JP3649985B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はモータ制御装置に関し、特に、空気調和機の圧縮機などに用いられ、複数相のコイルを備えた同期モータをセンサを用いることなく駆動できるようなモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数相のコイルを備えた同期モータを駆動する場合、モータロータに対して適切なタイミングでモータ電流を流すことおよびコイル端子に電圧を印加することのいわゆる通電タイミングの最適化が重要となっていた。この通電タイミングの基準を検出するために、逆起電圧を検出する方法や、ゼロクロス電流位相を検出する方法が存在する。
【0003】
たとえば、モータロータ位置センサを用いずにモータを制御・駆動するいわゆるセンサレス駆動においては、モータコイルへの通電を行なう際に、一定期間の通電休止期間を設け、その間にモータの回転によってモータコイルに発生する逆起電圧をモータコイル端子から検出し、この逆起電圧からモータへの通電タイミングを決定する、いわゆる矩形波120°通電などの間欠駆動であり、現在のセンサレス駆動においては、この駆動方法は一般的に行なわれている。以後、この従来技術を従来例1と称する。
【0004】
また、従来例2として、特開昭61−88784号公報に示されている制御装置では、三相のモータコイル中性点と該三相コイルと並列に抵抗を接続し、この中性点と抵抗中性点との電圧を比較することでモータ逆起電圧を検出し、これからモータへの通電タイミングを決定する方法があり、この場合は通電に際しての休止期間を特に設ける必要がなく、正弦波通電をはじめとするいわゆる180°通電が可能である。
【0005】
さらに、従来例3として、特開平5−236789号公報に示される駆動装置出は、モータ電流ゼロクロス時におけるモータ電圧位相を検出し、この電圧位相を基準とするモータ電流位相を検出して、このモータ電流位相が所望の電流位相となるように電圧指令、あるいは周波数指令を演算する方式が示されている。この場合も通電に際しての休止期間を特に設ける必要がなく、正弦波通電をはじめとするいわゆる180°通電が可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来例1による方法は、間欠駆動であるのでモータ電流を滑らかに流すことができない。このために振動,騒音が大きく発生してしまうという課題がある。また、通電休止期間が存在するということは、ロータに磁石を配したモータの場合、磁石磁束をすべての期間で利用することができないので、モータ効率が低下してしまうという問題もある。
【0007】
従来例2および従来例3による方法では、正弦波通電をはじめとする180°通電が可能である。この180°通電は、通電休止期間を設けずに各モータコイル端子に正弦波などの電圧を連続的に印加するものであるので、上記従来例1のような振動,騒音,モータ効率低下といった問題は存在せず、低騒音で効率のよいモータ駆動が可能である。また、正弦波通電は滑らかな回転磁界の発生が可能であり、さらに磁束波形と同波形となる電流が通電できるような波形を通電すれば効率のよいトルクの発生が可能となる。
【0008】
しかしながら、従来例2では、スター結線されているモータコイルの中性点から検出線を引出さなければならず、これは本来駆動用コイル巻線として巻かれている領域を割いて引出す必要がある。また、この引出線の取回しによっては、引出線そのものにさらに逆起電圧の影響が現われてしまうことも考えられ、コイル巻線の配置を再設計する必要がある。さらに、一般に圧縮機に内蔵されているモータでは、密閉された圧縮機内からこの中性点引出線を引出すための専用の端子を追加しなければならず、コネクタなどのコストアップの面でも問題があった。
【0009】
一方、従来例3の方式は、モータ電流センサとこれに付随するアンプ回路を搭載するだけであり、従来例2のようにモータ内部から専用線を引出す必要もなく、正弦波通電をはじめとする180°通電が可能である点で効果的な方法である。
【0010】
しかしながら、従来例3では、モータコイル電流のゼロクロスを検出するような構成であるので、モータコイル電流にノイズが混入した場合には電流位相の誤検出となり、正確な位相制御ができない。このような誤検出でのモータ駆動は、モータ端子電圧と逆起電圧との位相が合っていないため、効率のよい通電タイミングでの駆動ができないだけでなく、最悪の場合にはモータが急停止してしまうことが考えられ、また過大なモータ電流が流れてしまうため、駆動素子が破壊されてしまうことも懸念される。
【0011】
また、従来例3ではこのモータ電流のチャタリングによる誤検出防止のため、抵抗RとコンデンサCからなるローパスフィルタを付加するような構成であるが、従来例3に示されているような定数を用いた一次フィルタでは、キャリア周波数成分は20dB(約1/10)程度しか除去できない。このため、完全にノイズ,キャリア周波数成分を除去することは困難であり、誤検出を防止することは困難である。また、フィルタをさらに高次のものにするのは、回路の規模の増大,回路定数設計の手間などから採用し難く、たとえ高次フィルタを構成しても誤検出に対する懸念をなくすことはできない。さらに、ゼロクロス検出部にヒステリシスを設けるなどの対策も考えられるが、この場合、ヒステリシスで設定されたゼロクロス幅として検出されるため、正確なゼロクロスポイントの検出は困難となってしまう。
【0012】
また、実際に正弦波180°通電を行なったときの、ある1相の電流波形を図29および図28に示し、これをもとに従来例3の課題について詳細に説明する。
【0013】
図24および図25ともに空気調和機用圧縮機モータを駆動させたものであり、図24は650rpmの低速回転を行なった場合を示し、図18は5400rpmの高速回転を行なった場合について示している。
【0014】
まず、図24は純粋な正弦波電圧をPWM変調して印加していても、モータ電流波形は純粋な正弦波とはならず、ゼロクロスによる位相差検出が困難であることを示すモータ電流波形である。
【0015】
ここで、注目すべき点は、図24の→部分で示した電流ゼロクロス付近の電流波形である。このようにゼロクロス付近の電流波形が平坦に近い波形となってしまうことがある。これには、回転条件(回転数,トルク)、使用するモータの逆起電圧波形(磁束分布波形)の影響、通電タイミング、キャリア周波数の影響、駆動素子デッドタイムの影響などの原因が考えられ、特に回転数が低く(すなわち、電流周波数が低い)、負荷トルクが小さい(すなわち、電流振幅が小さい)ときに顕著に現れる。
【0016】
この平坦な波形をもとにゼロクロスするのは、ノイズなどの影響で誤検出しやすいのは言うまでもない。また、フィルタで平滑化してもモータ電流の傾斜が緩やかで誤検出の頻度が高いことには変わりない。
【0017】
次に、図25は、図24と同じく純粋な正弦波電圧をPWM変調して印加していても、モータ電流に他の周波数成分が重畳されて電流クロスが振られてしまっていることを示す波形である。これには、AC電源の負荷変動や、AC/DCコンバータ後のDC電圧の変動や、電流センサ出力への電源電流あるいは他相のコイル電流の混入や、電流センサ電源の変動や、負荷変動などの原因が考えられる。特に、大電流が流れる高速高トルク時に顕著に現れる。このような波形をもとに、図25の0レベルでの位相検出を行なっても、実際の位相情報とは異なり、誤検出してしまうことは言うまでもない。このような電流波形において、正確な電流ゼロクロスを検出するためには、この重畳された周波数成分に合せてゼロクロスポイントを変更していく必要があり、その実現は非常に困難であり、実現するためには該低周波成分の検出部が必要となり、コストアップは増大なものとなってしまう。
【0018】
このように、従来例3の電流ゼロクロス割込による位相検出では、電流エッジのみしか検出していないため、種々の誤検出が生じてしまい、正確な位相差制御やモータ駆動が困難となる。
【0019】
それゆえに、この発明の主たる目的は、位相差情報を簡単かつ正確に検出することができ、同期モータを低騒音,低振動,高効率で駆動できるようなモータ制御装置を提供することである。
【0020】
この発明の他の目的は、モータ電流面積の検出を簡略化し低コスト化できるとともに、高精度で行なうことができるようなモータ制御装置を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、複数相のモータコイルを備えた同期モータを駆動・制御するモータ制御装置であって、回転数の設定のための指令が与えられたことに応じて、同期モータを駆動するための駆動波データを複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成手段と、複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出手段と、駆動波データ作成手段によって作成された駆動波データから特定相のモータ駆動電圧位相を検出し、モータ電流検出手段から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出手段と、位相差検出手段から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御手段と、駆動波データ作成手段から出力される各相の駆動波データと位相差制御手段から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出手段と、複数のスイッチング素子を含み、算出された各相ごとの出力デューティに従ってパルス幅変調信号を生成して各スイッチング素子の導通を制御し、各モータコイルに通電を行なうインバータ手段とを備え、位相差検出手段は、特定相のモータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出してこれを位相差情報とするようにしたものである。
【0022】
請求項2の発明では、第1発明の位相差検出手段は、モータ駆動電圧を基準とした2個所の位相期間中に、1位相期間当り流れるモータ電流信号をn回(nは1以上の整数)サンプリングし、サンプリングされた各電流サンプリングデータを積算してモータ電流信号面積として出力する。
【0023】
