JP3666057B2 - 光磁気記録再生方法およびこれに用いる光磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は記録情報に応じて照射する光の単位面積当たりのエネルギーを変調することによってデータの記録を行い、偏光されたレーザビームによって、磁気光学効果を用いて情報の読み出しを行う、いわゆる光変調記録方式による光磁気記録再生方法およびこれに用いる光磁気記録媒体に係わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば従来のISOフォーマット光磁気記録再生装置の分野においては、光源には波長が680nm(赤色)のレーザダイオードを用いて、記録容量を従来の4倍とするシステムの規格化が進み商品化が間近になっているとともに、さらに高転送レート化や高記録密度化の要望が高まっている。
【0003】
上述の要望の実現のためには、光源の波長をさらに短くすることが最も効果的であり、このような光源に対応した光磁気記録媒体の開発が急がれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、短波長のレーザダイオードは原理的に波長が短くなるほど高出力化が困難になるのに対して、光検出器の感度が短波長化に伴い低下することから、短波長領域では検出器に入射する光量を従来よりも大きく、すなわち出力を大きくしないと充分なS/N(C/N)を得ることができない。このことに対応するために記録媒体としては、記録感度の向上と、性能指数の向上あるいは高い再生パワーでも消去されないこと、という相反する要求を満たさなければならなくなっている。
【0005】
このような状況において、これまでは再生時の特性改善に注目し、例えばPtCo系材料により、短波長領域における磁気光学効果の増大を図る検討が数多くなされてきた。
【0006】
しかし、短波長領域における記録材料の磁気光学効果の増大だけでは、性能指数の向上は図ることができるが、高い記録感度と再生光による記録の書き換えの抑制とが互いに相反する要因となって残り、システム設計上充分なパワーマージンが得られないでいる。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたもので、記録感度の向上かつ再生時の書き換えの防止をともに実現できる光磁気記録方法および光磁気記録媒体を提案し、システム設計上充分なパワーマージンを得ようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光変調による記録がなされ磁気光学効果を利用して記録情報の読み出しがなされる光磁気記録再生方法において、少なくとも2つ以上の垂直磁気異方性を有する磁性層が交換結合し、この磁性層として、情報を記録する記録層及びこの記録層に記録された情報が転写されると共に記録の際に初期化される初期化層が交換結合している磁性多層膜を有し、かつ記録層と初期化層との間に、室温から記録開始温度より低い温度の範囲で外部磁界の存在下でのみ界面磁壁が存在し、かつ、この状態において各磁性層のキュリー点よりも低く、室温より高い温度まで昇温することによって界面磁壁が消失することを特徴とする光磁気記録媒体に対して、界面磁壁が存在する状態において記録および消去を行って、記録磁区の再生は界面磁壁がない状態においてのみ行う光磁気記録再生方法である。
そして、上記磁性多層膜は、
(1)上記記録層の補償温度が室温以下であり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(2)上記記録層の補償温度が室温から該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度までの範囲にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(3)上記記録層の補償温度が該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(4)上記記録層の補償温度が室温以下にあり、かつ上記初期化層の補償温度が上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
(5)上記記録層の補償温度及び上記初期化層の補償温度がいずれも上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
の(1)〜(5)のいずれかの構成を有する。
また本発明は、上述の構成を有する光磁気記録媒体において、磁性多層膜において、基板側に相対的にキュリー点の高い磁性層が形成された構成とした光磁気記録媒体である。
【0009】
【作用】
上述の本発明の構成によれば、記録するデータに応じてレーザの出力を変調する光変調型の光磁気記録再生方法において、少なくとも2つ以上の垂直磁気異方性を有する磁性層(記録層及び初期化層)が交換結合している磁性多層膜からなり、室温から記録開始温度(最小記録温度)までの範囲において、外部磁界の存在下でのみ界面磁壁が存在する光磁気記録媒体を用いることにより、この界面磁壁が存在するときに記録および消去を行えば、界面磁壁エネルギーを利用して、磁性層のキュリー点以下において記録や消去を行うことが可能となる。
【0010】
記録時・消去時以外においては、界面磁壁をなくし、記録磁区の反転温度を記録時・消去時よりも高くすることによって、温度上昇などに対する記録磁区の安定化を図り、従来の場合より高い再生出力とすることができる。
【0011】
【実施例】
次に本発明の実施例の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
