JP3643304B2 - 水性樹脂分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性樹脂分散体の新規な製造方法に関するものであり、本発明により得られる水性樹脂分散体は、特に建材、木材、紙材、繊維材、皮革等の耐水性の低い基材に対する塗料やコーティング剤として利用することが有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、無公害性、火災の低危険性等の利点から、特に、土木建築分野などで水性樹脂分散体を使用した塗料が汎用されている。
従来から、水性樹脂分散体を得るためには、通常、乳化重合が行われているが、得られた水性樹脂分散体の粒子の重合安定性、機械的安定性、化学的安定性、貯蔵安定性を確保するために、乳化剤を多く使用したり、酸性基を有する重合性単量体を共重合させたりするという方法は一般に知られていた。
しかしながら、乳化剤や、酸性基を有する単量体のような親水性成分には、塗膜の耐水性、具体的には耐透水性、耐吸水性、耐水白化性等を低下させるという欠点があった。
【0003】
よって、これまでにも塗膜の耐水性を改良するために、水性樹脂分散体について種々の検討がなされてきているが、それらは水性樹脂分散体の粒子形態や粒子組成に関するものである。
粒子形態に関しては多段重合によるコア/シェル化や小粒子径化等が報告されている。
コア/シェル化は、低Tgポリマーによる成膜効果、高Tgポリマーによる吸水膨潤の抑制効果が働くため、耐水性の向上が期待されたが、試験温度を高くした耐温水白化性を発現させるには十分ではなかった(特開平7−70215)。また、高Tgポリマーと低Tgポリマーの複合化は、耐汚染性や耐傷つき性を低下させるため用途により適用できない場合もあった。
【0004】
小粒子径化は、粒子の融着促進による耐水性の向上が期待されたが、小粒子径化には乳化剤や酸性基を有する重合性単量体の量を増やすなどして粒子を安定化させる必要があるため、結果的に耐水性の向上効果が低減するという問題がある。また、小粒子径化によって粘度が高くなると、コーティング剤としての取り扱いが困難になるため固形分含有率を減少させる必要が生じるが、これにより乾燥時間の延長や、経済性の低下を招く。小粒子径化は具体的に実現しているが、乳化剤や酸性基を有する重合性単量体の使用量が多いため、長時間の試験において耐温水白化性を得るには十分ではなく、固形分含有率が少ないという問題がある(特開平10−237115)。
【0005】
粒子組成に関するものとしては酸性基を有する重合性単量体や乳化剤等の親水性成分含有量に注目したものが報告されている。なかでも、酸性基を有する重合性単量体に注目した具体例があり、そこで提案されている手法では、クリアー塗膜の耐温水白化性を得るには不十分であった(特開平6−279688、特開平9−316389)。
一般的に、親水性成分の含有量の低減によって、水の浸入を促進する成分が減少するため、耐水性の向上が期待される。しかし、単に親水性成分を減らすだけでは、水性樹脂分散体の粒子の安定性を低下させ、また粒子径が大きくなってしまうという問題が残り、また、加熱乾燥の際には、塗膜表面の上乾きによる皮張りが生じ、乾燥不良および塗膜白化の原因となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、耐水性に非常に優れたの皮膜等を形成する水性樹脂分散体の工業的に簡便な新規な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、水性樹脂分散体を得るにあたっては、酸性基を有する重合性単量体は重合体粒子の大粒子径化を防ぐために必要であるにもかかわらず、その反面、耐水性低下の原因にもなり得ることに着目し、これらを一挙に解決するため乳化重合の方法を種々検討した。これにより、酸性基を有する重合性単量体の全重合工程での合計使用量を特定範囲の割合とした上で、乳化重合を初期重合工程と本重合工程とに分けて行うこととし、初期重合工程においては、重合性単量体成分(酸性基を有する重合性単量体とこれと共重合可能な他の重合性単量体とを含む)はその全重合工程での合計使用量の特定範囲の割合を用い、水性媒体および乳化剤とともに一括して仕込んで反応させ、一旦重合をほぼ完結させ、その後、本重合工程において残りの重合性単量体成分を加えて反応させた。また、初期重合工程での酸性基を有する重合性単量体の使用量も、酸性基を有する重合性単量体の全重合工程での合計使用量に対する特定範囲の割合で示した。以上のような工程を特徴とする製造方法で水性樹脂分散体を得れば、これをもって形成される塗膜などは耐水性等に非常に優れたものに改良され得ることを見出し、本発明はこのようにして完成された。
【0008】
すなわち、本発明にかかる水性樹脂分散体の製造方法は、
酸性基を有する重合性単量体およびこれと共重合可能な他の重合性単量体を含む重合性単量体成分の一部を、水性媒体および乳化剤とともに仕込みし、仕込んだ重合性単量体成分の80重量%以上を重合させる初期重合工程と、残りの重合性単量体成分を加えて重合させる本重合工程とを含む水性樹脂分散体の製造方法であり、
酸性基を有する重合性単量体の全重合工程での合計使用量を、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量の0.1〜3重量%にするとともに、
初期重合工程においては、重合性単量体成分の5〜20重量%を用い、かつ、酸性基を有する重合性単量体の55〜100重量%を用い、さらに、
前記本重合工程が多段であって、本重合工程の第一段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)と最終段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)との差の絶対値が30以上である 、
ことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水性樹脂分散体の製造方法は、初期重合工程とこれに引き続いて行われる本重合工程とを含むことを特徴とする。
初期重合工程とは、水性媒体および乳化剤と、重合性単量体成分の一部(使用範囲割合は後述する)とを含んで反応器に仕込み、重合開始剤を添加することによって開始される工程であることが好ましい。この初期重合工程では、使用する重合性単量体成分等を事前に機械撹拌して一部乳化させたプレエマルションとして添加してから重合を開始してもよいし、水性媒体、乳化剤、重合性単量体成分の単なる混合状態から重合を始めてもよいが、特に限定されるわけではない。
【0010】
前記初期重合工程では投入した重合性単量体成分の80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を重合させ、その値に到達したことをもって初期重合工程終了とすることが好ましい。
本重合工程とは、前記初期重合工程終了後に、初期重合工程内で残った重合性単量体成分および新たに添加できる残りの重合性単量体成分を、初期重合工程で得られた重合体にさらに重合させる工程をいう。本重合工程では重合性単量体成分のみを添加してもよいし、重合性単量体成分等を事前に機械撹拌して一部乳化させたプレエマルションとして添加してもよいが、特にこれらに限定されるわけではない。また、添加方法としては、好ましくは、一括添加、分割添加および連続滴下などがあり必要に応じて適宜選択すればよいが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0011】
本重合工程は1段で行ってもよいが、特に限定せず、多段に分けて行ってもよい。本重合工程の段数は、製造工程を簡略化するためには1〜3段であることが好ましいが、特に限定されるわけではない。
多段の本重合工程では、前段で投入した重合性単量体成分の80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を重合させた後に、新たな重合性単量体成分を添加することが好ましい。また、多段で本重合工程を行う場合は、各段での重合性単量体の添加方法は、特に限定されるわけではなく、全て同じであっても、一部または全部異なっていてもよい。
【0012】
特に塗膜(塗料表面)の耐水性を重視する場合には、本重合工程は多段で行うことが好ましく、本重合工程の第一段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)と最終段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)との差の絶対値が30以上、好ましくは50以上、より好ましくは70以上となることが好ましい。この際、第一段の計算Tg(℃)が最終段の計算Tg(℃)より高くても良いし、最終段の計算Tg(℃)が第一段の計算Tg(℃)より高くても良い。
本発明の製造方法においては、水性樹脂分散体を合成する際に用いる重合性単量体成分は、酸性基を有する重合性単量体とこれと共重合可能な他の重合性単量体とを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、酸性基を有する重合性単量体の全重合工程での合計使用量は、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量のうちの0.1〜3重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5重量%、さらにより好ましくは1〜2重量%である。しかし、全重合工程での酸性基を有する重合性単量体の合計使用量が、全重合工程での重合性単量体成分の合計使用量のうちの0.1重量%未満の場合、得られる水性樹脂分散体の物性の安定性が低下し、また、この水性樹脂分散体を加熱乾燥させる塗料などの用途に利用する際には、塗膜の上乾きによる皮張りのため塗料の乾燥不良が生じるので好ましくない。一方、3重量%を超える場合には、前記水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などはその耐水性を大きく低下させることになり、また、前記水性樹脂分散体中の粒子を中和して使用する際には、粘度が高くなり、塗料やコーティング剤としての取り扱いが困難になるため好ましくない。
【0014】
本発明の製造方法における初期重合工程においては、重合性単量体成分の合計使用量は、全重合工程での重合性単量体成分の合計使用量のうちの3〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%、さらにより好ましくは7〜15重量%である。しかし、前記初期重合工程での重合性単量体成分の使用量がその全重合工程での合計使用量の3重量%未満である場合には、得られる水性樹脂分散体の粒子が大粒子径化し、この水性樹脂分散体をもって形成される塗膜の成膜性が低下するので好ましくない。一方、30重量%を超える場合では、初期重合工程での発熱が大きくなり製造時の水性樹脂分散体の安全性に問題が生じるため好ましくない。
【0015】
また、本発明の製造方法における初期重合工程においては、酸性基を有する重合性単量体の合計使用量は、全重合工程での酸性基を有する重合性単量体の合計使用量のうちの35〜100重量%であることとが好ましく、より好ましくは45〜100重量%、さらにより好ましくは55〜100重量%である。しかし、初期重合工程での酸性基を有する重合性単量体の合計使用量が、全重合工程での酸性基を有する重合性単量体の合計使用量のうちの35重量%未満である場合は、得られる水性樹脂分散体もって形成される塗膜などでは、その耐水性の改良効果が低下するので好ましくない。
【0016】
