JP3684188B2 - 滑り止め構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属板に滑り止め用の突片を備えた滑り止め構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
建築構造物の床や通路、階段または化粧板等、またバスやトラック、特殊車両等の床やステップ、更に鉄道車両、船舶等の甲板やデッキ、その他、土木工事等の仮設敷板等を構成する金属板の滑り止め構造としては、従来、下記に列挙するような技術が知られている。
(１) 鋼板の圧延時に形成される丸みをつけた縞状の滑り止めパターンを有する縞鋼板１１が知られている（図４（ａ）参照）。
この縞パターン１３は圧延時に成形するが、縞パターン１３の高さは低く、また湾曲形状であるので、比較的良い作業条件の用途に限り滑り止め効果が期待できるもので、更にその場合も大きな滑り止め効果を期待できない（図４（ｂ）（ｃ）参照）。
(２) 建設機械の上部カバーを踏面とするために、サンドペーパから成る滑り止めシートが貼付された滑り止め構造が知られている。
しかしながら、この滑り止めシートでは、使用によってすぐに目が潰れるため十分な滑り止め効果を期待できない。
(３) そこで、これらの不具合を解消するものとして、まず鋼板２１に打ち抜きにより丸型または星型の貫通穴２２を形成し、次いで、その貫通穴２２の周縁をプレス等により引き起こしたパターン２３を多数配置する構造が知られている（図５参照）。
この滑り止め鋼板２１にあっては、上記パターン２３の引き起こし部分の高さが十分高く確保でき、また打ち抜きによりシャープな切り落とし面２７となっているので、より大きな滑り止め効果が期待できる。
そのため、この滑り止め鋼板２１は、特に、高所作業フロア、雨・泥滓により滑り止め効果が損なわれる場所等で用いられている。
【０００３】
しかし、上記滑り止め鋼板は、貫通穴をあけているので、用途により、踏面の下へ雨水や泥滓が落下したり、逆に下から踏面上への熱風の捲き込みや騒音の拡散等の不都合が発生するのを避けられない。
そこで、この滑り止め鋼板では、必要に応じて、別体の平鋼板から成る床面上に一体に溶接されたり、またボルト締めして固着されている。
ボルト締結によれば、滑り止め鋼板と床面となる平鋼板とが分離可能なので、滑り止め鋼板と平鋼板との間に雨水が溜まって錆汁が発生することを防いだり、または各滑り止めパターンに溜まったゴミを清掃することができる。
しかしながら、いずれの場合も、フロア構造が二重となるので、これに起因する製造コストの上昇を招くものとなる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、滑り止め効果が高く、また貫通穴に基づく不具合がない信頼性の高い滑り止め構造を提供することにある。
また、この発明の別の課題は、水切りの良好な滑り止め構造を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
この課題を達成するため、請求項１の滑り止め構造では、
ベースとなる金属板と同一レベルの略水平面からなる中央部と、該中央部を中心にして該中央部を囲むように放射状に配置された同一形状からなる複数の突片とで滑り止めパターンの１単位が構成されており、前記各突片が前記金属板の一部を剪断して突片形成用の切込線を形成すると共に、上記切込線に沿って突片を金属板の厚み以下の高さに引き起こして前記切込線に沿う剪断面を立ち上げ、上記剪断面が金属板と接して金属板に貫通穴や隙間を形成しない形状からなる滑り止め構造において、
各突片が、該突片の両側方に形成され先端に向かって徐々に接近する一対の側方切込線と、該一対の側方切込線の先端部間を直線または曲線で結ぶ連結切込線とを有して平面から見て略扇状に形成されると共に、該連結切込線が最も高くなるように前記側方切込線の基端側から先端側に向かって漸次上方へ立ち上がり、前記突片の上面を球面状に湾曲形成しており、
前記中央部を囲むように隣接する突片と突片の間が、前記中央部と連なる同一面に設定されて中央部から放射状に延びる同一幅で帯状の水抜き路部に形成されている、という技術的手段を講じている。
また、請求項２の発明では、
前記突片間に形成された水抜き路部が、これと対向する突片間に形成された水抜き路部と同一直線状に配置されている、という技術的手段を講じている。
また、請求項３の発明では、
中央部が平面から見て略円形となり、突片が平面から見て略扇状からなっており、前記中央部を中心にして等間隔で４つの突片が配置されている、という技術的手段を講じている。
更に、請求項４の発明では、
前記滑り止めパターンが、建設機械の車体を覆う鋼板のカバー板の表面に形成されている、という技術的手段を講じている。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の滑り止め構造を建設機械のカバー板に適用した好適実施例について図面を参照しながら説明する。
この滑り止め構造１は、図１から図３に示すように、建設機械のカバー板として用いられる鋼板２に形成されるもので、該鋼板２の一部を剪断して突片形成用の切込線を形成すると共に、上記切込線に沿って突片を鋼板２の厚み（ｔ）以下の高さ(ｈ≦ｔ)に引き起こしている。
【０００７】
これにより、切込線に沿う剪断面が立ち上げると共に、上記剪断面は周囲の鋼板２と少なくとも一部で接するので、突片３が形成されても、鋼板２に貫通穴が形成されることはない。
【０００８】
即ち、この突片３は、両側方に形成された一対の側方切込線３ａと、該一対の側方切込線３ａの先端部間を曲線で結ぶ連結切込線３ｂを有しており、該連結切込線３ｂが最も高くなるように側方切込線３ｂの基端側から漸次引き起こされて***する形状となっている。
【０００９】
そして、***した突片３の周縁端面（剪断面）がエッジ７となっており、連結切込線３ｂに沿うエッジ７が最も高くなる。
前述のように、側方切込線３ａと連結切込線３ｂで区切られた部分は引き起こされて突片となり、またその切込線３ａ、３ｂに沿う剪断面がエッジ７となるが、鋼板２の厚みより高く引き起こされることはないので、エッジ７の下端はその周囲の鋼板２の厚み部分と重なるか接する（図３参照）ため、鋼板２との間で隙間や貫通孔が生じない。
【００１０】
この突片３は、散点状に配置されてもよいが、本実施例では図１に示すように複数（図示例では４つ）が放射状に配置されて１つの滑り止めパターン４を形成している。
滑り止めパターン４は、床面や踏面となる鋼板上３に適宜の配列により複数が配置される（図２参照）。
【００１１】
この滑り止めパターン４は、任意の１点を中心に放射状に配置された複数の突片３と、この突片３間の中央に配置され、鋼板２の基準面と同一レベルの略水平面からなる中央部５と、この中央部５と連接し、隣接する突片間３、３の間を横断して延びる略水平面からなる水抜き路部６とからなっている。
なお、図示例で、滑り止めパターン４に設けられる各突片３の連結切込線３ｂは、中央部５の同心円と重なる円弧状の曲線となっている。
【００１２】
ここで、上記中央部５及び水抜き路部６は、鋼板２を加工して突片３を形成した際に加工されずに残された領域であって、図示例の場合、中央部５は略円形に形成され、水抜き路部６は同一幅の帯状で上記中央部５を直径方向に直角に交差するように形成されている。
突片３及び水抜き路部６の形状や数は、図示例に限定されず、用途に応じて適宜形状や数に設定される。
【００１３】
上記のように構成されているので、滑り止めパターン４では突片３の周縁は、前記連結切込線を最高位置としてエッジ７が略垂直に立ち上がり、その形状が中央部５の外周に沿って等間隔（図示例では９０度間隔）に平面円弧状に配置されるので、滑り止め効果を高めることができる。
【００１４】
また、貫通穴を形成せず、突片のエッジ７は少なくとも鋼板２の厚み部分と接しているので、上から下へ、また逆に下から上へと自由に水や泥滓などの流体や、熱や騒音などの雰囲気が移動することがない。
更に、突片で囲まれた中央部５に水などが溜まっても、放射状の水抜き路部６を通って排出させることができ、簡便に清掃しうる。
【００１５】
上記実施例では、鋼板を例示したが、この発明ではその他の金属板を用いてもよい。
また、突片の形状や滑り止めパターンの形状は上記実施例に限定されるものではなく、用途に応じて適宜に設計変更しうる。
更に、この滑り止め構造は、前記実施例のように建設機械のカバー板に限らず、各種装置や部品および部分などカバーする床面や踏み面など、要するに使用者がその上を踏む面として用いられるものであればよく、縞鋼板同様にあらゆる用途に適用することができる。
【００１６】
【発明の効果】
以上のようにこの発明の滑り止め構造では、垂直に高く立ち上がったエッジにより滑り止めを行うので、低く且つ丸みのある従来の構造に比べて、滑り止め効果を向上することができる。
また、貫通穴を空ける必要がないので、流体や雰囲気の流通による不具合を抑えることができるので用途が制限されることがなく、また従来のように平鋼板等の上に重ねるような二重構造とする必要がない。
また突片の成形は、同時に中央部とこれに連なる水抜き路部を成形することができ、清掃作業性を高めうる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 この発明の滑り止め構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図２】 図１の滑り止め構造の平面図である。
【図３】 図１の滑り止め構造の断面図である。
【図４】 従来の縞鋼板を示すもので（ａ）は平面図、（ｂ）は突片の横断面、（ｃ）は同縦断面図である。
【図５】 従来の貫通穴を有する滑り止め構造を示すもので（ａ）は突片の断面図、（ｂ）は同平面図である。
【符号の説明】
１ 滑り止め構造
２ 鋼板
３ 突片
３ａ 側方切込線
３ｂ 連結切込線
４ 滑り止めパターン
５ 中央部
６ 水抜き路部
７ エッジ

