JP3693935B2 - 電子源の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低開始電圧、低駆動電圧を有する電子源及びその製造方法に関するものであり、特に、超低消費電力、超高輝度な表示装置であるフィールドエミッションディスプレイ(FED)に好適に用いられる電子源及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管のように大きな熱エネルギーを与えて熱電子放出を起こすのではなく、強電界を印加することにより、電界電子放出する電子源に関する研究がデバイス面、材料面の両面で盛んに行われている。
【0003】
従来の電子源としては、C.A.Spindtら(USP3665241号)が開示しているようなピラミッド状のメタル電子源が知られており、このようなメタル電子源は高融点金属材料、例えば、モリブデン等が用いられている。しかし、このような高融点金属材料を用いたスピント型メタル電子源は、動作真空度が10-9Torrと高く、イオン衝撃耐性が弱いため、信頼性が低いという問題があった。
【0004】
そこで、近年、カーボンナノチューブ(CNT)が、炭素アーク放電によるフラーレン合成の副生成物として、飯島ら(S.Iijima、Nature、354、56(1991))により発見された。CNTは円筒状に巻いたグラファイト層の入れ子状構造を有している。CNTの電界電子放出実験は、W.A.de Heerら(W.A.de Heer、Science、270、1179(1995))により行われ、10mA/cm2 (電圧:25V/μm)のエミッション電流が観測されている。
【0005】
D.N.Davydovら(PCT公報番号:WO99/25652)は、図11に示すような電子源構造を報告している。これによると、アルミニウム基板を陽極酸化し、コバルト、鉄、ニッケル等の金属触媒を陽極酸化膜の細孔に電着し、気相炭素化(CVD)をすることでCNTを形成して電子源20を作成している。D.N.Davydovらは更に、CVDにより過剰成長させたサンプルと陽極酸化膜を一部エッチング除去してCNTを露出させたサンプルでエミッションを計測しており、エミッション開始電圧はそれぞれ3〜4V/μm、30〜40V/μmであったと報告している(D.N.Davydov、J.Appl.Phys.、86、3983(1999))。
【0006】
また、特開2000−57934号公報では、電界印加型プラズマCVD法によって基板に直接CNTまたはアモルファスカーボンを堆積させた冷陰極が開示されている。該公報では、基板に触媒となるニッケル、鉄、コバルト及びそれらの合金の超微粒子を蒸着させた後、電界印加型プラズマCVD法によってCNTを成長させている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のCNT電子源は、デバイス駆動電圧がスピント型メタル電子源より低減されたものの、駆動ドライバの耐圧や低消費電力の観点からは、より一層高性能の電子源が要求される。例えば、W.A.de HeerらのCNT電子源は、アーク放電で形成されたCNTであり、パターニングと配向制御を共に行うことが難しかった為、電子放出を得る為には10V/μm以上もの電圧が必要であった。
【0008】
また特開2000−57934号公報においては、配向したCNTを形成してエミッション開始電圧を1.0〜2.2V/μmまで低減させる事ができたが、CNTを形成する為の工程であるプラズマCVD法において、ディスプレイを作成する際の基板選択において大きな問題となり得る800〜900℃もの高温が必要であると同時に、触媒超微粒子を真空中にて蒸着させる事による工程の複雑化が課題となっていた。
【0009】
更に、図11に示すD.N.DavydovらのCNT電子源20においても、触媒配設プロセス(電着)、電界放出特性向上のためのCNT先端開放プロセス(炉アニール)が必要であり、製造プロセスが複雑化するという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電子源のエミッション開始電圧、及びデバイス駆動電圧を低減可能な構造を提供すると共に、電子源の製造工程を簡略化することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