請求項3の発明では、第1発明の位相差検出手段は、モータ駆動電圧位相を基準とした位相期間中に同間隔でサンプリングを行ない、回転数に対応してサンプリング間隔を設定する。
【0024】
請求項4の発明では、第2または第3発明のサンプリング回数nを回転数に基づいて設定する。
【0025】
請求項5の発明では、第1から第4発明におけるモータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間は、第1の期間をモータ駆動電圧位相の0〜90°の期間に選び、第2の期間を90〜180°の期間に選ぶ。
【0026】
請求項6の発明では、モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間は、第1の期間をモータ駆動電圧位相の180〜270°の期間に選び、第2の期間を270〜360°の期間に選ぶ。
【0027】
請求項7の発明では、モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間の開始後、1回目のモータ電流のサンプリング開始タイミングは、特定相の駆動波データの基準位相を超えた駆動波データ量を補正して設定する。
【0028】
請求項8の発明では、位相差情報はモータ電流信号面積の面積比をm回分(mは1以上の整数)平均化して求める。
【0029】
請求項9の発明では、位相差情報の平均化回数mは回転数に基づいて設定する。
【0030】
請求項10の発明では、位相差制御手段は、位相差情報と目標位相差情報との誤差データに対する比例積分制御演算で構成される。
【0031】
請求項11の発明では、位相差制御手段で設定される制御ゲインは回転条件あるいは目標位相差情報に応じて設定される。
【0032】
請求項12の発明では、目標位相差情報は、回転条件によって最適な値に設定する。
【0033】
請求項13の発明では、1回のモータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間終了後は、モータ電流信号面積の面積比演算と位相差情報平均化の時間を設け、この間一連の位相差検出処理を行なわない。
【0034】
請求項14の発明では、少なくとも位相差検出手段の処理は、制御マイクロコンピュータの処理ルーチンのメインループ内で行なう。
【0035】
請求項15の発明では、駆動波は正弦波である。
請求項16の発明では、駆動波は電流波形とロータ磁石磁束波形がほぼ同波形となるように設定する。
【0036】
請求項17の発明では、請求項1から16の位相差制御手段で設定される制御ゲインは、モータ電流検出手段で設定されるオフセット値に応じて設定されることを特徴とする。
【0037】
請求項18の発明では、請求項1から16の位相差制御手段で設定される制御ゲインは、モータ電流信号の振幅値に応じて設定されることを特徴とする。
【0038】
請求項19の発明では、請求項1から18のモータ電流検出手段で設定されるモータ電流の増幅率は、モータ電流信号の振幅が常に一定になるような値に設定されることを特徴とする。
【0039】
請求項20の発明では、請求項1から19の位相差制御手段における位相差の目標値である目標位相差情報は、位相差情報の検出点に応じて設定されることを特徴とする。
【0040】
請求項21の発明では、請求項20の位相差制御手段における位相差情報の演算方法も目標位相差情報の設定と同様に位相差情報の検出点に応じて設定されることを特徴とする。
【0041】
請求項22の発明では、請求項20の位相差制御手段において、モータ電流位相変動に対する位相差情報変化量が小さい検出点におけるデューティ基準値の算出をキャンセルすることを特徴とする。
【0042】
請求項23の発明では、請求項20において複数相のモータ電流信号を検出し、位相差情報の検出点によって参照するモータ電流信号を選択することを特徴とする。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の一実施の形態のモータ制御装置のブロック図である。図1において、ステータに複数相(3相)のコイル,ロータに永久磁石を備えた同期モータ1を駆動するために、インバータ部2とコンバータ回路3とAC電源4と電流センサ5とモータ電流検出アンプ部6とマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)とから構成されている。同期モータ1はインバータ2によって駆動され、インバータ2にはコンバータ回路3からAC電源4を直流に変換して与えられる。電流センサ5はモータコイル端子U,V,W各相の中で特定相(図1ではU相)に流れるモータ電流aを検出する。電流センサ5で検出されたモータ電流はモータ電流検出アンプ部6に与えられ、所定量増幅およびオフセット加算してモータ電流信号bがマイコン7に与えられる。
【0044】
マイコン7は位相差検出部8と目標位相差情報格納部9と加算器10とPI演算部11と回転数設定部12と正弦波データテーブル13と、正弦波データ作成部14とPWM作成部15の各処理をソフト的に行なう。位相差検出部8はモータ電流検出アンプ部6から与えられたモータ電流信号を所定のタイミングでA/D変換して取込み、2個所のモータ駆動電圧位相期間ごとにサンプリングした各電流サンプリングデータを積算してモータ電流信号面積とし、両モータ電流信号面積の面積比を位相差情報として出力する。目標とする位相差情報は目標位相差情報格納部9に格納される。目標位相差情報と位相差情報との誤差データは加算器10によって算出される。PI演算部11は算出された誤差データに対して比例誤差データおよび積分誤差データを算出してデューティ基準値を出力する。なお、加算部10とPI演算部11とによって位相差制御部が構成される。
【0045】
回転数設定部12は同期モータ1の回転数指令を設定し、正弦波データテーブル13は所定のデータ個数のテーブルを含む。正弦波データ作成部14は回転数指令と時間経過に従って正弦波データテーブル13からモータコイルU,V,W各相に対応した正弦波データを読出すとともに、U相の正弦波データからU相のモータ駆動電圧位相情報cを出力する。PWM作成部15は正弦波データとデューティ基準値とから各相ごとにインバータ2の駆動素子にPWM波形を出力する。
【0046】
なお、電流センサ5はコイルとホール素子で構成されたいわゆる電流センサでもよく、カレントトランスでもよい。また、1相だけでなく各相のモータ電流を検出するとさらに高精度にすることができる。さらに、正弦波データの作成は正弦波データテーブル13をもとに作成せずに、演算によって作成してもかまわない。さらに、エレメント8〜15の構成要素はマイコン7で処理されるようにしたが、特にこれに限ることなく同様の処理をしていればハード構成で構成してもよい。
【0047】
なお、モータの駆動波形は正弦波とした場合についての構成であるが、正弦波形にすることで滑らかなモータ電流の供給が可能となるために振動,騒音が少なくできる。しかしながら、これに限らず、モータロータの磁束に合せたモータ電流が得られるような駆動波形を通電すれば、より高効率な駆動が可能となる。
【0048】
2個所のモータ駆動電圧位相期間で検出された2つのモータ電流信号面積は、位相差検出部8で面積比が計算され、この結果が位相差情報とされる。この位相差情報と目標位相差情報との誤差量に対してPI演算部11でPI演算が行なわれ、PWM作成部15はその出力であるデューティ基準値と別途回転指令から求まる正弦波データとから、その都度の出力デューティ比を計算してPWM信号を作成し、インバータ2を介してモータコイルに印加することで同期モータ1が駆動される。
【0049】
すなわち、モータ駆動電圧(出力デューティ)に対するモータ電流位相差を一定に制御するための位相差制御フィードバックループによって駆動電圧の大きさ(PWMデューティのデューティ幅)を決定し、同期モータ1を所望の回転数で回転させるために所望の周波数で出力される正弦波データによって回転数を決定する。これによって、所望の位相差,所望の回転数でモータを駆動・制御することができる。
【0050】
なお、モータ起動時は各相に強制的に通電し、回転磁界を与えていき、強制励磁で行ない、通常駆動時に上記方法で制御を行なえばよい。
【0051】
ここで、この発明の一実施形態による位相差制御によって同期モータが駆動・制御できることを、IPM(Interior Permanent Magnet)モータでの実験結果をもとに説明する。周知のように、永久磁石をロータ内部に埋込んだ形状のいわゆるIPMモータの場合、磁石磁束とコイル電流に伴って発生するフレミングトルク(磁石トルクと呼ばれることもある)と、ロータ形状によってモータコイルのインダクタンスが変化することを利用したリラクタンストルクとを併用することが行なわれており、このフレミングトルクとリラクタンストルクとの和が最大となるロータとステータの相対位置は回転条件によって変化することが知られている。
【0052】
ここで、このIPMモータを高効率に駆動させるためには、前記ロータとステータの相対位置を検出し、最適な位置関係でモータコイルに通電を行なうために、通電タイミングの最適化が必要となる。また、同期モータの場合、効率を考えずに単に駆動させる場合であっても、通電タイミングをある範囲の値にしておかなければ、ブレーキトルクが発生してモータが停止してしまうことがある。前述の従来例1および2では、このロータとステータの相対位置を検出するために逆起電圧を利用していた。
【0053】
図2はこの発明の一実施形態の位相差制御でモータを駆動したときの実験結果として、前記位相差情報と、エンコーダで測定したロータとステータの相対位置の関係を示す。ただし、回転条件は、回転数1000rpm/トルク15kgfcmとした。
【0054】
この発明の一実施形態の位相差制御は、直接ロータとステータの相対位置を検出するものではない。しかしながら、図2に示すように、位相差情報と、ロータステータの相対位置は、ほぼ比例関係であることがわかる。したがって、位相差情報を所定の値に制御することで、間接的にロータとステータの相対位置を制御できることになり、目標とする位相差情報を最適化することで最高の効率が得られる通電タイミングでモータを駆動することができる。
【0055】
また、図3は駆動電圧(デューティ基準値)に対する位相差情報の関係を、図2と同様の条件で実際にモータを駆動させて測定した実験結果である。このように駆動電圧(デューティ基準値)を増減することによって位相差情報を制御できることがわかる。