【0012】
1.本発明による光磁気記録再生方法の要点
本発明による光磁気記録再生方法の要点は、次の通りである。
【0013】
1)界面磁壁エネルギーを利用して、光磁気記録媒体のキュリー点よりも低い温度で記録および記録情報の消去を可能とする。すなわち記録、消去の各プロセスが各磁性層のキュリー点以下で行われる。
【0014】
2)記録時・消去時以外は界面磁壁を無くし、記録磁区が反転する温度を記録時や消去時の温度よりも高くすることによって、特に温度上昇に対する記録磁区の安定化を図り、従来よりも高いレーザパワーで再生可能とする。このとき消去開始パワーより高い再生パワーであってもよい。
【0015】
3)界面磁壁のある状態および界面磁壁のない状態は、レーザ照射位置近傍に設けられた外部磁界発生装置によって得られる外部磁界の有無によって制御される。
レーザパワーの制御に比して、外部磁界の制御に要する時間は一般に長くなる可能性が高く、このために記録や消去の開始直前および終了直後は、界面磁壁が存在している可能性が高い。従って、これら記録や消去の前後の状態においては、各種サーボ信号とプリピット情報が得られるものとし、かつ消去開始パワーよりも低い再生パワーとすることによって誤消去を防止して、さらに外部磁界が0になり界面磁壁がなくなった時点で、あるいは記録されたデータの再生が必要になった時点で、前述の相対的に高い再生パワーとするという具合に、再生パワーを異なる2値に制御する。
【0016】
図1は、本発明による光磁気記録媒体の一実施例の概略断面図を示す。本発明においては、少なくとも交換結合した2つの磁性層を有する光磁気記録媒体を構成する。
図1において、この光磁気記録媒体14は、例えばポリカーボネート樹脂等よりなる透明な基板11に、例えばSiNよりなる誘電体層12、第1の磁性層1、第2の磁性層2、誘電体層12、例えばAlよりなる高熱伝導率層(ヒートシンク層)13が積層された構造からなり、この第1の磁性層1と第2の磁性層2とが交換結合した構造をなす。
【0017】
また、本発明による光磁気記録再生方法を実施する装置は、例えば図2にその要部の模式図を示すように、本発明構成の光磁気記録媒体によるディスク15の下に外部磁界発生装置16が配置され、上方にある光源からディスク15にレーザ光Lを照射して、信号の記録及び再生が行われる構成とされる。
【0018】
図3は、本発明の光磁気記録再生方法における光磁気記録媒体内の記録・消去の各過程の領域をI〜IVの領域で示した模式図である。
以下に、本発明の光磁気記録再生方法における、最も特長的で重要な部分である記録・消去の方法について、図3中のI〜IVの各領域に対応した各磁性層の磁化の変化に基づいて説明する。
【0019】
図3において、ディスク15は左方から右方に回転進行するもので、I〜IVの各領域は次に示す過程を表す。外部磁界発生装置16からは外部磁界HIR(図3では下向き)が発生し、ディスク15に印加される。
Iは初期化過程で、外部磁界発生装置16からの外部磁界HIRが印加され、磁性層に対して初期化(磁化の向きが揃えられる)がなされる。
IIは記録過程で、外部磁界HIRの印加の下で、レーザ光Lの照射により信号(記録情報)の記録がなされる。
IIIは冷却過程で、レーザ光Lの照射を終えて冷却される。
IVは安定化過程で、外部磁界HIRがない状態で、記録情報の転写が終了し、記録が保持されている。
【0020】
記録を消去する場合には、外部磁界HIRの向きが反対になり、またIIの記録過程が消去過程となる他は、同様の過程を経て記録情報の消去がなされる。
【0021】
本発明方法においては、光磁気記録媒体例えばディスク15の各磁性層の磁気特性の組み合わせによって多くの場合が考えられる。これらの組み合わせについて詳しく述べるに先立ち、本発明の光磁気記録再生方法に好ましいと思われる磁性層の磁気特性について説明する。
【0022】
本発明による光磁気記録方法において、情報の記録を行う際には、光磁気記録媒体の積層した磁性層の間に界面磁壁が存在していなければならない。この状態を実現するために、かなり大きい外部磁界を印加する必要がある。そこで、界面磁壁が存在する状態を実現する初期化過程と、レーザ照射により界面磁壁を消失させる記録過程のいずれの過程においても、外部磁界HIRが各過程において起こるべき動作を補助するように働くことが好ましい。
【0023】
さらに以下に本発明による光磁気記録媒体に対して、上述の各過程で求められる特性について説明する。
【0024】
初期化過程において、外部磁界HIRによって反転する磁性層(以後初期化層(N層)とする)は、記録時の磁化の方向の基準となる層であり、記録時には初期化層の磁化方向が温度や周囲の磁界の変動によって変化しないことが必要である。
【0025】
磁性層を構成する希土類−遷移金属合金の組成によっては、室温とキュリー点との間に、保磁力が無限大に増加してまた降下する特性を持つ場合がある。この保磁力が無限大になる温度を補償温度(Tcomp. )と呼ぶ。この補償温度においては、希土類および遷移金属それぞれの副格子磁化の大小関係で決まる磁化の向きが、補償温度を境にして反転する特性を有する。
【0026】
従って、初期化層において、記録温度範囲に補償温度(TcompN)を持たないことが必要である。
もし記録温度範囲に補償温度(TcompN)を有するものとすると、記録温度範囲内で磁化の向きが反転し、外部磁界HIRとの相互作用によって受ける力の向きが逆になってしまうため、初期化層の磁化の向きが反転したり不安定になったりすることにより、正しい記録が困難になってしまう。
【0027】
