JP3671739B2 - 内燃機関のピストン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の高出力化に伴う熱負荷増大や筒内圧増大に対応するとともに軽量化を図る目的で、アルミ合金一体鋳造又は鍛造製であった内燃機関のピストンをピストンクラウン部とスカート部とに2分割して、ピストンクラウン部を鋳鋼で、スカート部をアルミ合金により形成されたたものが知られている(実公平3−51552号公報等参照)。
【0003】
このように、ピストンクラウン部を鉄材により形成することにより、熱負荷及び燃焼室内の筒内圧に対する耐久度が向上して、高出力化が可能となり、スカート部をアルミ製とすることにより、ピストンの重量増大を最小限に抑えることができる。
しかし、ピストンに対する熱負荷がさらに増大すると、燃焼室側に最も近いトップリングに作用する熱負荷が大きくなり、トップリングが焼き付けを起こすといった問題が生じる場合がある。なお、このようなトップリングは、ピストンのリングランド部に形成されたトップリング溝に嵌入しており、また、リングランド部には、このようなトップリング以外のリングが嵌入するリング溝も形成されている。
【0004】
このトップリングの焼き付け防止として、例えば特開平2−91452号公報には、ピストン上面部とリングランド部との間の内面に周方向に延びて閉空間をなすクローズドギャラリを設けた技術が開示されている。
このようなクローズドギャラリはピストン本体と一体に形成されており、また、このクローズドギャラリの下面壁には、冷却油入口が穿設されている。そして、この冷却油入口から流入した冷却油によってピストン本体、特にピストンリング溝近傍が冷却されて、熱負荷の増大に伴うピストン本体の熱変形やピストンリングなどの焼き付けを防止することができる構成となっている。なお、クローズドギャラリに流入してピストンヘッドの熱を吸収した冷却油は、冷却油入口と同様にピストンヘッド下面に穿設された冷却油出口より流出する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなクローズドギャラリを有するピストンでは、クローズドギャラリの下面壁が周方向全域に亘って設けられているので、鋳鋼などにより形成されるピストン本体の重量がより大きくなり、ピストン本体の重量増大による駆動損失が大きくなるといった問題がある。
【0006】
また、上記特開平2−91452号公報は、クローズドギャラリから下面壁をなくしたオープンギャラリタイプのピストン本体に、アルミ合金によって形成される円筒状のピストンスカートを固着させるとともに、このピストンスカートの上端内周にオープンギャラリの下方を遮蔽する縁部を設けた技術が開示されている。そして、このような技術によれば、クローズドギャラリを有するピストンヘッドと同等の冷却性を得ることができるとともに、ピストンの重量を軽減することができる。
【0007】
しかしながら、このようなピストンスカートによりオープンギャラリを遮蔽するタイプのピストンでは、リングランド部の下端にピストンスカートが固着されて、オープンギャラリの下方を遮蔽する縁部がピストンスカートの上端部に構成され、リングランド部は上方においてピストン上面部と連結される構成であるために、リングランド部の径方向への強度が低下して、高圧化に伴うピストン本体の変形を抑制することができずに、ピストンリング溝が変形しリング挙動に悪影響が出て、オイル消費量が増大するばかりでなく、ピストンリングが焼き付けを起こすといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ピストンを効率よく冷却できるようにするとともに、ピストンの重量低減を図りながらピストンの強度を向上させてピストンの変形を抑制することができるようにした、内燃機関のピストンを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の内燃機関のピストンは、ピストン上面部と該ピストン上面部の外周部より下方に延出するように一体に形成されピストンリングが嵌入されるピストンリング溝が外周面に設けられたリングランド部とを有するピストンクラウン部と、コネクティングロッドと係合又は結合されるピストンピンを回転可能に支持するピンボス部と、上記ピストンクラウン部及び上記ピンボス部と一体に形成されるとともに両者を連結する連結部材とからなるピストン本体を有する内燃機関のピストンにおいて、上記リングランド部の内面側であって、上記ピストンリング溝に近接した位置に周方向に環状溝が延設され、上記連結部材が、ピストン中心軸に対して径方向に放射状に延びて形成されるとともにその外周部が上記リングランド部の内面に結合されたリブ部材と、上記リブ部材の上記環状溝に対応する位置に開口した貫通孔とをそなえ、且つ該ピストンクラウン部とピンボス部との間に円盤状のプレート部材が配設され、このプレート部材により、各リブ部材が互いに連結されていることを特徴としている。
