JP3710260B2 - 光学素子、それを保持する保持治具及びその光学素子を用いた撮像装置 - Google Patents
光学素子、それを保持する保持治具及びその光学素子を用いた撮像装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビデオカメラろスチールビデオカメラ、及び複写機等の撮像装置に好適な光学素子に関し、特に、曲率を有した複数の反射面を持つ光学素子に関する。
【0002】
より詳しくは、曲率を有した複数の反射面を所定の位置に高精度に形成する上で必要な反射面の相対位置関係、或いは反射面と光学素子全体との相対位置関係を短時間に、かつ高精度に得ることのできる光学素子、この光学素子を形状測定時に保持するための保持治具及びその光学素子を用いた撮像装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、マルチメディアが社会に浸透するに連れて、音声、文字情報だけでなく画像情報のデータを扱うになってきている。この際、画像を取り込むのに用いられるのは一般的にはビデオカメラ又はデジタルカメラが広く利用されている。
【0004】
又、最近は携帯電話やハンディコンピュータ等の携帯端末機器にも撮影手段としての小型のカメラが組み込まれ、撮影後即時に取り込んだ画像データを電話回線を利用して送信する事も可能になってきている。
【0005】
これらの画像入力機器のカメラ部は、一般的に各撮像素子サイズに適した共軸系のレンズから構成された単焦点レンズ群又はズームレンズ群で構成されている。
【0006】
【発明が解決しようする課題】
しかし、前述した様な携帯端末機器は小型化が必須の為に、撮像素子そのものが小型化になり、S/N面でも不利な方向に向かっているだけでなく、レンズの明るさ(Fナンバー)を犠牲にしてでもカメラ部を小型化させた構成を採っている場合が多く、暗い場所で使用できなかったり、又、使用できても非常に画質の悪い(S/Nの悪い)画像になってしまう事が多かった。
【0007】
又、カメラ部は単焦点レンズで構成されている場合が多く、画角が常に一定の為に撮影する被写体によっては不都合が生じていた。そこで本来はズームレンズを搭載する事で改善される事ではあるが、ズームレンズではどうしてもカメラ部が大きくなってしまう為に、携帯性の観点からは非常に不都合を生じさせていた。
【0008】
又、最近では特に撮像素子の小型化及び回路系の集積化に伴って、撮影回路部の小型化も進んでおり、カメラ部を小型にする事の重要性が更に高まってきている。
【0009】
従来のこの種のカメラに用いられるレンズは一般的には共軸系によるレンズ配置が行われている為に、どうしても光軸方向にある程度の厚みを必要とする。更に、この様な形態のカメラは用途上から広角レンズを搭載したものが多く、共軸系の配置では特に前玉径が大きくなってしまっていた。
【0010】
その為に、カメラ全体の小型化、特に薄型化には困難な点があり、製品形態及び携帯性の自由度に限界が生じ、民生機器として普及する妨げの要因の一つになっていた。
【0011】
そこで、複数の曲面を有する反射面を光学素子上に一体的に形成させ、反射を利用して所望の光学特性を得る様な非共軸系のレンズ開発も進められており、例えば、特開平8−292372号公報(特願平7−123236号)で開示されている光学素子も研究されつつある。因みに、上記公報には、複数の曲面や平面の反射面を一体的に形成した光学素子を複数用い、該複数の光学素子のうちの少なくとも2つの光学素子の相対的位置を適切に変化させてズーミングを行うことにより、ミラー光学系全体の小型化を図りつつ、又ミラー光学系にありがちな反射ミラーの配置精度(組立精度)を緩やかにする技術が開示されている。
【0012】
この様な形態の光学素子では、共軸系レンズに比較して前玉径が小さくでき厚み方向に薄くなるという長所があり、今後有望な技術として早急な開発/研究が進められている。
【0013】
ところで、この種の光学素子においては、反射面として自由曲面(有効光線反射領域)を多く形成しており、その成形精度は通常の共軸系レンズ同様に形状精度では数ミクロン、面精度ではサブミクロンの高精度まで要求される。この様な高精度の成形精度を得る為には、金型加工として当然サブミクロン以下の加工を行う必要があると共に、形状測定技術として更にそれ以上の精度が要求される。
【0014】
又、各自由曲面は上述した様に面精度としてサブミクロンが要求される為に研磨加工を行っており、研磨加工の加工容易性向上の為に金型は各自由曲面の金型駒を分割して製作している。
【0015】
その為に、金型組み込み時に各金型駒間の位置ずれが数ミクロン程度は生じ、各自由曲面を形成する基準面間で相対的な傾きが生じてしまう。
【0016】
そこで、各自由曲面の必要とされる面精度から考えて分解能がサブミクロン以下の3次元測定機により金型若しくは成形品を測定して各自由曲面の傾き量を算出し、金型を補正する必要がある。
【0017】
例えば、3次元測定機の接触子を成形品(光学素子)に軽圧接触させて移動させることで各自由曲面の測定データを得、これらの自由曲面の測定データを基に各自由曲面の傾き量を算出して金型を補正するための相対位置関係を得る場合、測定時に被測定面に付着した異物或いは傷、打痕及び表面粗さ等により測定データの信頼性を低下させてしまう事がある。
【0018】
又、3次元測定機による光学素子の形状測定時に保持治具の測定基準を定める必要がある。この場合、一般的に光学素子を保持する保持治具の外形に測定基準面を設け、光学素子の測定時にその測定基準面を測定して基準平面及び絶対座標系の原点を設定するが、かゝる保持治具の測定基準面に依存した光学素子全体の測定基準設定法では、保持治具の加工精度が測定基準面の測定データに影響を及ぼし、測定データの信頼性を低下させてしまう事がある。
