JP3711760B2 - 自発光表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブ素子により駆動される自発光素子を備えた自発光表示装置に係り、特に低消費電力で表示が可能な自発光表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自発光素子を用いた表示装置としては、エレクトロルミネッセンス(以下、ELと称する)素子を用いたもの、特に有機EL素子を用いたEL表示装置が知られている。
上記有機EL素子は、幅広い電流密度領域に渡り、量子効率がほぼ一定となる特徴を有する。これは、有機EL素子の経時変化(高抵抗化・ダークスポット増加)および環境温度に関わらず、ほぼ安定している。この特徴を生かして、定電流駆動を実施することで、均一かつ高精度の輝度制御を行うことができる事が知られており、画像表示等の高精度表示においては、この方法を採ることが望ましい。
【0003】
図13は、アクティブ駆動型の有機EL表示装置の一つの画素を示す回路の一例である。
図13に示される有機EL表示装置の一画素においては、ゲートライン(選択ライン1)にゲート電極が接続され、ドレインライン(データライン2)にドレイン電極が接続された選択トランジスタ3(FET型のTFT)と、該選択トランジスタ3のソース電極にゲート電極を接続され、ドレイン電極にEL用電源が接続され、ソース電極にEL素子4の陽極が接続された駆動トランジスタ5(FET型のTFT)とが設けられている。そして、上記一画素には、上述のように陽極が駆動トランジスタ5に接続され、陰極が接地されたEL素子4が設けられている。
【0004】
そして、このような有機EL表示装置においては、選択ライン1に電圧が印加されて、一列の画素が選択され、この一列の画素のうちの発光させるべき画素のデータライン2に電圧が印加される。これにより発光させるべき画素においては、選択トランジスタ3のドレイン電極にデータライン2から電圧が印加されるとともに、選択トランジスタ3のゲート電極に選択ライン1から電圧が印加されることにより、選択トランジスタ3のソース電極から駆動トランジスタ5のゲート電極に電圧が印加されることになる。
【0005】
そして、駆動トランジスタ5のドレイン電極にはEL用電源が常時接続された状態となっているので、駆動トランジスタ5のゲート電極に選択トランジスタ3のソース電極から閾値以上の電圧が印加されることにより、駆動トランジスタ5のソース電極からEL素子4に電流が流れ、EL素子4が発光することになる。また、選択トランジスタ3と駆動トランジスタ5との間には、図示しない付加容量があり、選択ライン1及びデータライン2からの電圧の印加が無くなり、選択トランジスタ3のソース電極から駆動トランジスタ5のゲート電極への電圧の印加が終わった後にも、上記付加容量により所定の時間、駆動トランジスタ5のゲート電極に閾値以上の電圧が印加され、EL素子4に電流が流されることになる。これにより、各画素が順次スキャンされてEL素子4が発光した後に、すぐにEL素子4の発光が終わってしまうことがなく、各画素にEL素子を発光させるデータを順次スキャンしながら入力するほぼ1フレーム分の間、各画素のEL素子4を発光させておくことが可能となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、TFT(thin film transistor)等のアクティブ素子を用いて各画素毎の有機EL素子を駆動しようとした場合には、例えば、トランジスタにより電流制限をかけるため、電力損失が生じ、消費電力が大きくなる。
例えば、上述のような図13に示す回路においては、以下のように多くの電力がトランジスタで消費されることになる。
【0007】
例えば、図13に示すような回路において、EL素子4の所定輝度を発光するための駆動条件を電圧7[V]と、電流iとし、駆動トランジスタ5が図14に示されるような特性を有するものとする。なお、駆動トランジスタ5は、例えば、図14に示すような特性を有するものとした場合に、EL素子4を駆動するための所望のドレイン電流iを確保して定電流特性を得るためには、ゲート電圧Vg=20[V]が必要となり、このときの定電流領域は、ソース・ドレイン間の電圧であるドレイン電圧Vdが10[V]以上の場合となる。
すなわち、駆動トランジスタ5となるTFTのドレイン−ソース間において、最低10[V]の電位損失が必要となる。
【0008】
以上のことから、駆動トランジスタ5における損失電力は、電流iが流れるとともに電位損失が10[V]以上であることから約10iとなる。
また、EL素子4においては、7iの電力が消費されることになる。
そして、選択トランジスタ3が駆動トランジスタ5のゲート電極に電圧を印加するだけで、ほとんど電流が流れないものとして、選択トランジスタ3における損失電力を無視すると、全消費電力は、10i+7iとなる。
そして、全消費電力における駆動トランジスタ5の損失電力の割合は、10i/17i=10/17、すなわち58.8%にも及ぶことになる。
従って、低消費電力を実現するためにTFT駆動を採用するものとしても、このままでは、駆動トランジスタによる損失電力が大きく十分な効果を得ることができない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アクティブ素子による損失電力を低減することにより、低消費電力で画像表示が可能な自発光表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の自発光表示装置は、各画素毎にアクティブ素子を備え、該アクティブ素子により自発光素子を駆動する自発光表示装置において、一画素に自発光素子が複数個備えられており、前記自発光素子は、それぞれ、有機EL層と、前記有機EL層の下で前記有機EL層と接続される第1電極と、前記有機EL層の上で前記有機EL層と接続される第2電極と、を有し、複数の自発光素子のうちのある自発光素子の第1電極は、当該自発光素子の有機EL層と重ならない部分で、当該自発光素子に隣接する自発光素子の第2電極と重なって互いに接続されていることによってこれら複数個の自発光素子が電気的に直列に上記アクティブ素子に接続されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、自発光素子が電流を流すことにより発光するものである場合に、一画素に複数個の自発光素子を備えることにより、各自発光素子に流れる電流の値を低くしても、一個の自発光素子に高い値の電流を流した場合と同様の輝度を得ることができる。これにより、複数個の自発光素子を電気的に直列にアクティブ素子に接続するものとした場合には、複数個の自然発光素子を合わせた輝度レベルと同じ輝度レベルの一個の自然発光素子をアクティブ素子に接続した場合に比較して、アクティブ素子を流れる電流の値を低くすることができるので、アクティブ素子における損失電力を低減することができる。従って、上述のような構成とすることにより、アクティブ素子における損失電力を低減して自発光表示装置全体の消費電力の低減を図ることができる。