願発明による電子源は、微小繊維の集合により構成されるアモルファスカーボンからなる電子源であって、アモルファスカーボンからなる上記微小繊維のそれぞれが、一方の端部側において平面上に個々に直立した構造を有しており、他方の端部側では、上記微小繊維が集合して束になって電子放出サイトを形成していることを特徴としている。該構成により、低駆動電圧で、大電流をエミッションする電子源を実現する事が可能となる。また、エミッション開始電圧の低減を図ることができる。
【0012】
また、上記電子源は、微小繊維の直径が、10nm以上、かつ、50nm以下であることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、電子源を構成する微小繊維の直径が、10nm以上であることにより、耐久性に問題が生じることはなく、また、50nm以下であることにより、電界集中性能の低下を防止することができ、電子放出の減少を防止することができる。
【0014】
上記電子源は、アモルファスカーボンが、微小繊維が集合して束になっている上部領域と、微小繊維がそれぞれ垂直方向に配向制御されている下部領域とを有することが好ましい。
【0015】
一般に、例えばカーボンナノチューブのような細長い物体を平面上に直立させた場合、先端への電界集中が強く起こるため、電子放出サイトとして有用である。しかしながら、電子源の密度が高い場合、電子放出サイト間への電界の侵入が起こりにくくなるため、電子放出サイトへの形状効果が極端に薄くなる。即ち、電界集中しにくくなる。
【0016】
しかしながら、上記の構成によれば、微小繊維が束ねられているので、電子放出サイト間に十分な空間を有することとなるため、電子放出サイトの密度を適度に下げることができ、電界集中しやすい構造とすることができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明にかかる電子源の製造方法は、少なくとも金属を陽極酸化して直線状の細孔を有する鋳型を形成する工程と、気相炭素化法によって前記鋳型の中に、微小繊維の集合により構成されるアモルファスカーボンからなる電子源材料を充填する工程と、鋳型を除去することによって、アモルファスカーボンからなる微小繊維を露出させつつ、この露出させた微小繊維の先端側を相互に寄り集めて束状にして電子放出サイトを形成する工程とを具備し、上記電子源材料を充填する工程と上記鋳型の少なくとも一部を除去する工程との間に、上記鋳型の表面の一部に、被覆膜を形成する工程をさらに含むことを特徴としている。これらによって低駆動電圧で、大電流をエミッションする電子源を実現する。
さらに、上記の方法によれば、電子源材料を充填した後、鋳型の少なくとも一部を除去する工程の前に、予め例えば金属や樹脂等からなる被覆膜を点状や線状等に付着させることができる。従って、この被覆膜に覆われた部分の鋳型が除去されにくくなり、その部分を中心に微小繊維を束ねることができる。これにより、電界放出には影響しない鋳型の部分を残したまま、アモルファスカーボンの表面を露出させることができる。
また、電子源は、鋳型を含むことにより、平面性を保つことができる。従って、例えば、電子源の基板への接着を容易にすることができる。
【0018】
さらに、前記気相炭素化法によって鋳型の中に、微小繊維の集合により構成されるアモルファスカーボンからなる電子源材料を充填する工程が、原料ガスの分解温度以上、充填した炭素がグラファイト化してくる温度、即ちグラファイト形成温度以下により行われることを特徴とする。
【0019】
このような温度設定とすることにより、鋳型の中に電子源材料を充填するという製造過程におけるプロセスダメージを低減し、エネルギー消費を軽減すると共に、基板その他の原料における選択可能性を高める事が可能となる。またこのため、例えば、基板をガラス基板とすることができるが、この場合、デバイスの低コスト化を図ることができる。
【0020】
また、本発明においては、鋳型の中に電子源材料を充填する工程において触媒金属を用いない工程であることにより、触媒金属配設工程等を無くし、より簡便な電子源の製造方法を実現する事が可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
<第1の実施形態>
以下に、図面を用いて、本願の好適な実施形態を説明する。図1(a)は、本実施形態の電子源を用いたデバイスの斜視図であり、円内を拡大して電子源の断面を示したものが図1(b)である。ここで説明する2極管構造デバイスは、例えば、フィールドエミッションディスプレイ(FED)に利用可能である。
