JP3676658B2 - 循環流式凝集分離装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、凝集沈殿処理などの凝集フロック形成および凝集フロック(固)と分離液(液)との分離に用いられる水処理プロセスや化学プロセス等の凝集分離技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の凝集沈殿装置は、原水である被処理水に凝集剤を混和し、この混和液を撹拌して凝集させフロック群(凝集フロック)を形成・成長させ、混和液から凝集フロックを沈降分離させて清澄な分離液(処理水)を得るものであり、主として▲1▼薬品混和槽、▲2▼フロック形成槽、▲3▼沈降分離槽から構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の凝集沈殿装置では複雑なプロセスとなり、加えて各槽に大きな敷地面積が必要となる。とくに、沈殿分離槽では十分に凝集フロックを沈降分離させるために長い滞留時間が必要で、大きな沈殿池を設けなければならないという課題があった。また、各槽には多くの付帯設備が設けられているため、建設コストが高いばかりか、運転管理が煩雑になるという課題もあった。さらに、流入水量が増加すると沈殿池で凝集フロック(とくにピンフロック)が流出するため、安定した処理水質を得ることができなくなるという課題もあった。
【0004】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、滞留時間が長くとれる別途独立した広大な沈殿分離槽を必要とせず、混和液を撹拌して凝集フロックを形成・成長させると共に形成・成長した凝集フロックを確実に分離することができ、また流入水量の変動に対応でき、さらに安価で省スペース型の凝集分離装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る循環流式凝集分離装置は、原水と凝集剤とが混和した混和液を導入して凝集および固液分離する循環式凝集分離装置において、混和液導入手段および下向流を形成して混和液を攪拌混合する循環流形成手段を有する下部凝集域と、下部凝集域に連通し、且つ混和液から分離した分離液を導出する分離液導出手段を有する上部分離域と、複数の貫通孔を有し、且つ下部凝集域と上部分離域との間に設けられ、下部凝集域の流動を阻害する多孔部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
この発明に係る循環流式凝集分離装置は、循環流形成手段を、下部凝集域内に循環流を形成させる一枚または二枚以上の攪拌羽根を有する軸流型攪拌翼としたことを特徴とするものである。
【0007】
この発明に係る循環流式凝集分離装置は、下部凝集域の内壁面に、下部凝集域内に形成される旋回流を向心流に変換する一枚または二枚以上の案内板を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による循環流式凝集分離装置の構成を示す断面図であり、図2は図1の平面図であり、図3は図1および図2に示した循環流式凝集分離装置における凝集分離タンク内に付加可能な沈殿スラッジ取出部の構成を示す断面図である。図において1は循環流式凝集分離装置(以下、単に凝集分離装置という)である。凝集分離装置1は、有底略角筒状の凝集分離タンク2と、この凝集分離タンク2に連結されかつ凝集分離タンク2内に原水と凝集剤との混和液を供給するための混和タンク3とから概略構成されている。
【0009】
