JP3686164B2 - スクータ型車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型自動二輪車等の1つのタイプとして普及しているスクータ型自動二輪車等のスクータ型車両に係り、特にシートの下方に設けられるヘルメット収納空間の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型自動二輪車は、車体前部がフロントカバーで覆われ、車体後部のシート下方がリヤカバーで覆われ、運転者の足もとにステップフロアが設けられた構成が一般的である。近年では、シートの下方にヘルメットを収納する大容量の収納空間を有するものが定着してきている。そのヘルメット収納ボックスは、ヘルメットの形状に応じて横断面が略長円形に形成され、車体に組み込まれた状態で、その長径方向が車体の中心線に一致し、車体の横方向への膨出が抑えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のヘルメット収納ボックスの組み込み状態では、車体後部の空間がある程度犠牲になる。このため、燃料タンクやオイルタンク等の他のパーツのレイアウトに苦慮したり、あるいはこのようなタンク類を配設する場合、タンク容量に制限を受けてしまう。また、車体後部にヘルメット収納ボックスとは別の収納空間を形成しにくいので、ヘルメット以外の物品もヘルメットとともにヘルメット収納ボックスに収納することになる。すると、収納する物品の大きさに制約を受けるとともに、濡れたままのヘルメットを収納した場合、他の物品が濡れたり汚れてしまうといった不都合な面もあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、車体後部へのパーツのレイアウト性が向上するとともに、ヘルメット以外の収納空間を増大させることができるスクータ型車両を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1の発明は、開口部の形状が平面視で略長円形であって当該略長円形がその長径方向に対して略左右対称であるヘルメット収納ボックスを、その長径方向が車体の中心線に対し当該平面視で角度を持った状態でシート下方に設けたことを特徴としている。このため、ヘルメット収納ボックスの後方すなわち車体後部の空間が増大し、燃料タンク等の他のパーツをレイアウトできる。
請求項2の発明は、前記ヘルメット収納ボックスの一部を、外観ボディの少なくとも一部として露出させたことを特徴としている。このため、車体カバーの削減が図られる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
A.一実施形態
A−1.車体の構成
図1は、本発明の一実施形態のスクータ型自動二輪車1(スクータ型車両)の全体右側面図、図2は図1のII−II線矢視図である。これら図において右側が前進方向すなわち車体の前方であり、左側が後方である。以降の説明で前後左右あるいは上下といった方向は、車体に基づいて定義されたものとする。
【0007】
図1において符号2はハンドル、3はハンドル2によって操舵される前輪、4は駆動輪である後輪、5は運転者が着座するシート、6は車体フレームである。
車体フレーム6は、図2に示すように、前後に延び、後端が互いに結ばれた左右一対のパイプ製サイドフレーム7と、サイドフレーム7におけるシート5の下方の傾斜部7aの前後の端部においてサイドフレーム7どうしを連結する門型形状の前側および後側のクロスメンバ8、9とを備えている。
【0008】
当該自動二輪車1の車体は、ハンドル2の下方から後部にわたるほとんどの部分が車体カバー10で覆われている。この車体カバー10は、図1および図2に示すように、もっとも下部にあって運転者の足を支持するステップフロア11aを有するボトムカバー11と、このボトムカバー11の前後に連設されたフロントカバー12および左右のリヤサイドカバー13との組み合わせで構成されている。左右のリヤサイドカバー13の後端間には、テールライト14と左右の方向指示器15が装着されている。これらはリヤサイドカバー13に対しなだらかに湾曲して連続しており、これによって車体後端が車体カバー10と一体的になるようデザインされている。
【0009】
また、符号20は動力源であるスイング式パワーユニットである。このパワーユニット20は、左右のリヤサイドカバー13の間の下方に配設され、ピボット21およびリヤクッションユニット22を介して車体フレーム6に揺動自在に懸架されている。この場合、リヤクッションユニット22は左側の1つだけ、つまり片持ち式となっている。