【0025】
図1(a)に示すデバイスは、支持基板1上に、カソード電極2、接着層3、電子源4、ゲート絶縁層5、ゲート電極6および鋳型8を備えている。
【0026】
支持基板1は、例えば、図示しないアノード電極基板と対向配置される。真空中でカソード電極2と対向するように配されたアノード電極との間に電圧を印加し、電界を発生させた場合、エミッタ電極としての電子源4は、その先端から電子放出を開始する。
【0027】
まず、図1(a)のように、ガラス、セラミック等で形成される支持基板1上にカソード電極2を形成する。カソード電極2は、従来から用いられているカソード電極材料を用いることができる。カソード電極2上には接着層3が形成され、接着層3上には電子源4が設けられる。従来の冷陰極に用いられている抵抗層をカソード電極2上に挿入しても構わない。
【0028】
また、本実施形態の場合、接着層3に所望の抵抗値を持たせ、抵抗層としても構わない。この場合、電子源4とカソード電極2とが抵抗層を介して接続されていることになる。これにより、エミッタ電極である電子源4からの放出電流にともなう抵抗層での電圧降下によって電子放出特性が緩和され、大面積のデバイスを形成する場合にも電子放出の均一化、安定化を図ることができる。
【0029】
電子源4は、個々の電子放出領域(FEDの場合は、画素)の周囲をゲート絶縁層5で囲い、更にゲート絶縁層5上にはゲート電極6を設ける。ゲート電極6は、カソード電極2と直交するように設けられる。これは、電子放出領域(画素)をXYアドレスにするための構造であり、ゲート絶縁層5は、ゲート電極6とカソード電極2とを完全に絶縁すると同時に、ゲート電極6を電界放出の制御が可能な距離に配設する膜厚が必要である。
【0030】
また、本実施形態の電子源4は、鋳型8の設計によって自由自在に形状変更可能である。このような鋳型8の材料としては、アルミニウムの陽極酸化膜が好ましい。陽極酸化膜には、数nm〜数十nm程度の直線状の細孔が両面を貫通するように存在する。細孔の密度は1010個/cm2 程度である。
【0031】
図2、図3には、本実施形態の電子源4を上方向から観測したSEM像、斜め方向から観測したSEM像をそれぞれ示す。図2から分かるように、アモルファスカーボンファイバー(図中では、白く見える部分。以下、a−CNFと略す)が直径数μm程度の領域から中心部に集合し、a−CNFが束になって、バンドル構造(以下、a−CNFBと略す)を形成していることが観測できた。
【0032】
通常、陽極酸化膜を鋳型8として用いて電子源4を形成する場合、鋳型8における細孔の密度は電子源4の密度と等しくなる。ここで、電子源4の密度が高すぎる場合、電子放出サイト間への電界の侵入が起こりにくくなり、相互に電界集中を妨げることがシミュレーションより明らかになっている。
【0033】
しかしながら、図1に示す電子源4では、直径が約30nm程度のa−CNFが高密度に束なっている。また、これにより集合的に形成されたa−CNFBの直径は約2μmとなっている。このように、電子源4は、高密度に形成された微小繊維が束ねられているので、電子放出サイト間に十分な空間があり、電子放出サイトの密度を適度に下げることができ、電界集中しやすい構造とすることができる。
【0034】
また、図3から分かるように、a−CNFBの上部領域はa−CNFが束なり壁のような形状を形成しているが、下部領域はa−CNFが垂直方向に配向制御されていることが観測できた。壁のような形状を有するa−CNFBの上部領域の高さは約5μm程度、垂直方向に配向制御されたa−CNFBの下部領域の高さは約10μm程度であった。
【0035】
なお、a−CNFBを構成している繊維(a−CNF)の直径は、鋳型8となる陽極酸化膜の細孔径によって制御することができる。ここで、例えば繊維の直径が10nmより小さい場合は、細すぎるため電子源4の耐久性に問題が生じ、また繊維の直径が50nmより大きい場合には、形状による電界集中性能が低下して電子放出が減少する。この事より、a−CNFの直径は10nm〜50nm程度が望ましく、本実施形態では30nmのものを用いた。
【0036】