【0010】
このように、連結部材がピストン中心軸に対して径方向に放射状に延びるように配置されるリブ部材によって構成されるので、連結部材における重量が低減されるとともに、リブ部材の外周部がリングランド部の内面に結合されるのでリングランド部の径方向への強度が向上する。また、このリブ部材には、環状溝に対応した位置に開口した貫通孔が形成されるので、環状溝に供給される冷却油が連結部材によって遮断されることなくピストン本体の内面全周を効率よく冷却することができる。
また、各リブ部材が互いにプレート部材によって連結されることにより、リブ部材の剛性が高められるとともに、ピストン本体の剛性も高められて、ピストン本体の変形をより抑制することができる。また、ピストンがより効果的に冷却される。
また、請求項2記載の本発明の内燃機関のピストンは、上記請求項1記載の構成において、該円盤状のプレート部材が、ピストン中心軸線に対して略垂直に配設されていることを特徴としている。そして、このように構成した場合には、ピストン本体の剛性をさらに高めることができる。
また、請求項3記載の本発明の内燃機関のピストンは、上記請求項1又は2記載の構成において、該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、該ピストンスカートのプレート部材に対向した内周面に、プレート部材に近接するように内径側に突出した内突部が周方向全域に亘って形成されていることを特徴としている。そして、このように構成することにより、ピストン本体がより効果的に冷却される。
また、請求項4記載の本発明の内燃機関のピストンは、上記請求項1又は2記載の構成において、該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、該プレート部材の外縁部が該ピストンスカートの内周面に近接するように延設されて構成されていることを特徴としている。そして、このように構成した場合にも、ピストン本体をより効果的に冷却することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。
図1はディーゼルエンジン用のピストン1のピストン本体1aをピストンピンの軸線と垂直な方向から見た図であり、右半面図が外観形状を示す模式図で左半面図がピストンピンの軸線上における模式的な断面図、図2はピストン1のピストンピン軸線上における要部断面図、図3はピストン1におけるピストン本体1aの下面図、図4はピストン1におけるピストン本体1aのピストンピン軸線方向から見た図であり、右半面図が外観形状を示す模式的側面図で左半面図がピストン中心でのピストンピンの軸線に対する垂直線上における模式的な断面図、図5はピストン中心におけるピストンピンの軸線に対する垂直線上の要部断面図である。なお、以下では、ディーゼルエンジン用のピストン1を用いて説明するが、本発明の内燃機関のピストンはディーゼルエンジン用のものに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、ピストン本体1aは、ピストンクラウン部6と、ピストンピン(図2の符号9参照)が挿入されるピンボス部7と、これらピストンクラウン部6及びピンボス部7に一体に形成され両者を連結する連結部材としてのピストンリブ部材(以下、リブ部材)8とから構成されている。このうち、ピストンクラウン部6は、上面に円形凹陥状の燃焼室(キャビティ)2が形成されたピストン上面部3と、該ピストン上面部3の外縁より下方に延びるように形成されたリングランド部5とを有している。
【0013】
リングランド部5の外周面には、周方向に延びる複数のピストンリング溝4が形成されている。また、ピストンリング溝4は、図示しないトップリング,セカンドリング及びオイルリングがそれぞれ外嵌されるトップリング溝4a,セカンドリング溝4b及びオイルリング溝4cから構成され、これらのリング溝4a〜4cは、リングランド部5の外周に上方から順次形成されている。
【0014】
また、図2及び図5に示すように、ピストン本体1aの下方には、ピストン本体1aとともに摺動するピストンスカート12が配設されている。このピストンスカート12は、ピストンピン9をピンボス部7に挿入することによりピストン本体1aに結合されるように構成されている。