【0019】
この様に反射面として自由曲面を多く形成している光学素子においては、それらの反射面の成形及び計測技術として非常に高度な技術を必要とし、光学素子の量産性の観点からは未だ問題を有していた。
【0020】
本発明は、上記光学素子の反射面の成形及び計測技術に付随する上述の如き問題に鑑みて為されたものであり、複数の反射面を所定の位置に高精度に形成する上で必要とされる反射面の相対位置関係、或いは反射面と光学素子全体との相対位置関係を短時間に、かつ高精度に得ることができて成形及び計測工程の簡略化を図ることのできる光学素子を提供することを第1の目的とする。
【0021】
第2の目的は、光学素子の複数の反射面の相対位置関係を得るに当たり、光学素子を保持する保持治具本体の基準位置を高精度に設定することのできる保持治具を提供することにある。
【0022】
第3の目的は、本発明に係る光学素子を用いた撮像装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の如く手段を採用した。
【0024】
即ち、本発明の光学素子は、
〔1〕:透明体の表面に2つの屈折面及び曲率を有した有効光線反射領域を備える反射面を複数形成し、光束が1つの屈折面から前記透明体の内部へ入射し、前記反射面の有効光線反射領域で反射を繰り返して別の屈折面から射出するように構成された光学素子において、
前記反射面の有効光線反射領域外に光学素子の形状測定時に反射面の基準位置を規定するための第1の基準部が形成されている事を特徴としている。
【0025】
特に、
〔1−2〕:上記〔1〕において、前記第1の基準部は、各々の反射面の一部で、かつ各々の反射面の有効光線反射領域外に形成されている事、
〔1−3〕:上記〔1〕において、前記複数の反射面の有効光線反射領域外に形成された第1の基準部は少なくとも3点以上設けられている事、
〔1−4〕:上記〔1〕において、前記第1の基準部は凸部形状である事、
〔1−5〕:上記〔1〕において、前記第1の基準部は凹部形状である事、
〔1−6〕:上記〔4〕において、前記第1の基準部は凸部先端部が球形状である事、
〔1−7〕:上記〔5〕において、前記第1の基準部は凹部先端部が球形状である事、
〔1−8〕:上記〔1〕において、前記透明体の外形の一部に光学素子の形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定するための第2の基準部が形成されている事、
〔1−9〕:上記〔8〕において、前記透明体の外形の一部に形成された第2の基準部は少なくとも3点以上設けられている事、
〔1−10〕:上記〔8〕において、前記第2の基準部は凸部形状である事、
〔1−11〕:上記〔8〕において、前記第2の基準部は凹部形状である事、
〔1−12〕:上記〔10〕において、前記第2の基準部は凸部先端部が球形状で形成されている事、
〔1−13〕:上記〔11〕において、前記第2の基準部は凹部先端部が球形状で形成されている事、
〔1−14〕:上記〔12〕において、前記透明体の外形の一部に形成された第2の基準部である球形状は、インサート成形により一体成形されている事、
〔1−15〕:上記〔14〕において、前記球形状のインサート部材は鋼球又はガラス、セラミック等の高硬度を有し、軟化点の高い材料である事、
〔1−16〕:上記〔1−8〕乃至〔1−15〕の何れかの第2の基準部は前記第1の基準部とは異なる位置に設けられている事
などを特徴としている。
【0026】
又、本発明の保持治具は、
〔2〕:上記〔1〕乃至〔1−7〕の何れかの光学素子を保持する保持治具本体の外形部の一部に光学素子の形状測定時に保持治具本体の基準位置を規定するための基準部が形成されていることを特徴としている。
〔2−2〕:上記〔2〕において、前記保持治具本体の外形部に形成された基準部は少なくとも3点以上設けられている事、
〔2−3〕:上記〔2〕において、前記基準部は凸部形状である事、
〔2−4〕:上記〔2−3〕において、前記基準部は凸部先端部が球形状で形成されている事
などを特徴としている。
【0027】
そして、本発明の撮像装置は、
〔3〕:上記〔1〕乃至〔1−16〕の何れかの光学素子を用いている事を特徴としている。
【0028】
〔作用〕
本発明に係る光学素子にあっては、第1の基準部が被測定部となって形状測定時に反射面の基準位置を規定する。即ち、各反射面について第1の基準部を測定する事により、反射面の相対位置関係を求めることができる。これにより、光学素子の形状測定工程の簡略化を図れ、反射面の相対位置関係を短時間に得ることが可能となる。又、第1の基準部が被測定部となって反射面の基準位置を規定するので、第1の基準部の測定データは反射面の有効光線反射領域に付着した異物或いは傷、打痕及び表面粗さ等による影響を受けることがない。この為、反射面の相対位置関係を高精度に得ることが可能となる。
【0029】
又、第2の基準部は被測定部となって形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定する。即ち、第2の基準部を測定する事により、光学素子全体の測定基準が定まる。反射面の形状測定については、光学素子全体の測定基準を定めた状態で従前の方法を踏襲して行ってもよく、或いは上述した様に第1の基準部を利用して行ってもよい。何れの形状測定法を採択しても、第2の基準部を測定する事で光学素子全体の測定基準が定まることから、反射面の測定データは保持治具の加工精度の影響を受けない。よって、保持治具の加工精度に依存することなしに反射面と光学素子全体との相対位置関係を高精度に、かつ短時間に得ることができる。
【0030】
又、本発明に係る保持治具にあっては、第1の基準部を有する光学素子の形状測定時に基準部が保持治具本体の基準位置を規定する。即ち、基準部を測定する事により、保持治具本体の測定基準が定まる。これにより、光学素子を保持する保持治具本体の基準位置を高精度に設定することが可能となる。
