JP3695503B2 - アキュムレータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧あるいは空圧等の流体圧力ラインにおいて、圧力を一時的に貯蔵したり、あるいは圧力ラインに生じる圧力の脈動を吸収して平滑化するといった圧力制御に用いられるアキュムレータであって、特に金属ベローズが用いられたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
アキュムレータの典型的な従来例としては、図4に示すように、筒状部材101の軸方向両端に第一及び第二のエンドカバー102,103が溶接WDa,WDbされた構造の外殻100の内室が、軸方向に伸縮可能な金属製のベロース104を介して、第一のエンドカバー102側の導圧室100Aと第二のエンドカバー103側のガス室100Bとに画成されてなる構造を有する金属ベローズ式アキュムレータがある。導圧室100Aは、第一のエンドカバー102に開設された導圧ポート102aを通じて油圧等の圧力ライン(図示省略)に並列に接続され、ガス室100Bには、第二のエンドカバー103に開設された封入口103aからクッションガス(例えば空気あるいは窒素ガス、不活性ガスなど)が封入される。封入口103aは、前記クッションガスの封入後、プラグ105又はバルブで密閉される。
【0003】
この種のアキュムレータは、圧力ラインから導圧ポート102aを介して導圧室100Aに導入される流体の圧力(ライン圧)と、ガス室100Bに封入されたクッションガスの圧力及びベローズ104の弾性力の和が互いに平衡状態になるように、ベローズ104が伸縮変位する。すなわちライン圧が上昇した時には、ベローズ104がガス室100Bを圧縮させる方向に変位することによって上昇圧力を貯蔵し、ライン圧が降下した時には、相対的に高圧になるガス室100Bの内圧及びベローズ104自体の弾性によって、ベローズ104が導圧室100A側へ向けて復帰動作し、前記貯蔵圧力を圧力ラインへ放出するものである。このため、例えばポンプ等により発生した流体の脈圧を吸収して流れを平滑にする手段や、圧力の蓄積による補助エネルギ源、あるいは流体の熱膨張及び収縮による圧力変化を吸収してシステム内の圧力補償を行う手段としてなど、種々の用途に使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術によるアキュムレータは、その製造においては、まずベローズ104の固定端を第二のエンドカバー103の内側端面の外周部に溶接WDcしてから、筒状部材101の軸方向両端に、前記第一のエンドカバー102の外周部及び第二のエンドカバー103の外周部を溶接WDa,WDbすることによって組み立てられる。しかしながらこの場合は、3回の溶接工程WDa〜WDcを必要とするために製造コストが高くなるばかりでなく、先に溶接WDcされたベローズ104と第二のエンドカバー103との接合部が、筒状部材101と第二のエンドカバー103とを溶接WDbする時の熱によって溶融したり、劣化して溶接強度が低下するといったおそれのあることが指摘されている。
【0005】
本発明は、上記のような事情のもとになされたもので、その技術的課題とするところは、外殻とベローズとの接合部の信頼性を向上させると共に、製造時の工程数を削減してコストの低下を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。
すなわち本発明に係るアキュムレータは、ベローズの軸方向一端を接合した金属円盤における前記接合部の外周側の部分を前記ベローズの外周を包囲するように円筒状に成形した有底筒状のシェルと、このシェルの開口縁部の内周を密閉するように設けられ導圧ポートが開設されたエンドカバーとを備え、前記ベローズが、前記シェルの内室を前記導圧ポートを介して圧力ラインに連通される導圧室と密閉状のガス室とに画成してなるものである。
【0007】
また上記構成のアキュムレータは、本発明の製造方法によって製造される。
すなわち本発明に係るアキュムレータの製造方法は、金属円盤にベローズの軸方向一端を同心的に接合し、前記金属円盤における前記ベローズとの接合部の外周側部分を前記ベローズの外周を包囲するように成形して有底筒状のシェルとし、導圧ポートが開設されたエンドカバーを前記シェルの開口縁部に接合するものである。なお、シェルの成形には、例えば前記金属板のプレスあるいは冷間鍛造等、深絞りによる成形方法が好適に採用され、前記金属板とベローズとの接合及び前記シェルの開口縁部とエンドカバーとの接合は、典型的には溶接によって行われる。
【0008】