上記a−CNFBを撮影したTEM画像が図4である。図4は、a−CNFのTEM像を示す。このTEM像は、a−CNFBがほぐれたファイバーの任意の領域を観測したものであり、a−CNFの結晶状態を示すものである。また、比較のために鋳型を用いて無触媒気相炭素化法で作製されたCNT(カーボンナノチューブ)のTEM画像を図5に示す。図5ではCNTの壁の部分には短く細い筋が波打ちながらチューブ軸と平行に積層しているのが観察できる。この筋は炭素六角網面1層に対応しており、このCNTは微細な炭素六角網面が円筒状に積層してできたものであると考えられている。しかしながら、図4のa−CNFBにはこのような筋を観察することができず、結晶構造の未発達なアモルファスカーボンによって一様に形成されている事が判る。
【0037】
また、本実施形態の電子源4のエミッション特性を実験的に確認した。図6は本実施形態の電子源4のI−V特性図を示す。これによると、本実施形態のa−CNFB電子源4は0.8V/μm程度からエミッションを開始しており、従来のSpint型メタル電子源の約1/100にまでエミッション開始電圧が著しく低減していることがわかる。また、触媒超微粒子を用いる事で低減されてきた従来のCNT電子源と比較しても、より一層の低減が実現されている。
【0038】
このように、図1に示す構成とすることにより、低駆動電圧で大電流を放出(エミッション)する電子源4を実現することができる。
【0039】
更に、上述の実施形態の電子源4を用い、図示しない対向するアノード電極に蛍光体を設け、蛍光体を発光させたところ、10000cd/m2 以上の発光輝度が得られた。また、5インチ対角、320×240(QVGA)のパネルを試作し、ビデオ信号を入力したところ、画像表示が可能であった。これにより、電子源4は、超高輝度な表示装置であるフィールドエミッションディスプレイ(FED)に好適に用いることができる。
【0040】
次に、図7及び図8を用い、本実施形態のa−CNFBの製造方法を説明する。図7及び図8は本実施形態での2極管構造におけるCNT電子源4の製造方法を示す工程断面図である。尚、本実施形態においては、陽極酸化膜の膜厚や細孔の直径などの制御が容易である為、ポーラスアルミナをCNT形成の鋳型として用いているが、ポーラスタンタルオキサイド、ポーラスシリコン等を用いても構わない。以下、鋳型8に陽極酸化膜を用いているため、鋳型として陽極酸化膜8と称する。
【0041】
図7(a)は、アルミニウム基板7を陽極酸化し、陽極酸化膜8、直線状の細孔9を形成した工程断面図を示すものである。アルミニウム基板7の陽極酸化は、硫酸溶液中で20Vの電圧を印加し、2時間行った。この時、硫酸溶液の温度が高いと、後の気相炭素化工程において、膜全体の彎曲が起こる。また、温度が低いと、膜の成長が遅くなるので、0℃で行う事が望ましい。
【0042】
図7(b)は、アルミニウム基板7から陽極酸化膜8のみを剥離し、気相炭素化し、細孔9中にa−CNFを形成した工程断面図を示すものである。図7(a)で表面に陽極酸化膜8が形成したアルミニウム基板7に、硫酸溶液中で10分間以上逆電圧を印加すると、陽極酸化膜8の剥離が可能になる。この操作においては長時間逆電圧をかける方が剥離は容易になるが、同時に陽極酸化膜8の溶解も進行して膜厚は次第に薄くなる。これらを考慮すると、逆電圧は30分間印加することが望ましい。
【0043】
このように形成された陽極酸化膜8は、直径約30nmの細孔9を有し、膜厚が約30μmであった。このような細孔9を有する陽極酸化膜8を気相炭素化し、細孔9にa−CNFを充填する。a−CNFは、600℃に加熱した石英管に1.2%のプロピレンを流通させて得られる。
【0044】
本願発明においては、気相成長温度の設定にあたり、原料ガスの分解温度以上、かつ、充填した炭素がグラファイト化してくる温度(グラファイト形成温度)以下で温度設定を行うことが重要である。本実施形態においては、気相炭素化の原料ガスはプロピレンを用いている。プロピレンの場合、本来の熱分解温度は750℃付近であるが、本実施の形態では、鋳型としての陽極酸化膜8に、アルミニウム陽極酸化膜を用いている。このため、鋳型表面では、原料ガスであるプロピレンが500℃以上で分解を開始する。また、600℃以下ではグラファイト化しないことを実験的に検証した。従って、本実施形態では、500〜600℃で気相炭素化することが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、a−CNFは、コバルト、ニッケル、鉄等の金属触媒を用いず成長させることが好ましい。即ち、本実施形態では、陽極酸化膜を鋳型として、気相炭素化することにより、a−CNFを形成した。原料ガス種によっては、金属触媒を用いると、原料ガスの分解温度付近にまでグラファイト形成温度が低下し、気相成長温度の領域が著しく小さくなることがあるため、炭素材料に対して触媒効果のある金属材料は使用しないようにすることが好ましい。