【0012】
なお、上記自発光素子とは、基本的に有機EL素子であるが、アクティブ素子により流れる電流を制御することで発光を制御することができる自発光素子であれば、有機EL素子以外であっても良い。
また、上記アクティブ素子は、例えば、TFTであるが、上記有機EL素子は、電流が流れている間だけ発光し、アクティブ素子は基本的に外部からデータとなる信号が入力された間だけ電流を出力するので、例えば、上記従来例において選択トランジスタと駆動トランジスタと付加容量とを用いたように、データ信号が入力され終わった後も僅かな時間だけ、EL素子に電流が流れるようになった機構を有する必要がある。
また、アクティブ素子として、入力されたデータ信号を記憶するメモリ性を有するダブルゲートメモリ薄膜トランジスタ(以後、DGメモリTFTと称する)のような素子を用いた場合には、記憶されたデータに基づいて1フレーム分の時間の間に多数回、EL素子を光らせるようにして、1フレーム分の間ほぼ連続した表示を行うものとしても良い。
【0013】
本発明の請求項2記載の自発光表示装置は、請求項1記載の自発光表示装置において、上記自発光素子のカソードが上記アクティブ素子に接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、自発光素子のカソードがアクティブ素子に接続され、自発光素子のアノードが、例えば、自発光素子用の電源に接続されることになるとともに、アクティブ素子の端子の一つが接地されることになる。
この際には、アクティブ素子をオンオフする信号の電位が、直接グランドレベルに対して定まるので、コントロール性、応答速度に優れる利点がある。
例えば、自発光素子に接続されるアクティブ素子をトランジスタ(駆動トランジスタ)とした場合に、トランジスタの例えば、ソース(もしくはドレイン)に、自発光素子のカソードを接続し、ドレイン(もしくはソース)を接地した場合に、トランジスタのゲート電位が、直接グランドレベルに対して定まるので、コントロール性・応答速度に優れる利点がある。
【0014】
本発明の請求項3記載の自発光表示装置は、請求項1または2記載の自発光表示装置において、上記アクティブ素子が、メモリ性を有するトランジスタとされていることを特徴とする。
上記構成によれば、メモリ性を有するトランジスタを用いることにより、例えば、一回、自発光素子を発光させるか否かを示すデータの信号が書き込まれたメモリ性を有するトランジスタにおいて、各画素のアクティブ素子に順次データを出力する間に、発光を示すデータを記憶したアクティブ素子に接続された発光素子を多数回発光させるようにすることができる。
【0015】
すなわち、二個のトランジスタと付加容量とを用いた場合には、発光すべき各画素の自発光素子が、ほぼ1フレーム分の時間の間、発光することにより、連続して画像を表示した状態に見せることを可能としているが、上述のメモリ性を有するトランジスタを用いた場合には、各画素にデータを入力していく際に、既に入力されたデータに基づいて、発光すべき画素の自発光素子が1フレーム分の間、多数回発光することになり、短時間の間に多数回発光させることで、発光すべき画素が連続して発光した状態に見せることが可能となるとともに、これにより連続して画像を表示した状態に見せることができる。
そして、このようにすれば、各画素において、それぞれ一個のアクティブ素子により、自発光素子を制御することができるので、従来のように各画素において二つのトランジスタを用いた場合よりも、自発光表示装置の構成を簡略化することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の第一例の自発光表示装置を図面を参照して説明する。
図1は第一例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図であり、図2は上記一画素のEL素子のカソード及びキャパシタ電極10aを除いた平面構造を示すものであり、図3は上記一画素の平面構造を示すものであり、図4は従来例と第一例とでの駆動トランジスタにおける電位損失の違いを示すグラフであり、図5は従来例と第一例とでのEL素子の電流特性の違いを示すグラフである。
【0017】
なお、第一例の自発光表示装置は、本発明を有機EL表示装置に応用したものであり、図1〜3に示されるような画素がマトリクス状に多数整列された状態で配設されることにより表示装置の表示部分が構成されるものである。そして、表示装置の表示部分の各画素のアクティブ素子に信号を出力するためのドライバや電源等が接続されることにより画像が表示可能なものであり、単色発光表示、多色発光カラー表示が可能な画像表示装置とすることができる。
【0018】
図1に示すように、第一例の自発光表示装置の一画素においては、従来と同様に、選択ライン1にゲート電極が接続され、データライン2にドレイン電極が接続された選択トランジスタ3と、該選択トランジスタ3のソース電極にゲート電極を接続され、ドレイン電極にEL用電源が接続された駆動トランジスタ5とを備えている。選択トランジスタ3のソース電極と駆動トランジスタ5のゲート電極との間には付加容量10が介在されている。
【0019】
そして、第一例においては、駆動トランジスタ5のソース電極に第一EL素子11と、第二EL素子12と、第三EL素子13とが直列に接続されている。
そして、図2及び図3の一画素の平面構造を参照して、一画素の構造をより具体的に説明すると、例えば、画素の横の各行毎に選択ライン1が左右に延在して配置され、画素の縦の各列毎にデータライン2が前後に延在して配置されている。また、画素の縦の列毎にEL用の電源に接続されたEL電源ライン14が前後に延在して配置され、画素の横の行毎に接地されたGNDライン15が左右に延在して配置されている。
【0020】
そして、上述のように選択トランジスタ3のドレイン電極がデータライン2に接続され、選択トランジスタ3のゲート電極が選択ライン1に接続されている。また、選択トランジスタ3のソース電極は、接続ライン16を介して駆動トランジスタ5に接続されている。
また、駆動トランジスタ5は、上述のように、そのゲート電極が接続ライン16を介して選択トランジスタ3のソース電極に接続されるとともに、そのドレイン電極がEL電源ライン14に接続されている。
そして、駆動トランジスタ5のソース電極に、第一EL素子11のアノード11aが接続され、第二EL素子12のアノード12aが第一EL素子11のカソード11bに接続され、第三EL素子13のアノード13aが第二EL素子12のカソード12bに接続され、第三EL素子13のカソード13bがGNDライン15に接続されている。
