JP3669819B2 - 分解性共重合体及びその製造方法 - Google Patents

分解性共重合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成分(A)として、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類、成分(B)として、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物、成分(C)として、2個以上の水酸基を有する多価アルコール、及び、成分(D)として、触媒、を含む反応系で反応することを特徴とする分解性重合体及びその製造方法に関する。本発明により製造された分解性重合体は、従来の技術による一般的な脂肪族ポリエステル(例えば、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールが重縮合した脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸が重縮合した脂肪族ポリエステル等)と比較して、[1]同等以上の高い透明性を保持しつつ、かつ、 [2]顕著に高く優れた溶融張力を有し、[3][2]の特質ゆえ、成形加工性(発泡成形等)に優れている、等の特徴を有する。本発明に係る分解性重合体は、多糖類と脂肪族ポリエステル(例えば、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールが重縮合した脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸が重縮合した脂肪族ポリエステル等)との共重合体やポリマーブレンドと比較して、顕著に着色が少ないという特徴を有する。本発明に係る分解性重合体は、医療用材料や汎用樹脂の代替物として有用である。本発明に係る分解性重合体は、その有利な特徴を活かした成形品や加工品として有用である。
【0002】
【従来の技術】
〔技術的背景〕
近年、廃棄物処理が環境保護と関連して問題となっている。特に、一般的な汎用の高分子材料の成形品や加工品は、廃棄物として埋め立てた場合、微生物等による分解性・崩壊性がないため、異物として半永久的に残存すること、さらに可塑剤等の添加剤が溶出して環境を汚染すること等が問題となっている。また、廃棄物として焼却する場合には、燃焼により発生する高い熱量により、炉を損傷すること、燃焼により発生する排煙・排ガスが、大気汚染、オゾン層破壊、地球温暖化、酸性雨等の原因となり得ること等がクローズアップされてきた。このような背景から、優れた耐熱性、分解性及び強靭性を併せ具備する高分子材料への需要が高まってきたにもかかわらず、必ずしも、このような需要に応え得る高分子材料が供給されているとは言えない。従来、ポリヒドロキシカルボン酸及び多糖類は、それぞれ水の存在下で容易に加水分解する特性があり、汎用樹脂として使用する場合には、廃棄後に環境を汚染することなく分解するので環境にやさしく、また医療用材料として生体内に留置する場合には、目的達成後に生体に毒性を及ぼすことなく生体内で分解・吸収されるので生体にやさしいという優れた性質が、本出願前に既に注目されていた。 例えば、ポリ乳酸及び酢酸セルロースは、それぞれ、水の存在下で容易に加水分解する特性があり、汎用樹脂として使用する場合には、廃棄後に環境を汚染することなく分解するので環境にやさしく、医療用材料として生体内に留置する場合には、目的達成後に生体に毒性を及ぼすことなく生体内で分解・吸収されるので生体にやさしいというすぐれた性質が本出願前に既に注目されていた。しかしながら、成形品又はフィルム、フィラメント等の加工品に、成形・加工しようとすると、ポリ乳酸は、透明だが、脆く、硬く、可撓性に欠け、溶融粘度が小さいと言う問題点があり、酢酸セルロースの場合は、タバコ・フィルターや写真用ベース・フィルムという用途があるものの、成形加工するためには、数十重量%の可塑剤を必要とするという点で問題があった。
【0003】
〔多官能性中心化合物に分解性高分子量側鎖を付加する従来技術〕
上記の技術的背景に鑑み、例えば、以下の[1]〜[6]に示すように、多官能性中心化合物に、ラクタイド(すなわち、乳酸の環状二量体)やラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン等)のような環状単量体を開環重合反応させ、前記中心化合物に、複数の分解性高分子量側鎖を放射状に付加することにより、問題点を解決しようとする技術が開発されてきた。
[1] 英国特許第2,145,422号及び特開昭60−76531号
英国特許第2,145,422号(発明者;Brich及びKissel、出願人;Sandoz AG)及び特開昭60−76531号(発明者;Brich及びKissel、出願人;Sandoz AG)には、例えば、糖や糖アルコールのような多価アルコール(複数の水酸基(ヒドロキシル基)を分子内に有する炭化水素化合物)の水酸基に、ポリ乳酸やポリヒドロキシカルボン酸等を、側鎖として付与した高分子に関する技術が開示されている。より具体的には、グルコースのような分子量20,000以下の多価アルコール、又は、その誘導体を、分子量5,000以上のポリ乳酸若しくはその誘導体(ポリ乳酸類)又はコポリ乳酸若しくはその誘導体(コポリ乳酸類)とエステル化することにより得られる、多価アルコールの水酸基が、ポリ乳酸類又はコポリ乳酸類とエステル結合している多価アルコールのエステルに関する技術が開示されている。すなわち、(A)20,000以下の分子量を有し3個以上の水酸基を含有する多価アルコール又はその誘導体を、(B)乳酸又はその誘導体、及び、必要に応じて1種類以上の第2ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体とエステル化することにより得られる、多価アルコールの少なくとも1つの水酸基が、分子量5,000以上のポリ乳酸又はコポリ乳酸とエステル結合している多価アルコールのエステルに関する技術が開示されている。
【0004】
前記の多価アルコールのエステルは、相対的に分子量が低く、生理活性物質を徐放性薬剤等のDDSへ応用するのに好適なものである。
【0005】
[2]米国特許第5,225,521号
米国特許第5,225,521号(発明者;Spinu、出願人;Du Pont De Nemours & Co E I)には、アミノ基又は水酸基を少なくとも5個以上有し炭素原子を5乃至100個有する多官能性化合物を中心化合物とし、該中心化合物に複数の高分子量のアーム(側鎖)を放射状に付加した星形高分子(star−shaped polymer)に関する技術が開示されている。前記高分子量の側鎖は、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン等のブロックであり、中心化合物から近い部分は非晶性ブロック、中心化合物から遠い部分は半結晶性ブロックという特殊な構造を有する。前記の星形高分子(star−shaped polymer)は、三次元網目構造にも応用することができる。
【0006】
[3]米国特許第5,210,108号
米国特許第5,210,108号(発明者;Ford及びSpinu、出願人:Du Pont De Nemours & Co E I)には、3乃至100個のアミノ基及び又は水酸基を有し炭素原子を5乃至10,000個有する多官能性化合物を中心化合物とし、該中心化合物に複数の高分子量のアーム(側鎖)を放射状に付加した星形高分子(star−shaped polymer)を用いた硬質樹脂発泡体に関する技術が開示されている。前記高分子量の側鎖は、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン等のセグメントであり、中心化合物から近い部分は非晶性セグメント、中心化合物から遠い部分は半結晶性セグメントという特殊な構造を有する。前記の硬質樹脂発泡体は、分解性であり、密度が320mg/cm3 以下であり、環境にやさしい断熱剤として好適に使用される。
【0007】
[4]特開昭59−86621号
特開昭59−86621号(特公平3−76321号、登録1712368号)(発明者;浅見 正広、興津 清、奥村 嘉章、浪越 肇、三雲 正敏及び渡辺 正治、出願人;ダイセル化学工業(株))には、環状エステルを、セルロース誘導体の存在下で開環重合触媒を加えて開環重合させることにより、透明性、造膜性の優れたグラフト重合体を得る技術が開示されている。ここで、セルロース誘導体は、有機溶媒への溶解性が良く、比較的安価で、工業的に入手し易いという観点から、セルロースエステル類が好ましく、これらの中では、操作性の観点から、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。また、環状エステルは、工業的に入手し易く、比較的安価で、しかもセルロース誘導体との相溶性の優れたε−カプロラクトンを用いるのが有利である。
【0008】
上記のように、特開昭59−86621号には、ε−カプロラクトンをセルロースエステルにグラフト共重合するグラフト共重合体の製造方法に関する技術が開示されている。しかしながら、特開昭59−86621号に開示された製造方法では、ε−カプロラクトンからなるグラフと鎖の性質によって、生成したグラフト共重合体は白濁し、透明性の良いグラフト共重合体を得ることはできず、しかも、融点、ガラス転移点温度が低く、熱的性質が十分ではないという問題点があった。
【0009】
[5]特開昭58−225101号