ところで、前述した複数の垂直磁気異方性を有する磁性層からなる積層膜を含有する光磁気記録媒体においては、室温近傍から記録温度までの温度範囲において、それぞれの磁性層における磁化の方向が同じ向きのときが安定であるパラレルタイプ(Pタイプ)と、磁化の方向が互いに逆向きのときが安定であるアンチパラレルタイプ(Aタイプ)との2つのタイプがある。
【0028】
初期化層(N層)と対向して設けられた磁性層(以後記録層(R層)という)は、初期化過程においては外部磁界HIRの存在下でも反転しない特性を有する磁性層とする。
【0029】
この記録層は、初期化過程の行われる温度範囲で反転しなければ、その組成などを限定する必要はないが、界面磁壁が外部磁界HIRの存在下でより安定化するためには、初期化層と記録層のそれぞれの磁化の向きが反対であるときが安定である、アンチパラレルタイプの記録媒体となる組成であることが望ましい。
ただし、記録温度範囲になっても、引き続き初期化層と記録層の磁化の向きが反対である方が安定な状態が保持されると、今度は記録層の反転を妨げる方向に外部磁界HIRが作用するため、外部磁界HIRがない場合と比較して、相対的に記録感度が低下する。
【0030】
これに対し、初期化層と記録層とが、室温近傍から記録温度範囲まで磁化の向きが等しいときが安定である、いわゆるパラレルタイプの組成の記録媒体となっている場合には、初期化過程での界面磁壁の安定性は劣るものの、外部磁界HIRが記録層の反転を助ける方向に作用するため、記録感度は相対的に向上することになる。
【0031】
ここで記録層が室温(RT)から記録層のキュリー点(TcR )以下の範囲に補償温度(TcompR )を持ち(RT<TcompR <TcR )、かつ初期化層の補償温度(TcompN )が室温以下にある(TcompN <RT)場合には、室温近傍すなわち初期化温度領域で2層の磁化が反対向きの方が安定となるため、外部磁界HIRの存在下で界面磁壁が安定に存在することができ、記録媒体の温度が記録層の補償温度以下(T<TcompR )であれば、この状態は常に安定に保たれる。
ここで記録媒体の温度が上昇し、記録層の補償温度(TcompR )を越えると、外部磁界HIRは記録層を反転し、界面磁界を消失させる方向に作用するため、外部磁界HIRがない場合よりも記録感度は向上する。
【0032】
これに対して、記録層が室温(RT)から記録層のキュリー点(TcR)以下の範囲に補償温度(TcompR)を持ち(RT<TcompR<TcR)、かつ初期化層の補償温度(TcompN)が記録温度範囲以上にある場合には、初期化過程と記録過程のいずれに対しても、外部磁界HIRが正常な動作を妨げる方向に作用するため好ましくない。
【0033】
以上から、本発明の記録方法に適した特性の組み合わせは、表1に示す5通りである。
表中、TcNおよびTcRはキュリー点、TcompN およびTcompR は補償温度、RTは室温を表し、添字のNは初期化層、Rは記録層を表すものである。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示したのは、初期化層のキュリー点が記録層のキュリー点より高い(TcN>TcR)場合であるが、この関係が逆の場合(TcN<TcR)でもほぼ同様に光磁気記録媒体を構成しうる。
しかし、このとき記録時の基準となる初期化層が記録層よりも低温で磁気的に消滅してしまうため、安定に動作する温度範囲は狭くなる。
【0036】
以下に記録層のキュリー点が初期化層のキュリー点より高い(TcN<TcR)場合について、詳しく説明する。
【0037】
初期化層は前述のように、磁化方向が温度や周囲の磁界の変動によって変化しないことが必要である。そのため、前述の初期化層のキュリー点が記録層より高い場合と同じく、記録温度範囲内に補償温度を持たないことが必要である。
【0038】
初期化層のキュリー点TcNが記録層のキュリー点TcRより低くなっていることから、初期化層が記録温度範囲に補償温度を持たないとはいえ、初期化層のキュリー点TcN近傍までを記録温度範囲とするために、初期化層の補償温度TcompNは、室温より低いかまたはTcNより高いことが好ましい。
なぜなら、記録温度範囲に初期化層の補償温度がある場合(RT<TcompN<TcN)には、記録パワーの上限が初期化層の補償温度(TcompN)で決まってしまうために、記録温度範囲に補償温度がない場合と比較して記録パワーの上限が相当低くなり、その結果記録パワーマージンが充分に取れない可能性があり、パワーマージンを拡げる本発明の目的にそぐわないからである。
従って、TcompN<RTまたはTcN<T compNとなる。
【0039】
また、記録層の磁気特性についても、前述の初期化層のキュリー点が記録層より高い場合と同じく、初期化過程の温度領域で反転しない特性を有し、外部磁界HIRの存在下でより界面磁壁が安定化するために、初期化層と磁化の向きが逆であるアンチパラレルタイプの記録媒体となる組成であることが望ましい。
【0040】
ところで、垂直磁気異方性を有する磁性層が、遷移金属−希土類金属合金組成からなる場合には、磁性層全体の磁化の向きおよび大きさは、合金内部の遷移金属原子(TM)の副格子磁化の向き・大きさと希土類金属原子(RE)の副格子磁化の向き・大きさとの関係で決定される。
【0041】
これらのTMおよびREの副格子磁化の向きは、合金内での相互作用によって必ず逆になっている。従って、これら副格子磁化の大きさが等しいときには合金外部に現れる磁化は0となり、これら副格子磁化の大きさが異なるときには、合金外部に現れる磁化の向きは、いずれか大きい方の副格子磁化の向きに一致し、その大きさはこれら副格子磁化の大きさの差に等しい。
【0042】