酸性基を有する重合性単量体の種類については、特に限定されないないが、カルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン基を有する重合性単量体および酸性リン酸エステル系重合性単量体等が使用でき、具体的には、以下のものを好ましく挙げることができる。なお、以下に例示する酸性基を有する重合性単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0017】
スルホン基を有する重合性単量体としてはビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびスルホ(メタ)アクリレート等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
酸性リン酸エステル系重合性単量体としては2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェートおよび2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0018】
なかでも、本発明の製造方法に用いる酸性基を有する重合性単量体としては、特に耐水性、詳しくは、得られる水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などの耐水性を重視する場合には、上に例示した前記酸性基を有する重合性単量体のうち、カルボキシル基を有する重合性単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸を用いることがより好ましい。
酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体としては、特に限定されるわけではないが、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体、ビニルエステルおよびビニルエーテル等を挙げることができ、以下に具体例を示す。なお、以下に例示する酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、 (メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエンおよびα−メチルスチレン等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0020】
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
また、前記共重合可能な他の重合性単量体のほかの例として、特に限定されるわけではないが、多官能性の重合性単量体、水酸基を有する重合性単量体、エポキシ基を有する重合性単量体、ニトリル基を有する重合性単量体、アミド基を有する重合性単量体、アミノ基を有する重合性単量体、ヘテロ環を有する重合性単量体、シリコン成分を有する重合性単量体、ハロゲン成分を有する重合性単量体、光安定化能を有する重合性単量体および紫外線吸収能を有する重合性単量体等が好ましく使用でき、以下に具体例を示す。
【0021】
多官能性の重合性単量体としては(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル単量体;(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸アリルエステルを好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
水酸基を有する重合性単量体としては(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのモノエステル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0022】
エポキシ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
ニトリル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
アミド基を有する重合性単量体としては、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドおよびN−メチロール(メタ)アクリルアミド等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0023】
アミノ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、アミノスチレン等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
ヘテロ環を有する重合性単量体としては、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルピロリドン等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
シリコン成分を有する重合性単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランおよびトリメトキシシリルアリルアミン等のシランカップリング剤を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0024】
ハロゲン成分を有する重合性単量体としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロスチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化エチレン;(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル等のパーハロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