図2はピストン本体1aとピストンスカート12とがピストンピン9を介して結合したときのピストンピン9の中心軸線上における要部断面図である。この図2に示すように、ピストン本体1aのピンボス部7にはピストンピン9が挿入され、ピストンピン9は、ピンボス部7の両端部において軸受部材20を介して全周がピンボス部7によって回転可能に支持されている。また、ピストンピン9の中央部分では、軸受部材20の下方が切り欠かれており、ピストンピン9はその上面側半部が軸受部材20を介してピンボス部7に支持されるようになっている。
【0015】
また、このピストンピン9の中央部下方(中央下端部)には、コネクティングロッド(以下コンロッドという)10の上端部がボルト11によって結合されており、これにより、ピストンピン9がピンボス部7で回転するとコンロッド10もピストンピン9と一体に揺動(回転)するように構成されている。
なお、本実施形態では、コンロッド10の上端部とピストンピン9の中央下端部とをボルト11により結合した例を説明したが、本発明では、このような構成に限定されるものではなく、例えばピストンピン9の中央下端部とコンロッド10の上端部とが一体に形成されるなどして、ピストンピン9とコンロッド10とが一体に回転するように構成してもよく、また、従来技術と同様に、コンロッド10の上端にピストンピン9を挿通させ、コンロッド10がピストンピン9に回転可能に支持されるとともに、ピンボス部7によりピストンピン9の両端部のみが支持されるように構成してもよい。
【0016】
ピンボス部7は、上述したようにその両端部においてピストンピン9を全周に亘って支持するとともに、ピストンピン9の軸方向における中央上半部(中央上端部)、具体的には軸方向全長にわたる上半面をも軸受部材20を介して支持するように形成されている。即ち、ピストンピン9は、両端部の全周及び軸方向全長にわたる上半部(上端部)を軸受部材20を介してピンボス部7で回転可能に支持されているのである。なお、ピストンピン9とピンボス部7との間に介装される軸受部材20は省略してもよい。
【0017】
また、ピストンスカート12は、円筒状に形成されており、ピンボス部7にピストンピン9を挿通することによりピストン本体1aに結合されるようになっている。そして、このようなピストン本体1aへの結合時に、リングランド部5の下端部から下方に向かって延びるように、ピストンスカート12は形成されている。
【0018】
このピストンスカート12には、ピストン本体1aのピンボス部7に対応する位置にピストンピン孔12aが穿設されており、このピストンピン孔12aにピストンピン9の両方の最側端部がそれぞれ嵌入することによりピストンスカート12とピストン本体1aとが結合されるようになっている。また、ピストンピン9は、ピストンピン孔12a内に配設されるスナップリング12bによって軸方向への移動が規制されるようになっている。なお、本実施形態ではピストンピン9はコンロッド10に結合されているため、ピストンピン9はコンロッド10のピストンピン軸方向へのクリアランス分しか移動しない。したがって、ピストンピン9がピンボス部7及びピストンピン孔12aから抜き出ることはなく、スナップリング12bを省略して構成してもよい。
【0019】
ところで、ピストン1は、ピストンクラウン部6とピンボス部7とを有するピストン本体1aと、ピストンスカート12との2つの部材からなる2分割型に構成されているが、ピストン本体1aとピストンスカート12とは、それぞれ異なる材料が用いられている。つまり、ピストン本体1aは鋳鋼又はダクタイル鋳鉄などによって形成され、ピストンスカート12はアルミニウム合金によって形成されているのである。そして、このような構成により、ピストン本体1aの強度が増大して、高出力化に伴う筒内圧の増大によるピストン本体1aの変形が抑制されるとともに、ピストンスカート12を軽量化してピストン1の重量増大を抑制することができるのである。
【0020】
また、ピンボス部7がピストンピン9の両側端部全周と中央上端部(中央部上半面)とを支持するように構成されるとともに、ピストンピン9の中央下端部にコンロッド10の上端部が結合されているので、実公平5−29580号公報に開示された従来技術同様に、ピストン1の摺動時にピストンピン9がピンボス部7から受ける荷重が、軸方向全長にわたって均一に作用して、ピストンピン9の両端部のみにピンボス部7からの荷重が集中することはなくなる。
【0021】