両副格子磁化の大きさが異なるとき、室温において強度の大きい副格子磁化を有する方をとって、その希土類金属の副格子磁化が優勢な合金組成をRErich、遷移金属の副格子磁化が優勢な合金組成をTMrichと称する。
【0043】
補償温度は、前述のように保磁力が無限大になる温度であるが、この補償温度においては上述の遷移元素の副格子磁化の大きさと重希土類元素の副格子磁化の大きさが等しくなり、合金外部に現れる磁化が0となっている特徴を有する。
そして補償温度は、合金中の希土類金属(RE)の増加に伴い高くなるものであり、TMrichの組成においては、補償温度が室温以下となる。RErichの組成においてはREの比率により補償温度が決まり、補償温度がキュリー点より低い場合と、キュリー点より高い場合に分類される。
【0044】
ここで、初期化層および記録層が共に、室温において遷移金属の副格子磁化が希土類の副格子磁化より強い、いわゆるTMrichの組成である場合について、各磁性層の磁気特性の温度依存性のグラフを図11A〜図11Cに示す。
図11A中において、HwNおよびHwRは、それぞれ初期化層と記録層に蓄えられたエネルギーに基づく実効的な磁界を示し、各層の磁化の大きさ、層の厚さ、及び界面磁壁エネルギーに依存するものである。また、HIRは印加する外部磁界の大きさ、TrthRは記録層の外部磁界HIRの印加の下での反転開始温度、TthRは記録層の外部磁界HIRがない状態での反転開始温度を示す。
上述のHw(HwN,HwR)値は、磁化Msと磁性層の膜厚hと界面磁壁エネルギーσwから、Hw=σw/2*Ms*hと表され、これらの値Ms,h,σwおよび保磁力Hcを制御することによって、ある程度反転開始温度Trthを制御することが可能である。
【0045】
図11A〜図11Cより、TcN<TcRの場合には、TcN>TcRの場合と基本的には同じであるが、図11Cに示すように記録温度範囲すなわちHcR−HwR<0(正確にはHcR−HwR<外部磁界HIR)となる範囲がより狭くなる。
これは、TcN>TcRの場合と比較して、レーザ照射により反転する記録層Rの保磁力が大きくなりやすく、その一方でHwRの減少が急なために、HcR−HwR<0が成立しにくくなる。この観点からキュリー点の関係は、TcN>TcRの方が好ましいといえる。
【0046】
室温から初期化層のキュリー点以下の範囲に記録層が補償温度を持ち(RT<TcompR <TcN)、かつ初期化層の補償温度が室温以下にある(TcompN <RT)場合は、記録層はRErichの組成で初期化層はTMrichの組成であり、室温近傍すなわち初期化温度範囲で初期化層と記録層の磁化が反対向きの状態となるので(アンチパラレルタイプ)、外部磁界HIRの存在下で界面磁壁が安定に存在することができ、記録層の補償温度(TcompR )以下であればこの状態は常に保持される。
この記録媒体において、温度が記録層の補償温度(TcompR )を越えると、外部磁界HIRは記録層を反転し、界面磁壁を消失させる方向に作用するため、外部磁界HIRがない場合よりも記録感度は向上することになる。
【0047】
これに対して、初期化層の補償温度が記録温度範囲以上にある(TcompN >TcN)場合は、前述のTcN>TcRの場合と同様に初期化過程、記録過程のいずれの過程に対してもその正常な動作を妨げる方向に外部磁界HIRが作用するので、この組み合わせは好ましくない。
【0048】
以上から、本発明に適した特性の組み合わせは、表2に示す5通りである。
【0049】
【表2】
【0050】
このように本発明に用いる媒体の構成は多様であるが、ここでは表1中の2)のケース、すなわち初期化層(N層)のキュリー点の方が記録層(R層)のキュリー点より高く(TcN>TcR)、初期化層の補償温度が室温より低く(TcompN <RT)、記録層が記録温度範囲に補償温度を有し(RT<TcompR <TcR)、HcR−HwR>0が室温近傍で成立する場合について、図4に示す各磁性層の磁気特性の温度依存性のグラフ(図4A〜D)および図5に示す記録過程の模式図(図5A〜F)を用いて説明する。
【0051】
図4B〜図4Dにおいて、HwNとHwRはそれぞれの層の界面磁壁に蓄えられたエネルギーに基づく実効的な磁界を示し、各層の磁化の大きさ、層の厚さ、及び界面磁壁エネルギーに依存するものである。
また、HIRは加える外部磁界の大きさ、TrthNとTrthRはそれぞれの層の外部磁界HIRの印加の下での反転開始温度、TthN とTthR はそれぞれの層の外部磁界HIRがない状態での反転開始温度を示す。
【0052】
またこの図4A〜Dの例では、記録層RがRErichの組成、初期化層NがTMrichの組成である。この場合の記録媒体について外部磁界HIRのない初期化を行う前の状態は、図5Aに示すように、記録層Rと初期化層Nとの間に界面磁壁がなく、磁化Msの向きは互いに反対で(アンチパラレルタイプ)、遷移金属の副格子磁化の向きMtがそろっている(図5Aでは下向き)状態である。
【0053】
I)初期化過程(図5A→図5B)
この過程は、室温RTから記録層の反転温度、すなわち記録開始温度(図4Dに示すTrthR)までの温度範囲において行われ、外部磁界HIRが存在する。
外部磁界HIRの印加により、初期化層Nが反転し、磁化Ms、遷移金属の副格子磁化Mt共に向きが上向きに反転して、図5Bに示すように記録層Rとの間に界面磁壁Wが生じる。
初期化のために印加される外部磁界HIRは、この温度範囲でHcN+HwN<HIRを満たすように選定される。
この場合は、図5Aに示すように、光磁気記録媒体が室温近傍において磁化の向きが反対である方が安定なアンチパラレルタイプであるために、図5Bに示すように界面磁壁Wが存在する状態では、各磁性層の磁化の向きがいずれも外部磁界HIRと同じ向きとなる。この状態は非常に安定な状態であり、記録層Rが反転して界面磁壁Wが消失することはない。