凝集分離タンク2は、この凝集分離タンク2内を上部分離域2aと下部凝集域2bとに区分する多孔部材4とを有している。下部凝集域2b内には凝集分離タンク2の上部から垂下された状態で配設されて下部凝集域2b内を循環する循環流Aを形成する攪拌翼(循環流形成手段)5と、多孔部材4の下面周縁部に立設されて撹拌翼5の回転により生じる下部凝集域2b内を水平方向に周回する旋回流Bを軸心へ向かう向心流C(流速Vh )に変換する案内板6と、凝集汚泥(凝集フロック)を装置外に排出するスラッジ取出部(凝集汚泥排出手段)7と、底部に撹拌による流動の影響を排除でき凝集フロック等の沈降性物質を沈積させて濃縮した凝集汚泥を装置外に排出する沈殿スラッジ取出部(凝集汚泥排出手段)10とが設けられている。上部分離域2aには多孔部材4を通過し上昇してきた分離液を処理水として溢流させて排出する処理水取出部(分離液導出手段)8と、分離液中に残留するピンフロックの沈降を促進する沈降促進部材9とが設けられている。
【0010】
凝集分離タンク2の水平断面は正方形状になっているが、とくに下部凝集域2b内における均質な循環流の形成が阻害されない形状であれば、これに限られるものではない。望ましくは、点対称な水平断面を有するものがよい。ただし、円筒径状等の場合には、上下方向の循環流を形成しやすくするために、内壁に邪魔板(阻流板)などを設けると有効である。
【0011】
混和タンク3は、凝集分離タンク2の底部近傍(下部凝集域2b)に混和液導入部3aを介して連結されている。混和タンク3内には原水と凝集剤とを攪拌して急速に混和するための撹拌羽根11が垂下状態で設けられている。この実施の形態1では、混和タンク3を凝集分離タンク2に隣接させて連結したが、配管を介して下部凝集域2bと混和タンク3とを連結してもよく、また混和タンク3を省略して下部凝集域2bに直結する原水の配管に凝集剤を添加し、配管内で混和液を調製してもよい(ラインミキシング)。
【0012】
ここで、凝集分離に用いられる凝集助剤としては、例えば合成高分子凝集剤、天然高分子凝集剤、無機化合物、砂等の無機鉱物、金属等を挙げることができ、適宜選択されるものであり、これらに限定されるものではない。原水に対する凝集助剤の添加方法としては、素早く均一に分散させる手法が採用され、例えば凝集助剤自体をスラリーや溶液状態にして原水に添加する手法、粒子状の凝集助剤を乾燥状態のまま原水に添加する手法などを挙げることができる。また、混和タンク3や下部凝集域2b内への添加位置で添加手法を区別すると、混和タンク3等への流入口近傍に凝集助剤を添加する手法、混和タンク3等内へ均一に分散させて添加する手法、混和タンク3等内の流速の早い箇所に凝集助剤を添加する手法、滞留時間ごとに段階的に分けて凝集助剤を添加する手法等を適宜選択することができる。なお、混和タンク3内に導入される原水に対しては、導入過程でライン注入あるいはラインミキシングすることにより、凝集剤はもとより、凝集助剤やpH調整剤の添加を行ってもよい。
【0013】
多孔部材4は混和液若しくは凝集フロックが分離した分離液の通過を妨げない複数の貫通孔を有し、下部凝集域2bの流動が上部分離域2aに概ね及ばないように両域を区分する平板状のものである。この多孔部材4としては、例えば金網、パンチングプレート、エキスパンドメタル、特殊多孔板、薄板状や粒状の充填層等を用いることができ、これらの中から原水中の沈降性物質の物性等に応じて適宜選択される。また、多孔部材4は、撹拌翼5が位置する下部凝集域2bと処理水取出部8が位置する上部分離域2aとの間で凝集分離タンク2を上下に分割するように水平に設置される。なお、多孔部材4のうち、案内板6が立設された部分には、案内板6に衝突する旋回流Bが水平方向の向心流Cに変換されず、上方へ逃げるのを阻止するために、上記貫通孔(図示せず)を設けないことが望ましい。さらに、循環流Aが下部凝集域2bの内壁面に沿って上昇するのを阻止するため、多孔部材4の周縁部にも貫通孔(図示せず)を設けないか、上昇流Dを阻止するような止水板12を図1および図2に示すように設けることが望ましい。
【0014】