よって、ピストン摺動時に、ピンボス部7からの荷重がピストンピン9の中央部に与えられてもこの荷重がピストンピン9の両端部に集中しない構成、つまり、ピストンピン9がピンボス部7から受ける荷重が軸方向全長にっわたって均一となり、ピストンピン9の両端部に与えられる荷重が低減される構成となっているので、ピストンピン9の変形が抑制される。また、ピストンピン9に作用する荷重が均一化することにより、ピストンピン9の縮径が可能となり、ピストンピン9の重量を低減してピストン1自体の重量を低減することができる。
【0022】
また、これと同様に、ピンボス部7から受ける荷重とは反対方向の荷重がコンロッド10からピストンピン9の中央部に与えられても、やはり、ピストンピン9からピンボス部7に入力される荷重が軸方向全長にっわたって均一となる。
また、ピストンスカート12をアルミ合金により形成するとともに、ピストンピン9を縮径してピストン1の重量を軽減することにより、ピストン1の上下死点におけるピストンの慣性力が軽減されてディーゼル機関の高速化を図ることができる。これにより、機関の駆動損失が低減して燃費が向上するとともに、ピストン1のコストも低減することができる。
【0023】
ところで、ピストン本体1aのピストンクラウン部6とピンボス部7とは、リブ部材8を介して一体に結合されている。すなわち、リブ部材8は、その上端が凹陥状の燃焼室2を有するピストン上面部3の下面に、またその外周部がリングランド部5の内面下端部に一体に連結されるとともに、その下端がピンボス部7に一体に連結され、ピストンクラウン部6とピンボス部7とを連結するように形成されている。なお、このリブ部材8は、後述する貫通孔15とともに連結部材を構成している。
【0024】
このように、重量低減のために薄肉構造とされているピストン上面部3及びリングランド部5をリブ部材8によって互いに連結するように構成されているので、ピストンを薄肉構造としても強度低下を抑制することができ、ピストン本体1aの変形を防止することができる。
また、リブ部材8は、図3の下面視に示すように、ピストン中心軸L2から放射状に設けられ、ピストン中心軸L2から等角度に8方向に延びるように設けられている。また、リブ部材8は、図1及び図4に示すように、ピストン中心軸L2の近傍には形成されておらず、ピストン上面部3とピンボス部7との間のピストン中心軸L2近傍には空間が設けられるように形成されている。
【0025】
このように、リブ部材8が、放射状に配設されるとともに、ピストン中心軸L2線近傍に空間が設けられるように形成されることにより、ピストンクラウン部6とピンボス部7とを連結するリブ部材8の重量低減を図ることができ、ピストン本体1a及びピストン1自体の重量低減を図ることができる。
さらに、リブ部材8は、図1,図2及び図4に示すように、ピストン上面部3の下面及びリングランド部5の内面との連結部からピンボス部7に向かって、ピストンピン9の略中心Pに集中するような形状とされている。
【0026】
そして、リブ部材8が、ピストンクラウン部6との連結部からピストンピン9の中心Pに集中するような形状に形成されてピンボス部7に連結されているので、例えば膨張行程時のようにピストン本体1aのピストンクラウン部6に作用する応力がリブ部材8を介してピンボス部7に伝達される際に、該応力がリブ部材8によってピストンピン9の中心P近傍に集中することとなり、ピストンクラウン部6からピストンピン9に作用する応力は、ピストンピン9の中心Pの下方に配設されているコンロッド10に直に作用することとなる。
【0027】
また、例えば圧縮行程時のようにコンロッド10からピストンピン9に作用する応力がピンボス部7からリブ部材8を介してピストンクラウン部6に伝達される際には、コンロッド10の上端部の上方に位置するピストンピン9の中心Pからリブ部材8へ直に力が作用してピストンクラウン部6に伝達されることになる。
【0028】
したがって、本実施形態におけるピストン1では、ピストンクラウン部6及びコンロッド10からの応力が、ピストンピン9の中心部に集中するため、ピストンピン9全体にかかる負荷を軽減することができ、ピストンピン9自体の要求強度を軽減することができる。
したがって、このような理由からも、ピストンピン9を縮径することが可能となり、ピストンピン9を支持するピンボス部7をコンパクトに形成して、ピストンピン9の重量及びピンボス部7の重量を軽減することができ、ピストン本体1aの重量を軽減することができる。
【0029】
さらに、上述したようなピストン1の重量低減により、駆動損失の低減に伴う燃費の向上やコストの低減といった効果をより確実に得ることができる。
また、ピストン本体1aのピストンクラウン部6とピンボス部7との間には、ピストン本体1aと一体に形成される円盤状のプレート部材13がピストン中心軸L2線に対して略垂直となるように配設されている。そして、このプレート部材13により、各リブ部材8が互いに連結されている。