【0021】
また、上記各部材は、図示しないガラス基板上に設けられるとともに、ガラス基板上には、第一〜第三EL素子11、12、13の発光部11c、12c、13cを除く部分に、例えば、酸化クロム等からなる反射防止膜としてのブラックマスク21が形成されている。そして、ブラックマスク21には、EL素子の発光部11c、12c、13cに対応する部分に開口部が形成されている。
【0022】
また、第一〜第三EL素子11、12、13のアノード11a、12a、13aと、カソード11b、12b、13bとの間には、基本的に層間絶縁膜が形成されるとともに、層間絶縁膜には、第一〜第三EL素子11、12、13の発光部11c、12c、13cの部分に開口部が設けられるとともに、第二EL素子12のアノード12aと第一EL素子11のカソード11bとが接続され部分と、第三EL素子13のアノード13aと第二EL素子12のカソード12bとが接続される部分にコンタクトホールとしての開口部が形成されている。
【0023】
また、上記層間絶縁膜が第一〜第三EL素子11、12、13の発光部11c、12c、13cの周縁部に重なって発光部11c、12c、13cを囲んだ状態となっており、層間絶縁膜により発光部11c、12c、13cの実際に表示に寄与して発光する発光領域の範囲が規制された状態となっている。
上記選択トランジスタ3及び駆動トランジスタ5は、周知のFET型のTFTである。
【0024】
また、第一〜第三EL素子11、12、13は、周知の有機EL層を有するものであり、例えば、ITOからなる透明なアノード11a、12a、13aと、仕事関数の低い金属等の元素からなるカソード11b、12b、13bと、これらの間にそれぞれ挟まれた発光部11c、12c、13cとからなり、該発光部11c、12c、13cは、周知の有機EL層として、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等からなるものである。
【0025】
また、各画素の第一〜第三EL素子11、12、13の発光部11c、12c、13c(発光領域)は、基本的に、従来のEL表示装置において、一画素に一つのEL素子を設けた際のEL素子の発光部(発光領域)における輝度と同様の輝度を出せるように、従来のEL表示装置と第一例の自発光表示装置とが略同様の規格のものであると仮定した場合に、従来の一画素に一つ設けられたEL素子の発光部の面積と、第一例の第一〜第三EL素子11、12、13の三つの発光部11c、12c、13cを合わせた面積とが略同じになるようになっている。すなわち、第一〜第三EL素子の発光部11c、12c、13cは、一つの画素に必要な輝度の一つの発光部を三つに分割した状態となっている。なお、これは本発明の一例としてであり、本発明は、基本的に一画素に複数のEL素子が配置され、各EL素子がアクティブ素子に直列に繋がれていれば良く、従来より各画素の輝度を高くするものとしても良い。
【0026】
また、第一〜第三EL素子11、12、13の発光部11c、12c、13cは、縦一列に互いに離間して配置された状態とされるとともに、上下の画素の列において、各画素間に渡って発光部11c、12c、13cが互いに等間隔に配置されるようになっている。また、自発光表示装置は、ここではカラー表示を行うものであり、RGBの三原色の表示を行うための三種類の画素を備え、かつ、同じ色の画素が縦一列又は横一行に配置されるとともに、各縦の列又は横一行がRGBの各色を繰り返すように配置されている。
また、上述のように各発光部11c、12c、13cの周囲は、ブラックマスクが配置された状態となっており、ブラックマスクにより黒を表現する(黒レベルを確保する)ようになっている。
【0027】
また、上記選択トランジスタ3のソース電極と駆動トランジスタ5のゲート電極との間には、図3に示すように、付加容量10が設けられている。なお、付加容量10は、EL電源ライン14に沿った接続ライン16とその上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられたキャパシタ電極10aと、から構成されている。キャパシタ電極10aは、ゲート絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介してGNDライン15の引き出し線部15aに接続されている。なお、付加容量10は、上述のものに限られるものではなく、どのような形でも静電容量を有し、選択ライン1もしくはデータライン2の電圧がしきい値未満となった後も所定の間、駆動トランジスタ5のゲート電極に印加する電圧を保持できるものならば良い。
【0028】
そして、以上のように一つの画素における一つのEL素子を三つに分割した状態に第一〜第三EL素子11、12、13を設け、これら第一〜第三EL素子11、12、13を直列に駆動トランジスタ5に接続した場合には、以下のような作用効果を得ることができる。
まず、上述のように第一例の第一〜第三EL素子11、12、13が、従来例のEL表示装置のEL素子一つを三つに分割した状態の構成を有するものとした場合に、第一〜第三EL素子11、12、13の駆動電圧は、上述した従来の場合と同じ7[V]となる。そして、これら第一〜第三EL素子11、12、13を直列に接続した場合に、合計21[V]の駆動電圧が必要となる。
【0029】
一方、有機EL素子は電子と正孔の再結合に起因して発光するため、一般に有機EL素子の発光輝度は流れる電流にほぼ比例する。ここで第一〜第三EL素子11、12、13を駆動するのに必要な電流は、それぞれの素子において、従来例のEL素子が所定輝度で発光するのに必要な電流をiとした場合に、その三分の一のi/3で良い事になる。これは、上述のように、従来のEL素子(発光部)の面積と第一例の第一〜第三EL素子11、12、13(発光部11c、12c、13c)を合わせた面積とがほぼ同じ、すなわち、従来のEL素子(発光部)の面積に対する第一例の第一〜第三EL素子11、12、13(発光部11c、12c、13c)の面積をそれぞれ1/3と設定しているため、第一〜第三EL素子11、12、13の各発光領域の単位面積あたりに流れる電流が従来のそれと等しいからである。
【0030】
さらに、駆動トランジスタ5の電流−電圧特性を図4に示すようなものと設定した場合に、従来、駆動トランジスタ5から一つのEL素子に流すための電流iを確保して定電流特性を得るためには、ゲート電圧がVg=20[V]必要であり、また、この時の定電流領域は、Vdが10[V]以上であり、駆動トランジスタ5において最低10[V]の電位損失が必要であった。それに対して、第一例においては、駆動トランジスタ5から三つのEL素子11、12、13に流すための電流i/3を確保して定電流特性を得るためには、ゲート電圧がVg=11.5[V]必要であり、また、この時の定電流領域は、Vdが5[V]以上であり、駆動トランジスタ5において最低5[V]の電位損失が必要となる。
