JP3663927B2 - 自動車の後部車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車の後部車体構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動車の後部車体構造としては、例えば、特開平5−16837号公報で知られているような構造がある。すなわち、ホイルハウス部の前後に、衝撃吸収部としての隙間を介して、それぞれ前後方向に長い形状のレインフォースが設けられている。特に、前側のレインフォースは、後面衝突等により後方から加わる入力を、車体側部に形成されたドア開口部の後縁部を構成するリヤピラーで受け止めるべく、前端が該リヤピラーの下部に対して接続されている。従って、後方からの入力が加わった場合、後側のレインフォースは、衝撃吸収部に相当する分だけ前方移動して多少の衝撃を吸収した後、前側のレインフォースを押して、リヤピラーの下部に入力を伝達する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、衝撃吸収部により後方からの入力をある程度吸収するものの、基本的に前後のレインフォースを介して、入力をリヤピラーの下部に伝達するため、リヤピラーの下部が変形して、補修が面倒になる。また、前側のレインフォースを、リヤピラー下部に接続した大型サイズにする必要があるため、重量及びコストの面で不利である。
【0004】
この発明はこのような従来の技術に着目してなされたものであり、後方からの入力を受けても、リヤピラー下部の変形を最小限に抑え、且つ重量及びコストの面で有利な自動車の後部車体構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、車体側部に形成されたドア開口部の後縁部を構成するリヤピラーと、リヤピラーから後方に向けて延設されたリヤフェンダと、該リヤピラーとリヤフェンダの下方に位置しているアーチ形のホイルハウスアウタを備えた自動車の後部車体構造において、前記ホイルハウスアウタの車外側に、下端部がホイルハウスアウタの頂部よりも後方に接続され、上端部がリヤピラー上部のリヤウィンドウガラス開口部付近に接続された、上下方向に長い形状を有するアウタレインフォースを、該アウタレインフォースの全体がホイルハウスアウタの頂部よりも後方に位置するように設けると共に、該アウタレインフォースの前側に、所定間隔の衝撃吸収部を介して、ホイルハウスアウタの上面に接合される補強板と、前記ホイルハウスアウタの車内側に、後端が前記補強板の後端に略一致したインナレインフォースを設けたものである。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、アウタレインフォースが上下方向に長い形状を有しているため、後面衝突等による後方からの入力は、該アウタレインフォースを介して、リヤピラー上部のリヤウィンドウガラス開口部付近に伝達され、前側へは伝達されにくい。リヤピラー上部のリヤウィンドウガラス開口部付近は、車体側部のドア開口部付近に比べて、後方からの入力により、もともと変形され易い部分なので、この部分に入力を導いて変形させても、補修性の面で不利になることはない。後方からの入力は、アウタレインフォースの下部を変形させることにより弱められたのち、該アウタレインフォースの前方にある衝撃吸収部で更に弱められる。一方、補強板を設けた部分は、衝撃吸収部よりも相対的に剛性が高いため、大きな変形を起こすことなく原形が保たれ、車体側部のドア開口部に対応するリヤピラー下部の変形を最小限に抑えることができる。また、補強板は衝撃吸収部より相対的に剛性があれば良く、小型にすることができるため、重量及びコストの面で有利である。
また、ホイルハウスアウタは常に頂部から上折れ変形するため、アウタレインフォースの全体がホイルハウスアウタの頂部から後方にずれていると、ホイルハウスアウタの上折れ変形を確実にし、該変形による十分なエネルギー吸収を行うことができる。