【0030】
そして、各リブ部材8が互いにプレート部材13によって連結されることにより、リブ部材8の剛性が高められるとともに、ピストン本体1aの剛性も高められて、ピストン本体1aの変形をより抑制することができる。
また、本実施形態におけるピストン本体1aのピストンクラウン部6には、図1に示すように、環状溝14が形成されている。この環状溝14は、ピストンクラウン部6に形成されたリングランド部5の内面上端部であって、リングランド部5の内面とピストン上面部3の下面との間に周方向に延びるように形成されている。
【0031】
また、リブ部材8の環状溝14に対応した位置には、貫通孔15が形成されている。この貫通孔15は、環状溝14に対して周方向に向けて開口するように形成されており、この貫通孔15により、環状溝14は、ピストン上面部3の下面とリングランド部5の内周面とに連結されるリブ部材8を貫通するように形成されている。
【0032】
一方、図示しないエンジンのシリンダブロックには、図5に示すように、シリンダブロックに配設された図示しないオイルギャラリからの冷却油を、ピストン上面部3に向かって噴出するオイルジェットノズル16が設けられている。このオイルジェットノズル16は、ピストン1が下死点に位置する状態で、その上端部が円盤状のプレート部材13の下面に対して若干の間隙を有するように配設されるている。また、オイルジェットノズル16は、ピストン1の中心軸方向から見て、ピストンピン9の軸線の垂直線上に配設されるリブ部材8a(図3及び図4参照)に対して円周方向に若干ずれた位置に配設されている。
【0033】
そして、円盤状のプレート部材13には、図3及び図5に示すように、このオイルジェットノズル16の上端部に対向した位置に流入孔13aが穿設されている。なお、本実施形態では、オイルジェットノズル16が図示しないシリンダブロックの2箇所に配設され、プレート部材13には、このオイルジェットノズル16に対向した2箇所に流入孔13aが設けられる構成となっているが、これに限定されることなく、オイルジェットノズル16と流入孔13aとが対向するように1箇所だけ配設しても良く3箇所以上配設してもよい。
【0034】
このように配設されたオイルジェットノズル16の下端部は、例えばシリンダブロック内のオイルギャラリに連結されている。また、このオイルギャラリには、クランクシャフトの回動により駆動されるオイルポンプ(図示省略)から潤滑油等が供給されるようになっており、オイルジェットノズル16からは、オイルギャラリ内の油圧に応じて潤滑油(冷却油として機能する)が常時上方に向けて噴出するように構成されている。なお、この実施形態の構成では、冷却油が常時噴出するように構成した例を説明したが、ピストン1が下死点近傍に位置するときにのみ冷却油を噴出するように構成してもよい。なお、このオイルジェットノズル16によるピストン1の冷却構造は、従来周知技術と同様のものである。
【0035】
オイルジェットノズル16から噴出した冷却油は、プレート部材13の流入孔13aを通って、プレート部材13の上方に供給される。上述したように、オイルジェットノズル16及び流入孔13aは、ピストン中心軸L2線方向から見てリブ部材8と重合しない位置に配設されているので、オイルジェットノズル16から噴出して流入孔13aを通過した冷却油は、ピストン上面部3の下面3bに当たり、下面3bに沿って環状溝14の方へ流動していく。このようにして環状溝14に供給された冷却油は、この環状溝14を形成しているピストン上面部3とリングランド部5とを冷却することになる。
【0036】
なお、図示するように、環状溝14は、ピストンリング溝4により近接した位置に形成されており、特にトップリング溝4aに極力近接するように形成されている。これは、リングランド部5のトップリング溝4aに嵌入されるトップリングの熱負荷が非常に大きいために、トップリング溝4aの熱負荷も非常に大きいものとなり、環状溝14に供給される冷却油による冷却効果がより要求されるためである。
【0037】
なお、図示しないトップリングの配設位置を下げるほど燃焼室に連通する未完全燃焼領域が増大して排ガスが悪化する。このため、トップリングが嵌入されるトップリング溝4aは、排ガスを悪化させないためにリングランド部5のより上方に配設されている。したがって、トップリング及びトップリング溝4a近傍における熱負荷量がより大きいものとなり、環状溝14の冷却油によるトップリング溝4a近傍の冷却効果がより要求されるのである。
【0038】
このように、環状溝14に供給される冷却油によって、リングランド部5、特にピストンリング溝4近傍を効果的に冷却することができ、ピストンリング溝4の熱変形やピストンリングの焼き付けなどを防止することができる。