すなわち、従来、駆動トランジスタ5における電位損失が10[V]であったものを第一例においては5[V]に減少させることができる。
【0031】
従って、駆動トランジスタ5における損失電力は、(5/3)i=約1.67iとなり、従来の10iに比較して約1/6に軽減できることになる。
また、全消費電力中における駆動トランジスタ5の損失電力の割合は、以下のようになる。
選択トランジスタ3が駆動トランジスタ5のゲート電極に電圧を印加するだけで、他の素子と比べ電流があまり流れないので、選択トランジスタ3における損失電力を無視すると、EL素子の一画素での全消費電力は、三つのEL素子11、12、13の消費電力と、駆動トランジスタ5の損失電力と和となる。
【0032】
従って、全消費電力中における駆動トランジスタ5の損失電力の割合は、駆動トランジスタ5における損失電力(5/3)iを駆動トランジスタの損失電力(5/3)iと三つのEL素子11、12、13における消費電力7[V]×(i/3)[A]×3との和で割った値、すなわち、((5×(i/3))/((5+21)/(i/3))=約19%となる。
以上により、自発光表示装置の各画素の三つの第一〜第三EL素子11、12、13が合わせて従来の一つの画素に一つだけ設けられたEL素子と同様の輝度で発光するものとした場合に、駆動トランジスタ5における損失電力を大幅に削減し、自発光表示装置における消費電力の低減を図ることができる。また、従来に比較して、各画素の輝度を高めるものとしても、消費電力の増加を防止することができる。
【0033】
また、第一例の自発光表示装置においては、ブラックマスクにより黒を表現する(黒レベルを確保する)ようになっているので、黒を表現するために、自発光表示装置の自発光素子の前に光を吸収するフィルタ(偏光フィルタ等を含む)配置した場合のように、フィルタに自発光素子の光の一部が吸収されてしまうようなことがなく、自発光素子の発光をフィルタに吸収されることなく、表示光として用いることができるので、所望の輝度を得るために必要な消費電力をフィルタを用いた場合に比較して低くすることができる。
【0034】
また、ブラックマスクを用いた場合には、画素のピッチが有る程度長く、かつ、画素全体の面積中におけるブラックマスクを除いた発光する発光領域(EL素子部分)の面積の割合が小さいと、互いに隣り合う発光領域間の間のブラックマスクの幅が広くなり、この幅が人間の目で認知可能なものとなり、例えば、各色の発光部を発光させて白を表示させた場合に、白黒の縞模様が見えるような状態になる可能性がある。
【0035】
しかし、上述のように一画素中における発光部となるEL素子を複数にするとともに、互いに離間して配置するようにすれば、ブラックマスク中に複数の発光領域が離間して配置されることにより、ブラックマスクの幅が狭くなり、人間に認知できない幅とすることが可能となる。
従って、ブラックマスクを用いるものとしても、ブラックマスクによる縞模様や格子模様の出現を避けることが可能となり、低消費電力で高品位な表示を可能とすることができる。
【0036】
また、上述のように、画素に一つだけ設けられた従来のEL素子をほぼ三分割したのとほぼ同様のEL素子を三つ設け、これを直列に接続した場合には、EL素子における静電容量成分Celが以下のように大幅に減少することになる。
まず、従来、画素に一つだけEL素子を設けた場合のEL素子の静電容量をC1とし、第一例の三つのEL素子の静電容量を合わせた合成容量をC3とし、第一例の三つのEL素子のうちの一個のEL素子の静電容量をC2とする。
【0037】
そして、EL素子1個当たりの静電容量C2は、従来のEL素子を三分割したのと同様の構成、すなわち、EL素子の面積を従来のほぼ1/3としているので、C2=C1/3となる。
そして、この第一例のEL素子を直列三段で合成した場合の合成容量C3は、
となり、従来の1/9の静電容量となる。
【0038】
そして、三つのEL素子からなるEL部における蓄積電荷Q3は、EL素子一つにかけられる電圧をV(上述のように従来の一つのEL素子にかけられる電圧と同じ)とした場合に、
となり、従来の1/3となる。
【0039】
そして、一般に、静電容量による充電/放電現象により、EL素子の発光に寄与する実行電流は減少する。
特に、立ち上がり/立ち下がりにおいて、その減少率が極めて大きくなり、結果として、EL素子の発光応答性を著しく悪化させる。
第一例においては、上述のように従来に比較して、例えば、静電容量を1/9に減少させることが可能であり、EL素子の応答特性を大きく改善できる。
【0040】
すなわち、このように静電容量を減少させた場合に、図5(A)に示す従来のEL素子においては、立ち上がり時に電流がすぐにピークに至らずになだらかに立ち上がり、立ち下がり時に電流がすぐに低下せずに尾を引いた状態となるのに対して、図5(B)に示す第一例の三段直列のEL素子においては、立ち上がり時に、電流がすぐにピークに至り、立ち下がり時もほとんど尾を引かない状態とすることができる。
従って、第一例の三段直列のEL素子においては、高速応答・正確な輝度制御が実現でき、高品位表示に有用である。
【0041】
次に、本発明の実施の形態の第二例を図面を参照して説明する。
図6は第二例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図であり、図7は上記一画素のEL素子のカソードを除いた平面構造を示すものであり、図8は上記一画素の平面構造を示すものであり、図9は上記一画素の一部の断面構造を示すものである。
【0042】
なお、第二例の自発光表示装置は、第一例の自発光表示装置が、EL素子のアノードをアクティブ素子に接続していたの対して、EL素子のカーソードをアクティブ素子に接合したものであり、その他の点については、第一例の自発光表示装置とほぼ同様の構成を有するものである。
また、第二例の自発光表示装置において、第一例の自発光表示装置と同様の構成要素には、同一の符号を付すとともに、その説明を一部省略する。
【0043】
図6に示すように、第一例の自発光表示装置においては、第一例と同様に、選択トランジスタ3と、駆動トランジスタ5とを備えている。
そして、第二例においては、駆動トランジスタ5のソース電極が接地され、ドレイン電極に第一EL素子11と、第二EL素子12と、第三EL素子13とが直列に接続され、さらに、第一EL素子11と、第二EL素子12と、第三EL素子13とが直列にEL用電源に接続されている。
また、図7及び図8の一画素の平面構造を参照して、一画素の構造をより具体的に説明すると、例えば、第一例と同様に、選択ライン1と、データライン2と、EL電源ライン14と、GNDライン15とが配置されている。なお、第二例においては、EL電源ライン14の位置と、GNDライン15の位置とが第一例の場合と入れ替わった状態となっている。