【0031】
又、本発明の撮像装置によれば、前記光学素子を用いているので、撮像光学系の光学特性の更なる向上が望める。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光学素子を添付図面に示す実施の形態に基づいて、更に詳しく説明する。
【0033】
〔第1実施形態例〕
図1は本発明に係る光学素子の第1実施形態例の光路断面図であり、透明体の表面に2つの屈折面と曲率を有した複数の反射面が形成され、かつ上記透明体の外形の一部に2つの唾部を一体に形成した光学素子の一例であって、ビデオカメラやスチールビデオカメラ、及び複写機等の撮像装置に用いられる。 本実施形態例の光学素子1は、図1に示すように、物体側より順に1つの屈折面を構成する凸レンズR1と、平面鏡R2と、曲率を有した反射面を構成する凹面鏡R3、凸面鏡R4、凹面鏡R5、凸面鏡R6及び凹面鏡R7と、別の屈折面を構成する凹レンズR8により構成されている(反射面は図中斜線部で示す共に、平面鏡R2については後述する様に基準軸を90度傾斜させる構成を採っているが光路断面図では基準軸5(b)と同一平面に配置している。)。
【0034】
ここで、凸レンズR1は図2の斜視図に示す様に、後述する凹面鏡R3〜凹レンズR8の基準軸5(b)に対し平面鏡R2により90度傾斜(直交)した構成を採っている。2は両側にそれぞれ水平及び垂直方向に複屈折を生じさせる水晶ローパスフィルター2aと中央部の赤外カットフィルター2bから構成される光学補正板であり、3はCCD等の撮像素子面、4は光学素子1の物体側に配置された絞り、5は撮影光学系の基準軸であり、5(a)は凸レンズR1〜平面鏡R2の基準軸、5(b)は凹面鏡R3〜凹レンズR8の基準軸であって、互いの基準軸は図2(b)に示す如く直交している。
【0035】
次に、本実施形態例における結像関係を説明する。
【0036】
図1に示す様に、物体からの光6は絞り4により入射光量を規制された後に光学素子1の入射面としての凸レンズR1に入射する。凸レンズR1に入射された物体光6は次に平面鏡R2に反射して90度折り曲げられ、凹面鏡R3に到達する。凹面鏡R3により反射された物体光6は凸レンズR1のパワーにより中間結像面N1上に物体像を1次結像する。
【0037】
この様に早い段階にて光学素子1内に物体像を結像する事により、絞り4より撮像側に配置された撮像素子面3の光線有効径の増大を抑制している。
【0038】
中間結像面N1に1次結像された物体光6は、反射面としての凸面鏡R4、凹面鏡R5、凸面鏡R6及び凹面鏡R7の後述する有効光線反射領域にて反射を繰り返し、射出面としての凹レンズR8にて屈折されることで、それぞれの反射鏡及び屈折レンズの持つパワーによる影響を受けつつ物体光6を撮像素子面3上に結像される。
【0039】
この様に光学素子1は、入射及び射出位置での屈折と曲率を有する複数の反射鏡による反射を繰り返しながら所望の光学性能と、全体として正のパワーを有するレンズユニットとしての機能を果たしている。
【0040】
次に、図2に光学素子1を各方向から見た斜視図を示す。
【0041】
図2の(a)は入射面R1及び反射面R3、R5、R7が観察できる方向からの光学素子の斜視図、図2の(b)は入射面R1及び反射面R4、R6が観察できる方向からの光学素子の斜視図、図2の(c)は射出面R8及び物体光6を90度折り曲げる平面鏡R2が観察できる方向からの光学素子の斜視図である。又、光学素子1の絶対座標系のXYZ方向を図2中に示す。
【0042】
図2の(a)、(b)及び(c)に示す本実施形態例の光学素子1は成形加工にて形成されており、光路である内部には樹脂が充填されていると共に、各反射面R3〜R7は乾式膜成形法である蒸着或いはスパッタ又は湿式メッキ等にて、アルミ又は銀の反射膜が形成されている。又、入射面R1及び射出面R8の屈折レンズ表面には透過効率を向上させる為の増透膜が形成されている。
【0043】
形状的には光学素子1は全体が弓形形状をなしており、光学素子1の射出面側の凹レンズR8面近傍には光学素子1全体の形状測定基準面として唾部7が設けられている。
【0044】
この唾部7は、絶対座標系のXYZ方向において、基準軸5(b)を含む平面(YZ平面)に対し平行な平面部7(c)と、これに直交する平面部7(a),7(b),7(d)を有し、本実施形態例では前記平面部7(a)〜7(d)のうち、平面部7(a),7(c),7(d)を形状測定時の基準面としている。この唾部7の各基準面7(a),7(c),7(d)は形状測定だけでなく、光学素子1の図示しない鏡筒への保持時にも利用されるものである。
【0045】
又、更には入射面側の凸レンズR1近傍にも唾部8が形成されており、この唾部8は基準軸5(b)を含む上記平面に対し平行な平面部8(c)と、これに直交する平面部8(a),8(b)を有し、本実施形態例では前記平面部8(a)〜8(c)のうち、8(a),8(c)を形状測定時の基準面としている。又、この平面部8(a),8(c)は唾部7と同様に形状測定時の基準面及び図示しない鏡筒への保持時に利用されるものである。
【0046】
次に、図1に示した光学素子1を各面から見た図を図3〜図5に示す。
【0047】
図3は入射面R1から光学素子を観察した図、図4は反射面R4,R6、屈折面R8側から光学素子を観察した図、図5は反射面R3,R5,R7側から観察した図である。
【0048】
図4において、反射面R4の有効光線反射領域(図中2点鎖線)外である周辺部には平面部R4’が両端に形成されており、その平面部R4’内に反射面R4の形状測定基準となる凸部12が3箇所形成されている。
【0049】