そして、本実施形態におけるピストン1のピストン本体1aでは、図1に示すように、環状溝14が、リングランド部5の内面上端に形成されるとともに、環状溝14の上端部とピストン上面部3の上面との距離A(図1参照)がより短くなるように、トップリング溝4aに極力近接して配設されている。したがって、環状溝14の冷却油によってトップリング溝4a近傍をより効果的に冷却することができるとともに、ピストン上面部3をも冷却することができ、ピストンクラウン部6の冷却性が向上して、高出力化に伴うピストンクラウン部6の熱負荷、特にトップリング溝4a近傍における熱負荷を低減することができ、ピストンクラウン部6の熱変形やピストンリング、特にトップリングの焼き付けが確実に抑制される。
【0039】
さらに、リブ部材8には、環状溝14に対応した位置に貫通孔15が形成されているので、環状溝14に供給された冷却油は環状溝14に沿って円周方向全域に亘って流動することが可能となる。これにより、トップリング溝4a近傍を円周方向全域に亘って十分に冷却することができ、また、ピストンクラウン部6についても十分に冷却することができる。
【0040】
つまり、ピストン1の上下方向の摺動により、環状溝14に供給された冷却油がリブ部材8によって遮断されることなく環状溝14内を円周方向に流動することにより、ピストン本体1aが効果的に冷却されることとなる。
また、上記距離Aがより短くなるように環状溝14を配設することにより、ピストン上面部3及びリングランド部5をより薄肉構造とすることができ、ピストン本体1aの重量をより低減することができる。
【0041】
一方、ピストン上面部3及びリングランド部5を薄肉構造となることにより、ピストンクラウン部6の強度が低下して、ピストン本体1aが変形しやすくなり、ピストンリング溝4の変形によりリング挙動に悪影響が出て、オイルの消費量が増大したり、ピストンリングが焼き付けを起こす等が考えられる。
しかし、本実施形態では、リブ部材8によりピストンクラウン部6とピンボス部7とが一体に連結され、リングランド部5の内面に、このリブ部材8の外周部が結合されているので、環状溝14がトップリング溝4aへ近接するように配設されて(即ち、環状溝14の上端とピストン上面部3の上面との距離Aがより短くなるように配設されて)ピストン本体1aが薄肉構造となっても、リングランド部5の径方向における強度が向上することにより、ピストン本体1aの強度を維持することができ、高筒内圧化に伴うピストン本体1aの変形が抑制され、ピストン本体1aの変形によるオイル消費の増大やピストンリングの焼き付きなどを防止することができる。
【0042】
また、図1,図2,図4及び図5に示すように、本実施形態におけるピストン本体1aには、ピンボス部7のピストン中心軸L2上における上端部に、オイル供給孔17が形成されている。このオイル供給孔17には、シリンダブロックのオイルギャラリからクランクシャフト,コンロッド10及びピストンピン9を介して冷却油が供給されるようになっている。
【0043】
また、ピストン上面部3とピンボス部7とを連結するリブ部材8は、オイル供給孔17が位置するピストン中央部分においては形成されていないので、オイル供給孔17に供給された冷却油は、オイル供給孔17から上方に向かって噴出して、ピストン上面部3とピンボス部7との間の空間を通り、ピストン上面部3の中央下面に当てられる。
【0044】
したがって、ピストン本体1aは、環状溝14の冷却油によって円周部が冷却されるとともに、上述のようにオイル供給孔17からの冷却油によって中央部が冷却されることとなる。
環状溝14及びピストン上面部3の中央下面に供給された冷却油は、冷却油自体の重量やピストン1の摺動慣性によって徐々にリブ部材8等に沿って下方へ流動するが、ピストン本体1aには放射状のリブ部材8を互いに連結して円盤状に形成されるプレート部材13が配設されているので、冷却油はプレート部材13上面に貯留されることとなる。
【0045】
したがって、ピストン本体1aは、プレート部材13の上面に貯留された冷却油によっても冷却されることとなる。
さらに、図2及び図5に示すように、ピストンスカート12には、プレート部材13に対向した内周面に、プレート部材13に近接するように内径側に突出した内突部12cが周方向全域に亘って形成されている。
【0046】
したがって、環状溝14及びピストン上面部3の中央下面部より下方に流動した冷却油は、この内突部12c上面にも貯留されることとなり、また、ピストン上面部3,リングランド部5,ピストンスカート12及びプレート部材13によって形成される空間内に供給された冷却油がこの空間内で循環するので、この空間内の冷却油によってピストン本体1aがより効果的に冷却される。