特開昭58−225101号(特公平1−38402号、登録1555484号)(発明者;浪越 肇、奥村 嘉章及び清 剛、出願人;ダイセル化学工業(株))には、セルロースと、グリコリドやε−カプロラクトン等の特定のエステル化剤とを、N,N−ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中、水酸化ナトリウム等のエステル化促進触媒の存在下で反応させることにより、溶媒溶解性で、増粘効果を有する新規な特定の化学構造を有するセルロースエステル誘導体を、効率良く得る技術が開示されている。前記セルロースエステル誘導体は、水やDMF等に対する溶解性を有し、コーティング剤、増粘剤、保護コロイドとして有用であり、イソシアネートと反応させて染料分野等へ応用することもできる。上記のように、特開昭58−225101号には、ラクタイドをセルロースにグラフト共重合するラクタイド系グラフト共重合体の製造方法に関する技術が開示されている。しかしながら、特開昭58−225101号に開示された製造方法では、セルロースはラクタイドや有機溶媒に不溶なため、開環グラフト共重合は当初不均質反応に始まり、反応の進行は遅く、しかも、得られた共重合体に透明性はない。また、反応温度が高く、セルロースが着色する場合も見られ、透明性に優れた共重合体が得られないという問題点があった。
【0010】
[6]特開平6−287279号
特開平6−287279号(発明者;江波戸 博及び村上 陽一、出願人;大日本インキ化学工業 (株))には、セルロースエステル又はセルロースエーテルと、ラクタイドを反応させることによるラクタイド系グラフト共重合体の製造方法が開示されている。この技術は、特開昭59−86621号及び特開昭58−225101号における問題点に鑑み、乳酸の二量体であるラクタイドと、セルロースエステルまたはセルロースエーテルとを開環グラフト共重合すると十分な透明性と成形に必要な融点と適度なガラス転移温度を有するラクタイド系グラフト共重合体が得られるという知見に基づいている。すなわち、この技術は、ラクタイド(A)とセルロースエステル又はセルロースエーテル(B)とを、エステル化触媒(C)の存在下に、開環グラフト共重合させることを特徴とする、透明性、分解性、熱可塑性及びラミネーション性に優れたラクタイド系グラフト共重合体の製造方法を提供するものである。
【0011】
ここで、例えば、(A)として、総ラクタイド中L−ラクタイドを90%以上含むもの、(B)として、エステル化度が50%乃至60%の範囲であって、かつ、重合度が100以上のもの(例えば、酢酸セルロース等)、(C)として、オクタン酸錫等を、それぞれ好適に用いることができる。
【0012】
〔多官能性中心化合物に分解性高分子量側鎖を付加する従来技術の問題点〕
上記の[1]〜[6]に示したような、多官能性中心化合物を放射状に付加する従来技術は本出願の以前より知られており、多価アルコールを開始剤とするラクタイドの開環重合法も上記の従来技術に含まれる。この方法では、多価アルコールの添加量を多くすると重合体の分子量が上がらなくなり、実用的強度を持った重合体が得られにくくなるという欠点がある。一方で、溶融張力を高くするだけの多価アルコールを添加し、かつ実用的強度を持たせるだけの高分子量の重合体を得ることが大きな課題であった。さらに、多官能性中心化合物たる多糖類に分解性高分子量側鎖を付加した場合、着色し易いという問題があった。また、従来技術が多官能性中心化合物に高分子量側鎖を導入した星形高分子又はグラフト高分子であるのに対し、本発明の分解性重合体は星形高分子どうしがさらに連結した構造を有しているという点で従来技術と異なる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
〔発明の技術的思想〕
多官能性中心化合物にラクタイドやラクトンを開環重合して、分解性高分子量側鎖を付与する技術は、反応する水酸基あるいはアミノ基とカルボキシル基の当量比が1からずれるため、一般的に、高溶融張力を示すほどの高分子量の分解性重合体が得られにくい。特に多官能性中心化合物の量が多くなるほどその傾向は大きい。しかし、本発明の分解性重合体は、反応する水酸基とカルボキシル基の当量比を1に近づけるために、第3成分として2個以上の水酸基を有する多価アルコールを加えているので、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその酸無水物の添加量によらず高分子量の分解性重合体を得ることができる。
【0014】
また、2個以上の水酸基を有する多価アルコールで、カルボキシル基末端の分解性高分子量側鎖を有する星形高分子どうしを連結させることにより、容易に高分子量化でき、高い溶融張力を有する分解性重合体を得ることが可能となったのである。
【0015】
本発明は、従来技術で知られている、多官能性中心化合物にラクタイド(すなわち乳酸の環状二量体)やラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン等)のような環状単量体を開環重合させる技術をさらに発展させることにより、以下のような分解性重合体を得ることを目的とする。
[1]多糖類を多官能性中心化合物に用いた場合と比較して顕著に着色が少ない。
[2]通常の脂肪族ポリエステルと比較して溶融張力が高い。
[3]通常の脂肪族ポリエステルと比較して成形加工(発泡成形等)に優れる。
[4]通常の脂肪族ポリエステルと比較して同等以上の高い透明性を有する。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した〔発明が解決しようとする課題〕に鑑み、鋭意検討を推進した結果、成分(A)として、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類、成分(B)として、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物、成分(C)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、イノシトールから選ばれる1種以上の2個以上の水酸基を有する多価アルコール、及び、成分(D)として、触媒、を含む反応系で反応する際、
成分(B)の重量が、成分(A)が単独で完全に重合したと仮定した場合の重合物の重量を基準として、0.005〜1%に相当するものであり、かつ、成分(B)のカルボキシル基と成分(C)の水酸基の当量比が、100:50〜200である反応系で、反応することにより、[1]多糖類を多官能性中心化合物に用いた場合と比較して顕著に着色が少ない。
[2]通常の脂肪族ポリエステルと比較して溶融張力が高い。
[3]通常の脂肪族ポリエステルと比較して成形加工(発泡成形等)に優れる。
[4]通常の脂肪族ポリエステルと比較して同等以上の高い透明性を有する。
という特徴を有する分解性重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の[1]〜[10]に記載した事項により特定される。
【0017】
[1]成分(A)として、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類、成分(B)として、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物、成分(C)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、イノシトールから選ばれる1種以上の2個以上の水酸基を有する多価アルコール、及び、成分(D)として、触媒、を含む反応系で反応する際、
成分(B)の重量が、成分(A)が単独で完全に重合したと仮定した場合の重合物の重量を基準として、0.005〜1%に相当するものであり、かつ、成分(B)のカルボキシル基と成分(C)の水酸基の当量比が、100:50〜200であることを特徴とする分解性重合体の製造方法。
【0018】
[2] 成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」が線状化合物を含むものである、[1]に記載した分解性重合体の製造方法。
【0019】
[3] 成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」が環状化合物を含むものである、[1]乃至[2]の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
【0020】
[4] 成分(D)の「触媒」が、(d−1) 錫触媒、(d−2) 亜鉛系触媒、及び、(d−3) チタン系触媒からなる群から選択された少なくとも1種を含むものである、[1]乃至[3]の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
【0021】
[5] 成分(A)の「ヒドロキシカルボン酸の環状二量体が乳酸の環状二量体であるラクタイドを含むものである、[1]乃至[4]の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
例えば、ラクタイドとブタンテトラカルボン酸と、1,4−ブタンジオールを、触媒の存在下、で反応させることにより高分子量の分解性重合体が得られ、該分解性重合体は溶融張力が高いため、発泡体や、ブロー成形による成形物等の加工製品を得ることに適している。本出願書において、引用文献及びその引用範囲を明示した場合は、特に断らない限り、それらの記載は全て、本出願明細書の開示の一部とし、明示した引用範囲を参照することにより、本出願明細書に記載した事項又は開示から見て、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項又は開示とする。
【0023】
〔本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる語の概念〕