この凸部12は先端部が球形状をなしており(図3参照)、反射面R4の形状測定時にこの球形状を測定し球の中心位置を算出する事によって仮想的に基準位置を求め、反射面R4に対しての基準平面及びローカル原点を定める為のものである。そこで、基準平面を設定する為には、本実施形態例の様に少なくとも3点以上の凸部を形成させる必要がある。又、この時の球形状の形成精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。
【0050】
同様に、反射面R6の有効光線反射領域(図中2点鎖線)外である周辺部にも平面部R6’が両端に形成されており、この平面部R6’内に反射面R6の形状測定基準となる凸部14が3箇所形成されている。
【0051】
この凸部14は先端部が球形状をなしており(図3参照)、反射面R6の形状測定時にこの球形状を測定し球の中心位置を算出する事によって仮想的に基準位置を求め、反射面R6に対しての基準平面及びローカル原点を定める為のものである。そこで、基準平面を設定する為には、本実施形態例の様に少なくとも3点以上の凸部を形成させる必要がある。又、この時の球形状の形状精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。
【0052】
又、射出面としての凹レンズR8に関しては図3に示す様に凹部面は球形状の為に、特に測定の為の凸部を設ける必要がなく表面形状を測定する事によって中心位置を定めることができる。但し、この時も同様に凹レンズの形状精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。本実施形態例ではR8は球形状であるが、基準軸5(b)に対し回転対称な非球面形状であっても同様の事が言える。又、非回転対称な自由曲面形状の場合には、前述した様な基準凸部12(又は14)を凹レンズ近傍に設ける事で基準位置及びローカル原点を定め、レンズ形状を測定できる事は言うまでもない。
【0053】
図5においても前述した反射面R4及びR6と同様に、反射面R3の有効光線反射領域(図中2点鎖線)外である周辺部R3’の両端には反射面R3の形状測定基準となる凸部(第1の基準部)11が3箇所形成されている。この場合、反射面R4及びR6とは異なり外周部に平面部を形成しないで反射面R3の自由曲面延長上に凸部11を形成している。
【0054】
この凸部11は先端部が球形状をなしており(図3参照)、反射面R3の形状測定時にこの球形状を測定し球の中心位置を算出する事によって仮想的に基準位置を求め、反射面R3に対しての基準平面及びローカル原点を定める為のものである。そこで、基準平面を設定する為には、本実施形態例の様に少なくとも3点以上の凸部を形成させる必要がある。又、この時の球形状の形状精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。
【0055】
同様に、反射面R5の有効光線反射領域(図中2点鎖線)外である周辺部R5’の両端には反射面R5の形状測定基準となる凸部13が3箇所形成されている。この場合も同様に、外周部に平面部を形成しないで反射面R5の自由曲線延長上に凸部を形成している。
【0056】
この凸部13は先端部が球形状をなしており(図3参照)、反射面R5の形状測定時にこの球形状を測定し球の中心位置を算出する事によって仮想的に基準位置を求め、反射面R5に対しての基準変面及びローカル原点を定める為のものである。そこで、基準平面を設定する為には、本実施形態例の様に少なくとも3点以上の凸部を形成させる必要がある。又、この時の球形状の形状精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。
【0057】
同様に、反射面R7の有効光線反射領域(図中2点鎖線)外である周辺部R7’の両端には反射面R7の形状測定基準となる凸部15が3箇所形成されている。この場合も同様に、外周部に平面部を形成しないで反射面R7の自由曲面延長上に凸部を形成している。
【0058】
この凸部15は先端部が球形状をなしており(図3参照)、反射面R7の形状測定時にこの球形状を測定し球の中心位置を算出することによって仮想的に基準位置を求め、反射面R7に対しての基準平面及びローカル原点を定める為のものである。そこで、基準平面を設定する為には、本実施形態例の様に少なくとも3点以上の凸部を形成させる必要がある。又、この時の球形状の形状精度は各反射面の許容相対位置精度の約1/10以下である事が望ましい。
【0059】
この様に、本実施形態では、反射面R3〜R7の有効光線反射領域外に形成した凸部11〜15が光学素子1の形状測定時に反射面R3〜R7の基準位置を規定するための第1の基準を構成している。
【0060】
次に、光学素子1の形状測定手順を図6を用いて説明する。
【0061】
図6に光学素子1を保持治具16に取り付けた様子を示す。図6の(a)は反射面R4及びR6が観察できる方向からの図、図6の(b)は凸レンズR1が観察できる方向からの図、図6の(c)は光学素子1の基準軸5(a)及び5(b)が観察できる方向からの図である。又、光学素子1の絶対座標系のXYZ方向を図6中に示す。
【0062】
図6において、16は保持治具であり、前述した光学素子1の形状測定時の各基準面7(a),7(c),7(d),8(a),8(c)に対応した保持治具16の基準面16(a),16(b),16(c),16(d),16(e)を有している。又、保持治具16の外周部には保持治具16の基準としての鋼球17が3箇所に取り付けられており(17(a),17(b),17(c))、鋼球の形状を測定する事によって仮想的に球の中心位置を算出して基準平面及び絶対座標系の原点を設定するものである。
【0063】