光安定化能を有する重合性単量体としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等ピペリジン系重合性単量体を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0025】
紫外線吸収能を有する重合性単量体としては、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性単量体;2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5?’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性単量体等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0026】
なかでも、本発明の製造方法に用いる前記他の重合性単量体としては、特に耐水性、詳しくは、得られる水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などの耐水性を重視する場合、上に例示した前記他の重合性単量体のうち、炭素数6以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル、炭素数4以上のアルキル基を有するメタクリル酸エステルおよび芳香族ビニル系単量体のいずれかに分類される重合性単量体を少なくとも1種含むことが好ましい。また、特に耐候性、詳しくは、水性樹脂分散体を成分とする組成物の耐候性を重視する場合には、上に例示した前記他の重合性単量体のうち、メタクリル酸t−ブチル等の3級アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、メタクリル酸シクロヘキシル等のシクロアルキル基を有する(メタ)クリル酸エステル、アルコキシシリル基等のシリコン成分を有する重合性単量体、フルオロオレフィン等のハロゲン成分を含む重合性単量体、ピペリジン系等の光安定化能を有する重合性単量体およびベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収能を有する重合性単量体のいずれかに分類される重合性単量体を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法に用いる乳化剤については、その量は特に限定されるわけではないが、得られる水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などの耐水性を特に重視する場合には、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量に対して、乳化剤の全重合工程での合計使用量を1〜3.5重量%とするのが好ましく、1.5〜3重量%とするのがより好ましい。しかし、前記乳化剤の全重合工程での合計使用量が1重量%未満の場合には、水性樹脂分散体の粒子の安定性低下や、大粒子径化が生じるので好ましくない。一方、乳化剤の全重合工程での合計使用量が3.5重量%以上のときは耐水性が低下するため好ましくない。また、乳化剤の添加方法も、特に限定されないが、初期重合工程時に予め反応釜にし込んでおいてもよいし、本重合工程でプレエマルションとして添加してもよい。
【0028】
前記乳化剤の添加方法については、特に限定されるわけではないが、初期重合工程時に予め反応釜に仕込んでおいてもよいし、本重合工程でプレエマルションとして添加してもよい。
前記乳化剤の種類については、特に限定されるわけではないが、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤および高分子乳化剤等を好ましく挙げることができ、以下に具体例を示す。なお、乳化剤は1種類のみで用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、初期重合工程と本重合工程で使用する乳化剤は、全て同じでも、全部または一部異なっていてもよい。
【0029】
アニオン性乳化剤としては、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルフォネート、ナトリウムドデシルスルフォネート等のアルキルスルフォネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルフォネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルフォネート等のアルキルアリールスルフォネート塩;第一工業製薬(株)製ハイテノール18E等のポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;第一工業製薬(株)製ハイテーノールN−08等のポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩;等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0030】
ノニオン性乳化剤としては、三洋化成工業製ナロアクティーN−200等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;三洋化成工業(株)製ノニポール200等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの縮合物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリアミド;エチレンオキサイドと脂肪族アミンの縮合生成物;等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0031】
両性乳化剤としてはベタインエステル型乳化剤等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