Claims (4)

1. ベースとなる金属板と同一レベルの略水平面からなる中央部と、該中央部を中心にして該中央部を囲むように放射状に配置された同一形状からなる複数の突片とで滑り止めパターンの１単位が構成されており、前記各突片が前記金属板の一部を剪断して突片形成用の切込線を形成すると共に、上記切込線に沿って突片を金属板の厚み以下の高さに引き起こして前記切込線に沿う剪断面を立ち上げ、上記剪断面が金属板と接して金属板に貫通穴や隙間を形成しない形状からなる滑り止め構造において、
   各突片が、該突片の両側方に形成され先端に向かって徐々に接近する一対の側方切込線と、該一対の側方切込線の先端部間を直線または曲線で結ぶ連結切込線とを有して平面から見て略扇状に形成されると共に、該連結切込線が最も高くなるように前記側方切込線の基端側から先端側に向かって漸次上方へ立ち上がり、前記突片の上面を球面状に湾曲形成しており、
   前記中央部を囲むように隣接する突片と突片の間が、前記中央部と連なる同一面に設定されて中央部から放射状に延びる同一幅で帯状の水抜き路部を形成したことを特徴とする滑り止め構造。
2. 突片間に形成された水抜き路部が、これと対向する突片間に形成された水抜き路部と同一直線状に配置されることを特徴とする請求項１に記載の滑り止め構造。
3. 中央部が平面から見て略円形となり、突片が平面から見て略扇状からなっており、前記中央部を中心にして等間隔で４つの突片が配置されていることを特徴とする請求項２に記載の滑り止め構造。
4. 滑り止めパターンが、建設機械の車体を覆う鋼板のカバー板の表面に形成されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の滑り止め構造。

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