【0046】
上記条件下においては、原料ガスを3時間以上流通させる事によって電子源4であるa−CNFが得られるが、エミッション特性向上の為には6時間以上流通させる事が望ましい。なお、この時、同時に、細孔9内だけでなく、陽極酸化膜8の表面にアモルファスカーボン(以下、表面カーボンと称する)10が堆積する。
【0047】
図7(c)は、陽極酸化膜8の表面に堆積した表面カーボン10を除去した工程断面図を示す。表面カーボン10の除去は、RIE(反応性イオンエッチング)を用い、酸素プラズマエッチングで行った。この時、電子源4となるa−CNFと表面カーボン10との選択比の点でウェットエッチングは好ましくない。また、アルゴン等の不活性ガスや三フッ化メタン等のフッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでは、酸素プラズマエッチングに対して効果が小さかった。
【0048】
図8(a)は、図7(c)で得られた陽極酸化膜8をエッチングしてa−CNFを表面に露出させた状態における工程断面図であり、前記図2はこの時を上から観察した画像である。気相炭素化によって細孔9毎に個別に充填されて形成したa−CNFは、エッチングが進むにつれて相互に寄り集まって束状になり、a−CNFBとなる。また、プラズマエッチング後の表面状態によって、エッチングされやすい部分から先に陽極酸化膜8のエッチングが進行し、エッチングされにくい部分にa−CNFBが形成する為、a−CNFBは図2のような円状構造(図2で説明の直径数μm程度の領域)になる。
【0049】
このように、電子源4として高密度に形成された微小繊維を束ねているので、電子放出サイトの密度が適度に下げられ、電界集中しやすい構造になっている。なお、密度を制御するため、表面カーボン10を剥離した陽極酸化膜8の表面に、エッチングをする前に予め金属や樹脂等(被覆膜)を点状、あるいは線状等に付着させておいてもかまわない。この場合、金属や樹脂等の被覆膜によって覆われた部分の陽極酸化膜8がエッチングされにくくなり、その部分を中心に微小繊維が束ねられることになる。
【0050】
この時のエッチング条件として、本実施形態では、1%の水酸化ナトリウム水溶液によって室温(20℃)で15分間処理した。陽極酸化膜8は高温にさらされた場合、一部相転移してエッチングが困難になる事が判っているが、本実施形態では600℃で気相炭素化をしている為、相転移は生じておらず、その結果、非常に薄い酸性またはアルカリ性溶液にて容易にエッチングする事ができた。なお、酸性溶液としては、フッ酸、リン酸等が使用可能であり、アルカリ性溶液としても、本実施形態で用いた水酸化ナトリウム水溶液以外の溶液も使用することができる。
【0051】
このような条件下で陽極酸化膜8のエッチングを行うことにより、陽極酸化膜8の電界放出には影響しない部分を残したままa−CNFの表面を露出させる事ができる。また、電子源4は、鋳型(アルミナ(アルミニウム)陽極酸化膜)8を含んで電子源全体として平面性を保っている為、支持基板1への接着が容易に実施できる。なお、これより強い条件で処理する事によって、平面形状を失っても、エミッション性能自体は影響を受けない。
【0052】
図8(b)には、a−CNFB電子源4を、接着層3を介して支持基板1上のカソード電極2に固着した工程断面図を示す。接着層3としては、銀ペースト、カーボンペースト等の導電性ペーストを用いる事が好ましい。また、低融点金属材料を接着層3として用いても構わない。
【0053】
以上のように、本実施形態の構成では、電子源4を、600℃以下の低温で製造することができる。これにより、電子源4を安価なガラス基板上に形成することができる。従って、電子源4を備えたデバイスの低コスト化を図ることができる。
【0054】
また、電子源4を低温で製造することができることにより、熱によるデバイスダメージを大幅に低減することができる。従って、鋳型8の中に電子源材料を充填するという製造過程においてプロセスダメージを低減し、エネルギー消費を軽減すると共に、上記のように基板やその他の原料における選択可能性を高める事ができる。
【0055】