(1) 語「分解性」の概念本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、有機材料に関し、特定の目的に使用している期間は、目的に合致した材料特性を保持し、目的終了後又は廃棄後に、自然環境下又は生体内環境下において、脆弱化及び無害化するような機能をも包含する。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・424頁右欄〜425頁左欄の「崩壊性高分子」の項に記載されている「崩壊性」の概念をも包含する。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・369頁左欄の「光崩壊性」の項に記載されている「光崩壊性」の概念をも包含する。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・539頁左欄〜540頁右欄の「生分解性ポリマー」の項に記載されている「生分解性」の概念をも包含する。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、「コンポスタブル(compostable、土壌回帰性)」の概念をも包含する。「分解性の評価は、例えば、土壌中への埋め込み試験、培養微生物による分解試験、酵素標品による分解試験、血清中でのイン−ビトロ分解試験、生体内埋植によるイン−ビボ分解試験、光照射試験等によって評価することができ、より具体的には、例えば、ASTM D5209−91(生分解性試験)やASTM D5338−92(コンポスタビリティー(土壌回帰性能)試験)によっても評価することができる。
【0024】
(2) 語「脂肪族」の概念本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「脂肪族」なる語の概念には、狭義の脂肪族のみならず、実質的に芳香族度が低い脂肪族をも包含する。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「脂肪族」化合物なる語の概念には、少なくとも1個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を分子内に有する、実質的に芳香族度の低い化合物からなる群をも包含し、具体的には、狭義の脂肪族基のみならず、実質的に芳香族度の低い脂環族基、これらを組み合わせた基、又はこれらが水酸基、窒素、硫黄、けい素、りんなどで結合されるような2価の残基を分子内に有する化合物からなる群をも包含し、さらに具体的には、上記のものに、例えば、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリルオキシル基、ハロゲン(F、Cl、Br等)基等が置換した基を分子内に有する化合物からなる群をも包含する。これらの置換基を適宜選択することにより、本発明に係る分解性重合体の諸特性(耐熱性、強靭性、分解性、強度特性、伸び特性等)を制御することができる。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「脂肪族」化合物なる語の概念には、1種類の化合物のみならず、2種類以上の組み合わせによるものを包含する。
【0025】
(3) 語「発泡体」の概念本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「発泡体」なる語の概念には、樹脂の内部に多くの空隙(気泡、ボイド、マイクロボイド、キャビティー等を含む)が存在する、見かけ密度の小さい、樹脂の連続相中に、空隙相(空気は連続のもの、独立のものも含む)が混在した、二相構造又は多相構造を有する樹脂構造体を包含し、例えば、細胞構造を有する高分子、発泡高分子、膨張高分子、高分子発泡体、高分子フォーム等の構造体と認識されるもの一般をも包含し、軟質のものも硬質のものも包含する。本発明に係る分解性重合体を含む発泡体は、公知・公用の方法により製造することができる。例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・811〜815頁に記載されている発泡剤や発泡技術を好適に用いることができる。
【0026】
(4) 語「糸」の概念本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「糸」なる語の概念は、繊維便覧・加工編(繊維学会編、丸善、東京、1969年)・393〜421頁に記載されている「原糸」の概念をも包含し、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルファイバー(スフ)、トウ、ハイバルクスフ、ハイバルクトウ、紡績糸、混紡糸、加工糸、仮撚糸、異形断面糸、中空糸、コンジュゲート糸、POY(部分配向糸)、DRY(延伸加工糸)、POY−DTY、スライバー等をも包含する。
【0027】
(5) 語「テキスタイル」の概念本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「テキスタイル」なる語の概念には、織布、編物、不織布、紐や縄を含む組物、綿状ハイバルクスフ、スライバー、多孔質スポンジ、フェルト、紙、網等の繊維構造体と認識されるもの一般を包含する。
【0028】
(6) 語「星形高分子(star−shaped polymer)」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編)、朝倉書店、東京、1988年」」・432頁右欄の「星形高分子」の項に記載されている概念を包含する。一般的には、中心化合物に、3本以上のほぼ同じ長さ(同じ分子量)の鎖状化高分子が結合している分岐高分子を意味する。一般的には、星形高分子化合物の一次構造は、分岐度と分子量により評価し得る。
【0029】
〔成分(A)ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類〕成分(A)のヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類について特に制限はない。好適な具体例としては、例えば乳酸の環状二量体であるラクタイド、グリコール酸の環状二量体であるグリコライド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられるが、得られる分解性重合体の透明性から、ラクタイドが好ましい。また、これらのヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類は単独または2種類以上組み合わせて使用しても良いが、2種類以上のヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類を組み合わせて使用する場合、得られる分解性重合体の透明性からラクタイドを含むもの(ラクタイドとその他のヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類との組み合わせ)であることが好ましい。
【0030】
また、ラクタイドのように分子内に不斉炭素を有する場合には、D体、L体、及びメソ体が存在するが、それらの何れも使用することができる。なかでも、L−ラクタイドが特に好ましい。
【0031】
〔成分(B)3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物〕成分(B)の3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその酸無水物について特に制限はないが、具体例としては、例えば、線状化合物及び環状化合物が挙げられる。成分(B)の3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物の酸無水物は、分子内に無水物結合を有するものであってもよいし、分子間に無水物結合を有し、環状又は線状となったものでもよい。分子間に無水物結合を有する場合には、二量体以上のオリゴマーであってもよいし、ポリマーであってもよい。
[1] 環状化合物の具体例環状化合物の具体例としては、例えば、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、テトラヒドロフラン−2R,3T,4T,5C−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、2,3,4,5−フランテトラカルボン酸、2−メチル−3,4,6−ピリジントリカルボン酸、等の3個以上のカルボキシル基を有する脂肪族多価カルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3個以上のカルボキシル基を有する芳香族多価カルボン酸及び、これらの酸無水物が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、分子内に不斉炭素を有する場合には、D体、L体及びそれらの当量混合物(ラセミ体)が存在するが、それらの何れも使用することができる。
[2]線状化合物の具体例線状化合物の具体例としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、2−メチルプロパントリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸等の3個以上のカルボキシル基を有する脂肪族多価カルボン酸、及び、これらの酸無水物が挙げられる。これらは、単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、分子内に不斉炭素を有する場合にはD体、L体及びそれらの当量混合物(ラセミ体)が存在するが、それらの何れも使用することができる。
【0032】
〔線状のオリゴ又はポリの酸無水物(アンヒドリド)〕