【0044】
そして、上述のように選択トランジスタ3のドレイン電極3g(図9に図示)がデータライン2に接続され、選択トランジスタ3のゲート電極3a(図9に図示)が選択ライン1に接続されている。
また、選択トランジスタ3のソース電極3b(図9に図示)は、ゲート絶縁膜23に設けられたコンタクトホールを介して接続ライン16の一端に接続され、接続ライン16の他端は駆動トランジスタ5のゲート電極5a(図9に図示)に接続されている。
【0045】
また、駆動トランジスタ5は、上述のように、そのゲート電極5aに接続ライン16が接続されるとともに、ドレイン電極5g(図9に図示)にGNDライン15が接続されている。そして、駆動トランジスタ5のソース電極5b(図9に図示)に、第一EL素子11のカソード11bが接続され、第二EL素子12のカソード12bが第一EL素子11のアノード11aに接続され、第三EL素子13のカソード13bが第二EL素子12のアノード12aに接続され、第三EL素子13のアノード13aがEL電源ライン14に接続されている。付加容量10は、GNDライン15に沿った接続ライン16とその上に設けられたゲート絶縁膜23と、ゲート絶縁膜23上に設けられ、引き回し線14aとコンタクトホールを介し接続されたキャパシタ電極10aと、から構成されている。
【0046】
また、図9の断面構造に示すように、自発光表示装置の各画素は、ガラス基板20上に形成されるものであり、ガラス基板20上には、発光部11c、12c、13cの発光領域(図9においては11cだけを図示)を除く部分にブラックマスク21(例えば、反射防止膜としての酸化クロム)が形成されている。そして、このブラックマスク21の層上に、絶縁膜22が形成されている。そして、絶縁膜22上の選択トランジスタ3及び駆動トランジスタ5となる部分に表面に陽極酸化膜を有するゲート電極3a、5aが形成されている。
【0047】
そして、上述のようにゲート電極3a、5aが形成された絶縁膜22上を、ゲート電極3a、5aも覆ってしまうようにゲート絶縁膜23(例えば、SiN)が形成されている。また、ゲート絶縁膜23の下には、選択トランジスタ3のゲート電極3aに接続される選択ライン1(図9において図示略)や、選択トランジスタ3のソース電極3bと駆動トランジスタ5のゲート電極5aとを繋ぐ接続ライン16(ゲート配線となる、例えば、Al合金)やEL電源ライン14等が形成されている。なお、図9において、接続ライン16とゲート電極5aとは離れているが、図8等に示すように接続されている。
【0048】
そして、ゲート絶縁膜23上に、選択トランジスタ3及び駆動トランジスタ5のチャネルが形成される領域となるi−Si層3c、5c(真性半導体層)が形成され、その上にブロッキング層3d、5dが形成され、該ブロッキング層3d、5dの左右にドレイン領域3e、5e(n+Si)とソース領域3f、5f(n+Si)とがそれぞれ形成されている。また、ドレイン領域3e、5e上にドレイン電極3g、5g(例えば、Al合金)が設けられ、ソース領域3f、5f上にソース電極3b、5bが設けられている。
【0049】
また、上述のように、選択トランジスタ3のドレイン電極3gは、図9に図示しないデータライン2に接続され、ソース電極3bは、接続ライン16に接続されている。
また、上述のように、駆動トランジスタ5のドレイン電極5gは、図9に図示しないGNDライン15に接続され、ソース電極5bは、第一EL素子11のカソード11bに接続されている。
【0050】
また、上記ゲート絶縁膜23上には、第一〜第三EL素子11、12、13のアノード11a、12a、13a(例えば、ITO、図9においては、一つのアノード11aだけを図示)が形成されている。なお、第三EL素子13のアノード13aは、図7等に示すようにEL電源ライン14に接合される。
そして、上記ゲート絶縁膜23上に形成された選択トランジスタ3、駆動トランジスタ5及びアノード11a、12a、13a上には、オーバーコート層24(例えば、SiN)が形成されている。なお、オーバーコード層24は、選択トランジスタ3及び駆動トランジスタ5を保護するとともに、アノード11a、12a、13aとカソード11b、12b、13bとの間の上記層間絶縁膜となるものである。
【0051】
そして、上記オーバーコート層24には、上記駆動トランジスタ5のソース電極5bと、第一EL素子11のカソード11bとを接合する部分、発光部11c、12c、13cとなる有機EL層がアノード11a、12a、13aに接合する部分(発光領域、なお、図9においては、一つのアノード11aに発光部11cが接続する部分だけを図示)、アノード11a、12aにカソード12b、13bが接合する部分(図9において図示略)にそれぞれコンタクトホール等となる開口部が形成されている。
【0052】
また、オーバーコート層24(層間絶縁膜)の開口部の周縁部は、開口部が上に向かうにつれて広くなるようにテーパ状に形成されている。
そして、上記アノード11a、12a、13a上のオーバーコート層24(層間絶縁膜)の開口部の部分に開口部より広い範囲に渡って発光部11c、12c、13cとなる有機EL層が形成されている。
そして、この有機EL層である発光部11c、12c、13c上にそれぞれ発光部11c、12c、13cより広い範囲に渡ってカソード11b、12b、13bが形成されている。なお、第一EL素子11のカソード11bは駆動トランジスタ5のソース電極5bに至るように形成されてソース電極5bに接続され、第二EL素子12のカソード12bは第一EL素子11のアノード11aに至るように形成されてアノード11aに接合され、第三EL素子13のカソード13bは第二EL素子12のアノード12aに至るように形成されてアノード12aに接合される。
【0053】
また、上述のようにオーバーコート層24(層間絶縁膜)のアノード11a、12a、13a上の開口部の周縁部がテーパとなっているので、この周縁部上に形成された発光部11c、12c、13c及びカソード11b、12b、13bは、上記テーパの角度に沿ってアノード11a、12a、13aに至り、オーバーコード層24の開口部で、アノード11a、12a、13aに対向するようになっている。
そして、上記開口部の周縁部のテーパの角度、すなわちアノード11a、12a、13aが形成された平面と、オーバーコート層24の開口部の周縁部の内面とがなす角度θは、20度〜50度となっている。
【0054】
従って、オーバーコート層24が形成された後に形成される上記発光部11c、12c、13c及びカソード11b、12b、13bは、上記20度〜50度の角度でアノード11a、12a、13aに至り、アノード11a、12a、13aに対向する部分でアノード11a、12a、13aと平行となる。
そして、カソード11b、12b、13b及びオーバーコート層24上には、パッシベーション層25が形成され、該パッシベーション層25が、その下の各層を保護するようになっている。