一般に攪拌翼は単数の攪拌羽根または複数の攪拌羽根を備えており、この攪拌翼5が一本の軸に固定され駆動手段(図示せず)を有するものが攪拌機(攪拌装置)である。なお、攪拌翼は一本の軸に複数設けられることもできる(多段型)。この実施の形態1における撹拌翼5の形状は図1に示すように主に下部凝集域2b内を攪拌混合する循環流Aを形成する軸流型である。この軸流型の攪拌翼では一般にプロペラ状の攪拌羽根が回転することにより、鉛直下方向に水流(流速Vu )が吐出し、下部凝集域2bの底部で回転軸心から内壁に向かう水平方向の底層流が形成され、内壁に沿って上昇する上向流が形成され、この上向流は多孔部材4の下面近傍で軸心方向へ向かう向心流Cが形成され、軸心で下方向に向かう下向流になる循環流Aが下部凝集域2bに形成される。しかも、この際、攪拌羽根の回転運動により下部凝集域2bを水平方向に周回する旋回流Bも副次的に形成される。即ち、循環流Aは攪拌翼5の回転軸と下部凝集域2bの内壁や軸心に沿って流れる鉛直方向の流れ(流速Vu )と、回転軸と内壁との間を流れる水平方向の流れ(流速Vh )と副次的に形成される旋回流Bとから構成されている。上述の攪拌翼5の回転により生じる旋回流は案内板6に衝突することで回転軸心に向かう水平流である向心流Cに変換される。攪拌翼5は、図2に示すように2枚の羽根で構成されているが、羽根の枚数は少なくとも1枚あればよく、その枚数に制限はない。また、下部凝集域2b内に設けられた撹拌翼5の設置位置は、凝集分離タンク2の内部形状、案内板6の設置位置等に応じて上部、中部および下部のうちから適宜設定されるが、設置位置は攪拌翼5の径をDとすると、凝集分離タンク2の底部から0.4D〜1.2Dの範囲が攪拌効率の点で好ましい。撹拌翼5の回転数は駆動装置(図示せず)の制御により混和液中に形成される凝集フロックの物性を考慮して形成した凝集フロックを撹拌により破壊しない程度に緩やかであり、かつ凝集フロックの分離に必要な循環流Aを形成するのに十分な程度の範囲で適宜変更可能である。
【0015】
撹拌翼5の形状としては、循環流Aを形成するための撹拌翼5の形状としては、公知のプロペラ型、パドル型、ハイドロフォイル型、タービン型などの主に軸流型を用いることができる。撹拌翼5により下部凝集域2b内で理想的な撹拌状態を得るためには、下部凝集域2bの内径をLとし、撹拌翼5の径をDとすると、比D/L=0.3〜0.7の範囲を満たすように両者の寸法が設定される。なお、凝集分離タンク2の形状などの都合により、攪拌翼5を設置できない場合には、下部凝集域2b内に鉛直方向の流れを作ることができる噴流装置(サーキュレーター等)を設置してもよい。
【0016】
案内板6は撹拌翼5の回転により副次的に形成される水平方向に周回する旋回流Bが衝突して向心流Cに変換するものであり、図1および図2に示すように下部凝集域2bの内壁面に複数(例えば4枚)設けられている。この実施の形態1における案内板6は下部凝集域2bの四つの内壁面の中央から回転軸心に向けて突出すると共に多孔部材4の下面に垂下状態で設置されている。各案内板6は正方形あるいは矩形状の平板であるが、湾曲状をなしていてもよい。なお、案内板6の枚数は少なくとも1枚あればよく、その枚数に制限はない。
【0017】
スラッジ取出部7は下部凝集域2b内の底部に設けられて凝集フロックを高濃度に含む凝集汚泥を装置外に引き抜くものである。この実施の形態1における下部凝集域2bの底部は平坦状とされるが、角錐状または円錐状に凹み、その最深部にスラッジ取出部7を設けた構成を採用することもできる。また、沈殿スラッジ取出部10は下部凝集域2bの底部に設けた隔壁10aにより撹拌翼5や案内板6による撹拌流動の影響を排除して流動が静止する部分を形成し、その隔壁10a内に凝集フロックを重力により沈殿させて濃縮し、その沈殿スラッジを装置外に排出するものである。なお、この沈殿スラッジ取出部10は必要に応じて設けられるものである。
【0018】
処理水取出部8としては凝集分離タンク2の上部分離域2a内の流動を均一にして集水する集水設備を用いることができる。沈降促進部材9は必要に応じて設けられるものである。この沈降促進部材9を設ける場合には、所定の離間距離をもって複数の平行板を組み合わせたパラレルプレート、所定の離間距離をもって複数の波板を組み合わせたコルゲーテッドプレート等の傾斜板、複数の円管や角管を組み合わせた沈降管、支持材や枠組中に短管や粒状担体を充填して分離面積を増大させて分離効果を上げる充填層、多孔板、邪魔板またはスクリーン等の整流材などを用いることができるが、上部分離域2a内を上昇する分離液中に残留するピンフロック等の沈降を促進するものであれば、特に制限されるものではない。なお、傾斜板や沈降管は上部分離域2a内にそのまま設置してもよく、また支持材で支持して設置してもよい。