高分子乳化剤としてはポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール; ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;またはこれらの構造体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体やまたは他の重合性単量体との共重合体;等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0032】
なかでも、本発明の製造方法に用いる乳化剤としては、特に耐水性、詳しくは、得られる水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などの耐水性を重視する場合には、上に例示した前記乳化剤であって、さらに重合性基を有する乳化剤(重合性乳化剤)を使用することが好ましい。重合性乳化剤の使用した場合、この重合性乳化剤を塗膜中に固定させ、分散させることで、界面や粒子間隙間への乳化剤の濃縮や溶出を防ぐことができるので好ましい。以下にこの重合性乳化剤を例示する。
重合性基を有するアニオン性乳化剤としては、日本乳化剤(株)製アントックスMS−60等のビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化硫酸エステル塩;三洋化成工業(株)製エレミノールJS−2等のプロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩;三洋化成工業(株)製エレミノールRS−30等の(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンサルフェート塩;(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォオネート塩;第一工業製薬(株)製アクアロンBC−10等のポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルサルフェート塩;第一工業製薬(株)製アクアロンKH−10等のアンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン;旭電化工業(株)製アデカリアソープSE−10等のアンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルフェニルオキシポリオキシエチレン;花王製ラテムルS−180等のアリル基を有する硫酸エステル;等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0033】
重合性基を有するノニオン性乳化剤としては第一工業製薬(株)製アクアロンRN−20等のポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル;旭電化工業(株)製アデカリアソープNE−10等の1−(アリルオキシメチル)アルキルフェニルオキシポリオキシエチレン等を好ましく挙げることができるが、特に限定されるものではない。
本発明において使用される水性媒体については、その使用量は特に限定されるものではなく、最終的に得られる水性樹脂分散体の固形分含有率を考慮して決められることが好ましい。この水性樹脂分散体の固形分含有率は、特に限定されないが、好ましくは35〜60重量%であり、より好ましくは40〜55重量%である。
【0034】
しかし、水性樹脂分散体の固形分含有率が35重量%未満のときは経済性が悪く、60重量%以上のときは水性樹脂分散体安定性低下や高粘度化によって取り扱いが困難になるので好ましくない。また、前記水性媒体は、初期重合工程に際しては予め反応釜に仕込んでおいてもよいし、本重合工程ではプレエマルションとして投入してもよい。そのうえ、前記水性媒体は、冷却、洗浄、固形分含有率の調整および粘度調整等の必要に応じ、好ましく添加することもできる。
前記水性媒体としては、通常、水が好ましく使用されるが、必要に応じてメタノール等の低級アルコール等の親水性溶媒を好ましく併用することができるが、特に限定されるものではない。
【0035】
本発明において使用される重合開始剤の使用量は、特に限定されるわけではないが、好ましくは重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量に対して0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%であるのがよい。
しかし、前記重合開始剤の使用量が、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量に対して0.05重量%未満になると、重合速度が遅くなって、未反応の重合性単量体が残存しやすいため好ましくない。一方、1重量%を超えると耐水性が低下する。
なお、前記重合開始剤の添加方法については、特に限定されるものではないが、一括添加、分割添加および連続滴下等が必要に応じて適宜選択されることが好ましい。
【0036】
本発明に使用される前記重合開始剤の種類は、特に限定されるわけではないが、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド等のアゾ化合物、過硫酸カリウム等の過硫酸塩および過酸化水素等の過酸化物等を好ましく挙げることができる。なお、前記重合開始剤は、1種類のみの使用でも、2種類以上を併用してもよい。また、前記重合開始剤の分解を促進するために亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤や硫酸第一鉄等の遷移金属塩を好ましく添加してもよい。