【0010】
パワーユニット20は、前部のエンジン23と、エンジン23に混合気を供給する機器としてのエアクリーナ24およびキャブレータ25と、エンジン23の回転を前記後輪4に伝える伝達機構26と、先端に消音器27aが装着されたエンジン23の排気管27とが一体的に連結された構成となっている。図2に示すように、エンジン23は車体の幅方向中央に配設されている。そして、エンジン23の後方に向けて、伝達機構26が左側、排気管27が右側に取り回されている。エアクリーナ24は伝達機構26の上方に、また、キャブレータ25はエアクリーナ24とエンジン23の間に、それぞれ配設されている。側方に配設された伝達機構26、エアクリーナ24、排気管27の消音器27aおよびリヤクッションユニット22は、上から見た場合、すなわち図2に示すように、いずれもリヤサイドカバー13の内側に配設されている。
【0011】
さて、図1に示すように、前記シート5の下方には、本発明に係るヘルメット収納ボックス30が装備されている。このヘルメット収納ボックス30は、顎の防護部を有するいわゆるフルフェース型ヘルメットHを、その装着開口を上にした上下逆さまで、かつ前面側を後側に向けた状態で上部開口30aから収納すると、そのヘルメットHがほぼぴったりと収まるように形成されている。すなわちその横断面は、ヘルメットHの形状に応じて略長円形に形成されている。そして図2に示すように、その長径方向が、車体の前後方向の中心線L1に対し斜めに向いている。その中心線L1と長径方向線L2のなす角度αは、たとえば40〜50°程度に設定されている。したがって、ヘルメット収納ボックス30は全体を見ると左右非対称の形状をなし、ヘルメットHを斜めに収納するよう構成されている。
【0012】
図1および図2に示すように、ヘルメット収納ボックス30の底面には前後に延びる補強用リブ31が、また、後面には略水平に後方に延びる取付板32がそれぞれ形成されている。そして、底部の2箇所が前側クロスメンバ8に、また、取付板32の2箇所が前記後側クロスメンバ9にそれぞれビス止めされることにより、車体フレーム6に固定されている。ヘルメット収納ボックス30の前半分は、前記リヤサイドカバー13には覆われておらず、外観ボディの一部として露出している。図2に示すように、この露出部分は断面半円弧状で略左右対称に形成され、両者のつなぎ目はなだらかに連続するよう形成されている。
【0013】
シート5は、ヘルメット収納ボックス30の蓋を兼ねている。シート5は、図1に示すように、前端部がヘルメット収納ボックス30にヒンジ結合され、後端が自由端となってヘルメット収納ボックス30の開口30aを開閉する。シート5の下面には、ヘルメット収納ボックス30の上端縁に係合して内部を密閉する環状のシール33が設けられている。さらに自由端の下面には、シート5を閉じた状態で取付板32に当接する突起34が設けられている。シート5に着座する運転者の荷重は、この突起34を介して車体フレーム6で受けられるようになっている。
【0014】
上記ヘルメット収納ボックス30の後方には、リヤトランク40が配設されている。このリヤトランク40は、図1に示すように、ベース部41、上部42および右側膨出部43とが一体に成形され、これらの内部が連通しているもので、ベース部41がサイドフレーム7の後端水平部7bに載って支持されている。そのベース部41は、図2に示すように、リヤサイドカバー13で囲まれる空間にぴったりと収納されている。上部42は、図1に示すように、リヤサイドカバー13、テールライト14および方向指示器15の外面と略面一になるよう湾曲し車体の一部として違和感を与えないようデザインされている。また、右側膨出部43は、右側のサイドフレーム7の外側において下に向けて垂れ下がっている。その深さは、図1に示すように、揺動する前記パワーユニット30の消音器27aに当たらない程度に設定されている。
【0015】
また、上部42には、蓋体44が備えられている。この蓋体44は、前端がヒンジ結合され、自由端である後端に、止め金45が装着されている。また、この蓋体44の上面には、後方に向けて伸縮可能なキャリヤ(荷台)46が取り付けられている。さらに、リヤトランク40のベース部41の下面には、後輪4の上方を覆うリヤフェンダ47が一体に成形されている。
【0016】