また、上記電子源4は、製造工程において、触媒を用いることがない。従って触媒金属配設工程等を行う必要がない。これにより、製造工程の複雑化を招来することなく、簡便に製造することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
次に、図9及び図10を用い、第1の実施形態とは異なる製造方法により製造された電子源の第2の実施形態を示す。本実施形態においては、アルミニウム膜をカソード電極上に予め形成し、これを陽極酸化して鋳型を形成するものである。また、本実施形態の電子源は3極管構造を有するが、第1の実施形態で製造した電子源も、本実施形態と同様に、3極管構造としても構わない。
【0057】
図9(a)は、接着層3/カソード電極2/支持基板1構造の接着層3上のアルミニウム膜を陽極酸化した状態の断面図である。接着層3上のアルミニウム膜は、アルミ箔を導電性ペースト、または、低融点金属で貼り合わせて形成する。また、スパッタ法、蒸着法等でアルミニウム堆積を形成しても構わない。この場合、接着層3は形成しなくてもよいが、接着層3を形成して抵抗層として用いても構わない。形成したアルミニウム膜を陽極酸化すると、第1の実施形態と同様に、陽極酸化膜8(陽極酸化膜されたアルミニウム膜)に細孔9が形成する。
【0058】
図9(b)は、陽極酸化膜8の細孔9に電子源4となるa−CNFを形成した工程断面図である。a−CNFの形成と同時に、陽極酸化膜8表面にはアモルファスカーボン(表面カーボン)10が堆積する。a−CNFの形成には、気相炭素化法を用いた。陽極酸化膜8の細孔9に対する気相炭素化の条件は、図7(b)と同様である。
【0059】
図9(c)は、陽極酸化膜8の表面カーボン10を除去した工程断面図を示す。第1の実施形態の図7(c)と同様に、RIEを用いた酸素プラズマエッチングで、表面カーボン10を除去する。
【0060】
図10(a)は、陽極酸化膜8を部分的に除去し、a−CNFを表面に露出させてa−CNFBを形成させた状態における工程断面図である。図10(b)は、ゲート絶縁層5、ゲート電極6を形成した工程断面図である。このような3極管構造の電子源の製造方法は、第1の実施形態で形成した電子源にも適用可能である。ゲート絶縁層5は、スクリーン印刷法で、フリットガラス系ペーストを多層印刷して形成する。膜厚は、100μm程度で、この膜厚はデバイス設計により決定すべきである。
【0061】
次に、ゲート電極6をゲート絶縁層5上に形成する。この時、原料ガスの分解温度を低下させるアルミニウムの陽極酸化膜8には炭素が選択的に堆積するが、ゲート絶縁層5の下地になる部分には炭素が堆積しない温度を選択しているため、下地の炭素を剥離するなどの工程は不要になっている。また、ゲート電極6は、ゲート絶縁層5の形成と同様に、スクリーン印刷法で一般的に用いられている金属配線材料を印刷して形成される。
【0062】
このように、上記電子源4の製造方法は、少なくとも金属を陽極酸化して細孔を有する鋳型を形成する工程と、気相炭素化法によって、鋳型の中に、アモルファスカーボンからなる電子源材料を充填する工程と、鋳型を除去する工程とを具備する。
【0063】
これにより、微小繊維が集合して束になっている上部領域と、微小繊維がそれぞれ垂直方向に配向制御されている下部領域とを有するバンドル構造を備えたアモルファスカーボンからなる電子源4を製造することができる。
【0064】
従って、電子源4において、電子放出サイトの密度を適度に下げることができ、電界集中しやすい構造とすることができる。
去する工程とを具備することを特徴とし、これらによって低駆動電圧で、大電流をエミッションする電子源を実現する。
【0065】
以上のようにして、本願の電子源を製造すると、低電圧駆動可能であり大電流をエミッションすることができる電子源が提供できると共に、高輝度なフィールドエミッションディスプレイ(FED)が実現可能となる。
【0066】
【発明の効果】
本願発明による電子源は、微小繊維の集合によって構成されたアモルファスカーボンを用いる事により、従来の高融点金属を用いた電子源のエミッション開始電圧を約1/100程度に低減でき、また、従来のカーボンナノチューブを用いた電子源のエミッション開始電圧と比較しても更に低減することが可能となった。これにより、超低消費電力で、超高輝度なフィールドエミッションディスプレイを実現することを可能とした。
【0067】
また、本発明の電子源は、微小繊維の直径が、10nm以上、かつ、50nm以下である構成である。
【0068】