本発明においては、全ての重合工程が終了した後、得られた水性樹脂分散体の粒子のもつ酸性基の一部または全てをアルカリ性物質で中和することもできるし、必要であれば未中和のまましておいてもよい。一般的に、要求される水性樹脂分散体のpHはその用途によって異なるが、添加する中和剤の使用量によって前記pHを5〜10に好ましく調製することができる。
【0037】
前記中和剤の種類も、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸化物、アンモニアおよびモノメチルアミン等の有機アミン等を好ましく挙げることができる。なお、前記中和剤は、1種類のみの使用でも、2種類以上を併用してもよい。
なかでも、特に耐水性、詳しくは得られた水性樹脂分散体をもって形成される塗膜などの耐水性を重視する場合には、アンモニア等の揮発性をもつアルカリ性物質を用いることが好ましい。
【0038】
本発明においては、添加剤としては、特に限定されるわけではないが、pH緩衝剤や、キレート剤、連鎖移動剤、成膜助剤等の公知の添加剤を必要に応じて好ましく用いることができる。
本発明の製造方法によって得られた水性樹脂分散体には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、架橋剤、架橋促進剤、成膜助剤、顔料、分散剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、帯電防止剤、つや消し剤、充填剤、ワックスおよび不燃剤等を好ましく配合して使用してもよく、特にこれらに限定されるわけではない。
【0039】
特に、本発明において、酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体として、多官能性の重合性単量体、水酸基を有する重合性単量体、エポキシ基を有する重合性単量体、ニトリル基を有する重合性単量体、アミド基を有する重合性単量体、アミノ基を有する重合性単量体およびヘテロ環を有する重合性単量体、また、シリコン成分を有する重合性単量体を使用した場合には、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、ヒドラジノ基、オキサゾリン基を有する架橋剤や酸性化合物、アルカリ性化合物および遷移金属塩等の架橋促進剤など、特に限定されるものではないが、これらを配合して使用することは、得られる水性樹脂分散体をもって形成される皮膜などの物性(耐水性、耐候性)の面から見ても有効であり好ましい。
【0040】
また、本発明においては、前述のように耐候性を好ましく付与することができるが、得られた水性樹脂分散体に、光安定可能をもった物質や紫外線吸収能をもった物質を添加した場合も耐候性を好ましく付与することができる。具体的には、特に限定されるわけではないが、重合性基を有さない低分子量の光安定化剤や紫外線吸収剤等を好ましく挙げることができ、これらを本発明の製造方法より得られた水性樹脂分散体に添加する、もしくは重合工程時に重合性単量体成分とともに添加するという方法が好ましく用いられる。また、特に限定されるわけではないが、重合性基を有する光安定化剤、重合性基を有する紫外線吸収剤を用いる場合は、まず本発明の重合工程とは別の工程で重合体を得て、その後本発明の製造方法で得られた水性樹脂分散体に添加してもよい。
【0041】
本発明においては、重合温度、重合時間、撹拌速度、雰囲気等の条件は、特に限定されるものではないが、反応器の種類やスケールに応じて適宜選択するのが好ましい。
前記重合温度は、具体的には、好ましくは40〜95℃であるが、使用する重合開始剤や重合性単量体の種類を考慮して決定するのがより好ましい。
また、前記重合時間は、一般的に、短いほど工業的には簡便であるが、重合速度や安全性を考慮すると、2〜8時間の範囲が好ましい。
前記雰囲気については、重合開始剤の効率を高めるため窒素等の不活性ガス雰囲気化で行うのが一般的であり好ましい。
【0042】
本発明の製造方法により得られる水性樹脂分散体は、酸性基を有する重合性単量体の使用量と採用する重合工程を十分に検討することにより、非常に優れた耐水性を要求する塗膜等の組成物の重要な成分となり得た。また、重合性基を有する乳化剤やエチレン性不飽和カルボン酸、炭素数6以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル、炭素数4以上のアルキル基を有するメタクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体を使用し、さらに本重合工程を多段で行い且つ第一段と最終段に上記有効なTg(℃)差をもたせた場合は、より好ましく効果的であるといえる。また、乳化剤使用量、開始剤使用量、水性樹脂分散体の固形分含有率、中和剤の種類を適切に選択した場合には、より好ましく耐水性を高めることができ、さらには製造工程時の安全性、水性樹脂分散体の物性の安定性、実用に供しうる経済性等を好ましく付与することもできる。
【0043】
本発明の製造方法により得られる水性樹脂分散体は、風雨に曝される構造物の保護や窯業系無機建材、ならびに木材、紙材、繊維材、皮革等の耐水性の低い基材を保護するための塗料やコーティング剤等として様々な用途に好ましく使用されるが、特に限定されるわけではない。また、本発明において酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体として、3級アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、シクロアルキル基を有する(メタ)クリル酸エステル、シリコン成分を有する重合性単量体、ハロゲン成分を含む重合性単量体、光安定化能を有する重合性単量体、紫外線吸収能を有する重合性単量体のうち少なくとも1つを使用した場合は、得られる水性樹脂分散体をもって形成される塗膜等は高い耐候性を示すため、風雨、熱、光に曝される基材の長期にわたる保護や美観の維持が要求される用途に使用されることが好ましく、最適である。また、乾燥条件については、常温乾燥から加熱乾燥まで、特に限定されるわけではなく、様々な用途に合わせて好ましく選択できる。