【0054】
II)記録過程(図5B→図5C→図5D)
この過程は、記録媒体の温度が反転温度すなわち記録開始温度(TrthR)近傍の範囲にあり、外部磁界HIRが存在する。
ここでは記録を行うために、記録を行う箇所の記録媒体にレーザ光Lが照射され、記録媒体の温度が上昇する。
記録媒体の温度の上昇に伴って、先の初期化過程からこの記録過程に移る際に記録層Rはその補償温度(TcompR)を越え、図4Aに示すように記録層の保磁力HcRが補償温度まで無限大に上昇し補償温度を過ぎて減少する特性を有し、このとき図5Cに示すように記録層の磁化Msの向きが遷移金属の副格子磁化Mtと同じ下向きに反転する。これにより、補償温度以下では界面磁壁Wを安定化する方向に作用していた外部磁界HIRは、記録層Rを反転して界面磁壁Wを消失させる方向に作用する。
従って、外部磁界HIRがなければ、図4D中のTthRの温度になるまでは記録層Rの磁化反転が起こらないのであるが、外部磁界HIRのためにTthRより低い温度TrthRで図5Dに示すように再度磁化の反転が起こり、記録が行われる。このとき、遷移金属の副格子磁化Mtも反転するため、記録した部分の界面磁壁Wが消失している。
【0055】
III)冷却過程(図5D→図5E)
この過程では、温度範囲が反転温度すなわち記録開始温度(TrthR)近傍から室温近傍の範囲にあり、外部磁界HIRが存在する。
冷却により、記録層Rの補償温度(TcompR)より下がると、図5Eに示すように遷移金属の副格子磁化Mtの向きはそのままで、磁化Msの向きが反転する。
ここでは、記録領域の再反転が起こらないように、HcR+HwR>HIRを満たすようにする。
【0056】
IV)安定化過程(図5E→図5F)
この過程では、温度が室温近傍にあり、外部磁界HIRが存在しない。
図4に示したように、室温近傍でHcN−HwN<0が成立するために、ここでは未記録領域の初期化層N、すなわち界面磁壁Wが存在する領域の初期化層Nが反転し図5Fに示すように、記録媒体全領域の界面磁壁Wが消失する。
図5Fと図5Aを比較すると、記録が行われた磁区のみが反転されて、正しく記録が行われることがわかる。
この過程によって記録磁区は安定化され、外部磁界HIRが加えられない限り、高い再生パワーを照射しても、記録磁区の破壊が起こりにくくなる。
【0057】
ただし、ここで図4Cおよび図4Dに示すように、HcR−HwR<0が室温近傍で成立する場合(HwR’の場合)には、未記録領域の記録層が反転するのを避けるために、HcN−HwN=0が成立する温度TrthNとHcR−HwR=0が成立する温度TrthR’との間にTrthN>TrthR’の関係が成り立つ必要がある。
【0058】
消去過程は、記録過程と反対の方向に外部磁界HIRを加えて、界面磁壁がある状態を実現し、レーザ光を連続あるいはパルス照射することにより記録情報の消去を行うもので、本質的には記録過程と同じである。
【0059】
この例は記録層Rと初期化層Nとが図4に示すような磁気特性を有する例であったが、先に表1や表2において示した条件を満たしていれば、同様にして記録および消去ができる。
表1の場合と表2の場合では、2つの磁性層のキュリー点TcNとTcRの大小が異なるが、記録は小さい方のキュリー点より低い温度で行われるため、TMrichまたはRErichの組成の組み合わせと、補償温度の存在範囲が同じであれば、表1の場合でも表2の場合でも、磁化Msと遷移金属の副格子磁化Mtの向きが同じように変化し、同様の記録の過程を経る。
【0060】
従って、図5に示したような記録における磁化の向きの変化のパターンは表1の1)〜5)までの5通りに分類され、表2の1)〜5)の場合も、表1の同じ番号のものと同様にして記録が行われる。
ただし、レーザ光Lの照射は基板側から行われるが、初期化層Nか記録層Rのいずれが基板側であるかは任意に選択可能である(好ましくは、後述のようにキュリー点の高い方の磁性層の側から照射する)ので、図5においては初期化層N側から照射される例であったが、記録層R側から照射する構成であってもよい。またMs,Mt,HIRの向きは、これらの向きの組み合わせが合っていれば、図示した場合と全て逆方向である構成としてもよい。
【0061】
表1の残りの場合について、図5と同様に、記録層Rを上に初期化層Nを下に書き、印加する外部磁界HIRを上向き、レーザ光Lは初期化層N側から照射するとした時の、各場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図を、図6〜図9に示す。
図6は表1中の1)、図7は表1中の3)、図8は表1中の4)、図9は表1中の5)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図をそれぞれ示す。
図7に示す3)の場合は、図5に示した2)の場合と組成の組み合わせが同じで、記録温度範囲での記録層R補償温度の有無の違いだけであるが、図7の場合には記録過程で補償温度を経由しないので、磁化Msと遷移金属の副格子磁化Mtの向きの関係は保たれる点が異なる。従って、図5に示した場合よりMsとMtが反転する過程が除かれ過程数が少なくなる。
他の図6、図8及び図9に示す場合も、記録温度範囲に記録層Rの補償温度が存在しないので、図5に示す場合より過程数が少なくなっている。
【0062】
初期化過程から安定化過程までの各過程において、初期化層Nおよび記録層Rの特性が満たす関係式は、次の通りである。
I)初期化過程
HcN+HwN<HIR
