当接状況を安定させることができ、被締付材料へのねじ締め作業を繰返し行った場合でも回転伝達遮断位置が一定となり、ねじ締込み深さの精度を向上させることができるようになる。
【0028】
なお、上記実施形態では、出力軸側スリーブ7a上に突出する凸部17を複数個設けた構成とし、凸部17に当接するクラッチスプリング6の一部の部分に応力が集中することを抑制するようにしたが、凸部17を1個設けた構成としても、クラッチスプリング6が出力軸側スリーブ17a上で軸方向に移動してしまうことを抑制することができるものである。
【0029】
また、上記した凸部17を図8に示すようにクラッチスプリング6と同形状の螺旋状に突出する形状として、クラッチスプリング6と凸部17との接触面積を大きくする構成とすることも可能であり、この場合には凸部17に当接するクラッチスプリング6の一部に応力が集中することを更に抑制することができるものである。
【0030】
なお、本実施形態では、正回転時に駆動軸側部材4と出力軸部材7とを一体的に回転させるよう働くクラッチスプリング6の端部を固定する固定側の軸部材を出力軸部材7とし、出力軸部材7の軸方向移動に連動してクラッチスプリング6の端部6aと当接可能となるボール9を保持する軸部材を駆動軸側部材4としたが、これらは逆の関係、すなわちクラッチスプリング6の端部を固定する固定側の軸部材を駆動軸部材4とし、ボール9を保持する部材を出力軸部材7としても良く、この場合には駆動軸側スリーブ4a上に凸部17を設けて、クラッチスプリング6が駆動軸部材4の駆動軸側スリーブ4a上で軸方向に移動してしまうことを抑制する構成となる。
【0031】
次に本発明ねじ締め装置の他の実施形態を図9を用いて説明する。
【0032】
本実施形態は上記実施形態で出力軸部材7が軸方向に移動した際にクラッチスプリング6の端部6aを駆動軸部材4に係止する手段として用いたボール9及び傘状部材13の変わりに、駆動軸部材4にクラッチスプリング6の端部6aを収納可能かつクラッチスプリング6が駆動軸部材4側に移動した際には端部6aを挟み込むことが可能なテーパー部4cを設けた構成をしたものであるが、本発明はこのような構成をしたねじ締め装置であっても採用可能である。
【0033】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、駆動軸部材と出力軸部材とを一体的に回転させるよう働くクラッチスプリングの端部を固定する固定側の軸部材にクラッチスプリングの軸方向移動を規制する凸部を設けたことにより、ねじ締め作業でのねじ込み深さの精度の良いねじ締め装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のねじ締め装置の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】ねじ締め装置に使用されるクラッチスプリングの一例を示す斜視図。
【図3】従来の出力軸部材にクラッチスプリングを固定した状態を示す斜視図。
【図4】従来のねじ締め装置の一動作状態を示す要部拡大断面図。
【図5】従来のねじ締め装置の一動作状態を示す要部拡大断面図。
【図6】本発明ねじ締め装置を構成する出力軸部材の一実施形態を示す斜視図。
【図7】図6のA−A線断面図。
【図8】本発明ねじ締め装置を構成する出力軸部材の他の実施形態を示す斜視図。
【図9】本発明ねじ締め装置の他の実施形態を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
1はねじ締め装置、2はハウジング、3はストッパスリーブ、4は駆動軸部材、4aは駆動軸側スリーブ、4bは貫通孔、5はギヤ、6はクラッチスプリング、6aはクラッチスプリングの端部、7は出力軸部材、7aは出力軸側スリーブ、8はメタル部材、9はボール、10はビット、11は圧縮ばね、12はロック部材、13は傘状部材、14aは固定部、14bは突出部、15はスプリング、16はワンウェイクラッチ、17は凸部、18は係合ボール、19はピニオンである。
Claims (4)
- 駆動装置からの動力を伝達する駆動軸部材と、ビットを保持し、軸方向に移動可能に支持された出力軸部材と、前記出力軸部材と前記駆動軸部材間とを互いに離隔させるよう作用する押圧手段と、前記駆動軸部材と前記出力軸部材の同軸上に、各々の円筒面にまたがってコイル状に配設され、前記出力軸部材及び前記駆動軸部材のどちらか一方に一部が固定され、かつ他方の部材に前記出力軸部材の移動に応じて係止可能なクラッチスプリングと、前記駆動軸部材と前記出力軸部材間に取付けられたワンウェイクラッチとを有するねじ締め装置であって、前記クラッチスプリングの一部を固定する固定側の軸部材外周に、前記クラッチスプリングの軸方向の移動を規制する凸部を設けたことを特徴とするねじ締め装置。
- 前記固定側の軸部材は出力軸部材であり、前記駆動軸部材には出力軸部材の軸方向移動に応じて半径方向に移動し、前記クラッチスプリングの端部と当接可能なボールが保持されていることを特徴とする請求項1記載のねじ締め装置。
- 前記凸部は複数設けられ、前記凸部の間隔は前記クラッチスプリングのコイル間隔と同間隔に形成されていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のねじ締め装置。
- 前記凸部は前記クラッチスプリングと同様の螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のねじ締め装置。
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