【0019】
このような構成の凝集分離タンク2内における凝集および分離における作用について説明する。
まず、従来の凝集沈殿処理装置において大きな敷地面積を要する沈降分離槽を省略するためには、原水と凝集剤が混和する混和液を攪拌してフロックを形成させると共にその形成された凝集フロックを何らかの手法により分離して清澄な分離液を得る必要がある。凝集沈殿処理装置におけるフロック形成槽内での流れは、▲1▼凝集操作に最適な撹拌吐出流量(Qd )、▲2▼撹拌吐出流量Qd に伴う同伴流量(Qb )および▲3▼原水流入量(Q0)が基本になる。ここで、撹拌に関する量Qd +Qb =Qc すれば、これは撹拌による槽の循環流量(Qc )となる。従って、フロック形成槽内の流れの総和はQc +Q0 となり、槽内の平均液流速を代表する指標は(Qc +Q0 )/Af =Va となる。ここで、Af はフロック形成槽の水平断面積である。即ち、この流れ(平均流速Va )により最適な凝集フロックが形成されるわけである。
【0020】
一方、形成された凝集フロック群を効率よく分離するためには、このVaをできる限り小さくすることが有効である。しかし、ここで、Q0 は原水の流入量で、Af はフロック形成槽の断面積であるから、それぞれ定数である。従って、Va はQc を0(零)に近づければ近づけるほど小さくなる。そこで、上述のフロック形成槽でQc を0に近づけるためには、Qc の流れを阻害する不連続面を形成すればよい。そこで、本発明では、水は通過するが、流動を阻害する多孔部材4を用いて凝集分離タンク2を下部凝集域2bと上部分離域2aとに分割したわけである。
【0021】
さて、ここで、Qcが略0になった場合、フロック形成槽内の平均液流速度(即ち、平均上昇速度)はVa =Q0 /Af =VL となる。従って、上昇速度VL より小さな沈降速度をもつフロック群は処理水と共に溢流することになる。しかし、ここで、上昇速度VL で上昇する液に上昇速度VL よりかなり速い速度で水平方向の向心流C(流速Vh )を与えれば上昇速度VL よりも沈降速度が小さく、粒子の小さな凝集フロック群でも向心流Cに乗って移動し、その慣性力により上昇流Dに同伴しにくくなる。そのために、上昇速度VL よりも小さい沈降速度の凝集フロック群でも分離することが可能となる。なお、上述の一般のフロック形成槽がこの発明においては凝集分離タンクに相当する。
【0022】
次に動作について説明する。
まず、沈降性物質を含む原水は混和タンク3内に一定の流量で導入される。混和タンク3内において、原水に凝集剤が添加され、必要に応じてpH調整剤も添加され、撹拌羽根11により急激に混和される。これにより、原水中には微細なフロックが形成される。この場合、必要に応じて凝集助剤である砂等の沈降促進材や高分子凝集剤などを添加してもよい。
【0023】
混和タンク3内で上述のように前処理された原水である混和液は、混和液導入部3aから下部凝集域2b内へ導入される。そして、必要に応じて高分子凝集剤等を添加して撹拌翼5の適切な撹拌作用により凝集に適した循環流Aを形成し、混和液中の凝集フロックが大きく成長する。このとき、下部凝集域2b内では凝集フロックを含む混和液が撹拌混合されているが、多孔部材4近傍の領域には図1に示すように不安定であるが濃度界面Fが形成される。その濃度の変化により、濃度界面Fの上部が撹拌吐出流量(Qd )による影響が緩和される。その濃度界面Fの上部に多孔部材4が凝集分離タンク2内を上下に分割するように水平に配置されているので、その多孔部材4の流動阻害作用により多孔部材4の上側の上部分離域2aにおいては撹拌翼5による撹拌の影響のない均一な上昇流Dが形成される一方、その下側の下部凝集域2bにおいては撹拌翼5による循環流Aが形成される。