【0056】
つまり、一定の回転数時に駆動電圧(デューティ基準値)を増減させると電流/電圧位相差(位相差情報)が変化することであり、この実施形態の構成の位相差情報によって駆動電圧(デューティ基準値)を増減させる位相差制御フィードバックループが有効であることがわかる。
【0057】
また、上記実験結果から、実際のモータ電流は純粋な正弦波ではなく、ロータ磁束に関する歪み成分などが重畳されているが、それでもこの発明の実施形態の位相差制御が可能となる。この位相差検出方法である面積比による位相差情報の検出精度は十分であることがわかるし、ゼロクロスなどモータ電流のある一点を検出するような位相差検出方法に比べて上述の課題を解消でき、検出精度を高めることができる。
【0058】
なお、これら実験結果の各特性はほぼ比例すると見られるが、厳密には完全な直線ではない。これは測定誤差の他に、モータ電流の歪みが原因と考えられる。このため、位相差制御形の制御系ゲインが位相差の値によって変化してしまうが、この非線型性を見越して制御系としてのゲインを設定すればよいし、さらに位相差の値によって制御系のゲインを変更すればさらに高精度の制御系が構成できる。
【0059】
また、回転条件によっても各特性の傾きが変化することも考えられるが、回転条件による制御系ゲインの変化量を見越して制御系を構成すればよいし、さらに回転条件によって制御系の増幅度を変更すればさらに高精度な制御を構成できる。
【0060】
なお、この実験においては、モータ電流検出アンプ部には反転増幅器を使用した。
【0061】
次に、回転数の設定について正弦波データテーブルを使用して設定する方法およびPWM出力について説明する。
【0062】
この発明の一実施形態の位相差制御方式は、逆起電圧パルスなどを検出して速度制御を行なう従来方式とは異なり、モータ回転数はモータコイルに通電する正弦波電圧(PWM)の周波数で決定される、いわゆる強制励磁駆動である。
【0063】
正弦波データテーブル13は不揮発性メモリに記憶されたLUT(ルック・アップ・テーブル)であり、それには連続的にD/A変換すると正弦波波形が出力されるデータ列が格納されている。たとえば、1周期分の正弦波データ個数が360個の正弦波データで構成されていたとすると、それぞれ正弦波データは電気角で1°ごとに対応する値となる。
【0064】
以下、1周期分360個の正弦波データ列で構成された正弦波データテーブルについて説明し、PWMキャリア周波数fは3kHzとし、また1組について正弦波2周期で同期モータが1回転するものとする。
【0065】
正弦波180°通電の場合、モータ駆動電圧(出力デューティ)を正弦波波形にする必要があるため、PWMキャリア周期ごとに正弦波データを更新する必要がある。また、同期モータ1回転分には360×2=720回の更新が必要である。
【0066】
ここで、PWMキャリア周期ごとに正弦波データテーブルの参照データを1つずつ更新していくとすれば、PWMキャリア周期Tは
1/3000[Hz]=0.333[msec]
になるので、1回転には
720×0.333[msec]=0.24[sec]
が必要であり、約250rpmの回転数で回転することとなる。つまり、モータ回転数はモータの構造的なものを除外すると、PWMキャリア周波数と正弦波データテーブル13の参照データの更新間隔で決まる。また、たとえばコイル相数が3相であれば、それぞれの相のデータは、電気角で120°ずつずらした正弦波データを参照すればよい。なお、その都度正弦波演算を行なって正弦波データを作成してもよい。
【0067】
これら求められた各相ごとの正弦波データは、位相差制御によって算出されたデューティ基準値と乗算され、いわゆるPWM波形発生器などのPWM作成部15に入力されてPWM波形が出力される。このPWM波形発生器の概要は、たとえばPWMキャリア周期で三角波を作成し、この三角波の波高値と前記乗算された値とを比較し、比較結果に基づいて「H」レベル/「L」レベルの信号を出力する。
【0068】
PWM波形発生器は専用のICで構成され、あるいは制御用マイコンの機能として設けられることが多く、これらを利用することで各駆動素子に対応したPWM波形を簡単に得ることができる。続いて、この発明の特徴となる位相差情報の検出からデューティ基準値の算出までの処理および構成について説明する。
【0069】
図4は位相差情報検出の原理を説明するための波形図である。U相のモータ電流aは0レベルを中心としたほぼ正弦波状の波形とする。このモータ電流aをモータ電流検出アンプ部6によって増幅し、オフセット設定してモータ電流信号bを作成する。これはモータ電流aをマイコン7に内蔵されているA/D変換器の変換可能電圧範囲(たとえば0〜+5V)に合せるために行なわれる。
【0070】
また、U相のモータ駆動電圧位相情報cは正弦波データ作成部14でU相の正弦波データから作成される。なお、モータ駆動電圧位相情報cは、実際には正弦波波形とする必要はなく、位相情報だけがわかっていればよい。
【0071】
位相差検出部8には図4(b)に示すようなモータ電流信号bと図4(c)に示すモータ駆動電圧位相情報cが入力される。位相差検出部8では、モータ駆動電圧位相情報cから予め決められた所定の位相期間θ0,θ1においてモータ電流信号bのサンプリングを所定のサンプリング位相(サンプリングタイミング)s0〜s3で1位相期間当りn回(図4の場合2回)行ない、各位相期間θ0およびθ1でのモータ電流信号面積をそれぞれIS0およびIS1として、各々サンプリングされて電流サンプリングデータを積算する。
【0072】
すなわち、
Is0=I0+I1
Is1=I2+I3
そして、各モータ電流信号面積Is0,Is1の比を計算してこれを位相差情報とする。この処理について図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0073】
図5(a)は位相差情報を検出する位相差検出ルーチンであり、図5(b)はサンプリングタイミングが到来したかをタイマの値などで検出して、サンプリングを開始させるサンプリング開始ルーチン(タイマ割込ルーチン)である。なお、特にこのような処理構成でなくても同様の考え方で処理を行なっていればよい。
【0074】
図5(a)に示すステップ(図示ではSPと略する)SP1において、サンプリング位相s0のサンプリングタイミングを、モータの回転数とタイマのカウント周期から、サンプリング開始ルーチンの割込値として設定し、サンプリング回数nなどの各変数を初期化する。これはモータ回転開始直後、あるいは位相期間θ0の直後または位相期間θ0の前に1度だけ行なわれ、それ以降のサンプリングタイミング設定はサンプリング開始ルーチンで行なわれる。
【0075】
ステップSP2以降はループ処理であり、ステップSP1が行なわれた後は、位相差情報の検出が終了するまでこのループ処理が繰返され、次回の位相期間θ0で再度ループ処理が行なわれる。ステップSP2では、サンプリング開始ルーチンで開始指令されたサンプリングが終了したかを検出する。終了していればステップSP3に進み、終了していなければ以下の処理が行なわれるが、ループ処理中なので結果的にサンプリングが終了したかを検出し続けることとなる。
【0076】
ステップSP4においてサンプリング回数が1回更新される。ステップ5では、現在の位相期間がθ0あるいはθ1かが判断され、判断結果によってステップSP6またはSP7の処理を行なう。この判断はサンプリング回数nで行なえばよい。
【0077】
ステップSP6あるいはSP7では、サンプリング回数が所定回数(2回あるいは4回)になったかを判断し、所定回数(2回あるいは4回)であれば、ステップSP8あるいはSP9の処理を行なう。ステップSP8あるいはSP9では、それぞれの位相期間でのサンプリングが終了したものとして、電流サンプリングデータの積算(I0+I1,I2+I3)を行ない、モータ電流信号面積Is0あるいはIs1を計算する。ステップSP10では、モータ電流信号面積Is0およびIs1両方の計算が終了したかを判断し、終了していなければループ処理に戻る。
【0078】
ステップSP11においては、モータ電流信号面積Is0およびIs1の計算が終了していたとして、両面積データの比(Is0/Is1)を計算して、これを位相差情報とする。そして、一連の位相差検出ルーチン(ループ処理)が終了する。
【0079】
また、図5(b)に示すサンプリング開始ルーチン(タイマ割込ルーチン)は、タイマ割込が設定されたサンプリングタイミングで処理が開始され、ステップSP12では次回のサンプリングタイミングを予め決めておいたサンプリング位相に従ってサンプリング開始ルーチンの割込値として設定される。ステップSP13では、A/D変換器に電流サンプリング開始を指示して終了する。
【0080】
このように、サンプリング開始ルーチンの処理の中で次回のサンプリングタイミングの設定を行なうのは、現在のタイマカウント値がわかっている(≒今回のタイマ割込値)、現在のモータ電圧位相がわかっている(≒今回のサンプリング位相)ためであり、このようにすることで改めてタイマカウント値、モータ電圧位相を参照する必要がなくなり、効率的な処理が可能となる。しかしながら、厳密には今回のタイマ割込値、今回のサンプリング位相は、割込が発生した時点での値であり、ステップSP12を行なう時点でのタイマカウント値、モータ電圧位相とはわずかながら異なってしまう。したがって、厳密なサンプリングタイミングの設定が必要であれば、その都度タイマカウント値およびモータ電圧位相を参照するのが望ましい。
【0081】
ここで、モータ電流のサンプリングタイミングは、予め決めておいたサンプリング位相に従って、モータ回転数とタイマ周期とから、その都度所定の値にタイマ割込値を設定することで任意に決めることができる。この設定方法は具体的にはたとえば前記と同じく正弦波2周期でモータが1回転するとし、モータ回転数が3000rpmのときにモータ電圧位相30°のときにサンプリングを開始するとして、モータ電圧位相0°のときに設定を行ない、また電流サンプリングタイマのカウント分解能は1μsecとすると、モータ電圧位相が0°から30°になるまでの時間は、正弦波1周期の時間が10msecなので、
0.01[s]*30[°]/360[°]=833[μsec]
であり、電流サンプリングタイマのカウントとしては、