一般的に3次元測定機は、水平方向に接触子を移動させながら垂直方向の測定を行うものが主流であり、この時、本実施形態例の様な形状の光学素子1の被測定面としての各面、即ち、反射面R3〜R7及び射出面R8を測定する為には、光学素子1を取り付けた保持治具16を反転させ上記被測定面R3〜R8を垂直方向上面に露出させなければならない。
【0064】
本実施形態例においては、保持治具16は光学素子1の被測定面である反射面R3〜R7及び凹レンズR8に対応する部分が露出面となって不図示の3次元測定機の接触子が上記被測定面に当接できるようになっていると共に、保持治具16には切り欠き部18及び19が設けられており、3次元測定機の接触子が凸レンズR1及び平面鏡R2にも当接できるようになっている。
【0065】
又、一般的に保持治具16の外形に測定基準面を設け、光学素子の形状測定時に測定基準面を3次元測定機により測定して基準平面及び絶対座標系の原点を測定するが、保持治具16の反転による取り付け誤差が加工限界の範囲で微少ながら生じてしまう為に、反転によって測定データの信頼性を低下させてしまう事がある。
【0066】
そこで、本実施形態例では、図6に示すように、保持治具本体16’の外周部に接着等により3点の鋼球17(a),17(b),17(c)を取り付けて、光学素子1の被測定面である反射面R3〜R7及び凹レンズR8に対し常に鋼球3点が3次元測定機の接触子に接触できる様に配置している。言い換えれば、鋼球17(a),17(b),17(c)の3点で測定される保持治具16の基準平面に対し、光学素子1の被測定面(反射面R3〜R7及び凹レンズR8)を垂直に配置しない構成を採るという事である。
【0067】
又、鋼球は一般的に研磨加工を経て真球度及び直径を非常に高精度に加工できる為、比較的安価に保持治具16を製作することができる。本実施形態でも、使用している鋼球17(a)〜17(c)の真球度は0.05μm、直径は1μmの精度のものを用いている。
【0068】
この様にすることで、保持治具16を反転又は移動させても常に3点の鋼球17(a),17(b),17(c)を測定する事で、保持治具16の測定基準面及び絶対座標系の原点を高精度に設定する事ができる。
【0069】
次に、本実施形態例での光学素子1の成形加工及び測定データの取り扱いについて述べる。
【0070】
本実施形態例での光学素子1は射出成形にて加工を行っており、成形材料としては光学的特性及び耐環境性に優れる低吸湿PMMAを用いている。又、この光学素子1の各反射面R3〜R7は自由曲面で構成されており、その成形精度は通常の共軸系レンズと同様に形状精度では数ミクロン、面精度ではサブミクロンの高精度まで要求される。この様な高精度の成形精度を得る為には、金型加工として当然サブミクロン以下の加工を行う必要があると共に、形状測定技術として更にそれ以上の精度が要求される。
【0071】
又、本実施形態例の光学素子1の各自由曲面(反射面R3〜R7)は上述した様に面精度としてサブミクロンが要求される為に研磨加工を行っており、研磨加工の加工容易性向上の為に金型は各自由曲面の金型駒を分割して製作している。
【0072】
その為に、金型組み込み時に各金型駒間の位置ずれが数ミクロン程度は生じ、各自由曲面を形成する基準面間で相対的な傾きが生じてしまう。
【0073】
そこで、金型若しくは成形品を測定して各自由曲面の傾き量を算出し、金型を補正する必要がある。
【0074】
金型若しくは成形品の測定には、各自由曲面の必要される面精度から考えても分解能がサブミクロン以下の3次元測定機を用いるが、測定時に被測定面に付着した異物或いは傷、打痕及び表面粗さ等により測定データは必ずしも連続的なデータが得られるとは言えない場合が多い(ここで、連続的なデータと言っているのは、あくまでマクロ的な意味合いであって、測定時にはデータサンプリングはデジタル的に抽出している為に基本的には点データの集合であり、不連続である。)。
【0075】
この様な成分があると、一般的には自由曲面の連続データに対し高周波成分となって測定データにのってくる。
【0076】
そこで、まず測定データをローパスフィルタに通して上述した不要な高周波成分を除去して精製されたデータを作成する。次に、精製されたデータは点データの集合であるので、連続した面データに展開補間する必要があり、精製されたデータを最小2剰法を用いてデータ補間し、設計データ(連続的な面データ)に合致する様に面の傾き補正量を算出する。以下、この作業をフィッテイングと称する事にする。
【0077】
この時、図7に示す様に例えば、自由曲面形状の曲率変化が極端に小さく球形状に近い場合は、疑似球形状の中心であるA点を中心に回転しても変位量δが微少な為に、傾き補正量(角度θ)の信頼性が非常に低くなってしまう事がある。
【0078】
又、上述した様に測定データはローパスフィルタを通して、不要な高周波成分は除去されるが、測定環境時の部屋の振動等により発生する低周波成分が混入し、実際の自由曲面データと異なった成分が含まれる事もある。
【0079】
この様な時も、フィッテイングを行っても傾き補正を適正に行うことができず、自由曲面の面形状を算出する事が困難になってくる。
【0080】
そこで、本実施形態例では前述した様に、各自由曲面(反射面R3〜R7)の有効光線反射領域外に設けられた形状測定基準を、つまり各反射面R3〜R7の凸部11〜15を測定する事によって各面の相対位置関係を予め求めて各面の傾き補正量を的確に算出し、フィッテイング時に前記算出量を考慮することによってフィッテイングの精度を向上させようとするものである。
【0081】
この様に、本実施形態例では、各反射面R3〜R7の傾き補正量を算出するに当たり、反射面R3〜R7の基準位置を規定する凸部11〜15を測定する事によって、測定時に自由曲面に付着した異物或いは傷、打痕及び表面粗さ等による測定データへの影響、或いは測定環境時の部屋の振動等による低周波成分の測定データへの混入と言った不具合を回避することができ、従って、反射面R3〜R7の相対位置関係を短時間に、かつ高精度に得ることができる。