また、補強板を小型化できることから、溶接打点上の制約が少なくなり、該補強板部分におけるホイルハウスアウタの車内側にインナレインフォースを取付けて、車体剛性を高めることができる。さらに、このインナレインフォースの後端を、補強板の後端に略一致させることにより、補強部材と衝撃吸収部との強度差を更に大きくでき、衝突時の車体変形を容易にコントロールすることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、衝撃吸収部がホイルハウスアウタの頂部に略一致した位置にある。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、衝撃吸収部を、もともと折れ易いホイルハウスアウタの頂部に略一致させたため、ホイルハウスアウタの頂部からの上折れ変形によるエネルギー吸収をより安定確実に行うことができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、補強板がホイルハウスアウタに沿って前側へ延び、前端がドア開口部に達していない。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、補強板の前端がドア開口部に達していないため、ドア開口部の変形を最小限に抑えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0016】
図1は、自動車の後部を示す側面図で、1は車体側部に形成されたドア開口部を示している。このドア開口部1から後方には、車体の外壁を形成するリヤフェンダ2が形成されている。リヤフェンダ2の下端部の車内側には、アーチ形のホイルハウスアウタ3が形成されている。
【0017】
リヤフェンダ2におけるドア開口部1の後縁に相当する部分には、ルーフ4部分からサイドシル5に至る範囲に、リヤフェンダ2に対して車内側からピラーインナ6やホイルハウスアウタ3を接合することにより、上下方向にわたって閉断面構造のリヤピラー7が形成されている。このリヤピラー7の前側は、車体側部のドア開口部1に対応しているが、上部後方はリヤウィンドウガラス開口部8に対応している。
【0018】
そして、ホイルハウスアウタ3及びピラーインナ6の車外側には、下端部がホイルハウスアウタ3の頂部3aよりも後方に接続され、上端部がリヤピラー7上部に形成されたリヤウィンドウガラス開口部8に接続されたアウタレインフォース9が設けられている。このアウタレインフォース9は断面ハット形で、上下方向に長い形状をしており、リヤピラーインナ6やホイルハウスアウタ3に接合されることにより閉断面を形成する(図4参照)。このアウタレインフォース9は、上側が若干後傾しており、全体がホイルハウスアウタ3の頂部3aよりも後方に位置している。
【0019】
このアウタレインフォース9の前側には、ホイルハウスアウタ3の頂部3aに位置する所定間隔の衝撃吸収部Sを隔てた状態で、ホイルハウスアウタ3の上面に接合された概略L形断面の補強板10が設けられている。この補強板10はホイルハウスアウタ3に沿って前側に延びているが、ドア開口部1には達していない。この補強板10は、衝撃吸収部Sより相対的に剛性があれば良く、ドア開口部1に達しない小型サイズになっている。
【0020】
このように、この補強板10は小型サイズであり、溶接打点上の制約が少ないため、該補強板10におけるホイルハウスアウタ3の車内側に、断面ハット形のインナレインフォース11を取付けて、車体剛性を高めることができる。このインナレインフォース11は、側面視で、上幅の狭いテーパ形状をしており、その後端は、前記補強板10の後端に略一致している。
【0021】
次に、車体の後部に対して、後面衝突等による入力Fが後方から加わった場合の作用及び本実施形態の優位点を説明する。
【0022】
車体後部に後方からの入力Fが加わった場合、アウタレインフォース9が上下方向に長い形状を有しているため、前記入力Fはアウタレインフォース9を介してリヤピラー7上部のリヤウィンドウガラス開口部8付近に伝達され、前側へは伝達されにくい。従って、リヤピラー7上部のリヤウィンドウガラス開口部8付近は変形しやすいが、アウタレインフォース9よりも前側は変形しにくい。本来、リヤウィンドウガラス開口部8付近は、ドア開口部1付近に比べて、後方からの入力Fにより、もともと変形され易い部分なので、この部分に入力Fを導いて変形させても、補修性の面で不利になることはない。
【0023】
後方からの入力Fは、アウタレインフォース9の下部を変形させることにより弱められたのち、該アウタレインフォース9の前方にある衝撃吸収部Sで更に弱められる。一方、補強板10を設けた部分は、衝撃吸収部Sよりも相対的に剛性が高いため、大きな変形を起こすことなく原形が保たれ、ドアガラス開口に対応するリヤピラー7下部の変形を最小限に抑えることができる。特に、補強板10の前端がドア開口部1に達していないため、ドア開口部1の変形を最小限に抑えることができる。
【0024】