【0047】
プレート部材13上に貯留された冷却油は、プレート部材13の外縁部と内突部12cの内縁部との間の隙間を通りエンジンのオイルパン(図示省略)等に落下していくことにより循環される。
なお、本実施形態では、ピストンスカート12に内突部12Cを設けて、プレート部材13とピストンスカート12との間の隙間が最小限となるように構成されているが、ピストンスカート12に内突部12cを設けることなく、プレート部材13の外縁部をピストンスカート12の内周面まで延設して、両者の隙間が最小限となるように構成してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、ピストンクラウン部6とピンボス部7とを連結するリブ部材8が、ピストンクラウン部6との連結部からピンボス部7側に向かってピストンピン9の中心Pに集中するように形成されている例について説明したが、本発明の内燃機関のピストンは、このような構成に限定されるものではなく、例えばリブ部材8が鉛直状に延びるように形成されてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、リブ部材8が等角度毎に放射状に配設された例について説明したが、リブ部材8の配置についてはこのようなものに限定されるものではなく、少なくともピストン1の中心軸に対して対称に複数配設されていればよい。
また、本実施形態では、鋳鋼により形成されるピストン本体1aとアルミ合金により形成されるピストンスカート12とによって構成される2分割型ピストンについて説明したが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、ピストン本体1aとピストンスカート12とが一体に形成されるものでもよい。
【0050】
また、本実施形態では、環状溝14にエンジンのシリンダブロックに配設されるオイルジェットノズル16により冷却油を供給して、ピストン本体1aをより効果的に冷却する例について説明したが、このようなオイルジェットノズル16により冷却油が供給されるように構成されたものに限定されるものではない。
なお、オイルジェットノズル16により冷却油を供給するように構成した場合には、シリンダ内に飛散している潤滑油(冷却油)がピストン本体1aの内面に付着して、この付着した潤滑油が流動して環状溝14に供給されピストン本体1aを冷却する。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の内燃機関のピストンによれば、ピストン上面部と該ピストン上面部の外周部より下方に延出するように一体に形成されピストンリングが嵌入されるピストンリング溝が外周面に設けられたリングランド部とを有するピストンクラウン部と、コネクティングロッドと係合又は結合されるピストンピンを回転可能に支持するピンボス部と、上記ピストンクラウン部及び上記ピンボス部と一体に形成されるとともに両者を連結する連結部材とからなるピストン本体を有する内燃機関のピストンにおいて、上記リングランド部の内面側であって、上記ピストンリング溝に近接した位置に周方向に環状溝が延設され、上記連結部材が、ピストン中心軸に対して径方向に放射状に配設されるとともにその外周部が上記リングランド部の内面に結合されたリブ部材と、上記リブ部材の上記環状溝に対応する位置に開口した貫通孔とをそなえ、且つ該ピストンクラウン部とピンボス部との間に円盤状のプレート部材が配設され、このプレート部材により、各リブ部材が互いに連結されているという構成により、連結部材の重量を低減することができ、これにより駆動損失が減少して燃費の向上を図ることができるという利点があるほか、環状溝に供給される冷却油によってリングランド部のピストンリング溝近傍の冷却効果が向上するという利点がある。また、貫通孔によって環状溝の冷却油がリブ部材に遮断されることなくピストンの内面全周を流動することができ、ピストンを効果的に冷却することができる。
【0052】
また、リングランド部の内面が、ピストンクラウン部とピンボス部とを連結するリブ部材の外周部に連結されているので、ピストンクラウン部の強度を維持または向上することができ、ピストンの変形を抑制して、ピストンの変形に伴うオイル消費の増大やピストンリングの焼き付きなどを防止することができるという利点がある。
また、各リブ部材が互いにプレート部材によって連結されることにより、リブ部材の剛性が高められるとともに、ピストン本体の剛性も高められて、ピストン本体の変形をより抑制することができる。また、ピストンをより効果的に冷却することができる。