【0044】
また、本発明の製造方法により得られる水性樹脂分散体は、単独で使用する場合、塗料やコーティング剤用バインダーとして好ましく使用してもよいし、耐水性改良剤として他の水性樹脂分散体や水溶性樹脂等の水系樹脂とブレンドすることも好ましいが、特にこれらに限定されるわけではない。特に、他のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等の耐候性樹脂やエポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の耐食性樹脂と併用することは有効である。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の表中の「wt%」は「重量%」を表すこととする。
〔計算Tg〕
重合性単量体成分の共重合体の計算Tgは次のFoxの式より計算した。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
ここで、Wnは単量体nの重量%、Tgnは単量体nからなるホモポリマーのTg(絶対温度)を示す。計算後、Tg(絶対温度)をTg(℃)に変換して扱う。
【0046】
〔固形分測定〕
精秤した試料1gを110℃の熱風乾燥機中で60分間乾燥させ、乾燥後の試料の重量を精秤した。乾燥前の重量に対する乾燥後の重量の比率を固形分とし、重量%で示した。
〔初期反応率〕
初期重合工程の後、サンプリングを行い固形分を求めた。初期重合工程に使用した原料の仕込み量から計算した理論固形分に対する実測固形分の比率を反応率とし、重量%で示した。初期反応率は下記のように区分し○、△、×で示した。○、△を合格とした。
○:90重量%以上 △:80重量%以上から90重量%未満 ×:80重量%未満
〔粒子径測定〕
動的光散乱法の粒子径測定装置(NICOMP Model 370)で測定した。粒子径は体積平均粒子径で示した。
【0047】
〔重合安定性〕
重合終了後に、水性樹脂分散体を100meshの金網でろ過した。金網に残った凝集物を110℃の熱風乾燥機で1日乾燥させ、乾燥後の重量を測定した。全重合工程で使用した重合性単量体の合計量に対する乾燥後の凝集物量の比率を凝集率とし、重量%で示した。重合安定性は凝集率で評価し、下記の様に区分し○、△、×で示した。○、△を合格とした。
○:0.02重量%未満 △:0.02重量%以上から0.1重量%未満 ×:0.1重量%以上
〔耐水白化試験〕
水性樹脂分散体100部に75%のブチルセロソルブ水溶液を13.3部添加し、試験サンプルとした。試験サンプルを、10milのアプリケーターを使用してアルミ板上に塗装した。塗装板を100℃の熱風乾燥機中で10分間乾燥し、試験板を得た。色差計で試験板のL値(L1)を測定した後、試験板を室温の脱イオン水中に7日間浸漬した。浸漬後、試験板を引き上げ軽く水分をふき取った後にすぐに色差計でL値(L2)を測定した。白化の程度はdL(L2−L1)で評価し、下記のように区分し、◎、○、□、△、×で示した。◎、○、□、△を合格とした。
◎:10未満 〇:10以上から20未満 □:20以上から30未満
△:30以上から40未満 ×:40以上
〔耐温水白化試験〕
水性樹脂分散体100部に75%のブチルセロソルブ水溶液を13.3部添加し、試験サンプルとした。試験サンプルを、10milのアプリケーターを使用してアルミ板上に塗装した。塗装板を100℃の熱風乾燥機中で10分間乾燥し、試験板を得た。色差計で試験板のL値(L1)を測定した後、試験板を60℃の脱イオン水中に1日間浸漬した。浸漬後、試験板を引き上げ軽く水分をふき取った後にすぐに色差計でL値(L2)を測定した。白化の程度はdL(L2−L1)で評価し、下記のように区分し、◎、○、□、△、×で示した。◎、○、□、△を合格とした。
◎:10未満 〇:10以上から20未満 □:20以上から30未満
−実施例1−
滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに脱イオン水826.9g、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)の25%水溶液28.8g、アクアロンRN−20(第一工業製薬製)の25%水溶液14.4g、メタクリル酸メチル54.9g、アクリル酸ブチル29.7g、アクリル酸5.4gを仕込んで、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に75℃まで昇温した。昇温後、5%の過硫酸カリウム水溶液を54.0g添加し、重合を開始した。この時に反応系内を80℃まで昇温し10分間維持した。ここまでを初期反応とした。
【0048】
初期反応終了後、反応系内を80℃に維持したまま、アクアロンHS−10の25%水溶液13.4g、アクアロンRN−20の25%水溶液6.7g、脱イオン水g、メタクリル酸メチル536.4g、アクリル酸ブチル270.0g、アクリル酸3.6g、プレエマルションを180分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後も同温度で60分間維持し重合を終了した。
次に、反応系内を50℃まで冷却し、25%アンモニア水14.1g添加し、同温度で10分間撹拌した。撹拌後、室温まで冷却し、100メッシュの金網でろ過して、重合体分散液を得た。
【0049】
−実施例2〜9および比較例1〜3−
重合性単量体と乳化剤の種類および/またはその使用量を表1、表2、表3および表4のようにした以外は、実施例1と同様に、本重合工程を一段重合法により行い、組成の異なる水性水分散体を得た。評価結果は実施例1とともに表1、表2、表3および表4に示した。