そして、入力Fにより、ホイルハウスアウタ3は頂部3aから上折れ変形し、エネルギーの吸収を行うことができる。この実施形態では、アウタレインフォース9の全体がホイルハウスアウタ3の頂部3aから後方にずれているため、ホイルハウスアウタ3の上折れ変形が確実で、該変形による十分なエネルギー吸収を行うことができる。
【0025】
また、衝撃吸収部Sを、もともと折れ易いホイルハウスアウタ3の頂部3aに略一致させたため、ホイルハウスアウタ3の頂部3aからの上折れ変形によるエネルギー吸収をより安定確実に行うことができる。
【0026】
更に、インナレインフォース11の後端を、補強板10の後端に略一致させることにより、補強板10と衝撃吸収部Sとの強度差を更に大きくでき、衝突時の車体変形を容易にコントロールすることができる。
【0027】
請求項1記載の発明によれば、アウタレインフォースが上下方向に長い形状を有しているため、後面衝突等による後方からの入力は、該アウタレインフォースを介して、リヤピラー上部のリヤウィンドウガラス開口部付近に伝達され、前側へは伝達されにくい。補強板を設けた部分は、衝撃吸収部よりも相対的に剛性が高いため、大きな変形を起こすことなく原形が保たれ、車体側部のドア開口部に対応するリヤピラー下部の変形を最小限に抑えることができる。また、補強板は衝撃吸収部より相対的に剛性があれば良く、小型にすることができるため、重量及びコストの面で有利である。
また、ホイルハウスアウタは常に頂部から上折れ変形するため、アウタレインフォースの全体がホイルハウスアウタの頂部から後方にずれていると、ホイルハウスアウタの上折れ変形を確実にし、該変形による十分なエネルギー吸収を行うことができる。
また補強板を小型化できることから、溶接打点上の制約が少なくなり、該補強板部分におけるホイルハウスアウタの車内側にインナレインフォースを取付けて、車体剛性を高めることができる。さらに、このインナレインフォースの後端を、補強板の後端に略一致させることにより、補強部材と衝撃吸収部との強度差を更に大きくでき、衝突時の車体変形を容易にコントロールすることができる。
【0029】
請求項2記載の発明によれば、衝撃吸収部を、もともと折れ易いホイルハウスアウタの頂部に略一致させたため、ホイルハウスアウタの頂部からの上折れ変形によるエネルギー吸収をより安定確実に行うことができる。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、補強板の前端がドア開口部に達していないため、ドア開口部の変形を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動車の後部車体構造を示す側面図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図3】図1中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【図4】図1中矢示SC−SC線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 ドア開口部
2 リヤフェンダ
3 ホイルハウスアウタ
3a 頂部
4 ルーフ
5 サイドシル
6 ピラーインナ
7 リヤピラー
8 リヤウィンドウガラス開口部
9 アウタレインフォース
10 補強板
11 インナレインフォース
F 後方からの入力
S 衝撃吸収部
Claims (3)
- 車体側部に形成されたドア開口部の後縁部を構成するリヤピラーと、リヤピラーから後方に向けて延設されたリヤフェンダと、該リヤピラーとリヤフェンダの下方に位置しているアーチ形のホイルハウスアウタを備えた自動車の後部車体構造において、
前記ホイルハウスアウタの車外側に、下端部がホイルハウスアウタの頂部よりも後方に接続され、上端部がリヤピラー上部のリヤウィンドウガラス開口部付近に接続された、上下方向に長い形状を有するアウタレインフォースを、該アウタレインフォースの全体がホイルハウスアウタの頂部よりも後方に位置するように設けると共に、
該アウタレインフォースの前側に、所定間隔の衝撃吸収部を介して、ホイルハウスアウタの上面に接合される補強板と、
前記ホイルハウスアウタの車内側に、後端が前記補強板の後端に略一致したインナレインフォースを設けたことを特徴とする自動車の後部車体構造。 - 衝撃吸収部がホイルハウスアウタの頂部に略一致した位置にある請求項1記載の自動車の後部車体構造。
- 補強板がホイルハウスアウタに沿って前側へ延び、前端がドア開口部に達していない請求項1又は請求項2記載の自動車の後部車体構造。
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