この構成において、外殻であるシェルは先の従来技術における第二のエンドカバー103に相当する底部と、筒状部材101に相当する周壁部とからなる有底筒状を呈するものである。このため、従来に比較して部品数が少なくなるばかりでなく、シェルにベローズ及びエンドカバーを取り付けるための溶接工程も削減される。またこの場合、ベローズはシェルの底部に接合されるのに対し、エンドカバーは前記底部とは反対側の端部であるシェルの開口縁部に接合されるため、例えばこの接合が溶接によって行われる場合、前記エンドカバーをシェルの開口縁部に溶接する時の熱が前記シェルの底部とベローズとの溶接部に悪影響を及ぼすのを有効に防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るアキュムレータの好ましい一実施形態を示すもので、参照符号1はシェル、参照符号2はこのシェル1の開口縁部13を塞ぐように溶接WD2により一体的に取り付けられ導圧ポート21が軸方向に開設されたエンドカバー、参照符号3は前記シェル1の内室を前記導圧ポート21と連通した導圧室1Aと密閉状のガス室1Bとに画成する金属製のベローズである。
【0010】
シェル1は、所要の肉厚を有する鋼板(例えばS25CあるいはSPH400等)で有底円筒状に成形されたものであって、すなわち底部11と、その外周から延在されてベローズ3の外周を隙間Gを介して包囲するように円筒状に形成された周壁部12と、この周壁部12における前記底部11と反対側の端部に形成されたテーパ状の開口縁部13とからなり、前記底部11にはガス封入口11aが開設されている。ベローズ3の内周のガス室1Bには、前記ガス封入口11aからクッションガス(例えば空気あるいは窒素ガス、不活性ガスなど)が封入され、また、このガス封入口11aはガスプラグ4によって密閉されている。
【0011】
エンドカバー2は、図示されていない圧力ラインの配管に接続するための継手部22と、その内端部から外周側へ展開したフランジ23を有し、導圧ポート21は、前記継手部22及びフランジ23の内周を軸方向に貫通して開設されている。シェル1の開口縁部13は、前記フランジ23の外周縁と全周が嵌合した状態で溶接WD2されている。また、前記フランジ23の内側面には、前記導圧ポート21の開口部の外周に位置してゴム等の弾性体からなるシール部材5が取り付けられている。
【0012】
ベローズ3は、円周方向に連続した大径の山部31と小径の谷部32が反復形成された有底の蛇腹形状を呈するもので、軸方向に伸縮変位可能であり、エンドカバー2と反対側を向いた開放形状の固定縁部33の全周が、シェル1の底部12の内側面に溶接WD1されている。ベローズ3の外周には、その自由端壁部34寄りに位置して制振リング6が配置されており、この制振リング6は、ベローズ3の外周空間への圧力導入を許容する適当な隙間を介して、外周面が前記シェル1の周壁部12の内周面と近接対向されると共に、内周部がベローズ3の互いに隣接した山部31a,31b間に保持されている。
【0013】
上記構成のアキュムレータは、図2及び図3に示すような工程によって製造することができる。
【0014】
すなわちまず図2に示すように、例えばS25CあるいはSPH400等の鋼板を円形に切断することによって金属円盤10を製作し、この金属円盤10にベローズ3の開放端である固定縁部33の全周を同心的に溶接WD1する。なお、ベローズ3としては、円周方向に連続した山部と谷部が反復形成された中子の表面にメッキ処理により所定の膜厚の金属薄膜を析出させてから前記中子を溶解除去することにより得られる電着ベローズや、薄肉の金属チューブを塑性加工することにより成形した成形ベローズや、あるいは内周孔を有する多数の薄肉金属円盤を軸方向に隣接配置してその内周縁と内周縁及び外周縁と外周縁を交互に溶接した溶接ベローズ等が採用可能である。
【0015】
次に、溶接WD1によってベローズ3が一体的に取り付けられた金属円盤10は、前記溶接WD1部の外周側の部分を、例えばプレスあるいは冷間鍛造等の方法によって、図3に示すように前記ベローズ3の外周側を包囲するように円筒状に深絞りし、これによって底部11、周壁部12及び開口縁部13からなる有底円筒状のシェル1を成形する。すなわちこの成形は、例えばベローズ3の外周に円筒状型部材7を配置し、この円筒状型部材7を金属円盤10と共に回転させながら、金属円盤10をローラ等によって前記円筒状型部材7の外周面に連続的に押し付けるようにして成形する絞りスピニングや、前記円筒状型部材7の外周と対応する雌型を用いたプレス等によって行われる。
【0016】
シェル1の成形後は、その開口縁部13の内周に図1に示すようにエンドカバー2のフランジ23を嵌合し、その嵌合部の全周を溶接WD2により密封的に接合する。このとき、ベローズ3の固定縁部33とシェル1の底部11との溶接WD1による接合部は、シェル1の開口縁部13とエンドカバー2の溶接WD2部とは軸方向反対側にあるため、この溶接WD2の熱によって前記溶接WD1による接合部が溶融したり、劣化して溶接強度が低下するといった不具合を生じることがない。
【0017】
なお、シェル1とエンドカバー2の接合に際しては、予めベローズ3の外周に制振リング6を装着すると共に、エンドカバー2の内側面にシール部材5を装着しておく。前記制御リング6は、例えば円周方向一部が切断された形状とすることによってベローズ3に嵌め込むことができる。
【0018】
また、先の図4に示す従来構造のアキュムレータの製造においては3回の溶接工程(WDa〜WDc)が必要であったのに対し、この実施形態によれば、溶接工程は2回(WD1,WD2)になる。しかも従来における第二のエンドカバー103に相当する部材が存在しないため、部品数、ひいては部品の製作工程も削減される。