833[μsec]/1[μsec/カウント]=833[カウント]
となる。つまり、モータ電圧位相0°のときのタイマのカウント値に833を加算し、これをタイマ割込値とすれば、モータ電圧位相30°でタイマ割込が発生して電流のサンプリングが開始される。なお、前述のようにモータ回転数は正弦波データの周期によって決まる、つまりマイコン7側で決まるものであるので、正確なモータ電圧位相でのサンプリングが可能となる。
【0082】
また2個所の位相期間でのサンプリングタイミングをどのように設定するかについては、各サンプリングタイミングは常にモータ電圧の同じ位相にサンプリングされ、また図2および図3に示す特性のように、ほぼ比例関係が保たれ、かつ1つの位相差情報に対しては1つのロータステータ相対位置あるいは駆動電圧(出力デューティ)が得られるようなタイミングであれば問題はない。しかしながら、図4に示すように、モータ電圧位相90°を中心として線対称となる位相で(位相90°地点からの各サンプリングタイミングまでの位相が、それぞれの位相期間のサンプリングタイミングで同じとなる位相で、また言い換えれば実際の位相差が0のときには両モータ電流信号面積が同値として検出されるような位相で)、各位相期間における電流サンプリングを行なえば、位相差制御設計が容易となる。
【0083】
さらに、モータ電圧位相の各位相期間はまとまっている必要もなく、たとえば図4においてI0とI5の積算値は第1の位相期間のモータ電流信号面積とし、I2とI7の積算値を第2の位相期間のモータ電流信号面積と分割してもよく、これらは制御系の処理時間の余裕度などから決めればよい。
【0084】
また、位相期間θ0とθ1における位相差情報(Is0/Is1)検出後の位相差検出は、位相期間θ1とθ2を利用して、位相差情報(Is2/Is1)の計算を行なうことでより高速な位相差情報の検出が可能となる。
【0085】
ここで、モータ電流のサンプリングタイミングの設定、すなわちタイマ割込値の設定を簡略化する方法について説明する。
【0086】
図6はモータ電流信号bとモータ駆動電圧位相情報cの波形図である。図6において、モータ駆動電圧位相情報cに基づく所定の位相期間θ0,θ1間でのサンプリング回数はそれぞれ3回としている。ここで注目すべきは、各位相期間内での電流サンプリングタイミングを同じ値のサンプリング期間θs=aにしている、つまり同じ間隔でサンプリングを行なうことである。
【0087】
前述のサンプリングタイミングの設定方法に従って、各位相期間の最初にθsを計算した後は、以降のタイマ割込値では現在のタイマカウント値θsを加算するだけでよい。このように一定のタイミングとすることで、図5(a)のステップSP12でのサンプリングタイミング設定、すなわちタイマ割込値の計算を軽減することができる。さらに、このサンプリングタイミングの設定および2個所の位相期間の設定について有効な方法について説明する。
【0088】
図7(a)はモータ電圧位相における第1の位相期間をモータ電圧位相0〜90°,第2の位相期間を90〜180°としたときの波形図である。また、各サンプリングタイミングはすべてθs=aという等間隔の位相間隔でn回(図7(a)の場合5回ずつ計10回)サンプリングするように設定している。そして、位相差情報はθ0でのモータ電流信号面積Is0として、
I0+I1+I2+I3+I4
を積算し、θ1でのモータ電流信号面積Is1として、
I5+I6+I7+I8+I9
を積算し、両モータ電流信号面積の比(Is0/Is1)を計算して算出する。これらの処理は図5(a),(b)に示すとおりである。
【0089】
このようにすることで、前述のごとく、各位相期間におけるサンプリングタイミングを、モータ電圧位相90°を中心として対称となる位相にできるので、制御設計が容易になるとともに、2個所の位相期間にわたって等間隔なサンプリングタイミングでモータ電流のサンプリングを行なうことができるので、タイマ割込値の設定は上記にも増して軽減することができる。
【0090】
また、図7(b)にはもう1個所の対象となる位相である、モータ電圧位相270°を中心として第1の位相期間をモータ電圧位相180〜270°,第2の位相期間を270〜360°に設定したときのサンプリングタイミングを示している。この場合も、図6(a)の説明と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0091】
さらに、これら図7(a),(b)の処理を組合せ、常に同一の位相間隔θs=a(°)でサンプリングを行ない、図7(a)で求められる位相差情報および図7(b)で求められる位相差情報の両方を検出して制御を行なう方法も、位相差情報検出時間の短縮に繋がり制御性能を高めることができる。
【0092】
ただし、図7(a)は0〜180°の期間での位相差情報と、図7(b)180〜360°の期間での位相差情報とを比べると、両者の位相差情報の極性は逆転するので、どちらかの位相差情報を反転して使用する必要がある。このときのサンプリング間隔θsの計算方法を、前記と同様に正弦波2周期でモータが1回転するとし、モータ回転数は3000rpm,電流サンプリングタイマのカウント分解能は1μseとし、サンプリング回数はnは2個所の位相期間の合計で10回として説明する。
【0093】
モータ電圧の正弦波周期Tは100Hzなので、位相期間0〜180°期間に要する時間は5msecであり、この期間内に10回のサンプリングを行なうが、サンプリングの間隔数は9なので、1回ごとのサンプリング間隔は、
5[msec]/9=0.55[msec]
となる。したがって、タイマ割込の割込値としては、
0.55[msec]/1[μsec]=555
となり、割込値設定時には現在のタイマ値に555ずつ加算していけばよい。
【0094】
なお、第1の位相期間の1回目のサンプリングs0は、第1の位相期間の開始と同時にサンプリングを行なうようにする。これは、どの時刻で第1の位相期間が始まるかを、現在の回転数指令から計算して行なえばよいし、また後述するように実際の正弦波出力が遅れることを利用してもよい。
【0095】
次に、各位相期間におけるサンプリング回数nの設定方法について述べる。
図8は図4などと同様に位相差検出の様子を示す図である。ここで、サンプリング間隔θsはマイコン7の処理時間tcより大きな値としている。この処理時間tcは図5に示す処理および位相差制御にかかるPI制御、PWM作成などの処理時間である。
【0096】
このPI制御,PWM作成などの処理はPWMキャリア周期ごとに割込ルーチン(以下、制御割込ルーチンと称する)として行なわれることが多く、この制御割込ルーチン中には位相差検出などの処理が中断されてしまう。このため、図5における位相差検出ルーチンならびに制御割込ルーチンなどの処理時間よりも短い周期でサンプリングを行なった場合には、電流サンプリングされたサンプリングデータをすべて読取れないという不備が起こってしまい、位相差検出が正確に行なえず、モータが停止してしまうなどの不具合の生じることが考えられる。これを防ぐためには、制御処理時間tcを把握し、この時間よりサンプリング間隔θsが短くなってしまうときには、サンプリング回数nを減らして位相差を検出する方法が有効である。
【0097】
この制御処理時間tcは予め実験室レベルあるいは工場出荷時に各処理における処理時間を測定して求めておき、メモリなどに記憶させておいてもよいし、あるいは装置起動時において、各処理における処理時間を測定して求めてもよく、さらには、各処理中に、処理開始時と終了時にタイマカウント値を読出してこの差を検出することでも求められる。
【0098】
そして、前述のようなサンプリング間隔θsを計算する際に、この制御処理時間tcよりも短い間隔となってしまうときには、サンプリング回数nを減らして制御処理時間tcよりも大きくなるように計算すればよい。さらには、このサンプリング間隔θsは回転数に比例しているものなので、回転数に応じてサンプリング間隔θsが制御処理時間tcよりも大きくなるようなサンプリング回数を予め格納しておき、回転数に応じたサンプリング回数を呼出してサンプリングタイミングを設定すればよい。なお、回転数に対するサンプリング回数は各回転数ごとに厳密に決めておかなくても、たとえば3000rpm以下は10回、3000rpm〜5000rpmまでは8回などというように大まかな値でもよい。この処理は図5のステップSP1で行なわれる。これにより安価な制御用のマイコンであっても、処理オーバフローを起こしてモータが停止してしまうような不具合が生じず、安定した動作が確保される。
【0099】
次に、モータ電圧位相をより高分解能で検出して位相差検出精度を高める方法について説明する。
【0100】
図9はモータ電圧波形(正弦波PWMデータを正弦波形として示した)と、各PWMキャリア周期ごとに更新される正弦波データテーブルの参照アドレス値を示す。図9に示すように、PWMデューティの設定はPWMキャリア周期tpwmごとに行なわれるが、その更新は回転数指令によっては位相0となるべき正弦波データテーブル13の値を読飛ばすこともある。制御マイコン7内でのモータ電圧位相の基準位相検出は、自身で設定している正弦波データテーブル13の参照アドレス値が0を通過することで検出しており、この参照アドレス値が0を読飛ばすと正確なモータ電圧位相が得られないということが生じてしまい、位相差検出においての誤差となってしまう。
【0101】
これを防ぐためには、正弦波データテーブル13の参照アドレス値が0を超えていたときには、0を超えたときの参照アドレス値(図9では3)から実際にモータ電圧位相が0となった時間を計算して、モータ電圧位相の基準位相を補正する方法が有効である。
【0102】
これには、PWM波形デューティ設定後にその周期に従ったPWM波形が出力されるまでにPWM発生器で時間が必要なこと、またPWM波形自体が出力したい電圧を、High/Low時間幅(デューティ幅)として時間的に分割していることによって、図9に示すように実際のPWM出力を正弦波形として見ると、正弦波データテーブル13の参照時刻(図9では正弦波データ参照ポイント)に対して、実際の正弦波出力波形(図9ではモータ駆動電圧出力ポイント)はPWMキャリア周期1周期分遅れていることが補正可能条件となる。具体的には、前記補正可能条件によると、参照アドレス値が0を超えた値が検出されても、実際のPWM出力を正弦波波形として見ると、その後に0位相を通過するので、既に参照アドレス値が0を超えた時点でも、実際のモータ電圧位相の基準位相0°の検出が可能であり、これを利用して正確なモータ電圧位相の基準位相の設定および補正を行なうものである。