なお、流入する混和液の流入量によっては、濃度界面Fが上部分離域2a内における多孔部材4近傍に形成される場合もある。また、下部凝集域2b内では、循環流Aにより多孔部材4の下面近傍で回転軸心に向かう水平流の向心流Cが形成され、さらに撹拌翼5の回転に伴って発生する水平方向に周回する旋回流Bが案内板6に衝突することにより、多孔部材4の下面近傍で回転軸心に向かう水平流の向心流Cが形成される。これにより、下部凝集域2b内では循環流Aにより混和液が撹拌混合されているが、上記向心流Cにより多孔部材4近傍では混和液中の凝集フロックに水平方向の慣性力を与えることができると共に、回転軸心に沿って流れる下向きの流れが生じているため、効率的に凝集フロックを分離すること(固液分離)ができる。
【0024】
つまり、水平方向の向心流Cに乗って凝集フロック群が移動するため、特に小さな凝集フロック群は慣性力によって上昇流Dに同伴しにくくなり、上昇流Dから分離される。このようにして分離された凝集フロック群は下部凝集域2bに残存し、凝集フロックが分離した分離液は上昇流Dに乗って上部分離域2aを通過して処理水取出部8から溢流させる。その際に、上部分離域2a内に設けた傾斜板等の沈降促進部材9を利用することにより、上昇流Dと同伴したピンフロックなどを沈降除去でき、更に上質の処理液を得ることができる。
【0025】
下部凝集域2bでは、分離した凝集フロックが残留して濃縮され、凝集フロック濃度が高くなるため、適宜、底部に設けられたスラッジ取出部7から直接外部に引き抜く。場合によっては、引抜前に撹拌翼5を一時的に停止させて、凝集フロックを底部に沈殿させ、高濃度化した凝集汚泥を引き抜いてもよい。なお、沈降促進材として砂を用いた場合には、引き抜いた汚泥をサイクロン等の遠心分離装置(図示せず)にかけて砂を分離し、その砂を混和タンク3等内に戻して再利用することができる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、攪拌翼5および多孔部材4を設けたことにより、下部凝集域2bを効率よく撹拌混合して所望の循環流Aおよび向心流Cを形成し、これにより凝集フロックに対して水平方向の慣性力を与えることで多孔部材4を通過する上昇流Dへの同伴を阻止することができるので、従来の凝集沈殿装置における重力沈降分離に比べて短い滞留時間で効率よく凝集フロックを分離することができる。因みに、従来の凝集沈殿装置における滞留時間が60〜120分間であったのに対し、この実施の形態1に係る凝集分離装置では、その滞留時間を3〜6分間と大幅に減少させることができた。
【0027】
この実施の形態1では、従来の凝集沈殿装置において必須であった敷地面積の大きい沈降分離槽を省略できたことにより、レーキ等の集泥機が不用になり、メンテナンスが楽になり、電気代も節約することができる。
【0028】
この実施の形態1では、凝集フロックを重力沈降による分離に委ねるのではなく、慣性力を積極的に利用して分離するため、沈降速度の大きな凝集フロックの形成を必須とせず、ある程度の沈降速度をもつフロックであれば分離できるので、凝集剤等の薬品や沈降促進材のみならず敷地面積や処理時間の節約もでき、省エネルギ、省コストに有効である。さらに、案内板6を設置することにより無動力で向心流Cを増強することができるので、より効果的に固液分離することができる。
【0029】
この実施の形態1では、攪拌翼5および多孔部材4を設けたことにより、従来の凝集沈殿装置に比べて分離速度や分離効率を大幅に向上させることができ、また下部凝集域2b内を鉛直方向にも水平方向にも効率よく撹拌混合できるので、よりコンパクトになり、敷地面積も小さくでき、建設費も安価にすることができる。
【0030】