【0019】
上記構成を備えるアキュムレータは、継手部22を圧力ラインの配管から分岐した状態に接続して用いられる。この状態において、前記圧力ラインから導圧ポート21を介して導圧室1Aに導入されるライン圧が上昇すると、ベローズ3がガス室1B内のクッションガスを圧縮しながらエンドカバー2から離れるように収縮し、これによって上昇するクッションガスの圧力とベローズ3自体の弾性による復帰力が前記ライン圧と拮抗する位置まで変位する。また、この状態からライン圧が降下した時には、ガス室1Bのクッションガスの圧力とベローズ3自体の弾性による復帰力によってベローズ3が伸長動作する。そしてこのような動作によって、例えばポンプの駆動に伴って圧力ラインに与えられるライン圧のリップルを除去して平滑化し、あるいはシステム内の温度変化によるライン圧の変動を吸収するものである。
【0020】
上述のような動作においては、ライン圧の低下に伴って伸長するベローズ3が伸長限度長さに達すると、その自由端壁部34がシール部材5に密接することによって導圧室1Aと圧力ライン側との間が遮断されるので、その後更にライン圧が低下してもベローズ3の山部31及び谷部32に過大な負荷が作用しない。また、前記シール部材5は、エンドカバー2と前記自由端壁部34との衝突を防止する緩衝機能も発揮するものである。更に、ベローズ3の伸縮動作に伴う偏心動作は、制振リング6によって規制されるので、ベローズ3の各山部31がシェル1の内周面との干渉によって損傷するのを有効に防止することができる。
【0021】
この実施形態のアキュムレータによれば、シェル1が金属板の成形品であること、及び図4に示す従来技術における第二のエンドカバー103が削減されていることによって、軽量化が図られる。この種のベローズ式アキュムレータは、ベローズ3が収縮限度まで収縮してもその内部容積は零にはならず、すなわちアキュムレータとして必要な蓄圧容量のほかに余分な体積を有するため、シェル1を金属板からなる構成とすることによって有効に軽量化できる。
【0022】
なお、本発明は図示の一実施形態に限定されるものではない。例えばライン圧の上昇によるベローズ3の過度の収縮を規制するために、ベローズ3の内周のガス室1B内には、クッションガスのほか、非圧縮性の液体等を適量(ベローズ3の収縮限度の体積に相当する量)封入した構成とすることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によると、シェルを金属板の成形品とし、部品数を削減したことによって、製造時の接合工程も削減されるため、製造コストを低下させて安価なアキュムレータを提供することができる。また、エンドカバーをシェルの開口縁部に溶接等によって接合する時の熱が、前記シェルの底部とベローズとの接合部に溶融あるいは劣化といった悪影響及ぼすおそれがなく、したがってアキュムレータの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアキュムレータの好ましい一実施形態をベローズの軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】上記アキュムレータの製造において、金属円盤にベローズの軸方向一端を同心的に溶接した状態を示す斜視図である。
【図3】上記アキュムレータの製造において、ベローズが溶接された金属円盤から有底筒状のシェルを成形する工程を示す説明図である。
【図4】アキュムレータの典型的な従来例をベローズの軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
1 シェル
1A 導圧室
1B ガス室
10 金属円盤
11 底部
11a ガス封入口
12 周壁部
13 開口縁部
2 エンドカバー
21 導圧ポート
22 継手部
23 フランジ
3 ベローズ
31,31a,31b 山部
32 谷部
33 固定縁部
4 ガスプラグ
5 シール部材
6 制振リング
7 円筒状型部材
WD1,WD2 溶接
Claims (2)
- ベローズ(3)の軸方向一端を接合した金属円盤(10)における前記接合部の外周側の部分を前記ベローズ(3)の外周を包囲するように円筒状に成形した有底筒状のシェル(1)と、
このシェル(1)の開口縁部(13)の内周を密閉するように設けられ導圧ポート(21)が開設されたエンドカバー(2)とを備え、
前記ベローズ(3)が、前記シェル(1)の内室を前記導圧ポート(21)を介して圧力ラインに連通される導圧室(1A)と密閉状のガス室(1B)とに画成してなることを特徴とするアキュムレータ。 - 金属円盤(10)にベローズ(3)の軸方向一端を同心的に接合する工程と、
前記金属円盤(10)における前記接合部の外周側の部分を前記ベローズ(3)の外周を包囲するように円筒状に成形して有底筒状のシェル(1)とする工程と、
導圧ポート(21)が開設されたエンドカバー(2)を前記シェル(1)の開口縁部(13)の内周に接合する工程と、
からなることを特徴とするアキュムレータの製造方法。
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