また、請求項2記載の本発明の内燃機関のピストンによれば、円盤状のプレート部材が、ピストン中心軸線に対して略垂直に配設されているので、ピストン本体の剛性をさらに高めることができる。
また、請求項3記載の本発明の内燃機関のピストンによれば、該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、該ピストンスカートのプレート部材に対向した内周面に、プレート部材に近接するように内径側に突出した内突部が周方向全域に亘って形成されるので、ピストン本体をより効果的に冷却することができる。
また、請求項4記載の本発明の内燃機関のピストンは、該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、該プレート部材の外縁部が該ピストンスカートの内周面に近接するように延設されて構成されるので、ピストン本体をより効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のピストンのピストン本体をピストンピン軸線と垂直な方向から見た図であって、右半面が外観形状を示す図、左半面図が断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のピストンの全体構成をピストンピン軸線と垂直な方向から見た断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のピストンにおけるピストン本体の下面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のピストンにおけるピストン本体のピストンピン軸線方向から見た図であって、右半面が外観形状を示す図、左半面図が断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる内燃機関のピストンにおけるピストンピンの軸線方向から見た模式的な断面図であって、ピストンが下死点近傍にある状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ピストン
1a ピストン本体
3 ピストン上面部
5 リングランド部
6 ピストンクラウン部
7 ピンボス部
8 リブ部材
9 ピストンピン
10 コネクティングロッド
12 ピストンスカート
13 プレート部材
14 環状溝
15 貫通孔
Claims (4)
- ピストン上面部と該ピストン上面部の外周部より下方に延出するように一体に形成されピストンリングが嵌入されるピストンリング溝が外周面に設けられたリングランド部とを有するピストンクラウン部と、
コネクティングロッドと係合又は結合されるピストンピンを回転可能に支持するピンボス部と、
上記ピストンクラウン部及び上記ピンボス部と一体に形成されるとともに両者を連結する連結部材とからなるピストン本体を有する内燃機関のピストンにおいて、
上記リングランド部の内面側であって、上記ピストンリング溝に近接した位置に周方向に環状溝が延設され、
上記連結部材が、ピストン中心軸に対して径方向に放射状に配設されるとともにその外周部が上記リングランド部の内面に結合されたリブ部材と、上記リブ部材の上記環状溝に対応する位置に開口した貫通孔とを備え、且つ該ピストンクラウン部とピンボス部との間に円盤状のプレート部材が配設され、このプレート部材により、各リブ部材が互いに連結されている
ことを特徴とする、内燃機関のピストン。 - 該円盤状のプレート部材が、ピストン中心軸線に対して略垂直に配設されている
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関のピストン。 - 該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、
該ピストンスカートのプレート部材に対向した内周面に、プレート部材に近接するように内径側に突出した内突部が周方向全域に亘って形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の内燃機関のピストン。 - 該ピストン本体の下方に、該ピストン本体とは別体に形成されて該ピストン本体とともに摺動するピストンスカートが設けられ、
該プレート部材の外縁部が該ピストンスカートの内周面に近接するように延設されて構成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の内燃機関のピストン。
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