【0103】
具体的な設定,補正方法は、PWMキャリア周期ごとに正弦波データテーブルの参照アドレス値の更新値(加算値)をnt,参照アドレス値が0以上となったときに値をn0,PWMキャリア周期をtpwmとする。
【0104】
また、参照アドレス値が0以上となったときの参照アドレス値が0であれば、実際の出力はちょうどPWMキャリア1周期分を超えるので、参照アドレス値0からPWMキャリア周期tpwm経過後に、モータ電圧位相の基準位相が0となるので補正の必要はない。
【0105】
参照アドレス値が0以上となったときの参照アドレス値が0以外であれば、図9に示すように、実際のモータ電圧位相の基準位相0°は、参照アドレス値0以上となってからPWMキャリア周期tpwm経過後より早く到来する。このようなときには
tpwm−(n0/nt*tpwm)
という補正計算を行ない、参照アドレス値0以上となってからtpwm−(n0/nt*tpwm)経過後に、モータ電圧位相の基準位相0°の設定をすれば、PWMキャリア周期によるモータ電圧位相分解能の低下を抑えられ、高精度な位相差情報の検出,位相差制御を行なうことができる。
【0106】
また、もう1つの方法としては、参照アドレス値が0以上となるポイントが現在の回転数指令からわかっていることであり、このことを利用して参照アドレス値が0になる前に、nt,n0を見積もり、参照アドレス値が0を超える1つ前の参照アドレス値のときに上記補正を行ない、正確なモータ電圧基準位相0を得る方法がある。この方法はモータ回転数の変更時に再度補正をやり直す必要があるが、これによっても上記同様の効果を得ることができる。なお、このときには上記の補正可能条件に関わらず、出力に遅れがないかなどの、どのようなPWM出力部であっても補正を行なうことができる。
【0107】
続いて、位相差情報の検出をさらに高精度に行なう方法について説明する。これは検出された位相差情報をm回平均化して、これを真の位相差情報とすることで、位相差情報の検出誤差を低減するものである。
【0108】
図10にはその処理内容として、位相差検出ルーチンのフローチャートを示す。図10において、ステップSP1〜SP11は図5と同様の処理を行なっているので、その説明を省略する。ただし、ステップSP1における変数初期化では、変数mが0にリセットされる。
【0109】
ステップSP14において、検出された位相差情報をP(m)に格納する。ステップSP15は、平均化回数mを+1にする。ステップSP16において、平均化回数が所定の回数となったかを判断し、所定回数より少なければ一旦ループ処理を終了するが、mが所定回数になるまで同様の処理を繰返す。ステップSP17において、平均化回数が所定の値であったとして、各位相差情報p0,p1…p(m)の平均化を行ない、平均化した位相差情報paveの算出を終了して、一連の処理を終了する。
【0110】
図11は実際にモータを駆動させ、平均化した位相差情報でこの発明の実施形態の位相差制御を行なったときの、エンコーダで測定したロータとステータの相対位置に対する位相差情報の特性を示しており、実験のためにモータ電流信号にはDC〜3kHzまでのノイズを重畳している。
【0111】
図11の特性中、○ポイントのものは上記の手法で平均化した位相差情報(平均化回数10回)の特性を示しており、□ポイントのものは該10回の位相差情報の中で最大の位相差情報の特性を示しており、△ポイントのものは該10回の位相差情報の中で最小の位相差情報の特性を示す。なお、このときの回転条件は回転数1000rpm,トルク15kgfcmである。
【0112】
このように、いかにノイズに強い位相差制御方法であっても、ノイズが大きい環境下においては、□−△までのような幅をもって位相差情報が検出されてしまうことがわかる。ここで、この発明の位相差情報の平均化を行なうと、図11の○ポイントの特性に示すように、ノイズの影響を受けず、正確な位相差情報を検出できる。これによって、耐ノイズ性をさらに高めることができ、位相差情報の高精度検出,位相差制御の高精度化,ひいてはモータの高効率化を実現できる。また、モータ電流の歪みによる誤検出も除去することができ、高精度な位相差検出が実現できる。
【0113】
この平均化はノイズあるいはモータ電流歪みなどで位相差情報が誤検出してしまうのを防止する目的であり、誤検出量が所望のスペック内に収まるように平均化回数mを設定すればよい。また、平均化回数mは次のように求めると効果的である。
【0114】
図12はモータ回転数が高いときおよび低いときの位相差情報の検出を示した図である。
【0115】
回転数に関わらず、平均化回数mを固定(図12の例では3回)すると、回転数が低いときには1回の位相差情報検出までに長時間を要してしまうことがわかる。つまり、回転数が低いときには、位相差変動の検出間隔が長くなってしまうのであり、たとえば早い位相差変動成分が検出できないこととなる。これは、早い位相差変動成分に対して、位相差制御で抑制することができないことを意味しており、位相差変動が生じてしまい、高効率駆動が実現できなくなってしまう。また、モータ制御においては、外部からの負荷変動(以下、外乱)に対して、この外乱による制御誤差を、所定値以下に抑えなければならないという、製品,装置の仕様があり、位相差変動の検出周期が長くなってしまうと、外乱の抑制率も下がり、仕様を満たせなくなってしまう不具合も生じてしまう。
【0116】
さらに、位相差情報検出周期の長時間化は、目標とする位相差に収束させる時間も長時間を要してしまうことともなる。これにも目標仕様が存在していることもあり、目標時間内に所定の位相差に収束できなくなってしまう。
【0117】
したがって、この発明では、回転数が高く、位相差情報検出周期が短く、位相差変動成分を十分検出できるときには、位相差情報の平均化回数mを多くとり(図12では3回)、逆に回転数が低く、位相差情報検出周期が長くなり、位相差変動成分が検出できないときには平均化回数mを少なくして(たとえば2回)、低速回転時での位相差検出周期の長時間化を防止している。
【0118】
これらの平均化回数mの設定は、抑制したい変動成分(圧縮機の場合であれば、サイクル周期で発生する負荷変動成分など)が、十分検出でき、また抑制できるような値とすればよいし、さらに目標位相差への収束時間が所定時間内に抑えられるような値にすればよい。なお、この平均化回数mは回転数に対応したテーブルを持ち、参照していくのが簡単な方法である。
【0119】
続いて、位相差制御のPI演算部11について説明する。
図13(a)はPI演算によるデューティ基準値計算の構成を示すブロック図であり、図13(b)は通常のP制御のみの構成を示すブロック図である。
【0120】
ここで、P制御とは比例制御のことであり、目標と比較された誤差データに対して所定の増幅を行ない制御するものであり、I制御とは積分制御のことで誤差データを積算して積分誤差データを作成し、これに対して所定の増幅を行なって制御するものである。
【0121】
PI制御とはP制御とI制御とを並列で行ない、加算する。図13(a),(b)に示すように、通常はこれら制御演算結果にオフセット値が加算されデューティ基準値が出力される。
【0122】
図13(b)に示されるP制御の特徴は、構成要素は少なく簡単に構成できることにあるが、問題点としては、原理的に目標とする値(本位相差制御の場合、目標位相差情報)に収束することはあり得ないということである。P制御やPI制御の詳細については、既に各種文献に説明されているので、ここではこれを概念的にわかりやすく、具体的数値で説明する。
【0123】
目標位相差情報に収束させるためのデューティ基準値が100であり、オフセット値(111)は80であり、また比例増幅器110のゲインが10であった場合を考えると、所望のデューティ基準値100からオフセット値80を引いた、残りの20は誤差データを増幅して得られる比例誤差データで作成されなければならないこととなる。このためには、比例増幅器ゲインを考慮すると2の誤差データが必要となってしまう。誤差データは実際の位相差情報と、目標位相差情報との差であるから、目標値に収束すると0になるが、0になってしまうと所望のデューティ基準値100を出力することができなくなってしまう。したがって、P制御のみでは位相差の残留分を0とすることができない。
【0124】
一方、図13(a)に示すPI制御は、P制御では上記と同様のその都度の誤差データに対する比例誤差データを作成し、I制御では誤差データの積分値を積分器112で計算(デジタル的にはその都度の誤差データを積算)して、積分誤差データを作成している。ここで、積分誤差データは、誤差データの定常的なずれ量(上記数値では2)を積分増幅器113で増幅した20となる。この積分誤差データは、積分によって求めているので、誤差データが0に収束後も保たれるため、誤差データを0にできる。すなわち目標位相差情報に収束させることができる。
【0125】
ここで、従来例1,2のような逆起電圧によるモータ駆動においては、モータの回転数を逆起電圧パルスから求めて制御する速度制御が行なわれている。一方、通電タイミングは逆起電圧から検出できるので、回転数に関わらずほぼ一定の通電タイミングが得られる。このため、速度制御をP制御だけで行なったとしても、モータ回転数が精密に制御できないだけであり、高効率化に関する通電タイミングは、逆起電圧は一義的に決められる。
【0126】
しかしながら、この発明における位相差制御の場合には、図13(b)のように位相差制御をP制御のみで行なうと、位相差の誤差データが残留してしまい、最悪の場合には前述のごとくブレーキトルク領域で通電を行なってしまい、モータが停止してしまうことがある。
【0127】
これを防止するために、図13(a)に示す構成のように、PI制御によってPI制御することが必要であり、位相制御にあってはPI制御演算を行なうことが望ましい。これによって、高精度な位相差制御が可能となり、位相差情報を正確に目標位相情報に収束させることができる。したがって、高効率なモータ駆動を実現できる。
【0128】
次に、目標位相差情報の最適な設定について説明する。