【0055】
このような構成を有する第二例の自発光表示装置によれば、第一例の自発光表示装置と同様の作用効果を奏することができるとともに、さらに、直列に繋がれた複数の第一〜第三EL素子11、12、13のうちの一端側の第一EL素子のカソード11bが駆動トランジスタ5のソース電極5bに接続されることにより、他端側の第三EL素子13のアノード13aがEL電源ライン14に接続され、駆動トランジスタ5のドレイン電極5gがGNDライン15に接続されて接地されているので、駆動トランジスタ5のゲート電位が直接GNDレベルに対して定まるので、コントロール性、応答速度に優れたものとすることができる。
【0056】
なお、第一例においては、その断面構造を図示しなかったが、第一例の自発光素子の断面構造は、第二例の断面構造において、駆動トランジスタ5のソース電極5bに第一EL素子11のカソード11bが接続されていたのに対して、カソード11bがソース電極5bに接続されず、ソース電極5bに第一EL素子11のアノード11aが接続された状態となった以外は、ほぼ同様の断面構造を有するものである。なお、それ以外にも、図9に図示されない部分においては、上述のように、第一例と第二例とで異なる部分がある。
【0057】
次ぎに、本発明の実施の形態の第三例の自発光表示装置を図面を参照して説明する。
図10は第三例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図であり、図11及び図11は第三例の自発光表示装置の駆動方法を説明するための複数画素を含む回路図である。
【0058】
なお、第三例の自発光表示装置は、第一例の自発光表示装置の選択トランジスタ3と駆動トランジスタ5と付加容量10とに代えて、一つのDGメモリTFT35を用いたものであり、その他の点については、第一例の自発光表示装置とほぼ同様の構成を有するものである。
また、第三例の自発光表示装置において、第一例の自発光表示装置と同様の構成要素には、同一の符号を付すとともに、第三例の自発光表示装置において第一例と同様の構成については、その説明を一部省略する。
【0059】
図10に示すように、第三例の自発光表示装置においては、選択ライン1(Select)に第一ゲート電極31が接続され、データライン2(Data)に第二ゲート電極32が接続され、EL電源ライン14にドレイン電極33が接続され、第一EL素子11にソース電極34が接続されたDGメモリTFT35を備えている。そして、駆動トランジスタ5とDGメモリTFT35とが異なる以外は、第一例と同様に、三つの第一〜第三EL素子11、12、13がソース電極34に直列に接続されている。
すなわち、ソース電極34に、第一例の図3に示される構造と同様に、第一EL素子11のアノード11aが接続され、第二EL素子12のアノード12aが第一EL素子11のカソード11bに接続され、第三EL素子13のアノード13aが第二EL素子12のカソード12bに接続され、第三EL素子13のカソード13bが接地され、すなわち、GNDライン15に接続されている。
【0060】
上記DGメモリTFT35は、ゲートを二つ有するとともに、キャリアをトラップすることにより、メモリ性を有するものとなっている。
そして、DGメモリTFT35においては、例えば、可視光が入射されると電子−正孔を内部に発生させるチャネル領域(i−a−Si)と、該チャネル領域上の左右側部にそれぞれ形成されたソース領域及びドレイン領域(n+Si)と、ソース領域、ドレイン領域の接続されたソース電極34、ドレイン電極33と、上記チャネル領域より基板側にチャネル領域との間に下部ゲート絶縁膜を介して設けられた透明な下部ゲート電極(第一ゲート電極31)と、上記チャネル領域の上方側、すなわち、基板の反対側に、チャネル領域との間に上部ゲート絶縁膜を介して設けられた上部ゲート電極(第二ゲート電極32)を備えたものである。なお、下部ゲート電極と上下ゲート電極とは、回路図上で上下逆になっている。
【0061】
そして、上記下部ゲート絶縁膜は、SiNからなるとともに、その表層部(チャネル領域に接する側)に、ストイオキメトリなSiとNとの比が3:4なのに対して、SiとNとの比をストイオキメトリからずらして、1:1程度としたSiリッチなトラップ領域が形成されている。
そして、このトラップ領域は、キャリア(正孔、電子)をトラップすることができるようになっている。
【0062】
このようなnチャネル型DGメモリTFT35は、例えば、第二ゲート電極32のゲート電圧を0Vとするとともに、ソース−ドレイン間に電圧を印加した状態で、例えば、第一ゲート電極31のゲート電圧を上げていった場合のドレイン電流の変化と、次いで、第一ゲート電極31のゲート電圧を下げっていった場合のドレイン電流の変化とが異なるヒステリシス特性を有するものとなっている。そして、このようなDGメモリTFT35においては、トラップ領域にトラップされたキャリアの有無やキャリアの極性等により、第一ゲート電極31のゲート電圧が同じでも、ドレイン電流が流れる場合と流れない場合が生じるようになっている。
【0063】
例えば、DGメモリTFT35をnチャネルとし、トラップ領域に電子が蓄積している場合には、トラップ領域に蓄積された電子の電界によりチャネル領域に正孔が誘起され、第一ゲート電極31にゲート電圧を印加した場合に、このゲート電圧がチャネル形成が可能なしきい値電圧より僅かに高くても、トラップ領域に蓄積している電子の電界に相殺されて、チャネル領域にドレイン電流を流すことが可能な連続したチャネルが形成されず、ドレイン電流が流れないことになる。
【0064】
一方、トラップ領域に正孔が蓄積している場合には、トラップ領域に蓄積した正孔の電界によりチャネル領域に電子が誘起され、第一ゲート電極31にゲート電圧を印加した場合に、このゲート電圧がチャネル形成が可能なしきい値電圧より僅かに低くくても、トラップ領域に蓄積した正孔との相互作用により、チャネル領域にドレイン電流を流すことが可能な連続したチャネルが形成され、ドレイン電流が流れることになる。
従って、トラップ領域における蓄積されたキャリアの有無及び極性により、第一ゲート電極31に同じレベルのゲート電圧を印加しても、ドレイン電流が流れてEL素子が発光する場合と、ドレイン電流が流れずにEL素子が発光しない場合とがある。
【0065】
また、トラップ領域へのキャリアの蓄積方法は、例えば、ソース・ドレイン間に+10Vの電位差の状態で第一ゲート電極を0Vとして、第二ゲート電極に正のゲート電圧を印加した場合に、nチャネルが形成され、ソース領域及びドレイン領域を形成するn+層からキャリア領域に電子が移動し、該電子がトラップ領域にトラップされる。この場合、可視光の入射にかかわらず、比較的短時間で電子は蓄積される。