ただし、室温近傍でHcR−HwR<0が成立する場合には、
HwR−HcR<HIR
が同時に成立していること。
II)記録過程
HcR−HwR<HIR
III )冷却過程
HcR+HwR>HIR
IV)安定化過程
HcN−HwN<0
ただし、室温近傍でHcR−HwR<0が成立する場合には、
HcN−HwN=0が成立する温度TrthNと、
HcR−HwR=0が成立する温度TrthR’との間に、
TrthN>TrthR’
の関係が同時に成立しなければならない。
【0063】
ここまでの説明では、すべてHc−Hwで表される反転磁界のみを用いて説明してきたが、各磁性層の膜厚や磁化、保磁力の温度特性やそれらの大小関係によっては、Hc−Hwで表すことのできない過程を経て磁化が反転する場合もある(T.Kobayashi et al.,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.20,No.11,p2089-2095(1981)参照)。しかし、この場合にも記録過程において初期化層の磁化が外部磁界HIRに対して同一方向を向いてさえいれば、記録層の反転の過程によらず正しい記録がなされる。
ただし、このときの反転開始温度は、先に説明した値とは多少異なることもある。
【0064】
次に、本発明の光磁気記録再生方法と光磁気記録媒体の具体的な一例について説明する。
【0065】
本実施例の光磁気記録媒体は、図10にその断面図を示すように、第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23の異なる3つの磁性層からなる。原理的には本発明の光磁気記録再生方法は、2つの磁性層で実現可能であるが、2つの磁性層間にさらに中間磁性層を付加することにより、界面磁壁エネルギーを制御することが可能となり、記録特性や転写特性の向上などが容易にできるものである。このような構成の光磁気記録媒体は例えば、特開昭63−117354号、特開平4−48450号、特開平4−61049号等に開示されているように、光強度変調オーバーライト用の記録媒体として知られているが、本発明においては記録媒体を用いた記録再生方法が、これらの従来方法とは全く異なり、光磁気記録媒体の基本構成は類似するが、磁気特性や組成の最適な構成は異なるものである。
特に本発明においては、室温において界面磁壁が安定に存在できないことが重要であり、この点において従来例とは全く異なる記録媒体である。
【0066】
(実施例1)
図10に光磁気記録媒体の模式断面図を示すように、ポリカーボネート樹脂からなる基板11上にSiN膜からなる誘電体層12を形成した上に、DCマグネトロンスパッタ法により、3層の磁性層からなる磁性層30を、第1の磁性層21に高保磁力層(すなわち記録層R)としてTbFeCo膜を40nmの厚さに、第2の磁性層22に中間層としてGdFeCo膜を10nmの厚さに、第3の磁性層23に低保磁力層(すなわち初期化層N)としてGdTbFeCo膜を30nmの厚さにそれぞれ連続形成した。
さらにその上にSiN膜からなる誘電体層12、Alからなる高熱伝導率層13を形成し光磁気記録媒体25を作製した。
【0067】
各磁性層30の組成を、第1の磁性層21の高保磁力層(記録層R)のTbFeCo膜はTb0.21(Fe0.7Co0.3)0.79(キュリー点280℃)、第2の磁性層22の中間層のGdFeCo膜はGd0.16(Fe0.9Co0.1)0.84(キュリー点300℃)、第3の磁性層23の低保磁力層(初期化層N)のGdTbFeCo膜は(Gd0.95Tb0.05)0.17(Fe0.7Co0.3)0.83(キュリー点380℃)としたとき、記録開始温度(TRth)は120℃となった。
このとき室温でのHcN+HwNの値は2kOeであり、HcN−HwN<0であった。
また室温におけるHcR−HwRおよびHcR+HwRは、20[kOe]以下の外部磁界HIRでは測定できなかった。
【0068】
次に本発明の実施例との比較を行うための、光磁気記録媒体の例を示す。
いずれの場合も磁性層が単層である光磁気記録媒体の例である。
【0069】
(比較例1)
図12に従来の光磁気記録媒体の例の断面図を示すように、ポリカーボネート基板11上にDCマグネトロンスパッタ法により、SiN膜からなる誘電体層12、Tb0.21Fe0.79からなる磁性層27、SiN膜からなる誘電体層12、Al膜からなる高熱伝導率層13を順次形成し、光磁気記録媒体35を作製した。磁性層(TbFe層)27の厚さは、前述の実施例1おける全磁性層30の厚さと同一(80nm)とした。
この光磁気記録媒体の記録開始温度は、130℃で磁性層のTb0.21Fe0.79のキュリー点とほぼ一致した。また室温での保磁力Hcの値は、20[kOe]以上であった。
【0070】
(比較例2)
この例は比較例1と同様に磁性層を単層とした例である。
図12に示す光磁気記録媒体の断面図において、磁性層27をTb0.21(Fe0.7 Co0.3 )0.79からなる磁性層とする他は実施例1と同様にして光磁気記録媒体35を作製した。磁性層27の厚さも比較例1と同じく、前述の実施例における全磁性層30の厚さと同一(80nm)とした。
この光磁気記録媒体の記録開始温度は、280℃で磁性層のTb0.21(Fe0.7 Co0.3 )0.79のキュリー点とほぼ一致した。また室温での保磁力Hcの値は20[kOe]以上であった。
【0071】
上述の実施例と比較例1および比較例2のそれぞれの光磁気記録媒体について、次の手法で記録特性の評価を行った。
【0072】
光源の波長が680nm、開口数N.A.=0.55である光学系を有する光磁気記録再生装置を用い、線速度12.8m/sでマーク長0.82μmの磁区を記録する実験を行い、このときの記録開始パワーPth(パルス幅ns)、消去開始パワーPeth、最大再生パワーPrmaxを求めた。