前述のごとく、位相差情報とロータ相対値の関係はほぼ比例している。また、モータ効率はステータロータ相対位置に対する通電のタイミングによって変化し、モータの回転条件によって最適な通電タイミングが存在し、この通電タイミングを外れると効率が低下してしまう。そして、この最高の効率が得られる通電タイミングは回転条件によって変化する。
【0129】
さらに、前述のごとく、この発明における位相差制御はステータロータ相対位置をモータ電圧位相に対するモータ電流の位相差情報によって間接的に検出するものであるので、モータの回転条件によって最適位相差情報が存在し、この位相差情報を外れると効率が低下してしまう。
【0130】
図14は実験結果としてこの発明による位相差制御でモータを駆動・制御したときの、位相差情報に対する効率の関係を示す。なお、このときの回転条件は、回転数3000rpm,トルク15kgfcmである。
【0131】
このように、効率はある位相差情報を頂点として、位相差情報は左右にずれると、低下してしまう特性となる。この効率が頂点となる位相差情報の値は、前述のごとく、モータ回転条件によって変化する。
【0132】
さらに、この発明では、モータ電流面積を検出するものであるが、回転条件によってはモータ電流波形が歪んでいることもあり、たとえ実際の位相差が0であっても、2個所の位相期間におけるモータ電流面積比が1にならないことが考えられる。このため、モータを高効率駆動させるためには、目標位相差情報は最高の効率が得られる位相差情報となるように回転条件によって設定する必要がある。この発明ではモータの回転数に従って目標位相差情報を設定するものであり、これによってさまざまな回転条件でも常に最高の効率でモータを駆動することができる。
【0133】
なお、回転数ごとの目標位相差情報は、回転数をパラメータとするテーブルとして予め格納しておけば、処理が簡素化できる。
【0134】
以上述べてきたこの発明による位相差制御は、位相差情報の計算は両モータ電流信号面積の比であるので除算を行なう必要がある。あるいは位相差情報を平均化する演算が必要となる。最近のマイコンは処理時間が短縮されているので問題にならないこともあるが、安価な低能力マイコンを用いた場合には、この除算にかかる演算時間が大きな負担となることもあり、マイコン全体の処理がオーバフローしてしまい、制御不能に陥ってしまうことが考えられる。これを防ぐためには、図15に示すようにモータ電流のサンプリング、つまり2個所の位相期間での所定回数のサンプリング終了後に位相差情報検出(面積比算出)のための時間および位相差情報の平均化演算の時間を意図的に設けて、この間に新たな位相差検出処理を行なわないようにすることが有効な方法である。
【0135】
このように演算のための時間を設けることで、安価な低能力マイコンでも、この発明による位相差制御を構成することが可能となり、制御系のコストダウンを実現できる。また、この発明による位相差制御全体の構成は以下のようにすることで効果的に行なえる。
【0136】
図16は、この発明の位相差制御の主となる部分の制御マイコンで処理される制御プログラムの処理項目を表に示した図である。
【0137】
図16において、メインループは各割込処理がないときに処理されるループであり、モータ回転の停止/駆動指令確認の他、図5(a)および図10で示したような位相差情報の検出を行なう。また、PWM割込は、PWMキャリア周期ごとに処理されるもので、その都度正弦波データの参照,モータ電圧位相の基準位相検出,電流サンプリングタイミングの計算,PI演算,出力デューティの設定を行なう。
【0138】
さらに、タイマ割込は、電流サンプリングタイミングで設定された割込値とタイマ値とのコンペアマッチで処理が開始され、図4(b)に示すようなサンプリング開始を指示し、次回のサンプリングタイミングを設定する。ここで、注目すべきは、この発明では位相差検出の処理をメインループ内で行なっていることである。
【0139】
前述のごとく、位相差検出においては、除算など処理時間が長い演算を行なう必要がある。したがって、割込ルーチン内でこの位相差検出処理を行なうと、その他の割込処理が待たされてしまい、正確なデューティ設定,正確なサンプリング開始タイミングがなされず、制御性能が低下してしまい、安定なモータ駆動が困難となってしまう。
【0140】
そこで、この発明の実施形態では、図16に示すように、演算時間の長い操作検出部の処理をメインループ内で行なうことによって、制御性能を損なわない正確な位相差制御を実現する。
【0141】
ところで、位相制御部のPI演算器11における各増幅器の制御ゲインの設定を次のように設定すると、より精度の高い位相差制御を実現できる。
【0142】
図17はモータ電流信号に重畳されているオフセット量の違いによる、位相差情報とモータステータとモータロータとの相対位置、すなわち通電タイミングの関係を示す図である。図17に示すように、オフセット量を変更するだけで特性の傾きが変化してしまうことがわかる。これは、同じ量だけモータ駆動電圧(PWMデューティ基準値)を変更して通電タイミングを変更しても、検出される位相差情報に現われる変化量はモータ電流信号に重畳するオフセット量によって異なってしまうことである。
【0143】
これは、この発明の実施形態の位相差検出が電流面積を利用しており、オフセット量は電流面積に関して位相差に関係のない定常的な値であり、これによってモータ電流面積の位相差変動による感度が変化するために発生してしまう。たとえば、このオフセット量が大きいと本来の位相差変動によるモータ電流面積の変化が現われにくく、結果として位相差情報の変化は少なく検出されてしまう。
【0144】
このことは、位相差制御の制御系のゲインは、モータ電流信号に重畳するオフセット量によって変化してしまうことを意味しており、制御系の発振によるモータ停止や制御ゲイン不足による位相差変動の増大が懸念される。
【0145】
このため、適切な制御ゲインで高精度な制御や安定なモータ駆動を実現するためには、オフセット量に応じて、制御ゲインを可変して設定することが望ましく、この発明の実施形態では、このようにオフセット量に応じて制御ゲインを可変して設定する。
【0146】
なお、オフセット量の検出には、1周期分のモータ電流信号サンプリング値を平均化して求めてよいし、モータ電流検出アンプ部6のオフセット設定値から求めてもよい。実際に可変設定する制御ゲインは、オフセット量をパラメータとして実験的に求めた値をメモリに格納しておき、現行のオフセット量に最も近い値を設定する方法を用いてもよく、あるいはオフセット量を変数とするゲイン式をその都度計算して設定してもよい。
【0147】
なお、このオフセット量は初期の設定以降、変更されることは少ないので、初回のみに検出して設定するだけでもよい場合もある。
【0148】
これによって、適切な制御ゲインで、高精度な制御および安定なモータ駆動を実現することができる。
【0149】
図18はモータ電流信号の振幅の違いによる、位相差情報とモータステータとモータロータとの絶対値、すなわち通電タイミングの関係を示す図である。図18に示すように、振幅が変化するだけで特性の傾きが変化してしまうことがわかる。これは、同じ量だけモータ駆動電圧(PWMデューティ基準値)を変更して通電タイミングを変更しても、検出される位相差情報に現われる変化量はモータ電流信号の振幅によって異なってしまうということである。
【0150】
これは、この実施形態の位相差検出が電流面積を利用しており、この振幅は電流面積に関して位相差の変化量を決定する値であり、これによってモータ電流面積の位相差変動による感度が変化するために発生してしまう。たとえば、この振幅が大きいと本来の位相差変動によるモータ電流面積の変化量が増幅されて現われ、結果して位相差情報の変化が大きく検出されてしまう。
【0151】
このことは、位相差制御の制御系のゲインは、モータ電流信号の振幅によって変化してしまうことを意味しており、制御系の発振によるモータ停止や制御ゲイン不足による位相差変動の増大が懸念される。このため、適切な制御ゲインで高精度な制御および安定なモータ駆動を実現するためには、この振幅に応じて制御ゲインを可変して設定することが望ましく、この実施形態では振幅に応じて制御ゲインを可変して設定する。
【0152】
振幅の検出には、使用する回転条件によってモータ電流が変化するため、1周期分のモータ電流信号サンプリング値で最大値と最小値の差から求めるのがよいが、モータ電流検出アンプ部6のゲイン設定値から求めてもよい。
【0153】
実際に可変設定する制御ゲインは、振幅をパラメータとして実験的に求めた値をメモリに格納しておき、現行の振幅に最も近い値を設定する方法でもよく、振幅を変数とするゲイン式をその都度計算して設定してもよい。また、この例においても振幅は初期の設定以降変更されることは少ないので、初回のみに検出して設定するだけでもよい場合もある。
【0154】
これによって、適切な制御ゲインで高精度な制御および安定なモータ駆動を実現することができる。
【0155】
このようなモータ電流信号の振幅による制御系ゲインの変化は、その振幅が一定になるように制御することにより、制御ゲインを変更しない方法も有効である。
【0156】
図19はそのようなモータ電流検出アンプ部の構成を示す図である。図19において、オフセット設定部203でオフセットを設定し、モータ電流信号bの振幅を振幅検出器201で検出し、これが一定となるように可変ゲイン設定部202において適切なゲインを設定する。このような構成によっても適切な制御ゲインで、高精度な制御および安定なモータ駆動を実現できる。
【0157】
次に、上述の位相差制御の位相差情報の検出タイミングを短縮し、モータ1回転における位相差情報の検出回数を増やし、位相差情報検出の高分解能化による精密な制御を実現する方法について説明する。
【0158】
図20はモータ電流信号bの振幅およびオフセットを任意の値に設定したときのモータ駆動電圧位相に対する、各モータ駆動電圧位相において位相差を0にするための目標位相差情報の特性を示す図である。
【0159】
このように、回転磁界を発生させるためにモータ駆動電圧位相を変更していくが、その都度のモータ駆動電圧位相において適切な目標位相差情報を設定することで、より短い間隔での位相差情報の検出を実現できる。たとえば、図20の各ポイントは、電気角で20°に相当するものであり、この場合、正弦波1周期中に18回もの位相差情報の検出が実現できる。実際には、各モータ駆動電圧位相における目標位相差情報をメモリに格納しておき、その都度対応する値を呼出して設定するのが簡単な方法であるが、これに限らない。