【0082】
又、本実施形態例では各自由曲面(反射面R3〜R7)の有効光線反射領域外に形状測定基準としての凸部11〜15を設けているが、各自由曲面の全てに設ける必要は無く形状測定基準としての凸部を各反射面間で共用することも可能である。この場合は、例えば金型加工において分割する必要なしに一体的に囲う加工ができる形状には、金型加工期間の短縮や測定の容易さ等の観点から非常に有利な構成となる。
【0083】
尚、光学素子1の各自由曲面(反射面R3〜R7)に設けられた形状測定基準は本実施形態例では凸形状で説明してきたが、凹形状の球形状でも同様な効果を得られることは言うまでもない。
【0084】
球形状を凸形状で構成した場合には、測定時に3次元測定機の接触子を当接しやすい構成になる事や、又金型加工時において金型を切削する構成になり加工容易性を得ることができるなどの利点を有する一方、凹部形状に構成する事によって突出部が無くなる為に、小型の光学素子にする事ができる。
【0085】
更には、本実施形態例では形状測定基準は球形状で説明してきたが、球形状に拘る事はなく被測定物を測定する測定機によって最適な形状を選択すれば良い。
【0086】
例えば、円錐形状の凸部又は凹部で形成して光学的に先端部を検出する様にしても構わない。つまり、点を定義できる構成であれば良いということである。
【0087】
又、本実施形態例では樹脂の射出成形により光学素子を成形しているが、光学部品としての材料はPMMA等に代表される光学特性に優れた樹脂だけでなく、更に光学的特性に優れるガラス材料を用いたガラスモールド成形で行っても構わない。
【0088】
〔第2実施形態例〕
次に、本発明に係る光学素子の第2実施形態例を図8及び図9に示す。尚、本実施形態例の光学素子51は第1実施形態例での光学素子1と自由曲面形状及び自由曲面位置は同一であり、唾部の形状が異なるのみである。よって、光路断面図は図1で示した内容と同一であり、その説明は省略する。
【0089】
図8は本実施形態例の光学素子51を各方向から見た斜視図で、図8の(a)は入射面R1及び反射面R3,R5,R7面が観察できる方向からの光学素子の斜視図、図8の(b)は入射面R1及び反射面R4,R6面が観察できる方向からの光学素子の斜視図、図8の(c)は射出面R8及び90度に物体光6を折り曲げる平面鏡R2が観察できる方向からの光学素子の斜視図である。又、光学素子51の絶対座標系のXYZ方向を図8中に示す。
【0090】
光学素子51は図8の(a)、(b)及び(c)に示す様に、全体が弓形形状をなしており、光学素子51の射出面側の凹レンズR8面近傍には光学素子51全体の形状測定基準面として唾部52が設けられている。
【0091】
この唾部52は、絶対座標系のXYZ方向において、基準軸5(b)を含む平面(YZ平面)に対し平行な平面部52(c)と、これに直交する平面部52(a),52(b),52(d)を有し、平面部52(a)には第2の基準部を構成する凸部53を2箇所に有している(図中53(a)及び53(b))。この凸部53(a)及び53(b)は先端部が球形状で、反射面R3,R5及びR7を測定する時の光学素子51の絶対座標系の基準となるものである。
【0092】
又、唾部52(a)の裏側にある平面部52(b)にも同様に第2の基準部を構成する球状の凸部53(c)及び53(d)を2箇所に有している。この凸部53(c)及び53(d)は反射面R4,R6及び凹レンズR8を測定する際の絶対座標系の基準となるもので、前述した凸部53(a)及び53(b)とそれぞれ中心位置を一致させており、対向する反射面での基準位置を一致させ反射面間の相対位置を測定する為のものである。
【0093】
又、入射面側の凸レンズR1近傍にも第1実施形態例とは形状が異なるが唾部54が形成されており、この唾部54は基準軸5(b)を含む上記平面に対し平行な平面部54(c),54(d)と、これに直交する平面部52(a),52(b)を有し、平面部54(a)には第2の基準部を構成する凸部55(a)を有している。この凸部55(a)は上述した凸部53(a),53(b)と同様に先端部が球形状で、反射面R3,R5及びR7を測定する時の光学素子51の絶対座標系の基準となるものである。
【0094】
又、唾部54(a)の裏側にある平面部54(b)にも同様に第2の基準部を構成する球形状の凸部55(b)を有している。この凸部55(b)は反射面R4,R6及び凹レンズR8を測定する際の絶対座標系の基準となるもので、前述した凸部55(a)と中心位置を一致させており、対向する反射面での基準位置を一致させ反射面間の相対位置を測定する為のものである。
【0095】
この様に、本実施形態例では、各唾部52,54の平面部52(a),54(a)に設けられた凸部53(a),53(b),55(a)及び平面部52(b),54(b)に設けられた凸部53(c),53(d),55(b)が光学素子51の形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定する第2の基準部を構成している。
【0096】
図9に光学素子51を保持治具56に取り付けて3次元測定機により測定を行う様子を示す。尚、図9の(a)は光学素子51の反射面R3,R5,R7側から観察した図、図9の(b)はその側面図である。ここで、基本的には各反射面R3〜R7及び屈折面R8の測定方法は同様なので反射面R5を代表して説明する。
【0097】
まず、保持治具56に取り付けられた光学素子51の凸部55(a)を3次元測定機の接触子57により形状測定を行い、仮想中心位置を求める。次に凸部53(a)及び53(b)も同様に測定し、仮想中心位置を求める。上記3点で形成される平面を基準平面、且つ、凸部53(a)の仮想中心位置を絶対座標系の原点に設定する。絶対座標系の原点が設定された状態で接触子57を移動して反射面R5の形状測定を行う。以上の手順により、反射面R5の絶対位置測定が行われた事になる。同様に、各反射面R3,R7を測定すれば良い。