本出願明細書において、「線状」なる語の概念には、線状のみならず、成分(B)の3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物の線上の二量体以上のオリゴ又はポリの酸無水物(アンヒドリド)が大環状を形成している場合をも包含する。また、2種類以上の成分(B)の3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物の共重合線状縮合物を使用することもできる。ここで、「線状」とは、「小環状」と相対する反対の概念を有するが、「分岐状」と相対する反対の概念を有するものではない。したがって、本出願明細書において、「線状」なる概念は、あくまでも「小環状」となっていないという概念であり、「線状」に連なっているもの、直鎖状のもの、大環状、分岐状、分枝状、星状、三次元網目状、IPN(インター・ペネトレーテッド・ネットワーク)等のいずれの一次乃至高次構造をも包含する。「多価カルボン酸化合物の線状酸無水物」なる語の概念には、「ポリマー状ポリ酸無水物」、「ポリマー骨格に酸無水物基を含有し、かつ、複数の酸官能基を含有する、ポリマー状ポリ酸無水物」、「カルボン酸のポリ酸無水物」、「polymeric polyanhidride」、「polymeric polyanhidride containing snhydride linkages in the polymeric backbone」、「polymeric polycarboxylic acids containing anhidride linkages in the polymeric backbone」及び「polyanhidride of carboxylic acids」等をも包含する。
【0033】
本出願明細書で用いる「アンヒドリド」、「アンヒドリド基」、「アンヒドリド結合」及び「ポリアンヒドリド」なる語の概念には、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encycropedia of PolymerScience and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・996〜998頁の「ポリアンヒドリド」の項に記載されているそれぞれの語に関する概念をも包含する。ポリアンヒドリドは、生分解性バイオ(メディカル)ポリマー材料及び該材料のドラッグデリバリーシステムへの応用に関する研究開発が旺盛であった1980年代初頭、、MITの研究者たちにより精力的に研究され、注目されるようになった。線状のオリゴ又はポリの多価カルボン酸化合物の酸無水物(アンヒドリド)は、例えば、溶融重縮合、溶液重縮合、界面重縮合などの方法によって合成することができる。
【0034】
〔成分(C)2個以上の水酸基を有する多価アルコール〕
成分(C)の2個以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、イノシトールである。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。また、分子内に不斉炭素を有する場合にはD体、L体及びそれらの当量混合物(ラセミ体)が存在するが、それらの何れも使用することができる。
【0035】
〔成分(D)触媒〕
本発明に係る分解性重合体の製造方法において、成分(D)の触媒は、反応の進行を実質的に促進する限り、特に制限されない。
【0036】
[1]成分(D)の触媒の具体例成分(D)の触媒の具体例としては、例えば、周期表II、III、IV、V族の金属、その酸化物あるいはその塩等が挙げられる。より具体的には、亜鉛末、錫末、アルミニウム、マグネシウム等の金属、酸化第一錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物、塩化第一錫、塩化第二錫、臭化第一錫、臭化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の金属ハロゲン化物、硫酸錫、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、酢酸錫、オクタン酸錫、乳酸錫、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム等の有機カルボン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸錫、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸錫等の有機スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸、及び酸類、ホウ酸亜鉛が挙げられる。その他の例としては、ジブチルチンオキサイド等の上記金属の有機金属酸化物、又は、チタニウムイソプロポキシド等の上記金属の金属アルコキサイド、又は、ジエチル亜鉛等の上記金属のアルキル金属等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
[2] 成分(D)の触媒の使用量成分(D)の触媒の使用量は、実質的に、反応速度を促進する程度のものであれば、特に制限されない。触媒の使用量は、一般的には、成分(A)のヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/またはラクトン類の0.0001〜5重量%の範囲が好ましく、経済性を考慮すると、0.001〜1重量%の範囲がより好ましい。
【0037】
〔反応及び反応方法〕
本発明に係る分解性重合体の製造方法において、成分(A)として、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類、成分(B)として、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその酸無水物、成分(C)として、2個以上の水酸基を有する多価アルコール、成分(D)として、触媒、を含む反応系で反応する方法は何れの方法で行ってもよい。通常は成分(A)、(B)、(C)、(D)を一括装入して開環重合の手法で重合を行うが、成分(A)のヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類を、2種類以上組み合わせて使用する場合は、得られる分解性重合体の物性を制御する目的で、成分(A)を反応の途中で分割装入する場合もある。
【0038】
〔成分(B)及び成分(C)の組成〕
本発明に係る分解性重合体の組成は、成分(B)の重量が、成分(A)が単独で完全に重合したと仮定した場合の重量物の重量を基準として、0.005〜1%、好ましくは0.01〜0.5%に相当するものであり、かつ、成分(B)のカルボキシル基と成分(C)の水酸基の当量比が、100:50〜200、好ましくは100:80〜120、より好ましくは100:90〜110であることを特徴とするものである。成分(B)の重量が0.005%未満の場合は、得られる分解性重合体の溶融張力が十分ではなくなる傾向が見られる。成分(B)の重量が1%を超える場合は、反応に伴って副生する水の影響で到達分子量が低くなり、実用的強度を持つ分解性重合体が得られにくくなる傾向が見られる。また、成分(B)のカルボキシル基と成分(C)の水酸基の当量比が上記範囲からはずれる場合は、得られる分解性重合体の溶融張力が十分でなくなったり、重合体の分子量が上がらなくなり、実用的強度を持った分解性重合体が得られにくくなる傾向が見られる。
【0039】
〔反応における操作〕
本発明に係る分解性重合体の製造方法において、系外から水分が入らないように、真空又は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で反応を行なうことが好ましく、不活性ガスで置換しながら、又は不活性ガスでバブリングしながら行なってもよい。本発明に係る分解性重合体の製造方法は、触媒(D)の存在下に成分(A)を開環重合させる条件で、成分(B)、成分(C)を同時に重合させることにより製造することができる。反応は通常溶融状態で行うが、反応の形態として固相重合で行うことも可能である。本発明に係る分解性重合体の製造方法において、反応は、連続操作でも回分操作でも行うことができる。
【0040】
〔反応温度〕
本発明において、固相重合を行なう場合には、反応温度は、反応系に存在し得る分解性重合体が実質的に固相状態を維持しながら、反応の進行を維持できれば特に制限されない。具体的には、反応系に存在している分解性重合体の融点以下の温度で反応させるが、100℃以上、融点以下の温度範囲で反応させることが好ましい。本発明において、溶融重合を行なう場合には、反応温度は、反応系に存在し得る分解性重合体を実質的に溶融状態に維持しながら、反応の進行を維持できれば特に制限されない。具体的には、反応系に存在している分解性重合体の融点以上で反応させるが、融点以上、250℃以下の温度範囲で反応させることが好ましい。
【0041】
〔反応生成物(分解性重合体)の回収方法〕
本発明において採用する、反応終了後に反応生成物たる分解性重合体を回収する方法は、実質的に反応生成物を所望の純度で回収できるものであれば、特に制限されない。反応生成物の回収方法は、公知・公用のいずれの方法によってもよい。回収方法の具体例としては、例えば、溶融状態の反応生成物から、含有する未反応の原料及び低沸点の成分を減圧下で除去し、そのまま抜き出して冷却することにより分解性重合体を得る方法や、反応生成物を溶媒に加熱溶解し冷却析出させる、あるいは、反応生成物を良溶媒に溶解し、貧溶媒中で析出させた後、更に減圧下、加熱しながら乾燥を行なう方法等が挙げられる。
【0042】
〔分解性重合体の分子量及び分子量分布の制御〕
本発明に係る分解性重合体の重量平均分子量及び分子量分布は、触媒の種類及び量、反応温度、反応時間、成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」の添加量、成分(C)の「2個以上の水酸基を有する多価アルコール」の添加量等の反応条件を適宜選択することにより、所望のものに制御することができる。本発明に係る分解性重合体の重量平均分子量は、一般的には、約50,000〜1,000,000の範囲のものが好ましく、100,000〜1,000,000の範囲のものがより好ましく、200,000〜1,000,000の範囲のものが特に好ましい。
【0043】
〔分解性重合体〕