また、この状態でキャリア領域に光を照射するとともに、第二ゲート電極に負のゲート電圧を印加した場合に、キャリア領域に光の照射により正孔−電子対が生じるとともに、この正孔−電子対の電子が上記n+層からなるソース領域及びドレイン電極に移動し、正孔がトラップ領域に取り込まれて上述の電子と置換され、さらに、正孔が蓄積する。
また、トラップ領域への電子の蓄積に際しては、キャリア領域に光を照射するものとしても良い。
【0066】
次ぎに、図10及び図11を参照して、自発光表示装置におけるEL素子の駆動方法を説明する。
なお、このEL素子の駆動においては、横(行)方向に一行分選択されたの各画素のDGメモリTFT35にEL素子の発光、非発光を示すデータを書き込む、すなわち、DGメモリTFT35にトラップ領域に正孔もしくは電子を蓄積させる書き込み工程と、全画素において、DGメモリTFT35に記憶された発光、非発光のデータに基づいて表示を行う表示工程とを繰り返し行うようになっている。
また、書き込み工程を行う度に、データの書き込みを行う行を一行分ずつずらしていくようになっており、最終的に全行の画素のDGメモリTFT35にデータを書き込むようになっており、このようにして一フレーム分のデータの書き込みと表示が行われるようになっている。
【0067】
そして、上記データの書き込み工程においては、選択された横一行の画素に沿って配線された選択ライン1(ここではアドレスnの選択ライン1)に+35Vの電圧を印加し、他の行列に沿って配線された選択ライン1(ここではアドレスn+1等のアドレスn以外の選択ライン)には、電圧は0Vとする。
そして、選択された横一行の画素に対応する選択ライン1にアドレス電圧を印加することにより、横一行の画素の選択ライン1に接続されたDGメモリTFT35の第一ゲート電極にアドレス電圧が印加される。
【0068】
また、選択された選択ライン1に印加するアドレス電圧は、トラップ領域にチャネルの形成を阻害するキャリア(ここでは、電子)が蓄積されていても、ドレイン電流を流すことが可能な高い電圧(例えば、ここでは+35V)とする。
また、各画素のDGメモリTFT35のドレイン電極33が接続されたEL電源ライン14には、常時電圧(ここでは、例えば、+10V)が印加されているものとする。
これにより、選択ライン1に接続された第一ゲート電極31にドレイン電流を流すことが可能な電圧が印加されるので、DGメモリTFT35のソース電極34に接続された第一〜第三EL素子11、12、13に電流が流れ、選択された横一行の画素において、第一〜第三EL素子11、12、13がアドレス発光する。
【0069】
そして、第一〜第三EL素子11、12、13がアドレス発光することにより、DGメモリTFT35のチャネル領域に光が照射され、上述のようにチャネル領域に正孔−電子対が発生することになる。
ここで、各画素の縦の各列毎に配線されたデータライン2に、上記横一行の各画素の発光、非発光のデータに基づいて電圧が印加される。すなわち、アドレスがnの選択ライン1に接続された横一行の画素の一つの画素(例えばm番目の画素)を発光を維持させない場合には、その画素が接続されたデータライン2に正の電圧(ここでは、例えば、+20V)を印加する。
【0070】
また、逆にアドレスがnの選択ライン1に接続された横一行の画素のうちの一つの画素(例えば、m+1番目の画素)を発光を維持させる場合には、その画素が接続されたデータライン2に負の電圧(ここでは、例えば、−20V)を印加する。すなわち、横一行の各画素において、その画素を発光させるか否かのデータに基づいて、各画素が接続されたデータライン2に正の電圧もしくは負の電圧を印加する。
【0071】
そして、データライン2は、DGメモリTFT35の第二ゲート電極32に接続されており、上述のように第一〜第三EL素子11、12、13が発光してDGメモリTFT35のチャネル領域に光が照射されて正孔−電子対が生じた状態で、第二ゲート電極32に電圧が印加された場合には、その電圧が正の場合に、DGメモリTFT35のトラップ領域に電子が蓄積し、その電圧が負の場合にDGメモリTFT35のトラップ領域に正孔が蓄積されることになる。
【0072】
そして、上述のように選択された一つの選択ライン1に接続された一行の画素の各画素において、それらのDGメモリTFT35のトラップ領域に電子もしくは正孔が蓄積された段階で書き込み工程を終了し、表示工程となる。
そして、表示工程においては、全ての選択ライン1に、上述のしきい値電圧より低い電圧、すなわち、DGメモリTFT35のトラップ領域にトラップされたキャリアの有無やキャリアの極性により、ドレイン電流が流れる場合と流れない場合が生じる電圧(ここでは、例えば、+15V)が印加される。
【0073】
EL電源ライン14には、上述のように常時+10Vの電圧が印加された状態とされ、また、このとき各データライン2の電圧は0Vとなる。
そして、上述の選択された横一行の画素においは、それらの画素のDGメモリTFT35のトラップ領域に蓄積されたキャリアの極性に基づいて発光もしは非発光の状態となる。
【0074】
例えば、上述のように電子がトラップ領域に蓄積された選択ライン1のアドレスがnで、データライン2がm番目の画素において、そのDGメモリTFT35のトラップ領域に電子が蓄積しているので、上述のように選択ライン1から第一ゲート電極31に低い電圧が印加されても、トラップ領域に蓄積された電子の電界の影響によりチャネル領域に連続したnチャネルが形成されず、ドレイン電流が流れない状態となり、第一〜第三EL素子11、12、13は非発光状態となる。
【0075】
一方、上述のように正孔がトラップ領域に蓄積された選択ライン1のアドレスがnで、データライン2がm+1番目の画素において、そのDGメモリTFT35のトラップ領域に正孔が蓄積しているので、上述のように選択ライン1から第一ゲート電極31に低い電圧が印加された場合に、トラップ領域に蓄積された正孔の電界との相互作用により、チャネル領域に連続したチャネルが形成され、ドレイン電流が流れた状態となり、第一〜第三EL素子11、12、13は発光を維持することになる。
【0076】
また、上述の書き込み工程において、データが書き込まれた横一行の画素以外の他の行の画素においては、最後に書き込まれたデータに基づいて、一列の各画素が発光もしくは非発光の状態となる。例えば、アドレスがn+1の選択ライン1に接続された横一行の各画素においては、前のフレームにおいて書き込まれたデータ(トラップするチャージが正孔又は電子)に基づいて発光もしくは非発光の状態となる。
また、アドレスがn−1の選択ライン1に接続された横一行の各画素においては、上述の書き込み工程の前の回の書き込み工程においては書き込まれたデータに基づいて発光もしくは非発光の状態となる。
【0077】