この実施の形態1では、攪拌翼5の回転数を変更可能としたことにより、混和液中の凝集フロックの物性に適応した回転数を選べば、同一の装置、同一の流量でも、混和液の性状、濃度および水量等の変動に影響を与える沈降性物質の変化に適応して処理することができる。また、撹拌翼5を緩やかに回転させることができるので、凝集フロックを破壊させることなく、安定して確実に形成・成長させることができる。
【0031】
この実施の形態1では、下部凝集域2bに凝集助剤注入手段(図示せず)を設けてもよい。この凝集助剤注入手段から注入される凝集剤としては高分子凝集剤や砂等の無機材料を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、この実施の形態1では、下部凝集域2bの底部を平坦面としたが、凝集汚泥の引き抜きや濃縮に有利な角錐形状や円錐形状としてもよい。
【0032】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による凝集分離装置の構成を示す断面図であり、図5は図4に示した凝集分離装置における凝集分離タンクの平面図である。この実施の形態2の構成要素のうち実施の形態1の構成要素と共通するものについては同一符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0033】
この実施の形態2では、凝集分離タンク2の水平断面を円形状としている。この実施の形態2における4枚の案内板6は下部凝集域2bの内周壁面から下部凝集域2bの回転軸心に向けて突出すると共に多孔部材4の下面に垂下状態で設置されている。また、凝集分離タンク2の内周壁面には図4に示すようにその底部から上方に向かって延在する4枚の邪魔板13が設けられている。これら邪魔板13は、図5の平面で見ると4枚の案内板6とその設置位置がずらされているが、設置位置や設置枚数はこれに限定されるものではない。この邪魔板13は下部凝集域2b内で水平方向に周回する旋回流Bを緩和する機能を有する。つまり、撹拌翼5により循環流Aが形成されるが、タンク形状が円形であるため、撹拌翼5の回転により副次的に形成される旋回流Bが大きくなる。そこで、この旋回流Bを邪魔板13に衝突させることで鉛直方向の流れに変換し、下部凝集域2b内の撹拌混合に寄与させるものである。これにより、下部凝集域2b内の全域において水平方向および鉛直方向に効率的に撹拌混合を行うことができ、凝集フロックの成長および均質化に有効に働く。
【0034】
この実施の形態2では、沈降促進材としての砂等の無機材料を混和液に添加しているため、スラッジ取出部7に流体サイクロン等の遠心分離装置14が連結されている。この遠心分離装置14は、スラッジ取出部7から引き抜いた凝集汚泥に含まれる沈降促進材である砂等の無機材料を回収して再度混和タンク3内に供給することで、沈降促進材を有効に利用して節約するものである。
【0035】
以上のように、この実施の形態2によれば、撹拌翼5の回転に伴い副次的に形成される旋回流Bを案内板6により下部凝集域2b内において向心流Cに変換させ、凝集フロックの分離に利用することができ、実施の形態1の場合と同様に分離効率および分離速度を向上させることができ、従来の凝集沈殿装置における重力沈殿に比べて短い滞留時間で効率よく凝集分離を行うことができる。また、邪魔板13により旋回流Bを鉛直方向の流れに変換させることができ、下部凝集域2b内の全域にわたって水平方向および鉛直方向に効率的に撹拌混合が行え、凝集フロックの形成や成長ばかりでなく、域内の均質化に有効である。
【0036】
この実施の形態2では、上部分離域2aに実施の形態1における沈降促進部材(図示せず)を設けていないが、必要に応じて設けてもよい。また、この実施の形態2では、下部凝集域2bに沈殿スラッジ取出部(図示せず)を設けていないが、必要に応じて設けてもよい。