本発明に係る分解性重合体は、多糖類に分解性高分子量側鎖を付加した重合体に比べ、着色しにくいという特徴がある。本発明に係る分解性重合体は、通常の脂肪族ポリエステルに比べ、同等以上の高い透明性を有するという特徴がある。本発明に係る分解性重合体は、通常の脂肪族ポリエステルに比べ、顕著に溶融張力が大きいという特徴がある。これにより、成形加工性が大きく改善され、様々な種類の成形物を製造することが可能になった。本発明の分解性重合体は、側鎖の構成成分であるヒドロキシカルボン酸の種類及び組成によって所望の物性の分解性重合体を得ることができる。この際、側鎖を、構成しているポリヒドロキシカルボン酸成分は、単一重合体(ホモポリマー)でも、共重合体(コポリマー)でもよく、共重合体の場合、その配列様式はランダム共重合体、交差共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れでも良い。また、側鎖を構成しているポリヒドロキシカルボン酸の構造は特に制限されない。また、本発明の分解性重合体には、多官能性中心化合物(3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物)に分解性高分子量側鎖(ポリヒドロキシカルボン酸)を付加してできた星型高分子どうしを2個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールで連結した構造を有しており、これにより、前述の高い溶融張力が発現したものと考えられる。
【0044】
〔溶融張力〕
溶融張力の評価方法については、例えば、「プラスチック加工技術ハンドブック」(社団法人高分子学会編著、日刊工業新聞社発行、1995年)1414〜1416ページの「(2)溶融張力」の項に詳しく解説されている。溶融張力は、溶融張力測定装置により、一定速度でメルトインデクサから押し出されたストランドを、一定の糸径まで延伸するために必要な張力であり、実際の成形温度に対応した試験温度で測定する。一般に、溶融張力が大きいと、インフレーション成形でのバブル安定性がよく、ブロー成形におけるドローダウンは小さくなる。また、シート、キャストフィルム成形での製品となるフィルム幅がダイ出口幅より狭くなるネックイン現象があるが、このネックイン量も溶融張力と密接な関係がある。本発明に係る分解性重合体の溶融張力は、成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」、成分(C)の「2個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコール」の種類及び添加量により、所望のものに制御することができる。本発明に係る分解性重合体の溶融張力は、荷重2160gを用いて、適当な2つの温度においてメルトフローインデックスを測定し、温度−メルトフローインデックス−プロットよりメルトフロ−インデックスが10g/10分となる温度を求め、その温度において溶融張力を測定したとき、その値が0.7g以上のものが好ましい。
【0045】
〔分解性重合体の用途〕
本発明に係る分解性重合体は、本出願前に公知・公用であった医療用途、食料品包装用途や汎用に使用されている樹脂の代替物として好適に使用することができる。
【0046】
〔本発明に係る分解性重合体の成形加工法〕
本発明に係る分解性重合体の成形加工法は特に限定されないが、具体的には、射出成形、押出成形、インフレーション成形、押出中空成形、発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形、バルーン成形、真空成形、紡糸等が好ましく、中でも、インフレーション成形、ブロー成形、押出中空成形、発泡成形、真空成形、紡糸が特に好ましい。また、該分解性重合体は、適当な成形加工法により、例えば、ボールペン・シャープペン・鉛筆等の筆記用具の部材、ステーショナリーの部材、ゴルフ用ティー、始球式用発煙ゴルフボール用部材、経口医薬品用カプセル、肛門・膣用座薬用担体、皮膚・粘膜用張付剤用担体、農薬用カプセル、肥料用カプセル、種苗用カプセル、コンポスト、釣り糸用糸巻き、釣り用浮き、漁業用擬餌、ルアー、漁業用ブイ、狩猟用デコイ、狩猟用散弾カプセル、食器等のキャンプ用品、釘、杭、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材、ブロック等としても好適に使用することができる。本発明に係る分解性重合体は、適当な成形加工法により、例えば、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、箸、割り箸、フォーク、スプーン、串、つまようじ、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚、精肉、青果、豆腐、惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用のボトル、炭酸飲料・清涼飲料等のソフトドリンク用のボトル、ビール・ウイスキー等の酒類ドリンク用のボトル、シャンプーや液状石鹸用のポンプ付き又はポンプなしのボトル、歯磨き粉用チューブ、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、植木鉢、浄水器カートリッジのケーシング、人工腎臓や人工肝臓等のケーシング、注射筒の部材、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機会の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材としても好適に使用することができる。
【0047】
〔フィルムやシートの製造、製膜〕
本発明に係る分解性重合体は、ブロー成形、発泡成形、押出成形等の溶融した重合体の強度を要する加工に適している。例えば、押出成形によるシートの場合に、溶融されたシートの垂れ下がりやネックインによるシート巾の減少が少ないという特徴がある。
【0048】
[1]製造技術本発明に係る分解性重合体を含むフィルムやシートは、公知・公用の押出法、共押出法、カレンダー法、ホットプレス法、溶媒キャスティング法、インフレーション法、バルーン法、テンター法等の技術により製造できる。製造に供する分解性重合体の熱的特性、分子構造、結晶性等を考慮して製造条件を設定する。
【0049】
[2]添加剤添加剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、滑剤、充填剤、付着防止剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑り防止剤、顔料等)、押出条件、延伸条件等を目的に応じて、適宜、選択することにより、所望の物性、ガスバリア性、光学特性、透過光波長スペクトル、遮光性、耐油性等の特性を有する、本発明に係る分解性重合体を含むフィルムやシートを製造することができる。
【0050】
[3]工程設計製造工程においては、一軸延伸倍率、二軸延伸倍率、延伸段数、熱処理温度、熱処理温度の変化速度、冷却ローラーの数、冷却ローラーの配置形式、冷却ローラーへの巻き付け形式、冷却ローラー温度、冷却ローラー表面の鏡面仕上度等の条件を目的に応じて、適宜、設定することができる。
【0051】
[4]品質管理の方法論製造工程において、放射線、電磁波、光、超音波等を用いた、公知・公用の計測光学的方法を採用することにより、製品の厚さのデータを検知し、該データを製造工程にフィードバックすることにより、製品の厚さのバラツキを、手動により、又は自動制御により品質管理をすることができる。放射線を用いた計測光学的方法としては、例えば、透過型(吸収型)又は散乱型のアルファー線厚さ計、ベータ線厚さ計、ガンマ線厚さ計を用いる方法が包含され、線源としては、公知・公用の放射性同位元素が用いられる。
【0052】
[5]後処理工程及び仕上げ工程の方法論後処理工程又は仕上工程においては、ウェルディング、ヒートシール、ミシン目付与、プライマー塗布、粘着剤塗布、薬剤塗布、パーカライジング、蒸着、スパッタリング、CVD、コーティング、エッチング、吹き付け、染色、塗装、静電塗装、エアブラッシング、ラミネート、サンドイッチ、エンボス賦与、立体模様賦与、型押し、波付け、印刷、転写、サンンディング、サンドプラスト、シャーリング、パンチング、打ち抜き、ハニカム構造化、段ボール構造化、積層体形成等の後処理や仕上の加工を行なうこともできる。後処理工程又は仕上工程には、目的に応じ、カレンダー法、押出法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版法、凹版法、ドクターブレード法、浸積法、スプレー法、エアブラシ法、静電塗装法等の公知・公用の方法を採用することができる。本発明に係る分解性重合体を含むフィルム又はシートは、紙や他の重合体等の他の材質のシートと、ラミネートや貼り合わせ等により、多層構造の積層体とすることもできる。
【0053】
[6]押出法又は共押出法の方法論押出法又は共押出法において、Tダイ、インフレーションダイ(円形ダイ)、フラットダイ、フィードブロック/シングルマニホールドダイやいくつかのフィードブロックを組み合わせたシングルマニホールドダイ等の公知・公用のダイを用いることができる。共押出法においては、性質の異なる複数の該重合体及び又は他種重合体を用いて、多層フィルムを製造することができる。インフレーション法又はバルーン法を採用すると、二軸同時延伸ができるために、低伸び率・高弾性率・高強靭性を有する丈夫な製品を、高い生産性で、相対的に安価に製造することができ、かつ、形状が袋状(シームレス状)であるため、スーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ等の袋やバッグの生産に好適である。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る分解性重合体及び又は他種重合体を用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。インフレーション法又はバルーン法と共押出法と組み合わせることもできる。本発明に係る分解性重合体を含むフィルム又はシートは、目的に応じて工程条件を設定することにより、ロール状、テープ状、カットシート状、板状、袋状(シームレス状)に製造することができる。