【0098】
この様に、光学素子51の外形の一部に測定用の基準部(絶対座標系)を、即ち、光学素子51の形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定する凸部53(a),53(b),55(a)、53(c),53(d),55(b)を設ける事によって、保持治具16の加工精度に依存せずに各反射面R3〜R7及び屈折面R8の形状を高精度に測定する事ができる。
【0099】
本実施形態例では、各反射面の有効光線反射領域外にも第1実施形態例と同様な各面のローカルな基準部(凸部11〜15)を設けているが、この様にする事で各反射面R3〜R7の面形状を全てサンプリングする事なしに、ローカル基準部を測定するのみで各面の傾き及び位置等を簡単に、かつ短時間で測定する事ができる。
【0100】
又、測定基準部である凸部53(a),53(b),55(a)及び凸部53(c),53(d),55(b)は、光学素子51の成形加工時に真球度及び直径精度に関して高精度な鋼球をインサートする事(インサート成形)によって、非常に簡単な型構成で測定基準部を構成する事もできる。この時にインサートする材料としては測定信頼性の観点から、3次元測定機の接触子の硬度よりも硬度が高い材料であることが望ましく、一般的には金属材料が適当と考えられるが、金属に拘る事は無く高硬度を有し且つ軟化点が母体材料(本実施形態例では低吸湿PMMA)よりも高いガラスやセラミック、エンジニアリングプラスチック等の材料でも構わない。
【0101】
以上のように、本実施形態例の光学素子によれば、反射面R3〜R7の有効光線反射領域外に光学素子の形状測定時に反射面R3〜R7の基準位置を規定するための第1の基準部(凸部11〜15)を形成し、前記第1の基準部を測定する事で反射面の相対位置関係を短時間に、かつ高精度に算出する事ができる。
【0102】
更に、前記第1の基準部を各々の反射面R3〜R7に設ける事によって、各反射面の相対位置関係を高精度に測定する事ができる。
【0103】
更に、前記第1の基準部を少なくとも3点以上で構成する事によって、各反射面の相対位置関係を高精度に測定することができる。
【0104】
更に、前記第1の基準部を凸部形状で構成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を得る事ができる。
【0105】
更に、前記第1の基準部を凹部形状で構成することによって、小型の光学素子を提供する事ができる。
【0106】
更に、前記凸部形状で構成した第1の基準部の凸部先端部を球形状で形成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を得る事ができる。
【0107】
更に、前記凹部形状で構成した第1の基準部の凹部先端部を球形状で形成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を有する小型の光学素子を提供することができる。
【0108】
更に、反射面R3〜R7の有効光線反射領域外に第1の基準部を形成すると共に、光学素子を構成する透明体の外形の一部に光学素子全体の基準位置を規定するための第2の基準部(凸部53(a),53(b),55(a)、53(c),53(d),55(b))を形成し、前記第1の基準部及び第2の基準部を測定する事で反射面と光学素子全体との相対位置関係を短時間に算出する事ができる。
【0109】
更に、光学素子を構成する透明体の外形の一部に形成された第2の基準部を少なくとも3点以上で構成する事によって、反射面と光学素子全体との相対位置関係を高精度に算出する事ができる。
【0110】
更に、前記第2の基準部を凸部形状で構成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を得る事ができる。
【0111】
更に、前記第2の基準部を凹部形状で構成する事によって、小型の光学素子を提供する事ができる。
【0112】
更に、前記凸部形状で構成した第2の基準部の凸部先端部を球形状に形成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を得る事ができる。
【0113】
更に、前記凹部形状で構成した第2の基準部の凹部先端部を球形状で形成する事によって、測定時の容易さや金型加工時の加工容易性を有する小型の光学素子を提供する事ができる。
【0114】
更に、光学素子を構成する透明体の外形の一部に形成された第2の基準部である球形状をインサート成形により一体成形する事によって、位置基準(測定基準)が高精度な光学素子を容易に成形する事ができる。
【0115】
更に、前記球形状のインサート部材を鋼球又はガラス、セラミック等の高硬度を有し、軟化点の高い材料で構成する事によって、形状測定時の信頼性を向上させ且つ安価な光学素子を成形する事ができる。
【0116】
以上の事から、高精度な光学素子を容易に成形する事ができると共に、測定に要する時間も短縮する事ができ安価な光学素子を提供する事ができる。
【0117】
又、上記光学素子を用いて撮像装置を構成すれば、撮像光学系の光学特性に優れた製品を提供する事ができる。
【0118】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、透明体の表面に複数形成した反射面の有効光線反射領域外に光学素子の形状測定時に反射面の基準位置を規定するための第1の基準部を形成したので、複数の反射面を所定の位置に高精度に形成する上で必要な反射面の相対位置関係を短時間に、かつ高精度に得ることができて成形及び計測工程の簡略化を図れる光学素子を提供できる。