表中の各重合性単量体の使用量は、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量のうちの割合とし、重量%で示した。各乳化剤の使用量は、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量に対する割合とし、重量%で示した。
【0050】
また、各重合性単量体は以下の略号で示した。
MMA :メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
BA :アクリル酸ブチル
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
St :スチレン
AA :アクリル酸 (*)
MAA :メタクリル酸 (*)
(*)酸性基を有する重合性単量体
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
−実施例10−
滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに脱イオン水826.9g、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)の25%水溶液28.8g、RN−20(第一工業製薬製)の25%水溶液14.4g、スチレン9.0g、メタクリル酸メチル62.1g、アクリル酸2−エチルヘキシル13.5g、アクリル酸5.4gを仕込んで、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に75℃まで昇温した。昇温後、5%の過硫酸カリウム水溶液を54.0g添加し、重合を開始した。この時に反応系内を80℃まで昇温し10分間維持した。ここまでを初期反応とした。
【0056】
初期反応終了後、反応系内を80℃に維持したまま、アクアロンHS−10の25%水溶液13.4g、RN−20の25%水溶液6.7g、脱イオン水99.8g、スチレン36.0g、メタクリル酸メチル264.6g、アクリル酸2−エチルヘキシル55.8g、アクリル酸3.6gからなる一段目のプレエマルションを80分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後も同温度で30分間維持し、一段目の重合を終了した。
次に、反応系内を80℃に維持したまま、アクアロンHS−10の25%水溶液5.8g、アクアロンRN−20の25%水溶液2.9g、脱イオン水139.2g、スチレン45.0g、メタクリル酸メチル172.8g、アクリル酸2−エチルヘキシル232.2gからなる二段目のプレエマルションを100分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後も同温度で60分間維持し、二段目の重合を終了した。
【0057】
次に、反応系内を50℃まで冷却し、25%アンモニア水7.1g添加し、同温度で10分間撹拌した。撹拌後、室温まで冷却し、100メッシュの金網でろ過して、重合体分散液を得た。
−実施例11〜15および比較例4、5−
重合性単量体と乳化剤の種類および/またはその使用量を表5、表6、表7および表8のようにした以外は、実施例10と同様に、本重合工程を二段重合法により行い、組成の異なる水性水分散体を得た。評価結果は、実施例10とともに表5、表6、表7および表8に示した。
【0058】
表中の各重合性単量体の使用量は、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量のうちの割合とし、重量%で示した。各乳化剤の使用量は、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量に対する割合とし、重量%で示した。また、各重合性単量体は上記と同様の略号で示した。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、耐水性の非常に優れた皮膜等を形成する水性樹脂分散体の新規な製造方法を提供することができ、得られる水性樹脂分散体は、特に、風雨に曝される構造物の保護や窯業系無機建材、木材、紙材、繊維材、皮革等の耐水性の低い基材の保護用等の塗料、コーティング剤等として広く用いられ得る。
Claims (3)
- 酸性基を有する重合性単量体およびこれと共重合可能な他の重合性単量体を含む重合性単量体成分の一部を、水性媒体および乳化剤とともに仕込みし、仕込んだ重合性単量体成分の80重量%以上を重合させる初期重合工程と、残りの重合性単量体成分を加えて重合させる本重合工程とを含む水性樹脂分散体の製造方法であり、
酸性基を有する重合性単量体の全重合工程での合計使用量を、重合性単量体成分の全重合工程での合計使用量の0.1〜3重量%にするとともに、
初期重合工程においては、重合性単量体成分の5〜20重量%を用い、かつ、酸性基を有する重合性単量体の55〜100重量%を用い、さらに、
前記本重合工程が多段であって、本重合工程の第一段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)と最終段で使用される重合性単量体成分の計算Tg(℃)との差の絶対値が30以上である、
ことを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法。 - 前記乳化剤が、重合性基を有する乳化剤である、請求項1に記載の水性樹脂分散体の製造方法。
- 前記他の重合性単量体として、炭素数6以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル、炭素数4以上のアルキル基を有するメタクリル酸エステルおよび芳香族ビニル系単量体のいずれかに分類される重合性単量体を少なくとも1種含む、請求項1または2に記載の水性樹脂分散体の製造方法。
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