上述の実施例については外部磁界の大きさを2.5[kOe]とし、各比較例については外部磁界の大きさを300[Oe]とした。
またPrmaxの測定においては、外部磁界HIRを取り除いて行った。
結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
この結果から、本発明を適用することにより、従来の光磁気記録媒体より高い記録感度と、再生パワーに対する高い耐久性を有する光磁気記録媒体とできることがわかる。
【0075】
また上述の実施例では界面磁壁が存在する状態の消去開始パワーPethが非常に低いことから、記録や消去の準備段階である界面磁壁の生成の際に記録磁区を誤って消去するおそれがあるため、界面磁壁の有無に応じて再生パワーを異なる2値に制御することが不可欠である。
【0076】
再生信号のキャリアレベルは、実施例では比較例1より5dB以上大きい。
これは実施例の場合、各比較例よりも高いパワーで再生可能であり、また読み出し側の磁性層(高保磁力層)のキュリー点が比較例の場合より高くカー回転角が大きいことによるものである。
【0077】
また比較例2のように、単層膜の磁性層27で実施例と同等の再生信号強度や再生パワーへの耐久性を得るためには、記録感度を大きく犠牲にしなければなさないことがわかる。
【0078】
上述の実施例においては、各磁性層21、22、23の材料をGdTbFeCo,TbFeCo,GdFeCoとしたが、磁性層を積層したことによる特性が所定の条件を満たしていれば、磁性層の材料は限定されるものではなく、既知の光磁気記録材料、例えば希土類−遷移金属アモルファス合金やPtCo系材料等を用いてよい。また、耐食性や繰り返し記録消去に対する信頼性を向上するために、磁性層にCr,Ti,Al,B,C等の元素を少量添加してもよい。
基板の材料はポリカーボネート樹脂を用いたが、ポリオレフィン等の樹脂やガラス等の材料や、ガラスエッチング基板等を用いることもできる。
【0079】
光磁気記録媒体上における記録層Rと初期化層Nの配置は、図1に示した断面構成図において、第1の磁性層1が初期化層Nで第2の磁性層2が記録層Rである構成でも、またその逆に第1の磁性層1が記録層Rで第2の磁性層2が初期化層Nである構成でもよい。
信号特性の観点から言えば、再生信号量が多くなるように、レーザ光Lが照射される側、すなわち図1中の基板11側の第1の磁性層1に、キュリー点の高い磁性層を配置するのが望ましい。
従って、前述のように初期化層Nがキュリー点が高い(TcN>TcR)場合が記録を行うのに好ましいことから、初期化層Nがキュリー点が高く、かつ初期化層Nが基板11側の第1の磁性層1となり、記録層Rが第2の磁性層2となる構成が好ましい。
【0080】
一方、レーザ光Lの照射による温度上昇の速度や効率という観点から言えば、記録層Rが基板11側の第1の磁性層1として配置された構成が、記録層Rの温度上昇が速くなる。
【0081】
尚、上述の実施例は本発明の一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【0082】
【発明の効果】
上述の本発明によれば、高い記録感度および消去感度が得られる。従って、記録パワーを低く抑えることができ、これによって、光源としてより短波長のレーザダイオードの使用が可能となる。また記録の安定化が図られるので、大きな読み出しパワーでも記録の消去がされないことから、再生出力の向上が図られる。それにより、大きな光出力を得ることが困難な短波長のレーザダイオードを用いた光磁気記録再生装置においても充分な記録が可能となり、また再生パワーの向上が図られパワーマージンを確保できる。
また、記録時の線速が非常に速くデータ転送レートが大きい光磁気記録再生装置においても、充分なパワーマージンを確保できる。
従って、従来より安定して正確な光磁気記録および再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光磁気記録媒体の一実施例の概略断面図である。
【図2】本発明による光磁気記録媒体を適用する光磁気記録再生装置の要部の模式図である。
【図3】 本発明の光磁気記録再生方法における光磁気記録媒体内の記録・消去の各過程の領域を示す模式図である。
【図4】A〜D 表1中の2)の場合の光磁気記録媒体における各磁性層の磁気特性の温度依存性のグラフである。
【図5】A〜F 表1の2)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図である。
【図6】A〜E 表1の1)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図である。
【図7】A〜E 表1の3)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図である。
【図8】A〜E 表1の4)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図である。
【図9】A〜E 表1の5)の場合の光磁気記録媒体に対する記録過程の模式図である。
【図10】本発明による光磁気記録媒体の一実施例の断面図である。
【図11】A〜C 初期化層N、記録層RがともにTMrichの組成である光磁気記録媒体における各磁性層の磁気特性の温度依存性のグラフである。
【図12】従来の光磁気記録媒体の例の断面図である。
【符号の説明】
1 第1の磁性層
2 第2の磁性層
11 基板
12 誘電体層
13 高熱伝導率層