ヘルメット収納ボックス30とリヤトランク40との間には、空間Sが確保されている。図2に示すように、この空間Sの左側であってリヤサイドカバー13と左側のサイドフレーム7とで仕切られる空間には、オイルタンク(パーツ)50が配設されている。また、残る空間には燃料タンク(パーツ)51が配設されている。これらタンク50、51は、配設される空間Sをほぼ埋める形状および大きさに形成されており、サイドフレーム7あるいは後側のクロスメンバ9に、図示せぬブラケットを介してそれぞれ固定されている。
【0017】
A−2.ヘルメット収納ボックスの作用および効果
上記ヘルメット収納ボックス30によれば、車体への組み込み状態が、その長径方向が車体の中心線に対して斜めになっているので、車体後部の空間が増大する。このため、車体後部へのパーツのレイアウト性の自由度が増し、その結果として、燃料タンク51とオイルタンク50およびリヤトランク40を、車体後方に設けることができたわけである。リヤトランク40が設けられたことにより、ヘルメットHが収納された状態のヘルメット収納ボックス30には収納できない大きな物品を、リヤトランク40に収納できる。すなわち、ヘルメット収納ボックス30をヘルメット専用の収納部とすることができる。したがって、収納できる物品の量はもちろんのこと大きさの制約も広くなるとともに、たとえば濡れたままのヘルメットHをヘルメット収納ボックス30に収納しても、他の物品をリヤトランク40に収納して、その物品が濡れたり汚れたりする不都合を回避できる。
【0018】
そのリヤトランク40においては、右側膨出部43が、容量の増大とともに消音器27aの上方のデッドスペースの活用に寄与している。また、ベース部41の下面にリヤフェンダ47が一体に成形されているので、製造および組立工程の削減が図られコストダウンにつながる。
【0019】
また、燃料タンク51やオイルタンク50においては、その容量を大きなものにすることができ、このため、補充サイクルの長期化が図られる。また、ヘルメット収納ボックス30とリヤトランク40の間に配設されてこれらに保護された状態となっており、安全上きわめて有利である。
【0020】
ヘルメット収納ボックス30は、その前半分の部分がリヤサイドカバー13には覆われておらず、外観ボディの一部として露出している。このことは、リヤサイドカバー13の削減が図られることに通じ、コストダウンとなる。
【0021】
B.変更例
本発明においては、たとえば次のような変更が可能である。
▲1▼車体の中心線に対するヘルメット収納ボックス30の長径方向の角度(図2における角度α)を適宜に変更する。車体の横方向への膨出がある程度抑えられつつ、ヘルメット収納ボックス30の前後方向の寸法がなるべく短くなる角度が好ましい。
▲2▼ヘルメット収納ボックス30とリヤトランク40の間に、オイルタンク50や燃料タンク51以外のパーツを配設する。たとえばエアクリーナ24を配設すれば、エンジン23への吸気通路が直線的になり、エンジン特性の向上が図られる。
▲3▼三輪のスクータ型車両に適用する。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、車体後部へのパーツのレイアウト性が向上するとともに、ヘルメット以外の収納空間を増大させることができるといった効果を奏する(請求項1)。
また、ヘルメット収納ボックスの一部を、外観ボディの少なくとも一部として露出させたので、車体カバーの削減により製造コストの低減が図られる(請求項2)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のスクータ型車両(自動二輪車)の全体右側面図である。
【図2】 図1のII−II線矢視図である。
【符号の説明】
1…スクータ型自動二輪車(スクータ型車両)、5…シート、30…ヘルメット収納ボックス、50…オイルタンク(パーツ)、51…燃料タンク(パーツ)、L2…長径方向線、L1…車体の中心線、α…角度。
Claims (2)
- 開口部の形状が平面視で略長円形であって当該略長円形がその長径方向に対して略左右対称であるヘルメット収納ボックスを、その長径方向が車体の中心線に対し当該平面視で角度を持った状態でシート下方に設けたことを特徴とするスクータ型車両。
- 前記ヘルメット収納ボックスの一部が、外観ボディの少なくとも一部として露出していることを特徴とする請求項1に記載のスクータ型車両。
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