なお、これまでは凝集分離処理について説明してきたが、本発明はこれ以外に凝集剤添加型活性汚泥処理における凝集分離や汚泥処理における汚泥濃縮等にも用いることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、多孔部材と循環流形成手段を設けたことにより、凝集タンクを上下に分割して不連続面を形成することができると共に、下部凝集域を効率よく撹拌して所望の向心流を形成し、これにより凝集フロックに対して大きな慣性力を与えることで多孔部材を通過する上昇流への同伴を阻止することができるので、従来の凝集沈殿装置における重力沈殿に比べて短い滞留時間で効率よく凝集し、形成された凝集フロックを分離することができる。因みに、従来の凝集沈殿装置における滞留時間が60〜120分間であったのに対し、この発明に係る凝集分離装置では、その滞留時間が3〜6分間と大幅に減少させることができる。なお、従来の敷地面積の大きい沈降分離槽を省略できたことにより、レーキ等の集泥機が不用になり、またその他の付帯設備も省略できるため、メンテナンスが容易になり、電気代も含め処理コストを低減することができる。
【0038】
この発明によれば、重力沈降による分離に委ねるのではなく、慣性力を積極的に利用して分離するため、沈降速度の大きなフロックの形成を必須とせず、ある程度の沈降速度をもつフロックであれば分離できるので、凝集剤等の薬品や沈降促進材の節約もでき、省エネルギ、省コストに有効である。さらに、案内板により無動力で向心流を増強することができるので、より効果的に固液分離することができる。
【0039】
この発明によれば、循環流形成手段を設けたことにより、従来の凝集沈殿装置に比べて分離速度や分離効率を大幅に向上させることができるので、よりコンパクトになり、敷地面積も小さくでき、建設費も安価にすることができる。
【0040】
この発明によれば、上部分離域に沈降促進部材を設けた場合には多孔部材を通過し上昇するピンフロック等を速やかに沈降分離させることができるので、分離効率を向上させることができ、さらに上質の処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による凝集分離装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1および図2に示した凝集分離装置における凝集分離タンク内に付加可能な沈殿スラッジ取出部の構成を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による凝集分離装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4に示した凝集分離装置における凝集分離タンクの平面図である。
【符号の説明】
1 凝集分離装置(循環流式凝集分離装置)
2 凝集分離タンク
2a 上部分離域
2b 下部凝集域
3 混和タンク
4 多孔部材
5 攪拌翼(循環流形成手段)
6 案内板
7 スラッジ取出部(凝集汚泥排出手段)
8 処理水取出部(分離液導出手段)
9 沈降促進部材
10 沈殿スラッジ取出部
11 撹拌羽根
12 止水板
13 邪魔板
14 遠心分離装置
A 循環流
B 旋回流
C 向心流
D 上昇流
Claims (3)
- 原水と凝集剤とが混和した混和液を導入して凝集および固液分離する循環式凝集分離装置において、
混和液導入手段および下向流を形成して混和液を攪拌混合する循環流形成手段を有する下部凝集域と、下部凝集域に連通し、且つ混和液から分離した分離液を導出する分離液導出手段を有する上部分離域と、複数の貫通孔を有し、且つ下部凝集域と上部分離域との間に設けられ、下部凝集域の流動を阻害する多孔部材とを備えたことを特徴とする循環流式凝集分離装置。 - 循環流形成手段は、下部凝集域内に循環流を形成させる一枚または二枚以上の攪拌羽根を有する軸流型攪拌翼であることを特徴とする請求項1記載の循環流式凝集分離装置。
- 下部凝集域の内壁面には、下部凝集域内に形成される旋回流を向心流に変換する一枚または二枚以上の案内板が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の循環流式凝集分離装置。
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