【0054】
[7]二次的加工本発明に係る分解性重合体を含むフィルム又はシートは、ポリヒドロキシカルボン酸単独の場合には満足することが困難な特性を発現することができる。例えば、ポリヒドロキシカルボン酸単独の場合には、ドローダウン性が大きいために、加工温度、成形サイクル等の成形加工条件の選択の幅が相対的に狭い。対照的に、本発明に係る分解性重合体の場合には、ドローダウン性が小さいために、加工温度、成形サイクル等の成形加工条件の選択の幅が相対的に広い。それゆえ、本発明に係る分解性重合体を含むフィルム又はシートは、延伸加工、ブロー加工、真空成形等の二次的、三次的又は高次的な形状を付与する、いわゆる二次加工にも好適な材料である。
【0055】
[8]用途の具体例本発明に係る分解性重合体を含むフィルム又はシートは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、セメント袋、肥料袋、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、農業用・園芸用フィルム、温室用フィルム、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フロッピーディスク包装用フィルム、フェンス、海洋用、河川用・湖沼用オイルフェンス、粘着テープ、テープ、結束材、防水シート、かさ、テント、土嚢用袋等として好適に使用することができる。また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の無機物を含む重合体を押し出して作成したフィルムを、さらに延伸加工することにより、通気性を持った多孔性フィルムを得ることもでき、オムツカバーや特殊な包装材料等に使用することができる。
【0056】
〔シームレスパイプの製造〕
円形ダイによる押し出しにより、本発明に係る分解性重合体を含むシームレスパイプを製造することができる。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る分解性重合体及び又は他種重合体を用いて、多層シームレスパイプを製造することもできる。
【0057】
〔角材・丸材の製造〕
ダイによる押し出しにより、本発明に係る分解性重合体を含む角材や丸材を製造することができる。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る分解性重合体及び又は他種重合体を用いて、多層構造断面を有する角材や丸材を製造することもできる。このような共押出法との組み合わせにより、例えば、金太郎飴、鳴門巻、伊達巻のような、特定の断面構造と断面輪郭を有する角材や丸材を製造することもできる。
【0058】
〔発泡体〕
[1] 「発泡体」なる語の概念既に述べたように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「発泡体」なる語の概念には、樹脂の内部に多くの空隙(気泡、ボイド、マイクロボイド、キャビティーを含む)が存在する、見かけ密度の小さい、樹脂の連続相中に、空隙相(空隙は連続のものも、独立のものも含む)が混在した、二相構造又は多相構造を有する樹脂構造体を包含し、例えば、細胞構造を有する高分子、発泡高分子、膨張高分子、高分子発泡体、高分子フォーム等の構造体と認識されるもの一般をも包含し、軟質のものも硬質のものも包含する。
【0059】
[2]発泡体の製造本発明に係る分解性重合体を含む発泡体は、公知・公用の方法により製造することができる。例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concice Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・811〜815頁に記載されている発泡剤や発泡技術を好適に用いることができる。また、いわゆるオゾン層保護のためのフロン規制に関するモントリオール議定書の規制に従い、適宜、環境規制基準をクリアした新規の又は公知・公用の発泡剤や発泡技術を好適に用いることができる。発泡体の空隙(気泡、ボイド、マイクロボイド、キャビティーを含む)の、連続性、独立性、大きさ、形状、分布、大きさの均一性等の特性は、目的に応じ、適宜、発泡条件を設定することにより制御することができる。
【0060】
[3]発泡剤発泡剤には、不活性ガス、分解すると不活性ガスを発生する化学的発泡剤、炭素数3〜5である炭化水素又は塩素化炭化水素、フルオロカーボン類、フロン類、水、窒素、LPG、LNG、低沸点有機液体、炭酸ガス、不活性ガス等を包含する。化学的発泡剤の例としては、炭酸水素ナトリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、スルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、ジイソプロピルヒドラゾジカルボキシラーゼ、5−フェニル−3,6−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアジン−2−オン、水酸化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。物理的発泡剤の例としては、n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、1−ペンテン等のペンタン類、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、シクロヘキサン等のヘキサン類、n−ヘプタン、2,2−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1−ヘプテン等のヘプタン類、トルエン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、メタノール、2−プロパノール、イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン等が挙げられる。フルオロカーボン類の例としては、CFC−11、CFC−12、CFC−113、CFC−114等のCFCシリーズのフロンが挙げられる。
【0061】
[4]汎用用途本発明に係る分解性重合体を含む発泡体は、例えば、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚・精肉・青果・豆腐・惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳、ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用の容器、炭酸飲料・清涼飲料等の容器、ビール・ウィスキー等の酒類ドリンク用の容器、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、植木鉢、テープ、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、カメラ、眼鏡・顕微鏡・望遠鏡等の光学機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス、陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材、遮光材、断熱材、防音材としても好適に使用することができる。
【0062】
[5]医療用途及び衛生用途本発明に係る分解性重合体を含む発泡体は、医療用又は衛生用に好適に用いることができる。例えば、包帯、皮膚・粘膜用貼付剤用担体、三角巾、絆創膏、タオル、使い捨てタオル、使い捨て濡れタオル、おしぼり、雑巾、ティッシュー、清浄用・消毒用ぬれティッシュー、あかちゃんのおしりふき用ぬれティッシュー、使い捨ておむつ、生理用・おりもの用ナプキン、生理用タンポン、手術用・出産用血液吸収用タンポン、衛生用カバーストック材、滅菌バッグ等に好適に用いることができる。これら医療用又は衛生用の製品は、加熱や蒸気による滅菌、エチレンオキサイドガスによる滅菌、過酸化水素水やオゾンによる滅菌、紫外線や電磁波の照射による滅菌、ガンマ線等の放射線の照射による滅菌、エタノールや塩化ベンザルコニウム等の殺菌材等を用いた公知・公用の方法により滅菌、殺菌又は消毒のうえ、無菌包装をすることができる。また、HEPAフィルターにより超清浄空気を層流で供給できるクリーンベンチやクリーンルームの中に、工程を設置することにより、無菌状態及び又はエンドトキシン・フリーの状態で製品を製造、包装することもできる。
【0063】
[6]一般産業用途及びレクリエーション用途本発明に係る分解性重合体を含む発泡体は、農業、漁業、林業、工業、建設土木業、運輸交通業を包含する一般産業用途及びレジャー、スポーツを包含するレクリエーション用途に好適に用いることができる。例えば、農業用寒冷紗、オイル吸収材、軟弱地盤補強材、人工皮革、フロッピーディスクの裏地、土嚢用袋、断熱材、防音材、クッション材、ベッド、椅子等の家具用クッション材、床用クッション材、包装材、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材等として好適に用いることができる。
【0064】
〔紡糸〕
[1] 「糸」なる語の概念既に述べたように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「糸」なる語の概念は、繊維便覧・加工編(繊維学会編、丸善、東京、1969年)・393〜421頁に記載されている「原糸」の概念をも包含し、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルファイバー(スフ)、トウ、ハイバルクスフ、ハイバルクトウ、紡績糸、混紡糸、加工糸、仮撚糸、異形断面糸、中空糸、コンジュゲート糸、POY(部分配向糸)、DTY(延伸加工糸)、POY−DTY、スライバー等をも包含する。