【0119】
又、前記光学素子において、透明体の外形の一部に光学素子の形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定するための第2の基準部を形成したので、反射面と光学素子全体との相対位置関係を短時間に、かつ高精度に得ることができて成形及び計測工程の簡略化を図れる光学素子を提供できる。
【0120】
以上の事から本発明によれば、高精度な光学素子を容易に成形する事ができると共に、測定に要する時間も短縮する事ができる安価な光学素子を提供する事ができる。
【0121】
又、保持治具本体の外形部の一部に保持治具本体の基準位置を規定するための基準部を形成したので、光学素子の形状測定時に保持治具本体の基準位置を高精度に設定する事のできる保持治具を提供できる。
【0122】
又、上記光学素子を用いる事で撮像光学系の光学特性に優れた撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例の光学素子の光路断面図である。
【図2】第1実施形態例の光学素子の斜視図である。
【図3】第1実施形態例の光学素子を入射面側から観察した図である。
【図4】第1実施形態例の光学素子を凸面状の反射面と屈折面側から観察した図である。
【図5】第1実施形態例の光学素子を凹面状の反射面側から観察した図である。
【図6】第1実施形態例の光学素子を保持治具に取り付けた概要説明図である。
【図7】第1実施形態例の光学素子の反射面形状の曲率変化と傾き補正量との関係を表した説明図である。
【図8】第2実施形態例の光学素子を保持治具に取り付けた概要説明図である。
【図9】第2実施形態例の光学素子を保持治具に取り付けて3次元測定器により測定するときの説明図である。
【符号の説明】
1,51 光学素子
R1,R8 屈折面を構成する凸レンズ
R3〜R7 反射面
R3’〜R7’ 平面部及び周辺部(有効光線反射領域外)
11〜15 凸部(第1の基準部)
53(a)〜53(d),55(a),55(b) 凸部(第2の基準部)
16 保持治具
16’ 保持治具本体
17(a)〜17(c) 基準部
Claims (21)
- 透明体の表面に2つの屈折面及び曲率を有した有効光線反射領域を備える反射面を複数形成し、光束が1つの屈折面から前記透明体の内部へ入射し、前記反射面の有効光線反射領域で反射を繰り返して別の屈折面から射出するように構成された光学素子において、
前記反射面の有効光線反射領域外に光学素子の形状測定時に反射面の基準位置を規定するための第1の基準部が形成されている事を特徴とする光学素子。 - 請求項1において、前記第1の基準部は、各々の反射面の一部で、かつ各々の反射面の有効光線反射領域外に形成されている事を特徴とする光学素子。
- 請求項1において、前記複数の反射面の有効光線反射領域外に形成された第1の基準部は少なくとも3点以上設けられている事を特徴とする光学素子。
- 請求項1において、前記第1の基準部は凸部形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項1において、前記第1の基準部は凹部形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項4において、前記第1の基準部は凸部先端部が球形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項5において、前記第1の基準部は凹部先端部が球形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項1において、前記透明体の外形の一部に光学素子の形状測定時に光学素子全体の基準位置を規定するための第2の基準部が形成されている事を特徴とする光学素子。
- 請求項8において、前記透明体の外形の一部に形成された第2の基準部は少なくとも3点以上設けられている事を特徴とする光学素子。
- 請求項8において、前記第2の基準部は凸部形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項8において、前記第2の基準部は凹部形状である事を特徴とする光学素子。
- 請求項10において、前記第2の基準部は凸部先端部が球形状で形成されている事を特徴とする光学素子。
- 請求項11において、前記第2の基準部は凹部先端部が球形状で形成されている事を特徴とする光学素子。
- 請求項12において、前記透明体の外形の一部に形成された第2の基準部である球形状は、インサート成形により一体成形されている事を特徴とする光学素子。
- 請求項14において、前記球形状のインサート部材は鋼球又はガラス、セラミック等の高硬度を有し、軟化点の高い材料である事を特徴とする光学素子。
- 請求項8乃至15の何れか一項に記載の第2の基準部は前記第1の基準部とは異なる位置に設けられている事を特徴とする光学素子。
- 請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学素子を保持する保持治具本体の外形部の一部に光学素子の形状測定時に保持治具本体の基準位置を規定するための基準部が形成されていることを特徴とする保持治具。
- 請求項17において、前記保持治具本体の外形部に形成された基準部は少なくとも3点以上設けられている事を特徴とする保持治具。
- 請求項17において、前記基準部は凸部形状である事を特徴とする保持治具。
- 請求項19において、前記基準部は凸部先端部が球形状で形成されている事を特徴とする保持治具。
- 請求項1乃至16の何れか一項に記載の光学素子を用いている事を特徴とする撮像装置。
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