これにより、耐久性に問題が生じることはなく、また、電界集中性能の低下を防止することができ、電子放出の減少を防止することができるといった効果を奏する。
【0069】
さらに本発明の電子源は、アモルファスカーボンが、微小繊維が集合して束になっている上部領域と、微小繊維がそれぞれ垂直方向に配向制御されている下部領域とを有する構成である。
【0070】
これにより、微小繊維が束ねられているので、電子放出サイトの密度を適度に下げることができ、電界集中しやすい構造とすることができるといった効果を奏する。
【0071】
また、本発明による電子源の製造方法では、半導体装置を製造するような微細加工工程が不要であり、更に、気相炭素化工程を無触媒下において、原料ガスの分解温度以上、充填した炭素がグラファイト化してくる温度(グラファイト形成温度)以下で実施する事により、熱によるデバイスダメージを大幅に低減することが可能となる電子源の製造方法を実現すると共に、電子源以外の材料の選択性が高いフィールドエミッションディスプレイを製造することを可能とした。
【0072】
さらに、本発明の電子源の製造方法は、電子源材料を充填する工程と鋳型の少なくとも一部を除去する工程との間に、鋳型の表面の一部に、被覆膜を形成する工程を含む構成である。
【0073】
これにより、電子源材料を充填した後、鋳型の少なくとも一部を除去する工程の前に、予め例えば金属や樹脂等からなる被覆膜を点状や線状等に付着させることができる。従って、この被覆膜に覆われた部分の鋳型が除去されにくくなり、その部分を中心に微小繊維を束ねることができる。これにより、電界放出には影響しない鋳型の部分を残したまま、アモルファスカーボンの表面を露出させることができる。
【0074】
また、電子源は、鋳型を含むことにより、平面性を保つことができる。従って、例えば、電子源の基板への接着を容易にすることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源を用いた3極管デバイスの斜視図である。
【図2】本発明の電子源の上方向からのSEM写真である。
【図3】本発明の電子源の横方向からのSEM写真である。
【図4】本発明の電子源を構成しているa−CNTのTEM写真である。
【図5】従来の無触媒鋳型気相炭素化法により作成されたCNTのTEM写真である。
【図6】本発明の電子源のI−V特性である。
【図7】第1の実施における2極管構造の電子源の製造工程断面図である。
【図8】第1の実施形態における2極管構造の電子源の製造工程断面図である。
【図9】第2の実施形態における3極管構造の電子源の製造工程断面図である。
【図10】第2の実施における3極管構造の電子源の製造工程断面図である。
【図11】従来のカーボンナノチューブを用いた電子源アレイの斜視図である。
【符号の説明】
1 支持基板
2 カソード電極(配線)
3 接着層(抵抗層)
4 電子源(a−CNFB)
5 ゲート絶縁層
6 ゲート電極(配線)
7 アルミニウム基板
8 鋳型(アルミニウム陽極酸化膜)
9 細孔
10 アモルファスカーボン(表面カーボン)

Claims (3)

  1. 少なくとも、金属を陽極酸化して細孔を有する鋳型を形成する工程と、
    気相炭素化法によって、上記鋳型の中に、アモルファスカーボンからなる電子源材料を充填する工程と、
    上記鋳型の少なくとも一部を除去することによって、アモルファスカーボンからなる微小繊維を露出させつつ、この露出させた微小繊維の先端側を相互に寄り集めて束状にして電子放出サイトを形成する工程とを具備し、
    上記電子源材料を充填する工程と上記鋳型の少なくとも一部を除去する工程との間に、
    上記鋳型の表面の一部に、被覆膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする電子源の製造方法。
  2. 上記気相炭素化法によって、鋳型の中に、アモルファスカーボンからなる電子源材料を充填する工程が、原料ガスの分解温度以上、充填した炭素がグラファイト化するグラファイト形成温度以下で行われることを特徴とする請求項1に記載の電子源の製造方法。
  3. 上記鋳型は、アルミニウムの陽極酸化膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子源の製造方法。
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