【0065】
[2]糸の製造(紡糸、製糸)
本発明に係る分解性重合体は、溶融紡糸及び乾式紡糸に好適な材料である。本発明に係る分解性重合体は、製糸条件、紡績条件、編織条件、後処理条件、染色条件、加工条件を、目的に応じて、適宜設定することにより、所望の、太さ、断面形状、繊度(テックス、デニール、番手等)、より、引っ張り強さ及び伸び率、結束強さ、耐熱性、捲縮度、吸水性、吸油性、嵩高さ、腰の強さ、風合い等の物性や特性を有する糸やテキスタイルに加工することができる。
【0066】
[3]異形断面糸・多層構造糸・中空糸の製造本発明に係る分解性重合体は、目的に応じて、適宜、紡糸口金を設計することにより、木綿の有するルーメン構造に類似した中空構造を有する繊維、羊毛の有するキューティクル/コルテックス/メデュラ同軸3層構造に類似したコア・シェル構造を有する繊維、羊毛の有するバイラテラル構造に類似したコンジュゲート構造を有する繊維、絹の有する三角形断面構造に代表されるような異形又は多角形の断面を有する繊維にも好適に紡糸することができる。
【0067】
多層の口金(ノズル、オリフィス)で紡糸することにより、性質の異なる複数の本発明に係る分解性重合体及び又は他種重合体を用いて、多層構造断面を有する糸を製造することもできる。このような共紡糸により、例えば、金太郎飴、鳴門巻、伊達巻、バウム・クーヘン等のような、特定の断面層構造と断面輪郭を有する糸を製造することもできる。中空の口金(ノズル、オリフィス)で紡糸することにより、本発明に係る分解性重合体を含む中空糸を製造することができる。共紡糸と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る分解性重合体及び又は他種重合体を用いて、多層中空糸を製造することもできる。例えば、空隙に顔料を充填した中空糸を水に濡れても透けないテキスタイルに応用したり、空隙に液晶を充填した中空糸を温度により色調が変化するテキスタイルに応用したり、空隙にセラミックスやカーボンブラックを充填した中空糸を遠赤外線吸収性の吸熱テキスタイルに応用したり、空隙に鉛を充填した中空糸を水に沈む漁網に応用したりすることもできる。
【0068】
[4]工程設計製糸工程においては、紡糸口金の形状・様式、延伸倍率、延伸段数、熱処理温度、熱処理温度の変化速度、捲縮賦与、油剤処理等の条件を目的に応じて、適宜、設定することができる。
【0069】
[5]製品エクセーヌ(登録商標、東レ)を構成する繊維又はそれより細い繊維に匹敵するような極微細繊維から、ファスナー用工繊の太さに匹敵するような超太手繊維又はそれより太い繊維まで、所望の繊度を有する本発明に係る分解性重合体を含むフィラメントを好適に製造することができる。
【0070】
〔テキスタイルの製造〕
[1]「テキスタイル」なる語の概念既に述べたように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「テキスタイル」なる語の概念には、織布、編物、不織布、紐や縄を含む組物、綿状ハイバルクスフ、スライバー、多孔質スポンジ、フェルト、紙、網等の繊維構造体と認知されるもの一般を包含する。
【0071】
[2]織物の製造公知・公用の織機やシャットルレス織機(ウォータジェットルーム、エアジェットルーム)を用いることにより、フィラメント糸織物、紡績糸織物、ストレッチ織物、産業資材織物を製造することができる。
【0072】
[3]編物・組物・網物等の製造公知・公用の編機を用いて、メリヤス、横編、丸編、縦編、トリコット、丸編靴下、シームレス靴下、トリコット靴下、レース、組物、網物を製造することができる。
【0073】
[4]スフ(ステープル・ファイバー)の製造本発明に係る分解性重合体を含むスフは、他の天然繊維、合成繊維及び又は半合成繊維のスフと任意の混合比、任意のステープル・ダイアグラムで混紡することもできる。本発明に係る分解性重合体を含むスフは、紙の原材料、複合材料用充填材、複合材料用ウイスカー(ねこひげ)、FRP充填用繊維としても好適に使用することができる。
【0074】
[5]不織布の製造本発明に係る分解性重合体を含む不織布は、公知・公用の方法により製造することができる。本発明に係る分解性重合体を含む不織布の製造には、例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・906〜910ページに記載されている、製造法を好適に採用することができる。本発明に係る分解性重合体を含む不織布の製造には、例えば、乾式−カード法、熱接着法、エアアレイ法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、ミクロファイバー法、流水交絡法、ニードルパンチ法、積層法、ステッチボンド法、抄紙法等を好適に採用することができる。本発明に係る分解性重合体を含む不織布は、シンサレート(登録商標、スリーエム)やアイザック(登録商標、帝人)のような上市されている不織布と同様に、ゴアテックス(登録商標、潤工社、延伸微多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))やエスポアール(登録商標、三井東圧化学)のような上市されている蒸気は透過するが、水は透過させないような防水シートと組み合わせることにより、防寒・防水服(登山用、スキー用等)に応用することができる。
【0075】
[6]テキスタイルの用途本発明に係る分解性重合体を含むテキスタイルは、一般衣料用又は医療用衣料用の外衣、作業衣、手術着、ねまき、下着、肌着、裏地、帽子、マスク、包帯、三角巾、ソックス、婦人用ストッキング、婦人用ファウンデーション(ブラジャー、ショーツ等)、パンスト、タイツ、靴下、軍足、手袋、軍手、タオル、ガーゼ、手拭い、カーペット、マット、カーテン、壁紙、衣服芯材、自動車用内装材、マットレス、袋、風呂敷、寝具、布団綿、枕カバー、毛布、シーツ、防寒着用断熱材、レース、テープ、合成又は人工の人造皮革、合成又は人工の人造ファー、合成又は人工の人造スウェード、合成又は人工の人造レザー、網状パイプ等に好適に用いることができる。本発明に係る分解性重合体を含むテキスタイルは、医療用又は衛生用に好適に用いることができる。例えば、外科手術用縫合糸、包帯、三角巾、絆創膏、タオル、使い捨てタオル、使い捨て濡れタオル、営業用ロールタオル、おしぼり、雑巾、ティッシュー、清浄用・消毒用ぬれティッシュー、あかちゃんのおしりふき用ぬれティッシュー、使い捨ておむつ、消毒綿、生理用・おりもの用ナプキン、生理用タンポン、アンダーパッド、手術用・出産用血液吸収用タンポン、衛生用カバーストック材、滅菌バッグ、生ゴミ用ネット、ゴミ袋等に好適に用いることができる。
【0076】
これら医療用又は衛生用の製品は、上記発泡体の場合と同様の方法により、滅菌、殺菌又は消毒のうえ、無菌包装をすることができる。また、上記発泡体の場合と同様の方法により、無菌状態及び又はエンドトキシン・フリーの状態で製品を製造、包装することもできる。
【0077】
本発明に係る分解性重合体を含むテキスタイルは、農業、漁業、林業、工業、建設土木業、運輸交通業を包含する一般産業用途及びレジャー、スポーツを包含するレクリエーション用途に好適に用いることができる。例えば、農業用寒冷紗、防虫防鳥網、ふるい、釣り糸、漁網、投網、延縄、オイル吸収材、網、ロープ、ザイル、セイル(帆布)、幌、ターポリン、タイコン、コンテナバッグ、産業用通い袋、セメント袋、肥料袋、濾過材、埋立工事用透水布、軟弱地盤補強用布、人工皮革、製紙用フェルト、フロッピーディスクの裏地、テント、土嚢用袋、植林用ネット、断熱材、防音材、遮光材、衝撃緩衝材、クッション材、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材、ネット状パイプ、土木建築用水抜きパイプ等として好適に用いることができる。上記衝撃緩衝材には、例えば、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、カメラ・眼鏡・顕微鏡・望遠鏡等の光学機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材をも包含する。
【0078】
【実施例】
〔合成例、実施態様、実施例〕
以下に合成例、実施態様、実施例をあげて本発明を詳述する。なお、本出願の明細書における合成例、態様、実施例の記載は、本発明の内容の理解を支援する説明であって、その記載は本発明の技術的範囲を狭く解釈する根拠となる性格のものではない。
〔実施例における物性測定の方法論〕この実施例で用いた評価方法は、以下の通りである。
(1)重量平均分子量
得られた分解性重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
(2)示差熱分析
走査熱量計(DSC−3100、マックサイエンス社製)で、−20℃〜230℃の温度範囲で分析した。
(3)引張強度
引張強度は、JIS K−6372に従って、180℃で熱プレスして作成したフィルムサンプルを用いて測定した。
(4)曲げ強度
曲げ強度は、JIS K−7113に従って、180〜200℃で射出成形した所定の形状の成形物を用いて測定した。
(5)Haze(曇度)
180℃で熱プレスした、厚さ100μmのフィルムサンプルについて、JIS K−6714に従って、HazeメーターTC−HIII(東京電色(株))を用いて測定した。
(6)黄色度(YI値)
2mm厚のプレートサンプルを作成し、これについて、黄色度をJIS K−7103に従って、SMカラーコンピューター(型式:SM−6−IS−2B、スガ試験機(株))にて測定した。
(7)溶融張力(MT値)
荷重2160gを用いて、適当な2つの温度でメルトフローインデックスを測定した後、温度−メルトフローインデックス−プロットより、メルトフローインデックスが10g/10分となる温度を求め、その温度において、溶融張力を測定した。
(8)分解性
180℃で熱プレスしたフィルムを堆肥中に、室温で、30日間、埋設し、埋設の前後で、引張強度を測定し、分解性を評価した。