【0160】
なお、図20において、目標位相差情報が上限ピークあるいは下限ピークとなるモータ駆動電圧位相も存在しているのがわかる。このモータ駆動電圧位相のときには、検出される位相差情報も位相差0を中心として山型の特性となってしまう。つまり、位相差が遅れても進んでも、位相差情報としては同じ方向に変化してしまう。したがって、このモータ駆動電圧位相およびその近辺のモータ駆動位相における位相差検出は正確ではなく、位相差制御も前述のPI制御などは不可能となってしまう。
【0161】
そこで、この発明の実施形態では、このことに鑑み、目標位相差情報が上限ピークあるいは下限ピークとなってしまい、位相差情報が正確に得られないなどといった位相の変化情報量が小さい特定のモータ駆動電圧位相での位相差検出あるいは位相差制御を行なわないようにマスク処理する。このマスク処理は、検出回数を増大させた構成において、たかだか1〜3回程度の位相差情報検出のマスク処理にすぎないので、制御性能に与える影響は少ない。
【0162】
図21は位相差検出演算方法を変更したときの、モータ駆動電圧位相に対する、各モータ駆動電圧位相において位相差を0にするための目標位相差情報の特性を示す図であり、図22は位相差検出演算方法の一例を説明するための図である。
【0163】
図21は図20と同様にして、モータ電流信号bの振幅,オフセットは任意に設定している。ここで、図21における位相差検出演算方法を図22をもとにして説明する。図22で示す演算方法の変更は演算に使用するパラメータを変更したものである。
【0164】
位相差情報の検出点が図21に示すとおりであるとき、目標▲1▼はθbとθaの期間のモータ電流面積比Isb/Isaの演算で位相差情報を算出するとき、すなわち1つの位相期間を電気角90°とすれば、隣り合う位相期間同士のモータ電流面積比で位相差情報を算出するときの各モータ駆動電圧位相における目標位相差情報を示している。目標▲2▼はθcとθaの期間のモータ電流面積比Isc/Isaの演算で位相差情報を算出するとき、すなわち1つの位相期間を電気角90°とすれば、1回分の位相期間を経て隔てた位相期間同士のモータ電流面積比で位相差情報を算出するときの各モータ駆動電圧位相における目標位相差情報を示している。さらに、目標▲3▼はθdとθaの期間のモータ電流面積比Isd/Isaの演算で位相差情報を算出するとき、すなわち1つの位相期間を電気角90°とすれば、2回分の位相期間を隔てた位相期間同士のモータ電流面積比で位相差情報を算出するときの各モータ駆動電圧位相における目標位相差情報を示している。
【0165】
このように演算方法を変更することで、図21に示すように目標位相差情報を変化させることができ、各目標特性において正確な位相差情報の検出が可能な目標特性をその都度切換えて選択し、さらに演算方法を変更することで目標位相差情報が上限ピークあるいは下限ピークとなり、制御不能に陥ることもなくなり、いかなるモータ駆動電圧位相でも正確な位相差情報を検出することができる。
【0166】
なお、各位相期間におけるモータ電流面積の算出は、前述してきたサンプリングの積算で行なうと容易である。また、各目標ごとにゲインが異なっているため、目標切換ごとにゲインを設定していくのが望ましい。
【0167】
また、当然ながら目標数は前述のごとく3個とする必要がなく、正確な位相差検出が可能であれば2個でもよいし、さらなる高精度を目指すのであれば4個以上として最適目標を選択すればよい。
【0168】
なお、演算方法は、上述の説明に限らず、1つの位相期間を90°としない構成など、いかなる方法であってもよい。
【0169】
図23は電流センサ5をモータコイル端子の複数相に取付け、それぞれに対して位相差情報を算出するときの各相におけるモータ駆動電圧位相と、各モータ駆動電圧位相において位相差を0にするための目標位相差情報の特性である。
【0170】
なお、この例においても図20と同様にして、モータ電流信号bの振幅,オフセットは任意に設定している。図23から明らかなように、目標位相差情報は120°位相のずれた値となっている。したがって、図23に示すように、各相の位相差情報のうち、正確な位相差情報が得られるコイル端子相を選択して、位相差制御を行なうことで高分解能な位相差情報を検出でき、精度の良い位相差制御を実現することができる。
【0171】
上述のごとく、この実施形態では、位相差情報の検出周期を短縮することができるため、モータ挙動の細やかな検出が実現できるとともに、精密な位相差制御を実現でき、モータ駆動の安定性および信頼性が格段に向上する。
【0172】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0173】
【発明の効果】
以上のように、請求項1,2,15および16の発明によれば、モータ駆動電圧を位相とモータ電流との位相差を、2個所の位相期間でのモータ電流面積比で検出し、この位相差情報を目標位相差情報に制御するように、通電休止期間を必要としない正弦波通電をはじめとする180°通電などでモータを駆動するようにしたので、同期モータの駆動において正弦波180°通電の特徴である低騒音,低振動,高効率,省電力化という効果を奏することができる。
【0174】
また、モータ電流をロータ磁束波形と同波形になるように駆動波形を設定することで、より効果的にトルクを発生することができるので、高効率化を実現できる。あるいは、通電休止期間を少なくすることができる。また、位置検出センサを不要としているので、コストダウンを実現できる。
【0175】
さらに、この発明による位相差情報検出によれば、ノイズなどの影響による位相差情報の誤検出を低減した正確な位相差情報が得られ、さらに本来ゼロクロスでは検出が困難である0位相の電流波形が平坦であっても、正確な位相差情報が得られ、さらにモータ電流に重畳される低い周波数成分の変動による位相差情報の誤検出もなくすことができ、正確な位相差情報が得られる。
【0176】
したがって、ノイズなどが多い悪環境下であっても、またさまざまな回転数であっても高精度な位相差制御が可能となる。なお、電流検出に用いる電流センサはモータ内部に特別に設ける必要がなく、モータ制御基板内に収めることができるので、配線の取り回し、回路設計を容易にできる。また、この発明は、モータ電流位相をゼロクロスのようなエッジからではなく、モータ電流の各サンプリング結果の積算による面積から求めているので正確な位相差情報を検出できる。
【0177】
さらに、請求項3の発明によれば、モータ電流のサンプリングタイミングの設計計算を簡略化することができるので、制御マイコンでの処理時間の短縮化を実現できる。よって、高速で高精度な位相差制御が可能となる。また、安価な制御マイコンの使用が可能となるので、コストダウンを実現できる。
【0178】
また、請求項4の発明によれば、モータ電流のサンプリング回数を回転数に基づいて設定することにより制御マイコンの処理速度に合せて位相差検出が行なえる。したがって、いかなる制御マイコンでもそのマイコンの能力に合せて最高の性能を引出すことができる。さらに安価な制御マイコンを使用しても正確な位相差制御を行なえるので、コストダウンを実現できる。また、制御マイコンの処理がオーバフローしないので、高精度な位相差制御が実現できる。
【0179】
さらに、請求項5,6の発明によれば、2個所の位相期間が対象となる位相であるので、位相差は1を中心とした値となる。したがって、制御設計が容易になり、制御マイコンでの処理が軽減できる。よって、高速で高精度な位相差制御が可能となる。また、安価な制御マイコンの使用が可能となるので、コストダウンを実現できる。
【0180】
また、請求項7の発明によれば、モータ電圧位相の基準位相を正確な値に補正することができるので、正確なモータ電圧位相を求めることができる。したがって、正確な位相差情報を検出でき、高精度な位相差制御を実現できる。
【0181】
請求項8の発明によれば、位相差情報を平均化するようにしたので、正確な位相差情報を求めることができる。したがって、ノイズが多いなどの悪環境下、モータ電流波形の歪みおよび変動が大きい回転数においても、高精度な位相差制御を実現できる。
【0182】
請求項9の発明によれば、位相差情報の平均化回数を回転数に基づいて設定することができるので、必要とする制御帯域,所望の位相差情報誤差に合せて位相差情報の検出が行なえる。したがって、所望の制御帯域,位相差情報誤差を確保した安定な位相差制御を実現できる。
【0183】
請求項10の発明によれば、位相差制御をPI制御演算で行なうようにしたので、位相差情報に内在する残留誤差データを0に収束させることができる。したがって、目標位相差に合せる高精度な位相差制御が可能となる。また、高効率な位相差制御が実現できる。
【0184】
請求項11の発明によれば、位相差制御ゲインを回転数あるいは目標位相差情報に応じて設定することができるので、回転条件によって位相差特性に差があっても、また多少位相差特性に非線型性が生じていても、これらを補償することができる。したがって、いかなる状況でも最適な位相差制御を実現でき、効率のよいモータ駆動を実現でき、省電力化が実現できる。
【0185】
請求項12の発明によれば、目標位相差情報を回転数によって設定することができるので、回転数によって変化する、最高効率が得られる位相差に常に追従することができる。また、モータ電流波形の歪みの影響による2個所のモータ電圧位相期間での両モータ電流信号面積の誤差も除去することができる。したがって、いかなる回転条件でも最高効率でのモータ駆動を実現でき、省電力化が実現できる。
【0186】
請求項13の発明によれば、位相差情報検出のための演算時間を設けているため、目標位相差情報を回転数によって設定することができ、回転数によって変化する最高効率が得られる位相差に常に追従することができる。したがって、いかなる回転条件でも最高効率でのモータ駆動を実現でき、省電力化が実現できる。
【0187】
請求項14の発明によれば、位相差情報の検出をメインループ内で行なうようにしているので、割込時間に左右されない処理を行なうことができる。したがって、処理速度の遅い安価な制御マイコンを用いた場合でも、正確な位相差制御を行なうことができる。また、コストダウンが実現できる。
【0188】
請求項17,18および19の発明によれば、位相差制御の制御ゲインを常に最適値に設定することができ、高精度な制御特性を得ることができ、安定なモータ駆動を実現することができる。