そして、以上のような書き込み工程と表示工程とを繰り返すとともに、書き込み工程毎に書き込みを行う横一行の画素を一行ずつずらした場合には、1フレーム分の表示において、画素の横の行の数だけ表示が行われる。すなわち、点滅した状態で表示が行われることになるが、点滅速度が有る程度の速度以上となれば、人間の目には点滅を認識することができす、連続して画像が表示された状態に見えることになる。また、書き込み工程の度に、横一行の画素が全ての光ることになるが、高デューティー駆動で横一行の画素がアドレス時間が極めて短ければ、やはり人間の目で認識することができず、書き込み工程により表示に大きな影響がでることがない。
【0078】
従って、上述のようにアクティブ素子としてDGメモリTFT35を用いても連続した表示が可能となる。
そして、第三例の自発光表示装置においては、第一例の自発光表示装置と比較してその駆動動作が上述のように少し異なってはいるが、第一例の場合と同様の効果、すなわち、アクティブ素子における損失電力の低減による全消費電力の低減や、EL素子における静電容量の低下に基づく高速応答・正確な輝度制御の実現等の効果を奏することができる。
【0079】
さらに、第三例の自発光表示装置によれば、従来のようにアクティブ素子として、一画素毎に、選択トランジスタ3と駆動トランジスタ5との二つを用いる必要がなく、一つのDGメモリTFT35を用いれば良いので、自発光表示装置の構成の簡略化並びに発光領域の面積拡大を図ることができる。すなわち、アクティブ素子の数を1/2にすることが可能となり、自発光表示装置の製造時における歩留まりの向上等を図ることができる。
【0080】
なお、FET型のトランジスタにおいては、電流の流れる方向とキャリア(チャネル)の種類(正孔もしくは電子)により、ドレインとソースとが決まるので、上述の記載において、ドレインとソースとを入れ替えるものとしても良い。
また、一画素当たりのEL素子の数は、三つに限定されるものではなく、複数ならば、二つでも、四つ以上でも良いが、アクティブ素子における損失電力の低下や、EL素子の静電容量の低下の面では、一画素当たりのEL素子の数が多い方が良く、製造工程の容易さを考慮した場合には、一画素当たりのEL素子の数があまり多く無い方が好ましい。
【0081】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の自発光表示装置によれば、複数個の自発光素子を電気的に直列にアクティブ素子に接続するものとすることにより、複数個の自然発光素子を合わせた輝度レベルと同じ輝度レベルの一個の自然発光素子をアクティブ素子に接続した場合に比較して、アクティブ素子を流れる電流の値を低くすることができるので、アクティブ素子における損失電力を低減することができる。従って、上述のような構成とすることにより、アクティブ素子における損失電力を低減して自発光表示装置全体の消費電力の低減を図ることができる。
【0082】
本発明の請求項2記載の自発光表示装置によれば、自発光素子のカソードがアクティブ素子に接続されことにより、自発光素子のアノードが、例えば、自発光素子用の電源に接続されることになるとともに、アクティブ素子の端子の一つが接地されることになる。
この際には、アクティブ素子をオンオフする信号の電位が、直接グランドレベルに対して定まるので、コントロール性、応答速度に優れる利点がある。
【0083】
本発明の請求項3記載の自発光表示装置によれば、各画素において、それぞれ一個のアクティブ素子により、自発光素子を制御することができるので、従来のように各画素において二つのトランジスタを用いた場合よりも、自発光表示装置の構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第一例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図である。
【図2】第一例の自発光表示装置の一画素の平面構造を説明するための図面である。
【図3】第一例の自発光表示装置の一画素の平面構造を説明するための図面である。
【図4】第一例の自発光表示装置の駆動トランジスタにおける損失電位と従来例のEL表示装置の駆動トランジスタにおける損失電位との違いを説明するためのグラフである。
【図5】第一例の自発光表示装置のEL素子における電流特性と、従来例のEL表示装置のEL素子における電流特性との違いを説明するためのグラフである。
【図6】本発明の実施の形態の第二例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図である。
【図7】第二例の自発光表示装置の一画素の平面構造を説明するための図面である。
【図8】第二例の自発光表示装置の一画素の平面構造を説明するための図面である。
【図9】第二例の自発光表示装置の一画素の断面構造を説明するための図面である。
【図10】本発明の実施の形態の第三例の自発光表示装置の一画素の構成を説明するための回路図である。
【図11】第三例の自発光表示装置における駆動方法を説明するための回路図である。
【図12】第三例の自発光表示装置における駆動方法を説明するための回路図である。
【図13】従来例のEL表示装置の一画素の構成を説明するための回路図である。
【図14】従来例のEL表示装置の駆動トランジスタにおける損失電位を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
3 選択トランジスタ(アクティブ素子)
5 駆動トランジスタ(アクティブ素子)
11 第一EL素子(自発光素子)
11a アノード
11b カソード
12 第二EL素子(自発光素子)
12a アノード
12b カソード
13 第三EL素子(自発光素子)
13a アノード
13b カソード
35 DGメモリTFT(アクティブ素子、メモリ性を有するトランジスタ)
Claims (3)
- 各画素毎にアクティブ素子を備え、該アクティブ素子により自発光素子を駆動する自発光表示装置において、一画素に自発光素子が複数個備えられており、前記自発光素子は、それぞれ、有機EL層と、前記有機EL層の下で前記有機EL層と接続される第1電極と、前記有機EL層の上で前記有機EL層と接続される第2電極と、を有し、複数の自発光素子のうちのある自発光素子の第1電極は、当該自発光素子の有機EL層と重ならない部分で、当該自発光素子に隣接する自発光素子の第2電極と重なって互いに接続されていることによってこれら複数個の自発光素子が電気的に直列に上記アクティブ素子に接続されていることを特徴とする自発光表示装置。
- 請求項1記載の自発光表示装置において、上記自発光素子のカソードが上記アクティブ素子に接続されていることを特徴とする自発光表示装置。
- 請求項1または2記載の自発光表示装置において、上記アクティブ素子が、メモリ性を有するトランジスタとされていることを特徴とする自発光表示装置。
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