14、25、35 光磁気記録媒体
15 ディスク
16 外部磁界発生装置
L レーザ光
21 第1の磁性層
22 第2の磁性層
23 第3の磁性層
27、30 磁性層
Claims (7)
- 光変調による記録がなされ磁気光学効果を利用して記録情報の再生がなされる光磁気記録再生方法において、
少なくとも2つ以上の垂直磁気異方性を有する磁性層が交換結合し、該磁性層として、情報を記録する記録層及び該記録層に記録された情報が転写されると共に記録の際に初期化される初期化層が交換結合している磁性多層膜を有し、
上記磁性多層膜は、
(1)上記記録層の補償温度が室温以下であり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(2)上記記録層の補償温度が室温から該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度までの範囲にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(3)上記記録層の補償温度が該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(4)上記記録層の補償温度が室温以下にあり、かつ上記初期化層の補償温度が上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
(5)上記記録層の補償温度及び上記初期化層の補償温度がいずれも上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
の(1)〜(5)のいずれかの構成を有し、
かつ上記記録層と上記初期化層との間に、室温から記録開始温度より低い温度の範囲で外部磁界の存在下でのみ界面磁壁が存在し、
上記外部磁界の存在下において各磁性層のキュリー点よりも低く、室温より高い温度まで昇温することによって上記界面磁壁が消失することを特徴とする光磁気記録媒体に対して、
上記界面磁壁が存在する状態において記録および消去を行って、
記録情報の再生は上記界面磁壁がない状態においてのみ行うことを特徴とする光磁気記録再生方法。 - 上記外部磁界が存在するときには、上記界面磁壁がない状態での上記記録情報の再生時のレーザパワーおよび最小消去パワーより低いパワーで再生を行うことを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録再生方法。
- 上記記録及び上記消去を行う直前直後の一定時間内において、上記記録情報の再生時のレーザパワーおよび最小消去パワーより低いパワーで再生を行う過程を設けることを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録再生方法。
- 上記記録及び上記消去を行う直前直後の一定時間内において、上記記録情報の再生時のレーザパワーおよび最小消去パワーより低いパワーで再生を行う過程を設けることを特徴とする請求項2に記載の光磁気記録再生方法。
- 上記磁性多層膜は、上記初期化層のキュリー点が上記記録層のキュリー点より高く、かつ上記記録層の保磁力が上記初期化層の保磁力より高いときに界面磁壁が存在することを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録再生方法。
- 上記磁性多層膜は、上記記録層のキュリー点が上記初期化層のキュリー点より高く、かつ上記記録層の保磁力が上記初期化層の保磁力より高いときに界面磁壁が存在することを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録再生方法。
- 光変調による記録がなされ磁気光学効果を利用して記録情報の読み出しがなされ、
少なくとも2つ以上の垂直磁気異方性を有する磁性層が交換結合し、該磁性層として、情報を記録する記録層及び該記録層に記録された情報が転写されると共に記録の際に初期化される初期化層が交換結合している磁性多層膜を有し、
上記磁性多層膜は、
(1)上記記録層の補償温度が室温以下であり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(2)上記記録層の補償温度が室温から該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度までの範囲にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(3)上記記録層の補償温度が該記録層のキュリー点または上記初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にあり、かつ上記初期化層の補償温度が室温以下にある構成、
(4)上記記録層の補償温度が室温以下にあり、かつ上記初期化層の補償温度が上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
(5)上記記録層の補償温度及び上記初期化層の補償温度がいずれも上記記録層のキュリー点または該初期化層のキュリー点のうち低い方の温度以上にある構成、
の(1)〜(5)のいずれかの構成を有し、
かつ上記記録層と上記初期化層との間に、室温から記録開始温度より低い温度の範囲で外部磁界の存在下でのみ界面磁壁が存在し、
かつ、この状態において各磁性層のキュリー点よりも低く、室温より高い温度まで昇温することによって上記界面磁壁が消失し、
上記磁性多層膜において、基板側に相対的にキュリー点の高い磁性層を形成されてなることを特徴とする光磁気記録媒体。
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