【0189】
さらに、請求項20,21,22および23の発明によれば、目標位相差情報あるいは位相差情報算出方法をモータ駆動電圧位相によって設定するようにしたので、位相差情報の検出周期を短縮することができ、モータ挙動の細やかな検出が実現できるとともに、精密な位相差制御を実現でき、モータ駆動の安定性および信頼性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】 この発明の一実施形態による実験結果を示し、ロータ−ステータ相対位相−位相差情報特性である。
【図3】 この発明の一実施形態による実験結果を示し、モータ駆動電圧−位相差情報特性を示す。
【図4】 この発明の一実施形態を示すモータ電流波形およびサンプリングタイミング図である。
【図5】 この発明の一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】 この発明の一実施形態を示すモータ電流波形およびサンプリングタイミング図である。
【図7】 この発明の一実施形態を示すモータ電流波形およびサンプリングタイミング図である。
【図8】 この発明の一実施形態を示すモータ電流波形およびサンプリングタイミング図である。
【図9】 この発明の一実施形態を示すサンプリングタイミング図である。
【図10】 この発明の他の実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】 この発明の他の実施形態による実験結果を示し、ロータ−ステータ相対位相−位相差情報特性である。
【図12】 この発明の他の実施形態を示すサンプリングタイミング図である。
【図13】 この発明の他の実施形態を示すPI演算部の構成を示すブロック図である。
【図14】 この発明の他の実施形態による実験結果を示し、位相差情報−効率特性を示す。
【図15】 この発明の他の実施形態を示すサンプリングタイミング図である。
【図16】 この発明の他の実施形態を示す処理構成図である。
【図17】 この発明のさらに他の実施形態における位相差情報とモータステータとモータロータとの相対位置の特性を示す図である。
【図18】 この発明のさらにその他の実施形態における位相差情報とモータステータとモータロータとの相対位置の特性図である。
【図19】 この発明のその他の実施形態におけるモータ電流検出アンプ部の構成を示す図である。
【図20】 この発明のさらに他の実施形態におけるモータ駆動電圧位相に対する目標位相差情報の特性図である。
【図21】 モータ駆動電圧位相に対する目標位相差情報の特性を示す図である。
【図22】 この発明のさらに他の実施形態における位相差検出演算方法の一例を説明するための図である。
【図23】 モータ駆動電圧位相に対する目標位相差情報の特性を示す図である。
【図24】 従来の正弦波180°通電におけるモータ電流波形を示す図である。
【図25】 従来の正弦波180°通電におけるモータ電流波形を示す図である。
【符号の説明】
1 モータ、2 インバータ回路、3 コンバータ回路、4 AC電源、5 電流センサ、6 モータ電流検出アンプ部、7 制御マイコン、8 位相差検出部、9 目標位相差情報格納部、10 加算器、11 PI演算部、12 回転数設定部、13 正弦波データテーブル、14 正弦波データ作成部、15 PWM作成部、201 振幅検出器、202 可変ゲイン設定部、203 オフセット設定器、204 アンプ。
Claims (23)
- 複数相のモータコイルを備えた同期モータを駆動・制御するモータ制御装置であって、
回転数の設定のための指令が与えられたことに応じて、前記同期モータを駆動するための駆動波データを前記複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成手段と、
前記複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出手段と、
前記駆動波データ作成手段によって作成された駆動波データから前記特定相のモータ駆動電圧位相を検出し、前記モータ電流検出手段から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御手段と、
前記駆動波データ作成手段から出力される各相の駆動波データと前記位相差制御手段から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出手段と、
複数のスイッチング素子を含み、前記デューティ算出手段によって算出された各相ごとの出力デューティに従ってパルス幅変調信号を生成して各スイッチング素子の導通を制御し、各モータコイルに通電を行なうインバータ手段とを備え、前記位相差検出手段は、前記特定相のモータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出して、これを位相差情報とすることを特徴とする、モータ制御装置。 - 前記位相差検出手段は、前記モータ駆動電圧を基準とした2個所の位相期間中に、1位相期間当り流れるモータ電流信号をn回(nは1以上の整数)サンプリングし、サンプリングされた各電流サンプリングデータを積算して前記モータ電流信号面積として出力することを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記位相差検出手段は、前記モータ駆動電圧位相を基準とした位相期間中に同間隔で前記サンプリングを行ない、回転数に対応してサンプリング間隔を設定することを特徴とする、請求項2に記載のモータ制御装置。
- 前記サンプリング回数nは、回転数に基づいて設定することを特徴とする、請求項2または3に記載のモータ制御装置。
- 前記モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間は、第1の期間をモータ駆動電圧位相の0〜90°の期間に選び、第2の期間を90〜180°の期間に選ぶことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間は、第1の期間をモータ駆動電圧位相の180〜270°の期間に選び、第2の期間を270〜360°の期間に選ぶことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間の開始後、1回目のモータ電流のサンプリング開始タイミングは、該特定相の駆動波データの基準位相を超えた駆動波データ量を補正して設定することを特徴とする、請求項2から6のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記位相差情報は、前記モータ電流信号面積の面積比をm回分(mは1以上の整数)平均化して求めることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記位相差情報の平均化回数mは回転数に基づいて設定することを特徴とする、請求項8に記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段は、前記位相差情報と目標位相差情報との誤差データに対する比例積分制御演算で構成されることを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段で設定される制御ゲインは回転条件あるいは目標位相差情報に応じて設定されることを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記目標位相差情報は、回転条件によって最適な値に設定することを特徴とする、請求項10に記載のモータ制御装置。
- 1回の前記モータ駆動電圧位相を基準とした2個所の位相期間終了後は、前記モータ電流信号面積の面積比演算と位相差情報平均化の時間を設け、この間一連の位相差検出処理を行なわないことを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 少なくとも前記位相差検出手段の処理は、制御マイクロコンピュータの処理ルーチンのメインループ内で行なうことを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記駆動波は正弦波であることを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記駆動波は、電流波形とロータ磁石磁束波形がほぼ同波形となるように設定することを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段で設定される制御ゲインは、前記モータ電流検出手段で設定されるオフセット値に応じて設定されることを特徴とする、請求項1から16のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段で設定される制御ゲインは、前記モータ電流信号の振幅値に応じて設定されることを特徴とする、請求項1から16のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記モータ電流検出手段で設定されるモータ電流の増幅率は、前記モータ電流信号の振幅が常に一定になるような値に設定されることを特徴とする、請求項1から18のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段における位相差の目標値である目標位相差情報は、位相差情報の検出点に応じて設定されることを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載のモータ制御装置。
- 前記位相差検出手段における位相差情報の演算方法も、前記目標位相差情報の設定と同様にして、位相差情報の検出点に応じて設定されることを特徴とする、請求項20に記載のモータ制御装置。
- 前記位相差制御手段において、モータ電流位相変動に対する位相差情報変化量が小さい検出点におけるデューティ基準値の算出をキャンセルすることを特徴とする、請求項20に記載のモータ制御装置。
- さらに、複数相のモータ電流信号を検出し、位相差情報の検出点によって参照するモータ電流信号を選択することを特徴とする、請求項20に記載のモータ制御装置。
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