【0079】
〔実施例1〕
L−ラクタイド72.0g、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸93.7mg、1,4−ブタンジオール72.1mg、オクタン酸錫1.08gをトルエンに溶解して100mlに調整した触媒溶液1mlを300mlのステンレス製反応器に装入した。40℃、2mmHgでトルエンを留去し、乾燥窒素雰囲気下、1.5時間かけて170℃まで昇温した後、210℃で2時間反応した。次いで未反応モノマーを200℃、2mmHgで1時間かけて系外へ留去した後、重合物を反応器の底からストランド状に抜き出し、分解性重合体68.0g(収率94%)を得た。
【0080】
諸物性を以下に示す。
重量平均分子量:320,000
示差熱分析:ガラス転移温度は60.0℃、融点は167.0℃
引張強度:550kg/cm2
引張伸度:8%
曲げ強度:820kg/cm2
Haze:<1%
黄色度(YI値):2.2
また、メルトフローインデックス(MI値)が、10g/10分となる温度と、その温度における溶融張力(MT値)、及び分解性の評価を以下に示す。
温度(MI:10g/10分):187℃
溶融張力(MT値):3.5g
分解性:フィルムは、強度が測定できないほど劣化していた。
【0081】
〔実施例2〕
L−ラクタイド72.0g、無水トリメリット酸101.4mg、1,4−ブタンジオール72.1mg、オクタン酸錫1.08gをトルエンに溶解して100mlに調整した触媒溶液1mlを300mlのステンレス製反応器に装入した。40℃、2mmHgでトルエンを留去し、乾燥窒素雰囲気下、1.5時間かけて170℃まで昇温した後、210℃で2時間反応した。次いで未反応モノマーを200℃、2mmHgで1時間かけて系外へ留去した後、重合物を反応器の底からストランド状に抜き出し、分解性重合体67.5g(収率94%)を得た。
【0082】
諸物性を以下に示す。
重量平均分子量:300,000
示差熱分析:ガラス転移温度は59.0℃、融点は165℃
引張強度:560kg/cm2
引張伸度:7%
曲げ強度:830kg/cm2
Haze:<1%
黄色度(YI値):1.8
また、メルトフローインデックス(MI値)が10g/10分となる温度と、その温度における溶融張力(MT値)、及び分解性の評価を以下に示す。
温度(MI:10g/10分):184℃
溶融張力(MT値):2.2
分解性:フィルムは、強度が測定できないほど劣化していた。
【0083】
〔実施例3〕
L−ラクタイド72.0g、無水トリメリット酸38.0mg、ペンタエリスリトール20.4mg、オクタン酸錫1.08gをトルエンに溶解して100mlに調整した触媒溶液1mlを300mlのステンレス製反応器に装入した。40℃、2mmHgでトルエンを留去し、乾燥窒素雰囲気下、1.5時間かけて170℃まで昇温した後、210℃で2時間反応した。次いで未反応モノマーを200℃、2mmHgで1時間かけて系外へ留去した後、重合物を反応器の底からストランド状に抜き出し、分解性重合体67.0g(収率93%)を得た。
【0084】
諸物性を以下に示す。
重量平均分子量:360,000
示差熱分析:ガラス転移温度は58.5℃、融点は164℃
引張強度:530kg/cm2
引張伸度:8%
曲げ強度:810kg/cm2
Haze:<1%
黄色度(YI値):1.5
また、メルトフローインデックス(MI値)が、10g/10分となる温度と、その温度における溶融張力(MT値)、及び分解性の評価を以下に示す。
温度(MI:10g/10分):188℃
溶融張力(MT値):4.5g
分解性:フィルムは、強度が測定できないほど劣化していた。
【0085】
〔比較例1〕
重量平均分子量220,000のL−ポリ乳酸を示差熱分析したところ、ガラス転移温度は60.0℃、融点は168.5℃の値を示した。
該ポリ乳酸を用いて、温度180℃でホットプレスして、プレスフィルムを作成した。得られたフィルムの物性を以下に示す。
引張強度:570kg/cm2
引張伸度:7%
Haze:<1%曲げ強度:900kg/cm2
また、メルトフローインデックス(MI値)が10g/10分となる温度と、その温度における溶融張力(MT値)、黄色度(YI値)及び分解性の評価を以下に示す。
温度(MI:10g/10分):185℃
溶融張力(MT値):0.6gで実施例と比較して低い値である。
黄色度(YI値):1.8
分解性:フィルムは、強度が測定できないほど劣化していた。
【0086】
【発明の効果】
本発明により製造された分解性重合体は、従来の技術による一般的な脂肪族ポリエステル(例えば、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールが重縮合した脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸が重縮合した脂肪族ポリエステル等)と比較して、[1]同等以上の高い透明性を保持しつつ、かつ、[2]顕著に高く優れた溶融張力を有し、[3][2]の特質ゆえ、成形加工性(発泡成形等)に優れる、等の特徴を有する。本発明に係る分解性重合体は、多糖類と脂肪族ポリエステル(例えば、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールが重縮合した脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸が重縮合した脂肪族ポリエステル等)との共重合体やポリマーブレンドと比較して、顕著に着色が少ないという特徴を有する。
【0087】
本発明に係る分解性重合体は、医療用材料や汎用樹脂の代替物として有用である。本発明に係る分解性重合体は、その有利な特性を活かした成形品や加工品として有用である。
【0088】
医療分野や食品分野のように、安全性が要求される用途には、添加剤を添加することなく好適に用いることができる。本発明に係る分解性重合体の成形加工法は、射出成形、押出成形、インフレーション成形、押出中空成形、発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形、バルーン成形、真空成形、紡糸等が好ましく、中でも、インフレーション成形、ブロー成形、押出中空成形、発泡成形、真空成形、紡糸が特に好ましい。本発明に係る分解性重合体は、フィルム、シート、テキスタイル、モノフィラメント、マルチフィラメント、糸、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、並び繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ラミネート、ブロー瓶、板、延伸シート、発泡体、網状体などの加工品に好適に利用することができる。その際、滑剤、着色剤、他ポリマー、離型剤、フィラー、補強剤などを必要に応じて使用することもできる。成形後又は加工後に、成形品や加工品をさらに熱処理することにより、高い耐熱性を付与することもできる。
【0089】
本発明に係る分解性重合体は、本出願以前に公知・公用であった医療用材料や汎用樹脂の代替物としても使用することができる。該分解性重合体の成形品や加工品は、目的に応じて、熱処理せずに、又は熱処理をして、本出願前に公知・公用であった他の樹脂の成形品や加工品の代替物として使用することができる。さらに、本発明に係る分解性重合体は、生体中又は土中で完全に分解する優れた生分解性を有しているので、生体にやさしい高分子として、地球環境にやさしい高分子として、極めて有用なものである。したがって、外科手術用縫合糸、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材などの用途に大いに期待される。特に、可塑剤を添加しなくても高性能を有するため、食品包装材料、医療用途に好適である。

Claims (5)

  1. 成分(A)として、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体及び/又はラクトン類、成分(B)として、3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物、成分(C)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、イノシトールから選ばれる1種以上の2個以上の水酸基を有する多価アルコール、及び、成分(D)として、触媒、を含む反応系で反応する際、
    成分(B)の重量が、成分(A)が単独で完全に重合したと仮定した場合の重合物の重量を基準として、0.005〜1%に相当するものであり、かつ、成分(B)のカルボキシル基と成分(C)の水酸基の当量比が、100:50〜200であることを特徴とする分解性重合体の製造方法。
  2. 成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」が線状化合物を含むものである、請求項1に記載した分解性重合体の製造方法。
  3. 成分(B)の「3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物及び/又はその無水物」が環状化合物を含むものである、請求項1乃至の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
  4. 成分(D)の「触媒」が、(d−1) 錫触媒、(d−2) 亜鉛系触媒、及び、(d−3) チタン系触媒からなる群から選択された少なくとも1種を含むものである、請求項1乃至の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
  5. 成分(A)の「ヒドロキシカルボン酸の環状二量体が乳酸の環状二量体であるラクタイドを含むものである、請求項1乃至の何れかに記載した分解性重合体の製造方法。
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